JP2011032575A - 鋼材の表面処理方法および装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】被処理物の表面に金属化合物層を短時間で安定的に形成できるとともに、溶融塩処理法の大きな欠点である生産性の悪さを改善し、しかも装置のメンテナンスも容易になる金属の表面処理方法を提供する。
【解決手段】溶融塩10中に金属製のワーク9を存在させてワーク9の表面に金属化合物層を形成させる金属の表面処理方法であって、加熱溶融により上記溶融塩10となる固体状の処理剤8とワーク9を容器7に収容する工程と、上記容器7に収容された処理剤8とワーク9を加熱する工程とを備え、上記固体状の処理剤8がワーク9の周囲を包囲するよう容器7に収容された状態で、上記処理剤8とワーク9を大気から遮断して加熱し、上記大気から遮断された加熱によって処理剤8が溶融した液状の溶融塩10にワーク9を接触させて反応を生じさせることにより、ワーク9の表面に金属化合物層を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼材表面に密着性の高いクロム窒化物主体の窒素化合物層を形成させることにより、優れた耐摩耗性や耐熱性を付与する鋼材の表面処理方法および装置に関するものである。
鉄系材料である基材の表面に、クロム窒化物を主体とする表面層を形成することにより、耐摩耗性、耐酸化性、耐熱性、耐アルミ溶損性等の機械的性質を向上させることが可能となる。このこと自体は広く知られており、種々の表面処理方法が提案され、実施されている。
これら処理方法のうち、鋼の変態点以下の温度で処理することにより歪を抑制するとともに、形成させたクロム窒化物主体の表面層と基材との密着性にも優れる方法として、例えば、つぎの方法が開示されている。
例えば、下記の特許文献1は、被処理材およびクロムを含む材料等を流動層中に配置し、ハロゲン化アンモニウム塩を供給して処理を行う方法である。この方法は、ハロゲン化アンモニウム塩をハロゲン化水素とアンモニアに分解させ、ハロゲン化水素を窒化物形成金属と反応させて金属ハロゲン化物を生成し、さらに金属ハロゲン化物をアンモニアと反応させて金属窒化物を被処理材表面に析出させる方法である。
また、特許文献2および3は、窒化処理を施した鉄系材料を、クロム材料およびアルカリ金属の塩化物等の各種処理剤とともに共存させて溶融し、塩浴処理を行うことにより、鉄系材料の表面にクロムの窒化物または炭窒化物を形成させる方法である。
ここで、図4は、一般的な塩浴処理装置を示す断面図である。
この装置は、箱状の炉体11の内周壁にヒータ12が配置され、その内側に処理槽13が配置されている。処理槽13内には溶融塩14が収容され、攪拌羽根15で攪拌されるとともに、窒素ガス配管16によるバブリングが行ないうるようになっている。被処理物17はラック18に搭載された状態で、ラック18とともに液面から浴に浸漬して処理を行い、所定時間の処理後に浴から引き上げることが行なわれる。
特開平5−5172号公報 特開昭61−291962号公報 特許第3939451号公報 特許第2723923号公報
上記特許文献1の方法では、気体を媒介とした固体−固体間の反応であり、700℃以下の温度ではクロムが活性状態を長時間保持することができず、機械的性質の向上に必要と考えられる十分な厚さのクロム窒化物を主体とする層を形成させるためには、少なくとも数十時間以上の長時間にわたる処理が必要になるという問題がある。また、特許文献1の方法は、ハロゲン化アンモニウムを分解させたアンモニアの反応により、基材表面に析出したクロムが窒化される。このように、結果的にCVD法(化学的気相蒸着法)のようなガス雰囲気による表面被覆法の一種であると考えられ、機械的特性の向上にとって最も重要な要素である基材との密着性が十分でないという問題がある。
一方、特許文献2の方法は、あらかじめ窒化処理を施した鉄系材料表面に、溶融塩処理でクロムを拡散させてクロム窒化物主体の表面層を形成させる固体−液体間の反応であり、基材との密着性には優れていると思われる。また、特許文献2には、鋼の変態点以下の温度で基材表面にクロムを拡散させる具体的手法として、溶融塩浸漬法、溶融塩電解法、粉末法等によって各種処理剤を媒介材料としてクロム窒化物主体の表面層を形成できることが開示されている。しかしながら、開示されている媒介材料を用いても、クロム窒化物主体の表面層を実験室的に形成できたとしても、工業的に安定した品質で形成させることが極めて困難であり、工業的な量産処理には適用することができない。
特許文献3の方法は、特許文献2の方法において、クロム窒化物主体の表面層が安定して形成されない理由が、媒介材料である処理剤の塩基度にあることを見出してそれに改良を加えたものである。すなわち、アルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物を主体とする溶融塩浴中に、クロム材料以外に酸化珪素を添加することによって塩基度をコントロールし、生成させるクロムイオンの活性度を安定化させて、クロム窒化物主体の表面層を安定に形成させたものである。
