JP2010259184A - インバータ制御装置と電動圧縮機および家庭用電気機器 - Google Patents

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秀治 小川原
Atsushi Koda
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Abstract

【課題】デジタルセンサレスの広角通電時には位置検出区間が狭くなり、瞬停や急激な電圧変動による回転変動に対し、正確な位置検知ができなくなり脱調停止する。
【解決手段】インバータ回路部に供給される直流電源電圧の電圧値を検知する2つのそれぞれ異なる時定数のフィルタ回路と、それぞれのフィルタ回路の出力電圧をそれぞれ変換する第1直流電圧検出手段と第2直流電圧検出手段と、2つ直流電圧検出手段で検出したそれぞれの直流電圧値を比較する比較手段と、その比較結果に基づき通電角の上限値を制限する通電角制限手段を備えているので、急激な電圧変化に対して回転速度が大きく変動した場合に通電角を小さくし位置検出区間を拡大することができ、ロータ磁極位置を見失うことがなくなり、電圧変動による脱調を防止することができる。
【選択図】図5

Description

本発明は、ブラシレスDCモータのインバータ制御装置における広角通電制御に関するものであり、さらにそのインバータ制御装置を用いた電動圧縮機および家庭用電気機器に関するものである。
従来、この種のインバータ制御装置は、通電角を電気角120度以上に広げる広角制御を行うことにより、インバータの運転範囲を拡大し、インバータ制御装置の出力を増大するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一般にこれまでインバータの波形制御として、制御の容易さの観点から120度通電波形が採用されてきた。ブラシレスDCモータを駆動するシステムにおいては、正負それぞれの電気角が180度あるにもかかわらず、電気角120度分だけしかインバータの各相スイッチを導通させておらず、残りの電気角60度の区間が無制御となっていた。
従って、無制御期間においては、インバータが望みの電圧を出力することができず、インバータの直流電圧利用率が低い。そして直流電圧利用率が低いことに起因してブラシレスDCモータの端子電圧が小さくなり運転範囲が狭くなってしまう、すなわち最高回転速度が低くなっていた。
そこで、この特許文献1では、電圧形インバータの通電幅を電気角で120度より大きく180度以下の所定の幅に設定しており、無制御区間を電気角で60度未満にしている。その結果、モータ端子電圧を大きくし運転範囲を広くしている。
また近年、モータの高効率化を図るためロータ内部に永久磁石を埋め込み、磁石に起因するトルクのみならずリラクタンスに起因するトルクを発生させることにより、モータ電流を増加させることなく全体として発生トルクを大きくすることができる埋込磁石構造のブラシレスDCモータが用いられてきている。
このリラクタンストルクを有効に活用するために、モータ誘起電圧の位相に対してインバータの電圧位相を進める進角制御が行われている。さらに進角制御は弱め磁束効果を有効に活用でき、出力トルクを増大できる。
また、圧縮機などでは使用環境、信頼性、メンテナンスの観点から、ホール素子等のセンサを用いずにステータ巻線に生じる誘起電圧によりロータ磁極位置を検知するセンサレス方式のインバータ制御装置が用いられている。
この場合、無制御期間中の電気角60度を用い、上下アームのスイッチのオフ期間中にモータ端子に現れる誘起電圧を観測することにより、ロータ磁極位置を得ているものが多い。
以下、図面を参照しながら上記従来のインバータ制御装置を説明する。
図7は特許文献1に記載された従来のインバータ制御装置の構成を示す図である。また図8は、従来のインバータ制御装置の各部の信号波形および処理内容を示す図であり、広角度150度時の特性を示している。
図9は従来のインバータ制御装置の負荷トルクと回転速度特性を示す図であり、広角通電制御を行った時の特性を示している。
図7において、直流電源001の端子間に3対のスイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,Trzをそれぞれ直列接続してインバータ回路部002を構成している。ブラシレスDCモータ003は4極の分布巻き構造のステータ003aと、ロータ003bで構成されている。ロータ003bは内部に永久磁石003α,003βを埋め込んだ磁石埋込型構造である。
各対のスイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,Trzどうしの接続点は、ブラシレスDCモータ003のY接続された各相のステータ巻線003u,003v,003wの端子にそれぞれ接続されている。
そして、各対のスイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,Trzどうしの接続点は、Y接続された抵抗004u,004v,004wにもそれぞれ接続されている。
なお、スイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,Trzのコレクターエミッタ端子間にそれぞれ保護用の還流ダイオードDu,Dx,Dv,Dy,Dw,Dzが接続されている。
磁極位置検出回路010は、差動増幅器011と積分器012とゼロクロスコンパレータ013により構成されている。そして、上記Y接続されたステータ巻線003u,003v,003wの中性点003dの電圧は、抵抗011aを介して増幅器011bの反転入力端子に供給され、Y接続された抵抗004u,004v,004wの中性点004dの電圧は、そのまま増幅器011bの非反転入力端子に供給されている。
そして、増幅器011bの出力端子と反転入力端子との間に抵抗011cを接続することにより、差動増幅器011として動作させるようにしている。
また、差動増幅器011の出力端子から出力される出力信号は、抵抗012aとコンデンサ012bとを直列接続してなる積分器012に供給されている。
積分器012からの出力信号(抵抗012aとコンデンサ012bとの接続点電圧)は、ゼロクロスコンパレータ013の非反転入力端子に供給されており、ゼロクロスコンパレータ013の反転入力端子には中性点003dの電圧が供給されている。
そして、ゼロクロスコンパレータ013の出力端子から磁極位置検出信号が出力される。
上記差動増幅器011、積分器012およびゼロクロスコンパレータ013で、ブラシレスDCモータ003のロータ003bの磁極位置を検出する磁極位置検出回路010が構成される。
マイクロプロセッサ020では、磁極位置検出回路010から出力される磁極位置検出信号に基づいて、周期測定、進角や通電角の設定のための位相補正などを行い、電気角1周期当りのタイマ値を算出し、スイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,Trzの転流信号を決定する。
また、マイクロプロセッサ020は回転速度指令に基づいて電圧指令を出力し、電圧指
