本発明の実施形態の構成について図1を用いて説明する。図1は本発明が適用される自動変速機の構成の一例を示すスケルトン図及びシステム構成図である。
本実施形態に係る自動変速機は、前進7速と後退1速の変速段を有する自動車用変速機であって、車両のエンジンEgに対し、ロックアップクラッチLUCを備えたトルクコンバータTCを介して接続されている。エンジンEgから出力された回転は、トルクコンバータTCのポンプインペラ及びオイルポンプOPに伝達され、このポンプインペラの回転により攪拌されたオイルがステータを介してタービンランナに伝達され、入力軸Inputが駆動されるようになっている。
また、図示しない車両には、エンジンEgの駆動状態を制御するエンジンコントローラ(ECU)10と、自動変速機の変速状態等を制御する自動変速機コントローラ(ATCU、変速制御手段)20と、ATCU20の出力信号に基づいて各摩擦要素の油圧制御を実行するコントロールバルブユニットCVUが設けられている。なお、ECU10とATCU20とは、CAN通信線等を介して接続され、相互にセンサ情報や制御情報を通信により共有している。
ECU10、ATCU20はCPU、ROM、RAMなどによって構成される。CPUがROMに格納されたプログラムを実行することで、エンジンEgの駆動状態および自動変速機の変速状態などを制御する機能が発揮される。
ECU10には、ドライバのアクセルペダル操作量APOを検出するアクセル開度センサ1と、エンジンのスロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ1aと、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ2が接続されている。そして、ECU10では、エンジン回転速度やアクセルペダル操作量に基づいて燃料噴射量やスロットル開度を制御し、エンジン回転速度及びエンジントルクを制御するようになっている。
ATCU20には、後述する第1キャリヤPC1の回転速度を検出する第1タービン回転速度センサ3と、第1リングギヤR1の回転速度を検出する第2タービン回転速度センサ4と、出力軸Outputの回転速度を検出する出力軸回転速度センサ5と、ドライバのシフトレバー操作状態を検出するインヒビタスイッチ6が接続されており、シフトレバーはP、R、N、Dの他にエンジンブレーキが作用するエンジンブレーキレンジ位置とエンジンブレーキが作用しない通常前進走行レンジ位置とを備える。
また、ATCU20には、ドライビングモードスイッチ(モード切替スイッチ)7が接続されている。ドライビングモードスイッチ7が運転者によって操作されると、その操作に基づいて車両の変速特性であるドライビングモードが変更される。ドライビングモードは、例えばスノーモード、エコモード、ノーマルモード、スポーツモードである。スポーツモードは運転者の加速意図が他のモードよりも大きいドライビングモードである。
ATCU20内では、入力軸Inputの回転速度を演算する回転速度算出部と共に、正常時には車速(後述する第1先読み車速、第2先読み車速)とスロットル開度TVO又はアクセルペダル開度APOに基づいて、後述する前進7速の変速マップから最適な目標変速段を設定し、コントロールバルブユニットCVUに目標変速段を達成する制御指令を出力するようになっている。
次に、自動変速機の構成について説明する。入力軸Input側から軸方向出力軸Output側に向けて、第1遊星ギヤセットGS1、第2遊星ギヤセットGS2の順に遊星歯車機構が配置されている。また、摩擦要素として複数のクラッチC1、C2、C3及びブレーキB1、B2、B3、B4が配置されるとともに、複数のワンウェイクラッチF1、F2が配置されている。
第1遊星ギヤセットGS1は2つの遊星ギヤG1、G2を備えて構成されており、このうち、第1遊星ギヤG1は、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、両ギヤS1、R1に噛み合う第1ピニオンP1と、上記第1ピニオンP1を回転支持する第1キャリヤPC1とを備えたシングルピニオン型遊星ギヤとして構成されている。
また、第2遊星ギヤG2も、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、両ギヤS2、R2に噛み合う第2ピニオンP2と、上記第2ピニオンP2を回転支持する第2キャリヤPC2とを有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
また、第2遊星ギヤセットGS2は2つの遊星ギヤG3、G4を備えて構成されており、このうち第3遊星ギヤG3は、第3サンギヤS3と、第3リングギヤR3と、両ギヤS3、R3に噛み合う第3ピニオンP3と、上記第3ピニオンP3を回転支持する第3キャリヤPC3とを有するシングルピニオン型遊星ギヤとして構成されている。
また、第4遊星ギヤG4も第1〜3ギヤセット同様、第4サンギヤS4と、第4リングギヤR4と、両ギヤS4、R4に噛み合う第4ピニオンP4と、上記第4ピニオンP4の回転を支持する第4キャリヤPC4とを有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
入力軸Inputは、第2リングギヤR2に連結されており、エンジンEgからの回転駆動力は、トルクコンバータTC等を介して第2リングギヤR2に入力されるようになっている。
一方、出力軸Outputは、第3キャリヤPC3に連結され、出力回転駆動力は図示しないファイナルギヤ等を介して駆動輪に伝達されるようになっている。
ところで、第1リングギヤR1と第2キャリヤPC2と第4リングギヤR4とは、第1連結メンバM1により一体的に連結されている。また、第3リングギヤR3と第4キャリヤPC4とは、第2連結メンバM2により一体的に連結されており、この第2連結メンバM2は、クラッチC1を介して入力軸Input及び第2リングギヤR2に接続されている。
また、第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とは、第3連結メンバM3により一体的に連結されている。
したがって、第1遊星ギヤセットGS1は、第1遊星ギヤG1と第2遊星ギヤG2とを第1連結メンバM1及び第3連結メンバM3により連結することで、4つの回転要素から構成されている。また、第2遊星ギヤセットGS2は、第3遊星ギヤG3と第4遊星ギヤG4とを第2連結メンバM2により連結することで、5つの回転要素から構成されている。
第1遊星ギヤセットGS1は、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力されるトルク入力経路を有しており、第1遊星ギヤセットGS1に入力されたトルクは、第1連結メンバM1から第2遊星ギヤセットGS2に出力されるようになっている。
