JP2011032405A - 電極被覆用光硬化型組成物 - Google Patents

電極被覆用光硬化型組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】電気絶縁性、特に耐イオンマイグレーション性に優れ、且つ湿気硬化性により十分な硬化膜を形成し得る電極被覆用光硬化型組成物の提供。
【解決手段】ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)、分子中に炭素数8以上のアルキル基又は炭素数8以上のシクロアルキル基と(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物(B)、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(C)、湿気硬化用触媒(D)並びに光重合開始剤(E)を含有する電極被覆用光硬化型組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、電極被覆用光硬化型組成物に関し、光及び湿気硬化型組成物及び電極被覆用途の技術に属する。
尚、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
近年の電子材料では、機器の高性能化に伴い、それに使用される材料に、電気絶縁性及び耐湿性等の物性が要求される場合がある。
具体的には、種々の用途に使用される電極端子には、電気絶縁性が要求され、より具体的には耐イオンマイグレーション性が要求される場合がある。特に、プラズマディスプレイパネルの電極端子には、フレキシブルプリント配線板及びテープキャリアパッケージ等の配線基板が接続されるが、端子間に高電圧が印加されるために、耐イオンマイグレーション性が要求されることが多い。
ここで、イオンマイグレーションとは、電圧が印加された電極金属が、絶縁材料と接している系において、絶縁材料の内部や表面を移動・析出する現象をいう。イオンマイグレーションが進行すると、電子部品の故障につながる。
一方、光硬化型組成物は、無溶剤であるため溶剤等を環境に放出することがない環境負荷の少ないものであり、加熱の必要がないため低エネルギーで製品を製造することができ、さらに速硬化性であるため製造コストを低減できるので、種々の分野への応用が広がってきている。
光硬化型組成物は、イオンマイグレーションの防止目的にも利用されている。
例えば、ポリオレフィンポリオールを原料に用いたウレタン(メタ)アクリレートを含む光硬化性防湿絶縁塗料組成物(特許文献1)が知られている。
ところで、特許文献1に記載された電極被覆用光硬化型組成物を基板全体に塗工して使用する場合は、膜厚が厚い場合や、搭載部品の下部等といった紫外線照射が不十分となる箇所においては、組成物が硬化不十分となることがあり、電子部品の信頼性が低下する場合があった。
この問題を解決するため、光硬化型組成物にポリイソシアネートを配合して、いわゆる湿気硬化性を付与した組成物も知られている(特許文献2)
しかしながら、特許文献2記載の組成物は、電気絶縁性が不十分であり、湿気硬化性も不十分なものであった。
特開2008−280414号公報(特許請求の範囲) 特開平6−73313号公報(特許請求の範囲)
本発明は、電気絶縁性、特に耐イオンマイグレーション性に優れ、且つ湿気硬化性により十分な硬化膜を形成し得る電極被覆用光硬化型組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、種々の検討を行った結果、ウレタン(メタ)アクリレート、特定炭素数のアルキル(メタ)アクリレート、ポリイソシアネートを含む組成物が電気絶縁性に優れ、さらに湿気硬化により十分な硬化膜を形成することを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の組成物によれば、電気絶縁性、特に耐イオンマイグレーション性に優れ、且つ湿気硬化により十分な硬化膜を形成することができる。
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)〔以下、(A)成分という〕、分子中に炭素数8以上のアルキル基又は炭素数8以上のシクロアルキル基と(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物(B)〔以下、(B)成分という〕、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(C)〔以下、(C)成分という〕、湿気硬化用触媒(D)並びに光重合開始剤(E)〔以下、(E)成分という〕を含有する電極被覆用光硬化型組成物に関する。
以下、それぞれの成分について、説明する。
1.(A)成分
(A)成分は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである。
(A)成分としては、ジイソシアネート化合物(a)〔以下、化合物(a)という〕、ジオール(b)〔以下、化合物(b)という〕及び水酸基含有(メタ)アクリレート(c)〔以下、化合物(c)という〕を反応させて得られる化合物が好ましい。
(A)成分の配合割合としては、組成物中に1〜40重量%が好ましく、より好ましくは1〜20重量%である。
この割合を1重量%以上にすることにより、硬化物の柔軟性を増すことができ、一方、40重量%以下にすることにより、組成物の塗工性等のハンドリング性を容易にすることができる。
(A)成分は、後記する化合物を、単独で使用しても良く、又は2種類以上組合せて使用しても良い。
以下、(A)成分の原料化合物である、化合物(a)〜(c)について説明し、(A)成分の製造方法について説明する。
1−1.化合物(a)
化合物(a)としては、1分子中にイソシアネート基を2個有する化合物であれば種々の化合物を使用することができる。
化合物(a)の具体例としては、
トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート及びトリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;