しかしながら、上記溶融塩浴法の問題として、特に短時間処理時において、部分的にクロム窒化物主体の表面層が形成されにくくなるおそれがあることがわかった。すなわち、塩浴を十分に攪拌した場合であっても、溶融塩の高い粘性により溶融塩成分が均一な状態となることが妨げられることがある。このため、特に塩基度をコントロールし、かつ活性なクロムイオンを発生させるのに重要な酸化珪素が溶融塩中に均一に分散せず、処理の初期段階において活性なクロムイオンが被処理材の表面に十分に供給されない現象が生じるおそれがあるためである。
また、上記方法では、塩浴は、高温で溶融した状態を維持して何度も繰り返しの処理に供されることから、処理剤を注ぎ足しで使用されることとなり、処理前に塩浴の組成を調整する必要がある。このような塩浴の組成調整は、多くの場合、処理剤を目分量で注ぎ足さざるを得ず、塩浴の組成事体が不安定でばらつくこととなる。しかも、被処理物を浴に浸漬したり引き上げたりするときや塩浴を攪拌するときに浴が大気に触れてしまい、浴が大気と接触することによる劣化が避けられない。その結果、部分的にクロムの供給が不十分でクロム窒化物の膜厚が薄いところができてしまい、それを避けるためには不必要にクロムを多く添加しなければならない等の問題があった。しかも、注ぎ足しで使い続けるうちに塩浴の組成が変動し、共晶温度がずれて塩浴が硬化したりスラッジが堆積したりすることが問題となる。
また、被処理材表面にクロム窒化物主体の表面層を安定的に形成するには比較的長時間の処理が必要になると考えられる。また、生成されたクロムイオンは、処理時間が長時間化するほど、液面での酸化反応によって不活性な酸化物となって反応速度が低下することになり、必要以上に多量のクロムを添加する必要がある。
このように、生産処理としては非常に不効率なものとなっていたのが実情である。また、溶融塩浴が硬化するのを防止するため、処理を行っていない時であっても、常に高温に保持しておく必要があり、処理をしていない間もエネルギー等のランニングコストがかかって処理コストの低減が困難であるうえ、処理装置のメンテナンスも容易ではないという問題もあった。
以上のように、ペースト法等のように反応が起きる時点で固体(被処理物)−固体(クロムを含む媒体)同士となる反応では、歪の小さい鋼の変態点以下で被処理物にクロムを十分に拡散させることが極めて困難であり、活性なクロムイオンが長時間保持できる固体(被処理物)−液体(クロムを含む媒体)との間の反応とすることが重要である。
しかしながら、従来実施されてきた固体−液体反応である塩浴処理は、上述したような各種の問題があり、工業生産には必ずしも適したものではなかったのが実情である。
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであり、被処理物の表面に金属化合物層を短時間で安定的に形成できるとともに、溶融塩処理法の大きな欠点である生産性の悪さを改善し、しかも装置のメンテナンスも容易になる金属の表面処理方法および装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の鋼材の表面処理方法は、溶融塩中に金属製のワークを存在させてワークの表面に金属化合物層を形成させる金属の表面処理方法であって、
加熱溶融により上記溶融塩となる固体状の処理剤とワークを容器に収容する工程と、上記容器に収容された処理剤とワークを加熱する工程とを備え、
上記固体状の処理剤がワークの周囲を包囲するよう容器に収容された状態で、上記処理剤とワークを大気から遮断して加熱し、
上記大気から遮断された加熱によって処理剤が溶融した液状の溶融塩にワークを接触させて反応を生じさせることにより、ワークの表面に金属化合物層を形成することを要旨とする。
また、上記目的を達成するため、本発明の鋼材の表面処理装置は、溶融塩中に金属製のワークを存在させてワークの表面に金属化合物層を形成させる金属の表面処理装置であって、
加熱溶融により上記溶融塩となる固体状の処理剤とワークを収容する容器と、上記容器に収容された処理剤とワークを加熱する加熱手段とを備え、
上記固体状の処理剤がワークの周囲を包囲するよう容器に収容された状態で、上記処理剤とワークを大気から遮断して加熱するよう構成され、
上記大気から遮断された加熱によって処理剤が溶融した液状の溶融塩にワークを接触させて反応を生じさせることにより、ワークの表面に金属化合物層を形成させることを要旨とする。
本発明は、上記固体状の処理剤がワークの周囲を包囲するよう容器に収容された状態で、上記処理剤とワークを大気から遮断して加熱し、上記大気から遮断された加熱によって処理剤が溶融した液状の溶融塩にワークを接触させて反応を生じさせることにより、ワークの表面に金属化合物層を形成させる。
このように、液状の溶融塩と金属製のワークを接触させる固体−液体間の反応であるため、ワークの表面に形成される金属化合物層の密着性に優れ、耐摩耗性、耐酸化性、耐熱性、耐アルミ溶損性等において良好な機械的性質が得られる。
また、処理剤が大気と遮断された状態で加熱されて形成された溶融塩が大気と遮断されているため、処理剤が大気と接触することによる劣化が生じず、活性な金属イオンが不活性な金属酸化物へ変化することを抑制でき、反応速度が低下することを防止し、金属化合物層を形成させるために必要以上に多量の金属成分を添加する必要がなくなる。
