JP2011037960A - エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂 - Google Patents

エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂 Download PDF

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Abstract

【課題】 広範な用途に利用でき、靱性、硬度等の諸物性に優れる、または前記諸物性に優れた樹脂に誘導できる新規なエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂を提供する。
【解決手段】 重合体中のイソプレン単位に占める1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計割合が0.1%以下であるトランスポリイソプレンをエポキシ化して得られるエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂。このエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂のエポキシ化率は例えば20%以上であるのが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、新規なエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂に関する。この樹脂は種々のエラストマー製品の原料として有用である。
トランスポリイソプレンをエポキシ化して得られるエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂が知られている。例えば、特開平10−316715号公報には、トランスイソプレン系重合体を含有する水性分散液を有機過酸等の酸化剤により処理して重合体粒子表面をエポキシ化したエポキシ変性重合体の水性分散液が開示されている。しかし、この方法で得られるのは粒子表面がエポキシ化されたエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂の水分散液であり、塗料や接着剤等の用途に限られる。また、原料として1,4−結合以外の結合異性に相当する単位(1,2−結合、3,4−結合)の比較的多い合成トランスポリイソプレンを使用しているので、諸物性に劣るという問題もある。さらに、上記方法ではエポキシ化率の高いエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂が得られないという欠点を有する。実施例ではエポキシ当量500のエポキシ変性重合体を得ており、このエポキシ化率は14%である。
特開平10−316715号公報
従って、本発明の目的は、広範な用途に利用でき、靱性、硬度等の諸物性に優れる、または前記諸物性に優れた樹脂に誘導できる新規なエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、重合体中のイソプレン単位に占める1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計割合が極めて少ない高1,4−結合単位含有トランスポリイソプレンをエポキシ化すると、諸用途に利用できるポリマーが得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、重合体中のイソプレン単位に占める1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計割合が0.1%以下であるトランスポリイソプレンをエポキシ化して得られるエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂を提供する。
このエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂のエポキシ化率は20%以上であるのが好ましい。
本発明によれば、新規なエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂が提供される。このエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂は、多くのエポキシ基を有するため、必要に応じて他のカチオン重合性化合物と共にカチオン重合に付すことができる。また、適宜な架橋剤を用いて架橋することもできる。上記エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、又はこれを重合若しくは架橋して得られる樹脂は、強靱性、振動減衰性、硬度、耐衝撃性、ガスバリア性、密着性、耐候性、透明性に優れる。そのため、耐震ゴム、車載燃料電池シール材、制振構造物用粘弾性ダンパー、靴底防振材、ガスバリア性ゴム、高強度ゴム、接着性ゴム、耐候性ゴム、透明ゴム等として有用である。
実施例1で得られたエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂の1H−NMRスペクトルである。 実施例で得られたエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂の硬化物、原料として用いたトランスポリイソプレン樹脂の粘弾性測定結果を示す図である。 物性評価試験5の結果(エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂の硬化性評価)を示すグラフである。
本発明のエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂は、重合体中のイソプレン単位に占める1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計割合が0.1%以下という高1,4−結合単位含有トランスポリイソプレンをエポキシ化して得られる樹脂である。
