JP2011053107A - 光学部材上の被膜の評価方法およびそれを用いる光学部材の製造方法 - Google Patents

光学部材上の被膜の評価方法およびそれを用いる光学部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光学部材の最外層に位置する被膜の表面性を高い信頼性をもって機械的に評価するための手段を提供すること。
【解決手段】光学部材の最外層に位置する被膜の表面性を評価する方法。走査型プローブ顕微鏡の深針を、上記被膜の表面上で走査することにより、上記被膜の粘弾性特性を測定すること、および、測定された粘弾性特性に基づき前記被膜の表面性を評価すること、を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、レンズ等の光学部材の最外層に位置する被膜の表面性を評価するために好適な評価方法に関する。更に本発明は、前記評価方法を使用して品質評価を行ったうえで製品として出荷する光学部材を決定することを含む、光学部材の製造方法に関する。
レンズ等の光学部材の表面に所望の性能を付与するために、光学部材の最表面に各種機能性膜を形成することが行われている。例えば特許文献1には、光学部材表面に撥水性を付与するために蒸着膜(撥水膜)を形成することが提案されている。
特許文献1に記載の撥水膜等の光学部材最表面に形成される蒸着膜には、光学部材に所望の表面性(例えば撥水性)を付与することに加え、実用上、滑り感が良好であることが求められる。特に眼鏡用プラスチックレンズは、レンズに付着した指紋、皮脂、その他汚れを頻繁に拭き取る必要があり、滑り感の良好なレンズが望まれている。なお、良好な滑り感とは、布等で拭いたときに抵抗が少なくスムーズに拭き取りを行うことができることをいう。この滑り感は、通常、実際に人の手で拭き取りを行い評価されているが、簡便に信頼性の高い評価を行うためには機械的に定性的ないしは定量的に評価をすることが望まれる。
表面性を機械的かつ定量的に評価できる指標の1つとしては、動摩擦係数が知られている。しかし、動摩擦係数と感覚的評価での滑り感の評価結果との間には明確な相関性が見られないことがあり、動摩擦係数が同程度であっても滑り感が大きく違う場合があった。
これに対し本願出願人は、上記感覚的評価に代わる方法として、原子間力顕微鏡の探針を蒸着膜表面上で振動させながら測定される位相変化に基づき滑り感等の蒸着膜の表面性を評価する方法を提案し、先に特許出願した(特許文献2参照)。
国際公開第2008/038782号 特開2008−256373号公報
上記特許文献2に記載の方法は、滑り感等の従来感覚的に評価されていた被膜の表面性を機械的に評価することを可能にする優れた方法であるが、光学部材最外層に位置する被膜の表面性をよりいっそう高い信頼性をもって評価し得る新たな方法を見出すことができれば、より高品質な光学部材を製品として出荷することが可能となる。
そこで本発明の目的は、光学部材の最外層に位置する被膜の表面性を高い信頼性をもって機械的に評価するための手段を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、走査型プローブ顕微鏡により測定される粘弾性特性と光学部材最外層の被膜の表面性との間に、きわめて良好な相関関係が存在することを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]光学部材の最外層に位置する被膜の表面性を評価する方法であって、
走査型プローブ顕微鏡の深針を、上記被膜の表面上で走査することにより、上記被膜の粘弾性特性を測定すること、および、
測定された粘弾性特性に基づき前記被膜の表面性を評価すること、
を含む、前記方法。
[2]前記粘弾性特性の測定を、前記探針を、前記被膜の表面上で該被膜に対して相対的に振動させながら走査することにより行う[1]に記載の方法。
[3]前記評価される表面性は、前記被膜表面の滑り感である[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記走査型プローブ顕微鏡は、原子間力顕微鏡である[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記粘弾性特性として粘弾性分布を測定し、測定された粘弾性分布のばらつきが小さいほど表面性が良好と評価する、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記被膜は、フッ素系有機化合物を含有する被膜である[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]複数の基材上に被膜を形成することにより、最外層に被膜を有する光学部材を複数製造する工程と、
製造された複数の光学部材の少なくとも1つについて、該光学部材が有する被膜を[1]〜[5]のいずれかに記載の方法により評価する工程と、
評価結果に基づき製品として出荷する光学部材を決定する工程と、
を含む光学部材の製造方法。
[8]前記被膜として、フッ素系有機化合物を含有する被膜を形成する[7]に記載の製造方法。
