JP2011046936A - ポリマーアロイとその製造方法および成形品 - Google Patents

ポリマーアロイとその製造方法および成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂をカオス混合による溶融混練することにより、ポリマーアロイの分散相の構造を微細に制御する製造方法を提供する。
【解決手段】分散相の相関長が0.001μm〜0.5μmの非周期構造であるポリマーアロイにおいて、分散相の面積(S)、分散相の周囲長(L)とするとき、分散相のコンパクトネス(C)が、0.05≦(C)≦0.8であるポリマーアロイは、混合する樹脂が本来有する、優れた耐熱性、機械特性を保持した状態で、さらには透明性を有した成形品を得ることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリマーアロイとその製造方法に関する。本発明は、特に、優れた耐熱性、機械特性を持ち、構造材料として有用に用いることができ、さらには優れた透明性を持ち、透明材料として有用に用いることができるポリマーアロイとその製造方法に関する。
2成分の樹脂からなるポリマーアロイには、非相溶系、相溶系、部分相溶系がある。相溶系は、2成分の樹脂がガラス転移温度以上、熱分解温度以下の実用的な全領域において相溶する。非相溶系は、2成分の樹脂が全領域で非相溶となる。部分相溶系は、2成分の樹脂が、ある領域で相溶し、別の領域で相分離状態とすることでスピノーダル分解が生じる。一般的に相溶系ポリマーアロイでは、分子オーダーで相溶するため、混合する樹脂成分の中間的な性質が得られることが多い。そこで、2成分の樹脂の特性を活かすため、非相溶系や、部分相溶系のポリマーアロイの検討が盛んに行われている。
特許文献1には、ポリカーボネート樹脂と、ポリブチレンテレフタレート樹脂をスピノーダル分解により、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造とすることで、機械強度が改良されることが開示されている。特許文献1記載の方法は、押出機中で剪断をかけることにより、ポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂を相溶化させ、その後スピノーダル分解せしめてアロイ構造を形成させるものである。特許文献1に記載の方法は、一般的な非相溶となる樹脂の組み合わせでは、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を形成させることができないといった制限があり、また、均一に剪断をかけることが難しく、分散相の均一性が低くなるといった問題があった。
特許文献2では、ポリマーアロイにおいて、構成する熱可塑性樹脂成分のうち少なくとも1つの熱可塑性樹脂成分の前駆体をオリゴマーもしくはモノマーとすることで、残りの熱可塑性樹脂成分と相溶化し、さらに、2種類の樹脂の共存下で化学反応させることによりスピノーダル分解を誘発させることにより、微細かつ均一に構造制御されたポリマーアロイを得られることが開示されている。特許文献2記載の方法においても、少なくとも1つの熱可塑性樹脂成分の前駆体と残りの熱可塑性樹脂成分を相溶化させる必要があった。このため、非相溶となる樹脂の組み合わせでは、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を形成させることができないといった制限がある。
一方、非相溶系でのポリマーアロイの場合、一般的に1μm以上の分散径を有す球状分散となるが、近年ではその分散径を細かくする試みもされてきている。
特許文献3には、ポリエーテルイミド樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂からなる非相溶系ポリマーアロイに対し、溶融混練時のせん断力を高め、また相溶化剤を添加することにより、数平均分散粒子径1000nm以下に分散せしめることにより靱性が改良されることが開示されている。特許文献3の方法では、得られる構造体は不均一な球状の分散となり、耐熱性に関する向上効果は十分ではなかった。
特開2003−286414号公報 国際公開2009/041335号 特開2009−46641号公報
本発明は、混合する樹脂が本来有する、優れた耐熱性、機械特性を保持した状態で、さらには、透明性を有したポリマーアロイを提供することを課題とする。
本発明は、少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂をカオス混合による溶融混練するポリマーアロイの製造方法である。
さらに、本発明は、少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂を溶融混練して得られるポリマーアロイであり、かつ該ポリマーアロイ中の分散相の相関長が0.001μm〜0.5μmの非周期構造であり、さらに分散相の面積(S)、分散相の周囲長(L)とするとき、下記式(1)
C=4πS/L (1)
で定義される分散相のコンパクトネス(C)が、0.05≦(C)≦0.8であるポリマーアロイである。
本発明のポリマーアロイは、混合する樹脂が本来有する、優れた耐熱性、機械特性を保持した状態で、さらには透明性を有した成形品を得ることができる。このため、本発明のポリマーアロイは、優れた耐熱性、機械特性、透明性を活かした各種成形品として有用に用いることができる。本発明のポリマーアロイは、例えば、ポリメチレンメタクリレート樹脂と、耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂の特徴を大きく活かして、広い組成範囲で耐熱性が向上し、通常得られない透明成形品をも得ることができる。
実施例2の透過型電子顕微鏡写真である。 比較例1の透過型電子顕微鏡写真である。 相構造の形状の模式図である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂をカオス混合による溶融混練することを特徴とするポリマーアロイの製造方法である。