また、第2遊星ギヤセットGS2は、入力軸Inputから第2連結メンバM2に入力されるトルク入力経路と、第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に入力されるトルク入力経路を有しており、第2遊星ギヤセットGS2に入力されたトルクは、第3キャリヤPC3から出力軸Outputに出力されるようになっている。
ここで、各種クラッチC1〜C3のうちインプットクラッチC1は、入力軸Inputと第2連結メンバM2とを選択的に断接するクラッチである。また、ダイレクトクラッチC2は、第4サンギヤS4と第4キャリヤPC4とを選択的に断接するクラッチである。
また、H&LRクラッチC3は、第3サンギヤS3と第4サンギヤS4とを選択的に断接するクラッチである。なお、第3サンギヤS3と第4サンギヤS4との間には、一方向へのみ相対回転を許容し、逆方向へは一体となって回転する第2ワンウェイクラッチF2が配置されている。
なお、H&LRクラッチC3が解放され、第3サンギヤS3よりも第4サンギヤS4の回転数が大きい時は、第3サンギヤS3と第4サンギヤS4は独立した回転数を発生する。よって、第3遊星ギヤG3と第4遊星ギヤG4が第2連結メンバM2を介して接続された構成となり、それぞれの遊星ギヤが独立したギヤ比を達成する。
また、各種ブレーキB1〜B4のうち、フロントブレーキB1は、第1キャリヤPC1の回転を選択的に停止させるブレーキである。また、フロントブレーキB1と並列に第1ワンウェイクラッチF1が配置されている。
また、ローブレーキB2は、第3サンギヤS3の回転を選択的に停止させるブレーキである。また、2346ブレーキB3は、第3連結メンバM3(第1サンギヤS1及び第2サンギヤS2)の回転を選択的に停止させるブレーキである。また、リバースブレーキB4は、第4キャリヤPC4の回転を選択的に停止させるブレーキである。
入力軸Inputは第2リングギヤR2に連結され、更に第1遊星ギヤG1と第2遊星ギヤG2は2つの回転要素が連結された第1遊星ギヤセットGS1を構成していることに着目し、ATCU20内に設けられた回転数算出部において、2つのタービン回転数センサ3、4を用いて入力軸Inputの回転数を計算により検出している。
ここで、第1タービン回転数センサ3は第2キャリヤPC2の回転数を検出し、第2タービン回転数センサ4は第1キャリヤPC1に連結されたタービンセンサ用メンバとしてのセンサ用部材63の回転数を検出している。
そして、第1キャリヤPC1の回転数をN(PC1)、第2キャリヤPC2の回転数をN(PC2)、第2リングギヤR2の回転数をN(R2)とし、第2リングギヤR2と第2キャリヤPC2(第1リングギヤR1)のギヤ比を1とし、第1リングギヤR1(第2キャリヤPC2)と第1キャリヤPC1のギヤ比をβとすると、下記の式により第2リングギヤR2の回転数N(R2)を算出することができる。
N(R2)=(1+1/β)・N(PC2)−(1/β)・N(PC1)
これにより、第2リングギヤR2(入力軸Input)の回転数=タービン回転数を求めることができる。
次に、図2を用いてコントロールバルブユニットCVUの油圧回路について説明する。この油圧回路には、エンジンEgにより駆動された油圧源としてのオイルポンプOPと、ドライバのシフトレバー操作と連動して、ライン圧PLを供給する油路を切り換えるマニュアルバルブMVと、ライン圧を所定の一定圧に減圧するパイロットバルブPVが設けられている。
また、ローブレーキB2の締結圧を調圧する第1調圧弁CV1と、インプットクラッチC1の締結圧を調圧する第2調圧弁CV2と、フロントブレーキB1の締結圧を調圧する第3調圧弁CV3と、H&RLクラッチC3の締結圧を調圧する第4調圧弁CV4と、2346ブレーキB3の締結圧を調圧する第5調圧弁CV5と、ダイレクトクラッチC2の締結圧を調圧する第6調圧弁CV6が設けられている。
また、ローブレーキB2とインプットクラッチC1との各供給油路150a、150bのうちをどちらか一方のみ連通する状態に切り換える第1切換弁SV1と、ダイレクトクラッチC2に対しDレンジ圧とRレンジ圧の供給油路をどちらか一方のみ連通する状態に切り換える第2切換弁SV2と、リバースブレーキB4に対して供給する油圧を第6調圧弁CV6からの供給油圧とRレンジ圧からの供給油圧との間で切り換える第3切換弁SV3と、第6調圧弁CV6から出力された油圧を油路123と油路122との間で切り換える第4切換弁SV4とが設けられている。
また、自動変速機コントロールユニット20からの制御信号に基づいて、第1調圧弁CV1に対し調圧信号を出力する第1ソレノイドバルブSOL1と、第2調圧弁CV2に対し調圧信号を出力する第2ソレノイドバルブSOL2と、第3調圧弁CV3に対し調圧信号を出力する第3ソレノイドバルブSOL3と、第4調圧弁CV4に対し調圧信号を出力する第4ソレノイドバルブSOL4と、第5調圧弁CV5に対し調圧信号を出力する第5ソレノイドバルブSOL5と、第6調圧弁CV6に対し調圧信号を出力する第6ソレノイドバルブSOL6と、第1切換弁SV1及び第3切換弁SV3に対し切り換え信号を出力する第7ソレノイドバルブSOL7とが設けられている。第1ソレノイドバルブSOL1〜第7ソレノイドバルブSOL7は、二方比例電磁弁である。
上記各ソレノイドバルブSOL2、SOL5、SOL6は三つのポートを有する三方比例電磁弁であり、第1のポートは後述するパイロット圧が導入され、第2のポートはドレーン油路に接続され、第3のポートはそれぞれ調圧弁もしくは切換弁の受圧部に接続されている。また、上記各ソレノイドバルブSOL1、SOL3、SOL4は2つのポートを有する二方比例電磁弁、ソレノイドバルブSOL7は三つのポートを備える三方オンオフ電磁弁である。
また、第1ソレノイドバルブSOL1と第3ソレノイドバルブSOL3と第7ソレノイドバルブSOL7はノーマルクローズタイプ(非通電時に閉じた状態)の電磁弁であり、一方、第2ソレノイドバルブSOL2と第4ソレノイドバルブSOL4と第5ソレノイドバルブSOL5と第6ソレノイドバルブSOL6はノーマルオープンタイプ(非通電時に開いた状態)の電磁弁である。
エンジンにより駆動されるオイルポンプOPの吐出圧は、ライン圧に調圧された後、油路101及び油路102に供給される。油路101には、ドライバのシフトレバー操作に連動して作動するマニュアルバルブMVと接続された油路101aと、フロントブレーキB1の締結圧の元圧を供給する油路101bと、H&LRクラッチC3の締結圧の元圧を供給する油路101cが接続されている。
マニュアルバルブMVには、油路105と、後退走行時に選択されるRレンジ圧を供給する油路106が接続され、シフトレバー操作に応じて油路105と油路106を切り換える。