さらに、溶融塩は、1回の処理ごとに固体状の処理剤を溶融させて得るため、従来のように高温の塩浴を維持する必要がなく、装置を使用しないときには温度を下げて停止することが可能となり、処理を行っていない時に装置を高温保持する必要がなく、エネルギー等のランニングコストが大幅に低減できるほか、装置の管理やメンテナンスも容易になる。このように、主に調整が必要な処理条件は、処理剤の調整と処理温度だけですむことから、安定した処理が可能となる。また、共晶温度がずれることによる塩浴の硬化やスラッジの堆積という問題も発生しない。
本発明において、上記固体状の処理剤は、粉末状または粒状である場合には、
複数種類の処理剤を均一に混合することにより、金属成分と塩浴成分の接触面積を増加させることができ、その結果、金属成分のイオン化が促進され、短時間で安定的に十分な厚みを持つ金属化合物層を形成させることができる。
本発明において、上記粉末状または粒状の処理剤は、複数種類をあらかじめミキシングしている場合には、
粉末状または粒状の塩浴成分や金属成分を所定割合で混合した処理剤がワークの周囲を包囲した状態から加熱し、ワークの周囲で溶融塩が形成されるため、従来のように、処理剤を塩浴に注ぎ足しながら繰り返し使用するのではないことから、処理前の塩浴調整が必要なく、塩浴の組成そのものも安定し、不必要に金属成分を多く添加しなくても安定した厚みで金属化合物層を形成することができる。
また、複数種類の粉末状または粒状の処理剤をあらかじめ均一に混合することにより、金属成分と塩浴成分の接触面積を増加させることができ、その結果、金属成分のイオン化が促進され、金属イオンが効果的にワークの表面に与えられ、短時間で安定的に十分な厚みを持つ金属化合物層を形成させることができる。
本発明において、上記大気から遮断された加熱により溶融した溶融塩は、処理の間攪拌しない場合には、
密閉された容器もしくは大気と遮断された状態で加熱処理が可能な炉を使用することにより、大気の影響を完全に遮断することができ、活性な金属イオンが酸化されることを抑制し、処理速度の向上および処理の安定化が可能となる。また、ワークおよび処理剤が密封された容器は、電気炉等で加熱する等の非常に簡便な方法で処理が実施可能であり、生産性も向上させることができる。
本発明において、上記処理剤とワークを、さらに加圧条件下で加熱する場合には、
形成される金属化合物層の厚みバラツキを小さくすることができる。すなわち、処理剤が粉粒状から液状の浴に変化したときに、クロム等の金属成分が徐々にワーク表面に堆積し、塩浴とワークとの接触が妨げられて層の厚みにバラツキが生じやすいが、加圧状態で処理することにより、クロム等の金属成分の隙間に塩浴を強制的に侵入させて金属イオンとワーク表面との接触が促進され、形成される金属化合物層の厚みバラツキが小さくなるのである。
また、処理剤を加熱溶融する際に容器の加熱状態にムラが生じると、場所によって処理剤の溶け出すタイミングが異なる場合がある。このようなときにワーク周辺の粉粒体が溶融塩で覆われると、溶融塩で囲まれた粉粒体の部分に空気や不活性ガスなどのガスが残留して気泡になってしまい、結果的に溶融塩とワーク表面の接触が気泡により妨げられ、金属化合物層の厚みバラツキの要因となりやすい。そこで、上述したように加圧条件化で加熱することにより、溶融塩で囲まれた粉粒体の部分に残留する空気や不活性ガスなどのガスが強制的に押し出され、金属イオンとワーク表面との接触が促進され、金属化合物層の厚みバラツキも防止される。
本発明において、上記処理剤とワークを、さらに減圧条件下で加熱する場合には、
形成される金属化合物層の厚みバラツキを防止することができる。すなわち、固体状の処理剤同士の隙間に存在する空気や不活性ガスなどのガスをあらかじめ強制的に脱気した状態で処理剤を溶融することにより、溶融した液状の処理剤中の気泡が大幅に減少する。仮に処理剤を加熱溶融する際に容器の加熱状態にムラが生じたとしても、溶融塩中に気泡が残留しにくくなる。したがって、ワーク表面に気泡が付着して金属イオンとワーク表面との接触が妨げられることによる金属化合物層の厚みバラツキが防止される。
本発明において、上記ワークは、少なくとも表層部に窒化金属もしくは窒素固溶部が存在するものである場合には、
窒化金属もしくは窒素固溶部の窒素と金属成分が反応して金属化合物層として窒化金属層が形成され、耐摩耗性、耐酸化性、耐熱性、耐アルミ溶損性等の機械的性質を向上させることが可能である。
本発明の一実施形態の表面処理装置の一例の断面図である。 容器に処理剤とワークを収容した状態を示す断面図である。 容器に処理剤とワークを収容した状態を示す断面図である。 従来の装置を示す断面図である。
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の表面処理方法および装置は、溶融塩中に金属製のワークを存在させてワークの表面に金属化合物層を形成させる金属の表面処理方法および装置である。
本発明が処理対象とする上記ワーク9の金属は、主として鋼材であり、炭素鋼、低合金鋼、高合金鋼、構造用圧延鋼、高張力鋼、機械構造用鋼、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度鋼、軸受鋼、ばね鋼、肌焼鋼、窒化鋼、ステンレス鋼、耐熱鋼等、各種の鋼材を適用することができる。
