JP2011028949A - 蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法 - Google Patents

蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】硫黄を含む電極活物質において、サイクル特性及び容量をより高める。
【解決手段】
本発明の蓄電デバイスは、炭素と硫黄とを主成分とし硫黄の含有量が38重量%を超え70重量%以下であり硫黄と炭素との元素比S/Cが0.25を超え1.00以下である、硫黄が結合し環状構造の中に窒素を含まない多環芳香族化合物を電極活物質に用いている。この多環芳香族化合物は、硫黄が結合したポリアセン構造を有しており、ラマンスペクトルにおけるグラファイト構造のDピークとGピークとの強度比D/Gが0.2以上1.0未満を示すものである。また、多環芳香族化合物は、炭素と硫黄との含有量の合計が85重量%以上である。このデバイスでは、硫黄の酸化還元に伴う容量に加えて、多環芳香族化合物での静電容量が重畳するため、大幅に容量が向上した。
【選択図】図1

Description

本発明は、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法に関する。
従来、蓄電デバイスとしては、1672Ah/kgという極めて高い理論容量密度を有する硫黄を電極活物質に用いるものが高容量電池として期待されている。硫黄を用いた蓄電デバイスの基本構成は比較的単純で、正極に硫黄と導電助材カーボンとバインダーを混練したものを用い、負極には金属Liもしくはそれを含む材料を用い、電解液にはLiPF6などの支持塩を溶かしたエーテル系有機電解液が用いられる。蓄電デバイスでは、正極活物質である硫黄や反応生成物であるポリスルフィドイオンの電解液中への溶解度が高いため、それらの溶出 ・負極との反応(以下シャトル効果ともいう)に伴う、容量低下や充放電効率の低下が問題となっている。これに対する防止法として、例えば、特許文献1では、炭素と硫黄とを主な構成元素とし、炭素鎖にジスルフィドを結合させ硫黄の重量比率をできるだけ高めることで容量及び充放電サイクルにおける容量維持率を向上するものが提案されている。また、非特許文献1では、導電性のポリアニリンの主鎖をジスルフィドでつないだ梯子状ポリマーが提案されている。また、非特許文献2では、芳香族を含まない直鎖状ポリマーであるポリアクリロニトリルと硫黄とを反応させ、その後、炭素鎖の環状化を図ることにより、硫黄を固定化するものが提案されている。
特開2002−154815号公報
ジャーナルオブ・エレクトロケミカル・ソサエティ(Journal of Electrochemical Society)144巻、L173、1997年 ジャーナルオブ・エレクトロアナリティカル・ケミストリー(Journal of Electroanalytical Chemistry)572巻、121−128頁、2004年
しかしながら、単体の硫黄を用いた場合には酸化還元時に2電子の授受が起きるのに対し、上述の特許文献1及び非特許文献1〜2の蓄電デバイスでは、いずれも硫黄が炭素と結合しているため、酸化還元時に1電子の授受しか起きず、容量が小さくなるということがあった。また、炭素鎖など、酸化還元反応、即ちエネルギー貯蔵に直接関係ない部分が増えるため、単位重量当たりの容量が小さくなる問題があった。例えば、特許文献1では、硫黄成分を更に増量し、硫黄同士でスルフィド結合を形成し、炭素と結合しない硫黄成分を増やす試みもされているが、これらは、還元が進むと本質的に硫黄単体を用いた場合と同様、活物質の溶解の問題が生じ、充放電効率の低下、サイクル時の容量低下の原因となることが考えられた。また、非特許文献1において、ポリ(2,2’−ジチオジアニリン)では、ポリアニリン部分の酸化還元を利用しても理論容量は330Ah/kg、実験結果の容量では活物質当たり270Ah/kgにとどまっており、硫黄単体の理論容量1672Ah/kg、50重量%の硫黄正極例での670Ah/kgに比して著しく低い。また、非特許文献2では、高容量の材料が作製できるとあるが、硫黄濃度も最も特性のよいもので、35重量%にとどまっている。これは、硫黄と結合し得ない、窒素元素が15重量%含まれているためであり、このため、容量も十分ではなかった。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、硫黄を含むものにおいて、サイクル特性及び容量をより高めることができる蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、余剰の硫黄が生じないように多環芳香化合物に硫黄を結合すると、サイクル特性及び容量をより高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の蓄電デバイスは、
