JP2011048956A - 絶縁電線の製造方法および加熱装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】加熱効率が良く、エネルギーロスの小さい絶縁電線の製造方法および加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱装置4Eは、走行する金属線9の外周を覆う焼付炉42を備え、焼付炉42内で当該金属線9の外周に塗布された絶縁ワニスを加熱することで絶縁ワニスを金属線の外周に焼き付ける。この加熱装置4Eは、過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生装置44と、過熱水蒸気発生装置44からの過熱水蒸気を焼付炉42に導入する導入路42cとを備え、焼付炉42内に充満する過熱水蒸気により金属線9に塗布される絶縁ワニスを加熱する。過熱水蒸気は、伝熱効率が高いので、絶縁ワニスを急速に加熱することができる。
【選択図】図1
【解決手段】加熱装置4Eは、走行する金属線9の外周を覆う焼付炉42を備え、焼付炉42内で当該金属線9の外周に塗布された絶縁ワニスを加熱することで絶縁ワニスを金属線の外周に焼き付ける。この加熱装置4Eは、過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生装置44と、過熱水蒸気発生装置44からの過熱水蒸気を焼付炉42に導入する導入路42cとを備え、焼付炉42内に充満する過熱水蒸気により金属線9に塗布される絶縁ワニスを加熱する。過熱水蒸気は、伝熱効率が高いので、絶縁ワニスを急速に加熱することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、金属線の外周に絶縁ワニスを焼き付ける絶縁電線の製造方法、およびその方法に使用する加熱装置に関する。特に、加熱効率が良く、エネルギーロスの小さい絶縁電線の製造方法および加熱装置に関する。
従来から、導体となる金属線の外周に絶縁被覆を施した絶縁電線(例えば、エナメル線)が知られている。絶縁電線は、例えば、各種電気機器の配線や、モータや変圧器などの巻線として広く利用されている。
このような絶縁電線は、まず線引きダイスやローラダイスなどを用いた伸線工程により所望の線形・線径の金属線を作製し、この金属線に絶縁ワニスを塗布する。そして、金属線に塗布した絶縁ワニスを乾燥・硬化させ、金属線の外周にエナメルを焼き付けることで得られる。
金属線にエナメルを焼き付けるための焼付炉を備える加熱装置に関する技術は、例えば特許文献1〜3に開示されている。
しかし、従来の焼付炉では、熱源にヒータ(特許文献1)、熱風(特許文献2,3)を利用した外部加熱方式を採用しているため、軟化炉全体を加熱する必要があり、エネルギーロスが大きい。加えて、加熱ガスから金属線への伝熱効率が悪いため、目標とする金属線の温度よりも加熱ガスの温度を50〜100℃も高くする必要があり、エネルギーロスが大きい。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、加熱効率が良く、エネルギーロスの小さい絶縁電線の製造方法および加熱装置を提供することにある。
本発明絶縁電線の製造方法は、絶縁ワニスを外周に塗布した金属線を焼付炉内で走行させつつ加熱して、絶縁ワニスを金属線の外周に焼き付ける焼付工程を備える絶縁電線の製造方法に係る。そして、本発明絶縁電線の製造方法は、焼付炉内で、過熱水蒸気により絶縁ワニスを加熱することを特徴とする。
本発明加熱装置は、走行する金属線の外周を覆う焼付炉を備え、この焼付炉内で当該金属線の外周に塗布された絶縁ワニスを加熱することで、絶縁ワニスを金属線の外周に焼き付ける加熱装置に係る。そして、本発明加熱装置は、過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生装置と、過熱水蒸気発生装置からの過熱水蒸気を焼付炉内に導入する導入路とを備え、焼付炉で、過熱水蒸気により絶縁ワニスを加熱することを特徴とする。