エポキシ化されるトランスポリイソプレンとしては、重合体中のイソプレン単位に占める1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計割合が0.1%以下であればよいが、該割合は、好ましくは0.05%以下である。また、重合体中のイソプレン単位に占める1,4−トランス結合単位は、例えば98%以上であり、好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.5%以上である。
上記トランスポリイソプレンとして、例えば、杜仲(トチュウ:Eucommia ulmoides Oliver)、グッタペルカノキ(Palaquim gutta)、バラタゴムノキ(Mimusops balata)から産生されるトランス型ポリイソプレンを使用できる。これらは、1,2−結合単位及び3,4−結合単位(結合異性単位)の含有量が極めて低い上、シス1,4−結合単位の含有量も低いという特徴を有する。これらのなかでも、トランス1,4−結合単位の含有率が高い点で、杜仲(トチュウ:Eucommia ulmoides Oliver)由来のトランスポリイソプレンが、特に好ましい。
上記トランスポリイソプレンの重量平均分子量は、例えば、1000〜5000000、好ましくは10000〜3000000、さらに好ましくは100000〜2000000(特に、400000〜2000000)程度である。重量平均分子量の高いトランスポリイソプレンを原料として用いることにより、強靱性、振動減衰性に優れたエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂又はそれから誘導される樹脂を得ることができる。
エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂のエポキシ化率としては、エポキシ基の反応性を利用して有用な樹脂に誘導するという観点から、20%以上であるのが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。エポキシ化率が高いほど、必要に応じて重合、架橋することにより、高硬度、高耐衝撃性の樹脂を得ることができる。
上記トランスポリイソプレンのエポキシ化は、ハイドロパーオキサイド類、有機過酸等のエポキシ化剤を用いて行うことができる。ハイドロパーオキサイド類としては、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。有機過酸としては、例えば、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、トリフルオロ過酢酸、m−クロロ過安息香酸などが挙げられる。有機過酸は、過酸化水素と有機酸を用いた平衡過酸であってもよい。また、過酸化水素を用いる場合には、タングステン酸又はその塩、あるいはタングステン又はモリブデンを含むへテロポリ酸(例えば、12タングストリン酸)とを組み合わせて用いるのが好ましい。
なかでも、上記トランスポリイソプレンの好ましいエポキシ化法は、タングステン又はモリブデンを含むへテロポリ酸(特に、12タングストリン酸)と界面活性剤(特に、ハロゲン化四級アンモニウム塩)とから調製された相間移動型へテロポリ酸の存在下、水相及び有機相の二相系で過酸化水素により上記トランスポリイソプレンをエポキシ化する方法である。この方法によれば、エポキシ基の開環反応等の副反応が抑制され、高いエポキシ化率でエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂を得ることができる。
ヘテロポリ酸(例えば、12タングストリン酸)の使用量は、上記トランスポリイソプレン100重量部に対して、例えば、0.1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜50重量部である。この量が少なすぎると反応速度が遅くなり、逆に多すぎる場合には経済的に不利である。
界面活性剤としては、相間移動触媒として用いられるものであれば特に限定されないが、オニウム塩、なかでも四級アンモニウム塩が好ましく、特に、ハロゲン化四級アンモニウム塩が好ましい。
ハロゲン化四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−プロピルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ペンチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムクロリド、エチルトリメチルアンモニウムクロリド、トリエチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチル−n−プロピルアンモニウムクロリド、tert−ブチルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、トリメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムクロリド、トリメチル[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アンモニウムクロリド、1,1−ジメチルピロリジニウムクロリド、1,1−ジエチルピロリジニウムクロリド、1−エチル−1−メチルピロリジニウムクロリド、1,1,2−トリメチルピロリジニウムクロリド、1,1,3−トリエチルピロリジニウムクロリド、1,1−ジ−n−プロピルピロリジニウムクロリド、1,1−ジ−n−ブチルピロリジニウムクロリド、1,1−ジ−n−ペンチルピロリジニウムクロリド、1,1−ジ−n−ヘキシルピロリジニウムクロリド、1,1−ジメチルピペリジニウムクロリド、1,1−ジエチルピペリジニウムクロリド、1−エチル−1−メチルピペリジニウムクロリド、1,1,4−トリメチルピペリジニウムクロリド、1,1−ジメチルモルホリニウムクロリド、1,1−ジエチルモルホリニウムクロリド、1−メチルピリジニウムクロリド、1−エチルピリジニウムクロリド、1,2−ジメチルピリジニウムクロリド、1,3−ジメチルピリジニウムクロリド、1,4−ジメチルピリジニウムクロリド、1,2,6−トリメチルピリジニウムクロリド、1−n−プロピルピリジニウムクロリド、1−n−ブチルピリジニウムクロリド、1−n−ペンチルピリジニウムクロリド、1−n−ヘキシルピリジニウムクロリド、1−ラウリルピリジニウムクロリド、1−セチルピリジニウムクロリド、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジエチルイミダゾリウムクロリド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジ−n−プロピルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジ−n−ブチルイミダゾリウムクロリド、1,3−n−ペンチルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジ−n−ヘキシルイミダゾリウムクロリド等の塩化四級アンモニウム塩、および対応する臭化四級アンモニウム塩、ヨウ化四級アンモニウム塩などが挙げられる。