本発明の表面処理方法は、まず、必要に応じて上記ワーク9である鋼材に窒化処理を施すことにより、鋼材の表層部に鉄窒化物であるFeNを主体とする鉄窒素化合物層と、その下層において母材に窒素が拡散した窒素拡散層を形成させる。この例では、上記鉄窒素化合物層が本発明の窒化金属として機能し、窒素拡散層が窒素固溶部として機能する。
このとき、窒素拡散層のみを形成させた場合にも、その後の表面処理によりクロム窒化物を主体とする化合物層を形成させることは可能であるが、その場合、表面処理で形成される化合物層を十分な厚さとすることができないため、窒化処理によってFeNを主体とする鉄窒素化合物層を形成させることが好ましく、その厚さは3μm以上が好ましく、より好ましくは5μm以上とすることが好ましい。
上記窒化処理については、ガス窒化処理、塩浴窒化処理、イオンおよびプラズマ窒化処理等、各種窒化処理が適用可能であるが、フッ化処理工程を含むガス窒化処理を適用するのが好ましい。このように、フッ化処理工程を含むガス窒化処理を適用した場合には、炭素鋼や低合金鋼だけでなく高合金鋼や工具鋼、ステンレス鋼等を含めた幅広い鋼種に適用することが可能となる。さらに、使用用途に応じた窒化層を形成させるよう、幅広い窒化処理温度やガス組成を選択することが可能となるため、本発明の表面処理に適用する窒化処理として最も好ましい。
上記フッ化処理におけるフッ素源ガスとしては、フッ素ガスあるいはフッ素化合物を含んだガスであれば特に限定されるものではないが、常温でガス状であり、化学的安定性が高い等の理由から、取り扱いが容易であるNFガスを含んだガスが好適に用いられる。通常のフッ化処理工程は被処理品の材質および表面状態等にもよるが、例えばNFガス濃度が1000〜100000ppmとなるようにNガスで希釈したガスをフッ素源ガスとして用い、200〜600℃に1分〜180分保持することによって行われる。このフッ化処理工程を行うことによって、均一な窒化層形成の阻害要因となる鋼材表面の酸化被膜をフッ化物膜に置換することができる。
上記フッ化処理に引き続き、NHを含むガス雰囲気中で400〜600℃に30分〜50時間、より好ましくは500〜600℃に1時間〜10時間保持して被処理品の表面部にFeNを主体とする鉄窒素化合物層および窒素拡散層を形成させる。このとき、被処理品である鋼材表面を覆っているフッ化物膜は、NHガス濃度の低い弱い還元雰囲気であっても容易に還元、除去される性質を有していることから、被処理品の材質および使用用途を考慮して最適な処理時間等を調整することができる。
本発明の表面処理方法は、必要に応じて窒化処理を行なった鋼材であるワーク9を、加熱溶融により溶融塩となる固体状の処理剤8とワーク9を容器7に収容する工程と、上記容器7に収容された処理剤8とワーク9をヒータ2により加熱する工程とが行われる。
上記固体状の処理剤8は、粉末状または粒状のものを用いるのが好ましい。また、上記粉末状または粒状の処理剤8は、複数種類をあらかじめミキシングしたものを用いるのが好ましい。
上記処理剤8は、塩浴成分として、アルカリ金属の塩化物およびもしくはアルカリ土類金属の塩化物を主成分としたものを用いることができ、金属成分としてクロムを混合することが好ましい。このように、処理剤8にクロムを混合することにより、窒化された鋼材であるワーク9を溶融塩に浸漬して表層部にクロム窒化物を形成させることができる。
上記アルカリ金属の塩化物としては、例えば、LiCl、NaCl、KCl等を挙げることができ、アルカリ土類金属の塩化物としては、例えば、MgCl、CaCl、BaCl等を挙げることができる。これらは単独でもしくは混合して使用することができるが、混合することで溶融塩の融点を下げることも可能である。
また、上記処理剤8に混合する金属成分としては、例えば金属クロムを用いることができ、具体的には、工業用金属クロムが使用できる。この金属クロム等の金属成分は、溶解が容易になるよう粉末状または粒状のものが望ましい。また処理剤8中に混合するクロムの量は、ワーク9の表面積にもよるが概ね5〜30重量%とすることが好ましい。
また、上記処理剤8には、塩浴中の成分の安定化につながるだけでなく、塩浴の粘度を調整する効果があるため、塩基度調整剤として珪素もしくは珪素の化合物を適量添加することが望ましい。この場合の珪素もしくは珪素の化合物の添加量は、0.01〜20重量%程度が好ましい。珪素もしくは珪素の化合物としては、具体的には、例えば二酸化珪素を用いることができる。
上記処理剤8を450〜650℃に加熱して溶融塩10とし、この溶融塩10の浴中にワーク9を浸漬して、その表面から拡散成分としての金属成分を拡散浸透させて金属化合物層を形成する。例えば、窒化された鋼材をクロムを含む溶融塩10に浸漬することにより、表層部にクロム窒化物を主体とする窒素化合物層を形成させることができる。
このとき、上記固体状の処理剤8がワーク9の周囲を包囲するよう容器7に収容された状態で、上記処理剤8とワーク9を大気から遮断して加熱し、上記大気から遮断された加熱によって処理剤8が溶融した液状の溶融塩10にワーク9を接触させて反応を生じさせることにより、ワーク9の表面に金属化合物層を形成することが行われる。
