JP2011038438A - 吸気バルブと、これを備えた内燃機関及び輸送機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】吸入空気量を向上させることができる吸気バルブと、これを備えた内燃機関及び輸送機器を提供する。
【解決手段】吸気バルブ43の傘部53は、周縁部71に形成されているバルブフェース55と、周縁部71であって、バルブフェース55の内側近傍に配置されている単一の環状の周縁溝部73と、を有する。傘部53の表面に沿う吸入空気(気流G1)が周縁部71に到達すると、その一部(気流G1)のみが周縁溝部73に流入し、その他(気流G2)は周縁溝部73の上方をそのまま通過する。周縁溝部73に流入した吸入空気(気流G1)は乱流となるので、傘部53の周縁部71を巻くようにして傘部53の周縁部71の下方に進み、燃焼室Aに吸入される吸入空気量が増大する。また、吸入空気の一部のみが周縁溝部73に流入するため、吸気ポートBから燃焼室Aに流れる吸入空気の流動抵抗を抑制することができる。
【選択図】図5
【解決手段】吸気バルブ43の傘部53は、周縁部71に形成されているバルブフェース55と、周縁部71であって、バルブフェース55の内側近傍に配置されている単一の環状の周縁溝部73と、を有する。傘部53の表面に沿う吸入空気(気流G1)が周縁部71に到達すると、その一部(気流G1)のみが周縁溝部73に流入し、その他(気流G2)は周縁溝部73の上方をそのまま通過する。周縁溝部73に流入した吸入空気(気流G1)は乱流となるので、傘部53の周縁部71を巻くようにして傘部53の周縁部71の下方に進み、燃焼室Aに吸入される吸入空気量が増大する。また、吸入空気の一部のみが周縁溝部73に流入するため、吸気ポートBから燃焼室Aに流れる吸入空気の流動抵抗を抑制することができる。
【選択図】図5
Description
この発明は、吸気バルブと、これを備えた内燃機関及び輸送機器に係り、特に、吸入空気量を向上させる技術に関する。
従来、吸気バルブはポペット型であり、基本的にバルブステムと傘部とを有している(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1に記載の技術
特許文献1の技術は、吸気弁の傘部に燃料を衝突させて霧化を行う吸気装置において、燃料の濃度分布を一様にし、燃焼室における燃焼を改善することを目的とする。特許文献1では、傘部の裏面に略同心円状の複数の溝が形成された吸気バルブを開示している。この吸気バルブの傘部の裏面に対して、吸気管(inlet pipe)に設けられた燃料噴射弁が燃料を噴射する。燃料を含む混合気は複数の溝に沿って傘部の裏面の全周域に導かれた後、燃焼室に吸入される。このため、燃料が均一に分散されるので(すなわち、燃料の濃い部分や希薄な部分が形成されることがないので)、燃焼が改善される。
特許文献1の技術は、吸気弁の傘部に燃料を衝突させて霧化を行う吸気装置において、燃料の濃度分布を一様にし、燃焼室における燃焼を改善することを目的とする。特許文献1では、傘部の裏面に略同心円状の複数の溝が形成された吸気バルブを開示している。この吸気バルブの傘部の裏面に対して、吸気管(inlet pipe)に設けられた燃料噴射弁が燃料を噴射する。燃料を含む混合気は複数の溝に沿って傘部の裏面の全周域に導かれた後、燃焼室に吸入される。このため、燃料が均一に分散されるので(すなわち、燃料の濃い部分や希薄な部分が形成されることがないので)、燃焼が改善される。
特許文献2に記載の技術
特許文献2の技術は、内燃機関の吸気行程で、吸気ポート(inlet port)から燃焼室に空気(混合気、及び、燃料が混合されていない空気自体を含む)が円滑に流入するようにして、内燃機関の充填効率を向上させることを目的とする。特許文献2では、傘部の頂部から周縁部にわたる略円錐形状の傾斜面を、バルブフェースに対して一段低く形成し、傾斜面とバルブフェースとの間に段差部(障壁部)を有する吸気バルブを開示している。この吸気バルブによれば、吸気バルブの傾斜面に沿って流れる吸入空気は段差部に衝突し、段差部の周りに渦が発生する。これにより、傘部の表面から吸入空気が剥離することが抑制される。この結果、吸気ポートから燃焼室に空気を円滑に吸入させることができる。
特許文献2の技術は、内燃機関の吸気行程で、吸気ポート(inlet port)から燃焼室に空気(混合気、及び、燃料が混合されていない空気自体を含む)が円滑に流入するようにして、内燃機関の充填効率を向上させることを目的とする。特許文献2では、傘部の頂部から周縁部にわたる略円錐形状の傾斜面を、バルブフェースに対して一段低く形成し、傾斜面とバルブフェースとの間に段差部(障壁部)を有する吸気バルブを開示している。この吸気バルブによれば、吸気バルブの傾斜面に沿って流れる吸入空気は段差部に衝突し、段差部の周りに渦が発生する。これにより、傘部の表面から吸入空気が剥離することが抑制される。この結果、吸気ポートから燃焼室に空気を円滑に吸入させることができる。
特許文献1に記載の吸気バルブは吸入空気量を増加させることを目的としていない。特許文献2に記載の吸気バルブは、吸入空気量を増加させることを目的としている。しかしながら、特許文献2に記載の吸気バルブより吸入空気量をさらに増大させることができれば、より大きな動力を発生させることができる。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、吸入空気量を向上させることができる吸気バルブと、これを備えた内燃機関及び輸送機器を提供することを目的とする。
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、燃焼室と連通する吸気ポートに設けられる吸気バルブであって、傘部と、前記傘部の頂部に一端が連結し、他端が上方に延びるバルブステムと、を備え、前記傘部は、前記傘部の周縁部に形成されているバルブフェースと、前記周縁部であって、前記バルブフェースの内側近傍に配置されている単一の環状の周縁溝部と、を有する。
すなわち、本発明は、燃焼室と連通する吸気ポートに設けられる吸気バルブであって、傘部と、前記傘部の頂部に一端が連結し、他端が上方に延びるバルブステムと、を備え、前記傘部は、前記傘部の周縁部に形成されているバルブフェースと、前記周縁部であって、前記バルブフェースの内側近傍に配置されている単一の環状の周縁溝部と、を有する。
[作用・効果]本発明に係る吸気バルブによれば、傘部の頂部から周縁部にかけて傘部の表面に沿って吸入空気が流れる。なお、本明細書では、「吸入空気」は、「吸気ポートから燃焼室に吸入される空気」を意味するものとする。ここで、「空気」は、空気と燃料が混合された混合気、及び、燃料が混合されていない空気自体のいずれも含む意味である。傘部の表面に沿う吸入空気が周縁部に到達すると、その一部のみが周縁溝部に流入し、その他は周縁溝部の上方をそのまま通過する。周縁溝部に流入した吸入空気は、微小な渦が発生し、僅かに乱流となる。乱流となった吸入空気は、近傍のバルブフェースに乱流状態のまま至る。
このように、傘部の周縁部の表面を流れる吸入空気の一部が乱流状態となるので、吸入空気が傘部の周縁部から剥離しにくくなり、傘部の周縁部を巻くようにして傘部の周縁部の下方に進み易くなる。これにより、吸気バルブの燃焼室側の吸入空気の流路が拡大し、空気が吸気ポートから燃焼室に効率良く吸入される。この結果、燃焼室に吸入される吸入空気量が増大する。
また、傘部の表面に沿って流れる吸入空気の一部のみが周縁溝部に流入するため、傘部の表面に沿って流れるその他の吸入空気は周縁溝部によって流動抵抗を受けない。このため、吸入空気の流動抵抗を抑制することができる。また、周縁溝部はバルブフェースの内側近傍に配置されているので、発生させる乱流が微弱であっても傘部の周縁部に乱流状態の吸入空気を供給することができる。よって、周縁溝部に流入する吸入空気が受ける流動抵抗自体も低減することができる。