炭素と硫黄とを主成分とし硫黄の含有量が38重量%を超え70重量%以下であり硫黄と炭素との元素比S/Cが0.25を超え1.00以下である、硫黄が結合し環状構造の中に窒素を含まない多環芳香族化合物を電極活物質に用いたものである。
本発明の電極活物質の製造方法は、
蓄電デバイスの電極に用いられる電極活物質を製造する製造方法であって、
窒素を含まない環状構造を有するポリマー化合物と硫黄とを混合し加熱して該環状構造を有する化合物と硫黄とを結合させた結合体を生成させる生成工程と、
前記結合体を硫黄の含有量が38重量%を超え70重量%以下であり且つ硫黄と炭素との元素比S/Cが0.25を超え1.00以下である多環芳香族化合物となるように処理する硫黄量適正化工程と、
を含むものである。
本発明の蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法は、サイクル特性及び容量をより高めることができる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推測される。例えば、硫黄元素は多環芳香族に結合しているため、硫黄単体使用時に問題となっているシャトル効果を防止可能であり、容量低下や充放電効率低下をより抑制した状態で繰り返し充放電を行うことができる。また、環状構造の中に窒素を含まないため、硫黄が結合する位置をより確保することができるのである。この硫黄元素の結合状態は、2本の腕のうち一方が多環芳香族化合物に結合し、酸化状態(充電状態)では他方は他の硫黄元素と2量体であるジスルフィド結合を形成するか、二本とも芳香族間に結合したチオカルボニル(チオキノン)構造をとる。一方、還元状態では、アニオンとなる。この多環芳香族化合物は、電子伝導性を有し、硫黄元素の酸化還元の電子輸送に寄与する。また、多環芳香族化合物は、ファンデアワールス力、π−π相互作用等の分子間相互作用により、分子間が積層した構造をとっているが、アニオンの生成などにより多環芳香族化合物間の距離が広がった場合には、電気二重層キャパシタ的な、もしくはLiインターカレーション的な大きな静電容量を発現するものと推察される。このため、硫黄が固定化されている場合には1電子の酸化還元しか起こり得ず、低容量化が課題となるが、本発明では、多環芳香族化合物に結合した硫黄の酸化還元に伴う容量に加えて、硫黄の酸化還元による多環芳香族化合物の静電容量の増減を重畳させるという、従来なかった新規な機構により、大幅に容量を向上することができたものと推察される。本発明の電極活物質は、硫黄の酸化還元容量に芳香族化合物の静電容量を重畳させるものであるため、硫黄の含有量が多すぎると静電容量の重畳が望めず、少なすぎると硫黄の酸化還元容量が小さくなりすぎる。このため、硫黄の含有量が38重量%を超え70重量%以下であり、硫黄/炭素の元素比S/Cが0.25を超え1.00以下の範囲において、サイクル特性及び容量をより高める効果を顕著に発現するものと考えられる。
評価セル10の説明図。 実施例1の充放電挙動を示す図。 実施例1及び実施例5のラマンスペクトル。 実施例1のサイクリックボルタンメトリー。 比較例11のサイクリックボルタンメトリー。
本発明の蓄電デバイスは、炭素と硫黄とを主成分とし、硫黄が結合し、環状構造の中に窒素を含まない多環芳香族化合物を電極活物質に用いている。この多環芳香族化合物において、硫黄の含有量は、38重量%を超え70重量%以下であるが、硫黄の含有量は40重量%以上65重量%以下であることがより好ましく、50重量%以上であることが更に好ましい。硫黄の含有量が40重量%以上では、電池の容量をより高めることができる。この多環芳香族化合物において、硫黄と炭素との元素比S/Cは、0.25を超え1.00以下であるが、元素比S/Cは0.30以上0.70以下であることが好ましく、0.40以上0.65以下であることがより好ましい。例えば、硫黄の含有量を70重量%を超えるものにしたり、元素比S/Cを1.2以上というように、硫黄含有量を大きくして容量を大きくしようとすると、多環芳香族化合物の構造が少なくなるし、多環芳香族化合物間の静電容量を利用することもできなくなるため好ましくない。