過熱水蒸気は、加熱ガスに比べて伝熱効率が高いので、被加熱物を急速に加熱することができる。例えば、被加熱物を所望の温度とするための過熱水蒸気の温度は、前記所望の温度と殆ど同じか10℃程度高い温度で十分である。そのため、上記本発明絶縁電線の製造方法および加熱装置によれば、金属線に塗布された絶縁ワニスを効率良く加熱することができ、その絶縁ワニスの加熱の際にエネルギーロスが少ない。
本発明絶縁電線の製造方法の一形態として、過熱水蒸気を焼付炉内に循環させる構成とすることが好ましい。また、この方法を達成するための本発明加熱装置として、導入路に加えて、焼付炉の軸方向における当該導入路から所定の間隔を空けて形成される排出路と、導入路と前記排出路とを繋ぐ循環路とを備える構成とすることが好ましい。
上記構成によれば、焼付炉の軸方向に過熱水蒸気を行き渡らせることができる。また、過熱水蒸気を循環させる構成とすることで、焼付炉に導入した過熱水蒸気を再利用することができるので、エネルギー効率に優れた加熱装置とすることができる。
本発明絶縁電線の製造方法の一形態として、焼付炉の入口側における過熱水蒸気の温度は、焼付炉の出口側における過熱水蒸気の温度よりも低いことが好ましい。また、この方法を達成するための本発明加熱装置として、加熱装置に備わる焼付炉は、その軸方向における入口側に低温領域を、出口側に高温領域を有することが好ましい。この場合、この加熱装置は、低温領域に所定温度の過熱水蒸気を導入する低温側導入路と、高温領域に前記所定温度よりも高温の過熱水蒸気を導入する高温側導入路とを備えるようにすると良い。
絶縁ワニスは樹脂を有機溶剤に溶かしたものであり、この絶縁ワニスを加熱硬化することで金属線の外周に焼き付ける。この焼き付けの際、加熱硬化後の絶縁被覆中に有機溶剤が残留しないことが好ましい。ここで、焼付炉の入口側で過熱水蒸気の温度が高すぎると、絶縁ワニスに含まれる有機溶剤が十分に除去されないうちに絶縁ワニスの表面側で樹脂の硬化が起こり、その結果、エナメルの内部に気泡などが形成されてエナメルの絶縁性が低下する虞がある。このような問題点に対して上記構成とすることにより、金属線の絶縁ワニスが焼付炉の入口側でいきなり高温の過熱水蒸気に晒されることが無くなり、絶縁ワニスに含まれる有機溶剤を効果的に除去することができる。また、入口側よりも温度の高い過熱水蒸気により絶縁ワニスに含まれる樹脂を硬化させることで、健全なエナメルを形成することができる。
本発明絶縁電線の製造方法および加熱装置によれば、金属線の外周に塗布した絶縁ワニスを効率良く硬化させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、導線(金属線)の外周にエナメル被覆(絶縁被覆)を施した絶縁電線製造装置に、本発明加熱装置を適用した例を説明する。
[第1実施形態]
<全体構成>
図1に示す絶縁電線製造装置100は、伸線装置2と、金属線軟化装置3と、エナメル被覆装置4とを備え、繰出リール1から繰り出される金属線9を伸線・軟化した後、金属線9の外周にエナメル被覆を形成し、完成した絶縁電線9Eを巻取リール5に巻き取るという操作を自動で行う装置である。絶縁電線製造装置100に備わる伸線装置2は、繰出リール1から繰り出される金属線9を伸線する装置である。また、金属線軟化装置3は、伸線後の金属線9を加熱して軟化させる装置である。そして、エナメル被覆装置4は、軟化後の金属線9の外周にエナメルを被覆させる装置である。この本実施形態の絶縁電線製造装置100の最も特徴とするところは、エナメル被覆装置4に備わる加熱装置4Eの構成にある。以下、絶縁電線9Eの製造工程に従って、絶縁電線製造装置100に備わる各装置2〜4を詳細に説明する。
<全体構成>