一般に、水などの粘性の低い流体を混合する場合には、流れを乱流化させることで効率良く混合できる。粘性の高い流体を混合する場合は、流れを乱流化させるには多大なエネルギーを要すことから、流れを乱流化させて、均一に混合させることが難しい。化学工学の分野では、層流状態で如何に効率よく、しかも一様な混合をさせる混合方法の研究が行われ、近年、カオス混合(chaotic mixing)の研究が発展してきている。
カオス混合について説明する。2つの流体の混合を考えた場合、初期の2流体の境界面上のすべての点に対して、その位置を初期値として流体粒子の運動を支配する方程式を解くと、境界面の時間発展を求めることができる。2流体がすみやかに混合するためには,この境界面は小さい間隔で折りたたまれていく必要があることから、境界面の面積は急激に増加しなければならず、最初に、ごく近くにいた境界面上の2点間の距離は、急激に増大する必要がある。この様に、流体の運動を支配する方程式の解で、2点間の距離が、時間と共に指数関数的に増大するカオス解をもつ混合のことをカオス混合と呼ぶ。カオス混合は、例えば、Chaos, Solitons & Fractals Vol.6 p425-438に記載されている。
カオス混合は、これまで液体等の流体の混合に用いられてきた。本発明は、カオス混合が、樹脂の溶融混練においても有効であることを見出したものである。樹脂をカオス混合で溶融混練させる方法としては、押出機としては、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または2軸押出機等の通常使用されている公知の混合機を用いることができ、中でも生産性の観点から、単軸または2軸押出機の使用が好ましく、最も好ましくは、2軸押出機が使用される。樹脂の溶融混練時に、混練温度を下げ、溶融粘度を上げること、及び、カオス混合状態を発生させることに有効なスクリューを用いることにより、アロイ成分の引き伸ばし及び折り畳みを繰り返すカオス混合を生じさせることができる。
本発明では、カオス混合の混練温度は、使用する樹脂の組み合わせによって異なるが、使用する樹脂の中で最もガラス転移温度の高い樹脂を基準として、そのガラス転移温度より、1〜70℃、高く設定することが好ましく、さらには5〜65℃、高く設定することがより好ましい。混練温度を、使用する樹脂の中で最もガラス転移温度の高い樹脂のガラス転移温度より、1℃未満の温度範囲で高く設定した場合、粘度が高すぎ溶融混練することが難しく、また70℃超す温度範囲で高く設定した場合、アロイ成分の引き伸ばしが十分にできずカオス混合状態とならない場合があるため好ましくない。
本発明では、カオス混合は、粒子追跡法(particle tracking method)において、線長さ(L)、初期線長さ(L)とするとき、仮想的な線の伸びの対数(lnL/L)が、2以上となるカオス混合であることが好ましい。仮想的な線の伸びの対数(lnL/L)が大きい場合、流体の運動を支配する方程式の解で、2点間の距離が、時間と共に指数関数的に増大しやすいことを意味している。かかる粒子追跡法は、時間t=0で評価するスクリューの上流面の断面内に1000個の粒子の初期位置をランダムに決め、解析によって求めた評価するスクリューの速度場に伴う移動をシミュレーションにより追跡する方法であり、各粒子の座標の履歴の記録から、線長さ(L)、初期線長さ(L)とするときの仮想的な線の伸びの対数(lnL/L)を求めることができる。粒子追跡法は、例えば、Journal of Non-Newtonian Fluid Mechanics Vol.91, Issues 2-3, 1 July 2000, p273-295に記載されている。
本発明では、カオス混合状態に有効なスクリューとは、粒子追跡法において、線長さ(L)、初期線長さ(L)とするとき、仮想的な線の伸びの対数(lnL/L)が、2以上となるスクリューであることが好ましく、さらには3以上となるスクリューであることが好ましく、最も好ましくは4以上となるスクリューであることが好ましい。
本発明では、カオス混合状態を発生させることに有効なスクリューを用いることが好ましい。カオス混合状態を発生させることに有効な2軸押出機のスクリューとしては、ニーディングディスクよりなり、かかるニーディングディスクのディスク先端側の頂部とその後面側の頂部との角度である螺旋角度θが、スクリューの半回転方向に0°<θ<90°の範囲内にあるツイストニーディングディスクが挙げられる。さらには、フライトスクリューからなり、かかるフライトスクリューのフライト部にスクリュー先端側から後端側に向けて樹脂通路が形成されているバックミキシングスクリューをツイストニーディングディスクと交互に組み合わせることでカオス混合をより効果的に生じさせることができる。
本発明では、二軸スクリュー押出機により、カオス混合による溶融混練を行うことが好ましい。押出機を用いて溶融混練を行う場合、押出機のスクリューの全長に対する、カオス混合しつつ溶融混練するゾーン(カオス混合ゾーン)の合計の長さの割合が、5〜80%の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜70%、さらに好ましくは、15〜60%の範囲である。また、本発明において、二軸押出機のカオス混合しつつ溶融混練するゾーン(カオス混合ゾーン)は、スクリュー内の特定の位置に偏在することなく、全域に渡って配置されることが好ましい。
本発明では、ポリマーアロイは、カオス混合により、アロイ成分の引き伸ばし及び折り畳みを繰り返すことが好ましい。カオス混合を行うことにより、ポリマーアロイの分散相が微細化し、好ましくは、分散相の相関長が0.001μm〜0.5μmの特徴的な非周期構造となるケースがある。ここで分散相とは、樹脂組成物中最も添加量の多い成分が海相(連続相またはマトリックス)を形成し、その他の樹脂成分が島相(分散相)を形成してなる構造を指し、非周期構造とは、規則的な周期構造がみられないことを指し、例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察により、周期構造がみられないことで確認することができる。