油路105には、ローブレーキB2の締結圧の元圧を供給する油路105aと、インプットクラッチC1の締結圧の元圧を供給する油路105bと、2346ブレーキB3の締結圧の元圧を供給する油路105cと、ダイレクトクラッチC2の締結圧の元圧を供給する油路105dと、後述する第2切換弁SV2の切り換え圧を供給する油路105eとが接続されている。
油路106には、第2切換弁SV2の切り換え圧を供給する油路106aと、ダイレクトクラッチC2の締結圧の元圧を供給する油路106bと、リバースブレーキB4の締結圧を供給する油路106cとが接続されている。
油路102にはパイロットバルブPVを介してパイロット圧を供給する油路103が接続されている。油路103には、第1ソレノイドバルブSOL1にパイロット圧を供給する油路103aと、第2ソレノイドバルブSOL2にパイロット圧を供給する油路103bと、第3ソレノイドバルブSOL3にパイロット圧を供給する油路103cと、第4ソレノイドバルブSOL4にパイロット圧を供給する油路103dと、第5ソレノイドバルブSOL5にパイロット圧を供給する油路103eと、第6ソレノイドバルブSOL6にパイロット圧を供給する油路103fと、第7ソレノイドバルブSOL7にパイロット圧を供給する油路103gとが設けられている。
このような油圧回路を構成し、各種ソレノイドバルブをそれぞれ制御することにより、各摩擦要素C1〜C3、B1〜B4の係合と解放とを切り換えることができる。
そして、図3の締結作動表に示すように、各クラッチC1〜C3及び各ブレーキB1〜B4の締結(○印)と解放(無印)とを適宜組み合わせることにより、前進7速、後退1速の各変速段を実現することができる。
次に、変速作用について説明する。
1速は、エンジンブレーキ作用時(エンジンブレーキレンジ位置選択中)とエンジンブレーキ非作用時(通常前進走行レンジ位置選択中)とで異なる摩擦要素が作用する。エンジンブレーキ作用時は、図3の(○)に示すように、フロントブレーキB1とローブレーキB2とH&LRクラッチC3との締結により得られる。なお、フロントブレーキB1に並列に設けられた第1ワンウェイクラッチF1と、H&LRクラッチC3と並列に設けられた第2ワンウェイクラッチF2もトルク伝達に関与する。エンジンブレーキ非作用時は、フロントブレーキB1とH&LRクラッチC3は解放され、ローブレーキB2のみが締結され、第1ワンウェイクラッチF1と第2ワンウェイクラッチF2によりトルク伝達される。
この1速では、フロントブレーキB1が締結(エンジンブレーキ非作動時は第1ワンウェイクラッチF1により締結)されているため、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力された回転は、第1遊星ギヤセットGS1により減速される。この減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、ローブレーキB2及びH&LRクラッチC3が締結(エンジンブレーキ非作動時はローブレーキB2及び第2ワンウェイクラッチF2により締結)されているため、第4リングギヤR4に入力された回転は、第2遊星ギヤセットにより減速され、第3キャリヤPC3から出力される。
この1速では、フロントブレーキB1(もしくは第1ワンウェイクラッチF1)、ローブレーキB2、H&LRクラッチC3(もしくは第2ワンウェイクラッチF2)、第1連結メンバM1、第2連結メンバM2、第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第1遊星ギヤセットGS1と第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
このとき、図4のソレノイドバルブ作動表に示すように、第1〜第3ソレノイドバルブSOL1〜SOL3及び第6及び第7ソレノイドバルブSOL6、SOL7をオンとし、それ以外をオフとすることで、所望の摩擦要素に締結圧が供給される。
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオンとしているため、第1切換弁SV1は図2中左方に移動し、第1調圧弁CV1とローブレーキB2を連通し、インプットクラッチC1をドレーンと接続する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通されるため第6調圧弁CV6にはDレンジ圧が作用する。第6調圧弁CV6は図2中下方に移動しているため、ダイレクトクラッチC2や第4切換弁SV4にDレンジ圧が供給されることはない。
なお、第4切換弁SV4はDレンジ圧の作用により図2中右方に移動し、油路121と油路123とを連通した状態であるが締結作用には関係ない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されているため図2中左方に移動し、第1ポートd1と第3ポートd3が連通されているものの油路122には油圧が供給されていないため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
2速は、エンジンブレーキ作用時(エンジンブレーキレンジ位置選択中)とエンジンブレーキ非作用時(通常前進走行レンジ位置選択中)とで異なる摩擦要素が締結する。エンジンブレーキ作用時は、図3の(○)に示すように、ローブレーキB2と2346ブレーキB3とH&LRクラッチC3との締結により得られる。なお、H&LRクラッチC3と並列に設けられた第2ワンウェイクラッチF2もトルク伝達に関与する。エンジンブレーキ非作動時は、H&LRクラッチC3は解放され、ローブレーキB2と2346ブレーキB3が締結され、第2ワンウェイクラッチF2によりトルク伝達される。
この2速では、2346ブレーキB3が締結されているため、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力された回転は、第2遊星ギヤG2のみにより減速される。この減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、ローブレーキB2及びH&LRクラッチC3が締結(エンジンブレーキ非作動時は第2ワンウェイクラッチF2により締結)されているため、第4リングギヤR4に入力された回転は、第2遊星ギヤセットにより減速され、第3キャリヤPC3から出力される。
この2速では、2346ブレーキB3、ローブレーキB2、H&LRクラッチC3(もしくは第2ワンウェイクラッチF2)、第1連結メンバM1、第2連結メンバM2、第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第2遊星ギヤG2と第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