上述した発明において、平面視において、前記バルブフェースと前記周縁溝部との間隔距離は、0.5mm以上で、かつ、1.1mm以下であることが好ましい。このように傘部の周縁部に周縁溝部を配置することで、吸入空気量の増大を図ることができる。
上述した発明において、平面視において、前記周縁溝部の幅は、前記バルブフェースの幅の同等、または、同等以下であることが好ましい。このように、比較的幅が狭い周縁溝部を傘部の周縁部に配置することで、吸入空気が受ける流動抵抗を抑制することができる。
上述した発明において、前記傘部は、前記頂部から前記周縁溝部にわたって径方向外方に向かって下向きになめらかに傾斜している中央面部を有し、前記周縁溝部は、前記中央面部に対して下方に窪んでいることが好ましい。中央面部はなめらかな表面を有しているので、中央面部に沿って流れる吸入空気は円滑に流れる。また、周縁溝部は中央面部に対して窪んでいるので、中央面部に沿って流れる吸入空気の一部のみを適切に周縁溝部に流入させることができる。
上述した発明において、前記周縁溝部の深さは、0.5mm以上で、かつ、0.7mm以下であることが好ましい。周縁溝部に流入する吸入空気の流動抵抗を抑えつつ、適度な乱流を発生させることができる。
上述した発明において、前記周縁溝部の断面形状は略Vの字状であることが好ましい。
上述した発明において、前記傘部の周縁部は、前記中央面部の延長線より上方に突出していないことが好ましい。周縁溝部の上方を通過する吸入空気は、円滑に流れることができる。
上述した発明において、前記周縁溝部は、前記中央面部と接合する内側内壁部を有し、前記中央面部に対して前記内側内壁部が径方向外方に向かって下向きに傾斜している角度は、15度以上であって、かつ、30度以下であることが好ましい。周縁溝部に進入する吸入空気の方向変化を緩やかにすることができる。これにより、吸入空気が受ける流動抵抗を抑制することができる。
上述した発明において、前記内側内壁部と前記中央面部とが接合する内側接合部の曲率半径は、0.3mm以下であることが好ましい。曲率半径は0.3mm以下である内側接合部を吸入空気が通過すると、吸入空気は乱流になり易くなる。このように、乱流になり易い状態で吸入空気が周縁溝部に流入するので、周縁溝部の内部において効果的に吸入空気を乱流にすることができる。
上述した発明において、前記傘部は、前記周縁溝部と前記バルブフェースとの間に形成されている環状の周縁面部を有し、前記周縁溝部は、前記バルブフェースと接合する外側内壁部を有し、前記周縁面部に対して前記外側内壁部が径方向内方に向かって下向きに傾斜している角度は、60度以上であって、かつ、75度以下であることが好ましい。周縁溝部の内部に流れ込んだ吸入空気を、外側内壁部に好適に衝突させることができる。よって、周縁溝部において好適に乱流を発生させることができる。
上述した発明において、前記外側内壁部と前記周縁面部とが接合する外側接合部の曲率半径は、0.3mm以下であることが好ましい。曲率半径は0.3mm以下である外側接合部を吸入空気が通過すると、吸入空気は乱流の状態を保ち易くなる。このため、周縁溝部で乱流となった吸入空気は、乱流の状態のままバルブフェースに到達することができる。
上述した発明において、前記外側接合部は、前記中央面部の延長線上に位置していることが好ましい。周縁溝部の上方を通過した吸入空気が外側接合部に衝突することなく、円滑に流れることができる。
上述した発明において、前記傘部の材質はチタンであることが好ましい。高強度かつ軽量な傘部を実現できる。
また、本発明は、エンジン装置であって、請求項1から請求項13のいずれかに記載の吸気バルブと、吸気ポートが形成されているシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドの下部に連結されるシリンダブロックと、前記シリンダブロックの内部を往復移動可能に設けられ、前記吸気ポートと連通する燃焼室を前記シリンダヘッド及び前記シリンダブロックとともに形成するピストンと、を備える。
[作用・効果]本発明に係るエンジン装置によれば、吸気バルブは周縁溝部を有しているので、吸気ポートから燃焼室に効率良く空気を吸入させることができる。この結果、燃焼室への吸入空気量が増大し、エンジン装置はより大きな動力を発生することができる。
また、本発明は、請求項14に記載のエンジン装置を備えている輸送機器である。
[作用・効果]本発明に係る輸送機器によれば、エンジン装置はより大きな動力を発生することができるので、高性能な輸送機器を実現することができる。
なお、本明細書は、次のような吸気バルブに係る発明も開示している。
(1)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、前記中央面部と前記周縁溝部が接合する内側接合部より外周側の前記傘部の部位は、前記中央面部の延長線より上方に突出していない吸気バルブ。
(1)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、前記中央面部と前記周縁溝部が接合する内側接合部より外周側の前記傘部の部位は、前記中央面部の延長線より上方に突出していない吸気バルブ。
前記(1)に記載の発明によれば、中央面部に沿って流れた吸入空気は、周縁部に至っても円滑に流れることができる。
(2)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、前記中央面部の延長線は、断面視において前記中央面部と前記周縁溝部が接合する内側接合部における前記中央面部の接線である吸気バルブ。
前記(2)に記載の発明によれば、中央面部に沿う吸入空気の流れを妨げることを確実に回避することができる。
(3)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、前記内側内壁部と前記中央面部とが接合する内側接合部はエッジが立っている吸気バルブ。
前記(3)に記載の発明によれば、エッジが立っている内側接合部を吸入空気が通過すると、吸入空気は乱流になり易くなる。このように、乱流になり易い状態で吸入空気が周縁溝部に流入するので、周縁溝部の内部において効果的に吸入空気を乱流にすることができる。
(4)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、前記内側接合部の曲率半径は0.1mm以下である吸気バルブ。
前記(4)に記載の発明によれば、内側接合部を通過する吸入空気を、より効果的に乱流になり易い状態にすることができる。
(5)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、前記内側内壁部と前記中央面部とが接合する内側接合部はシャープエッジである吸気バルブ。
前記(5)に記載の発明によれば、シャープエッジである内側接合部を吸入空気が通過すると、吸入空気は乱流になり易くなる。このように、乱流になり易い状態で吸入空気が周縁溝部に流入するので、周縁溝部の内部において効果的に吸入空気を乱流にすることができる。
(6)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、断面視において前記外側内壁部と前記内側内壁部とのなす角度は、略90度である吸気バルブ。
前記(6)に記載の発明によれば、周縁溝部の内部に流れ込んだ吸入空気を、外側内壁部に略直角に衝突させることができる。
(7)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、前記外側内壁部の下部と前記内側内壁部の下部とはなめらかに連続している吸気バルブ。