水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシリレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、3−イソシアネートエチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3−イソシアネートエチル−3,5,5−トリエチルシクロヘキシルイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;並びに
ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;
等を挙げることができる。
1−2.化合物(b)
化合物(b)としては、低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオール等が挙げられる。
低分子量ポリオールとしては、例えば、分子量50〜300程度の水酸基を少なくとも2個有するポリオールが挙げられ、具体例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、オキシアルキレン単位を3個以上有するポリアルキレングリコールが挙げられ、具体例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、カーボネートとジオールとの反応生成物が挙げられる。カーボネートとして具体的には、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、並びにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート等が挙げられる。ジオールとしては、前記した低分子量ポリオールが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、これら低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ジカルボン酸とのエステル化反応物が挙げられる。
ジカルボン酸としては、種々の化合物が使用でき、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸及びダイマー酸等が挙げられる。
本発明の化合物(b)としては、前記した化合物の中でも、水酸基価が28〜225mgKOH/gであるポリエステルジオール〔以下、(b1)という〕が好ましい。
化合物(b1)の水酸基価としては、37〜115mgKOH/gが好ましい。
この値を28mgKOH/g以上にすることで、硬化物の強度を充分なものとすることができ、225mgKOH/g以下にすることで、硬化物を柔軟性に優れるものとすることができる。
(b1)の原料ジオールとしては、前記したもので良く、それらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物及びダイマージオール等が好ましい。
1−3.化合物(c)
化合物(c)としては、水酸基を有する(メタ)アクリレートであれば種々の化合物を使用することができ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物及びグリシドールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
1−4.(A)成分の製造方法
(A)成分は、前記した化合物(a)、(b)及び(c)を反応させて得られる化合物である。
(A)成分の製造方法としては、常法に従えば良く、化合物(a)、(b)及び(c)を反応させる方法、化合物(a)と化合物(b)を反応させて末端イソシアネートオリゴマーを製造した後、当該化合物のイソシアネート基に化合物(c)の水酸基を反応させる方法、化合物(b)と化合物(c)を混合した混合液に、化合物(a)を加えて反応させる方法等が挙げられる。
(A)成分の製造においては、組成物で配合する(B)成分やこれら以外の光重合性化合物中で実施しても良い。
得られた(A)成分は、組成物で配合する(B)成分やこれら以外の光重合性化合物を使用して溶解させても良い。
(A)成分の製造においては、鎖延長剤として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物、ダイマージオール等を利用してもよい。
(A)成分の分子量としては、重量平均分子量で1万〜10万が好ましい。
本発明において、化合物(a)〜(c)の反応割合としては、化合物(a)のイソシアネート基当量数(p)と、化合物(b)及び化合物(c)の合計水酸基当量数(q)の当量比として、(p):(q)は0.8〜1.2:1.0であるのが好ましく、より好ましくは0.9〜1.1:1.0である。
鎖延長剤を使用する場合も同様に、化合物(a)のイソシアネート基当量数(p)と、化合物(b)、化合物(c)及び鎖延長剤の合計水酸基当量数(q)の当量比として、(p):(q)は0.8〜1.2:1.0であるのが好ましく、より好ましくは0.9〜1.1:1.0である。
水酸基当量数(q)の1当量に対するイソシアネート基当量数(p)を0.8以上1.2以下にすることで絶縁信頼性に優れるものとすることができる。
(A)成分は、従来のウレタン化反応で使用される触媒を使用することもできる。
ウレタン化触媒としては、具体的には、有機金属化合物及び三級アミン化合物を挙げることができる。
有機金属化合物の例としては、有機錫化合物、有機鉄化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物及び有機ビスマス化合物等が挙げられる。
有機錫化合物としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセトアセトナート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ラウリン酸スズ及びフェルザチック酸スズ等の錫カルボン酸塩、並びにジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等が挙げられる。