本発明によれば、光学部材最外層の被膜の表面性を高い信頼性をもって評価することができる。更にこの評価結果に基づき出荷する製品を決定することにより、高品質な製品を提供することができる。特に眼鏡用プラスチックレンズのように良好な滑り感が求められる光学部材において、本発明の適用が効果的である。
試料の粘弾性特性を測定可能な走査型プローブ顕微鏡の一部概略図である。 粘弾性特性の測定結果の一例を示す。 実施例で使用した耐久性試験装置の概略図である。
本発明は、光学部材の最外層に位置する被膜の表面性を評価する方法(以下、「本発明の評価方法」という)に関する。本発明の評価方法は、走査型プローブ顕微鏡の深針を、上記被膜の表面上で走査することにより、上記被膜の粘弾性特性を測定すること、および、測定された粘弾性特性に基づき前記被膜の表面性を評価すること、を含む。
以下、本発明の評価方法について、更に詳細に説明する。
本発明の評価方法では、走査型プローブ顕微鏡を使用する。走査型プローブ顕微鏡(SPM)とは、探針と試料とを接近ないしは接触させた状態で探針を試料に対して相対的に走査する際に、探針から試料へ局所的刺激を発生させ、その刺激に対する試料からの局所的応答を測定することによって、試料の表面を観察する顕微鏡である。SPMとしては、その物理量の測定方法の違いから、探針と試料間に流れる電流を検出する走査型トンネル顕微鏡(STM)、試料表面と探針との間に働く力(例えば原子間力、吸着力)等を検出する原子間力顕微鏡(AFM)、試料表面の磁気分布を測定する磁気力顕微鏡(MFM)など、試料表面の摩擦力、粘性、弾性、電位等を測定する各種の顕微鏡が実用化されている。本発明は、一般に「粘弾性モード」と呼ばれるモードを有し、プローブ先端の深針を評価対象となる被膜の表面上で走査することにより、上記被膜の粘弾性特性を測定することができる走査型プローブ顕微鏡であれば、何ら制限なく使用することができる。好ましい走査型プローブ顕微鏡としては、一般にマイクロ粘弾性顕微鏡(Micro-Elasticity Atomic Force Microscope;VE−AFM)と呼ばれ、カンチレバーのたわみ振動から粘弾性特性を画像化することが可能な原子間力顕微鏡を挙げることができる。粘弾性特性の測定のためには、走査型プローブ顕微鏡の探針を試料表面上で該表面に対して相対的に振動させながら走査させることが好ましい。
以下、走査型プローブ顕微鏡による粘弾性特性の測定方法について説明する。
図1に、試料の粘弾性を測定可能な走査型プローブ顕微鏡の一部概略図を示し、図2に測定結果の一例を示す。図1に示す走査型プローブ顕微鏡は、カンチレバー1の先端に探針2を有し、この探針2は試料3(被膜を有する光学部材)と連続的ないしは断続的に接触可能である。試料3は試料台4の上に設置されている。試料台4は試料移動手段5に設置されている。試料移動手段5は上下方向の動作と平面方向の動作が可能である。この試料移動手段5の上下動作をモジュレーション入力6として利用し、カンチレバー1の先端の探針2の試料表面(被膜表面)への押し付け、離す動作を繰り返すことにより試料表面に対して相対的に振動させることができる。または、探針を試料表面に対して相対的に振動させる手段として、カンチレバー側に設置した振動手段10を利用し、カンチレバーの上下動作をモジュレーション入力として利用することもできる。更には試料移動手段5と振動手段10とを併用することも可能である。カンチレバー1にはレーザ7が照射されていて反射光は変位検出手段8に到達する。変位検出手段の到達位置によりカンチレバーの変位(たわみ振動)が出力信号9として得られる。
図2に示すように、モジュレーション入力6には一般に正弦波が利用され、出力信号9の波形はモジュレーション6による入力波形に対して時間的に遅れる特性となる。時間的遅れの大きさは、試料3の粘弾性特性を示す値となる。または、モジュレーション入力6の振幅をA0、出力信号9の振幅をA1とすると、A1の大きさが粘弾性特性を示す値となる。
実際の信号処理では、入力波形に対する出力波形の時間的遅れは、ロックインアンプなどによりAcos信号、Asin信号に分離して取り込まれる。ここで振幅Aは振幅A1である。各信号を画像化することにより弾性成分像、粘性成分像を得ることができる。Acos像が弾性成分像、Asin像が粘性成分像となる。両画像を重ね合わせることにより試料表面の粘弾性分布を示す粘弾性像を得ることができる。粘弾性像は、例えば、原子間力顕微鏡の粘弾性モードで、探針を振動させながら表面上を走査した結果に基づき解析ソフトが作成するものである。硬い領域は、弾性像で明るく、粘性像では暗くなる。逆に柔らかい領域は、弾性像で暗く、粘性像では明るくなる。したがって粘弾性像の分布が不均一であるということは、この領域の中で、弾性および/または粘性のバラツキがあることを示している。本願発明者らの検討により、こうして測定される粘弾性分布のバラツキと光学部材表面の被膜の表面性との間、特に滑り感の官能評価の結果との間には、きわめて良好な相関が見られバラツキが小さいほど官能評価で滑り感良好と判定されることが新たに見出された。したがって本発明では、粘弾性分布のばらつきが小さいほど、表面性良好と判定することができる。