前記(7)に記載の発明によれば、周縁溝部の内部で衝突した吸入空気を、スムーズに周縁溝部から流出させることができる。
(8)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、前記外側内壁部と前記周縁面部とが接合する外側接合部はエッジが立っている吸気バルブ。
前記(8)に記載の発明によれば、シャープエッジである外側接合部を吸入空気が通過すると、吸入空気は乱流の状態を保ち易くなる。このため、周縁溝部で乱流となった吸入空気は、乱流の状態のままバルブフェースに到達することができる。
(9)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、前記外側接合部の曲率半径は0.1mm以下である吸気バルブ。
前記(9)に記載の発明によれば、外側接合部を通過する吸入空気を、より効果的に乱流状態を保ち易い状態にすることができる。
(10)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、前記外側内壁部と前記周縁面部とが接合する外側接合部はシャープエッジである吸気バルブ。
前記(10)に記載の発明によれば、シャープエッジである外側接合部を吸入空気が通過すると、吸入空気は乱流の状態を保ち易くなる。このため、周縁溝部で乱流となった吸入空気は、乱流の状態のままバルブフェースに到達することができる。
(11)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、断面視において、前記内側接合部における前記中央面部の接線が前記バルブステムの軸心となす角度は、60度以上で、かつ、75度以下である吸気バルブ。
前記(11)に記載の発明によれば、傘部を比較的扁平な形状(換言すれば、傘部の上下方向の高さが抑えられた形状)とすることができるので、傘部の厚みを薄くすることができ、吸気バルブの軽量化を図ることができる。
(12)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、前記バルブステムの材質はチタンである吸気バルブ。
前記(12)に記載の発明によれば、高強度かつ軽量なバルブステムを実現できる。
(13)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、前記バルブフェース及び前記周縁溝部は、吸気ポートに面する前記傘部の上面に形成されている吸気バルブ。
(14)上述した発明に係る吸気バルブにおいて、前記周縁溝部の深さは、断面視において前記中央面部と前記周縁溝部が接合する内側接合部における前記中央面部の接線を基準とする吸気バルブ。
この発明に係る吸気バルブによれば、傘部の頂部から周縁部にかけて傘部の表面に沿って吸入空気が流れる。傘部の表面に沿う吸入空気が周縁部に到達すると、その一部のみが周縁溝部に流入し、その他は周縁溝部の上方をそのまま通過する。周縁溝部に流入した吸入空気は、微小な渦が発生し、僅かに乱流となる。乱流となった吸入空気は、近傍のバルブフェースに乱流状態のまま至る。
このように、傘部の周縁部の表面を流れる吸入空気の一部が乱流状態となるので、吸入空気が傘部の周縁部から剥離しにくくなり、傘部の周縁部を巻くようにして傘部の周縁部の下方にも進み易くなる。これにより、吸気バルブの燃焼室側の吸入空気の流路が拡大し、空気が効率良く吸気ポートから燃焼室に吸入される。この結果、燃焼室に吸入される吸入空気量を増大させることができる。
また、傘部の表面に沿って流れる吸入空気の一部のみが周縁溝部に流入するため、傘部の表面に沿って流れるその他の吸入空気に対して流動抵抗を与えない。このため、吸入空気の流動抵抗を抑制することができる。また、周縁溝部はバルブフェースの内側近傍に配置されているので、発生させる乱流が微弱であっても傘部の周縁部に乱流状態の吸入空気を供給することができる。よって、周縁溝部に流入する吸入空気の流動抵抗自体も低減することができる。
また、この発明に係るエンジン装置によれば、吸気バルブは周縁溝部を有しているので、吸気ポートから燃焼室に効率良く空気を吸入させることができる。この結果、燃焼室への吸入空気量が増大し、エンジン装置はより大きな動力を発生することができる。
また、この発明に係る輸送機器によれば、エンジン装置はより大きな動力を発生することができるので、高性能な輸送機器を実現することができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。ここでは、本発明の輸送機器として自動二輪車を例に採って説明する。
1.自動二輪車の全体概略構成
図1は、実施例に係る自動二輪車の概略構成を示した側面図である。図示する自動二輪車1は不整地での走行性能を重視したタイプである。図1においては図面の左側が自動二輪車1の前側である。
図1は、実施例に係る自動二輪車の概略構成を示した側面図である。図示する自動二輪車1は不整地での走行性能を重視したタイプである。図1においては図面の左側が自動二輪車1の前側である。
自動二輪車1はメインフレーム3を備えている。メインフレーム3にはエンジン装置5、燃料タンク7、および、シート9などが固定されている。エンジン装置5はメインフレーム3の下部に配置されている。エンジン装置5には吸気管(inlet pipe)11及び排気管(exhaust pipe)13が接続されている。燃料タンク7はメインフレーム3の上部の前寄りの位置に配置されている。シート9はメインフレーム3の上部の後寄りの位置に配置されている。
メインフレーム3の上部の前端部にはヘッドパイプ15が固定的に連結されている。ヘッドパイプ15はステアリングシャフト(図示省略)をその軸心回りに回転可能に支持している。ステアリングシャフトにはハンドルクラウン16及びアンダーブラケット17を介してフロントフォーク18が連結されている。フロントフォーク18の下部には、前輪19が回転可能に支持されている。また、ステアリングシャフトにはハンドルクラウン16を介してハンドル21が連結されている。
メインフレーム3の下部の後端部には、スイングアーム23がピボット軸24周りに揺動可能に連結されている。スイングアーム23はメインフレーム3の後方に延びており、その後端部には後輪25が回転可能に支持されている。後輪25にはドリブンスプロケット26が一体に回転可能に連結されている。ドリブンスプロケット26には、チェーン27が掛け回されている。チェーン27はさらに、ドライブスプロケット(図示省略)に掛け回されている。エンジン装置5が発生した動力は、ドライブスプロケット、チェーン27、ドリブンスプロケット26を介して後輪25に伝達される。これにより、自動二輪車1は前進する。
2.エンジン装置5の概略構成
図2は、エンジン装置5の要部の断面図である。エンジン装置5は、シリンダブロック31、ピストン33、シリンダヘッド35、および、ヘッドカバー37などを備えている。
図2は、エンジン装置5の要部の断面図である。エンジン装置5は、シリンダブロック31、ピストン33、シリンダヘッド35、および、ヘッドカバー37などを備えている。
ピストン33はシリンダブロック31の内部に往復移動可能に設けられている。ピストン33の下部にはコンロッド41が連動連結されている。シリンダブロック31の上面にはシリンダヘッド35の下部が連結されている。これらシリンダブロック31、シリンダヘッド35、及び、ピストン33は燃焼室Aを形成している。
シリンダヘッド35には、燃焼室Aと連通する吸気ポートB(inlet port)、及び、燃焼室Aと連通する排気ポートC(exhaust port)が形成されている。また、シリンダヘッド35には、吸気ポートBを開閉する吸気バルブ43と、排気ポートCを開閉する排気バルブ45とが設けられている。シリンダヘッド35の上部には、吸気バルブ43、及び、排気バルブ45を駆動する動弁機構47が設けられている。