なお、1速から2速へのアップシフト時は、フロントブレーキB1を早めに解放し、2346ブレーキB3の締結を開始することで、2346ブレーキB3の締結容量が確保された時点で第1ワンウェイクラッチF1が解放される。よって、変速タイミングの精度の向上を図ることができる。
このとき、図4のソレノイドバルブ作動表に示すように、第1、第2、第5〜第7ソレノイドバルブSOL1、SOL2、SOL5、SOL6、SOL7をオンとし、それ以外をオフとすることで、所望の摩擦要素に締結圧が供給される。
3速は、図3に示すように、2346ブレーキB3とローブレーキB2とダイレクトクラッチC2との締結により得られる。
この3速では、2346ブレーキB3が締結されているため、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力された回転は、第2遊星ギヤG2により減速される。この減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、ダイレクトクラッチC2が締結されているため、第4遊星ギヤG4は一体となって回転する。また、ローブレーキB2が締結されているため、第4リングギヤR4と一体に回転する第4キャリヤPC4から第2連結メンバM2を介して第3リングギヤR3に入力された回転は、第3遊星ギヤG3により減速され、第3キャリヤPC3から出力される。このように第4遊星ギヤG4はトルク伝達に関与するが減速作用には関与しない。
すなわち、3速は、エンジンの出力回転を減速する2346ブレーキB3の締結点と、第2遊星ギヤG2からの減速回転を減速するローブレーキB2の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速して出力ギヤOutputから出力する。
この3速では、2346ブレーキB3、ローブレーキB2、ダイレクトクラッチC2、第1連結メンバM1、第2連結メンバM2、第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第2遊星ギヤG2と第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
なお、2速から3速へのアップシフト時は、H&LRクラッチC3を早めに解放し、ダイレクトクラッチC2の締結を開始することで、ダイレクトクラッチC2の締結容量が確保された時点で第2ワンウェイクラッチF2が解放される。よって、変速タイミングの精度の向上を図ることができるものである。
このとき、図4のソレノイドバルブ作動表に示すように、第1、第2、第4、5及び第7ソレノイドバルブSOL1、SOL2、SOL4、SOL5、SOL7をオンとし、それ以外をオフとすることで、所望の摩擦要素に締結圧が供給される。
4速は、図3に示すように、2346ブレーキB3とダイレクトクラッチC2とH&LRクラッチC3との締結により得られる。
この4速では、2346ブレーキB3が締結されているため、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力された回転は、第2遊星ギヤG2のみにより減速される。この減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、ダイレクトクラッチC2及びH&LRクラッチC3が締結されているため、第2遊星ギヤセットGS2は一体で回転する。よって、第4リングギヤR4に入力された回転は、そのまま第3キャリヤPC3から出力される。
この4速では、2346ブレーキB3、ダイレクトクラッチC2、H&LRクラッチC3、第1連結メンバM1、第2連結メンバM2、第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第2遊星ギヤG2と第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
このとき、図4のソレノイドバルブ作動表に示すように、第2及び第5ソレノイドバルブSOL2、SOL5をオンとし、それ以外をオフとすることで、所望の摩擦要素に締結圧が供給される。
ここで、第7ソレノイドバルブSOL7をオフとしているため、このとき第1切換弁SV1は図2中右方に移動し、ローブレーキB2をドレーン回路と連通し、第2調圧弁CV2とインプットクラッチC1を連通する(インターロック状態防止)。また、第2切換弁SV2には第4ポートc4にDレンジ圧が作用しているため図2中左方に移動し、第1ポートc1と第3ポートc3が連通される。第6調圧弁CV6は図2中上方に移動しているため、第4切換弁SV4に調圧された油圧が供給される。
第4切換弁SV4にはDレンジ圧が作用しているため、油路121と油路123が連通される。油路122はドレーン回路と連通されているため、ダイレクトクラッチC2に油圧が供給され、一方、第3切換弁SV3に油圧が供給されることはない。また、第3切換弁SV3には第7ソレノイドバルブSOL7からポートd4に信号圧が供給されていないため図2中右方に移動し、第2ポートd2と第3ポートd3が連通されているものの油路106cにはRレンジ圧が供給されていない(マニュアルバルブMVで遮断されている)ため、リバースブレーキB4に油圧が供給されることはない。
5速は、図3に示すように、インプットクラッチC1とダイレクトクラッチC2とH&LRクラッチC3との締結により得られる。
この5速では、インプットクラッチC1が締結されているため、入力軸Inputの回転は第2連結メンバM2に入力される。また、ダイレクトクラッチC2及びH&LRクラッチC3が締結されているため、第3遊星ギヤG3は一体で回転する。よって、入力軸Inputの回転は、そのまま第3キャリヤPC3から出力される。
この5速では、インプットクラッチC1、ダイレクトクラッチC2、H&LRクラッチC3、第2連結メンバM2にトルクが作用する。つまり、第3遊星ギヤG3のみがトルク伝達に関与する。
このとき、図4のソレノイドバルブ作動表に示すように、全てのソレノイドバルブSOL1〜SOL7をオフとすることで、所望の摩擦要素に締結圧が供給される。
6速は、図3に示すように、インプットクラッチC1とH&LRクラッチC3と2346ブレーキB3の締結により得られる。
この6速では、インプットクラッチC1が締結されているため、入力軸Inputの回転は第2リングギヤに入力されると共に、第2連結メンバM2に入力される。また、2346ブレーキB3が締結されているため、第2遊星ギヤG2により減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、H&LRクラッチC3が締結されているため、第2遊星ギヤセットGS2は、第4リングギヤR4の回転と、第2連結メンバM4の回転によって規定される回転を第3キャリヤPC3から出力する。
