JP2011057812A - 油性インクジェットインク - Google Patents

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Abstract

【課題】ノズルプレートに対するはじき性に優れ、ノズルプレートの劣化を抑制できる油性インクジェットインクの提供。
【解決手段】高分子化合物によって表面処理されたカプセル型顔料および溶剤を少なくとも含んでなる油性インクジェットインクであって、前記高分子化合物は、α値5〜60の化合物が側鎖として付加され、かつ、前記溶剤に混和性の櫛形ポリウレタン化合物であることを特徴とする油性インクジェットインク。前記櫛形ポリウレタン化合物は、ポリウレタン化合物からなる主鎖と、前記主鎖にグラフト重合したα値5〜60の化合物からなる側鎖とを含むことが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録システムにおける使用に適した油性インクであって、より詳しくは、ノズルプレートに対するはじき性に優れ、ノズルプレートの劣化を抑制できる油性インクジェットインクに関する。
顔料として、酸価30〜60の(メタ)アクリル酸系共重合物によって表面処理されたカプセル型顔料を用いることにより、高顔料濃度でも低粘度の油性インクジェットインクが得られることは既に知られている(特許文献1参照)。
しかし、このインクは、インクジェット印刷装置のヘッドのノズルプレート表面のフッ素樹脂膜に対する濡れ性が良く、ノズルプレート表面に付着しやすい。その結果、ノズルプレート表面に付着したインクが用紙に垂れて画像を汚したり、ノズルプレート表面に付着したインクがインクの吐出を妨げたりするという問題点を備えていた。
また、油性インクを用いたインクジェット印刷装置は、定期的にヘッドクリーニング動作が行われるように設計されている。このヘッドクリーニング動作は、ノズルからインクを吐出させる加圧パージと、ノズルプレートのワイピングから構成される。
上記のようなノズルプレート表面に付着しやすいインクを用いた場合、ノズルプレートのワイピングを行うと、インク中の顔料が研磨剤となり、ノズルプレート表面のフッ素樹脂膜を削り取り、ノズルプレートの撥インク性を永久に低下させてしまう。
特開2007−314651号公報
本発明の目的は、ノズルプレートに対するはじき性に優れ、ノズルプレートの劣化を抑制できる油性インクジェットインクを提供することにある。
本発明者等は、上記目的の下に鋭意研究した結果、特定の高分子化合物によって表面処理されたカプセル型顔料を油性インクジェットインクに色材として含有させることにより、ノズルプレートに対するはじき性に優れ、ノズルプレートの劣化を抑制できる油性インクジェットインクが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、高分子化合物によって表面処理されたカプセル型顔料および溶剤を少なくとも含んでなる油性インクジェットインクであって、前記高分子化合物は、α値5〜60の化合物が側鎖として付加され、かつ、前記溶剤に混和性の櫛形ポリウレタン化合物であることを特徴とする油性インクジェットインクが提供される。
本発明によれば、油性インクジェットインクに含有させる色材として、α値5〜60の化合物が側鎖として付加され、かつ、該インクの溶剤に混和性の櫛形ポリウレタン化合物よって表面処理されたカプセル型顔料を使用することとしたため、ノズルプレートに対するインクのはじき性を向上させることができ、ノズルプレートの劣化を抑制できる。
実施例におけるノズルプレートに対する濡れ評価の方法を示す縦断面図である。
以下、本発明を更に詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」及び「(メタ)アクリレート」はそれぞれ「アクリル及び/又はメタアクリル」及び「アクリレート及び/又はメタアクリレート」を意味する。
本発明のインクジェットインクは、顔料及び溶剤から少なくとも構成され、必要に応じて、顔料分散剤や、その他の添加剤を含有することができる。
本発明で使用する溶剤は、油性インクのビヒクルとして使用可能なものであれば特に限定されず、極性有機溶剤であっても非極性有機溶剤であってもよい。本発明で使用する溶剤は、一種単独から構成されてもよく、または、単一の相を形成する限り2種以上の異なる溶剤から構成されてもよい。