有機チタン化合物としては、テトラブチルチタネート及びテトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル、並びにチタンテトラアセチルアセトナート等のチタンキレート化合物等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート等のジルコニウムキレート化合物等が挙げられる。
有機ビスマス化合物としては、ビスマス−トリス(ネオデカノエート)、ビスマス−トリス(2−エチルヘキソエート)及びオクチル酸ビスマス等が挙げられる。
有機鉄化合物及び有機亜鉛化合物は好ましい化合物であり、後記に詳述する。
3級アミン化合物としては、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン;テトラメチルエチレンジアミン及びテトラメチルヘキサンジアミン等のテトラアルキルアルキレンジアミン;ペンタメチルジエチレントリアミン等のペンタアルキルジアルキレントリアミン;トリメチルアミノエチルピペラジン及びメチルヒドロキシエチルピペラジン等のピペラジン;ジメチルアミノエトキシエタノール等のジアルキルアミノアルキルアルコール;トリメチルアミノエチルエタノールアミンのトリアルキルアミノアルキルアルコール;1,2−ジメチルイミダゾール等のN−アルキルイミダゾール;ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル;トリエチレンジアミン〔1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)〕;並びに2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミンが挙げられる。
これら以外の例としては、N−メチルモルホリン及び1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)等が挙げられる。
本発明においては、得られる(A)成分中に触媒に由来する金属分を低減させ、組成物の絶縁信頼性により優れたものとなることから、(A)成分として、ウレタン化触媒として有機鉄化合物及び有機亜鉛化合物が好ましく、下記金属下記一般式(1)で表される金属化合物を触媒として使用して製造されたものがより好ましい。
M(X)n ・・・(1)
〔式(1)において、MはFe又はZnを表し、Xは同一又は異なってβ−ジケトン、ハロゲン原子、アシルオキシ基又はアルコキシ基を表し、nは2又は3の整数を表す。〕
これらの金属化合物は、従来のスズ触媒に対して優れた活性を有するため、少ない使用量で目的とする(A)成分を製造することができる。
MはFe又はZnを表し、触媒活性により優れる点でFeが好ましい。
Xで表されるβ−ジケトンとしては、例えば、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2−メチルヘキサン−3,5−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、4,6−ノナンジオン、2,8−ジメチルノナン−4,6−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、トリデカン−6,8−ジオン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸tert−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニルtert−ブチル及びヘキサフルオロアセチルアセトン等が挙げられ、これらの中でも、アセチルアセトンが、安価である上ウレタン化反応の活性に優れるため好ましい。
Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子及び臭素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
Xで表されるアシルオキシ基としては、例えば、炭素数3〜20のアシルオキシ基が好ましく、具体的には、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、2−エチルヘキサノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基及びオクタデカノイル基等が挙げられる。
Xで表されるアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基及び2−エチルヘキシロキシ基等を挙げることができる。
Xは上記のいずれか1種でも良いし、2種以上の組み合わせでも良い。
これらの中でも、Xとしては、硬化物の電気特性に特に優れたものとなる点でハロゲン原子以外の官能基が好ましく、アセチルアセトン及びヘキサフルオロアセチルアセトンがより好ましく、反応液や組成物への溶解性に優れる点で、特に好ましくはアセチルアセトンである。
これらの中でも、下記式(2)で表される鉄のβ−ジケトン錯体が、ウレタン化反応の反応性に特に優れるため好ましい。
Fe(X’)3 ・・・(2)
〔式(2)において、X’はβ−ジケトンを表す。〕
X’で表されるβ−ジケトンとしては、上記のXで表されるβ−ジケトンを選択することが出来る。
Xの数を表すnは、2又は3の整数であり、製造安定性が良いため、MがFeの場合はnが3のものが、MがZnの場合はnが2のものが好ましい。