図1に示す絶縁電線製造装置100は、伸線装置2と、金属線軟化装置3と、エナメル被覆装置4とを備え、繰出リール1から繰り出される金属線9を伸線・軟化した後、金属線9の外周にエナメル被覆を形成し、完成した絶縁電線9Eを巻取リール5に巻き取るという操作を自動で行う装置である。絶縁電線製造装置100に備わる伸線装置2は、繰出リール1から繰り出される金属線9を伸線する装置である。また、金属線軟化装置3は、伸線後の金属線9を加熱して軟化させる装置である。そして、エナメル被覆装置4は、軟化後の金属線9の外周にエナメルを被覆させる装置である。この本実施形態の絶縁電線製造装置100の最も特徴とするところは、エナメル被覆装置4に備わる加熱装置4Eの構成にある。以下、絶縁電線9Eの製造工程に従って、絶縁電線製造装置100に備わる各装置2〜4を詳細に説明する。
≪伸線装置≫
伸線装置2は、繰出リール1から繰り出される金属線9を所望の線形、所望の線径となるように伸線加工するためのものである。伸線装置2は、例えば、複数の伸線ダイス20a〜20dを備え、この伸線ダイス20a〜20dに金属線9を挿通させることで金属線9を所望の線形・線径に徐々に近づけることができる。なお、伸線ダイス20a〜20dは、線引きダイスであっても良いし、ローラダイスであっても良い。
伸線装置2は、繰出リール1から繰り出される金属線9を所望の線形、所望の線径となるように伸線加工するためのものである。伸線装置2は、例えば、複数の伸線ダイス20a〜20dを備え、この伸線ダイス20a〜20dに金属線9を挿通させることで金属線9を所望の線形・線径に徐々に近づけることができる。なお、伸線ダイス20a〜20dは、線引きダイスであっても良いし、ローラダイスであっても良い。
伸線装置2は、金属線9の加工を容易にするために金属線9およびダイス20a〜20dの少なくとも一方を加熱する加熱機構(図示せず)を備えていても良い。また、金属線9を加工する際、金属線9とダイス20a〜20dとの間に潤滑剤が介在されるようにする潤滑剤供給機構(図示せず)を備えていても良い。
伸線装置2で伸線する金属線9の材質は、作製する絶縁電線9Eの用途に応じて適宜選択することができる。絶縁電線9Eの芯材としては、例えばCuやCu合金、AlやAl合金などを挙げることができる。また、金属線9は、その伸線前の線径が20μm〜100mm程度のものを使用し、伸線後の金属線9の線径が、20μm〜20mm程度となるように伸線すれば良い。伸線後の線形は特に限定されず、例えば、真円を含む楕円形や、矩形を含む多角形であっても良い。
≪金属線軟化装置≫
金属線軟化装置3は、金属線9を加熱するための軟化炉30と、軟化炉30に導入する加熱ガスを生成する流体加熱装置31とを備え、伸線装置2で伸線された金属線9を加熱ガスで熱処理することで、金属線9に導入された加工歪みを除去するなどして、金属線9を軟化させるための装置である。
金属線軟化装置3は、金属線9を加熱するための軟化炉30と、軟化炉30に導入する加熱ガスを生成する流体加熱装置31とを備え、伸線装置2で伸線された金属線9を加熱ガスで熱処理することで、金属線9に導入された加工歪みを除去するなどして、金属線9を軟化させるための装置である。
軟化炉30は、その内部に金属線9を走行させることができる走行路30Rを備え、走行路30R(軟化炉30)の入口30aから挿入された金属線9が走行路30R(軟化炉30)の出口30bから出て行くまでの間に、金属線9を加熱することができる。また、軟化炉30は、金属線9が導入される入口30a側が高く、金属線9が導出される出口30b側が低くなるように形成されている。この軟化炉30は、その内部に加熱流体(代表的には、不活性ガス)を導入でき、かつ、導入した加熱流体により金属線9を加熱できる構成となっている。