本発明で使用する溶剤は、20〜60重量%の非極性有機溶剤と80〜40重量%の極性有機溶剤とから構成することが好ましく、25〜55重量%の非極性有機溶剤と75〜45重量%の極性有機溶剤とから構成することがより好ましく、30〜50重量%の非極性有機溶剤と70〜50重量%の極性有機溶剤とから構成することが特に好ましい。
非極性有機溶剤としては、ナフテン系、パラフィン系、イソパラフィン系等の石油系炭化水素溶剤を使用でき、具体的には、エクソンモービル社製「アイソパー、エクソール」(いずれも商品名)、新日本石油社製「AFソルベント」(商品名)、サン石油社製「サンセン、サンパー」(いずれも商品名)等が挙げられる。これらの非極性有機溶剤は、単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
極性有機溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、脂肪酸系溶剤、グリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。
脂肪酸エステル系溶剤としては、例えば、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、イソパルミチン酸イソオクチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2−オクチルドデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2エチルヘキサン酸グリセリルなどが挙げられる。
高級アルコール系溶剤としては、例えば、炭素数6以上のアルコール類が挙げられ、好ましくは炭素数12以上のアルコール類が挙げられる。好ましい高級アルコール系溶剤としては、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどが挙げられる。
脂肪酸系溶剤としては、炭素数9以上の脂肪酸、好ましくは炭素数12以上の高級脂肪酸が挙げられる。かかる脂肪酸の具体例としては、イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルなどが挙げられる。
これらの極性有機溶剤は、単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。本発明において好ましい極性有機溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤が挙げられる。
本発明で使用される顔料としては、有機顔料、無機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、カーボンブラック、カドミウムレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料などが好適に使用できる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、適宜組み合わせて使用してもよい。
本発明において、上記顔料は、特定の高分子化合物によって表面処理したカプセル型顔料の形態で用いられる。上記特定の高分子化合物としては、α値5〜60の化合物が側鎖として付加された櫛形ポリウレタン化合物であって、インクに使用される溶剤に混和性のものが用いられる。
このような櫛形ポリウレタン化合物としては、例えば、ポリウレタン化合物からなる主鎖と、前記主鎖にグラフト重合したα値5〜60の化合物からなる側鎖とを含んでなる化合物が挙げられる。ここにおいて、ポリウレタン化合物は、多価アルコールと多価イソシアネートとを反応させて得られたものが挙げられる。
櫛形ポリウレタン化合物の好ましい具体例としては、下記式(1)に示されるような、側鎖(R)を備えた2価アルコール(-O-(XR)-O-)と2価イソシアネート(-CONH-Y-NHCO-)とが交互に配列したポリウレタン構造を備えた化合物が挙げられる。
Figure 2011057812
式(1)において、Xは3価の基を示し、Yは2価の基を示し、Rはα値5〜60の基を示す。
上記式(1)の櫛形ポリウレタン化合物は、2価アルコールと2価イソシアネートとを反応させることにより製造することができる。
2価アルコールは、好ましくは2価のアミノアルコールであり、より好ましくは下記式(2)で表わされるジアルカノールアミンである。
Figure 2011057812
