図1を参照し、スポーツ用ラケット全体を符号10と示す。図1のラケット10はテニスラケットとして構成されるが、しかしながら、本発明はその他の種類のスポーツ用ラケット、例えばラケットボール用ラケット、スカッシュ用ラケット、またはバドミントン用ラケットとして形成することもできる。ラケット10はフレーム12及びストリングベッド14を含む。フレーム12は長手軸線16を有する管状構造で、ヘッド部18、ハンドル部20、及び、ヘッド部18とハンドル部20を連結するスロート部22を含む。フレーム12は軽量で耐久性のある材料、好適には炭素繊維複合材料で形成される。本明細書において、「複合材料」とは樹脂が含浸した(または浸透した)複数の繊維を指す。繊維はシートまたは層の中の同軸上に並べられ、シートまたは層の中に編み込まれ、または織り込まれ、及び/または1またはそれ以上の層の中に刻まれ、ランダムに分散することができる。複合材料は、樹脂が含浸した繊維の母材を形成する単一層または複数層からなる。特に好適な実施形態において、層数は3層から8層の範囲をとることができる。複数層の構造において、繊維は縦軸線24に関して異なる方向に並べることができ、及び/または層から層にかけてブレードまたはウィーブ内に並べることもできる。繊維は、黒鉛など高張力材料によって形成される。あるいは、繊維は、例えば、ガラス、炭素、ホウ素、玄武岩(バサルト)、キャロット、ケブラー(登録商標)、スペクトラ(登録商標)、ポリパラフェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール(PBO)、麻及びこれらの組み合わせなどの他の材料で形成することもできる。好適な実施形態において、樹脂は、好適にはエポキシ樹脂またはポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂である。好適な他の実施形態において、樹脂を熱可塑性樹脂とすることができる。複合材料は、典型的には主軸及び/または比較構造の周りに巻きつけられ、かつ熱及び/または圧力で硬化される。硬化中、樹脂は流れ、繊維の母材を十分に分散させ浸透させるよう構成される。
あるいは、フレーム12は金属合金を含むその他の材料、その他の複合材料、木材、またはそれらの組み合わせから形成することができる。ヘッド部18は末端領域24、第1及び第2側面領域26及び28、並びに基端側領域30を形成し、それらはストリングベッド14を収容し支持するストリングベッド区域32を集合的に画定する。1つの好適な実施形態において、基端側領域30はヨーク34を含む。
ヨーク34は細長い管状構造部材で、ヘッド部18の第1側面領域26から第2側面領域28へ延在する。1つの好適な実施形態において、ヨーク34は基端側領域30を画定するフレーム12と一体的に形成される。別の好適な実施形態において、ヨーク34は接着剤、締め具、ボンド及びこれらの組み合わせを使用することで結合することができる。別の実施形態において、ヨーク34は、例えばエラストマー素材等の振動吸収部によって、フレーム12から分離することができる。ヨーク34は軽量で、耐久性のある、好適には炭素繊維複合材料で形成される。あるいは、ヨーク34は、例えば金属合金等のその他の材料、玄武岩繊維を含むその他の複合材料、及びそれらの結合で形成することもできる。ヨーク34はフレーム12の構造的支持、並びにストリングベッド区域32の低部の規定手段及びメインストリングセグメントを結合し、ルーティングし、または方向づける支持手段を提供する。別の代替的で好適な実施形態において、ラケット10のフレーム12はヨーク無しで形成できる。
好適な実施形態において、第1及び第2側面領域26及び28は、下方に向かってヘッド部18へ延在し、スロート部22の第1及び第2スロート管36及び38を形成する。一点に収束する第1及び第2スロート管36及び38は、さらに下方に向かって延在し、ハンドル部20を形成する。ハンドル部20はパレット(図示されず)、グリップ40及び末端キャップ部42を含む。別の好適な実施形態において、ハンドル部20は第1及び第2スロート管の延長部を含まない管状構造を備えることもできる。この別の好適な実施形態において、ハンドル部はフレームのスロート部またはヘッド部から分離された管状構造を備え、かつ従来型の締め具、成形技術、連結技術、接着剤またはそれらの組み合わせを使用することで、スロート部に結合させることもできる。