本発明における熱可塑性樹脂とは、加熱溶融により成形可能な樹脂である。樹脂は、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ゴム質重合体、ポリアルキレンオキサイド樹脂等から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂である。
本発明では、少なくとも1成分は高い粘度を保持可能な非晶性樹脂であることが好ましく、より好ましくは少なくとも2成分は非晶性樹脂であることが好ましい。この観点からは、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂であることが好ましい。
本発明における少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂は、好ましくは、少なくとも2成分以上の非相溶な熱可塑性樹脂である。本発明における、2成分以上の非相溶な熱可塑性樹脂とは、ガラス転移温度以上、熱分解温度以下の実用的な全領域において相溶状態とならない熱可塑性樹脂の組み合わせであり、すなわち異なる2成分以上の樹脂が主成分とする相を互いに0.001μm以上の相構造を形成する熱可塑性樹脂の組み合わせである。相溶しているか否かは、例えばPolymer Alloys and Blends, Leszek A Utracki, hanser Publishers,Munich Viema New York,P64,に記載の様に、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。具体的には、それぞれの熱可塑性樹脂の示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度が単一となれば相溶であり、複数のガラス転移温度が観察されれば、その熱可塑性樹脂の組み合わせは非相溶であると判断することができる。
本発明により、優れた耐熱性を有するポリマーアロイを得るためには、非晶性樹脂の中でもガラス転移温度の高い非晶性樹脂が好ましく、例えばポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等が好ましい非晶性樹脂として挙げることができる。
本発明における好ましい熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、ポリカーボネート樹脂とポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂とポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂とポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂とポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂とポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂とポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂とポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂とポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂とABS樹脂、ポリスルホン樹脂とポリアミド樹脂、ポリスルホン樹脂とポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂とポリ乳酸樹脂、ポリスルホン樹脂とABS樹脂、ポリエーテルイミド樹脂とポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂とポリエステル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂とポリ乳酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂とABS樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂とポリアミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂とポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂とポリ乳酸樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂とABS樹脂などが挙げられる。
上記ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールA、つまり2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた1種以上のジヒドロキシ化合物を主原料とするものが好ましく挙げられる。なかでもビスフェノールA、つまり2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料として製造されたものが好ましい。具体的には、上記ビスフェノールAなどをジヒドロキシ成分として用い、エステル交換法あるいはホスゲン法により得られたポリカーボネートが好ましい。さらに、上記ビスフェノールA等のジヒドロキシ化合物は、これと共重合可能なその他のジヒドロキシ化合物、例えば4,4’−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどと併用することも可能であり、その他のジヒドロキシ化合物の使用量は、ジヒドロキシ化合物の総量に対し、10モル%以下であることが好ましい。