令をPWM(パルス幅変調)変調するとともに、回転速度指令と実回転速度の偏差に基づきPWM変調信号のON/OFF比であるデューティ量を制御し、3相分のPWM変調信号を出力する。
そして、回転速度指令に対し、実回転速度が低いとデューティを大きくし、逆に実回転速度が高いとデューティを小さくする。
このPWM変調信号はドライブ回路030に供給され、ドライブ回路030が、スイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,Trzのそれぞれのベース端子に供給すべきドライブ信号を出力する。
以上のように構成されたインバータ制御装置について、以下その通電における動作を説明する。
図8において、(A),(B),(C)は、ブラシレスDCモータ003のU相,V相,W相の誘起電圧Eu,Ev,Ewであり、位相がそれぞれ120度ずつずれた状態で変化する。
(D)は差動増幅器011から出力される信号であり、(E)は積分器012による積分波形である。この積分波形がゼロクロスコンパレータ013に供給されることにより、積分波形のゼロクロス点において立ち上り、立ち下りの励磁切替信号が磁極位置検出信号として(F)のように出力される。
この励磁信号の立ち上り、立ち下りによりスタートする位相補正タイマ(G1)と、この位相補正タイマによりスタートする第2位相補正タイマ(G2)により、転流パターンであるインバータモード(N)を1ステップ進める。
ここで、W相の誘起電圧Ewの波形からU相の通電タイミングを算出しており、位相補正タイマ(G1)によりインバータ回路部002の位相進み量を制御できる。図8においては、通電角150度で進角60度の設定である。従って、位相補正タイマ(G1)の値は45度相当、第2位相補正タイマ(G2)の値は30度相当の値となっている。
その結果、各インバータモード(N)に対応してスイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,TrzのON/OFF状態が、それぞれ(H),(I),(J),(K),(L),(M)に示すように制御される。
以上のように、通電期間を120度から180度に設定した状態でのブラシレスDCモータ003の駆動を達成することができ、インバータ電圧の位相をモータ誘起電圧よりも進めた状態にすることができる。
また、広角通電制御を行うことにより、図9に示すように負荷トルクの大きいところでの運転領域を拡大することができる。
しかしながら、上記従来の構成では、ロータ003bの回転に基づいてステータ巻線003u,003v,003wに生じる誘起電圧を検出し、この誘起電圧を90度の遅れを有する積分器012により移相することによってロータ003bの磁極に対応する位置検出信号を得ており、この位置検出信号に基づいてステータ巻線003u,003v,003wへの通電タイミングを決定する構成となっている。
その結果、90度遅れ位相の積分器012を用いているので急激な加減速に対する応答
性が悪いという不具合がある。
そこで、このような応答性を改善した位置検出回路が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
以下、図面を参照しながら、特許文献2に記載された他の従来のインバータ制御装置について説明する。
図10は、他の従来のインバータ制御装置の構成を示す図、図11は他の従来例のインバータ制御装置の各部の信号波形および処理内容を示す図であり、図12は他の従来のインバータ制御装置の瞬停時の脱調特性の関係を示す図であり、具体的には瞬停時の電源電圧と通電角の脱調特性の関係を示している。
図10において、抵抗101,102は、母線103,104間に直列に接続されており、その共通接続点たる検出端子ONは、ブラシレスDCモータ105のステータ巻線105u,105v,105wの中性点の電圧に相当する直流電源001の電圧の1/2たる仮想中性点の電圧VNを出力するようになっている。
コンパレータ106a,106b,106cは、これらの各非反転入力端子(+)は抵抗107,108,109を介して出力端子OU,OV,OWにそれぞれ接続され、各反転入力端子(−)は、検出端子ONに接続されている。
そしてこれらのコンパレータ106a,106b,106cの出力端子OU,OV,OWは論理手段たるマイクロプロセッサ110の入力端子I1,I2,I3にそれぞれ接続されている。またその出力端子O1からO6はドライブ回路120を介してスイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,Trzを駆動する。
コンパレータ106a,106b,106cの出力信号に基づき誘起電圧の変化時間を測定する第1タイマ122を設け、この第1タイマ122で測定した変化時間に基づいて遅延時間を得る第2タイマ123を設けている。コンパレータ106a,106b,106cの出力信号に基づく誘起電圧の正,負状態と第2タイマ123のタイミングから各相のステータ巻線105u,105v,105wに通電するための駆動信号を出力する。
ブラシレスDCモータ105は4極分布巻き構造で、ロータ105aはロータ105aの表面に永久磁石105α、105βを配置した表面磁石構造である。従って、通電角120度、進角0度の設定となっている。
以上のように構成されたインバータ制御装置について、以下その動作を説明する。
図11において、(A),(B),(C)は定常動作時におけるステータ巻線105u,105v,105wの端子電圧Vu,Vv,Vwを示すものである。
これらの端子電圧Vu,Vv,Vwは、インバータ回路部140による供給電圧Vua,Vva,Vwaと、ステータ巻線105u,105v,105wに発生する誘起電圧Vub,Vvb,Vwbと、転流切り換え時にインバータ回路部140の還流ダイオードDu,Dx,Dv,Dy,Dw,Dzの内のいずれかが導通することにより生じるパルス状のスパイク電圧Vuc,Vvc,Vwcとの合成波形となる。
そして、これらの端子電圧Vu,Vv,Vwと直流電源001の電圧の1/2の電圧たる仮想中性点の電圧VNとコンパレータ106a,106b,106cにより比較した出
力信号PSu,PSv,PSwが(D),(E),(F)に示されている。
この場合、コンパレータ106a,106b,106cの出力信号PSu,PSv,PSwは、前述の誘起電圧Vub,Vvb,Vwbの正および負ならびに位相を表わす信号PSua,PSva,PSwaと、前述のパルス状電圧のスパイク電圧Vuc,Vvc,Vwcに対応する信号PSub,PSvb,PSwbとからなる。
また、パルス状電圧のスパイク電圧Vuc,Vvc,Vwcは、ウェイトタイマにより無視しているので、コンパレータ106a,106b,106cの出力信号PSu,PSv,PSwは、結果として誘起電圧Vub,Vvb,Vwbの正および負ならびに位相を示すものとなる。
マイクロプロセッサ110は、各コンパレータ106a,106b,106cの出力信号PSu,PSv,PSwの状態に基づいて(G)に示す如き6つのモードAからFを認識し、出力信号PSu,PSv,PSwのレベルが変化した時点から電気角で30度だけ遅らせて、ドライブ信号DSu,DSv,DSw,DSx,DSy,DSzを出力した状態が、それぞれ(J)から(O)である。