多環芳香族化合物において、ラマンスペクトルにおける、グラファイト構造の1570cm-1近傍領域に観察されるGピークと1350cm-1近傍領域に観察されるDピークとの強度比D/Gは、0.2以上1.0未満を示すことが好ましい。硫黄が結合した多環芳香族化合物は、高導電性から考えると芳香族間が連続してつながっている構造が望ましく、また、静電容量を利用するためには大きな面積である方が望ましい。しかしながら、面積が大きく二次元的に広がったグラフェン構造では、硫黄が結合し得る面のエッジ部分の割合が小さくなってしまう。このため、面状の径の小さなものが硫黄の結合部位確保の点から望ましい。ラマンスペクトルにおけるDピークはグラファイトのエッジ部に由来し、Gピークは炭素原子の六角格子振動に由来している。強度比D/Gの0.2以上1.0未満の範囲は、通常のグラファイトにおいては、結晶の直径が、20nmから4nmに対応する(参考文献:J.Composite Material,4,492(1970)参照)。したがって、導電性及び静電容量の確保と、硫黄が結合しうるエッジ部分の多さの兼ね合いで、0.2以上1.0未満の範囲のD/G値を示す化合物が望ましいものと考えられる。このD/G値は、0.8以下であることがより好ましく、0.6以下であることがより好ましく、0.3以下であることが更に好ましい。D/G値が0.8以下では、より高い容量を得ることができる。
この多環芳香族化合物は、環状構造の中に窒素を含んでいない。例えば、ポリピロールなど環状構造に窒素を含むものとすると、硫黄が結合可能である位置が少なくなり、硫黄との結合が抑制されてしまうが、こうすれば、硫黄と環状構造体との結合位置をより確保することができる。
多環芳香族化合物は、炭素と硫黄との含有量の合計が85重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。これは、炭素と硫黄の元素以外に窒素や酸素の含有量が少ないことが望ましいともいえる。多環芳香族化合物の環状構造内に窒素が入った場合、いわゆるピリジン環骨格を有することになるが、この窒素元素は3本の腕しかないため、窒素がそのエッジ部分に並ぶことになり、そこには硫黄は結合し得なくなる。例えば、窒素元素ポリアセン構造の片方の縁に並んで窒素が存在すると(上記非特許文献2参照)、硫黄は他方の縁のみに結合可能となり、理論的に硫黄濃度39重量%にとどまる。このとき、窒素は理論的に17重量%となり、炭素と硫黄の合計は理論的に83重量%にとどまる。したがって、窒素が多量に含まれる場合には必然的に硫黄濃度が低下することになり、容量低下につながる。このことから、炭素と硫黄の合計が少なくとも85重量%以上であることが望ましい。
本発明の蓄電デバイスにおいて、初期充放電において、Li電位基準で0.5V以下の範囲のエージング処理を前記活物質を備えた電極に施すものとすることが好ましい。こうすると、容量をより高めることができる。
本発明の蓄電デバイスは、特に限定されるものではないが、上述した多環芳香族化合物を正極活物質として有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えたものとすることができる。
本発明の蓄電デバイスにおいて、正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質は、上述した硫黄を結合した多環芳香族化合物とする。