なお、上記特許文献2には、原子間力顕微鏡の位相モード(カンチレバー先端の探針を測定面上で振動させ位相変化を測定するモード)により測定される位相変化と蒸着膜の表面性との間に良好な相関関係が見られることを利用し、位相変化の測定結果に基づき蒸着膜の表面性を評価することが提案されているが、この位相変化には、粘弾性、探針と試料表面との吸着力、原子間力、相互作用等の各種要素が含まれている。本願発明者らは、上記位相変化と蒸着膜の表面性との間に良好な相関が見られた理由は、この各種要素の中の粘弾性に依拠するところが大きいと推察している。ただし位相変化には上記の通り、表面性ときわめて良好に相関する粘弾性以外の要素も含まれている。したがって、これら要素を含まない粘弾性特性の評価結果は、被膜表面の表面性との間によりいっそう良好な相関が得られ、評価の信頼性をさらに高めることができると考えられる。
本発明の一態様では、粘弾性像の濃度のバラツキを目視で判定することにより、被膜表面の表面性を評価することができる。また、上記粘弾性分布は電気信号として数値化することができる。最大値(Nmax)と最小値(Nmin)の差が小さいほど、表面の粘弾性のばらつきが少ないことを示す。本発明の一態様では、上記NmaxとNminとの差(Nmax−Nmin)を被膜表面の表面性評価の指標とすることができる。上記値が小さいほど表面性が良好であると判定して絶対値に基づき評価を行うこともできるが、信頼性の高い評価結果を行うためには、予め良否判定基準を設定しておくことが好ましい。例えば、あらかじめいくつかのサンプルについて表面性の官能評価および上記(Nmax−Nmin)の測定を行い、上記(Nmax−Nmin)の値がいくつ以上であれば表面性良好と判定するかを定めた良否判定基準を設定しておくことが好ましい。そして設定された良否判定基準に基づき評価を行えば、官能評価を行うことなく滑り感を評価することが可能となる。
また、前記評価は、粘弾性分布を示すヒストグラムに基づき行うこともできる。この場合も上記同様NmaxとNminとの差(Pmax−Pmin)を表面性評価の指標とすることができる。なお、評価指標は、粘弾性分布に基づくものであればよく、例えば分散、標準偏差、四分位範囲なども、同様に被膜表面性の評価の指標、好ましくは滑り感の評価の指標として用いることができる。
更に本発明では、上記粘弾性特性による評価結果とともに走査型プローブ顕微鏡による摩擦特性の測定結果を利用することもできる。探針を試料表面と接触させた状態で、試料表面および/または探針を水平方向に相対的に移動させると、カンチレバーが試料との摩擦によりねじれることによりねじれ変位が発生する。このねじれ変位が大きいほど摩擦力が大きく、小さいほど摩擦力が小さい。この摩擦力(ねじれ変位)の分布が不均一であるということは、測定領域中で、摩擦力のバラツキがあることを示している。したがって上記粘弾性分布と同様、画像化ないしは数値化した摩擦力分布の測定結果に基づき、ばらつきが小さいほど表面性が良好であると判定することができる。
ただし、本願発明者らが検討した結果、粘弾性分布および滑り感では差が見られる複数の試料であっても摩擦力分布では差が見られない場合があることが明らかになった。これは摩擦力分布を測定するダイナミックレンジが粘弾性分布を測定するダイナミックレンジと比べて狭いことに起因すると推察される。したがって、本発明では摩擦力特性の測定結果は、例えば粘弾性特性による評価結果の信頼性を高めるために併用する手段として用いることが好ましい。
以上説明した粘弾性特性の測定および摩擦特性の測定については、例えば特開2003−139677号公報、特開2003−227789号公報等を参照することができる。粘弾性特性の測定は、一般にタッピングモードと呼ばれる、試料表面上で探針を上下方向に振動させる測定モードによって行うことができる。また、粘弾性特性、摩擦特性の測定とも、一般にコンタクトモードと呼ばれる試料表面と探針を連続的または断続的に接触させる測定モードで行うことができる。また、上記評価が可能な市販の走査型プローブ顕微鏡には通常、粘弾性分布および摩擦力分布を数値化ないしは画像化するための解析ソフトが備えられており、本発明ではこれら解析ソフトを利用することができる。
本発明の方法により評価される被膜の表面性としては、滑り感を挙げることができる。先に説明したように、良好な滑り感とは、布等で拭いたときに抵抗が少なくスムーズに拭き取りを行うことができることをいう。本発明の方法は、機械的に評価することが従来困難であった滑り感を、走査型プローブ顕微鏡によって定量的に評価することができる。
本発明の方法において評価対象となる被膜は、光学部材の最外層に位置する被膜である。上記光学部材としては、眼鏡レンズ、カメラレンズ、ワードプロセッサーのディスプレー等に付設する光学フィルター、自動車の窓ガラス等に用いられる広義の光学部材を挙げることができる。これらは、プラスチック製光学部材であってもよく、無機ガラス製光学部材でもよい。具体的には、プラスチック製レンズ、より具体的には、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンなどのプラスチック製レンズが挙げられる。また、基材と最外層との間に反射防止膜、ハードコート層等の機能性膜を含むこともできる。これらの詳細については、例えば特開2008−256373号公報段落[0054]および[0055]を参照できる。