モードAからFの各時間T(H)は電気角60度を示すものであり、AからFの1/2の時間(I)すなわちT/2は電気角で30度に相当する遅延時間を示すものである。
このように、ブラシレスDCモータ105のロータ105aの回転に応じて、ステータ巻線105u,105v,105wに生ずる誘起電圧Vub,Vvb,Vwbからロータ105aの位置状態を検出するとともに、その誘起電圧Vub,Vvb,Vwbの変化時間(T)を検出してステータ巻線105u,105v,105wへの通電モードおよびタイミングにより各相ステータ巻線105u,105v,105wの通電のための駆動信号を決定して実行させるようにしている。
そのため、特許文献1に記載された従来のインバータ制御装置とは異なり、フィルタ回路を必要としないことから誘起電圧Vub,Vvb,Vwbの検出感度が高くなって始動特性の向上を図ることができ、低速駆動を可能としている。
さらに、90度遅れ特性のフィルタ回路を用いておらず、第1タイマ122および第2タイマ123の組合せにより30度遅れをもって制御できるので、急激な加減速に対する応答性を改善している。
また、図12において、インバータ制御装置の電源電圧と通電角の脱調特性について説明する。電源電圧が急激に下降した場合に、通電角が大きいほど電源電圧が高い段階で脱調し脱調耐力が低いことが分かる。電圧が急激に上昇した場合も同様な特性を示す。
国際公開第95/27328号 特開平1−8890号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来の構成では、通電角180度未満の区間で位置検出可能な磁極位置検出回路010を提案しているが、フィルタを用いているため、電気角で90度の遅れが発生し、急激な負荷変動等の回転変動に対する応答性が悪い
という課題を有していた。
また、特許文献2に記載された従来の構成は、電気角で90度の遅れを発生しない位置検出回路を提案しているが、120度以上に通電角を広げる広角制御を行ったり、またモータ誘起電圧の位相に対してインバータ回路部140の電圧位相を進める進角制御を行ったりしている。
そして高効率化のためステータ巻線105u,105v,105wの巻数を多くすると、インダクタンスが増加しパルス状電圧のスパイク電圧Vuc,Vvc,Vwcの幅を増大させることになり、位置検出可能な区間は狭まくなり、急激な負荷変動等の回転変動に対して位置検出できずに脱調してしまうという課題を有していた。
また、高効率化や出力トルクアップのために集中巻き構造のステータを用いたブラシレスDCモータ105において、ブラシレスDCモータ105の極数を6極にした場合、4極時に比べ位置検出可能区間は機械角では2/3に減少する。
従って、位置検出可能な区間を狭めることとなる広角制御や、進角制御、モータ巻数の増大を行うことや、また機械的な位置検出可能区間を狭める極数増大は、位置検出区を狭めることとなり、急激な回転変動を伴う、負荷変動や瞬停や電圧変動が発生した場合、位置検知できずに脱調停止するというような課題があった。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、直流電源電圧を2つのフィルタ手段を通して、それぞれのフィルタ演算結果の比較結果に応じて通電角の上限を制限することにより、瞬停や急激な電圧変動に対して、脱調停止するのを防止する信頼性の高いインバータ制御装置を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために、本発明のインバータ制御装置は、インバータ回路部に供給される直流電源電圧を検知するそれぞれ時定数の異なる2つのフィルタ回路と、2つのフィルタ回路の出力電圧をそれぞれアナログデジタル変換する第1直流電圧検出手段と第2直流電圧検出手段と、2つの直流電圧検出手段で検出したそれぞれの直流電圧値を比較する比較手段と、比較手段の比較結果に基づきインバータ回路部における通電角の上限値を120度から180度未満の範囲で制限する通電角制限手段を具備するものであり、瞬停などの急激な電圧変化に対して回転速度が変動した場合に、通電角を小さくすることにより位置検出区間を拡大することができ、ロータ磁極位置を見失うことがなくなるという作用を有する。
本発明のインバータ制御装置は、電圧変化による回転速度変動に対する応答性を良化することができ、瞬停などの急激な電圧変化に対して回転速度が変動した場合に、通電角を小さくし位置検出区間を拡大することができ、ロータ磁極位置を見失うことがなくなり、電圧変動による脱調を防止し、瞬停耐量を向上することができる。
本発明の実施の形態1におけるインバータ制御装置のブロック図 同実施の形態におけるフィルタ回路を示す図 同実施の形態における各部の信号波形と処理内容を示す図 同実施の形態における通電角制限手段の処理内容を示すフローチャート 同実施の形態における直流電源電圧の変化と通電角の関係を示す図 同実施の形態におけるフィルタ回路を示す別例の図 従来のインバータ制御装置の構成を示す図 従来のインバータ制御装置の各部の信号波形および処理内容を示す図 従来のインバータ制御装置の負荷トルクと回転速度特性を示す図 他の従来のインバータ制御装置の構成を示す図 他の従来のインバータ制御装置の各部の信号波形および処理内容を示す図 他の従来のインバータ制御装置の瞬停時の脱調特性の関係を示す図
請求項1に記載の発明は、ロータに永久磁石を設けたブラシレスDCモータを駆動するインバータ回路部と、前記ブラシレスDCモータのステータに誘起される誘起電圧に基づいて前記ロータの前記ステータに対する相対位置を検出する位置検出手段と、前記インバータ回路部の通電角を設定する通電角設定手段と、前記インバータ回路部に供給される直流電源電圧を検知するそれぞれ時定数の異なる2つのフィルタ回路と、前記2つのフィルタ回路の出力電圧をそれぞれアナログデジタル変換する第1直流電圧検出手段と第2直流電圧検出手段と、前記2つ直流電圧検出手段で検出したそれぞれの直流電圧値を比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づき前記インバータ回路部における通電角の上限値を120度から180度未満の範囲で制限する通電角制限手段とを備えたもので、急激な電圧変化に対して回転速度が大きく変動した場合に、通電角を小さくし位置検出区間を拡大することができ、ロータ磁極位置を見失うことがなくなり、電圧変動による脱調を防止することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、通電角制限手段は、比較手段の結果が、時定数の小さい第1フィルタ回路の出力から得られた直流電圧値と時定数の大きい第2フィルタ回路の出力から得られた直流電圧値との差の絶対値がある一定値以上大きいと判断した場合は、通電角の上限値を小さくするものであり、直流電源電圧の変動の大きさを判断することができ、急激な電圧変化に対して回転速度が大きく低下した場合に、通電角を小さくし位置検出区間を拡大することができ、ロータ磁極位置を見失うことがなくなり、請求項1に記載の発明の効果に加えてさらに、電圧低下による脱調を防止することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、通電角制限手段は、比較手段の結果が、時定数の小さい第1フィルタ回路の出力から得られた直流電圧値と時定数の大きい第2フィルタ回路の出力から得られた直流電圧値との差の絶対値がある一定値より小さいと判断した場合は、通電角の上限値を大きくするものであり、直流電源電圧の変動が小さいと判断することができ、電源電圧が安定した場合に通電角を所定の値まで復帰させることができるので、請求項1または2に記載の発明の効果に加えてさらに、再び高回転、高トルクで運転することが可能である。