上記のような加熱ガスは、窒素などの不活性ガスを流体加熱装置31で加熱した後、軟化炉30の導入路30cを通じて軟化炉30内に導入される。導入路30cは、軟化炉30(走行路30R)の出口30b寄りに設けることが好ましい。出口30b寄りに導入路30cを設けると、軟化炉30の出口30bは入口30aよりも下方に位置しているため、出口30b側で軟化炉30内に導入された加熱ガスは入口30a側に向かって上昇する。その結果、軟化炉30内の走行路30R全体に加熱ガスを行き渡らせ、金属線9を効率的に加熱することができる。また、加熱ガスを軟化炉30に充満させることで、軟化炉30から空気を追い出すことができ、その結果として金属線9の酸化を防止することができる。なお、軟化炉30に導入する加熱ガスの温度は、金属線9の結晶構造を所望の状態とするために要求される金属線9自身の温度よりも50〜100℃近く高い温度とすると良い。
以上説明した金属線軟化装置3はさらに、軟化炉30の出口30b近傍に、液体冷媒(代表的には純水)を満たした冷媒槽32を備えていても良い。冷媒槽32は、軟化炉30で熱処理された金属線9を冷却するためのものであり、高温の金属線9の表面が酸化することを防止する。冷媒槽32中の液体冷媒は常に循環する構成とすることで、金属線9の効率的な冷却を行える。
≪エナメル被覆装置≫
エナメル被覆装置4は、周回装置40と、塗布装置41と、加熱装置4Eとを備える。
エナメル被覆装置4は、周回装置40と、塗布装置41と、加熱装置4Eとを備える。
エナメル被覆装置4に備わる周回装置40は、上下に対向配置されるプーリー40d、40uを有し、このプーリー40d、40uに掛け渡される金属線9を周回させる装置である。ここで、図1ではプーリー42d、42uは一つずつしか示されていないが、実際には紙面奥側に複数並列されており、順次金属線9を掛け渡すプーリー42d、42uを紙面奥側にズラしていくことで、金属線9を周回させることができるようになっている。一定回数周回させて表面にエナメルを被覆させた金属線9、即ち、絶縁電線9Eは、最終的には巻取リール5に巻き取られる。
塗布装置41は、絶縁ワニスを貯留する絶縁ワニス槽41tと、絶縁ワニス槽41tを通過した金属線9が挿通される塗布ダイス41dとを備え、周回する金属線9の外周に絶縁ワニスを塗布する装置である。絶縁ワニス槽41tの底部には、周回する金属線9が貫通されており、絶縁ワニス槽41tを通過した金属線9の外周には絶縁ワニスが塗布される。そして、金属線9の外周に塗布された絶縁ワニスは、金属線9が絶縁ワニス槽41tよりも金属線9の走行方向側にある塗布ダイス41dを通過することでほぼ均一な厚さに整えられる。この塗布ダイス41dは、紙面奥側に複数整列され、紙面奥側に行くほどダイス孔の径が大きくなっている。そのため、この塗布装置41を使用すれば、金属線9の外周に形成されるエナメル被覆を徐々に厚くしていくことができるので、均一な厚さのエナメル被覆を形成できる。
加熱装置4Eは、焼付炉42と、循環路43と、過熱水蒸気発生装置44とを備える。この加熱装置4Eは、周回装置40により周回走行する絶縁ワニス付きの金属線9を過熱水蒸気で加熱して、絶縁ワニスに含まれる有機溶剤を揮発させると共に、絶縁ワニスに含まれる樹脂を硬化させ、金属線9の外周にエナメル被覆を定着させるためのものである。
まず、焼付炉42について説明すると、焼付炉42は、その内部に周回する金属線9の一部を収納する走行路42Rを備える。また、焼付炉42は、走行路42Rの入口42a側で走行路42Rに連通し、走行路42R内に過熱水蒸気を導入するための導入路42cと、走行路42Rの出口42b側で走行路42Rに連通し、走行路42R内の過熱水蒸気を排出するための排出路42dとを備える。ここで、焼付炉42は、重力による絶縁ワニスの垂れを防止するために、焼付炉42(走行路42R)の入口42aよりも出口42bを高くすることが好ましい。より好ましくは、焼付炉42は、図示するように走行路42Rが出口42bを上に向けて鉛直となる倒立状態とする。
なお、焼付炉42(走行路42R)の軸方向のほぼ同じ位置で金属線9を周方向に囲むように複数の導入路42cを配置しても良い。このような構成であれば、絶縁ワニスを周方向に均等に加熱することができ、エナメルの健全性を向上させることができる。