吸気ポートBの一端はシリンダヘッド35の底面(燃焼室A)に開口している。吸気ポートBの他端はシリンダヘッド35の一側部に開口して、上述の吸気管11と連通接続されている。吸気管11には、吸気ポートBに向けて燃料を噴射する燃料噴射装置49が設けられている。そして、吸気管11が空気を供給するとともに燃料噴射装置49が燃料を噴射すると、空気と燃料が混合された混合気が生成され、混合気は吸気ポートBに供給される。以下では、空気と燃料が混合された混合気、及び、燃料が混合されていない空気自体を総称する用語として「空気」を用いる。また、特に吸気ポートから燃焼室に吸入される空気を、適宜に「吸入空気」と記載する。
吸気バルブ43はポペット型であり、棒形状のバルブステム51と傘形状の傘部53とを有し、バルブステム51の一端が傘部53の頂部に一体に連結されている。傘部53には、環状のバルブフェース55が設けられている。吸気ポートB(より詳しくは、吸気ポートBの燃焼室A側の開口の縁部)には、バルブフェース55が当接するバルブシート(弁座)57が設けられている。そして、バルブフェース55がバルブシート57から離反すると、バルブフェース55とバルブシート57の間を通じて空気が吸気ポートBから燃焼室Aに吸入される。
バルブステム51は、筒形状を呈するバルブガイド59に摺動可能に挿通されている。バルブステム51には、吸気バルブ43を閉じ方向(上方向)に付勢するバルブスプリング61が取り付けられている。バルブステム51の上端には、ステムエンド63が取り付けられている。
動弁機構47は、カム軸65と、カム軸65と一体に回転するカム67を備え、カム67がステムエンド63と接触している。そして、カム67が回転することによって、吸気バルブ43を下方に押し下げて、吸気バルブ43を開き方向(下方向)に移動させる。
なお、排気バルブ45についても同様に構成されており、燃焼室Aから排気ポートCに燃焼ガスを排気する。
3.吸気バルブ43の構成
図3の上段は吸気バルブ43の断面図であり、図3の下段は吸気バルブ43の平面図である。なお、以下の説明では、吸気バルブ43について、バルブステム51の軸心Pを上下方向とし、バルブステム51側を「上」、傘部側を「下」として説明する。図3に示すように、バルブステム51の下端は傘部53の頂部69に一体に連結されており、バルブステム51の上端は、図示を省略するが、傘部53の上方に延びている。
図3の上段は吸気バルブ43の断面図であり、図3の下段は吸気バルブ43の平面図である。なお、以下の説明では、吸気バルブ43について、バルブステム51の軸心Pを上下方向とし、バルブステム51側を「上」、傘部側を「下」として説明する。図3に示すように、バルブステム51の下端は傘部53の頂部69に一体に連結されており、バルブステム51の上端は、図示を省略するが、傘部53の上方に延びている。
傘部53の周縁部71には、上述のバルブフェース55とともに周縁溝部73が形成されている。なお、本明細書では、傘部53の周縁部71と記載するときは、特に明記した場合を除き、吸気ポートBに面する傘部53の上面の周縁部を意味する。
バルブフェース55は、平面視でバルブステム51の軸心Pを中心とする円環形状を呈している。周縁溝部73は単一であり、平面視で軸心Pを中心とし、バルブフェース55より若干小径の円環形状を呈している。周縁溝部73は、バルブフェース55の内周側であって、バルブフェース55に近接した位置に配置されている。
バルブフェース55と周縁溝部73との間には、周縁面部75が形成されている。この周縁面部75は、バルブシート57と接触しない。本実施例では、傘部53の周縁部71は、周縁溝部73、周縁面部75、及び、バルブフェース55を含んで構成される。
平面視におけるバルブフェース55と周縁溝部73との間隔距離D(すなわち、平面視における周縁面部75の幅である)は、平面視におけるバルブフェース55の幅W1に比べて非常に小さい。具体的には、間隔距離Dは、0.5mm以上で、かつ、1.1mm以下であることが好ましい。したがって、周縁溝部73がバルブフェース55に密接して配置されている。また、平面視における周縁溝部73の幅W2は、平面視におけるバルブフェース55の幅W1と同等であるか、または、それ以下であることが好ましい。
傘部53の周縁部71(周縁溝部73)より内周側には、中央面部77が形成されている。中央面部77は、傘部53の頂部69から周縁溝部73にわたって、軸心Pを中心とする径方向(以下、単に「径方向」と記載する)外方に向かって下向きになめらかに傾斜している。すなわち、中央面部77は、溝状の凹部や隆起した凸部を有しない。
上述した周縁溝部73は、この中央面部77に対して下方に窪んでいる。周縁溝部73の深さFは、0.5mm以上で0.7mm以下の範囲内であることが好ましい。ここで、周縁溝部73の深さFは、断面視において中央面部77と周縁溝部73が接合する内側接合部C1における中央面部77の接線Lを基準とした距離である。なお、本明細書では、内側接合部C1は中央面部77の外周端部にあたるので、接線Lを適宜に「中央面部77の延長線L」と記載する。
この接線Lとバルブステム51の軸心Pとのなす角度θ1は、60度以上で75度以下であることが好ましい。これにより、傘部53を比較的扁平な形状(換言すれば、傘部53の上下方向の高さが抑えられた形状)とすることができるので、傘部53の厚みを薄くすることができ、吸気バルブ43の軽量化を図ることができる。
図4を参照する。図4は、傘部の要部断面図である。図4に示すように、周縁面部75は接線L上に位置しているが、バルブフェース55や周縁溝部73は接線Lより下方に配置されている。すなわち、周縁部71(より具体的に言えば、内側接合部C1より外周側の部位)は、中央面部77の延長線Lより上方に突出していない。
周縁溝部73の断面形状は略Vの字形状である。周縁溝部73は、内周側の内側内壁部73iと、外周側の外側内壁部73oとを有する。ここで、中央面部77に対して内側内壁部73iが径方向外方に向かって下向きに傾斜している角度θ2は、15度以上で30度以下であることが好ましい。なお、角度θ2は、断面視で中央面部77の接線Lと内側内壁部73iとのなす角度に相当する。
また、周縁面部75に対して外側内壁部73oが径方向内方に向かって下向きに傾斜している角度θ3は、60度以上で75度以下であることが好ましい。なお、角度θ3は、断面視で周縁面部75と外側内壁部73oとのなす角度に相当する。
さらに、断面視で内側内壁部73iと外側内壁部73oとのなす角度θ4は略90度であることが好ましい。
内側内壁部73iは、上述した内側接合部C1で中央面部77と接合する。この内側接合部C1はシャープエッジである(エッジが立っている)ことが好ましい。したがって、内側接合部C1は面取り加工が施されていないことが好ましい。具体的には、内側接合部C1の曲率半径は0.3mm以下であることが好ましい。さらに、内側接合部C1の曲率半径は0.1mm以下であることが、より好ましい。
外側内壁部73oは、外側接合部C2で周縁面部75と接合する。この外側接合部C2もシャープエッジであることが好ましい。したがって、内側接合部C2も面取り加工が施されていないことが好ましい。具体的には、外側接合部C2の曲率半径は0.3mm以下であることが好ましい。さらに、外側接合部C2の曲率半径は0.1mm以下であることが、より好ましい。なお、この外側接合部C2は中央面部77の延長線L上にある。
内側内壁部73iの下部と外側内壁部73oの下部とは、湾曲面によってなめらかに接合している。なお、上述した吸気バルブ43の傘部53の径は、適宜に選択、設計される。たとえば、傘部53の周縁端Eの直径としては、22.2[mm]から36[mm]の範囲が例示される。