別の好適な実施形態において、ヘッド部18は、従来型の締め具、接着剤、機械的結合、熱接合、またはそれらの組み合わせの使用によってスロート部22及びヨーク34のうち1つまたは両者に直接結合する。あるいは、ヘッド部18は例えばエラストマー素材等の振動及び衝撃吸収材料によって、スロート部及びヨークのうち1つまたは両者から分離することができる。別の代わりの好適な実施形態において、ヘッド部18はスロート部22及びヨーク16のうち1つまたは両者と一体的に形成される。
ストリングベッド14は、複数のメインストリングセグメント44が複数のクロスストリングセグメント46と織り合わされて形成される。メイン及びクロスストリングセグメント44及び46は、1つの継続的ラケットのストリングピース、または2つまたはそれ以上のラケットのストリングピースから形成できる。
ラケット10のヘッド部18は、好適には管状構造形状で、フープ48を画定する。フープ48は任意の閉曲線形状であることができ、例えば、略楕円形状、略涙滴形状、略洋梨形状、略円形状及びそれらの組み合わせを含む。フープ48は外周壁50及び内周壁52を含む。好適な実施形態において、フープ48は、外周壁及び内周壁50及び52の中に、それぞれストリング孔 54、56及び58の第1、第2及び第3グループを含む。
図2及び図4〜6を参照に、凹状部60の少なくとも1つの第1の組及びチャンネル62の第1の組は、フープ48の外周壁50内へと形成される。凹状部60の第1の組は離れて位置し、チャンネル62の第1の組によって相互接続される。凹状部60及びチャンネル62は、グロメット組立体64を受容し動作可能に連動する。好適な実施形態において、凹状部60は概して半球状の凹部を有する。別の好適な実施形態において、凹状部は半円または半円筒などの他のカーブ形状をとることができる。1つの好適な実施形態において、凹状部60は2〜8ミリメーターの範囲内の深さを有する。さらなる好適な実施形態においては、凹状部の深さは、5〜6ミリメーターの範囲内にある。チャンネル62は凹状部62の間に延在し、かつ、好適には半円筒状である。その他の形状も使用することができる。チャンネル62の深さは、好適には1〜4ミリメートルの範囲内にある。特に好適な実施形態において、チャンネル62の深さは2〜3ミリメートルの範囲内にある。
外周壁50の外側表面は、凹状部60及びチャンネル62の位置において、好適には外周壁50の残りの外側表面と実質的に同じである。したがって、凹状部60及びチャンネル62における外周壁50の表面は、好適には、サンド処理、ペイント層、クリアコートなどを含む、外周壁のその他の表面と同様の表面処理を受ける。塗装及びコーティングされた外周壁50の外側表面は概して非常に平滑で、それは表面の摩擦係数を顕著に低下させ、ラケット10のフープ48に関し、競技用ボール(例えばテニスボールなど)とストリングベッド14の衝撃に際して、連接グロメット組立体64の調整または関連する動きを促進する。
図1、図2、図4及び図5において、フープ48の一部は、12組のチャンネル62で結合された13の凹状部60と共に示されている。別の好適な実施形態において、フープ48区域の一部に形成される1組の凹状部60は3またはそれ以上であることができ、チャンネル62の組は2またはそれ以上であることができる。特に好適な実施形態において、凹状部60の組は8に達し、チャンネル62の組は7に達する。
第1ストリング孔54の組は、内周壁及び外周壁を通過して延在する略円形の孔部を有し、かつ、ラケットストリングセグメント及び/またはグロメット部分を受容するように構成される。第1ストリング孔54の組は、好適にはおよそ3ミリメーターの直径を有する。その他の実施形態において、第1ストリング孔の組は、より大きな直径を形成することができる。第2ストリング孔56の組は外周壁50を通過して延在し、かつ、好適には凹状部60の位置に配置される。第3ストリング孔58の組は内周壁52を通過して延在し、かつ、概して第2ストリング孔56の組と整列し、ストリングセグメント44または46の通過またはストリングを促進する。好適な実施形態において、第2及び第3ストリング孔56及び58の組は、貫通孔として形成される。