次に、循環路43は、導入路42cと排出路42dとを繋ぐ管路であって、その途中に後述する過熱水蒸気発生装置44の蒸気加熱装置44hが接続されている。さらに、循環路43は、その内部を流通する過熱水蒸気を排出路42dから導入路42cに向かって循環させる循環ファン43fを有する。
最後に、過熱水蒸気発生装置44について説明すると、過熱水蒸気発生装置44は、例えば、ボイラなどの水蒸気発生装置44bと、水蒸気発生装置44bで発生した飽和水蒸気を過熱水蒸気にする蒸気加熱装置44hとを備える構成とすることが挙げられる。この場合、蒸気加熱装置44h内の飽和水蒸気の流路であるパイプを加熱することで、パイプ内を通過する飽和水蒸気を過熱水蒸気にする構成とすることができる。飽和水蒸気を過熱水蒸気にするための加熱方式としては、液体燃料やガス燃料を燃焼させる燃料燃焼方式と、前記パイプを高周波により誘導加熱する電気加熱方式とを挙げることができる。その他、過熱水蒸気発生装置44には、過熱水蒸気の温度を監視する温度監視装置を備えていても良い。
以上の構成を備える加熱装置4Eによれば、焼付炉42の走行路42R内を走行する金属線9に塗布された絶縁ワニスを効率的に加熱することができる。絶縁ワニスを加熱するメカニズムを過熱水蒸気の流れを追って説明すると以下のようになる。
まず、過熱水蒸気発生装置44で生成された過熱水蒸気は、循環路43に導入され、循環ファン43fの働きにより導入路42cを介して走行路42R(焼付炉42)内に導入される。このとき、導入路42cは鉛直下方側に傾けて配されているため、走行路42R内に導入された過熱水蒸気は、鉛直上方に配される排出路42dに向かって上昇する。その結果、走行路42R全体に過熱水蒸気が行き渡り、金属線9が効率的に加熱される。
次いで、排出路42dに到達した過熱水蒸気は、循環ファン43fにより形成された流れに乗って循環路43に排出され、再び過熱水蒸気発生装置44の蒸気加熱装置44hに導入される。還流された過熱水蒸気は導入時よりも低温になっているものの、水蒸気発生装置44bからの水蒸気(100℃)よりも遥かに高温である。そのため、還流された過熱水蒸気を使用すれば、水蒸気発生装置44bからの水蒸気を加熱するよりも少ないエネルギーで目的の温度の過熱水蒸気を生成することができる。但し、循環の過程で水蒸気が失われていくため、水蒸気を追加する必要があり、水蒸気発生装置44bから蒸気加熱装置44hへの水蒸気の供給は停止しないようにする。
以上の構成を備える加熱装置4Eによれば、焼付炉42に導入する過熱水蒸気の温度は、500℃以下とすることができる。この温度は、従来、エナメルの焼付に使用していた加熱ガスの温度よりも50〜100℃近く低い温度である。過熱水蒸気の温度を従来の加熱空気よりも低くできるのは、過熱水蒸気の伝熱効率が高いため、過熱水蒸気から絶縁ワニスに迅速に伝熱するからである。また、過熱水蒸気を使用する利点として、過熱水蒸気から絶縁ワニスへ迅速に伝熱するため、従来よりも焼付炉42の長さを短くしたり、金属線9の線速を大きくしたりすることができることが挙げられる。焼付炉42が短くなるとその分だけ絶縁電線製造装置100の構成を小型化することができるし、線速を大きくすると絶縁電線9Eの生産性を向上させることができる。
[第2実施形態]
第2実施形態における絶縁電線製造装置は、加熱装置の焼付炉内に2温領域が形成されるようにした点で第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態との相違点である加熱装置を図2に基づいて説明する。
第2実施形態における絶縁電線製造装置は、加熱装置の焼付炉内に2温領域が形成されるようにした点で第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態との相違点である加熱装置を図2に基づいて説明する。