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、通電角制限手段は、比較手段の結果に基づいて、ある一定時間毎に通電角の上限値を徐々に変化させるものであり、電圧変動が発生した場合に電圧変化とともに通電角を小さくすることができ、電源電圧の変化に合わせて位置検出区間を拡大することができ、ロータ磁極位置を見失うことがなくなり、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明の効果に加えてさらに、電圧変動による脱調を防止することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、通電角制限手段は、比較手段の結果に基づいて、ある一定時間経過後に通電角の上限値を大きくするものであり、特に瞬停等の復帰時に電源電圧が安定したことを確認後、回転速度も安定後に通電角を所定の値まで大きくすることができるので、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明の効果に加えてさらに、再び高回転、高トルクで運転することが可能で
ある。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、通電角制限手段は、比較手段の結果である、第1フィルタ回路の出力から得られた直流電圧値と第2フィルタ回路の出力から得られた直流電圧値との差に応じて、即時に通電角の上限値を小さくするものであり、瞬停等が発生した場合に、瞬時に通電角を小さくし、位置検出区間を拡大の応答性を向上することができるので、ロータ磁極位置を見失うことが低減され、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明の効果に加えてさらに、電圧変動による脱調を防止することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、ブラシレスDCモータのロータは内部に永久磁石が埋め込まれ突極性を有することを特徴とするものであり、リラクタンストルクを有効に活用し位置検出区間を狭くする進角制御を行うものに対しても電圧変動による脱調を防止することができ、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明の効果に加えてさらに、瞬停耐量を向上することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明において、ブラシレスDCモータのステータ巻線の巻数は160ターン以上であり、インダクタンスが大きく、スパイク電圧幅が増大し位置検出区間を狭くするモータに対しても電圧変動による脱調を防止することができ、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明の効果に加えてさらに、瞬停耐量を向上することができる。
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の発明において、ブラシレスDCモータの極数は6極以上であり、極数増加による機械的角度で位置検出区間を狭くするモータに対しても電圧変動による脱調を低減することができ、請求項1から8のいずれか一項に記載の発明の効果に加えてさらに、瞬停耐量を向上することができる。
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載のインバータ制御装置を用いたもので、電動圧縮機に適用したものであり、電圧変動による脱調を防止することができ、瞬停耐量を向上することができ、信頼性の高い電動圧縮機を提供することができる。
請求項11に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載のインバータ制御装置を用いたもので、冷蔵庫等の家庭用電気機器に適用したものであり、電圧変動や瞬停に対する耐量を向上することができ、信頼性の高い冷蔵庫等の家庭用電気機器を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるインバータ制御装置のブロック図、図2は同実施の形態におけるフィルタ回路を示す図である。図3は同実施の形態における各部の信号波形と処理内容を示す図であり、図4は同実施の形態における通電角制限手段の処理内容を示すフローチャート、図5は同実施の形態における直流電源電圧の変化と通電角の関係を示す図である。
また、図6は同実施の形態におけるフィルタ回路を示す別例の図である。
図1から図6において、インバータ制御装置200は、商用交流電源201と電動圧縮
機(図示せず)に接続されており、商用交流電源201を直流電源に変換する整流部203と、電動圧縮機のブラシレスDCモータ204を駆動するインバータ回路部205を備えている。
また、インバータ回路部205を駆動するドライブ回路206と、ブラシレスDCモータ204の端子電圧を検出する位置検出回路部207とインバータ回路部205を制御するマイクロプロセッサ208と、直流電源に変換された整流部203の電圧を検知する第1フィルタ回路209aと第2フィルタ回路209bとを備えている。第1フィルタ回路209aの時定数は第2フィルタ回路209bよりも小さく設定されている。
電動圧縮機のブラシレスDCモータ204は6極の突極集中巻モータであり、3相巻線のステータ204aとロータ204bとで構成されている。
ステータ204aは6極9スロットの構造であり、各相のステータ巻線204u,204v、204wの巻数はそれぞれ189ターンである。ロータ204bは、内部に永久磁石204α,204β,204γ,204δ,204ε,204ζを配置し、リラクタンストルクを発生する磁石埋込型構造である。
インバータ回路部205は、6つの三相ブリッジ接続されたスイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,Trzと、それぞれに並列に接続された還流ダイオードDu,Dx,Dv,Dy,Dw,Dzより構成されており、ドライブ回路206によりスイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,TrzをON/OFF駆動する。
位置検出回路部207は、従来例2と同様の構成で、コンパレータ(図示せず)などから構成されており、ブラシレスDCモータ204の誘起電圧に基づく端子電圧信号と基準電圧VNとをコンパレータにより比較し位置検出手段210にてスパイク電圧の影響を除去することによりロータ204bの磁極位置信号を得ている。