またポリカーボネート樹脂は、優れた耐衝撃性と成形性の観点から、ポリカーボネート樹脂0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定したときの比粘度が0.1〜2.0、特に0.5〜1.5の範囲にあるものが好適であり、さらには0.8〜1.5の範囲にあるものが最も好ましい。
上記ポリフェニレンオキシド樹脂の具体例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンオキシド)などを挙げることができ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノール)との共重合体のごとき共重合体が挙げられる。中でも、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、特に、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)が好ましい。
また、ポリフェニレンオキシド樹脂は、30℃で測定した還元粘度(0.5g/dlクロロホルム溶液)が、0.15〜0.70の範囲にあるものが好適である。
ポリフェニレンオキシド樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で得られるものを用いることができる。例えば、USP3306874号明細書記載のHayによる第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として、酸化重合することにより容易に製造できる。本発明においては、上記のようにして得られたポリフェニレンオキシド樹脂を、さらに酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基などの官能基含有化合物により、変性または活性化など種々の処理を施した上で使用することももちろん可能である。
上記ポリメチルメタクリレート樹脂とは、ビニル単量体としてメタクリル酸メチルを用いて得られるポリメチルメタクリレートであり、他のビニル系単量体を共重合したポリメチルメタクリレート共重合体であっても構わない。その他のビニル系単量体としては、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、無水イタコン酸、フタル酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ブチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどが挙げられ、これらのビニル系単量体は単独または2種以上を用いることができる。また、耐熱性の点で、ポリメチルメタクリレート共重合体としては、特に、マレイン酸無水物、グルタル酸無水物、マレイミド環などの環構造単位を主鎖に含有する共重合体が好ましく、ポリメチルメタクリレートと併用することがより好ましい。このようなポリメチルメタクリレート共重合体としては、公知の方法に従って製造することができる。他のビニル系単量体成分単位量としては、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下共重合した共重合体が好ましい。
またポリメチルメタクリレート樹脂は、重量平均分子量5万〜45万、ガラス転移温度80℃以上およびシンジオタクチシチー40%以上であるポリメチルメタクリレートを少なくとも1種以上含むものであることが好ましい。
本発明において、2成分以上の熱可塑性樹脂の組成については特に制限がないが、樹脂組成物中最も添加量の多い成分(A)と、次に添加量の多い成分(B)の重量比(A)/(B)が、90/10〜50/50であることが好ましく、さらに80/20〜50/50であることが好ましく、特に70/30〜50/50であることが好ましい。
次いで、本発明のポリマーアロイについて説明する。
本発明は、少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂を溶融混練して得られるポリマーアロイであり、かつ該ポリマーアロイ中の分散相の相関長が0.001μm〜0.5μmの非周期構造であり、さらに分散相の面積(S)、分散相の周囲長(L)とするとき、下記式(1)
C=4πS/L (1)
で定義される分散相のコンパクトネス(C)が、0.05≦(C)≦0.8であるポリマーアロイである。
ポリマーアロイは、各々の原料となる樹脂の長所を引き出し、短所を補い合うことで、単一の樹脂に比べて優れた特性を発現する。このとき重要となるのが、ポリマーアロイの分散相の相関長である。相関長が大きすぎると、機械特性が著しく低下し、また相関長が小さすぎると、原料樹脂の特性が失われるため好ましくない。したがって、非周期構造における相関長は、0.001μm〜0.5μmが好ましく、0.01μm〜0.4μmがより好ましく、0.02μm〜0.3μmがさらに好ましく、最も好ましくは、0.05μm〜0.2μmである。
相関長とは、上記規則的な周囲構造がみられない構造体での分散相のサイズを表す指標のことである。相関長は、光散乱や小角X線散乱において得られた散乱プロファイルを元に、波数に対し、散乱強度の逆数としたDebyeプロットを行い、Debyeプロットにおいて、その傾きを切片で割った平方根から求めることができる。相関長が0.001μm〜0.1μm未満のポリマーアロイの場合は小角X線散乱測定により、相関長が0.1μm以上0.5μm以下のポリマーアロイの場合は光散乱測定により評価することが可能である。小角X線散乱と光散乱は、分析可能な構造サイズが異なるので、分析するポリマーアロイの構造サイズに応じて適宜使い分けする必要がある。