式(2)において、Rはα値5〜60の基を示し、lは1〜4の整数、mは1〜4の整数である。
2価アルコール(-O-(XR)-O-)がジアルカノールアミンの場合、前記側鎖(R)を、該ジアルカノールアミンの窒素原子を介して主鎖に結合させることができる点で好都合である。例えば、下記式(3)で示すように、α,β−不飽和カルボニル化合物(例えば、式C=C-COO-Rの化合物)をマイケル付加反応により、ジアルカノールアミンの窒素原子にグラフト重合させることができる。このマイケル付加反応による側鎖(R)の導入は、通常、重合前の時点でジアルカノールアミン単量体に対して行われるが、重合後の時点でポリウレタン化合物に含まれるジアルカノールアミンに対して行ってもよい。
Figure 2011057812
α,β−不飽和カルボニル化合物(例えば、式C=C-COO-Rの化合物)は、好ましくはα値5〜60の(メタ)アクリル酸エステルであり、より好ましくはα値5〜60のアルキル(メタ)アクリレート、アルキル基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートまたはアルキルアリール基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートである。アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18 のアルキルエステルが挙げられる。アルキル基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリエチレングリコールの平均重合度は2〜12モル)、ラウロキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリエチレングリコールの平均重合度は2〜12モル)などが挙げられる。アルキルアリール基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート(ポリプロピレングリコールの平均重合度は2〜20モル)などが挙げられる。
なお、櫛形ポリウレタン化合物の側鎖のα値は、原料であるα,β−不飽和カルボニル化合物のα値と同等である。側鎖のα値は、好ましくは15〜60であり、より好ましくは40〜60である。α値が低すぎると櫛形ポリウレタン化合物がインク溶剤とりわけ非極性のインク溶剤に対して溶解し易くなるので、カプセル型顔料の形態が維持できず、インクのノズルプレートに対するはじき性が改善されない。α値が高すぎると櫛形ポリウレタン化合物がインク溶剤とりわけ非極性のインク溶剤に対する混和性が低下して顔料が凝集し易くなるので、インクのノズルプレートに対するはじき性が改善されない。
なお、α値とは、tanα=(無機性値/有機性値)で与えられるαの値である。ここで、「有機性値」及び「無機性値」は、藤田穆により提案された「有機概念図」において用いられている概念に基づくものであり、有機化合物をその炭素領域の共有結合連鎖に起因する「有機性」と置換基(官能基)に存在する静電性の影響による「無機性」との2因子に分けてそれぞれを数値化したものであり、個々の化合物の構造等から求められる値である。したがって、α値は、化合物の「有機性」と「無機性」のバランスを定量的に示すものである。なお、「有機概念図」に関連する事項は、藤田穆著「系統的有機定性分析(混合物編)」風間書房(1974)等に詳述されている。
上記式(1)で示される櫛形ポリウレタン化合物がインク溶剤中で結晶化するのを防止しインク溶剤に混和性にするために、上記式(1)の2価アルコール(-O-(XR)-O-)を、側鎖(R)を備えないその他の2価アルコール(-O-X-O-)で一部置き換えることができる。かかるその他の2価アルコール(-O-X-O-)としては、例えば、分岐鎖を有するアルキレングリコールが挙げられる。かかるアルキレングリコールは、上記2価アルコールとしてアルキレングリコール、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量400〜900のポリプロピレングリコールなどを使用することにより導入することができる。
上記式(1)で示される櫛形ポリウレタン化合物は、ジアルカノールアミン及びその他の2価アルコールを25:75〜75:25のモル比(ジアルカノールアミン:その他の2価アルコール)で含有することが好ましい。