第1フィルタ回路209aおよび第2フィルタ回路209bは、図2(a)に示すように直流電源電圧Edを複数の抵抗R1,R2,R3,R4によって分圧された電圧をCRフィルタ回路で構成されており、マイクロプロセッサ208に直流電源電圧Edの分圧をアナログ電圧値として出力している。
また、マイクロプロセッサ208は、位置検出回路部207からの出力信号に対してブラシレスDCモータ204のロータ204bの磁極位置を検出する位置検出手段210と、位置検出手段210の出力信号から回転速度を検出する回転速度検出手段211と、指令回転速度と実回転速度の偏差に応じてデューティを増減するデューティ設定手段212と、デューティの周期であるPWM(パルス幅変調)の周波数を決定するキャリア出力手段213と、キャリア周期でデューティを出力するPWM制御手段214と、位置検出手段210で検出された磁極位置に基づいて転流信号を生成する転流制御手段215と、転流制御手段215とPWM制御手段214の出力によりドライブ回路206を駆動しドライブ信号を生成するドライブ制御手段216を備えている。
また、電気角で120度から150度の範囲で通電角を設定する通電角設定手段217と、電気角で0度から30度の範囲で進角を設定する進角設定手段218を備えており、転流制御手段215では進角、通電角を計算し転流タイミングを決定している。
さらにマイクロプロセッサ208は、第1フィルタ回路209aおよび第2フィルタ回路209bの出力電圧をA/D変換回路によりデジタル値に変換する第1直流電圧検出手
段219aおよび第2直流電圧検出手段219bを備えている。
また第1フィルタ回路209aの出力を第1直流電圧検出手段219aで変換した直流電圧値Vf1と、第2フィルタ回路209bの出力を第2直流電圧検出手段219bで変換した直流電圧値Vf2とを比較する比較手段223とを備えている。
そして、この比較手段223の比較結果に基づき、通電角の許容限界値を判断し通電角の上限値を120度から150度の範囲で制限する通電角制限手段225を設けている。
通電角制限手段225は、通電角設定手段217で設定された通電角の値と、通電角制限手段225で制限する通電角許容限界値とを比較し、小さい値を選択して転流制御手段215へ出力する。
さらにマイクロプロセッサ208は、時間経過を計測する基準タイマとタイマカウンタCT1、また直流電圧検出手段219a、219bの電圧検出値や、比較手段223での比較演算結果などを格納する記憶手段228を備えている。
以上のように構成されたインバータ制御装置200について、以下その動作、作用を説明する。
まず、ブラシレスDCモータ204の駆動方法について概略説明する。
回転速度検出手段211は、位置検出手段210からの位置信号を一定期間カウントしたり、パルス間隔を測定したりすることによりブラシレスDCモータ204の回転速度を算出する。
デューティ設定手段212は、回転速度検出手段211から得られた実回転速度と、指令回転速度との偏差からデューティの加減演算を行い、デューティ値をPWM制御手段214へ出力する。回転速度指令に対し実回転速度が低いとデューティを大きくし、逆に実回転速度が高いとデューティを小さくし回転速度を制御する。
キャリア出力手段213ではスイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,Trzをスイッチングするキャリア周波数を設定する。本実施の形態1の場合、キャリア周波数は3kHzから10kHzの間で設定している。
PWM制御手段214では、キャリア出力手段213で設定されたキャリア周波数と、デューティ設定手段212で設定されたデューティ値から、PWM変調信号を出力する。
転流制御手段215は、位置検出手段210の位置信号より転流のタイミングを計算し、進角設定手段218と通電角設定手段217による位相補正を行い、スイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,Trzの転流信号を生成する。
ドライブ制御手段216では、転流信号とPWM変調信号を合成して、スイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,Trzを駆動するドライブ信号を生成しドライブ回路206へ出力する。ドライブ回路206では、ドライブ信号に基づき、スイッチングトランジスタTru,Trx,Trv,Try,Trw,TrzのON/OFFスイッチングを行い、ブラシレスDCモータ204を駆動する。
次に、図3に示すインバータ制御装置200の各種波形について説明する。
インバータ制御装置200が、通電角は150度、進角15度でブラシレスDCモータ204を制御している状態である。
図3において、(A),(B),(C)は、ブラシレスDCモータ204のU相,V相,W相の端子電圧Vu,Vv,Vwであり、それぞれの位相が120度ずつずれた状態で変化する。
これらの端子電圧Vu,Vv,Vwは、インバータ回路部205による供給電圧Vua,Vva,Vwaと、ステータ巻線204u,204v,204wに発生する誘起電圧Vub,Vvb,Vwbと、転流切り換え時にインバータ回路部205の還流ダイオードDu,Dx,Dv,Dy,Dw,Dzの内のいずれかが導通することにより生じるパルス状のスパイク電圧Vuc,Vvc,Vwcとの合成波形となる。
そして位置検出回路部207は、これらの端子電圧Vu,Vv,Vwと直流電源電圧Edの1の1/2の電圧たる基準電圧である仮想中性点の電圧VNとを比較し、出力信号PSu,PSv,PSwを(D),(E),(F)に示すように出力している。
そして、この出力信号PSu,PSv,PSwからスパイク電圧に対応するPSub,PSvb,PSwbを除去し、ロータ磁極の位置信号(G)を得ている。
ここで商用交流電源が変動した場合を考えると、例えば瞬停が発生すると直流電源電圧Edが急激に下降し、実回転速度は直流電源電圧Edの変化率に比例して低下する。そして、誘起電圧Vub,Vvb,Vwbが仮想中性点の電圧VNと交わる位置検出のためのクロスポイントが通電区間の中へ消えてしまう。また同様に直流電源電圧Edが急激に上昇すると、回転速度は急激に上昇し、クロスポイントはスパイク電圧の中へ消えてしまう。いずれもロータ磁極位置の誤検知を招き脱調してしまうこととなる。
商用交流電源201は本例では115V60Hzである。商用交流電源201は倍電圧整流回路により直流電源に変換される。インバータ制御装置200が運転していない場合は、ほぼ一定電圧であるが、負荷が大きいと直流電源電圧Edは低下し、整流部203のコンデンサによる充放電による電圧リップルが発生する。
本例では、直流電源電圧Edは約300Vであり、電圧リップルは±10V程度発生している状態を考える。直流電源電圧Edは分圧され、第1フィルタ回路209a、および第2フィルタ回路209bを経て、マイクロプロセッサ208に入力される。マイクロプロセッサ208内では直流電圧検出手段219a,219bでA/D変換され、アナログの電圧値をデジタル値に変換している。
次に、図2を用いて直流電源電圧Edのフィルタ回路209a,209bの内容について説明する。