この6速では、インプットクラッチC1、H&LRクラッチC3、2346ブレーキB3、第1連結メンバM1、第2連結メンバM2、第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第2遊星ギヤG2及び第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
このとき、図4のソレノイドバルブ作動表に示すように、第5及び第6ソレノイドバルブSOL5、SOL6をオンとし、他のソレノイドバルブSOL1、SOL2、SOL3、SOL4、SOL7をオフとすることで、所望の摩擦要素に締結圧が供給される。
7速は、図3に示すように、インプットクラッチC1とH&LRクラッチC3とフロントブレーキB1(第1ワンウェイクラッチF1)の締結により得られる。
この7速では、インプットクラッチC1が締結されているため、入力軸Inputの回転は第2リングギヤに入力されると共に、第2連結メンバM2に入力される。また、フロントブレーキB1が締結されているため、第1遊星ギヤセットGS1により減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、H&LRクラッチC3が締結されているため、第2遊星ギヤセットGS2は、第4リングギヤR4の回転と、第2連結メンバM4の回転によって規定される回転を第3キャリヤPC3から出力する。
この7速では、インプットクラッチC1、H&LRクラッチC3、フロントブレーキB1、第1連結メンバM1、第2連結メンバM2、第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第1遊星ギヤセットGS1及び第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
このとき、図4のソレノイドバルブ作動表に示すように、第3及び第6ソレノイドバルブSOL3、SOL6をオンとし、他のソレノイドバルブSOL1、SOL2、SOL4、SOL5、SOL7をオフとすることで、所望の摩擦要素に締結圧が供給される。
後退は、図3に示すように、H&LRクラッチC3とフロントブレーキB1とリバースブレーキB4の締結により得られる。
この後退では、フロントブレーキB1が締結されているため、第1遊星ギヤセットGS1により減速された回転が第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に出力される。また、H&LRクラッチC3が締結され、リバースブレーキB4が締結されているため、第2遊星ギヤセットGS2は、第4リングギヤR4の回転と、第2連結メンバM2の固定によって規定される回転を第3キャリヤPC3から出力する。
すなわち、後退は、エンジンの出力回転を第1遊星ギヤセットGS1により減速するフロントブレーキB1、第2連結メンバM2の回転を固定するリバースブレーキB4、第2遊星ギヤセットGS2を構成するH&LRクラッチC3の締結点を結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を逆向きに減速して出力ギヤOutputから出力する。
この後退でのトルクフローは、H&LRクラッチC3、フロントブレーキB1、リバースブレーキB4、第1連結メンバM1、第2連結メンバM2、第3連結メンバM3にトルクが作用する。つまり、第1遊星ギヤセットGS1及び第2遊星ギヤセットGS2がトルク伝達に関与する。
このとき、図4のソレノイドバルブ作動表に示すように、第2、第3及び第6ソレノイドバルブSOL2、SOL3、SOL6をオンとし、他のソレノイドバルブSOL1、SOL4、SOL5、SOL7をオフとすることで、所望の摩擦要素に締結圧が供給される。なお、第7ソレノイドSOL7についてはRレンジ切り換え初期はオンとし、締結完了後にオフとする。
リバースブレーキB4には、第3切換弁SV3を介してRレンジ圧が供給される。Rレンジには、専用の調圧弁を持っていないため、締結初期には、ダイレクトクラッチC2に使用していた第6調圧弁CV6を用いてリバースブレーキB4の締結圧を調圧する。まず、マニュアルバルブMVによりRレンジ圧に切り換えられると、第2切換弁SV2は図2中右方に移動し、第6調圧弁CV6にRレンジ圧が供給される。また、第4切換弁SV4は図2中左方に移動し、油路121と油路122とを連通する。これにより、第6調圧弁CV6により調圧された油圧が油路122に導入される。
この状態で第7ソレノイドバルブSOL7をオンとすると、第3切換弁SV3は図2中左方に移動し、油路122と油路130を連通する。よって、第7ソレノイドバルブSOL7がオンの間は第6調圧弁CV6により調圧された油圧によってリバースブレーキB4の締結圧を制御する。締結が完了すると、第7ソレノイドバルブSOL7をオフとする。すると、第3切換弁SV3が図2中右方に移動し、油路106cと油路130が連通されるため、Rレンジ圧がそのまま導入され、締結状態を維持する。
このように、第3切換弁SV3及び第4切換弁SV4を設けたことで、1つの調圧弁で2つの摩擦要素の締結圧を制御することを可能としている。
本実施形態の7速シフトマップは、例えば図5に示すような特性となっており、出力軸回転数センサ5に基づいて算出される車速と、アクセル開度センサ1で得られるアクセル開度APOをパラメータとして変速領域が区画され、アップシフト線又はダウンシフト線を横切るとアップシフト又はダウンシフトが実行されるようになっている。
自動変速機における変速制御は実車速が予め設定された車速となった場合に変速が完了すると動力性能などが優れた制御となる。本実施形態では、実車速が予め設定された車速となった場合に変速が完了するように先読み車速が算出される。先読み車速は、車両の運転状態、例えば現在の車速、アクセル開度などに基づいて所定時間後の実車速を推測した車速である。アップシフトを行う場合には、先読み車速がアップ判定車速(所定車速)になると変速制御を開始する。また、ダウンシフトを行う場合には、先読み車速がダウン判定車速になると変速制御を開始する。
また、本実施形態ではドライビングモードに応じて先読み車速が算出される。本実施形態では、スポーツモード以外のモード(第1運転状態)、例えばノーマルモードに応じた第1先読み車速と、スポーツモード(第2運転状態)に応じた第2先読み車速とが算出される。
ドライビングモードがノーマルモードである場合には、第1先読み車速が変速判定用車速として設定される。そして、第1先読み車速がアップ判定車速またはダウン判定車速となった場合に変速が開始される。ノーマルモードでは、変速時間は第1変速時間である。第1変速時間は、アクセル開度、車速などに応じて設定される時間である。
一方、ドライビングモードがスポーツモードである場合には、第2先読み車速が変速判定用車速として設定される。そして、第2先読み車速がアップ判定車速またはダウン判定車速となった場合に変速が開始される。スポーツモードでは、変速時間は第2変速時間である。第2変速時間は、アクセル開度、車速などに応じて設定される時間である。なお、所定の条件を満たす場合にはドライビングモードがスポーツモードである場合でも第1先読み車速が変速判定用車速として設定されるが、これについては後述する。