光学部材(中でも眼鏡レンズ)の最外層に設ける被膜としては、例えば、屈折率1.30〜1.47(好ましくは1.40〜1.45)、膜厚は1〜20nm(好ましくは3〜15nm)のものを挙げることができる。膜厚が3nm以上であれば十分な耐久性や耐摩耗性が得られ、15nm以下であれば曇り等により透過率が下がるおそれがないため好ましい。
光学部材には、無機ないしは有機のフッ素系化合物を含む被膜により、光学部材の最表面に撥水性を付与することが広く行われている。本発明において評価対象として好適な被膜としては、このように撥水性を有する被膜(以下、「撥水膜」ともいう)を挙げることができる。なお本発明において「フッ素系」とはフッ素を含有することを意味する。
上記撥水膜として好適な被膜としては、フッ素系有機化合物を含有する被膜を挙げることができる。フッ素系有機化合物としては、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物が好ましい。また、フッ素系有機化合物を含有する被膜は、フッ素系有機化合物を蒸着することにより形成された蒸着膜であることができる。
上記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物としては、光学部材最表面に優れた撥水性を付与することができるため、下記一般式(I)で表されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物が好ましい。
Figure 2011053107
一般式(I)において、Rfは、式:−(Ck2kO)−(式中、kは1〜6、好ましくは1〜4の範囲の整数であり、該式中の(Ck2kO)の配列はランダムであることが好ましい。)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する二価の基である。なお、一般式(I)中のnおよびn'がいずれも0である場合、一般式(I)中の酸素原子(O)に結合するRf基の末端は、酸素原子ではないことが好ましい。このRf基としては、例えば、下記一般式で示されるものが挙げられる。但し、本発明は下記例示に限定されるものではない。
−CF2CF2O(CF2CF2CF2O)lCF2CF2
(式中、lは1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の範囲の整数である。)
−CF2(OC24p−(OCF2q
(式中、pおよびqは、それぞれ、1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の範囲の整数であり、かつp+qの和は、10〜100、好ましくは20〜90、より好ましくは40〜80の範囲の整数であり、該式中の繰り返し単位(OC24)および(OCF2)の配列はランダムである。)
一般式(I)において、Xは加水分解性基またはハロゲン原子である。Xで表される加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基;アリロキシ基、イソプロペノキシ等のアルケニルオキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、シクロペンタノキシム基、シクロヘキサノキシム基等のケトオキシム基;N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基;N,N−ジメチルアミノオキシ基、N,N−ジエチルアミノオキシ基等のアミノオキシ基等を挙げることができる。
また、Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
これらの中で、メトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基および塩素原子が好適である。
一般式(I)において、Rは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Rが複数存在する場合には、Rは互いに同一でも異なってもよい。Rの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基等が挙げられる。これらの中でも炭素原子数1〜3の一価炭化水素基が好ましく、特にメチル基が好適である。
一般式(I)において、nおよびn'はそれぞれ独立に0〜2の範囲の整数であり、好ましくは1である。nとn'は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、mおよびm'はそれぞれ独立に1〜5の整数であり、3であることが好ましい。mとm'は互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(I)において、aおよびbはそれぞれ独立に2または3であり、加水分解および縮合反応性、および被膜の密着性の観点から、3であることが好ましい。