これらの中でも、1−n−ブチルピリジニウムクロリド、1−n−ペンチルピリジニウムクロリド、1−n−ヘキシルピリジニウムクロリド、1−ラウリルピリジニウムクロリド、1−セチルピリジニウムクロリド等のハロゲン化四級ピリジニウム塩が特に好ましい。
界面活性剤(例えば、ハロゲン化四級アンモニウム塩)の使用量は、上記トランスポリイソプレン100重量部に対して、例えば、0.1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜50重量部である。この量が少なすぎると反応速度が遅くなり、多すぎると反応終了後の分液性が低下しやすくなると共に、経済的に不利となる。
この方法において、反応系内にリン酸を添加することもできるが、リン酸の添加量が多いとエポキシ基の開環反応等の副反応が促進されるので、リン酸の添加量は、ヘテロポリ酸(例えば、12タングストリン酸)に含まれるタングステン金属原子1グラム原子に対して、例えば0.2モル以下、好ましくは0.1モル以下、さらに好ましくは0.05モル以下である。副反応を抑制するためには、リン酸を添加しないのが好ましい。
有機相を形成するための有機溶媒としては、水と非混和性の有機溶媒であって、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、2,6−ジメチルシクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素などが好ましい。
有機溶媒の使用量は、原料トランスポリイソプレンの溶解性、操作性、分液性等を考慮して適宜選択でき、例えば、上記トランスポリイソプレン100重量部に対して、10〜200000重量部、好ましくは100〜100000重量部、さらに好ましくは300〜50000重量部である。
水相を形成する水の使用量は、ヘテロポリ酸(例えば、12タングストリン酸)の溶解性、操作性、分液性等を考慮して適宜選択でき、例えば、ヘテロポリ酸(例えば、12タングストリン酸)100重量部に対して、100〜100000重量部、好ましくは100〜10000重量部程度である。
過酸化水素としては、市販の過酸化水素水をそのまま、あるいはそれを水で希釈して用いることができる。過酸化水素水の濃度としては、通常、0.01〜60重量%、好ましくは0.1〜50重量%である。過酸化水素の使用量は、所望するエポキシ基導入量によっても異なるが、原料トランスポリイソプレン中の二重結合1モルに対して、例えば0.01〜10モルの範囲であり、好ましくは0.1〜5モル、さらに好ましくは0.5〜2モル程度である。
上記方法において、原料トランスポリイソプレン、ヘテロポリ酸、界面活性剤及び過酸化水素の添加順序は特に限定されず、例えば、(1)ヘテロポリ酸(又は、その有機溶媒溶液若しくは水溶液)に過酸化水素水の一部を添加して活性化させた後、原料トランスポリイソプレン、界面活性剤(又は、それらの有機溶媒溶液)を添加し、さらに残りの過酸化水素水を添加する方法、(2)ヘテロポリ酸、原料トランスポリイソプレン、界面活性剤を含む溶液(有機溶媒溶液)に、過酸化水素水を添加する方法、(3)原料トランスポリイソプレン、界面活性剤を含む溶液(有機溶媒溶液)に、ヘテロポリ酸の溶液(例えば、水溶液)を添加し、次いで過酸化水素水を添加する方法、(4)原料トランスポリイソプレン、界面活性剤を含む溶液(有機溶媒溶液)に、ヘテロポリ酸の溶液(例えば、水溶液)と過酸化水素水とを別々の容器から並行して添加する方法などが挙げられる。これらの方法のうち、エポキシ化率や反応速度の点から、(1)又は(2)の方法が好ましく、特に(1)の方法が好ましい。
反応温度は、特に制限されないが、反応速度、反応の選択性、安全性等の観点から、一般に0〜140℃、好ましくは0〜80℃、さらに好ましくは10〜40℃の範囲である。反応温度が低すぎると反応速度が低下しやすくなり、逆に高すぎるとエポキシ基の開環反応等の副反応が起きやすくなる。反応は、安全性の点から、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。反応時間は、所望するエポキシ化率に応じて適宜設定でき、例えば1〜48時間、好ましくは4〜36時間、さらに好ましくは8〜36時間である。
反応終了後、一般的な分離精製操作を用いることにより、エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂を得ることができる。例えば、反応混合物を静置し、有機相と水相とを分液し、水相を取り除き、有機相を、水、亜硫酸水素ナトリウム水溶液等で洗浄したのち、シリカゲル等の吸着材を用いて触媒を取り除き、沈殿、再沈殿、晶析、再結晶、あるいは溶媒の留去等を行うことにより、エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂を得ることができる。
こうして得られたエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂は、結合異性に相当するイソプレン単位又はそのエポキシ化された単位が極めて少なく、靱性、硬度等の諸物性に優れ、また透明である。さらに、エポキシ化率も高いので、エポキシ基の反応性を利用して諸用途に適合した特性を有する樹脂に誘導できる。また、エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂はフィルム状、粉末状等の固体として得ることができ、取扱性に優れる。
得られたエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂は、必要に応じて適宜な添加剤を加えた後、成形(押出成形、射出成形、圧縮成形等)に供し、フィルム状、シート状、直方体形状、円柱状等の成形品を得ることができる。また、前記エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂は多くのエポキシ基を有するため、単独で、又は他のカチオン重合性化合物(他のエポキシ化合物等)とともにカチオン重合に付して(共)重合体を得ることができる。また、エポキシ基と反応しうる官能基を複数個有する架橋剤を用いた架橋反応に付すことができる。さらに、残存する二重結合を利用して、単独で又はラジカル重合性化合物と共にラジカル重合に付すことができる。こうして得られた(共)重合体(硬化物)、架橋物は、上記と同様の成形に供することができる。
上記エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、又はこれを重合、架橋させて得られる樹脂((共)重合体、架橋物)は、粘弾性、強靱性、振動減衰性、高硬度、耐衝撃性、ガスバリア性、密着性、耐候性、透明性等の特性に優れるため、例えば、防振ゴム、ガスバリア性ゴム、改質エポキシ樹脂、接着性ゴム、耐候性ゴム、透明ゴムなどに利用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂のエポキシ化率は、1H−NMRスペクトル測定結果に基づき、下記の計算式により算出した。
エポキシ化率(%)={(エポキシ部位のプロトンNMR積算値)/(エポキシ部位、二重結合部位、副反応部位のプロトンNMR積算値の合計)}×100
なお、エポキシ部位のプロトンのケミカルシフトは2.7ppm付近、二重結合部位のプロトンのケミカルシフトは5.1ppm付近、副反応部位のうちエポキシ基が加水分解を受けて水酸基に変化した部位のプロトン(主鎖のプロトン)のケミカルシフトは3.2ppm付近である。
実施例1
1Lの4つ口反応器に12タングストリン酸(H3PW1240・30H2O)1.2g(0.35mmol)とクロロホルム600gを添加し、そこに35重量%過酸化水素水を2.1g(22mmol)添加し、室温で窒素雰囲気下、1時間撹拌した。そこに、ヘキサデシルピリジニウムクロリド1.0g(2.8mmol)とトランスポリイソプレン(日立造船社製、重量平均分子量89万、杜仲由来;トランス1,4−結合単位100%、シス−1,4−結合単位0%、1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計0%)3gを入れ、そして再度、35重量%過酸化水素水を3.1g(32mmol)添加し、室温で15時間撹拌した。反応後は分液させた後に水相を取り除き、亜硫酸水素ナトリウム10重量%水溶液100gで洗浄した。分液によって有機相のみを取り出し、そこに触媒成分を吸着させるためにシリカゲル(和光純薬工業社製、商品名「C−200」)60gを添加し、1時間撹拌した後、濾過した。この溶液(濾液)を樹脂濃度が約20重量%になるまでエバポレーターで濃縮した後、バットに濃縮液を移し、5mmHg以下の圧力で、室温条件下、真空乾燥させた。その結果、透明のエポキシ化されたトランスポリイソプレンのフィルムが2.5g得られた。このフィルムを重クロロホルムに溶解させ、NMR(JEOL社製、商品名「JNM−A500」)でエポキシ化率を測定したところ、95%であった(図1参照;二重結合部位のプロトン積算値=1.0、エポキシ部位のプロトン積算値=19.0)。エポキシ基が加水分解されジオールに変化したものは見られなかった。
実施例2
原料トランスポリイソプレン添加後の反応時間を15時間から5時間に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、透明のエポキシ化されたトランスポリイソプレンのフィルムが2.3g得られた。このフィルムを重クロロホルムに溶解させ、NMR(JEOL社製、商品名「JNM−A500」)でエポキシ化率を測定したところ、35%であった(二重結合部位のプロトン積算値=1.0、エポキシ部位のプロトン積算値=0.54)。エポキシ基が加水分解されジオールに変化したものは見られなかった。
実施例3
原料トランスポリイソプレン添加後の反応時間を15時間から10時間に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、透明のエポキシ化されたトランスポリイソプレンのフィルムが2.3g得られた。このフィルムを重クロロホルムに溶解させ、NMR(JEOL社製、商品名「JNM−A500」)でエポキシ化率を測定したところ、65%であった(二重結合部位のプロトン積算値=1.0、エポキシ部位のプロトン積算値=1.9)。エポキシ基が加水分解されジオールに変化したものは見られなかった。
実施例4
原料トランスポリイソプレン添加後の反応時間を変化させたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、15%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、27%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、30%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、38%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、50%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、81%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、83%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、96%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂をそれぞれ製造した。