2価イソシアネートは、通常のポリウレタンに使用されているものであれば特に制限されず、例えば、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソフォロンジイソシアナート、メタキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどが挙げられる。
上記式(1)の櫛形ポリウレタン化合物は、上記2価アルコールと上記2価イソシアネートとをメチルエチルケトンのような低沸点の非プロトン性溶媒中で反応させることにより製造することができる。反応に際し、上記2価アルコールと上記2価イソシアネートは、通常0.95〜1.05のモル比(2価アルコール:2価イソシアネート)で用いられ、未反応原料が残るのを防止するためには、0.98〜1.02のモル比(2価アルコール:2価イソシアネート)で用いることが好ましい。
本発明で使用する櫛形ポリウレタン化合物の質量平均分子量(GPC法、標準ポリスチレン換算)は、5000〜30000 であることが好ましい。該化合物の質量平均分子量が5000より低い場合は、該化合物がインク溶剤中に浮遊してカプセル顔料を維持できないおそれがある。該化合物の質量平均分子量が30000よりも高い場合は、インク粘度が高くなりすぎるおそれがある。
本発明で使用するカプセル型顔料は、メチルエチルケトンのような低沸点の非プロトン性溶剤に溶解した上記櫛形ポリウレタン化合物を、インク用の高沸点溶剤及び顔料と混合し、ビーズミルなどの分散機で分散させた後、低沸点溶剤を揮発させることにより製造することができる。この時、櫛形ポリウレタン化合物、顔料及び高沸点溶剤の使用割合は、
顔料に対して櫛型ポリウレタン化合物は重量比で0.01〜10が好ましい。高沸点溶剤の使用割合は顔料に対して重量比で3〜100が好ましい。低沸点の非プロトン性溶剤は櫛型ポリウレタン化合物が前記高沸点溶剤と調合した時に凝集などが起こらないように十分な量が必要である。好ましい低沸点の非プロトン性溶剤の使用量は櫛型ポリウレタン化合物に対して重量比で1〜15である。
かくして得られたカプセル型顔料は、顔料表面が上記櫛形ポリウレタン化合物によって被覆されており、上記櫛形ポリウレタン化合物は、α値5〜60の化合物からなる側鎖を外側に配向させているため、ノズルプレートに対するはじき性に優れるものと考えられる。
カプセル型顔料は、インク全量に対して1〜15重量%の範囲で含有されることが好ましい。
本発明のインクは、カプセル型顔料の分散を安定化させるために、顔料分散剤を含有してもよい。かかる顔料分散剤としては、カプセル型顔料を溶剤中に安定して分散させるものであれば特に限定されず、従来公知の顔料分散剤を使用できるが、そのうち、ポリエステル鎖からなる側鎖を複数備える櫛形構造のポリアミド系分散剤が好ましく使用される。ポリエステル鎖からなる側鎖を複数備える櫛形構造のポリアミド系分散剤とは、ポリエチレンイミンのような多数の窒素原子を含有する主鎖を備え、かつ、該窒素原子を介してアミド結合した側鎖を複数備える化合物であって、該側鎖がポリエステル鎖であるものをいい、例えば、特開平5−177123号公報(米国特許第4,645,611号明細書)に開示されているような、ポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミンからなる主鎖を備え、これに3〜80個のカルボニル―C3〜C6―アルキレンオキシ基を含有するポリ(カルボニル―C3〜C6―アルキレンオキシ)鎖がアミド架橋によって側鎖として結合している構造の分散剤が挙げられる。なお、かかる櫛形構造のポリアミド系分散剤は、日本ルーブリゾール社製ソルスパース11200、ソルスパース28000(何れも商品名)などの市販品として入手可能である。
上記分散剤の含有量は、上記顔料を十分にインク中に分散可能な量であれば足り、適宜設定できる。
尚、本発明のインクジェットインクには、インクのノズルプレートに対するはじき性などに影響を与えない限り、上記の溶剤、カプセル型顔料、顔料分散剤に加えて、例えば、染料、防腐剤等を添加できる。
本発明のインクジェットインクは、例えばビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。具体的には、予め溶剤の一部と顔料及び分散剤の全量を均一に混合させた混合液を調製して分散機にて分散させた後、この分散液に残りの成分を添加してろ過機を通すことにより調製することができる。