第3ストリング孔58の組の長さ(または主要寸法)は、好適には、第2ストリング孔56の組の長さ(または主要寸法よりも大きい。特に好適な実施形態において、第2ストリング孔56の組は、5ミリメートルまたはそれ以上の長さを有し、かつ、第3ストリング孔58の組は10ミリメートルまたはそれ以上の長さを有する。別の好適な実施形態において、その他の長さは第2及び第ストリング孔の組のために利用することができる。別の好適な実施形態において、第2及び第3ストリング孔56及び58の組は、その他の形状に形成することができ、例えば、円形、楕円形、長方形、多角形、不規則形状またはこれらの組み合わせなどである。
図1から図6を参照に、連接グロメット組立体64が示される。連接グロメット組立体64は、少なくとも3つの回動可能要素66で形成され、複数のトルク伝達アーム68によって連結される。各回動可能要素66は、丸いベース70及びベース70から延在する保護バレル72を含む。ストリング通路74は、保護バレル72を通過するベース70からの各回動可能要素66を通過して形成される。ストリング受容溝76は、好適には丸いベース70及びグロメット組立体のトルク伝達アーム68の外側表面に形成され、1つのストリング通路74から別の通路にストリングセグメントを送る。
連接グロメット組立体64は軽量で耐性があり、かつ弾性のある材料で形勢され、好適には熱可塑性ナイロンであり、例えばナイロン11などである。あるいは、連接グロメット組立体 はその他の材料でも形成でき、例えば、複合材料、ウレタン、ポリアミド、ゴム、樹木、アルミニウム、その他材料、その他熱可塑性材料及びそれらの組み合わせなどである。好適な実施形態において、連接グロメット組立体64は、概して剛性材料で形成され、1またはそれ以上の隣接した回動可能要素66の軸80に関する回転は、オリジナルの1またはそれ以上の隣接した回動可能要素の両側上に位置する回動可能要素66を引き起こし、トルク伝達アーム68からトルクを受ける。
好適な実施形態において、丸いベース70は略半球であり、回動可能要素66の回転軸80から2〜4ミリメーターの範囲内の半径を有する。特に好適な実施形態において、丸いベース70の半径はおよそ2.5ミリメーターである。別の好適な実施形態において、丸いベース70はその他の形状で形成することができ、例えば、円筒形状、 半円筒状、卵形、その他のカーブしたまたは球根形状及びそれらの組み合わせなどである。保護バレル72はフープ48の内周壁及び外周壁52及び50内の第2及び第3孔56及び58の組を通じてストリングセグメント44または46の1つに保護通路を提供する。 保護バレル72は、好適には7〜13ミリメーターの範囲内の長さを有する。特に好適な実施形態において、バレル72の長さは9〜10ミリメーターの範囲内とすることができる。 保護バレル72は、好適には管状または円筒状で、外径及び内径を有する。1つの好適な実施形態において、保護バレルはおよそ 2.8ミリメーターの外径及びおよそ1.6ミリメーターの内径を有する(内径はストリング通路 74の一部を形成し、バレル72を通過して延在する)。別の好適な実施形態において、その他の内径及び外径サイズも使用できる。さらにその他の好適な実施形態おいて、バレルの外形は非円筒形状をとることもできる。ベース70及び回動可能要素66のバレル72を通過して延在するストリング通路74は、好適にはおよそ1.6ミリメーターの直径を有する。その他の直径サイズも考慮される。丸いベース70の外面及びグロメット組立体64のトルク伝達アーム68の中に形成されるストリング 受容溝76は、好適にはおよそ1.5〜2.0ミリメーターを有する。連接グロメット組立体64は、したがって、好適には、グロメット組立体64に結合するストリングセグメント44及び/または46を、直接接触するフープ48から完全に分離する。結果的に、グロメット組立体64に結合するストリングセグメント44及び46は、フープ48の鋭いまたは粗い表面による摩耗及び擦り傷から保護される。ストリング受容溝76及びストリング通路74は、ラケット10のストリングも促進する。
各回動可能要素66は、ストリングベッド14に直交し、回動可能要素66を貫いて延在するストリングセグメントに平行である第1平面の周りで測定した第1断面積を有する。各トルク伝達アーム68は、第1平面に平行な第2平面の周りで測定した第2断面積を有する。第1断面積は第2断面積よりも大きい。