上述した吸気バルブ43の材質としては、チタン合金または純チタンが例示される。吸気バルブ43がチタン合金または純チタンからなる場合、吸気バルブ43の製造において、吸気バルブ43に対して酸化炉で酸化被膜処理を行うことが好ましい。この処理によって吸気バルブ43の表面に酸化被膜(TiO2被膜)が形成され、吸気バルブ43の硬さや耐摩耗性を増すことができる。また、吸気バルブ43の製造において、ショット(鋼粒)を吸気バルブ43に高速に吹き付けるショットピーニング処理を行うことが好ましい。この処理を行うことで、吸気バルブ43の疲労強度を向上させることができる。
4.動作
次に、実施例に係る自動二輪車1の動作を、主として吸気バルブ43によって燃焼室Aに空気が吸入される様子を中心に説明する。図5は、燃焼室Aに吸入される空気(本実施例では、混合気である)の流れを模式的に示した図である。図5では、中央面部77の表面近くを流れる空気の気流Gと、気流Gより中央面部77から若干離れた位置を流れる空気の気流Hを模式的に示す。
次に、実施例に係る自動二輪車1の動作を、主として吸気バルブ43によって燃焼室Aに空気が吸入される様子を中心に説明する。図5は、燃焼室Aに吸入される空気(本実施例では、混合気である)の流れを模式的に示した図である。図5では、中央面部77の表面近くを流れる空気の気流Gと、気流Gより中央面部77から若干離れた位置を流れる空気の気流Hを模式的に示す。
図5に示すように、吸入空気は中央面部77に沿って径方向外方に向かって流れる。中央面部77はなめらかに傾斜しているので、中央面部77に沿って流れる気流G1は層流状態である。
気流Gが内側接合部C1に至ると、進路の異なる気流G1、G2に分かれる。気流Gの一部である気流G1は、内側接合部C1の付近において、進行方向をゆるやかに変え、周縁溝部73に進入する。気流Gのうち、その他の気流G2は、進行方向を変えずに内側接合部C1を通過し、中央面部77の延長線上に沿うように進む。よって、気流G2は周縁溝部73の上方を通過する。
気流G1が内側接合部C1を通過すると、気流G1は極めて微弱な乱流になるか、または、層流であっても乱流に近い状態となる。このような状態を、本明細書では「乱流になり易くなる」と記載する。内側内壁部73iの付近では、気流G1は乱流になり易くなっている。その様子を、図5では比較的小さい円(○印)によって模式的に示している。
内側内壁部73iに沿って進んだ気流G1は、外側内壁部73oと衝突する。このとき、気流G1が外側内壁部73oに入射する角度は略直角である。この衝突後、気流G1は周縁溝部73から出るとともに確実に乱流となる。さらに、気流G1が周縁溝部73から出る際、外側接合部C2を通過するので、気流G1は乱流の状態を保ち易くなる。但し、周縁溝部73で発生させる乱流の程度はあくまで微弱である。図5では、確実に乱流となっている範囲を比較的大きい円(○印)によって模式的に示している。
周縁溝部73から出た気流G1は、周縁溝部73の上方を通過する気流G2とともに、周縁面部75、及び、バルブフェース55に沿って進む。この際、気流G2は外側接合部C2と衝突しない。
また、乱流は層流に剥離しにくい性質を有するので、気流G1は周縁面部75、及び、バルブフェース55の表面形状に好適に追従するように進む。そして、気流G1が周縁端Eに至っても、その周縁端Eに沿うように流れようとする。この結果、気流G1は傘部53の周縁部71を巻くように、気流G1の進行方向は径方向外方から下方に変化する。その後、傘部53から離れて燃焼室Aに流入する。気流G2、気流Hも、気流G1の進路の外側を通って燃焼室Aに流入する。
このように、吸気バルブ43の燃焼室A側の吸入空気の流路(すなわち、燃焼室Aに流入する空気の流路)は、径方向外方(換言すれば、傘部53の周縁部71の側方、または、中央面部77の延長線L上)のみではなく、傘部53の周縁部71の下方にも及んでいる。このように、吸気バルブ43の燃焼室A側の吸入空気の流路は広いので、空気が効率良く燃焼室Aに吸入される。この結果、燃焼室Aに吸入される空気量、すなわち、吸入空気量が増大する。
また、傘部53の表面に沿って流れる吸入空気の一部(気流G1)のみが周縁溝部73に流入するので、その他(気流G2)は流動抵抗を受けずに進む。このように、空気が吸気ポートBから燃焼室Aに吸入される際に空気が受ける抵抗は比較的に小さいので、空気が効率良く燃焼室に吸入される。また、流動抵抗が抑制されているので、吸入効率が安定している。たとえば、吸気バルブ43のリフト量が変わっても、吸入効率は良好に保たれている。
また、周縁溝部73はバルブフェース55の内側近傍に配置されているので、バルブフェース55の表面に効果的に乱流状態の吸入空気を供給することができる。また、周縁溝部73で発生させる乱流を微弱にすることができるので、吸入空気が周縁溝部73で受ける流動抵抗自体も低減することができる。また、平面視における周縁溝部73の幅W2は、平面視におけるバルブフェース55の幅W1と同等、または、それ以下であるので、吸入空気が周縁溝部73で受ける流動抵抗自体も低減することができる。
この結果、エンジン装置5は、より大きな動力を発生させることができる。出力を大きくすることができる。また、これにより、自動二輪車1の性能に高めることができる。
5.比較例との対比
以下では、実施例に係る吸気バルブ43と、比較例に係る吸気バルブとを種々の観点から対比する。
以下では、実施例に係る吸気バルブ43と、比較例に係る吸気バルブとを種々の観点から対比する。
5.1.吸入空気の挙動に関する対比
以下では、実施例に係る吸気バルブ43の比較例として2種の吸気バルブを例にとり、これら比較例に係る吸気バルブによって燃焼室Aに空気が吸入される様子について対比説明する。
以下では、実施例に係る吸気バルブ43の比較例として2種の吸気バルブを例にとり、これら比較例に係る吸気バルブによって燃焼室Aに空気が吸入される様子について対比説明する。
図6を参照する。図6は、比較例に係る吸気バルブ101によって燃焼室Aに吸入される空気の流れを模式的に示した図である。図6に示す吸気バルブ101の傘部103には、周縁溝部73に相当する構成が形成されていない。バルブフェース105は中央面部107と接合部109で直接、接合している。
この吸気バルブ101の場合、中央面部107の表面近くを径方向外方に向かって流れる気流Iは、層流のまま接合部109に至る。このため、気流Iは接合部109で傘部103から剥離し、進行方向をほとんど変えずに中央面部107の延長線上を進む。すなわち、気流Iはバルブフェース105に沿うように、また、傘部103の周縁部を巻き込むように進まない。よって、傘部103の見かけ上の径は、傘部103の実際の径に比べて大きくなる。図6では、実際の傘部103に比べて見かけ上、大きくなっている傘部の領域Jを明示している。
このように、吸気バルブ101の燃焼室A側の吸入空気の流路(すなわち、燃焼室Aに流入する空気の流路)は、径方向外方のみに限られる。したがって、吸気バルブ101の燃焼室A側の吸入空気の流路は、実施例に係る吸気バルブ43の場合に比べて狭い。よって、空気は効率よく燃焼室Aに吸入されず、吸入空気量は比較的小さい。
図7を参照する。図7は、比較例に係る吸気バルブ111によって燃焼室Aに吸入される空気の流れを模式的に示した図である。図7に示す吸気バルブ111は、段差が付いた傘部113を備えている。具体的は、中央面部115の外周部がバルブフェース117に対して一段低く、中央面部115とバルブフェース117との間に障壁部119が形成されている。
この吸気バルブ111の場合、中央面部115の表面近くを径方向外方に向かって流れる気流Kは全て、障壁部119と衝突する。この衝突によって気流Kは乱流となる。乱流となった気流Kは、バルブフェース117に沿って進む。図7では、乱流となっている範囲を円(○印)によって模式的に示している。