光散乱測定、小角X線回折測定において、サンプルは薄膜状とする必要がある。薄膜化はミクロトーム等による切片切り出しや、加熱プレスにより可能である。光散乱装置の場合は、厚さ0.1mm程度のカバーガラスにポリマーアロイを挟み込み、加熱プレスすることで簡便に薄膜状試料を得ることが可能である。小角X線回折の場合、カバーガラスによるX線吸収があるため注意が必要である。加熱プレスの場合、熱を加え過ぎたり、プレス時間が長いと、サンプルによっては構造が粗大化する場合があるので、プレス条件の決定は慎重に行う必要がある。また、結晶性樹脂の場合、結晶化によりアロイ構造が変化する可能性があるため加熱プレス後は速やかに急冷し、構造を固定化する。
薄膜状に調製したサンプルは、中心部分を測定する。サンプルが測定装置の試料ホルダーサイズに対して大きすぎる場合は、サンプルを中心部分から切り出し測定する。サンプルの厚さは、可能な限り大きなシグナル強度が得られるように複数のサンプルを重ねて最適な厚さに調節する。シグナル強度はサンプル厚さに比例して増加するが、測定光の吸収もLanbert-Beerの法則に従い試料厚さに対して指数関数的に増加し、その分シグナル強度が減少するので、両者のバランスに応じて試料厚さを決定する必要がある。
また、屈折率差が小さいポリマーの組み合わせからなるポリマーアロイは、シグナル強度が小さいため測定が困難である。そのような場合、必要に応じてヨウ素、RuO、OsO等の染色試薬で処理することも有効である。
本発明のポリマーアロイは、分散相の面積(S)、分散相の周囲長(L)とするとき、下記式(1)
C=4πS/L (1)
で定義される分散相のコンパクトネス(C)が、0.05≦(C)≦0.8の構造を指す。
分散相のコンパクトネス(C)とは、分散相の構造を表す指標のことであり、コンパクトネス(C)が1に近づくと球形となり、逆に0に近づくと分散相の変形が大きいことを表している。コンパクトネス(C)は、
0.05≦(C)≦0.6
であることがより好ましく、さらには
0.1≦(C)≦0.5
であることがより好ましい。コンパクトネス(C)が小さくなると、分散相と連続相の接触界面積が大きくなることから、分散相の持つ優れた特性を最大限に発揮し、ポリマーアロイとして、著しく優れた特性を得ることが可能となる。
分散相の面積(S)、分散相の周囲長(L)は、ポリマーアロイで構成される塊状物の表面から1mmの深さの部位で、超薄切片を切り出し、これを透過型電子顕微鏡にて12万倍に拡大して観察することができる。本発明では、上記測定法により観察される分散相を任意に100箇所選択し、画像解析ソフトScionImageを用いて、分散相の面積(S)及び分散相の周囲長(L)から各々のコンパクトネス(C)を求め、その平均値から求めた。
本発明のポリマーアロイの製造方法に用いるポリマーアロイには、本発明の目的を損なわない範囲でさらに各種の添加剤を含有させることもできる。また、本発明のポリマーアロイには、本発明の目的を損なわない範囲でさらに各種の添加剤を含有させることもできる。
これらの添加剤としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、セリサイト、塩基性炭酸マグネシウム、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、岩綿、ケイ砂、ワラステナイト、ガラスビーズなどの強化材、非板状充填材、あるいは酸化防止剤(リン系、硫黄系など)、紫外線吸収剤、熱安定剤(ヒンダードフェノール系など)、エステル交換反応抑制剤、無機系結晶核剤(タルクなど)、有機系結晶核剤(ソルビトール誘導体、脂肪族カルボン酸アミドなど)、滑剤、離型剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、染料および顔料を含む着色剤、難燃剤(ハロゲン系、リン系など)、難燃助剤(三酸化アンチモンに代表されるアンチモン化合物、酸化ジルコニウム、酸化モリブデンなど)、発泡剤、カップリング剤(エポキシ基、アミノ基メルカプト基、ビニル基、イソシアネート基を一種以上含むシランカップリング剤やチタンカップリング剤)、抗菌剤等が挙げられる。
本発明のポリマーアロイは、成形して成形品とすることができる。好ましい成形方法は、射出成形法、フィルム成形法、シート成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法であり、特に好ましくは射出成形法、フィルム成形法、シート成形法である。本発明のポリマーアロイからなる成形品は、例えば、射出成形品、フィルム、シート等である。また、本発明のポリマーアロイからなる成形品が、フィルムまたはシートの積層、波板状の加工、表面コートなどの後加工を施すことにより得られる成形品であることも好ましい。
本発明の成形品は、耐衝撃性に著しく優れることから、自動車部品、電気電子部品、包装材料など各種用途に好適に使用することができる。
以下実施例を挙げて本発明を説明する。実施例、比較例では、下記の方法で、測定方法を行った。
透過型電子顕微鏡写真
ウルトラミクロトームを用いて超薄切片を切り出したサンプルについて、日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡を用いて12万倍に拡大して相構造の観察を行った。
小角X線散乱スペクトルから測定した相関長
カバーガラスは使用せず、カプトンのフィルムに挟んで、加熱プレスで、サンプルを厚さ0.1mmのシートを作製し、得られた薄膜状試料をカプトンフィルムから外して、薄膜状試料を直接測定した。小角X線散乱は、理学電気社製RA−micro7を用いて、イメージングプレートに30分間露出して得られた2次元データを円環平均により、1次元の散乱プロファイルに変換し、このようにして得られた散乱プロファイルを元に、波数に対し、散乱強度の逆数としたDebyeプロットを行い、Debyeプロットにおいて、その傾きを切片で割った平方根から相関長を求めた。
光散乱スペクトルから測定した相関長