図1は、本発明の表面処理装置の一例を示す断面図である。
この装置は、外側を覆う箱状の炉体1の内部に溶融塩10となる塩浴処理剤8が投入される加熱槽3が配設されており、上記加熱槽3を、炉体1の内面に配置されたヒータ2で外側から加熱することにより、内部の容器7に収容された塩浴処理剤8を加熱溶融させて溶融塩10とするものである。
上記加熱槽3の上部開口は、ガス導入配管4とガス排出配管5が取り付けられた蓋体6で蓋できるようになっている。上記加熱槽3内には、加熱溶融により上記溶融塩10となる固体状の処理剤8とワーク9を収容する容器7が収容されている。上記ヒータ2は、容器7に収容された処理剤8とワーク9を加熱する本発明の加熱手段として機能する。
上記ガス導入配管4からは、例えば窒素ガス等の不活性ガスを加熱槽3内に導入し、ガス排出配管5から加熱槽3内のガスを排出することにより加熱槽3内をパージできるようになっている。また、上記蓋体6は、蓋体6と加熱槽3の間にシール材やパッキンを設けて気密状とするとともに図示しないボルト等によって締め付けを行い、加熱槽3の内部空間を密閉できる構造にすることができる。これにより、加熱槽3の内部を大気から遮断することが可能となり、加熱槽3内を不活性ガスでパージした後に密閉した状態で加熱することにより、容器7内の処理剤8とワーク9を大気から遮断して加熱することができる。これにより、溶融塩8が大気中の酸素分や水分を吸収して溶融塩中の成分と反応を起こし、劣化等することを防止できる。
符号19は加熱槽3内の圧力を検知する圧力ゲージである。また、上記ガス導入配管4には、上記加熱槽3内を加圧するための図示しない圧縮機等の加圧手段を接続することができる。これにより、加熱槽3内を加圧状態にして処理を行ないうるようになっている。例えば、加熱槽3内を密閉して加熱することにより、加熱槽3内のガスの自然膨張により加圧状態として処理を行ったり、あらかじめ加熱槽3内を加圧手段で加圧しておいてから加熱し、自然膨張と併せて加圧状態として処理を行ったりすることができる。
また、上記ガス排出配管5には、上記加熱槽3内を減圧するための図示しない真空ポンプ等の減圧手段を接続することができる。これにより、加熱槽3内を減圧状態にして処理を行ないうるようになっている。例えば、加熱槽3内を密閉した状態で真空ポンプで減圧してから加熱することにより、加熱槽3内を減圧状態として処理を行うことができる。
上記蓋体6は、密閉性を少し犠牲にして取り付け取り外しが容易になる構造とすることもできる。例えば、蓋体6と加熱槽3の間にシール材やパッキンを設け、締め付けを行わない構造をあげることができる。この場合でも、上述した加熱槽3内を正圧に保って不活性ガスをパージしながら加熱することにより、加熱槽3が蓋体6で完全に密閉されていなくても、加熱槽3の内部を大気から遮断し、容器7内の処理剤8とワーク9を大気から遮断して加熱することができる。これにより、溶融塩10が大気中の酸素分や水分を吸収して溶融塩中の成分と反応を起こし、劣化等することを防止できる。
上記表面処理装置を用い、具体的には、例えば、つぎのようにして本実施形態の表面処理方法を実施することができる。
まず、粉末状または粒状の処理剤8を複数種類準備し、所定割合で配合してミキシングを行う。上記処理剤8としては、例えば、塩浴成分として、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩化物を主体とした粉粒を用い、金属成分として金属クロムの粉粒、塩基度調整剤として二酸化ケイ素の粉粒を用いることができる。
上記処理剤8の粉末もしくは粒は、平均粒径が5mm以下のものを好適に用いることができ、50〜500μmのものをさらに好適に用いることができる。平均粒径が大きすぎると、粉粒状で均一に混ぜることが難しく、クロムと塩浴成分との接触が不均一となるため、クロムの活性化にとって不利であり、反対に平均粒径が小さすぎると、粉粒の隙間に存在する空気が溶融のときに処理剤8や溶融塩10と反応してしまい、溶融塩10を劣化させるおそれがあるからである。
上記処理剤8の粉末もしくは粒のミキシングは、例えば、ブレンダーで均一に分散・混合させる。このようにすることにより、塩と金属クロム等のクロム含有金属との接触面積を向上させ、クロムのイオン化が促進される。なお、これらの粉末や粒を均一に分散させられるのであれば、例えば、それぞれの成分を適当量の割合で混合したものを袋の中に入れて振る方法や、乳鉢内で攪拌する方法を採用することもできる。
一方、ワーク9である鋼材は、上述したように、あらかじめ窒化処理を行い、表層部に、最表面の窒素化合物層とその下層の窒素拡散層とからなる窒化層を形成しておく。
図2に示すように、上記のように準備したワーク9と処理剤8を、処理剤8がワーク9の周囲を包囲するよう容器7内に収容する。
このとき、図2(A)に示すように、容器7の上部開口を開放状にしておくこともできる。この場合でも、上述したように、加熱槽3の内部空間を大気と遮断することにより、ワーク9と処理剤8を大気と遮断した状態で加熱することができる。