そして、気流Kは、傘部113の周縁部を巻くように進行方向を径方向外方から下方に変えて、燃焼室Aに流入する。気流Mも、気流Kの進路の外側を通って燃焼室Aに流入する。このため、吸気バルブ111の燃焼室A側の吸入空気の流路(すなわち、燃焼室Aに流入する空気の流路)は広い。
しかしながら、気流Kの全部が障壁部119に衝突するので、吸入空気が受ける抵抗は比較的に大きい。これに対し、実施例に係る吸気バルブ43によれば、図5を参照して説明したように、気流Gの一部である気流G1のみが流動抵抗を受けるので、吸入空気が受ける抵抗は比較的に小さい。
さらに、気流Mの進路も障壁部119によって大きく屈曲する。特に、障壁部119の上方において気流Mは大きく進行方向が変化するので、吸入空気が受ける抵抗は一層大きくなる。これに対し、実施例の吸気バルブ43によれば、周縁溝部73の上方において気流Hの進行方向はほとんど変化しないので、吸入空気が受ける抵抗は比較的に小さい。
以上より、吸気バルブ111の場合、吸気バルブ111の燃焼室A側の吸入空気の流路は広いが、吸入空気が受ける流動抵抗が比較的に大きいので、空気が燃焼室Aに吸入される効率は、実施例に係る吸気バルブ43に劣る。したがって、吸気バルブ111における吸入空気量は吸気バルブ43における吸入空気量に比べて小さい。また、吸入空気が受ける流動抵抗が比較的に大きいため、吸気バルブ111は、吸入効率の安定性の観点からも吸気バルブ43に比べて不安定であり、バランスを崩しやすい。たとえば、吸気バルブ43のリフト量等によって吸入効率が低下する場合がある。
5.2.吸入空気量に関する対比
次に、比較例に係る吸気バルブと実施例に係る吸気バルブ43とを、吸入空気量の観点から対比する。
次に、比較例に係る吸気バルブと実施例に係る吸気バルブ43とを、吸入空気量の観点から対比する。
図8は、比較例に係る4種の吸気バルブの各形状を示す図である。左上段には標準タイプの吸気バルブ121を示し、左下段には段付タイプの吸気バルブ131を示し、右上段には2本溝タイプの吸気バルブ141を示し、右下段には内周溝タイプの吸気バルブ151を示す。以下、適宜、標準タイプ121、段付タイプ131、2本溝タイプ141、内周溝タイプ151と記載する。
標準タイプ121の傘部123には、周縁溝部73に相当する構成が形成されていない。すなわち、傘部123は、中央面部125とバルブフェース127が直接、接合している。
段付タイプ131は、段差が付いた傘部133を備えている。具体的は、中央面部135の外周部がバルブフェース137に対して一段低く、中央面部135とバルブフェース137との間に障壁部139が形成されている。
2本溝タイプ141は、傘部143に2本の溝145、147が形成されている。溝1部145は傘部143の周縁部に形成され、溝部147は周縁部より内周側に形成されている。以下では、適宜、溝部145を「周縁溝部145」と記載し、溝部147を「内周溝部147」と記載する。
内周溝タイプ151は、上述の2本溝タイプ141から周縁溝部145を省略したものに相当する。
上述した各吸気バルブ43、121、131、141、151を使用して、以下のような測定を行った。すなわち、燃焼室A及び吸気ポートBの圧力をそれぞれ所定圧力に設定する。そして、0[mm]から10[mm]までの各バルブリフト量で吸気ポートBを開いた状態を保ち、吸気ポートBから燃焼室Aに吸入される空気の流量[L/sec]をそれぞれ実測した。各バルブリフト量における吸入空気の流量の実測結果を表1に示す。表1では、各バルブリフト量において最大の流量値を丸で囲んで明示する。
表1に示されるように、各バルブとも、バルブリフト量が大きくなるに従って流量が増大する傾向は同じである。バルブリフト量を、1〜3[mm]の低領域と、4〜6[mm]の中領域と、7〜10[mm]の高領域に分けて、低領域、中領域、及び、高領域ごとに各種バルブを比較する。そうすると、バルブリフト量が低領域では2本溝タイプ141が最も流量が大きく、バルブリフト量が中領域では段付タイプ131が最も流量が大きく、バルブリフト量が高領域では実施例に係る吸気バルブ43が最も流量が大きい。
各バルブの傾向を明示するために、標準タイプ121の流量を基準とし、この標準タイプ121の流量に対する各バルブの流量の変化率(%)を、表2に示す。表2では、各バルブリフト量において最も大きい変化率を丸で囲んで明示する。
また、図9は、標準タイプ121の流量に対する各バルブの流量の変化率(%)のグラフである。図9のグラフの横軸はバルブリフト量(mm)であり、縦軸は変化率(%)である。
表2、及び、図9で顕在化する各バルブの流量特性は以下の通りである。すなわち、本実施例に係る吸気バルブ43、及び、2本溝タイプ141はいずれも、バルブリフト量が低領域と高領域で流量が比較的高い。バルブリフト量が中領域では段付タイプ131に劣るが、標準タイプ121及び内周溝155に比べれば流量ははるかに大きい。
段付タイプ131は、バルブリフト量が3[mm]のときは突出して良好であるが、バルブリフト量が低領域と高領域では落ち込みが激しい。特に、バルブリフト量が1mmと10mmでは、全ての吸気バルブの中で段付タイプ131の流量が最も低い。
標準タイプ121と内周溝タイプ151は、バルブリフト量の全域にわたって流量が比較的に低い。
表1に示す測定結果に基づいて試算した吸入空気量を表3に示す。この試算では、吸気バルブを駆動するカムの回転数を2500[rpm]とし、カムのカム角度と吸気バルブのバルブリフト量は図10に示す関係にあることを前提としている。なお、バルブリフト量の最大値は、カム回転角0[deg]のときで9.6[mm]である。表3に示す値は、1回当たりの吸気行程1回あたりの吸入空気量である。
表3に示すように、実施例に係る吸気バルブ43の吸入空気量が最も大きい。2本溝タイプ141は、吸気バルブ43に若干劣る。次いで、段付タイプ131、内周溝タイプ151、標準タイプ121の順で吸入空気量は小さくなる。
ここで、吸気バルブ43についてみれば、バルブリフト量が9[mm]以上であるときの吸入空気量は、吸入空気量全体の約30%を占める。また、バルブリフト量が8[mm]以上であるときの吸入空気量は、全体の約50%を占め、バルブリフト量が高領域(7[mm])であるときの吸入空気量は、全体の約63%を占める。このように、吸入空気量は、バルブリフト量が高領域であるときの吸入空気量に大きく依存している。よって、高領域のバルブリフト量において流量が比較的大きいと、吸入空気量も比較的大きくなる傾向がある。実際、実施例に係る吸気バルブ43によれば、上述したとおり、比較例に係る各種吸気バルブに比べて、高領域のバルブリフト量において大きな流量で空気を吸入させることができる。
5.3.強度(応力)の関する対比
次に、上述した標準タイプ121、段付タイプ131、2本溝タイプ141と、実施例に係る吸気バルブ43とについて、強度(応力)の観点から対比する。
次に、上述した標準タイプ121、段付タイプ131、2本溝タイプ141と、実施例に係る吸気バルブ43とについて、強度(応力)の観点から対比する。
各種吸気バルブについて、次のような条件に基づいて傘部の応力値を算出した。すなわち、吸気バルブはチタン製として、そのヤング率[GPa]を117とし、ポアソン比を0.315とし、密度を4.43×10−6[kg/mm3]とする。そして、吸気バルブのバルブフェースを、その面に直交する方向の変位を拘束した状態で、傘部の下面全体に8[MPa]の圧力を加え、かつ、バルブステムの上端にその軸心上向きに149.5[N]の力を加えるものとする。これらの条件を前提として強度解析シミュレーションを行い、傘部の上面の応力値を試算した。
