JP2011031479A - インクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前処理液で処理された布帛に、顔料と、顔料分散体と、高分子微粒子とを少なくとも含むインクジェット記録用インク組成物を付着させることにより画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記高分子微粒子のガラス転位温度が−10℃以下であり、かつ前記高分子微粒子の平均粒径が50〜300nmであるインクジェット記録方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、インクジェット記録方法に関し、より詳しくは、前処理液で処理された布帛を用いるインクジェット記録方法に関する。
従来から、布帛に画像を印捺する方法として、スクリーン捺染法、ローラ捺染法、ロータリースクリーン捺染法、または転写捺染法等が用いられている。しかしながら、これらの方法にあっては、画像デザインの変更毎に、高価なスクリーン枠、彫刻ローラ、または転写紙等を用意する必要がある。そのため、これらの方法は多品種少量生産にはコスト的に不向きであり、ファッションの多様化に迅速に対応することが難しい。
本発明による記録方法にあっては、まず、前処理液により処理された布帛が用意される。前処理液による処理は、布帛へのインク組成物の定着性を向上させるために行われる処理である。したがって、前処理液は、布帛へのインク組成物の定着に好ましい成分を含むものであり、本発明の好ましい態様によれば、とりわけ熱処理等の適切な処理によって布帛が有する官能基(例えば、セルロースに含まれる水酸基)、高分子微粒子が有する官能基、あるいは分散体(樹脂等)が有する官能基等と反応して、インクを定着させる成分を含むことが好ましい。その組成の詳細は後述する。
本発明のインクジェット記録方法に用いられる前処理液は、布帛へのインク組成物の定着性を向上させるものである限り特に限定されないが、熱処理等の適切な処理によって布帛が有する官能基(例えば、セルロースに含まれる水酸基)、高分子微粒子が有する官能基、あるいは分散体(樹脂等)が有する官能基等と反応して、インクを定着させる成分を含んでなるものが好ましく、さらに好ましくは、反応性基を少なくとも一つ以上有していてもよい反応剤を含んでなるものである。また、前処理液は好ましくは水を含んでなるものである。
本発明によるインク組成物に含まれる高分子微粒子のガラス転位温度を−10℃以下とすることにより、特に捺染用インクとしての顔料の定着性を向上することができる。より好ましくは、本発明によるインク組成物に含まれる高分子微粒子のガラス転位温度は−15℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以下である。
本発明において、顔料分散体とは、顔料が、最終的にはインク組成物中に分散可能な状態とされたものを意味し、具体的には、顔料が分散剤などの助剤の助けにより分散された顔料分散液、または助剤の助けによりインク組成物中には分散されるが、インク組成物の製造前には粉体で提供される粉体顔料、さらには、顔料が分散剤なしにインク組成物中に分散可能とされた自己分散顔料等を意味する。顔料分散液または粉体顔料の粒子の平均粒径は、特に限定されないが、50〜300nmであることが好ましい。平均粒径を50〜300nmとすることにより、良好な発色性および定着性を実現できる。より好ましくは、平均粒径は70〜230nm、さらに好ましくは80〜130nmである。ここで、平均粒径とは、顔料分散液の場合、液中で形成している粒子の分散径(累積50%径)である。前記平均粒径は光散乱法により測定することができ、例えば、マイクロトラックUPA(Microtrac Inc.社)を使用して測定することができる。
また、本発明によるインク組成物は、1,2−アルキレングリコールを更に用いることが好ましい。1,2−アルキレングリコールを更に用いることによりにじみが低減し、印刷品質が向上する。1,2−アルキレングリコールとしては、特に限定されないが、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジールなどの炭素数5または6の1,2−アルキレングリコールが好ましい。それらの中でも、炭素数6の1,2−ヘキサンジオールおよび4−メチル−1,2−ペンタンジオールが好ましい。また、1,2−アルキレングリコールの添加量は0.3%〜30%が好ましく、より好ましくは0.5%〜10%である。
顔料分散体は、ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン顔料:クラリアント製)を用いた。攪拌機、温度計、還流管、および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、ベンジルアクリレート75部、アクリル酸2部、t―ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したベンジルアクリレート150部、アクリル酸15部、ブチルアクリレート5部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部、および過硫酸ナトリウム1部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作製した。このポリマーの一部を取り乾燥させた後、示差操作型熱量計(セイコー電子製EXSTAR6000DSC)によりガラス転位温度を測定したところ40℃であった。
また、上記分散ポリマー溶液40部と、ピグメントブルー15:3を30部と、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部と、メチルエチルケトン30部とを混合した。その後超高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製アルティマイザーHJP−25005)を用いて200MPaで15パスして分散した。その後、別の容器に移してイオン交換水を300部添加して、さらに1時間攪拌した。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部とを留去して、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで中和してpH9に調整した。その後、0.3μmのメンブレンフィルターでろ過し、イオン交換水で調製して、顔料濃度が15%である顔料分散体を調製した。マイクロトラック粒度分布測定装置UPA250(日機装製)を用いてその粒径を測定したところ80nmであった。