参考例1
実施例4で得られた30%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、50%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、96%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂を、それぞれ、窒素雰囲気下、200℃で20分間加熱して硬化させ、硬化物を得た。また、96%エポキシ化トランスイソプレン樹脂と、ビスフェノールA樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「1009」)と、フェノール樹脂(群栄化学社製「PS−2980」)とを混合し[96%エポキシ化トランスイソプレン樹脂:ビスフェノールA樹脂(重量比)=50:50、フェノール樹脂の量は96%エポキシ化トランスイソプレン樹脂及びビスフェノールA樹脂のエポキシ基の合計に対してフェノール基が1当量となる量]、窒素雰囲気下、200℃で20分間加熱して硬化させ、硬化樹脂を得た。
物性評価試験1
実施例で得られた38%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、83%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、参考例1で得られた96%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂の硬化物、原料として用いたトランスポリイソプレン樹脂の粘弾性測定(TAインスツルメント社製「RSA−3」、5℃/min、10Hz、0.05%歪)を行った。その結果を図2に示す。
エポキシ化率が高いほど、tanδのピーク温度が高くなることが分かる。83%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂では、tanδのピーク温度が室温付近であり、制振材としての利用が期待できる。96%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂の硬化物は、広い温度領域で高いtanδ値を示すため、広い温度領域での制振効果が期待できる。
物性評価試験2
実施例1で得られた95%エポキシ化トランスイソプレン樹脂と、ビスフェノールA樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「1009」)と、フェノール樹脂(群栄化学社製「PS−2980」)とを下記表に示す割合で混合し、窒素雰囲気下、200℃で20分硬化させて得られる樹脂につき、JIS K5400に準拠して、鉛筆硬度を測定した。結果を下記表に示す。なお、フェノール樹脂単体の鉛筆硬度は「H」である。
Figure 2011037960
物性評価試験3
参考例1で得られた30%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂の硬化物、50%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂の硬化物、96%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂の硬化物、96%エポキシ化トランスイソプレン樹脂とビスフェノールA樹脂とフェノール樹脂の混合物の硬化物、原料として用いたトランスポリイソプレン樹脂について、JIS K6850に準拠して、引張りせん断強度(MPa)を測定した。結果を下記表に示す。
Figure 2011037960
物性評価試験4
実施例4で得られた83%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、原料として用いたトランスポリイソプレン樹脂について、破断時伸度を測定した(エーアンドディ社製「TENSIRONRTF−1350」、23℃、50%RH、1mm/min、7号ダンベル)。結果を下記表に示す。
Figure 2011037960
物性評価試験5
実施例4で得られた27%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、81%エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂、及びエポキシ化ポリブタジエン(ダイセル化学工業社製「PB3600」)について、以下の方法により硬化性試験を行った。
エポキシ基3mmolを含む試料をクロロホルム50gに溶解し、開始剤としてメタノール0.8gを加え、液温を約20℃に調節し、BF3・OEt2 エチレンジクロライド溶液1.21g(BF3・OEt223.5mgに相当)を添加し、反応開始とした。所定時間毎にサンプリングして残存エポキシ量を臭化水素酸にて測定して算出した。結果を図3に示す。図3の縦軸はエポキシ基消失率(%)、横軸は反応時間(分)である。
この結果より、エポキシ化トランスポリイソプレン樹脂の硬化速度が速いことが分かる。したがって、接着等の作業性を向上できるという利点がある。
物性評価試験6
実施例で得られたエポキシ化ポリイソプレン樹脂と、ビスフェノールA樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「1009」)と、フェノール樹脂(群栄化学社製「PS−2980」)とを下記表に示す割合で混合し、相溶性を評価した。相溶性はクロロホルムで溶媒キャストしたもので評価し、透明なものを○、不透明なものを×とした。
Figure 2011037960

Claims (2)

  1. 重合体中のイソプレン単位に占める1,2−結合単位及び3,4−結合単位の合計割合が0.1%以下であるトランスポリイソプレンをエポキシ化して得られるエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂。
  2. エポキシ化率が20%以上である請求項1記載のエポキシ化トランスポリイソプレン樹脂。
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