連接グロメット組立体は、好適にはフープ48の対応する位置に挿入され(凹状部60の組及びチャンネル62の対応する位置)、さらに連接グロメット組立体64を貫いて延在するラケットストリングセグメント44及び46によって保護される。別の好適な実施形態において、連接グロメット組立体をフープ48に圧入することができる。この配置において、少なくともグロメット組立体上の一点は、実質的にフープ48に関して固定されたままになる。別の好適な実施形態において、連接グロメット組立体は、例えば、その他の圧入連結、従来型の締め具、接着剤、ボンド及びそれらの組み合わせなどその他の手段によって、フープ48に固定して連結することができる。
図1、図2、図4及び図5の連接グロメット組立体64は12のトルク伝達アーム68によって連結される13の回動可能要素66を含む。別の好適な実施形態において、連接グロメット組立体64は2またはそれ以上のトルク伝達アーム68によって連結された3またはそれ以上の回動可能要素66を含むことができる。回動可能要素66の数はラケットデザインにおける使用者の最適なニーズに合わせて変化する。
図7〜9を参照し、連接グロメット組立体64の個々の回動可能要素66の操作が示される。図7は、ラケット10のフープ48に関する横断断面図を示し、ストリングベッド14によって規定される平面に直交し、かつストリングベッド14のクロスストリングセグメント48の延在部に平行な平面を示す。競技用ボール82(例えばテニスボールなど)が、試合中、ストリングベッド14(またはクロスストリングセグメント48)に衝撃を与えるとき、この衝撃はストリングに衝撃に応じて変形を生じさせる。ストリングセグメント48の変形は連接グロメット組立体64に延びる。回動可能要素66の丸いベース70は、回転軸80に関して回転または連接し、回転軸80はフープ14の凹状部60を形成する外周面50に関する。図7〜9を参照に、第2及び第3ストリング孔56及び58はスロットに組み込まれストリングセグメント48及び保護バレル72にスペースを供給し、それらを回転軸80に関して回転、回動または連接させ、並びにフープ14内に、かつそれに関連して動き、縛られることなく、またはさもなければフープ14の内周壁及び外周壁52及び50によって抑止される。
この回転、回動または連接で、ストリングセグメント48は、さもければ回転なしで変形していたよりもさらに変形することが可能となる。この連接または回転運動はより長い効果的なストリングの長さを有するラケットの効果と類似する効果を提供する。フープ48に関連するグロメット組立体64の回動可能要素66の回転または連接は、さらなるボールの衝撃時においてストリングベッド14を変形させることを可能とし、 それによってさらなる反応性及びボールへのより大きな動力の分配を提供する。さらに、ストリングベッド14の変形が増すと「滞留時間」またはボールとラケット10のストリングベッド14間の接触時間は増し、接触時に、使用者がボールに容易にスピンを与えられるようにし、かつプレー中にボールに対してのより優れた全体的な制御を可能とする。
複数のトルク伝達アーム68で連結された3またはそれ以上の回動可能要素66を備える連接グロメット組立体64の独自の構造は、さらなる利点を提供し、その利点とはトルクまたは1またはそれ以上の回動可能要素66の回転をその他の隣接するストリングセグメント44または46に伝達するのを可能とするものである。図5及び図7を参照し、ボール82がストリングベッド14に衝撃を与えるとき、ボールの直径はボールが2またはそれ以上のクロスストリングセグメント46及び/または2またはそれ以上のメインストリングセグメント44(概して2から5のストリングセグメント)に衝撃を与えるようにする。本発明は、ストリングベッド14上の衝撃力が、影響を受けた回動可能要素66に、競技用ボール82による衝撃に応えて回転させるのを可能とし、 また衝撃場所に隣接するストリングセグメント46または44の回動可能要素も回動可能要素66に連結されたトルク伝達アーム68によってトルクまたは回転モーメントを受け取ることを可能とする。競技用ボールとの衝撃によって発生する2またはそれ以上の回動可能要素66の回転は、隣接する回動可能要素に直接連結するトルク伝達アーム68によって、隣接する回動可能要素上にトルクを生成する。