ドライビングモードに応じた先読み車速を算出することで、ドライビングモードに適した変速を実現することができる。本実施形態では、現在設定されているドライビングモードにかかわらず、第1先読み車速および第2先読み車速を算出している。第1先読み車速と第2先読み車速とを比較すると、第1先読み車速は第2先読み車速よりも大きい車速である。そのため、同じ変速段に変更する場合には、ノーマルモードによる変速は、スポーツモードによる変速よりも早いタイミングで変速が開始される。つまり、同じ変速段に変更する場合には、第2変速時間は第1変速時間よりも短い時間となる。
本実施形態のドライビングモードの切替制御について図6のフローチャートを用いて説明する。本制御は繰り返し行われ、例えば10ms毎に行われる。
ステップS100では、ドライビングモードスイッチ7の状態を示す信号がドライビングモードスイッチ7から入力される。また、スポーツモード以外のモードに対する第1先読み車速およびスポーツモードに対する第2先読み車速を演算する(ステップS100が先読み車速算出手段を構成する)。さらに前回の制御によって判断されたドライビングモード切替可否判断の結果が入力される。以下においてスポーツモード以外のモードについては、ノーマルモードを例として説明する。
ステップS101では、ドライビングモードスイッチ7からの信号、および前回の制御におけるドライビングモード切替可否判断に基づいてドライビングモード判定を行い、ドライビングモードを決定する。ここでは、前回の制御のドライビングモード切替可否判断が「許可」の場合にはドライビングモードスイッチ7からの信号に基づいてドライビングモードが決定される。一方、前回の制御のドライビングモード切替可否判断が「禁止」の場合にはドライビングモードの切り替えは行われない。例えばドライビングモードスイッチ7からの信号がスポーツモードからノーマルモードへ切り替えられたことを示す場合でも、前回の制御のドライビングモード切替可否判断が「禁止」である場合には、ドライビングモードはスポーツモードに維持される。
ステップS102では、ドライビングモードがスポーツモードであるかどうか判定を行う。そして、ドライビングモードがスポーツモードではない場合にはステップS103へ進む。一方、ドライビングモードがスポーツモードである場合にはステップS104へ進む。
ステップS103では、第1先読み車速を変速判定用車速に設定し、第2先読み車速をドライビングモード切替判定用車速に設定する。
ステップS104では、変速判定用車速として第1先読み車速が設定されているかどうか判定する。変速判定用車速として第1先読み車速が設定されている場合にはステップS105へ進む。一方、変速判定用車速として第1先読み車速が設定されていない場合、つまり変速判定用車速として第2先読み車速が設定されている場合には、ステップS106へ進む。
ステップS105では、変速中であるかどうか判定する。そして、変速中である場合にはステップS107へ進む。一方、変速中ではない場合にはステップS106へ進む。
変速判定用車速として第1先読み車速が設定されており、変速中である場合は、現在第1先読み車速による変速判定に基づいて変速が行われている。このとき、変速中に第1先読み車速から第2先読み車速へ変速判定用車速が変更されると、変速判定用車速である第2先読み車速がアップ判定車速よりも小さくなる場合がある。このような場合に、第2先読み車速に基づいて変速制御を中止すると運転者に違和感を与えるおそれがある。そのため、本実施形態では、一旦第1先読み車速に基づいて変速を開始した場合には、変速が完了するまでは変速判定用車速が第2先読み車速に変更されないようにする(ステップS104、S105が第2禁止手段を構成する)。
ステップS106では、第2先読み車速を変速判定用車速に設定し、第1先読み車速をドライビングモード切替判定用車速に設定する(ステップS103、S106が先読み車速選択手段を構成する)。
ステップS107では、前回の制御のドライビングモード切替可否判断が「許可」または「禁止」であるかどうか判定する。前回の制御のドライビングモード切替可否判断が「許可」である場合にはステップS108へ進む。一方、前回のドライビングモード切替可否判断が「禁止」である場合にはステップS110へ進む。
ステップS108では、自動変速機がダウンシフトを行っているかどうか判定する。ここでは、第2先読み車速とダウン判定車速とを比較し、第2先読み車速がダウン判定車速以下である場合には自動変速機がダウンシフトを行っていると判定してステップS113へ進む。一方、第2先読み車速がダウン判定車速よりも大きい場合には自動変速機がダウンシフトを行っていないと判定してステップS109へ進む。
ステップS109では、第2先読み車速および第1先読み車速をアップ判定車速と比較する。第2先読み車速がアップ判定車速よりも小さく、かつ第1先読み車速がアップ判定車速以上である場合には、ドライビングモードがノーマルモードへ変更されることを禁止するためにステップS114へ進む。
ドライビングモードがスポーツモードである場合には、第2先読み車速がアップ判定車速となった時に変速制御を開始することで、実車速が予め設定された車速となる時に変速を完了することができ、動力性能が良く、オーバーレブを防止した所望の変速を実現することができる。
ドライビングモードがスポーツモードであり、第2先読み車速がアップ判定車速よりも小さく、かつ第1先読み車速がアップ判定車速よりも大きい場合には、第2先読み車速はアップ判定車速よりも小さいので変速は開始されていない。この状態でドライビングモードをスポーツモードからノーマルモードへ変更すると、第1先読み車速はアップ判定車速よりも大きいので変速が開始される。しかし、ノーマルモードで変速を行う場合には第1先読み車速がアップ判定車速となった時に変速を開始しなければ、実車速が予め設定された車速となる時に変速を完了することができない。そのため第1先読み車速がアップ判定車速よりも大きい場合にドライビングモードをスポーツモードからノーマルモードへ変更すると、その後実車速が予め設定された車速となっても、自動変速機では変速が完了しておらず、オーバーレブが生じるおそれがある。
そこで本実施形態では、ステップS109において、第2先読み車速がアップ判定車速よりも小さく、かつ第1先読み車速がアップ判定車速以上であると判定された場合には、ドライビングモードがスポーツモードからノーマルモードへ変更されることを禁止するためにステップS114へ進む。一方、第2先読み車速がアップ判定車速以上である場合、または第1先読み車速がアップ判定車速よりも小さい場合にはステップS113へ進む。