一般式(I)で表されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物(パーフルオロポリアルキレンエーテル変性シラン)の分子量は、特に制限されないが、安定性、取扱い易さ等の点から、数平均分子量で500〜20,000、好ましくは1000〜10,000のものが適当である。
一般式(I)で表されるパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの具体例としては、例えば、下記構造式で示されるものが挙げられる。但し、本発明は下記例示に限定されるものではない。
(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2CF2O(CF2CF2CF2O)lCF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2OCH2CF2CF2O(CF2CF2CF2O)lCF2CF2CH2OCH2CH2CH2SiCH3(OCH32
(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2OCH2CH2CH2SiCH3(OCH32
(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33
(C25O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2OCH2CH2CH2Si(OC253
一般式(I)で表される化合物は、1種単独で使用してもよく2種以上を組合せて使用することもできる。また、上記パーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランと該変性シランの部分加水分解縮合物とを組み合わせて使用することもできる。
一般式(I)で表されるパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランは、溶媒で希釈されたものを用いることが好ましい。使用できる溶媒としては、例えば、フッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤(パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン等)、フッ素変性芳香族炭化水素系溶剤(1,3−ジ(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等)、のフッ素変性エーテル系溶剤(メチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等)、フッ素変性アルキルアミン系溶剤(パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン等)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレン等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせてもよい。これらのなかでも、変性シランの溶解性、濡れ性等の点で、フッ素変性された溶剤が好ましく、特に、1,3−ジ(トリフルオロメチル)ベンゼン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、およびパーフルオロトリブチルアミンが好ましい。
上記一般式(I)で表される化合物をはじめとするフッ素系有機化合物は、潤滑性を付与し滑り感を良好にするために変性シリコーンオイルと併用することが好ましい。このような変性シリコーンオイルは、必要に応じてカップリング剤と併用することにより得られる被膜の耐久性および耐磨耗性を高めることができる。これは変性シリコーンオイルとカップリング剤により複雑な立体構造を有する物質が形成されることに起因すると考えられる。そのような変性シリコーンオイルとしては、下記一般式(III)で表されるシリコーンオイルが好ましく、カップリング剤としては、下記一般式(II)で表されるシラン化合物が好ましい。一般式(I)で表される化合物を一般式(II)で表される化合物および一般式(III)で表される化合物と混合して蒸着材料とした場合、耐久性、耐摩耗性に優れた蒸着膜を得ることができる。これは、一般式(III)で表される変性シリコーンオイルをシランカップリング剤である一般式(II)で表されるシラン化合物により結合させることにより、複雑な立体構造を有した化合物ができるため、蒸着された状態において、一般式(I)で表されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物が、一般式(II)で表されるシラン化合物と一般式(III)で表される変性シリコーンオイルとの反応生成物によって保護されるためではないかと考えられる。
Figure 2011053107