厚さ0.1mmのカバーガラスにポリマーアロイを挟み込み、加熱プレスすることで、薄膜状試料を作製し、カバーガラスに挟んだ状態で光散乱測定を行った。光散乱は、大塚電子社製DYNA−300を用いて、CCDカメラに1分間露出して得られた2次元データを円環平均により、1次元の散乱プロファイルに変換し、このようにして得られた散乱プロファイルを元に、波数に対し、散乱強度の逆数としたDebyeプロットを行い、Debyeプロットにおいて、その傾きを切片で割った平方根から相関長を求めた。
コンパクトネス(C)、相構造の形状
分散相を任意に100箇所選択し、画像解析ソフトScionImageを用いて、分散相の面積(S)及び分散相の周囲長(L)から各々のコンパクトネス(C)を求めた。表には、コンパクトネス(C)の平均値から求めた値を記載した。図3に、相構造の形状の模式図を記載した。表には、実施例、比較例で観察された相構造の形状を、図3の(a)、(b)で示した。例えば、実施例1では、図3(a)の相構造であったことを示す。
耐熱温度(実施例1〜7、比較例1〜3)
実施例1〜7、比較例1〜3に、記載した。
耐熱性(DTUL)試験(実施例8〜20、比較例4〜16)
ASTM D648に準拠し、安田精機製作所製148−HDD−6Sを用いて昇温速度120℃/hr、荷重1.82MPaにおける荷重たわみ温度の測定を行った。
引張強度、引張伸び(実施例1〜7、比較例1〜3)
バンバリ型ミキサで混練後、氷水中に急冷し構造を固定したサンプルについて、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.8mm)を作製した。シートから、長さ×幅×厚み=50mm×10mm×0.8mmのサンプルを切り出し、オリエンテック社製UTA−2.5Tを用いて、チャック間距離20mm、引張速度10mm/分で測定した。
引張強度、引張伸び(実施例8〜20、比較例4〜16)
ASTM D638に準拠し、1号ダンベルサンプルを、オリエンテック社製UTA−2.5Tを用いて、試料標点間距離114mm、引張速度10mm/minで測定を行った。
全光線透過率(1)(実施例1〜7、比較例1〜3)
バンバリ型ミキサで混練後、氷水中に急冷し構造を固定したサンプルについて、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.8mm)を作製した。シートから、長さ×幅×厚み=50mm×10mm×0.8mmのサンプルを切り出し、島津製作所製 分光光度計MPC3100を用いて、波長240〜2600nmの全光線透過率を測定した。
表1〜3において、以下に示す樹脂を使用した。
PC(1):ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、“ユーピロン”H4000、 ガラス転移温度155℃)
PMMA:ポリメタクリル酸メチル(住友化学(株)製 “スミペックス”MHF、ガラス転移温度105℃)
PPO:ポリフェニレンオキシド(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、PX−100F ガラス転移温度205℃)
N66:ポリアミド66樹脂(融点265℃、末端アミノ基濃度11.5×10−5mol/g、98%硫酸1g/dlでの相対粘度2.65であるポリアミド66樹脂、ガラス転移温度49℃)
HPPO:((三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製:“ユピエース” PX−100F)100重量部と無水マレイン酸1.2重量部とラジカル発生剤(“パーヘキシン”25B:日油(株)製)0.1重量部をドライブレンドし、シリンダー温度320℃で溶融混練して得た変性PPO樹脂、ガラス転移温度205℃)
SMA:無水マレイン酸変性ポリスチレン樹脂(ノバ・ケミカル・ジャパン(株)製、“ダイラーク”D332、無水マレイン酸含有量15重量%、ガラス転移温度131℃)
カオス混合ゾーン
実施例8〜9、比較例4、6において、カオス混合ゾーンとは、ニーディングディスクよりなり、かかるニーディングディスクのディスク先端側の頂部とその後面側の頂部との角度である螺旋角度θが、スクリューの半回転方向に0°<θ<90°の範囲内にあるツイストニーディングディスクと、フライトスクリューからなり、かかるフライトスクリューのフライト部にスクリュー先端側から後端側に向けて樹脂通路が形成されているバックミキシングスクリューとを交互に組み合わせたゾーンである。
[実施例1〜7、比較例1〜3]
原料を、バンバリ型ミキサに供給し、表1記載のバレル設定温度(混練温度)で、2分間混練後、取り出し、氷水中に急冷し、構造を固定した。表1記載のバレル設定温度は、混練温度と同じである。バンバリ型ミキサは、ラボプラストミル50C150型(東洋精機製作所製)に、左右共、バンバリ型スクリューを装着したミキサであり、スクリュー回転数を10rpmとした。原料の組成は表1に記載した。
バンバリ型ミキサでの混練時に、ミキサ上部窓から樹脂組成物の混合状態を観察した結果、実施例1〜7では、アロイ成分の引き伸ばし及び折り畳みを繰り返すカオス混合状態が生じていた。バレル混練温度の高い比較例1〜3では、アロイ成分の引き伸ばしが十分出来ずに破断し、カオス混合状態とならないことを確認した。
混練後、取り出し、氷水中に急冷したサンプルから、超薄切片の試験片を切り出した。試験片について、透過型電子顕微鏡にて12万倍に拡大して構造の状態を観察した結果、いずれも非周期構造であることを確認した。図1に実施例2の透過型電子顕微鏡写真を、図2に比較例1の透過型電子顕微鏡写真を示す。コンパクトネス(C)と相構造の形状を表1に示した。
実施例1では、混練後、取り出し、氷水中に急冷したサンプルを、190℃で、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.1mm)を作製し、小角X線散乱スペクトルを測定した。実施例2〜7、比較例1〜3については、混練後、取り出し、氷水中に急冷したサンプルを、さらに表1記載のバレル設定温度で、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.1mm)を作製し、光散乱スペクトルを測定した。このようにして得られた散乱プロファイルから相関長を求め、表1に記載した。