ステップS110では、自動変速機がアップシフト中であるかどうか判定する。自動変速機がアップシフト中でない場合にはステップS111へ進む。一方、自動変速機がアップシフト中である場合にはステップS114へ進む。
ステップS111では、第2先読み車速および第1先読み車速をアップ判定車速と比較する。第2先読み車速がアップ判定車速よりも小さく、かつ第1先読み車速がアップ判定車速以上である場合には、ステップS114へ進む。一方、第2先読み車速がアップ判定車速以上である場合、または第1先読み車速がアップ判定車速よりも小さい場合にはステップS112へ進む。
ステップS112では、第1先読み車速および第2先読み車速と、現在の変速段よりも1つHigh側の変速段のアップ判定車速とを比較する。ここでは第2先読み車速が現在の変速段よりも1つHigh側の変速段のアップ判定車速よりも小さく、かつ第1先読み車速が現在の変速段よりも1つHigh側の変速段のアップ判定車速よりも大きい場合にはステップ114へ進む。
ステップS112においてステップS114へ進む場合は、ドライビングモードスイッチ7がスポーツモードからノーマルモードへ変更されたが、ドライビングモードをスポーツモードからノーマルモードへ変更することを禁止してアップシフトが完了した時に、第1先読み車速が現在の変速段よりも1つHigh側の変速段のアップ判定車速よりも大きくなっている場合である。この場合にドライビングモードをスポーツモードからノーマルモードへ変更すると、既に第1先読み車速が現在の変速段よりも1つHigh側の変速段のアップ判定車速よりも大きいので、変速が開始される。しかし、このような場合には前述したようにオーバーレブが生じるおそれがある。そのためドライビングモードをスポーツモードに維持し、オーバーレブを防ぐためにステップS114へ進む。
一方、第2先読み車速が現在の変速段よりも1つHigh側の変速段のアップ判定車速よりも大きい場合、または第1先読み車速が現在の変速段よりも1つHigh側の変速段のアップ判定車速以下である場合にはステップS113へ進む。
ステップS113では、ドライビングモード切替可否判断を「許可」とする。
後述するステップS114によって、ドライビングモード切替可否判断が「禁止」となり、ドライビングモードの変更が禁止され、変速用車速が第2先読み車速から第1先読み車速へ変更されることを禁止した場合に、アップシフトが完了(ステップS110で「No」判定)することで、第1先読み車速に基づく目標変速比と第2先読み車速に基づく目標変速比とが一致する。この場合には、ステップS111において「No」と判定され、かつステップS112においてさらに「No」と判定されるとドライビングモード切替可否判断が「許可」となる。これによって次回の制御においてドライビングモードの変更の禁止を解除する。つまり、変速用車速を第2先読み車速から第1先読み車速へ変更することを可能とする(ステップS113が解除手段を構成する)。
ステップS114では、ドライビングモード切替可否判断を「禁止」とする。上記するようにドライビングモードがスポーツモードであり、ステップS109によって第2先読み車速がアップ判定車速よりも小さく、かつ第1先読み車速がアップ判定車速よりも大きいと判定された場合、つまり、第2先読み車速による目標変速比と第1先読み車速による目標変速比とが一致しない場合には、ステップS114によって、ドライビングモード切替可否判断が「禁止」となる。そのため次回の制御で、ドライビングモードスイッチがスポーツモードからノーマルモードへ変更された場合でも、次回の制御のステップS101においてドライビングモードはスポーツモードに維持され、次回の制御ではステップS103へ進まない。よって、このような場合には次回の制御では変速判定用車速が第2先読み車速から第1先読み車速へ変更されない(ステップS114が第1禁止手段を構成する)。
次に本実施形態における変速制御について図7から図12に示すタイムチャートを用いて説明する。ここではn段からn+1段へアップシフトを行う場合について説明する。
図7はドライビングモードスイッチ7がノーマルモードで維持されてアップシフトを行う場合のタイムチャートである。この場合では、第1先読み車速が変速判定用車速に設定される。
時間t0において第1先読み車速がアップ判定車速となると、n+1段への変速指令が出され、n+1段への変速を開始する。そして時間t1において実変速段が目標変速段であるn+1段となる。
図8はドライビングモードスイッチ7がスポーツモードに維持されてアップシフトを行う場合のタイムチャートである。この場合には、第2先読み車速が変速判定用車速に設定され、第1先読み車速がドライビングモード切替判定用車速に設定される。
時間t0において第1先読み車速がアップ判定車速となると、ドライビングモード切替可否判断が「禁止」となる。
時間t1において第2先読み車速がアップ判定車速となると、n+1段への変速指令が出され、n+1段への変速を開始する。
時間t2において実変速段がn+1段となり変速が完了すると、ドライビングモード切替可否判断が「許可」となる。
図9は第1先読み車速がアップ判定車速となる前にドライビングモードスイッチ7がノーマルモードからスポーツモードへ変更された場合のタイムチャートである。この場合には、まず第1先読み車速が変速判定用車速に設定され、第2先読み車速がドライビングモード切替可否判定用車速に設定される。
時間t0においてドライビングモードスイッチ7がノーマルモードからスポーツモードへ変更される。ここではドライビングモード切替可否判断は「許可」であるので、ドライビングモードスイッチ7の操作に応じてドライビングモードはスポーツモードへ変更される。ドライビングモードがスポーツモードとなったので、第2先読み車速が変速判定用車速に設定され、第1先読み車速がドライビングモード切替可否判定用車速に設定される。
時間t1において第1先読み車速がアップ判定車速となると、ドライビングモード切替可否判断が「禁止」となる。
時間t2において第2先読み車速がアップ判定車速となるとn+1段への変速指令が出され、n+1段への変速を開始する。
時間t3において、実変速段がn+1段となり変速が完了すると、ドライビングモード切替可否判断が「許可」となる。
図10は第1先読み車速がアップ判定車速となった後にドライビングモードスイッチ7がノーマルモードからスポーツモードへ変更される場合のタイムチャートである。この場合には、まず第1先読み車速が変速判定用車速に設定され、第2先読み車速がドライビングモード切替可否判断に設定される。
時間t0において第1先読み車速がアップ判定車速となるとn+1段への変速指令が出され、n+1段への変速を開始する。