このようにして得られる本発明のインクジェットインクの25℃における粘度は、インクジェットヘッドノズルからの吐出に適した5〜30mPa・sの範囲に設定することが好ましく、7〜14mPa・sの範囲に設定することがより好ましい。また、保存環境によってインクが凍結しないように、インクの凝固点は−5℃以下とするのが好ましい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
製造例1(ジオールの合成)
300mLの四つ口フラスコにジエタノールアミン(分子量(MW)105.1)10.51gを仕込み、窒素ガスを通気し攪拌しながら、110℃まで昇温した。メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数9モル、分子量(MW)482.0)48.20gを30分かけて滴下した。110℃に2時間保ちマイケル付加反応を完結させた。冷却した後、メチルエチルケトン58.71gを加えて希釈して、固形分49.8重量%のジオール溶液1を得た。
表1に示す成分を使用した以外、ジオール溶液1と同様の方法で、ジオール溶液2〜4を得た。なお、表1中、各成分の配合量は重量%で示してあり、α値は使用したα,β−不飽和カルボニル化合物のものである。
Figure 2011057812
製造例2(櫛形ポリウレタン化合物の合成)
300mLの四つ口フラスコに、製造例1で得られたジオール溶液1 117.42gと、他のジオール成分としてプロピレングリコール7.60gを仕込み、ジブチル錫ジラウレートを0.15g添加し、窒素ガスを通気し攪拌しながら、78℃まで昇温した。そして、タケネート 600(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、三井化学ポリウレタン(株)製)38.84gとメチルエチルケトン99.22gとの混合物を30分かけて滴下した。滴下後、温度78℃から80℃の還流下で24時間反応させた後、冷却して、固形分40.3重量%の樹脂溶液1を得た。質量平均分子量(GPC法、標準ポリスチレン換算)は、11200であった。
表2に示す成分を使用した以外、樹脂溶液1と同様の方法で、樹脂溶液2〜4、6及び7を作成した。なお、表2中の各成分の配合量は重量%で示してある。
Figure 2011057812
製造例3(アクリル系アニオン性樹脂の合成、カプセル型顔料の製造)
攪拌装置、滴下装置、温度センサー、および上部に窒素導入装置を有する還流装置を取り付けた反応容器を有する自動重合反応装置(重合試験機DSL−2AS型、轟産業(株)製)の反応容器にMEK(2−ブタノン)1000部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸2−ヒドロキシエチル150部、スチレン200部、メタクリル酸92.1部、メタクリル酸ブチル370.1部、アクリル酸ブチル157.8部、メタクリル酸グリシジル30.0部、ブレンマーTGL(重合度調整剤)40.0部およびパーブチル(登録商標)O(重合開始剤。いずれも日本油脂(株)製)100.0部の混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で7時間反応を継続させて、酸価60、重量平均分子量5,900、不揮発分46.32%の共重合体のMEK溶液を得た。このアクリル系アニオン性樹脂の溶液を樹脂溶液5とした。そして、冷却用ジャケットを備えた混合槽に、上記共重合体263部、25%水酸化カリウム水溶液30部、水及びカーボンブラックMA11三菱化学(株)製250部、水1064部を仕込み、攪拌、混合した。ここでそれぞれの仕込み量は、共重合体は顔料に対して不揮発分で50%の比率となる量、25%水酸化カリウム水溶液はスチレン−アクリル系共重合体の酸価が100%中和される量である。
混合液を直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置〔SCミルSC100/32型、三井鉱山(株)製〕に通し、循環方式により4時間分散した。分散装置の回転数は2700回転/分とし、冷却用ジャケットには冷水を通して分散液温度が40℃以下に保たれる様にした。分散終了後、混合槽より分散原液を抜き採り、次いで水10,000部で混合槽及び分散装置流路を洗浄し、分散原液と合わせて希釈分散液を得た。希釈分散液をガラス製蒸留装置に入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を常圧蒸留で除いた。