図2において、直流電源電圧Edは、まず抵抗R1からR4によってマイクロプロセッサ208に入力できるレベルまで分圧される。P点での電位は、Ed×R1/(R1+R2+R3+R4)である。
第1フィルタ回路209aにおいては、ノイズや電圧リップルの影響がない程度に時定数を設けている。時定数τ1は、Ra・Caである。
第2フィルタ回路209bにおいては、第1フィルタ回路209aの5〜10倍程度の時定数を設けている。時定数τ2は、Rb・Cbである(τ2=5〜10×τ1)。この
時定数の違いにより、電圧変動の大きさを検知できる。
次に広角通電制御を行う通電角設定手段217の動作について説明する。
通電角設定手段217は通常120度通電の矩形波駆動制御を行っている。しかし、指令回転速度に対しデューティが100%に達しても実回転速度が到達しない場合、500ms経過毎に通電角を3.75度ずつ拡大しトルクアップできる広角通電制御を行い、デューティが90%から100%の間で実回転速度が指令回転速度と一致する通電角で運転する。そして本実施の形態の場合、最大150度まで通電角を拡大する。
また逆に、実回転速度が指令回転速度よりも高く、通電角が120度超の場合で90%未満のデューティの状態が継続すると、500ms毎に3.75度ずつ縮小していき、デューティが90%から100%の間で実回転数と指令回転速度とが一致する通電角で運転する。デューティ90%未満の状態が連続すると、最小の通電角である通常の120度通電制御に戻る。
そして通電角制限手段225においては、比較手段223の比較結果である第1フィルタ回路209aの検出電圧(Vf1)と第2フィルタ回路209bの検出電圧(Vf2)との差ΔVfに基づいて、電気角で120度から150度の範囲で通電角を制限している。
第1フィルタ回路209aの直流電圧値である検出電圧(Vf1)と第2フィルタ回路209bの直流電圧値である検出電圧(Vf2)との差がある一定値以上、例えば直流電源電圧Edで11V相当以上であれば、20ms毎に3.75度ずつ通電角許容限界値を小さくする。
逆にある一定値以下例えば8V相当未満であれば、3.75度ずつ通電角許容限界値を大きくする。これは、第1フィルタ回路209aの検出結果が第2フィルタ回路209bの検出結果より大きくても小さくても差が絶対値で一定値以上あれば通電角許容限界値を小さくし、逆に差が絶対値で一定値以下であれば大きくしていく。
なお、閾値に11Vと8Vとヒステリシスを設けているのは、通電角のハンチングによる回転速度変動の防止のためである。
次に、図4、図5を用いて通電角制限手段225の主要部分の処理について説明する。
通電角制限手段225における通電角許容限界値の初期値は150度に設定されている。
まず、図4のフローチャートで説明する。
STEP100において、第1フィルタ回路209aの検出電圧Vf1と第2フィルタ回路209bの検出電圧Vf2を比較し、Vf1≧Vf2であれば、(Vf1−Vf2)を電圧差ΔVfとする。逆にVf1<Vf2であれば、(Vf2−Vf1)を電圧差ΔVfとする。
従って、電圧差ΔVfには、第1フィルタ回路209aの検出電圧Vf1と第2フィルタ回路209bの検出電圧Vf2の差の絶対値が格納される。
次にSTEP200において、広角制限中かどうか判断する。通常運転中は広角制限中
ではないため、STEP201に進む。そして、第1フィルタ回路209aの検出電圧Vf1と第2フィルタ回路209bの検出電圧Vf2との差ΔVfが11V以上かどうか判断する。
通常運転時においては、電圧差ΔVfは11Vより十分小さいため、STEP202へ進む。そして通電角許容限界値が150度で運転している時は何も処理せずSTEP230へ抜ける。
ここで、瞬停など電圧変動が発生した場合を考えると、STEP201で電圧差ΔVfが11V以上となると、STEP210へ進み、通電角許容限界値が120度以下かどうか判断する。120度超であれば、STEP211に進み、通電角許容限界値を3.75度小さくしSTEP212でタイマカウンタCT1をクリアし、広角制限中フラグを立てて処理を抜ける。すなわち、通電角許容限界値が150度であった場合は次に146.25度となる。
また、通電角許容限界値が最小設定値の120度まで縮小していた場合は、通電角許容限界値は120度のままで、STEP212でタイマカウンタCT1をクリアし、広角制限中フラグを立てて処理を抜ける。
次に再度、STEP200まできた時は、広角制限中となるため、STEP220へ進む。STEP220では、電圧差ΔVfが8V未満かどうか判断し、電圧差ΔVfが8V以上の場合は、次にSTEP221に進み、通電角許容限界値の最小設定値120度より大きいかどうか判断し、120度超の場合STEP222に進む。
ここで、電圧差ΔVfを11Vと8Vとで3Vの差をもたしているのは、ヒステリシスを有し通電角のハンチングを防止するためである。
STEP222では、タイマカウンタCT1をカウントアップし、STEP223でTm1経過したか判断する。例えばTm1を20msとすると、Tm1(20ms)経過していなければ、STEP230に進みそのまま処理せず抜ける。
また、Tm1(20ms)が経過するとSTEP224に進みタイマカウンタCT1をクリアし、通電角許容限界値を3.75度小さくする。すなわち、146.25度からTm1(20ms)後に142.5度に変化する。
電圧差ΔVfが8V以上の状態が継続していると、通電角許容限界値はTm1(20ms)毎に3.75度ずつ小さくなり最小120度まで小さくなる。
次に、電圧変動が収まった場合を考えると、STEP220で、電圧差ΔVfが8V未満となるとSTEP225へ移り、タイマカウンタCT1をクリアし広角制限中フラグをクリアする。
そして再び、STEP200、STEP201の判断処理を行い、STEP202に至る。STEP202で通電角許容限界値が設定値の最大値である150度より小さい場合は、STEP203でタイマカウンタCT1をカウントアップし、STEP204でタイマカウンタCT1がTm2経過したかどうか判断する。Tm2を20msとすると、Tm2(20ms)経過していない場合は、何もせずにフローを抜ける。
Tm2(20ms)経過した場合は、STEP205でタイマカウンタCT1をクリアし、通電角許容限界値を1段3.75度大きくする。
最大設定値の150度まで大きくなると、STEP202で何も処理せずに抜け、元の150度設定に戻る。
また、通電角制限手段225は、以上のように決定された通電角許容限界値と、通電角設定手段225で決定された通電角設定値とを比較し、小さい値を選択し実際に運転する通電角として転流制御手段215へ出力する。転流制御手段215はこの通電角の値を基に広角通電制御を行う。
次に図5に示すように、200msの瞬停を考える。
電圧降下とともに、第1フィルタ回路209aの検出電圧Vf1と第2フィルタ回路209bの検出電圧Vf2の差が大きくなり、通電角許容限界値を小さくしている。この時、回転速度は電圧降下とともに低下し、誘起電圧Vub,Vvb,Vwbが遅れ位相となり、位置検出ポイントは通電区間の中に消えてしまいそうになる。
そこで、通電角を最大設定値150度から最小設定値120度までTm1(20ms)毎に3.75度ずつ小さくし、位置検出区間の拡大を図り、位置検出ポイントを見失うことを防止している。