また、図2(B)に示すように、容器7の上部開口を蓋21等で覆い溶接等をすることにより、容器7内を密閉状にすることもできる。この場合は、加熱槽3の内部空間を大気と遮断しなくても、ワーク9と処理剤8を大気と遮断した状態で加熱することができる。
ここで、ワーク9と処理剤8を大気と遮断した状態で加熱するとは、容器7内に収容された処理剤8が加熱され、固体状から溶融して液体になって処理が進行する過程において、新しい外気と接触しない状態をいう。もともと粉粒状の処理剤8とともに容器7内に存在しうる空気や不活性ガスなどのガスについては、ここでいう大気や外気には含めて考えない趣旨である。
さらに、図2(A)(B)に示したように、ワーク9の底面は、容器7の底に密着させた状態で収容することもできる。この場合、ワーク9の底面には金属拡散による金属化合物層がほとんど形成されないが、耐摩耗性等の機械的特性をそれほど要求されない部分を容器7の底に密着させることで、実際にワーク9を製品として使用する際には差し支えないようにすることができる。
また、図2(C)に示したように、ワーク9の底面と容器7の底との間にスペーサ22を配置し、ワーク9の底面と容器7の底との間に隙間ができる状態で収容することもできる。このようにすることにより、ワーク9の底面にも金属拡散による金属化合物層を形成することができる。この場合、上記スペーサ22としては、ワーク9の底面との接触面積が小さくなるよう、錘状や球状のものを用いることができるが、特に錘状のものはワーク9との接触面積が小さくかつ設置安定性がよいので好適である。
その後、ヒータ2により加熱槽3内を450〜650℃に加熱し、容器7内の処理剤8およびワーク9を、大気から遮断された状態で450〜650℃に加熱して溶融し、溶融塩10とする。加熱処理の時間は、1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、さらに好ましくは2〜4時間、加熱保持する塩浴処理を実施する。
このときの加熱温度は、600℃以下が好ましく、より好ましいのは550℃以下である。加熱温度が高すぎると、ワーク9の面粗さが悪化するだけでなく、ワーク9の材料自体の軟化度が大きくなり、必要な強度が得られなくなってしまううえ、ワーク9の歪が大きくなるおそれがある。反対に低すぎると、形成されるクロム窒化物を主体とする化合物層の生成速度が遅くなってしまうため処理が長時間化してしまうのに加え、塩浴成分の共晶温度付近まで下がることで塩浴の粘度が高くなり、結果として処理ムラが生じやすくなる。この加熱により処理剤8が溶融してできた溶融塩10とワーク9を接触させて反応を生じさせ、ワーク9の表面に金属化合物層(例えば、クロム窒化物層)を形成する処理を実施する。
また、処理時間は、目的とする表面処理層の構造や、得られる硬度等の特性を考慮して決定する必要があるが、短すぎると、耐摩耗性が十分なクロム窒化物を主体とする化合物層を得ることが困難であり、逆に長すぎると、ワーク9の材料自体の軟化度が大きくなるのに加え、生産性にも問題が生じる。
このようにすることにより、本実施形態では、塩浴成分および二酸化珪素、金属クロムの混合粉体を均一に混合することでクロムのイオン化を促進し、クロムイオンを表面に効果的に与えることができる。そして、塩浴成分および二酸化ケイ素、金属クロムを混合した粉末中にワーク9をセッティングするため、塩浴の処理前調整の必要がない。また、主に調整が必要な処理条件は、塩浴成分、二酸化珪素、金属クロムの混合割合と、処理温度のみとなるため、安定した処理が可能である。さらに、塩浴成分および金属クロム、二酸化珪素を均一に混合することにより、金属クロムと塩浴成分の接触面積を増加させることができ、その結果、クロムのイオン化が促進され、短時間で安定的に十分な厚みを持つ窒化クロム層を形成させることができる。
以下、本発明の実験例について説明する。
〔ワークの調整〕
下記試験片に対して下記条件でフッ化および窒化を行ってワーク9を得た。
素材:SKD61
大きさ形状:20mm×20mm×3mm
フッ化条件:雰囲気 NFとNの混合ガス
温度 300℃
時間 60min
窒化条件 :雰囲気 NH/N=7/3の混合ガス
温度 570℃
時間 180min
窒化層厚み:FeN主体の窒素化合物層 8〜15μm
窒素拡散層 100〜200μm
〔処理剤〕
処理剤8としては、下記の成分をミキシングしたものを用いた。各成分の配合割合は下記の表1に示すとおりである。
塩浴成分:CaCl+BaCl+NaCl
金属成分:金属クロム
塩基度調整成分:SiO
実験例1〜5は、図2(A)に示すように、容器7にワーク9を収容し、処理剤8で覆った状態で加熱し、加圧しない状態で、処理剤8を溶融させて溶融塩10として反応させた。
実験例6は、図3に示すように、容器7にワーク9を収容し、金属クロム8bで覆った後、その上に塩浴成分と金属成分の混合粉末8aを充填し、この状態で加熱し、処理剤8を溶融させて溶融塩10として反応させた。
実験例7〜9は、図2(A)に示すように、容器7にワーク9を収容し、処理剤8で覆った状態で、加熱槽3内を密閉して加熱することにより、加熱槽3内のガスの自然膨張により加圧状態として、処理剤8を溶融させて溶融塩10として反応させた。