バンバリ型ミキサで混練後、氷水中に急冷し構造を固定したサンプルについて、別途、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.8mm)を作製した。該シートから、長さ×幅×厚み=85mm×20mm×0.8mmの短冊状サンプルを切り出した。試験片の片端20mmを保持して試験片が水平になるように片持ち状態で固定し、90、100、110、120、130、140、150、160、170℃、180、190、200℃のオーブン中に60分間放置した後、保持した部分と反対側の先端が自重によって垂れ下がった垂直距離を測定した。次にこの各温度での垂れ下がり垂直距離と温度をプロットし各点間を直線で結び、垂れ下がり垂直距離3mmと交差する温度を耐熱温度とし、その値を表1に記載した。
バンバリ型ミキサで混練後、氷水中に急冷し構造を固定したサンプルについて、引張強度、引張伸び測定結果、および全光線透過率を表1に記載した。
Figure 2011046936
表1の結果から、非周期構造となる非相溶系ポリマーアロイにおいても、カオス混合条件で混練することにより、相関長、及びコンパクトネス(C)が著しく減少し、微細かつ構造の入り組んだポリマーアロイが得られることがわかる。これらのポリマーアロイは、カオス混合とならない通常の混練方法により得られたポリマーアロイと比較して、耐熱性が著しく向上し、また、引張強度、引張伸び共に優れた機械特性を有し、さらには優れた透明性を有する。
[実施例8、比較例4〜5]
表2記載の組成の原料を、スクリュー回転数200rpmとした二軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30XSSST)(L/D=45.5(尚ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さである。))に供給し、ポリマー溶融部以降のバレル温度を表2記載の温度で調整した。ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した後ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。
実施例8と、比較例4は、押出機のスクリューの全長に対するカオス混合しつつ溶融混練するゾーン(カオス混合ゾーン)の合計の長さの割合が、50%となるように、全域に渡って配置したスクリュー構成(Aタイプ)を用いた。比較例5は、スクリュー構成として、L/D=22、28の位置から、一般のニーディングディスク(L/D=3.8)を設けたスクリュー構成(Bタイプ)を用いた。
JSW社製、押出機内CAE解析ソフトSCREWFLOW−MULTIを用いて、時間t=0でスクリューの上流面の断面内に1000個の粒子の初期位置をランダムに決め、解析によって求めた評価するスクリューの速度場に伴う移動をシミュレーションにより追跡し、線長さ(L)、初期線長さ(L)とするときの仮想的な線の伸びの対数(lnL/L)を求めた。その結果、AタイプのlnL/Lは、4.2であり、BタイプのlnL/Lは、1.5であった。
上記ペレットから、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて構造の状態を観察した結果、いずれも非周期構造であることを確認した。
さらに表2記載のバレル設定温度で、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.1mm)を作製し光散乱スペクトルを測定した。このようにして得られた散乱プロファイルから相関長を求め、表2に記載した。
上記ペレットは、ホッパ下から先端に向かって、280℃−285℃−290℃−290℃に設定した住友重機械工業(株)製射出成形機(SG−75H−MIV)で、金型温度80℃とし、保圧10秒、冷却時間15秒の成形サイクルで、厚さ1/8インチASTM1号ダンベル試験片、及びASTM D−790準拠の曲げ試験片を成形した。得られた成形品から、ペレット同様に、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて構造の状態を観察した結果、いずれも非周期構造であることを確認した。
さらに表2記載のバレル設定温度で、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.1mm)を作製し光散乱スペクトルを測定した。このようにして得られた散乱プロファイルを元に、波数に対し、散乱強度の逆数としたDebyeプロットを行い、Debyeプロットにおいて、その傾きを切片で割った平方根から相関長を求め、表2に記載した。
成形品について評価し、その結果を表2に記載した。
Figure 2011046936
表2の結果から、非周期構造となる非相溶系ポリマーアロイにおいても、カオス混合条件で混練することにより、相関長、及びコンパクトネス(C)が著しく減少し、微細かつ構造の入り組んだポリマーアロイが得られることがわかる。これらのポリマーアロイは、カオス混合とならない通常の混練方法により得られたポリマーアロイと比較して、耐熱性が著しく向上し、また、引張強度、引張伸び共に優れた機械特性を有する。
[実施例9、比較例6〜7]
表3記載の組成の原料を、スクリュー回転数100rpmとした二軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30XSSST)(L/D=45.5(尚ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さである。))に供給し、ポリマー溶融部以降のバレル温度を表3記載の温度で調整した。ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した後ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。