金属化合物の具体例としては、Xがβ−ジケトンの場合には、例えば、トリス(アセチルアセトナート)鉄、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)鉄、トリス(テトラフルオロアセチルアセトナート)鉄、ビス(アセチルアセトナート)亜鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)亜鉛、ビス(テトラフルオロアセチルアセトナート)亜鉛等が挙げられる。Xがハロゲン原子の場合は、例えば、塩化第二鉄及び塩化亜鉛等が挙げられる。Xがアシルオキシ基の場合には、例えば、トリス(2−エチルヘキサン酸)鉄、ナフテン酸鉄、ビス(2−エチルヘキサン酸)亜鉛及びナフテン酸亜鉛等が挙げられる。Xがアルコキシ基の場合は、例えば、トリエトキシ鉄、トリイソプロポキシ鉄、ジエトキシ亜鉛及びジイソプロポキシ亜鉛等が挙げられる。
これらの中でも、MがFeでありnが3のものが、ウレタン化反応の触媒活性に優れるためより好ましい。具体例としては、トリス(アセチルアセトナート)鉄や塩化第二鉄等を挙げることができ、式(2)で表されるトリス(アセチルアセトナート)鉄が触媒活性に優れるため特に好ましい。
(A)成分は、化合物(a)、(b)及び(c)を、前記金属化合物の存在下、必要に応じ反応溶媒の存在下に加熱・攪拌してウレタン化して製造することができる。
この場合、化合物(a)、(b)及び(c)を一括に仕込んで反応させることもでき(以下、「1段反応」という)、化合物(a)及び(b)を反応させてイソシアネート基含有プレポリマーを製造した後、化合物(c)を添加することもできる(以下、「2段反応」という)。
化合物(a)、(b)及び(c)の割合は、前記の通りである。
なお、本反応により生成する(A)成分の分子量が高くなると反応混合物が高粘度となり、攪拌が困難となる場合があるため、反応成分中に反応溶媒を配合することもできる。
反応溶媒としては、ウレタン化反応に関与しないものが好ましく、例えば、トルエン及びキシレン等の芳香族化合物、並びにジメチルホルムアミド等の有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒を使用する場合の配合量は、(A)成分の粘度等に応じて適宜設定すれば良いが、反応溶液中に0〜70重量%となるように設定することが好ましい。
ここで、反応溶液とは、原料化合物のみを使用する場合には、原料化合物の合計量を意味し、原料化合物に加え反応溶媒等を使用する場合は、これらを含めた合計量を意味する。具体的には、化合物(a)、(b)、(c)及び必要に応じ用いる反応溶媒等を合わせた溶液の意味に用いられる。以下同じ。
反応溶媒として、上記有機溶媒とともに又は上記有機溶媒に代えて、組成物の成分として使用する(B)成分及びこれら以外の光重合性化合物(これらをまとめて硬化性成分という)を配合することもできる。硬化性成分を配合してウレタン化反応を行い、得られたウレタン(メタ)アクリレートを硬化型組成物に配合した場合、前記有機溶媒を配合する場合と異なり、該組成物を塗布した後、乾燥する必要がないため好ましい。
硬化性成分を反応成分に配合する場合の配合量は、最終的に組成物に配合する硬化性成分の割合に応じて適宜設定すれば良いが、例えば、反応溶液中に10〜70重量%、さらに10〜50重量%となるように設定することが好ましい。
ウレタン化触媒の配合量は、触媒量でよく、例えば、反応溶液に対して、0.01〜1,000wtppmが好ましく、より好ましくは0.1〜1,000wtppmである。金属化合物の配合量が、0.01wtppm以上とすることで、ウレタン化反応を好ましく進行させることができ、1,000wtppm以下とすることで、得られる(A)成分の着色を抑制することができる。
ウレタン化触媒は、1段反応の場合は、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの仕込時に添加し、2段反応の場合は、ポリオール及び有機ポリイソシアネートの仕込時に添加することができる。
ウレタン化反応では、分子量調整の目的で、鎖延伸長剤を少量配合することもできる。鎖延長剤としては、ウレタン化反応で通常使用されるものを使用することができ、前記した低分子量ポリオールと同様のものを挙げることができる。
ウレタン化反応では、原料又は生成物の(メタ)アクリロイル基の重合を防止する目的で、重合禁止剤を使用することが好ましく、さらには含酸素ガスを反応液に導入してもよい。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、ベンゾキノン、フェノチアジン等の有機系重合禁止剤、塩化銅及び硫酸銅等の無機系重合禁止剤、並びにジブチルジチオカルバミン酸銅等の有機塩系重合禁止剤等が挙げられる。重合禁止剤は、一種を単独で使用しても又は二種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。重合禁止剤の割合としては、反応液中に5〜20,000wtppmが好ましく、より好ましくは25〜3,000wtppmである。
含酸素ガスとしては、例えば空気、酸素と窒素の混合ガス、酸素とヘリウムの混合ガス等が挙げられる。
反応温度は、使用する原料及び目的とする(A)成分の構造や分子量等に応じて適宜設定すれば良いが、通常10〜150℃が好ましく、より好ましくは、30〜120℃である。反応時間も、使用する原料及び目的とする(A)成分の構造や分子量等に応じて適宜設定すれば良いが、通常1〜70時間が好ましく、より好ましくは、2〜30時間である。
2.(B)成分
(B)成分は、分子中に炭素数8以上のアルキル基又は炭素数8以上のシクロアルキル基と、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物〔以下、単官能(メタ)アクリレートという〕である。
本発明では、(B)成分を含有することにより絶縁信頼性が高められる。
(B)成分の具体例としては、炭素数8以上のアルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。炭素数8以上のシクロアルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。炭素数8以上のアルキル基としては、芳香族環にアルキル基が結合した化合物でも良く、具体的には、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(B)成分は、前記化合物を、単独で使用しても良く、又は2種類以上組合せて使用しても良い。