メチルエチルケトンの除かれた分散液を冷却し、その後、攪拌しながら10%塩酸を滴下してpH4.5に調整したのち、固形分をヌッチェ式濾過装置で濾過、水洗した。ケーキを容器に採り、50℃、<0.01mmHgの条件下真空乾燥した。得られた固形物を乳鉢で粉砕して、カプセル型顔料を製造した。このカプセル型顔料を表3中のMC5(対照)とした。
表3に示すように、得られたカプセル型顔料MC5 11.0g、顔料分散剤(ルーブリゾール社製顔料分散剤ソルスパース28000)5.0g、オレイン酸メチル 34.0gを混合し、ジルコニアビーズ(直径0.5mm)を入れて、ロッキングミル((株)セイワ技研製)により、67.50Hzで120分間分散した。分散後ジルコニアビーズを除去し、得られた分散体を冷却し、攪拌しながら、超音波ホモジナイザー(SONIC&MATERIALS、INC.製、VC750)を用いて10分間超音波を照射した。かくして、カプセル型顔料を含む顔料分散液5を得た。
製造例4(カプセル型顔料の製造)
上記製造例2で得られた樹脂溶液1 2.5gと顔料(カーボンブラック、三菱化学(株)製MA11)10.0g、顔料分散剤(ルーブリゾール社製顔料分散剤ソルスパース28000)5.0g、オレイン酸メチル 34.0g、メチルエチルケトン10.0gを混合し、ジルコニアビーズ(直径0.5mm)を入れて、ロッキングミル((株)セイワ技研製)により、67.50Hzで120分間分散した。分散後ジルコニアビーズを除去し、エバポレータを用いて、加熱および減圧をしながら分散体の低沸点溶剤(メチルエチルケトン)の脱溶剤を行った。続いて、得られた分散体を冷却し、攪拌しながら、超音波ホモジナイザー(SONIC&MATERIALS、INC.製、VC750)を用いて10分間超音波を照射した。かくして、カプセル型顔料を含む顔料分散液MC1を得た。
表3に示す成分を用いた以外は同様にしてMC2〜MC4、MC6、MC7を製造した。なお、表3中の各成分の配合量は重量%で示してある。
製造例5(非カプセル型顔料分散液の製造)
表3に示すように、三菱化学(株)製顔料MA11 10.0g、顔料分散剤(ルーブリゾール社製顔料分散剤ソルスパース28000)5.0g、オレイン酸メチル 35.0gを混合し、ジルコニアビーズ(直径0.5mm)を入れて、ロッキングミル((株)セイワ技研製)により、67.50Hzで120分間分散した。分散後ジルコニアビーズを除去し、得られた分散体を冷却し、攪拌しながら、超音波ホモジナイザー(SONIC&MATERIALS、INC.製、VC750)を用いて10分間超音波を照射した。かくして、非カプセル型顔料を含む顔料分散液8を得た。
Figure 2011057812
尚、表3記載の原材料の記号は、以下の通りである。
MA11(商品名):三菱化学社製カーボンブラック(窒素吸着比表面積 92m2/g、DBP吸収量 64cm3/100g)。
S28000:ルーブリゾール社製顔料分散剤ソルスパース28000(商品名)。
実施例1〜4、比較例1〜4
表4に示す顔料分散液50.0gを、表4に示す溶剤で希釈して、十分に攪拌した。3.0μmおよび0.8μmのメンブランフィルターで順に濾過してゴミおよび粗大粒子を取り除きインクジェットインク(顔料分10重量%)を得た。なお、表4中の各成分の配合量は重量%で示してある。
上記実施例及び比較例でそれぞれ得られたインクジェットインクについて、以下の方法により評価を行った。これらの評価結果を表4に示した。
(1)ノズルプレートに対する濡れ性の評価
図1に示すように、インクジェットインク1を30ml容器2に入れ、インクジェットプリンター「HC5500」(商品名:理想科学工業(株)製)に使用されるノズルプレート3(長さ5cm、幅5mm)の片端をピンセット4でつまみ、もう一方の片端2cmをインクに浸漬させた。その後、ノズルプレートを素早く引き上げ、ノズルプレート上に残ったインク膜がインク滴になるまでの時間を10回測定し、その平均値を算出し、撥インク時間とし、下記基準で評価した。なお、使用したノズルプレートは、ポリイミドフィルムを基材とし、その表面をフッ素加工したものであった。
評価基準:
◎:撥インク時間 1秒未満、
○:撥インク時間 1秒以上、3秒未満、
△:撥インク時間 3秒以上、4秒未満、
×:撥インク時間 4秒以上。
(2)ワイピング耐久性の評価