そして、瞬停から復帰した時に、整流部203のコンデンサへ充電されるため電源電圧は急激に元の電圧に復帰し、第1フィルタ回路209aの検出電圧Vf1と第2フィルタ回路209bの検出電圧Vf2の差は一瞬なくなるが、Tm1(20ms)経過せずにすぐさま電圧差が大きくなるため、通電角は120度のままとなる。
また、この時に急激に電圧が上昇するため、モータが急加速することとなり、誘起電圧が進み状態となり位置検出ポイントがスパイク電圧Vuc,Vvc,Vwcの中に消えそうになるのを防いでいる。
そして、第1フィルタ回路209aの検出電圧Vf1と第2フィルタ回路209bの検出電圧Vf2の差が8V未満となると、通電角を120度から123.75度と3.75度大きくしている。
そして検出電圧Vf1と検出電圧Vf2の差が8V未満の状態が継続していると、電圧変動がなく回転速度も安定していると判断し、Tm2(20ms)毎に3.75度ずつ大きくしていく。通電角は、最終的には最大設定値150度まで大きくなり、初期の設定値にまで戻る。
また、Tm2を100msとすることで、より電圧が安定した状態で、通電角を広げることができる。特に検出電圧Vf1と検出電圧Vf2とが交差し差がなくなる場合に電圧が安定したと誤判断することがなくなる。
さらに、通電角を復帰させる時は、通常の広角通電制御を行い、500ms毎に1段ずつ通電角を拡大してもよい。
次に他の実施例について述べる。
通電角制限手段225が、比較手段223により、第1フィルタ回路209aおよび第2フィルタ回路209bの検出電圧Vf1,Vf2の差の絶対値を算出し、この電圧差ΔVfの大きさに応じて通電角許容限界値を決定するものを考える。
第1フィルタ回路209aおよび第2フィルタ回路209bの検出電圧Vf1,Vf2の差が4V大きくなる毎に通電角許容限界値を1段3.75度小さくする。
従って、電圧差ΔVfに応じて、通電角を決定するものであるから、負荷が比較的小さい場合は、電圧変動期間が長くとも直流電源電圧Edはあまり降下しないため通電角は大きく変化しない、また負荷が大きい場合は、直流電源電圧Edはすぐに低下するため電圧差ΔVfが大きくなり、通電角もすぐに小さくなるよう制限することができる。
なお、通電角の復帰時については、上述の例と同様である。
以上のように、電圧差ΔVfに応じて通電角を決定するものであるから、負荷が小さい時は、通電角の変化割合が小さく、負荷が大きい時は、通電角の変化割合が大きくなるように制御するものであり、負荷に応じた通電角制御を行うことができ、より安定して運転することができ脱調を防止することができる。
また、他の制御例として、通電角制限手段225が、比較手段223により、第1フィルタ回路209aおよび第2フィルタ回路209bの検出電圧Vf1,Vf2の差の絶対値を算出し、この電圧差ΔVfの大きさに応じて即時に通電角許容限界値を決定するものを考える。
電圧変動が発生し、第1フィルタ回路209aおよび第2フィルタ回路209bの検出結果で11V以上の電圧差ΔVfが発生した場合、通電角許容限界値を120度に設定する。
通電角を120度に縮小することにより、回転数の急低下が見られるが、位置検知の誤検知を最大限防止することができ、より一層脱調のリスクを回避することができる。
また、本実施の形態で示したフィルタ回路209a,209bの構成は、一例を示したものであり、限定したものではない。例えば、図2の(b)のように、第1フィルタ回路の後段に第2フィルタ回路を接続したような構成でもかまわない。また、図6(a),(b)に示すような、演算増幅器を用いたような構成でもよい。図6(a)は時定数の異なる積分回路を並列に接続した構成であり、図6(b)は積分回路の後段にさらに積分回路を追加し、2種類の時定数を得られる構成としている。
以上のように、本発明のインバータ制御装置200は、ロータ204bに永久磁石204α,204β,204γ,204δ,204ε,204ζを設けたブラシレスDCモータ204を駆動するインバータ回路部205と、ブラシレスDCモータ204のステータ204aに誘起される誘起電圧Vub,Vvb,Vwvに基づいてロータ204bのステータ204aに対する相対位置を検出する位置検出手段210と、インバータ回路部205の通電角を設定する通電角設定手段217と、インバータ回路部205に供給される直流電源電圧Edを検知するそれぞれ時定数の異なる2つのフィルタ回路209a,209bと、2つのフィルタ回路209a,209bの出力電圧をそれぞれアナログデジタル変換する第1直流電圧検出手段219aと第2直流電圧検出手段219bと、2つの直流電圧検出手段219a,219bで検出したそれぞれの直流電圧値を比較する比較手段223と、比較手段223の比較結果に基づきインバータ回路部205における通電角の上限値を120度から180度未満の範囲で制限する通電角制限手段225とを備えているので、急激な電圧変化に対して回転速度が大きく変動した場合に、通電角を小さくし位置検出区間を拡大することができるので、ロータ204aの磁極位置を見失うことがなくなり、電圧変動による脱調を防止することができる。
また、通電角制限手段225は、比較手段223の結果が、時定数の小さい第1フィルタ回路209aの出力から得られた直流電圧値Vf1と時定数の大きい第2フィルタ回路209bの出力から得られた直流電圧値Vf2との差の絶対値がある一定値以上大きいと判断した場合は、通電角の上限値を小さくするので、直流電源電圧Edの変動の大きさを判断することができる。
そのため、急激な電圧変化に対して回転速度が大きく低下しロータ204bの磁極位置が通電区間やスパイク電圧Vuc,Vvc,Vwcに隠れそうになっても、通電角を小さくし位置検出区間を拡大することができ、ロータ204bの磁極位置を見失うことがなくなり、電圧低下による脱調を防止することができる。
また、通電角制限手段225は、比較手段223の結果が、時定数の小さい第1フィルタ回路209aの出力から得られた直流電圧値Vf1と時定数の大きい第2フィルタ回路209の出力から得られた直流電圧値との差の絶対値がある一定値より小さいと判断した場合は、通電角の上限値を大きくしているので、直流電源電圧Edの変動が小さいと判断することができる。
そのため、電源電圧が安定した場合に通電角を所定の値まで復帰させることができ、再び高回転、高トルクで運転することが可能である。
また、通電角制限手段225は、比較手段223の結果に基づいて、ある一定時間毎に通電角の上限値を徐々に変化させているので、電圧変動が発生した場合に電圧変化とともに通電角を小さくすることができ、電源電圧の変化に合わせて位置検出区間を拡大することができ、ロータ204bの磁極位置を見失うことがなくなる。
そのため、電圧変動による脱調を防止することができるだけでなく、できるだけトルク出力を大きくし回転速度を高く維持できるよう制御できる。
また、通電角制限手段225は、ある一定時間経過後に通電角の上限値を大きくするものであり、特に瞬停等の復帰時に電源電圧が安定したことを確認後、回転速度も安定後に通電角を所定の値まで大きくすることができ、再び高回転、高トルクで運転することが可能である。