時間t1においてドライビングモードスイッチ7がノーマルモードからスポーツモードへ変更されると、ドライビングモード切替可否判断は「許可」となっているので、ドライビングモードをノーマルモードからスポーツモードへ変更する。また、第2先読み車速はアップ判定車速よりも小さく、かつ第1先読み車速がアップ判定車速以上となるので、ドライビングモード切替可否判断は「禁止」となる。また、変速を開始しているので、変速判定用車速は第1先読み車速に維持されている。
なお、本実施形態では、ドライビングモードをノーマルモードからスポーツモードへ変更すると同時にドライビングモード切替可否判断を「禁止」としたが、ドライビングモード切替可否判断を「禁止」とするタイミングを例えば1回の制御だけ遅らせてもよい。
時間t2において、実変速段がn+1段となり変速が完了すると、ドライビングモード切替可否判断が「許可」となる。また、第1先読み車速がドライビングモード切替可否判定用車速に設定され、第2先読み車速が変速判定用車速に設定される。
図11は第1先読み車速がアップ判定車速となる前にドライビングモードスイッチ7がスポーツモードからノーマルモードへ変更される場合のタイムチャートである。この場合には、まず第2先読み車速が変速判定用車速に設定され、第1先読み車速がドライビングモード切替可否判断に設定されている。
時間t0においてドライビングモードスイッチ7がスポーツモードからノーマルモードへ変更される。ここでは、ドライビングモード切替可否判断は「許可」となっているので、ドライビングモードはノーマルモードへ変更される。そのため、第1先読み車速が変速判定用車速に設定され、第2先読み車速がドライビングモード切替可否判断に設定される。
時間t1において第1先読み車速がアップ判定車速となると、n+1段への変速指令が出され、n+1段への変速を開始する。
時間t2において実変速段が目標変速段であるn+1段となり変速が完了する。
図12は第1先読み車速がアップ判定車速となった後にドライビングモードスイッチ7がスポーツモードからノーマルモードへ変更される場合のタイムチャートである。この場合には、まず第2先読み車速が変速判定用車速として設定され、第1先読み車速がドライビングモード切替可否判断に設定されている。
時間t0において第1先読み車速がアップ判定車速となった場合に、第2先読み車速はアップ判定車速よりも小さいので、ドライビングモード切替可否判断は「禁止」となる。
時間t1においてドライビングモードスイッチ7がスポーツモードからノーマルモードへ変更される。しかし、ドライビングモード切替可否判断が「禁止」となっているので、ドライビングモードはスポーツモードに維持される。
時間t2において第2先読み車速がアップ判定車速となると、n+1段への変速指令が出され、n+1段への変速を開始する。
時間t3においてn+1段への変速が終了するとドライビングモード切替可否判断は「許可」となる。これによってドライビングモードはスポーツモードからノーマルモードへ変更される。また、第1先読み車速が変速判定用車速に設定され、第2先読み車速がドライビングモード切替判定用車速に設定される。
本実施形態では変速段を有する自動車用変速機について説明したが、これに限られることはない。例えば手動変速モード(Mモード)を備えた無段変速機(CVT)である自動車用変速機に本発明を適用しても良い。なお、この無段変速機は、Mモードで走行している場合に、エンジン回転速度が上限回転速度となると自動的にアップシフトを行う。この無段変速機においては、ドライビングモードがスポーツモード以外のモードである場合には、第1先読み車速に基づいて変速が行われ、そのときの変速時間は第1変速時間である。また、ドライビングモードがスポーツモードである場合には、第2先読み車速に基づいて変速が行われ、そのときの変速時間は第2変速時間である。
本発明の実施形態の効果について説明する。
ドライビングモードがスポーツモード以外である場合の第1先読み車速と、ドライビングモードがスポーツモードである場合の第2先読み車速とを算出し、ドライビングモードに応じて第1先読み車速または第2先読み車速を選択する。そして、選択した先読み車速がアップ判定車速となった場合に変速を開始する。これによって、ドライビングモードに応じて変速を行うことができる。そのため例えばドライビングモードとしてスポーツモードが選択された場合に所望されるエンジン回転速度よりも低いエンジン回転速度で変速が行われることを防止することができ変速時の運転性を向上することができる。例えば低速段における駆動力を確保して変速を行うことができる。また、例えばスポーツモード以外のモードが選択された場合に変速時間が長くなることによって生じるオーバーレブを防止することができる(請求項1に対応)。
ドライビングモードスイッチ7がスポーツモードからノーマルモードへ変更された場合でも、第1先読み車速がアップ判定車速よりも大きく、かつ第2先読み車速がアップ判定車速よりも小さい場合には、ドライビングモードをスポーツモードに維持する。これによってドライビングモードの切替によって生じるオーバーレブを防止することができる(請求項2に対応)。
ドライビングモードスイッチ7がスポーツモードからノーマルモードへ変更されたにもかかわらず、ドライビングモードをスポーツモードに維持して変速を行う場合に、変速が終了し、第1先読み車速と第2先読み車速とに基づく目標変速比が一致するとドライビングモードをノーマルモードに切り替える。これによって、運転者の意図に応じた変速をドライビングモードスイッチ7の操作に基づいて行うことができる(請求項3に対応)。
ドライビングモードがノーマルモードであり、第1先読み車速がアップ判定車速となり、変速を開始した後は第2先読み車速がアップ判定車速よりも大きくなるまで、ドライビングモードをスポーツモードへ変更することを禁止する。これによって一旦変速が開始されて直ぐに変速が中止されることを防止し、運転者に違和感を与えることを防止することができる(請求項4に対応)。
運転者の加速意図が大きいスポーツモードの第2変速時間をノーマルモードの第1変速時間よりも短くすることで、運転者の加速意図に応じて最適な変速制御を行うことができる(請求項5に対応)。
ドライビングモードスイッチ7の切り替えによってスポーツモードとノーマルモードとを切り替えることで、運転者の加速意図を容易に検知することができる(請求項6に対応)。
本実施形態では、運転者の加速意図をドライビングモードスイッチ7の切り替えによって検知したが、これに限られることはなく、周知技術により運転者の加速意図を検知しても良い。
また、運転者の加速意図に加えて、路面勾配を考慮して先読み車速を設定しても良い。この場合には、登坂路では車速の上昇が遅いため先読み車速を大きく設定し、後坂路では車速の上昇が早いため先読み車速を登坂路における先読み車速よりも小さくする。路面勾配は、Gセンサなどからの信号、または演算などによって求めることができる。
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。