本発明の蓄電デバイスにおいて、負極は、例えば負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。負極活物質は、金属または金属イオンを含むものであることが好ましい。負極活物質は、リチウムを吸蔵放出する材料を含むものとしてもよい。ここで、リチウムを吸蔵放出する材料としては、例えば金属リチウムやリチウム合金のほか、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、リチウムを吸蔵放出する炭素質物質などが挙げられる。リチウム合金としては、例えば、アルミニウムやシリコン、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウムなどとリチウムとの合金が挙げられる。金属酸化物としては、例えばスズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物などが挙げられる。金属硫化物としては、例えばスズ硫化物やチタン硫化物などが挙げられる。金属窒化物としては、例えば窒化リチウムなどが挙げられる。リチウムを吸蔵放出する炭素質物質としては、例えば黒鉛、コークス、メソフェーズピッチ系炭素繊維、球状炭素、樹脂焼成炭素などが挙げられる。この負極は、正極と同様に適宜、集電体や導電材、結着材を用いることができる。
本発明の蓄電デバイスにおいて、正極及び負極に用いられる導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック、ケッチェンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばエタノール、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
本発明の蓄電デバイスにおいて、イオン伝導媒体は、溶媒に支持塩を溶解した溶液であってもよい。支持塩としては、通常のリチウム二次電池に用いられるリチウム塩であれば特に限定されるものではなく、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(LiTFSI)、Li(C25SO22N、LiPF6,LiClO4,LiBF4,などの公知の支持塩を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。イオン伝導媒体の溶媒としては、特に限定されないが、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びプロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート類、ジメトキシエタン(DME)、トリグライム及びテトラグライムなどのエーテル類、ジオキソラン(DOL)、テトラヒドロフランなどの環状エーテル及び、それらの混合物が好適である。また、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートなどのイオン液体を用いることもできる。イオン伝導媒体は、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリルなどの高分子類又はアミノ酸誘導体やソルビトール誘導体などの糖類に、支持塩を含む電解液を含ませてゲル化されていてもよい。
本発明の蓄電デバイスは、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、蓄電デバイスの使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
本発明の蓄電デバイスの形状は、特に限定されないが、例えばコインセル型、巻電池型、ラミネート型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。
次に、電極活物質の製造方法について説明する。この電極活物質は、上述した硫黄が結合された多環芳香族化合物を含んでいる。本発明の電極活物質を製造する製造方法は、窒素を含まない環状構造を有するポリマー化合物と硫黄とを混合し加熱してこの環状構造を有する化合物と硫黄とを結合させた結合体を生成させる生成工程と、この結合体を硫黄の含有量が38重量%を超え70重量%以下且つ硫黄と炭素との元素比S/Cが0.25を超え1.00以下である多環芳香族化合物となるように処理する硫黄量適正化工程と、を含んでいる。なお、その他の製造方法としては、芳香環に塩素等のハロゲンが結合した化合物と、硫化ナトリウムや硫化リチウム等とを反応させ、ハロゲンと硫黄を置換して作製することができる。