実験例10〜12は、図2(A)に示すように、容器7にワーク9を収容し、処理剤8で覆った状態で、あらかじめ加熱槽3内を加圧手段で加圧しておいてから加熱し、自然膨張と併せて加圧状態加熱槽3内を密閉して加熱することにより加圧状態として、処理剤8を溶融させて溶融塩10として反応させた。
実験例13〜15は、図4に示す装置を使用して浴を攪拌しながら塩浴処理を行った。
実験例1〜15の処理条件等は下記の表1に示すとおりである。また、形成された金属化合物層の厚み、厚みばらつきおよび層の状態の観察所見を下記の表1に示す。なお、厚みは、サンプルの断面を観察し、任意5点の層厚みを測定したときの平均値であり、ばらつきはその振れ幅である。
下記の表1の結果からわかるように、実験例13では有効な金属化合物層が形成されずに部分欠損ができる状態であり、実験例14では層厚みの不良が発生した。これに対し、実験例1では、6.7μmの良好な金属化合物層が形成された。また、実験例6では、層厚みが1.7μmと薄かった。
また、実験例2〜5は、実験例1と同様に、良好な金属化合物層が形成されている。実験例7〜9、実験例10〜12においても、良好な金属化合物層が形成され、バラツキについても良好な結果が得られている。
Figure 2011032575
つぎに、減圧条件下で加熱処理を行った実験例16〜18を下記の表2に示す。
実験例16〜18では、図2(A)に示すように、容器7にワーク9を収容し、処理剤8で覆った状態で、あらかじめ加熱槽3内を減圧手段で減圧しておいてから加熱し、処理剤8を溶融させて溶融塩10として反応させた。ゲージ圧すなわち加熱槽3内の圧力を−0.1MPaとした以外は、実験例1〜5と同じ条件で処理を行った。
実験例16〜18においても、良好な金属化合物層が形成され、バラツキについても良好な結果が得られている。
Figure 2011032575
以上のように、本実施形態によれば、上記固体状の処理剤8がワーク9の周囲を包囲するよう容器7に収容された状態で、上記処理剤8とワーク9を大気から遮断して加熱し、上記大気から遮断された加熱によって処理剤8が溶融した液状の溶融塩10にワーク9を接触させて反応を生じさせることにより、ワーク9の表面に金属化合物層を形成させる。
このように、液状の溶融塩10と金属製のワーク9を接触させる固体−液体間の反応であるため、ワーク9の表面に形成される金属化合物層の密着性に優れ、耐摩耗性、耐酸化性、耐熱性、耐アルミ溶損性等において良好な機械的性質が得られる。
また、処理剤8が大気と遮断された状態で加熱されて形成された溶融塩10が大気と遮断されているため、処理剤8が大気と接触することによる劣化が生じず、活性な金属イオンが不活性な金属酸化物へ変化することを抑制でき、反応速度が低下することを防止し、金属化合物層を形成させるために必要以上に多量の金属成分を添加する必要がなくなる。
さらに、溶融塩10は、1回の処理ごとに固体状の処理剤8を溶融させて得るため、従来のように高温の塩浴を維持する必要がなく、装置を使用しないときには温度を下げて停止することが可能となり、処理を行っていない時に装置を高温保持する必要がなく、エネルギー等のランニングコストが大幅に低減できるほか、装置の管理やメンテナンスも容易になる。このように、主に調整が必要な処理条件は、処理剤8の調整と処理温度だけですむことから、安定した処理が可能となる。また、共晶温度がずれることによる塩浴の硬化やスラッジの堆積という問題も発生しない。
本実施形態において、上記固体状の処理剤8は、粉末状または粒状である場合には、
複数種類の処理剤8を均一に混合することにより、金属成分と塩浴成分の接触面積を増加させることができ、その結果、金属成分のイオン化が促進され、短時間で安定的に十分な厚みを持つ金属化合物層を形成させることができる。
本実施形態において、上記粉末状または粒状の処理剤8は、複数種類をあらかじめミキシングしている場合には、
粉末状または粒状の塩浴成分や金属成分を所定割合で混合した処理剤8がワーク9の周囲を包囲した状態から加熱し、ワーク9の周囲で溶融塩10が形成されるため、従来のように、処理剤8を塩浴に注ぎ足しながら繰り返し使用するのではないことから、処理前の塩浴調整が必要なく、塩浴の組成そのものも安定し、不必要に金属成分を多く添加しなくても安定した厚みで金属化合物層を形成することができる。
また、複数種類の粉末状または粒状の処理剤8をあらかじめ均一に混合することにより、金属成分と塩浴成分の接触面積を増加させることができ、その結果、金属成分のイオン化が促進され、金属イオンが効果的にワーク9の表面に与えられ、短時間で安定的に十分な厚みを持つ金属化合物層を形成させることができる。
本実施形態において、上記大気から遮断された加熱により溶融した溶融塩は、処理の間攪拌しない場合には、
密閉された容器7もしくは大気と遮断された状態で加熱処理が可能な炉を使用することにより、大気の影響を完全に遮断することができ、活性な金属イオンが酸化されることを抑制し、処理速度の向上および処理の安定化が可能となる。また、ワーク9および処理剤8が密封された容器7は、電気炉等で加熱する等の非常に簡便な方法で処理が実施可能であり、生産性も向上させることができる。
本実施形態において、上記処理剤8とワーク9を、さらに加圧条件下で加熱する場合には、