このトルクの伝達は、衝撃に応えて、隣接する回動可能要素66がフープ48に関して移動、回転、連接または回動することもできるようにする。すなわち、回動可能要素66は回転軸80に関して回転可能であり、それはストリングベッド平面に対して平行である。回動可能要素の1つを通過して延在するクロスまたはメインストリングセグメント46または44の1つの変形は、競技用ボールによる衝撃によって、1つの回動可能要素66を軸80に関して回転させ、トルク伝達アーム68によって、回動可能要素66の反対側上に(または直接隣接して)位置する回動可能要素66上にトルクを生成する。トルクは、力のモーメントまたは力のシステムであり、このような隣接する回動可能要素の回転を駆り立て、または発生させる。
このような動きの結果は、衝突部位及びその周辺におけるさらなるストリングベッド14の変形、ボール82とストリングベッド14の間の滞留時間の増加及びスイートスポットの拡大を可能とする。トルク伝達アーム68は、ストリングベッド14及びラケット全体が、より反応良く、より良いプレーをすることを可能とし、拡大されたスイートスポットを有する。
図7を参照し、各回動可能要素66は、ストリングベッドに直交し、回動可能要素を貫いて延在するストリングセグメント46に平行な第1平面の周りで測定した場合の第1断面積を有する。図3を参照し、各トルク伝達アーム68は、第1平面に平行な第2平面の周りで測定した場合の第2断面積を有する。第1断面積は第2断面積よりも大きい。
図13〜15を参照に、本発明をラケットに取り込むことによって得られる拡大されたスイートスポットが示される。図13〜15は、 3本の異なるラケットに対して実施された反発係数(「COR」)試験の結果が示されている。3本のラケットのそれぞれは、類似のヘッド及びフープの形状とサイズを備える。全ての3本のラケットは、およそ110スクエアインチのフープまたはヘッドサイズを備える。3本のラケットのヘッドまたはフープの形状は、従来型で、慣習的な略卵形の頭部形状を有する。
図13〜15は本発明にかかるラケット及び2本の代表的な従来技術のラケットに対する様々なCOR値の領域に関する分布図を示す。CORは、例えばテニスボールなどの、ボールの進入速度に対するボールの反発速度の比率である。図13〜15のCOR値は、秒速90フィート(27.43メートル)、秒速+/−5フィート(1.524メートル)の進入速度を利用して測定された。各分布図は、トリングベッド近くの多くの、分散された位置におけるボールのストリングベッドへの衝撃に起因するCOR値を反映する。特に、試験装置はハンドルの基端部(およそハンドルの基部6インチ(15.2センチメートル))を保護する。ラケットを試験装置に取り付ける部分は、ハンドルの基端部がx、y及びz軸に沿って移動したり捩れたりするのを抑止する。図13〜15の各ラケットは55ポンド(24.95キログラム)のテンションのストリングテンションを有し、張った状態で、概してストリングベッドの中央部にて測定される。
図13は、図1のラケット5と実質的に同一のフレームを有するが、本発明にかかる連接グロメット組立体64を含まないラケットに関するCOR領域を示す。図1のラケット3は、イリノイ州、シカゴにあるウィルソンスポーティンググッズカンパニーによって製造されたラケットモデルであり、コントロールラケットとしての機能を果たす。図13に分布するラケットに関するCOR領域の数値は表1にて得られる。図1のラケット3に関する最大COR読取値は0.35であり、CORが0.35であった領域は3.14平方インチ(20.258平方センチメートル)であった。
図14は、代表的な先行技術のラケットに関するCOR領域を示す。ラケットは、 ニュージャージー州のボーデンタウン所在のプリンステニス製造のPrince(登録商標)ラケット、 モデルブルーEX03(商品名)である。ラケットは略同一形状、おおよそ等しいヘッドサイズ、及び図13及び15のラケットと類似する振動ウェイトを有し、代表先行技術ラケットとして選定された。図14に分布するラケットに関するCOR領域の数値は表1において得られる。図1のラケット4に関する最大COR読取値は0.35であり、CORが0.35であった領域は3.02平方インチ(19.484平方センチメートル)であった。