図11は、吸気バルブの傘部における応力値を模式的に示す図である。図11では、吸気バルブの一部(バルブステムの軸心回りに約20度分)を切り取った部位を図示しており、試算した傘部の位置、及び、その位置における応力値を付記している。図11(a)は実施例に係る吸気バルブ43であり、(b)は2本溝タイプ141であり、(c)は標準タイプ121であり、(d)は段付タイプ131である。
図11(a)に示するように、吸気バルブ43の最大応力値は、中央面部77の点aにおける92.7[MPa]である。この値は、標準タイプ121の点aにおける応力値と同じである(図11(c)を参照)。
これに対し、図11(b)に示すように、2本溝タイプ141の最大応力値は、内周溝部147の点cにおける167.5[MPa]である。この値は、試算した4種の吸気バルブの応力値と比べて突出して高い。
図11(c)に示すように、標準タイプ121の最大応力値は中央面部125の点aにおける92.7[MPa]である。また、傘部123の周縁部の点bにおける応力は、他の吸気バルブに比べて最も低い。
図11(d)に示すように、段付タイプ131の最大応力値は、中央面部135の点Aにおける117.2[MPa]である。これは、バルブフェースに対して中央面部135が一段低くするために、中央面部135の厚みを僅かに薄くしているからである。
このように、標準タイプ121は、傘部に応力が集中せず、最も強度的に優れている。また、吸気バルブ43の最大応力値が標準タイプ121と同じであるから、吸気バルブ34も標準タイプ121と同等の強度を有すると認められる。これに対して、2本溝タイプ141は、吸気バルブ43の最大応力値の約2倍弱の応力が内周溝部147に集中している。このため、2本溝タイプ141の強度は吸気バルブ43に比べて極めて低い。
以上のとおり、実施例に係る吸気バルブ43は、比較例に係る各吸気バルブに比べて、吸入空気の流れ(挙動)の観点から吸入効率が高いと認められる。また、吸気バルブ43は、吸入空気の流量の実測結果に基づいて、吸入空気量が最も大きいと認められる。さらに、強度計算の結果を考慮すると、吸気バルブ43によれば、強度を落とすことなく(応力を集中させることなく)、吸入空気量の増大を図ることができる。対照的に、2本溝タイプ141では、吸入空気量を増大させることができるが、強度が著しく低下している。
6.間隔距離Dと周縁溝部73の深さFの好ましい範囲
以下では、平面視においてバルブフェース55と周縁溝部73との間隔距離D、及び、周縁溝部73の深さFについて、それぞれ好ましい範囲を説明する。
以下では、平面視においてバルブフェース55と周縁溝部73との間隔距離D、及び、周縁溝部73の深さFについて、それぞれ好ましい範囲を説明する。
表4に示すように、実施例に係る吸気バルブ43について、間隔距離D、及び、深さFの組み合わせが異なる10種の吸気バルブ43を用意した。以下では、各種の吸気バルブ43を区別するために、それぞれ吸気バルブN1、N2、…、N10と記載する。
そして、これら10種の吸気バルブN1−N10を使用して、上述の流量測定と同様の測定を行った。すなわち、燃焼室A及び吸気ポートBの圧力をそれぞれ所定圧力に設定する。そして、0[mm]から10[mm]までの各バルブリフト量で吸気ポートBを開いた状態を保ち、吸気ポートBから燃焼室Aに吸入される空気の流量[L/sec]をそれぞれ実測した。
表5は、各バルブリフト量における吸入空気の流量の実測結果である。表5では、各バルブリフト量において最大の流量値を三重丸で囲み、2番目に大きい流量値を二重丸で囲み、3番目に大きい流量値を波線の一重丸で囲んで明示する。
表5に示されるように、バルブリフト量の全域にわたって、吸気バルブN2が最も流量が大きい。また、次に良好な結果が得られたのは、吸気バルブN10である。吸気バルブN10も、バルブリフト量の全域にわたって流量が大きい。ちなみに、吸気バルブN2の仕様は、間隔距離Dが0.5[mm]で、周縁溝部73の深さFが1.1[mm]である。また、吸気バルブN10の仕様は、間隔距離Dが0.7[mm]で、周縁溝部73の深さFが0.7[mm]である。
表5に示す測定結果に基づいて試算した吸入空気量を表6に示す。この試算では、吸気バルブを駆動するカムの回転数を2500[rpm]とし、カムのカム角度と吸気バルブのバルブリフト量は図10に示す関係にあることを前提としている。なお、バルブリフト量の最大値は、カム回転角0[deg]のときで9.6[mm]である。表6に示す値は、1回当たりの吸気行程1回あたりの吸入空気量である。また、表6では、吸入空気量の大きい順番に順位(1)〜(10)を付記している。
表6に示すように、吸気バルブN2の吸入空気量が最も大きく、次いで吸気バルブN10の吸入空気量が大きい。
図12は、吸気バルブ43の仕様(間隔距離D、及び、周縁溝部73の深さFの組み合わせ)と、吸入空気量の関係を模式的に示す図である。図12では、横軸に周縁溝部73の深さF[mm]をとり、縦軸に間隔距離D[mm]をとったグラフである。そして、各吸気バルブN1−N10の間隔距離D、及び、周縁溝部73の深さFの組み合わせに対応する位置にプロットし、その傍らに吸入空気量[cc]と、括弧書きで吸入空気量の順位を付記している。また、吸入空気量が490[cc]を超える組み合わせ領域Q1、吸入空気量が490[cc]未満で485[cc]以上の組み合わせ領域Q2、吸入空気量が485[cc]未満の組み合わせ領域Q3をそれぞれ模式的に示している。
図12を参照し、吸入空気量の観点から説明する。図12に明示されるように、周縁溝部73の深さFについては総じて以下のことが言える。すなわち、周縁溝部73の深さFは0.3[mm]以下である場合(例えば、吸気バルブN5、N7)に比べて、0.5[mm]以上であることが好ましい。さらに、周縁溝部73の深さFが0.5[mm]以上の範囲では、0.9[mm]以上よりも、0.7[mm]以下であることがより好ましい。
また、間隔距離Dについては総じて以下のことが言える。すなわち、間隔距離Dは、0.2[mm]以下や、1.6[mm]以上である場合に比べて、0.4[mm]以上で1.4[mm]以下であることが好ましい。さらに、間隔距離Dが0.4[mm]から1.4[mm]の範囲では、0.5[mm]以上で1.2[mm]以下であることがより好ましい。また、さらに、間隔距離Dが0.5[mm]から1.2[mm]の範囲では、0.5[mm]以上で1.1[mm]以下であることがより好ましい。
次に、吸気バルブN1、N2、N3、及び、N9に着目すると、周縁溝部73の深さFが0.5[mm]のとき、間隔距離Dは、0.4[mm]以下、または、1.4[mm]以上である場合に比べて、0.9[mm]の方が好ましい。また、吸気バルブN6、N10、N8に着目すると、周縁溝部73の深さFが0.7[mm]のときは、間隔距離Dは、0.2[mm]以下、または、1.2[mm]以上である場合に比べて、0.7[mm]の方が好ましい。
また、吸気バルブN5、N2、N1、N8、N10、及び、N9に着目すると、間隔距離Dが0.4[mm]から1.2[mm]の範囲のとき、周縁溝部73の深さFは、0.3[mm]以下である場合に比べて、0.5[mm]以上であることが好ましい。この場合、さらに、周縁溝部73の深さFは、0.7[mm]以下であることがより好ましい。
なお、間隔距離Dが著しく大きい値となると、もはや周縁部71に溝部を有する吸気バルブ43ではなくなり、上述した内周溝タイプ151となる。この場合、吸入空気量が大幅に低下することは、上記「5.2.吸入空気量に関する対比」において説明した通りである。
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した実施例では、外側接合部C2は中央面部77の延長線L上にあったが、これに限られない。例えば、中央面部77の延長線Lより下方に位置するように外側接合部C2を構成してもよい。