(B)成分の配合割合としては、組成物中に10〜97重量%が好ましく、より好ましくは30〜90重量%である。
この割合を10重量%以上にすることにより、絶縁信頼性を高めることができ、一方、97重量%以下にすることにより、硬化物の強度を充分なものとすることができる。
3.(C)成分
(C)成分は、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。
(C)成分としては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば種々の化合物を使用することができ、分子中にイソシアネート基を2個有する化合物としては、前記化合物(a)と同様の化合物や、分子中に2個のイソシアネート基とアクリロイル基を有する化合物を使用することができる。
分子中にイソシアネート基を3個以上有する化合物としては、前記ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体やビウレット体及びアダクト体、トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
又、これらイソシアネートを、フェノール類、オキシム類、イミド類、メルカプタン類、アルコール類、ε−カプロラクタム、エチレンイミン、α−ピロリドン、マロン酸ジエチル、亜硫酸水素、ナトリウム及びホウ酸等でブロック化したもの等が挙げられる。
(C)成分としては、組成物の湿気硬化性に優れる点で、前記ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体が好ましい。
(C)成分は、前記化合物を、単独で使用しても良く、又は2種類以上組合せて使用しても良い。
(C)成分の配合割合としては、組成物中に1〜50重量%が好ましく、より好ましくは3〜40重量%である。
この割合を1重量%以上にすることにより、湿気硬化性を付与することができ、一方、50重量%以下にすることにより、硬化物の強度を充分なものとすることができる。
4.(D)成分
(D)成分は、湿気硬化用触媒である。
(D)成分としては、従来の湿気硬化型組成物で使用されているもの、及び湿気により前記(C)を反応させることができるものであれば、種々の化合物が使用可能である。
(D)成分の具体例としては、有機金属化合物及び3級アミン化合物を挙げることができる。
有機金属化合物としては、前記(A)成分の製造方法でウレタン化触媒の例として挙げた有機錫化合物、有機鉄化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物及び有機ビスマス化合物等が挙げられ、具体例も前記の通りである。
3級アミン化合物も、前記(A)成分の製造方法でウレタン化触媒の例として挙げた化合物と同様の化合物が挙げられ、具体例も前記の通りである。
(D)成分としては、硬化性に優れる点で、有機錫化合物、有機鉄化合物及び3級アミンが好ましい。
(D)成分は、前記化合物を、単独で使用しても良く、又は2種類以上組合せて使用しても良い。
(D)成分の配合割合としては、組成物中に0.005〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜3重量%である。
この割合を0.005重量%以上にすることにより、湿気硬化時間が短縮でき、一方、5重量%以下にすることにより、組成物の保存安定性を良好にすることができる。
5.(E)成分
本発明の組成物は、紫外線や可視光線等の光照射により硬化させて使用するものであり、(E)成分である光重合開始剤を配合する。
(E)成分としては、光硬化型組成物で通常使用される化合物で良く、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリノ−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン及びビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等が挙げられる。
(E)成分は、単独で使用しても良く、又は2種類以上組合せて使用しても良い。
(E)成分としては、(C)成分と反応しない化合物が好ましく、具体的には、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2,2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリノ−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン及びビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等が挙げられる。
組成物の硬化物のさらなる電気特性が要求される場合には、これらの中でも、リン元素や硫黄元素を含まない化合物がより好ましい。
当該化合物の具体例としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等が挙げられる。
組成物の硬化物の低タックが要求される場合には、これらの中でもα−アミノアルキルフェノン系の光重合開始剤がより好ましい。
α−アミノアルキルフェノン系の光重合開始剤の具体例としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(イルガキュア369)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリノ−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(イルガキュア379)等が挙げられる。
(E)成分の配合割合としては、組成物中に1〜10重量%であることが好ましく、3〜7重量%がより好ましい。
この割合を1重量%以上とすることにより硬化物表面の粘着性を低減することができ、10重量%以下とすることにより、得られる硬化物の強度を高めることができる。