反応容器に滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー、攪拌機を備え、イオン交換水100部を入れ、攪拌しながら窒素雰囲気70℃で、重合開始剤の過流酸カリ0.3部を添加しておき、イオン交換水7部にラウリル硫酸ナトリウムを0.05部、エチルアクリレート20部、ブチルアクリレート15部、ラウリルアクリレート6部、ブチルメタクリレート5部、およびt−ドデシルメルカプタン0.02部を入れたモノマー溶液を、70℃に滴下して反応させて1次物質を作製する。その1次物質に、過流酸アンモニウム10%溶液2部を添加して攪拌し、さらにイオン交換水30部、ラウリル硫酸カリ0.2部、エチルアクリレート30部、ブチルアクリレート25部、ラウリルアクリレート16部、アクリル酸5部、t−ドデシルメルカプタン0.5部よりなる反応液を70℃で攪拌しながら添加して重合反応させた後、水酸化ナトリウムで中和しpH8〜8.5にして0.3μmのフィルターでろ過した高分子微粒子水分散液を作成してエマルジョンA(EM−A)とした。この高分子微粒子水分散液の一部を取り乾燥させた後、示差操作型熱量計(セイコー電子製EXSTAR6000DSC)によりガラス転位温度を測定したところ−19℃であった。株式会社日立製作所製L7100システムのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、溶剤をTHFとして測定したときのスチレン換算分子量は180000であった。また、滴定法による酸価は18mgKOH/gであった。
以下、インクジェット記録用インク組成物に好適な組成の例を表1に示す。本発明のインクジェット記録用インクの調製は、上記の方法で作製した顔料分散体を用い、表1に示すビヒクル成分と混合することによって作製した。尚、本発明の実施例および比較例中の残量の水にはインクの腐食防止のためトップサイド240(パーマケムアジア社製)を0.05%、インクジェットヘッド部材の腐食防止のためベンゾトリアゾールを0.02%、インク系中の金属イオンの影響を低減するためにEDTA(エチレンジアミン四酢酸)・2Na塩を0.04%それぞれイオン交換水に添加したものを用いた。なお、サーフィノール104は、日信化学製アセチレングリコール系界面活性剤であり、サーフィノール465は、日信化学製アセチレングリコール系界面活性剤である。
ダンフィックス−5000(日東紡社製)(前処理液A−1)を用いて、布帛にインクジェットヘッドを用いて塗布した後、130℃で5分間乾燥させたものを、下記表1に示されたインク組成物を用いて印捺を行い、印捺物を得た(例1)。同様に、ダンフィックス−5000に代えて、ダンフィックス−7000(前処理液A−2)またはダンフィックス−PAA(前処理液A−3)(いずれも、日東紡社製)を用いて、布帛にインクジェットヘッドを用いて塗布した後、130℃で5分間乾燥させたものを、下記表1に示されたインク組成物を用いて印捺を行い、印捺物を得た(それぞれ、例2および例3)。
前処理液B−1の組成
スルホン酸マグネシウム 15%
アクリルスチレンポリマー 5%
サーフィノール465 1%
グリセリン 15%
トリエチレングリコール 5%
水 残量
上記組成の水溶液を布帛にインクジェットヘッドを用いて塗布した後、130℃で5分間乾燥させたものを、下記表1に示されたインク組成物を用いて印捺を行い、印捺物を得た(例4)。
スルホン酸カルシウム 15%
アクリルスチレンポリマー 5%
サーフィノール465 1%
グリセリン 15%
トリエチレングリコール 5%
水 残量
また、上記と同様に、上記組成の水溶液を布帛にインクジェットヘッドを用いて塗布した後、130℃で5分間乾燥させたものを、下記表1に示されたインク組成物を用いて印捺を行い、印捺物を得た(例5)。
後処理液
アクリルスチレンポリマー 9%
サーフィノール465 1%
グリセリン 15%
トリエチレングリコール 5%
水 残量
上記例1〜例6に関して、後処理を施したものを各々例7〜例12とした。
上記例1〜12の印捺物を、全自動洗濯機NEC製NW-A50ZC型標準モード5回洗濯した。洗濯前後の濃度変化を目視で観察した。
評価A:印捺物のインク剥がれが無く良好な耐洗濯堅牢性を示した。
評価B:印捺物のインク剥がれがわずかに観察されたが、実使用上問題ないと判断された。
評価C:印捺物のインク剥がれがあり、実使用上問題があると判断された。
評価結果を下記の表2に示した。
Claims (13)
- 前処理液で処理された布帛に、顔料分散体と、高分子微粒子とを少なくとも含むインクジェット記録用インク組成物を付着させることにより画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記高分子微粒子のガラス転位温度が−10℃以下であり、かつ前記高分子微粒子の平均粒径が50〜300nmである、インクジェット記録方法。
- 前記前処理液が、多価金属塩、またはポリアリルアミンもしくはその誘導体を含んでなるものである、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インクジェット記録用インクを付着させた布帛に、さらに後処理液で処理することを含んでなる、請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記高分子微粒子が少なくともアルキル(メタ)アクリレートおよび/または環状アルキル(メタ)アクリレートを含んでなり、前記アルキル(メタ)アクリレートおよび/または環状アルキル(メタ)アクリレートが炭素数1〜24のアルキル(メタ)アクリレートおよび/または炭素数3〜24の環状アルキル(メタ)アクリレートである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記分散体の微粒子の平均粒径が50〜300nmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記分散体が自己分散顔料である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記分散体が、ポリマーを用いて水に分散可能としたものであり、前記ポリマーの平均粒径が50〜300nmであり、前記ポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるスチレン換算重量平均分子量が10,000〜200,000である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記高分子微粒子のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるスチレン換算重量平均分子量が100,000〜1,000,000である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
- 1、2−アルキレングリコールを更に含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
- アセチレングリコール系界面活性剤および/またはアセチレンアルコール系界面活性剤を更に含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記高分子微粒子の含有量(重量%)が、前記顔料の含有量(重量%)よりも多い、請求項1〜10のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
- インクジェット記録用インク組成物を用いて印捺された布帛を110〜200℃において1分間以上熱処理する工程を更に有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記熱処理の前に、酸性の液体により前記布帛を処理する工程を更に含む、請求項12に記載のインクジェット記録方法。
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