一般式(II)において、R'は有機基であり、炭素数1〜50(好ましくは1〜10)のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)、エポキシエチル基、グリシジル基、アミノ基等が挙げられる。これらは置換されていてもよい。
一般式(II)において、R”はアルキル基であり、炭素数1〜48のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)であることが好ましく、メチル基またはエチル基が更に好ましい。
一般式(II)で表されるシラン化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。但し、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
(C25O)3SiC36NH2、(CH3O)3SiC36NH2、(C25O)4Si、(C25O)3Si-O-Si(OC253
一般式(II)で表されるシラン化合物は、1種単独で使用してもよく2種以上を組合せても使用することができる。一般式(II)で表される化合物は、R'−Si(OR”)3を単独またはSi(OR”)4より多く用いることが好ましい。この場合、変性シリコーンオイルとの反応物がより複雑な立体構造になり、耐久性や耐摩耗性を向上できる。
Figure 2011053107
一般式(III)において、cは1以上の整数であり、1〜60であることが好ましく、より好ましくは1〜10である。
一般式(III)において、X1〜X6は、それぞれ独立に有機基であり、その具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)、エポキシエチル基、グリシジル基、アミノ基、カルボキシル基等が挙げられる。これらは置換されていてもよい。一般式(III)において、X1およびX5ならびに/またはX2およびX4はメチル基を有する。
一般式(III)で表される化合物は、1種単独で使用してもよく2種以上を組合せて使用してもよい。
一般式(III)で表される変性シリコーンオイルの具体例としては、例えば、下記構造式で示されるものが挙げられる。但し、本発明は下記例示に限定されるものではない。
Figure 2011053107
[(a)および(b)の有機基におけるR1は、アルキレン基(メチレン基、エチレン基、プロピレン基等)等であり、rは1〜20、sは1〜20、tは1〜40の範囲の整数である。]
上記成分を含む蒸着膜をはじめとする各種蒸着膜の形成方法については、国際公開公報第2008/038782号段落[0025]〜[0033]、特開2008−256373号公報段落[0042]〜[0052]を参照できる。ただし本発明の評価対象とされる被膜は蒸着膜に限定されるものではない。スピンコート法、ディップ法等により形成された被膜に対しても本発明の評価方法を用いることができる。
更に本発明は、
複数の基材上に被膜を形成することにより、最外層に被膜を有する光学部材を複数製造する工程(以下、「工程I」という)と、
製造された複数の光学部材の少なくとも1つについて、該光学部材が有する被膜を本発明の評価方法により評価する工程(以下、「工程II」という)と、
評価結果に基づき製品として出荷する光学部材を決定する工程(以下、「工程III」という)と、
を含む光学部材の製造方法、
に関する。
先に説明したように、工程Iにおける被膜形成方法は特に限定されるものではなく、蒸着法、スピンコート法、ディップ法等の公知の成膜方法により被膜を形成することができる。例えば、蒸着装置内では、100個程度の基材に対して同時に蒸着処理を施すことができる。例えば本発明の光学部材の製造方法では、同一装置内で同時に蒸着処理が施された複数の光学部材等、同一ロット内の複数の光学部材の少なくとも1つを工程IIに付す。工程IIに付される光学部材の数は少なくとも1つであればよく、高品質な製品を高い信頼性をもって提供するためには2つ以上の光学部材を工程IIに付すことが好ましい。
工程IIでは、工程Iにおいて評価用試料として選択した光学部材に対して本発明の評価方法による評価を行う。その詳細は先に説明した通りである。
工程IIIでは、工程IIにより得られた評価結果に基づき、製品として出荷する光学部材を決定する。出荷する光学部材の決定は、例えば以下の方法で行うことができる。
(1)工程IIにおいて評価した試料の評価結果が、良否判定基準を満たすものであった場合は該試料と同一ロット内の光学部材は良否判定基準を満たすものと判断し、同一ロット内の光学部材を製品として出荷する。
(2)製造した光学部材それぞれを工程IIに付し、工程IIにおける評価結果が良否判定基準を満たす場合は、その光学部材を製品として出荷する。出荷前の製品すべてに対して評価を行うことにより、高品質な製品をより高い信頼性をもって提供することが可能となる。
また、本発明の評価方法により不良品と判定された光学部材について、その上に形成されている被膜を除去して新たな被膜を形成したり、前記被膜上に更に被膜形成処理を施したりすることもできる。これにより不良品として廃棄される光学部材の数を低減することができ、コスト面および環境への配慮の点で好ましい。