図15は、本発明の好適な実施形態にしたがって構築されるラケットに関する拡大されたCOR領域 を示す。図1のラケット5は、2つの連接グロメット組立体64及び対応する凹状部60の組並びに概して時計の3時及び9時の位置に配置されたフープ48付近のチャンネル62を含む。図1のラケット5の各連接グロメット組立体は、8つの回動可能要素66(及び8つの対応する凹状部60)及び8つの回動可能要素66を連結する7つのトルク伝達アーム68を含む。したがって、図1のラケット5の連接グロメット組立体は、8つの分離されたラケットのクロスストリングセグメント48を活発的に係合しもたらす。図15に分布するラケットに関するCOR領域の数値も、表1にて得られる。図1のラケット5に関する最大読取値は0.40であり、CORが0.40であった領域は1.27平方インチ(8.194平方センチメートル)であった。
図13〜15において、0.45と表示された線は、CORが0.45またはそれ以上であるストリング上の境界領域を表す。0.40と表示された線はCORが0.40またはそれ以上であるストリング上の境界領域を表す。同様に、図13〜15におけるその他の線は、様々なCOR値に関するストリング上の境界領域を表す。ラケットの「スイートスポット」は、概して以下の3つのCOR値を有するストリングベッドの領域として規定される:2.5またはそれ以上、3.0またはそれ以上、もしくは3.5またはそれ以上。図13〜15の水平及び垂直軸上の数はストリングを張った表面の中心からの距離を表す。例えば、ストリングを張った表面の中心は0.00と示される。ストリングを張った表面の中心の右へ2インチは2.00と示され、中心の左へ2インチは2.00と示される等である。
以下の表1は図13〜15で提供されたCORデータを集約する。
図13〜15と表1のデータの比較より、本発明に従って製造されたラケットは、図13及び14のいずれの先行技術ラケットよりも顕著に大きな「スイートスポット」を有することがわかる。本発明にかかる図1のラケット5は様々なCORに関するほとんどの境界線内により大きな領域を有し、かつCOR(0.40)のより高いレベルに到達する。0.35COR領域においては、スイートスポット領域における改良は140パーセント以上の大幅増を伴い飛躍的である。
本発明を取り入れることで、適切なストリングセグメントの効果的な長さを増加させ、ラケットのパフォーマンスを顕著に改良する。連接グロメット組立体は、より長いラケットストリングセグメントもしくはより大きなフープまたはストリングベッドによって達成される効果と類似する効果を提供する。本発明は、ヘッド部サイズの増大、及び対応するラケットの極慣性モーメントにおける望ましくない増加を求めることなく、重大な利益を提供する。
図10〜12を参照に、本発明の好適な実施形態において、フープ48に関して連接ラケット組立体64は、1またはそれ以上の様々な位置に配置することができ、それによってラケット10のストリングベッドの様々な領域に関するパフォーマンスを改良する。図10において、2つの連接グロメット組立体は、時計の3時と9時の位置に配置して示される。図11において、ラケットのフープ48周囲に連接グロメット組立体64は時計の12時と6時の位置に配置され、それによってストリングベッド14のメインストリングセグメント44に主要な効果を与える。図12において、ラケット10のフープ48周囲に、連接グロメット組立体は、時計の2時、4時、8時及び10時の位置に配置し示される。この配置は概して最低レベルのパフォーマンスを提供するストリングベッドのパフォーマンスを改良する役目を果たす。その他の好適な実施形態において、1またはそれ以上の連接グロメット組立体は、フープ周囲にその他の位置及びその他の数で配置することができる。本発明は、幅広い潜在的構成及びラケットのフープ上またはその周辺の連接グロメット組立体の配置を可能とし、それによってラケットデザインの柔軟性を最大化し、特定の選手または特定のタイプの選手のニーズに見合うようにカスタマイズまたは調整できるようにする。
本発明の好適な実施形態が記載される一方で、当業者によって多数の変更を加えることができる。したがって、本発明は前記記載に限定されず、本発明の範囲は特許請求の範囲による。