インクジェットプリンター「HC5500」(商品名:理想科学工業(株)製)を用いて、ヘッドメンテナンスのノーマルクリーニングにより、ヘッドクリーニングを1000回実施し、ワイピングブレードが接した部分の撥インク性を目視評価した。
評価基準:
◎ :ワイピングブレードが接した全ての部分の撥インク性が保たれている。試験後、即座にインクが完全にはじかれる。
○ :ワイピングブレードが接した全ての部分の撥インク性が保たれている。試験後、インクが完全にはじかれるまで数秒かかる。
△:ワイピングブレードが接した一部分の撥インク性が低下している。
×:ワイピングブレードが接した全ての部分の撥インク性が低下している。
(3)インク粘度の評価
インクの粘度は、インク中の顔料濃度が10重量%での粘度である。25℃において0.1Pa/sの速度で剪断応力を0Paから増加させたときの10Paにおける粘度であり、TAインスツルメント社製レオメータAR−G2(コーン角度2°、直径40mm)で測定した。
Figure 2011057812
尚、表4記載の原材料の記号は、以下の通りである。
AF−7(商品名):新日本石油社製石油系炭化水素溶剤。
表4の結果から、次のことがわかる。
実施例1〜4の油性インクジェットインクは、α値5〜60の化合物を側鎖として備える櫛形ポリウレタン化合物によって表面処理されたカプセル型顔料を含有するので、ノズルプレートに対するはじき性及びワイピング耐久性が何れも向上した。
これに対し、比較例1は、特開2007−314651号公報に記載の(メタ)アクリル酸系共重合物によって表面処理されたカプセル型顔料を含有するので、ノズルプレートに対するはじき性及びワイピング耐久性の何れもが劣っていた。
比較例2は、ジオール成分としてエチレングリコールを含有する櫛形ポリウレタン化合物を用いた例であり、インク溶剤中で結晶化したため、インクを作成できなかった。
比較例3は、側鎖を備えない非櫛形ポリウレタン化合物を用いた例であり、ノズルプレートに対するはじき性及びワイピング耐久性の何れもが劣っていた。
比較例4は、カプセル化されていない顔料を用いた例であり、ノズルプレートに対するはじき性及びワイピング耐久性の何れもが劣っていた。
本発明の油性インクジェットインクは、ノズルプレートに対するはじき性が良好なため、ノズルプレートの劣化を抑制できるので、インクジェット印刷の分野で利用できる。
1…インクジェットインク、2…容器、3…ノズルプレート、4…ピンセット。

Claims (8)

  1. 高分子化合物によって表面処理されたカプセル型顔料および溶剤を少なくとも含んでなる油性インクジェットインクであって、前記高分子化合物は、α値5〜60の化合物が側鎖として付加され、かつ、前記溶剤に混和性の櫛形ポリウレタン化合物であることを特徴とする油性インクジェットインク。
  2. 前記高分子化合物は、主鎖として、2価アルコールと2価イソシアネートとが交互に配列したポリウレタン構造を備え、前記2価アルコールとして、少なくともジアルカノールアミンを備え、前記側鎖は、該ジアルカノールアミンの窒素原子を介して前記主鎖に結合している請求項1に記載の油性インクジェットインク。
  3. 前記2価アルコールとして、α,β−不飽和カルボニル化合物がマイケル付加したジアルカノールアミンを少なくとも備えてなる請求項2に記載の油性インクジェットインク。
  4. 前記α,β−不飽和カルボニル化合物は、α値5〜60の(メタ)アクリル酸エステルである請求項3に記載の油性インクジェットインク。
  5. 前記(メタ)アクリル酸エステルは、アルキル(メタ)アクリレートまたはアルキル基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートである請求項4に記載の油性インクジェットインク。
  6. 前記2価アルコールは、ジアルカノールアミン及びその他の2価アルコールを25:75〜75:25のモル比(ジアルカノールアミン:その他の2価アルコール)で含有してなる請求項2に記載の油性インクジェットインク。
  7. 前記その他の2価アルコールは、分岐鎖を有するアルキレングリコールである請求項6に記載の油性インクジェットインク。
  8. 前記分岐鎖を有するアルキレングリコールは、プロピレングリコールである請求項7に記載の油性インクジェットインク。
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