6.その他の成分
本発明の組成物は、前記(A)〜(E)成分を必須とするものであるが、必要に応じて種々の成分を配合させることができる。
具体的には、シランカップリング剤、(A)及び(B)成分以外の光重合性化合物(以下、その他光重合性化合物という)、重合禁止剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤及び顔料等が挙げられ、これら以外にも公知慣用のものを添加することもできる。
本発明においては、シランカップリング剤〔以下、(F)成分という〕を配合することで、組成物をガラスに対する密着性に優れるものとすることができるため好ましい。
(F)成分としては、不飽和二重結合を有するシラン化合物が好ましく、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
(F)成分は、単独で使用しても良く、又は2種類以上組合せて使用しても良い。
(F)成分の配合割合としては、組成物中に10重量%以下が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
この割合を10重量%以下にすることにより、絶縁信頼性に優れるものとすることができる。さらに、0.1重量%以上とすることにより、冷熱衝撃試験後のガラスに対する密着性を高めることができる。
その他光重合性化合物としては、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ジエチレングリコールジアクリレート等の公知慣用のものが挙げられる。
本発明では、その他光重合性化合物として、前記(A)成分を除く分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、(G)成分という〕を配合することができる。これにより、硬化物表面の粘着性を低減することができる。
(G)成分としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコールジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート又はそのハロゲン芳香核置換体及びビスフェノールFジ(メタ)アクリレート又はそのハロゲン芳香核置換体等のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート;ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;前記ポリオールのアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート;並びにイソシアヌル酸アルキレンオキサイドのジ又はトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(G)成分としては、これら化合物の中でも、硬化物の基材に対する密着性を低下させないため、分子内に2以上4以下の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
当該化合物の好ましいものとしては、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート又はそのハロゲン芳香核置換体及びビスフェノールFジ(メタ)アクリレート又はそのハロゲン芳香核置換体等のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのポリオールポリ(メタ)アクリレート;並びに前記ポリオールのアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、組成物の硬化物が電気特性に特に優れたものとなる点で、ハロゲン原子を含まない化合物が好ましい。
さらにこれらの中でも、効果的に硬化物表面の粘着性を低減させることができる点で、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びビスフェノールAのエチレンオキサイド変性ジアクリレートが特に好ましい。
(G)成分の配合割合としては、組成物中に1〜30重量%が好ましく、より好ましくは1〜20重量%である。
この割合を1重量%以上にすることにより、硬化物表面の粘着性を低減することができ、一方、30重量%以下にすることにより、柔軟性がある硬化物を得ることができる。
重合禁止剤〔以下、(H)成分という〕としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、p−t−ブチルカテコール及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等が挙げられる。
これらの中でも、(C)成分と反応し難い化合物が好ましく、ヒンダードフェノールが好ましい。ヒンダードフェノールの例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等が挙げられる。
(H)成分の配合割合としては、組成物中に5重量%以下が好ましく、より好ましくは
0.03〜3重量%である。
この割合を5重量%以下にすることで、組成物を光硬化性に優れるもとすることができる。
7.製造・使用方法
本発明の組成物は、前記必須成分の(A)〜(D)と必要に応じてその他成分を攪拌・混合して製造すれば良い。
この場合、(A)、(B)、(D)及び(E)成分、必要に応じてその他成分からなる混合物(以下、事前混合物という)をあらかじめ製造しておき、これと(C)成分を攪拌・混合して製造する方法が、得られる組成物の保存安定性に優れるため好ましい。
この場合、事前混合物の含水率が2,000ppm以下であるものが好ましく、より好ましくは500ppm以下である。
事前混合物の含水率が2,000ppm以下である場合は、そのまま(C)成分と攪拌・混合すれば良いが、事前混合物の含水率が2,000ppmを超過する場合は、事前混合物の含水率を低減させることが好ましい。事前混合物の含水率を低減させる方法としては、脱水剤による含水率低減や乾燥ガスを用いた含水率の低減等が挙げられる。脱水剤としては、従来使用されているもので良く、具体的には、モレキュラーシーブ及び硫酸マグネシウム等が挙げられる。