(2)上述した実施例では、周縁面部75は中央面部77の延長線L上に位置していたが、これに限られない。例えば、中央面部77の延長線Lより下方に位置するように周縁面部75を構成してもよい。
(3)上述した実施例では、内側接合部C1及び外側接合部C2はいずれもシャープエッジであったが、これに限られない。たとえば、内側接合部C1、または/及び、外側接合部C2が面取り加工されていてもよい。
(4)上述した実施例において、中央面部77は断面視で湾曲する面部であってもよいし、断面視で直線的な面部であってもよい。また、周縁面部75も断面視で湾曲する面部であってもよいし、断面視で直線的な面部であってもよい。
(5)上述した実施例では、間隔距離D、周縁溝部73の深さF、角度θ1乃至θ4、内側接合部C1及び外側接合部C2の各曲率半径、及び、傘部53の径について、それぞれ好ましい範囲を具体的に例示したが、これに限られない。これら各種の寸法及び仕様は、エンジン装置5の仕様や用途に応じて適宜に選択、設計することができる。
(6)上述した実施例では、吸気管11に燃料噴射装置49を備える構成であったが、これに限られない。燃料噴射装置49に換えてキャブレタ装置を備えるように変更してもよい。また、燃料噴射装置49に換えて、燃焼室Aに直接、燃料を噴射する直接噴射ノズルを備えるように構成してもよい。この場合には、空気自体が吸気管11から吸気ポートBに供給され、吸気ポートBから燃焼室Aに吸入される。
(7)上述した実施例では、吸気バルブの材質としてチタンを例示したが、これに限られない。たとえば、ステンレスや耐熱鋼など適宜に選択することができる。
(8)上述した実施例では、輸送機器として自動二輪車を例にとって説明したが、これに限られない。たとえば、三輪自動車、四輪自動車であってもよいし、用途としては建築土木用車輌、農業用車輌、その他の特殊車両であってもよい。また、これら陸上用の輸送機器に限られず、船舶、ボート等の海上用の輸送機器であってもよい。また、ヘリコプターや飛行機などの航空機であってもよい。
(9)実施例、及び、上記(1)から(7)で説明した各変形実施例については、さらに各構成を他の変形実施例の構成に置換または組み合わせるなどして適宜に変更してもよい。
1 … 自動二輪車
5 … エンジン装置
35 … シリンダヘッド
31 … シリンダブロック
33 … ピストン
43 …吸気バルブ
53 … 傘部
69 … 頂部
71 … 周縁部
51 … バルブステム
55 … バルブフェース
73 … 周縁溝部
73i … 内側内壁部
73o … 外側内壁部
75 … 周縁面部
77 … 中央面部
A … 燃焼室
B … 吸気ポート
F… 周縁溝部の深さ
L … 内側接合部における中央面部の接線(中央面部の延長線)
P … バルブステムの軸心
C1 … 内側接合部
C2 … 外側接合部
θ1 … 接線とバルブステムの軸心とのなす角度
θ2 … 中央面部に対して内側内壁部が径方向外方に向かって下向きに傾斜している角度
θ3 … 周縁面部に対して外側内壁部が径方向内方に向かって下向きに傾斜している角度
θ4 … 断面視で内側内壁部と外側内壁部とのなす角度
W1 … 面視におけるバルブフェースの幅
W2 … 平面視における周縁溝部の幅
5 … エンジン装置
35 … シリンダヘッド
31 … シリンダブロック
33 … ピストン
43 …吸気バルブ
53 … 傘部
69 … 頂部
71 … 周縁部
51 … バルブステム
55 … バルブフェース
73 … 周縁溝部
73i … 内側内壁部
73o … 外側内壁部
75 … 周縁面部
77 … 中央面部
A … 燃焼室
B … 吸気ポート
F… 周縁溝部の深さ
L … 内側接合部における中央面部の接線(中央面部の延長線)
P … バルブステムの軸心
C1 … 内側接合部
C2 … 外側接合部
θ1 … 接線とバルブステムの軸心とのなす角度
θ2 … 中央面部に対して内側内壁部が径方向外方に向かって下向きに傾斜している角度
θ3 … 周縁面部に対して外側内壁部が径方向内方に向かって下向きに傾斜している角度
θ4 … 断面視で内側内壁部と外側内壁部とのなす角度
W1 … 面視におけるバルブフェースの幅
W2 … 平面視における周縁溝部の幅
Claims (15)
- 燃焼室と連通する吸気ポートに設けられる吸気バルブであって、
傘部と、
前記傘部の頂部に一端が連結し、他端が上方に延びるバルブステムと、
を備え、
前記傘部は、
前記傘部の周縁部に形成されているバルブフェースと、
前記周縁部であって、前記バルブフェースの内側近傍に配置されている単一の環状の周縁溝部と、
を有する吸気バルブ。 - 請求項1に記載の吸気バルブにおいて、
平面視において、前記バルブフェースと前記周縁溝部との間隔距離は、0.5mm以上で、かつ、1.1mm以下である吸気バルブ。 - 請求項1または請求項2に記載の吸気バルブにおいて、
平面視において、前記周縁溝部の幅は、前記バルブフェースの幅の同等、または、同等以下である吸気バルブ。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の吸気バルブにおいて、
前記傘部は、前記頂部から前記周縁溝部にわたって径方向外方に向かって下向きになめらかに傾斜している中央面部を有し、
前記周縁溝部は、前記中央面部に対して下方に窪んでいる吸気バルブ。 - 請求項4に記載の吸気バルブにおいて、
前記周縁溝部の深さは、0.5mm以上で、かつ、0.7mm以下である吸気バルブ。 - 請求項4または請求項5に記載の吸気バルブにおいて、
前記周縁溝部の断面形状は略Vの字状である吸気バルブ。 - 請求項4から請求項6のいずれかに記載の吸気バルブにおいて、
前記傘部の周縁部は、前記中央面部の延長線より上方に突出していない吸気バルブ。 - 請求項4から請求項7のいずれかに記載の吸気バルブにおいて、
前記周縁溝部は、前記中央面部と接合する内側内壁部を有し、
前記中央面部に対して前記内側内壁部が径方向外方に向かって下向きに傾斜している角度は、15度以上であって、かつ、30度以下である吸気バルブ。 - 請求項8に記載の吸気バルブにおいて、
前記内側内壁部と前記中央面部とが接合する内側接合部の曲率半径は、0.3mm以下である吸気バルブ。 - 請求項8または請求項9に記載の吸気バルブにおいて、
前記傘部は、前記周縁溝部と前記バルブフェースとの間に形成されている環状の周縁面部を有し、
前記周縁溝部は、前記バルブフェースと接合する外側内壁部を有し、
前記周縁面部に対して前記外側内壁部が径方向内方に向かって下向きに傾斜している角度は、60度以上であって、かつ、75度以下である吸気バルブ。 - 請求項10に記載の吸気バルブにおいて、
前記外側内壁部と前記周縁面部とが接合する外側接合部の曲率半径は、0.3mm以下である吸気バルブ。 - 請求項10または請求項11に記載の吸気バルブにおいて、
前記外側接合部は、前記中央面部の延長線上に位置している吸気バルブ。 - 請求項1から請求項12のいずれかに記載の吸気バルブにおいて、
前記傘部の材質はチタンである吸気バルブ。 - エンジン装置であって、
請求項1から請求項13のいずれかに記載の吸気バルブと、
吸気ポートが形成されているシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドの下部に連結されるシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの内部を往復移動可能に設けられ、前記吸気ポートと連通する燃焼室を前記シリンダヘッド及び前記シリンダブロックとともに形成するピストンと、
を備えるエンジン装置。 - 請求項14に記載のエンジン装置を備えている輸送機器。
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