また、通電角制限手段225は、第1フィルタ回路209aの出力から得られた直流電圧値Vf1と第2フィルタ回路209bの出力から得られた直流電圧値Vf2との差に応じて、即時に通電角の上限値を小さくするものであり、瞬停等が発生した場合に、瞬時に通電角を小さくし、位置検出区間を拡大の応答性を向上することができるので、ロータ204bの磁極位置を見失うことが低減され、電圧変動による脱調を防止することができる。
また、ブラシレスDCモータ204のロータ204bは内部に永久磁石204α,204β,204γ,204δ,204ε,204ζが埋め込まれ突極性を有したものに適用したものであり、リラクタンストルクを有効に活用するため進角制御が行われるが、広角制御と併用すると位置検出区間がさらに狭くなるため、進角制御を行うものに対しても電圧変動による脱調を低減することができ、瞬停耐量を向上することができる。
また、ブラシレスDCモータ204のステータ巻線204u,204v,204wの巻数は160ターン以上であり、インダクタンスが大きく、スパイク電圧Vuc,Vvc,Vwcの幅が増大し位置検出区間を狭くするブラスレスDCモータ204に対しても電圧変動による脱調を防止することができ、瞬停耐量を向上することができる。
また、ブラシレスDCモータの極数は6極以上であり、従来の4極から極数増加による機械的角度で位置検出区間を狭くなり、速度変化に対して位置検出しづらくなるため、6極以上のブラシレスDCモータ204に対しても、電圧変動による脱調を低減することができ、瞬停耐量を向上することができる。
さらに、上記インバータ制御装置200を用いた電動圧縮機は、電圧変動による脱調を防止することができ、瞬停耐量を向上することができ、信頼性の高い電動圧縮機を提供することができる。
さらに、冷蔵庫等の家庭用電気機器に上記インバータ制御装置200を用いても、電圧変動や瞬停に対する耐量を向上することができ、良好なシステム運転が可能となり信頼性の高い冷蔵庫等の家庭用電気機器を提供することができる。
なお、比較手段223の閾値を11Vに設定したが、実際のモータの挙動に合わせて任意に設定する。
また閾値を11V以上、8V未満で判断したが、通電角の変動による回転数のハンチング現象を防止するために、このようにヒステリシスを設けることが望ましい。
また閾値の設定は、通常運転時の、第1フィルタ回路209aの検出電圧Vf1と第2フィルタ回路209bの検出電圧Vf2の差以上に設定する。
さらに、第1フィルタ回路209aおよび第2フィルタ回路209bの部品定数は、実際のシステムに応じて、選定するのが望ましい。
なお、本実施の形態において、通電角は150度から9段階で120度へ遷移させたが、通電角はリニアに変化させても良いし、180度未満で任意に設定してよい。また直流電源電圧Edのサンプリング周期も任意に設定してもよい。
以上のように、本発明にかかるインバータ制御装置は、広角通電制御により高効率で高出力の運転ができ、電源電圧変動に対してロータ磁極を見失うことなく位置検出でき信頼性の高い安定した運転ができるので、電源電圧変動の影響が考えられるエアコン、冷蔵庫、洗濯機等の家庭用電気機器や、電気自動車等の用途にも適用できる。また電源電圧変動の多い地域にも有用である。
200 インバータ制御装置
204 ブラシレスDCモータ
205 インバータ回路部
204a ステータ
204b ロータ
204α,204β,204γ,204δ,204ε,204ζ 永久磁石
204u,204v,204w ステータ巻線
205 インバータ回路部
209a 第1フィルタ回路
209b 第2フィルタ回路
210 位置検出手段
217 通電角設定手段
219a 第1直流電圧検出手段
219b 第2直流電圧検出手段
223 比較手段
225 通電角制限手段

Claims (11)

  1. ロータに永久磁石を設けたブラシレスDCモータを駆動するインバータ回路部と、前記ブラシレスDCモータのステータに誘起される誘起電圧に基づいて前記ロータの前記ステータに対する相対位置を検出する位置検出手段と、前記インバータ回路部の通電角を設定する通電角設定手段と、前記インバータ回路部に供給される直流電源電圧を検知するそれぞれ時定数の異なる2つのフィルタ回路と、前記2つのフィルタ回路の出力電圧をそれぞれアナログデジタル変換する第1直流電圧検出手段と第2直流電圧検出手段と、前記2つ直流電圧検出手段で検出したそれぞれの直流電圧値を比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づき前記インバータ回路部における通電角の上限値を120度から180度未満の範囲で制限する通電角制限手段とを備えたインバータ制御装置。
  2. 通電角制限手段は、比較手段の結果が、時定数の小さい第1フィルタ回路の出力から得られた直流電圧値と、時定数の大きい第2フィルタ回路の出力から得られた直流電圧値との差の絶対値がある一定値以上大きいと判断した場合は、通電角の上限値を小さくする請求項1に記載のインバータ制御装置。
  3. 通電角制限手段は、比較手段の結果が、時定数の小さい第1フィルタ回路の出力から得られた直流電圧値と時定数の大きい第2フィルタ回路の出力から得られた直流電圧値との差の絶対値がある一定値より小さいと判断した場合は、通電角の上限値を大きくする請求項1または2に記載のインバータ制御装置。
  4. 通電角制限手段は、比較手段の結果に基づいて、ある一定時間毎に通電角の上限値を徐々に変化させる請求項1から3のいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
  5. 通電角制限手段は、比較手段の結果に基づいて、ある一定時間経過後に通電角の上限値を大きくする請求項1から4のいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
  6. 通電角制限手段は、比較手段の結果である、第1フィルタ回路の出力から得られた直流電圧値と第2フィルタ回路の出力から得られた直流電圧値との差に応じて、即時に通電角の上限値を小さくする請求項1から5のいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
  7. ブラシレスDCモータのロータは内部に永久磁石が埋め込まれ突極性を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
  8. ブラシレスDCモータのステータ巻線の巻数は160ターン以上である請求項1から7のいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
  9. ブラシレスDCモータの極数は6極以上である請求項1から8のいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
  10. 請求項1から9のいずれか一項に記載のインバータ制御装置を用いた電動圧縮機。
  11. 請求項1から9のいずれか一項に記載のインバータ制御装置を用いた冷蔵庫等の家庭用電気機器。
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