本実施形態の加熱装置4EEは、軸方向に2つの領域を備える焼付炉420と、2系統の循環路43D,43Hと、各循環路43D,43Hに独立して過熱水蒸気を供給する過熱水蒸気発生装置44D,44Hと、を備える。過熱水蒸気発生装置44D(44H)は、第1実施形態の過熱水蒸気発生装置と同様に、水蒸気を発生させる水蒸気発生装置44Db(44Hb)と、循環路43D(43H)の途中に設けられて、水蒸気を過熱水蒸気にする蒸気加熱装置44Dh(44Hh)とを備える。
加熱装置4EEの焼付炉420には、2つの導入路42c,42eと2つの排出路42d,42fが設けられている。導入路42cは、走行路42Rの入口42aに近接する位置に、排出路42dと導入路42eは、走行路42Rの中間位置に、排出路42fは、走行路42Rの出口42bに近接する位置に形成されている。そして、導入路42c(42e)と排出路42d(42f)とを繋ぐように循環路43D(43H)が設けられ、この循環路43D(43H)に設けられる循環ファン43Df(43Hf)の働きにより2系統の過熱水蒸気の循環流路が形成される。その結果、焼付炉420は、紙面下側の循環流路の一部を構成する乾燥領域(低温領域)42Dと、紙面上側の循環流路の一部を構成する硬化領域(高温領域)42Hの2つに便宜上区分される。
ここで、焼付炉420(走行路42R)内において乾燥領域42Dと硬化領域42Hとに明確な温度差が形成されるようにすることが好ましい。例えば、図2に示すように一様な内径の走行路42Rの場合、一方の領域に導入した過熱水蒸気が他方の領域に拡散しやすい。そこで、例えば、排出路42dを下向きにしたり、導入路42eを上向きにしたりするなどして、各領域における明確な循環流路の形成を促すと良い。その他、両領域の間の位置(排出路42dと導入路42eとの間の位置)に仕切板42pを設けて、走行路42R内を機械的に区画しても良い。この場合、仕切板42pには金属線9の挿通孔を設けておけば良い。
乾燥領域42Dは主に、絶縁ワニスに含まれる有機溶剤を揮発させることを目的として絶縁ワニスを加熱するための領域である。そのため、この乾燥領域42Dにおける過熱水蒸気の温度は、絶縁ワニスの樹脂の硬化温度以下で有機溶剤の揮発温度以上とすることが好ましい。例えば、一般的な絶縁ワニスを使用するのであれば、過熱水蒸気の温度を50〜150℃とすると良い。もちろん、過熱水蒸気の温度調節は、蒸気加熱装置44Dhにより行う。
一方、硬化領域42Hは主に、絶縁ワニスに含まれる樹脂を硬化させることを目的として絶縁ワニスを加熱するための領域である。そのため、この硬化領域42Hにおける過熱水蒸気の温度は、樹脂の硬化温度以上とすることが好ましい。例えば、一般的な絶縁ワニスであれば、過熱水蒸気の温度を300〜500℃とすると良い。もちろん、過熱水蒸気の温度調節は、蒸気加熱装置44Hhにより行うと良い。
以上説明したように、焼付炉420を乾燥領域43Dと硬化領域42Hとに分け、乾燥領域42Dの過熱水蒸気の温度を硬化領域42Hの過熱水蒸気の温度よりも低くすることで、絶縁ワニスに含まれる有機溶媒をほぼ完全に除去した状態で絶縁ワニスに含まれる樹脂を硬化させることができる。その結果、気泡などの欠陥のない健全なエナメルを金属線9の外周に形成することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更等可能である。例えば、図2に示す加熱装置4EEにおいて、1つ水蒸気発生装置44Db(または44Hb)から2つの蒸気加熱装置44Dh,44Hhに水蒸気を供給する構成としても良い。また、乾燥領域42Dと硬化領域42Hの一方を過熱水蒸気による加熱とし、他方を高周波誘導加熱やマイクロ波加熱、ガス加熱のいずれかとしても良い。その場合、乾燥領域42Dに高周波誘導加熱を用い、硬化領域42Hに過熱水蒸気を用いることが好適である。高周波誘導加熱は、金属線9を内部から加熱できるため、金属線9の外周にある絶縁ワニスから有機溶剤を効果的に揮発させることができるからである。その他、図1に示す軟化炉30で金属線9を加熱する加熱流体として過熱水蒸気を用いても良い。