その他、本発明の光学部材の製造方法の詳細については、先に本発明の評価方法についての述べた通りである。
以下に、本発明を実施例に基づき更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
1.蒸着材料(撥水処理剤)の調製
以下の方法により、蒸着材料(撥水処理剤)を調製した。容器は、アズワン社ガラススクリュー瓶30ccを使用し、スターラーの攪拌速度は500rpmに設定した。
Figure 2011053107
(工程1)シラン化合物とシリコーンオイルとの反応溶液の製造
一般式(II)のシラン化合物として信越化学工業(株)製KBE903((C25O)3SiC36NH2、分子量221.4,屈折率(25℃)1.420)10gと一般式(III)の変性シリコーンオイルとして下記オイル(a)の構造を有する信越化学工業(株)製KF105(動粘度15mm2/s(25℃)、屈折率(25℃)1.442、官能基当量490g/mol)10gを24時間、混合攪拌した。
前記シラン化合物はアミノ基を有しており、前記シリコーンオイルはエポキシエチル基を有している。これにより、アミノ基とグリシジル基が反応し、2および3級アミンを有したジメチルシロキサン含有混合物が生成された。この反応には約24時間程度が必要で、H,C、NMRの分析では、分子量約200〜1000の化合物の生成が確認された。
Figure 2011053107
[上記有機基におけるR1は、アルキレン基(メチレン基、エチレン基、プロピレン基等)等であり、rは1〜20、sは1〜20、tは1〜40の範囲の整数である。]
(工程2)フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物(撥水剤)と、シラン化合物とシリコーンオイル化合物の反応溶液との混合
次に、一般式(I)のフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物として、以下の構造:(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33(式中、p=22、q=22、繰り返し単位(OC24)及び(OCF2)の配列はランダムである。)を有する有機ケイ素化合物15gに、工程1で製造した溶液3.5gを投入し24時間攪拌した。
(工程3)注入性改善および乾燥性改善のためのハイドロフルオロエーテルの混合過程
工程2で調製した混合溶液18.5gに、一般式(IV)のハイドロフルオロエーテルとして住友スリーエム(株)製HFE7200(C49OC25、粘度5.7×10-4Pa・s、動粘度0.40mm2/s、屈折率(25℃)1.28)3g投入し、24時間、攪拌を行った。
得られた蒸着材料(撥水処理剤)より得られる蒸着膜は、一般式(I)におけるXの加水分解および縮合反応によって生じる3次元構造の硬化物と、一般式(II)および(III)の化合物の混合物の加水分解および縮合反応によって生じる3次元構造の硬化物から構成される。
2.撥水膜の形成
試料1
上記撥水処理剤を0.35mlしみ込ませたステンレス製焼結フィルター(細孔経80〜100μm、直径18mmΦ、厚さ3mm)を80℃で2時間ドライオーブン加熱し、その後、真空蒸着装置内にセットした。以下の条件で電子銃(EB)を用いて焼結フィルター全体を加熱して、反射防止膜付プラスチックレンズに撥水膜を形成した。このレンズの視感反射率は0.4%であった。
(1)真空度
3.1×10-4〜8.0×10-4Pa(2.3×10-6〜6.0×10-6Torr)
(2)電子銃の条件
加速電圧:6kV、印加電圧:11mA、照射面積:3.5×3.5cm2、照射時間:120秒
試料2、3
撥水処理剤の量を表2に示すように変更した以外は試料1と同様の方法により反射防止膜付プラスチックレンズに撥水膜を形成した。これらレンズの視感反射率は0.4%であった。
3.評価方法
(1)水に対する静止接触角
試料1〜3および撥水膜形成前の反射防止膜付プラスチックレンズ(試料4)について、以下の評価を行った。
接触角計(協和界面科学(株)製品、CA−D型)を使用し、25℃において直径2mmの水滴を針先に作り、これをレンズの最表面(凸面)の最上部に触れさせて、液滴を作った。この時に生ずる液滴と面との角度を測定し静止接触角とした。静止接触角θは水滴の半径(水滴がレンズ表面に接触している部分の半径)をrとし、水滴の高さをhとしたときに、以下の式で求められる。
θ=2×tan-1(h/r)
なお、静止接触角の測定は水の蒸発による測定誤差を最小限にするために水滴をレンズに触れさせた後10秒以内に行った。
(2)滑り感の官能評価
試料1〜3の最表面(撥水膜表面)をシルボン紙で擦った感覚を以下の4段階で評価した。
◎:○よりも良い
○:△よりも良い
△:×より良い
×:滑り感がない
(3)粘弾性分布測定
試料1〜3の最表面(撥水膜表面)について、原子間力顕微鏡(アサイラム社製MFP-3D)にて、下記測定条件により粘弾性特性評価を行い、得られた粘弾性分布の最大値Nmaxと最小値Nminとの差(Nmax−Nmin)を求めた。
測定条件