前記は1液型組成物について説明したが、2液型組成物としても使用することができる。即ち、事前混合物と(C)成分を別々に用意しておき、使用直前にこれらを攪拌・混合して製造方法が挙げられる。2液型組成物にすることにより、組成物の保存安定性をより優れたものとすることができる。
上記では好ましい2液型組成物について説明したが、(C)成分と(D)成分を別々の2液にしておけば、残りの(A)、(B)及び(E)成分は、それぞれ(C)成分にも配合でき、(D)成分にも配合できる。
組成物の粘度としては、使用する目的に応じて適宜設定すれば良いが、組成物をスプレー塗工して使用する場合には、50〜200mPa・s(25℃)が好ましい。
本発明の組成物の使用方法は、常法に従えば良い。
例えば、被覆を目的としている電極に、組成物を塗布又は注入した後、光照射して組成物を硬化させ、その後数時間〜数日間放置して空気中の湿気により硬化させる方法等が挙げられる。
塗工方法としては、常法に従えば良く、前記した粘度のものを使用して、スプレー塗工することもできる。
光照射条件としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ等を用いて、100〜3000mJ/cm2程度照射すればよい。
本発明の組成物が適用できる電極の具体例としては、例えば、プラズマディスプレイパネルの電極端子、モバイル機器(携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等)に使われる実装基板上の端子、屋外機器(給湯器、エアコン室外機等)に利用される基板の端子、洗濯機や温水洗浄便座、食器洗い乾燥器等の水周り機器に使用される実装基板上の端子等が挙げられる。
以下に、実施例を具体的に挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下「部」及び「%」とは、特に断りのない限り、それぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
○製造例1〔(A)成分の製造〕
攪拌機、温度計、酸素濃度が5%の酸素/窒素混合ガス(以下、5%ONという)配管を装備した1Lフラスコに、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIという)を59.99g(0.27mol)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(以下、BHTという)を0.26g(1.18×10-3mol)、希釈剤として利用するノニルフェノキシエチルアクリレート(東亞合成(株)製アロニックスM−111。以下、M−111という)を220.41g(0.73mol)仕込んだ。
5%ONを吹き込みながら内容物を攪拌してフラスコ内を70℃にした。
トリス(アセチルアセトナート)鉄〔日本化学産業(株)製ナーセム第二鉄。以下、ナーセムという〕0.005g(1.4×10-5mol)を添加して、その後に水酸基価が55mgKOH/gのネオペンチルグリコール及びアジピン酸由来のポリエステルジオールを徐々に添加した。最終的にポリエステルを440.51g仕込んだ。その後、1,4−ブタンジオールを2.43g(0.027mol)添加して、フラスコ内の温度を80℃に昇温した。
GPCによる分子量計測(標準ポリスチレン換算。以下同様であり、記載を省略する。)で内容物の重量平均分子量(以下、Mwという)が3.2万を越えた段階で2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を11.36g(0.098mol)添加した。この時、ナーセムも0.005g(1.4×10-5mol)再度添加した。
その後のIR計測により、イソシアネート基が消失したことを確認して合成を終了した。
得られた反応混合物は、GPCによる分子量計測でMwが4〜5万のウレタンアクリレートオリゴマー(以下、UAという)とM−111の30%を含む混合物であった。
○実施例1
攪拌機、露点が−65℃以下の5%ONが流入可能な配管を装備した1Lフラスコに製造例1で得られた反応混合物14.3部(UA:10部 + M−111:4.3部)、イソボルニルアクリレート〔大阪有機(株)製。以下、IBXAという〕を70部、ラウリルアクリレート〔大阪有機(株)製。以下LAという〕を10部、M−111を5.7部、光重合開始剤〔チバ・ジャパン(株)製イルガキュア369。以下Irg−369という〕を5部、ジブチル錫ジラウレート〔以下DBTDLという〕を0.1部加えて均一に攪拌・混合し、事前混合物の溶液を調製した。
当該事前混合の溶液の含水率を、平沼産業(株)製微量水分測定装置(AQ−7)により計測し、含水率が50ppmであったことを確認してから、下記式(1)で表されるイソシアヌレート体のトリイソシアネート〔旭化成ケミカルズ(株)製TPA−100。以下TPA―100という〕を10部加えて均一に攪拌することにより湿気硬化を付与した光硬化型組成物を製造した。得られた組成物の粘度は、120mPa・s(25℃)であった。
Figure 2011032405
得られた組成物を使用して、下記評価に従い確認を行った。それらの結果を表1に示す。尚、表1には、組成物中の各成分の最終組成を示している。
○評価
(1)溶液粘度
組成物の粘度(25℃)をE型粘度計(東機産業製RE80形)により評価した。
(2)湿気硬化性
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、得られた組成物を厚さ50μmでスプレー塗工し、そのフィルムを23℃、55%RHの環境下に保管した。
PETフィルムの1辺を持ち、塗工液の垂れが観測されなくなる時間を評価した。
(3)表面タック性