形成される金属化合物層の厚みバラツキを小さくすることができる。すなわち、処理剤8が粉粒状から液状の浴に変化したときに、クロム等の金属成分が徐々にワーク9表面に堆積し、塩浴とワーク9との接触が妨げられて層の厚みにバラツキが生じやすいが、加圧状態で処理することにより、クロム等の金属成分の隙間に塩浴を強制的に侵入させて金属イオンとワーク表面との接触が促進され、形成される金属化合物層の厚みバラツキが小さくなるのである。
また、処理剤を加熱溶融する際に容器7の加熱状態にムラが生じると、場所によって処理剤8の溶け出すタイミングが異なる場合がある。このようなときにワーク9周辺の粉粒体が溶融塩10で覆われると、溶融塩10で囲まれた粉粒体の部分に空気や不活性ガスなどのガスが残留して気泡になってしまい、結果的に溶融塩10とワーク9表面の接触が気泡により妨げられ、金属化合物層の厚みバラツキの要因となりやすい。そこで、上述したように加圧条件化で加熱することにより、溶融塩10で囲まれた粉粒体の部分に残留する空気や不活性ガスなどのガスが強制的に押し出され、金属イオンとワーク9表面との接触が促進され、金属化合物層の厚みバラツキも防止される。
本発明において、上記処理剤8とワーク9を、さらに減圧条件下で加熱する場合には、
形成される金属化合物層の厚みバラツキを防止することができる。すなわち、固体状の処理剤8同士の隙間に存在する空気や不活性ガスなどのガスをあらかじめ強制的に脱気した状態で処理剤8を溶融することにより、溶融した液状の処理剤8である溶融塩10中の気泡が大幅に減少する。仮に処理剤8を加熱溶融する際に容器7の加熱状態にムラが生じたとしても、溶融塩10中に気泡が残留しにくくなる。したがって、ワーク9表面に気泡が付着して金属イオンとワーク9表面との接触が妨げられることによる金属化合物層の厚みバラツキが防止される。
本実施形態において、上記ワーク9は、少なくとも表層部に窒化金属もしくは窒素固溶部が存在するものである場合には、
窒化金属もしくは窒素固溶部の窒素と金属成分が反応して金属化合物層として窒化金属層が形成され、耐摩耗性、耐酸化性、耐熱性、耐アルミ溶損性等の機械的性質を向上させることが可能である。
本発明の処理方法は、鋼材の表面処理に使用することができ、またその表面処理された鋼材を使用することで、特に高面圧、高温度や潤滑状態が良くない環境で使用される部品類や金型等に好適に利用することができる。
1 炉体
2 ヒータ
3 加熱槽
4 ガス導入配管
5 ガス排出配管
6 蓋体
7 容器
8 処理剤
8a 混合粉末
8b 金属クロム
9 ワーク
10 溶融塩
11 炉体
12 ヒータ
13 処理槽
14 溶融塩
15 攪拌羽根
16 窒素ガス配管
17 被処理物
18 ラック
19 圧力ゲージ
21 蓋
22 スペーサ

Claims (8)

  1. 溶融塩中に金属製のワークを存在させてワークの表面に金属化合物層を形成させる金属の表面処理方法であって、
    加熱溶融により上記溶融塩となる固体状の処理剤とワークを容器に収容する工程と、上記容器に収容された処理剤とワークを加熱する工程とを備え、
    上記固体状の処理剤がワークの周囲を包囲するよう容器に収容された状態で、上記処理剤とワークを大気から遮断して加熱し、
    上記大気から遮断された加熱によって処理剤が溶融した液状の溶融塩にワークを接触させて反応を生じさせることにより、ワークの表面に金属化合物層を形成することを特徴とする金属の表面処理方法。
  2. 上記固体状の処理剤は、粉末状または粒状である請求項1記載の金属の表面処理方法。
  3. 上記粉末状または粒状の処理剤は、複数種類をあらかじめミキシングしている請求項2記載の金属の表面処理方法。
  4. 上記大気から遮断された加熱により溶融した溶融塩は、処理の間攪拌しない請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属の表面処理方法。
  5. 上記処理剤とワークを、さらに加圧条件下で加熱する請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属の表面処理方法。
  6. 上記ワークは、少なくとも表層部に窒化金属もしくは窒素固溶部が存在するものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属の表面処理方法。
  7. 上記処理剤とワークを、さらに減圧条件下で加熱する請求項1〜4、6のいずれか一項に記載の金属の表面処理方法。
  8. 溶融塩中に金属製のワークを存在させてワークの表面に金属化合物層を形成させる金属の表面処理装置であって、
    加熱溶融により上記溶融塩となる固体状の処理剤とワークを収容する容器と、上記容器に収容された処理剤とワークを加熱する加熱手段とを備え、
    上記固体状の処理剤がワークの周囲を包囲するよう容器に収容された状態で、上記処理剤とワークを大気から遮断して加熱するよう構成され、
    上記大気から遮断された加熱によって処理剤が溶融した液状の溶融塩にワークを接触させて反応を生じさせることにより、ワークの表面に金属化合物層を形成させることを特徴とする金属の表面処理装置。
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