本発明の加熱装置および絶縁電線の製造方法は、絶縁電線の製造に好適に利用することができる。
100 絶縁電線製造装置
1 繰出リール
2 伸線装置
20a〜20d 伸線ダイス
3 金属線軟化装置
30 軟化炉
30a 入口 30b 出口 30c 導入路 30R 走行路
31 流体加熱装置
32 冷媒槽
4 エナメル被覆装置
40 周回装置
40d,40u プーリー
41 塗布装置
41t 絶縁ワニス槽 41d 塗布ダイス
4E,4EE 加熱装置
42,420 焼付炉
42D 乾燥領域 42H 硬化領域
42a 入口 42b 出口
42c,42e 導入路 42d,42f 排出路
42R 走行路
42p 仕切板
43,43D,43H 循環路
43f、43Df,43Hf 循環ファン
44,44D,44H 過熱水蒸気発生装置
44b、44Db,44Hb 水蒸気発生装置
44h、44Dh,44Hh 蒸気加熱装置
5 巻取リール
9 金属線 9E 絶縁電線
1 繰出リール
2 伸線装置
20a〜20d 伸線ダイス
3 金属線軟化装置
30 軟化炉
30a 入口 30b 出口 30c 導入路 30R 走行路
31 流体加熱装置
32 冷媒槽
4 エナメル被覆装置
40 周回装置
40d,40u プーリー
41 塗布装置
41t 絶縁ワニス槽 41d 塗布ダイス
4E,4EE 加熱装置
42,420 焼付炉
42D 乾燥領域 42H 硬化領域
42a 入口 42b 出口
42c,42e 導入路 42d,42f 排出路
42R 走行路
42p 仕切板
43,43D,43H 循環路
43f、43Df,43Hf 循環ファン
44,44D,44H 過熱水蒸気発生装置
44b、44Db,44Hb 水蒸気発生装置
44h、44Dh,44Hh 蒸気加熱装置
5 巻取リール
9 金属線 9E 絶縁電線
Claims (6)
- 絶縁ワニスを外周に塗布した金属線を焼付炉内で走行させつつ加熱して、絶縁ワニスを金属線の外周に焼き付ける焼付工程を備える、絶縁電線の製造方法であって、
前記焼付炉内で、過熱水蒸気により絶縁ワニスを加熱することを特徴とする絶縁電線の製造方法。 - 前記過熱水蒸気を焼付炉内に循環させることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線の製造方法。
- 前記焼付炉の入口側における過熱水蒸気の温度は、前記焼付炉の出口側における過熱水蒸気の温度よりも低いことを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁電線の製造方法。
- 走行する金属線の外周を覆う焼付炉を備え、この焼付炉内で当該金属線の外周に塗布された絶縁ワニスを加熱することで、絶縁ワニスを金属線の外周に焼き付けるための加熱装置であって、
過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生装置と、
過熱水蒸気発生装置からの過熱水蒸気を焼付炉内に導入する導入路と、を備え、
前記焼付炉で、過熱水蒸気により絶縁ワニスを加熱することを特徴とする加熱装置。 - 前記焼付炉の軸方向における前記導入路から所定の間隔を空けて形成される排出路と、
前記導入路と前記排出路とを繋ぐ循環路と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の加熱装置。 - 前記焼付炉は、
その軸方向における入口側に低温領域を、出口側に高温領域を有し、
前記低温領域に所定温度の過熱水蒸気を導入する低温側導入路と、
前記高温領域に前記所定温度よりも高温の過熱水蒸気を導入する高温側導入路と、
を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の加熱装置。
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