ポリシクロオレフィンフィルム〔日本ゼオン(株)製、商品名ゼオノア〕上に、得られた組成物を厚さ50μmでスプレー塗工し、大気雰囲気下でメタルハロゲンランプの光を用いて紫外線硬化した(紫外線:UV−A、照射エネルギー:1000mJ/cm2)。
上記評価試験フィルムの表面タックを指触により測定した。その結果を表1に示す。
表1中、「表面タック」の項目における「◎」は表面タックが常温で観測されなかったことを意味し、「○」は紫外線硬化直後に僅かに表面タックが感じられるが、24時間経過後に表面タックが観測されなかったことを意味し、「×」は紫外線硬化から24時間経過した後にも表面タックが観測されたことを意味する。
(4)絶縁信頼性
櫛型のガラス布基材エポキシ樹脂銅張積層板(電極幅:318μm、ピッチ:318μm)上に、得られた組成物を厚さ30μmで塗布し、メタルハロゲンランプの光を用いて紫外線硬化した(紫外線:UV−A、照射エネルギー:1000mJ/cm2)。
上記方法で得た評価用サンプルを用いて、温度80℃、湿度95%RHの雰囲気下で、20Vの電圧を連続的に印加した状態において、抵抗値が108Ω以下になるまでの時間を測定し、耐イオンマイグレーション性を評価した。
(5)組成物の保存安定性
得られた組成物をポリエチレンラミネート缶に入れて、その缶を23℃で保管した。
定期的に組成物の外観を観測し、ゲル化するまでの時間を評価した。
○実施例2〜同6、比較例1〜同2
表1に示す成分を表1に示す割合で使用する以外は、実施例1と同様の方法で、光硬化型組成物を製造した。得られた組成物の粘度は、いずれも実施例1と同程度であった。
得られた組成物を使用して、実施例1と同様の方法で評価を行った。それらの結果を表1に示す。
Figure 2011032405
表1中の略号は、前記で記載したもの以外は、下記を意味する。
・ナーセム:アセチルアセトン第二鉄、日本化学産業(株)製ナーセム第二鉄。
・RX7:三級アミン触媒、東ソー(株)製TOYOCAT−RX7
・KBM−503:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製KBM−503
・M−450:ペンタエリスリトールテトラアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−450
実施例1〜同6の結果から、本発明の組成物は、いずれも絶縁信頼性及び保存安定性に優れ、表面タックが観測されず、湿気硬化性に優れるものであった。
これに対して、(C)成分を含まない比較例1の組成物及び(D)成分を含まない比較例2の組成物は、絶縁信頼性や保存安定性に優れ、表面タックが観測されないものであったが、湿気硬化性は不十分なものであった。
本発明の電極被覆用光硬化型組成物は、電気絶縁性に優れるため、電極被覆の用途として、種々の電子・電気機器の被覆に使用することができる。

Claims (12)

  1. ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)、分子中に炭素数8以上のアルキル基又は炭素数8以上のシクロアルキル基と(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物(B)、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(C)、湿気硬化用触媒(D)並びに光重合開始剤(E)を含有する電極被覆用光硬化型組成物。
  2. 前記(A)〜(E)成分を、組成物中に以下の割合で含む請求項1に記載の電極被覆用光硬化型組成物。
    (A)成分:1〜40重量%
    (B)成分:10〜97重量%
    (C)成分:1〜50重量%
    (D)成分:0.005〜5重量%
    (E)成分:1〜10重量%
  3. 前記(A)成分が、ジイソシアネート化合物(a)、水酸基価が28〜225mgKOH/gであるポリエステルジオール(b)、炭素数が2〜8のジオール(c)及び水酸基含有(メタ)アクリレート(d)を反応させて得られる、末端に(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである請求項1又は請求項2記載の電極被覆用光硬化型組成物。
  4. 前記(D)成分が、有機錫化合物、有機鉄化合物又は3級アミンのいずれかである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電極被覆用光硬化型組成物。
  5. 前記(E)成分が、α−アミノアルキルフェノン系の光重合開始剤である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電極被覆用光硬化型組成物。
  6. シランカップリング剤(F)をさらに含有する請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電極被覆用光硬化型組成物。
  7. 前記(F)成分を組成物中に10重量%以下含有する請求項6に記載の電極被覆光硬化型組成物。
  8. 分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物あって(A)成分以外の化合物(G)をさらに含有する請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電極被覆用光硬化型組成物。
  9. (G)成分を組成物中に20重量%以下含有する請求項8に記載の電極被覆光硬化型組成物。
  10. 重合禁止剤(H)をさらに含有する請求項1〜請求項9のいずれかに記載の電極被覆用光硬化型組成物。
  11. 前記(H)成分を組成物中に5重量%以下含有する請求項10に記載の電極被覆光硬化型組成物。
  12. 前記(A)、(B)、(D)及び(F)成分、及び必要に応じてその他成分を混合した含水率が2,000ppm以下である混合物と、前記(C)成分を攪拌・混合する請求項1〜請求項11のいずれかに記載の電極被覆光硬化型組成物の製造方法。
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