前処理:なし
カンチレバー:Si単結晶
測定モード:タッピングモード+コンタクトモード(試料表面と探針が断
的に接触)
観察領域:1μm2
データ数:256×256
(4)原子間力顕微鏡による摩擦力分布に基づく評価
試料1〜3の最表面(撥水膜表面)について、原子間力顕微鏡(アサイラム社製MFP-3D)を使用し、次の条件で摩擦特性評価を行い摩擦力分布を求めた。
測定条件
前処理:なし
カンチレバー:Si3N4
測定モード:コンタクトモード(試料表面と探針が連続的に接触)
観察領域:1μm2
データ数:256×256
(5)動摩擦係数の測定
試料1〜3の最表面(撥水膜表面)において、新東科学(株)製の連続加重式表面性測定機TYPE:22Hを使用し、移動距離20mmの平均動摩擦係数を各々3回測定し、平均値を算出した。
(6)耐久性の評価
図3に示す装置を用い、レンズクリーニング布(商品名:HOYA Clearcloth)で500gの荷重をかけて試料1〜3の最表面(撥水膜表面)を3600回、前後に擦り(25℃、相対湿度50〜60%)、その後(1)に記載した方法で水に対する静止接触角を測定した。図3中、11はレンズ、12はレンズクリーニング布、13は六面体板を示す。
(7)外観
試料1〜4について、目視にて干渉色の色ムラおよび干渉色変化があるかどうかを調べ、眼鏡レンズとして使用できる外観かどうか評価した。
以上の評価結果を表2に示す。
Figure 2011053107
表2に示すように、試料1〜3は、外観、接触角、耐久性、動摩擦係数のいずれの評価でも同じ結果が得られたにもかかわらず滑り感には差があった。これに対しNmax-Nminの値が小さいほど滑り感は良好であった。以上の結果から、走査型プローブ顕微鏡(原子間力顕微鏡)により測定される粘弾性特性(粘弾性分布)と滑り感との間には良好な相関性があることが示された。
本発明の評価方法を実生産において使用するために、上記のような評価結果を基に製品レンズの評価基準を作成することができる。上記の例では、例えば試料1の(Nmax-Nmin)の値と試料2の(Nmax-Nmin)の値との間に基準値を設定してもよく、試料2の(Nmax-Nmin)の値と試料3の(Nmax-Nmin)の値との間に基準値を設定してもよい。具体的には、例えば(Nmax-Nmin)の値を、試料1の(Nmax-Nmin)の値と試料2の(Nmax-Nmin)の値との間の15と設定(即ち15以下であれば滑り感良好と判定)することにより、試料1だけを良品と判定させることができ、これまで困難だった滑り感の機械的評価が可能になる。
なお摩擦力像では、試料1〜3ともほぼ同様の画像が得られた。この結果から、摩擦特性のみでは滑り感を評価することが困難であることがわかる。ただし摩擦特性の評価によれば、粘弾性特性の評価とくらべ狭ダイナミックレンジでの評価が可能であるため、粘弾性特性では評価することが困難な表面の微小な欠陥を検出することができる。したがって粘弾性特性の評価と摩擦特性の評価を併用することにより、より信頼性の高い品質管理を行うことができる。
本発明の評価方法は、撥水膜の滑り感評価方法として好適である。

Claims (8)

  1. 光学部材の最外層に位置する被膜の表面性を評価する方法であって、
    走査型プローブ顕微鏡の深針を、上記被膜の表面上で走査することにより、上記被膜の粘弾性特性を測定すること、および、
    測定された粘弾性特性に基づき前記被膜の表面性を評価すること、
    を含む、前記方法。
  2. 前記粘弾性特性の測定を、前記探針を、前記被膜の表面上で該被膜に対して相対的に振動させながら走査することにより行う請求項1に記載の方法。
  3. 前記評価される表面性は、前記被膜表面の滑り感である請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記走査型プローブ顕微鏡は、原子間力顕微鏡である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記粘弾性特性として粘弾性分布を測定し、測定された粘弾性分布のばらつきが小さいほど表面性が良好と評価する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記被膜は、フッ素系有機化合物を含有する被膜である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 複数の基材上に被膜を形成することにより、最外層に被膜を有する光学部材を複数製造する工程と、
    製造された複数の光学部材の少なくとも1つについて、該光学部材が有する被膜を請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法により評価する工程と、
    評価結果に基づき製品として出荷する光学部材を決定する工程と、
    を含む光学部材の製造方法。
  8. 前記被膜として、フッ素系有機化合物を含有する被膜を形成する請求項7に記載の製造方法。
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