実施例9と、比較例6は、押出機のスクリューの全長に対するカオス混合しつつ溶融混練するゾーン(カオス混合ゾーン)の合計の長さの割合が、50%となるように、全域に渡って配置したスクリュー構成(Aタイプ)を用いた。比較例7は、スクリュー構成として、L/D=22、28の位置から、一般のニーディングディスク(L/D=3.8)を設けたスクリュー構成(Bタイプ)を用いた。
JSW社製、押出機内CAE解析ソフトSCREWFLOW−MULTIを用いて、時間t=0でスクリューの上流面の断面内に1000個の粒子の初期位置をランダムに決め、解析によって求めた評価するスクリューの速度場に伴う移動をシミュレーションにより追跡し、線長さ(L)、初期線長さ(L)とするときの仮想的な線の伸びの対数(lnL/L)を求めた。その結果、AタイプのlnL/Lは、4.2であり、BタイプのlnL/Lは、1.5であった。
上記ペレットから、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて12万倍に拡大して構造の状態を観察した結果、いずれも非周期構造であることを確認した。また分散相を任意に100箇所選択し、画像解析ソフトScionImageを用いて、分散相の面積(S)及び分散相の周囲長(L)から各々のコンパクトネス(C)を求め、コンパクトネス(C)の平均値から求めた値を表3に記載した。さらに相構造の形状について、図3に示す模式図の形状を表3に示した。
さらに上記サンプルのうち、実施例9、比較例7については265℃で、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.1mm)を作製し光散乱スペクトルを測定した。また、比較例6については、表3記載のバレル設定温度で、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.1mm)を作製し光散乱スペクトルを測定した。このようにして得られた散乱プロファイルを元に、波数に対し、散乱強度の逆数としたDebyeプロットを行い、Debyeプロットにおいて、その傾きを切片で割った平方根から相関長を求め、表3に記載した。
上記ペレットは、ホッパ下から先端に向かって、280℃−285℃−290℃−290℃に設定した住友重機械工業(株)製射出成形機(SG−75H−MIV)で、金型温度80℃とし、保圧10秒、冷却時間15秒の成形サイクルで、厚さ1/8インチASTM1号ダンベル試験片、及びASTM D−790準拠の曲げ試験片を成形した。得られた成形品から、ペレット同様に、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて構造の状態を観察した結果、いずれも非周期構造であることを確認した。また分散相を任意に100箇所選択し、画像解析ソフトScionImageを用いて、分散相の面積(S)及び分散相の周囲長(L)から各々のコンパクトネス(C)を求め、コンパクトネス(C)の平均値から求めた値を表3に記載した。さらに相構造の形状について、図3に示す模式図の形状を表3に示した。
成形品について以下の通り評価し、その結果を表3に記載した。
Figure 2011046936
表3の結果から、非周期構造となる非相溶系ポリマーアロイにおいても、カオス混合条件で混練することにより、相関長、及びコンパクトネス(C)が著しく減少し、微細かつ構造の入り組んだポリマーアロイが得られたことがわかる。これらのポリマーアロイは、カオス混合とならない通常の混練方法により得られたポリマーアロイと比較して、耐熱性が著しく向上し、また、引張伸びに優れた機械特性を有する。
本発明のポリマーアロイの製造方法は、ポリマーアロイの分散相の構造を微細に制御することが可能である。さらに、本発明のポリマーアロイの製造方法は、分散相の構造を入り組ませる特殊なアロイ構造を形成させることや、非相溶系ポリマーアロイにおいて、ポリマーアロイ中に分散した粒子を均一性が高くかつ微細に制御することが可能である。その結果、耐熱性、機械特性、さらには透明性にも優れたポリマーアロイが得られる。本発明のポリマーアロイの製造方法で得られたポリマーアロイは、これらの特性を活かして構造材料や透明材料として有用に用いることができる。
本発明のポリマーアロイは、混合する樹脂が本来有する、優れた耐熱性、機械特性を保持した状態で、さらには透明性を有した成形品を得ることができる。このため、本発明のポリマーアロイは、優れた耐熱性、機械特性、透明性を活かした各種成形品として有用に用いることができる。

Claims (6)

  1. 少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂をカオス混合による溶融混練するポリマーアロイの製造方法。
  2. カオス混合が、粒子追跡法において、線長さ(L)、初期線長さ(L)とするとき、仮想的な線の伸びの対数(lnL/L)が、2以上となるカオス混合である請求項1記載のポリマーアロイの製造方法。
  3. 二軸スクリュー押出機により、カオス混合による溶融混練を行う請求項1記載のポリマーアロイの製造方法。
  4. 少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂を溶融混練して得られるポリマーアロイであり、かつ該ポリマーアロイ中の分散相の相関長が0.001μm〜0.5μmの非周期構造であり、さらに分散相の面積(S)、分散相の周囲長(L)とするとき、下記式(1)
    C=4πS/L (1)
    で定義される分散相のコンパクトネス(C)が、0.05≦(C)≦0.8であるポリマーアロイ。
  5. 請求項4に記載のポリマーアロイからなる成形品。
  6. 成形品が、射出成形品、フィルムまたはシートである請求項5に記載の成形品。
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