原料として用いるポリマー化合物としては、処理後の多環芳香族構造の発達を促す目的で、環状構造を分子内に有するポリマーが望ましい。また、ポリマーが熱可塑性の場合には硫黄とポリマー両方が溶融して均一に混ざらない場合が生じるため、攪拌の機構を取り入れるか、熱硬化性のポリマーを使用することが望ましい。多環芳香族化合物を得るためのポリマーの種類としては、カーボン繊維の原料として用いるものが用いることができる。また、ポリアセンの原料として用いられているものを好適に用いることができる。具体的には、例えば、硫黄を含有するポリフェニレンスルフィド(PPS)や,炭化水素系のポリスチレン(PS)、フェノール樹脂などが好適である。窒素元素を含む原料は、硫黄と結合できない部位を増やすため望ましくないが、環状構造中に窒素を含むピリジン骨格やピロール骨格を有さず、焼成後の窒素濃度が低く炭素と硫黄の合計が85重量%以上となる窒素含有樹脂の場合には用いることができる。このような例として、ポリアニリンが挙げられる。この生成工程において、ポリマーと過剰量の硫黄とを不活性雰囲気下、硫黄の融点以上の温度、例えば、300℃の高温で反応させ、硫化水素を除去しながら、炭素硫黄結合を形成するものとしてもよい。不活性雰囲気としては、例えば、窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気、アルゴン雰囲気などが挙げられる。
硫黄量適正化工程において、硫黄の含有量と元素比S/Cが上記範囲となるように、上記結合体と硫黄とを混合し、硫黄の沸点付近の450℃に加熱して余剰の硫黄を揮発させて除去するものとしてもよい。この加熱処理では、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。ここで、硫黄の含有量が38重量%を超え70重量%以下であり、且つ硫黄と炭素との元素比S/Cが0.25を超え1.00以下である多環芳香族化合物となるように、硫黄の混合条件や、加熱条件などを設定するものとする。あるいは、硫黄量適正化工程において、硫黄の含有量と元素比S/Cが上記範囲となるように、上記結合体を、二硫化炭素等の硫黄良溶媒と混合し、硫黄を溶出させて余剰の硫黄を除去するものとしてもよい。こうして、電極活物質としての、硫黄が結合した多環芳香族化合物を得ることができる。
ここで、本発明の蓄電デバイスの電極活物質の容量発現機構について考察する。本発明の電極活物質である多環芳香族化合物は、例えば、ファンデアワールス力、π−π相互作用等の分子間相互作用により、分子間が積層した構造をとっている。したがって、この状態では、比表面積は小さく、いわゆる電気二重層キャパシタとしての容量は小さい。ここで、本発明の電極活物質を正極に用いた場合、放電時の硫黄置換基の還元により、硫黄はスルフィドアニオンになる。このとき、アニオンは結合している多環芳香族化合物に非局在化し、多環芳香族化合物の分子間距離が静電反発によって広がり、溶媒やLiイオンが層間に入り込めるようになり、比表面積が一気に増大すると考えられる。したがって、硫黄原子の還元によりキャパシタとしての静電容量が大幅に増大し、これが、硫黄由来の放電容量に重畳されるため、大きな容量が発現するものと推察される。また、硫黄の酸化還元電位はLi電極基準で約2V付近であるのに対し、カーボンのそれは3V強である。したがって、2V付近で一気に静電容量が大きくなった場合には、カーボンの開放電圧3V強から硫黄の還元電位約2Vの差分の電圧に相当する容量が、2V付近で一気に発現することになり、電池様の定電圧放電(キャパシタとしては負に帯電する充電)が起きることになる。充電時にはその逆の現象が可逆的に起きる。したがって、本発明の蓄電デバイスは、硫黄含有量から予想される容量に比べ遙かに大きな容量の発現が可能となり、従来無い機構の画期的な蓄電デバイスとなると考えられる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本発明の蓄電デバイスを具体的に作製した例を実施例として説明する。
[実施例1]
ポリ−p−フェニレンスルフィド(アルドリッチ製)1gに硫黄粉末(75μm以下、99.99%、高純度化学製)5gを加えよく混合したものを、試験管内に投入した。その試験管を窒素気流中の管状炉内に入れ、300℃まで1時間かけて昇温した。3時間加熱したあと、温度を450℃まで30分かけて昇温し、3時間放置した。室温まで冷却後、褐色固形物を得た。この褐色固形物をボ−ルミリングにより微粒化した。この試料を以下PPSS450BMと称する。PPSS450BMの0.3gに硫黄粉末を重量で5倍量加え、再度上記と同様に試験管内に入れ、管状炉で窒素雰囲気下450℃に3時間加熱し、余剰の硫黄分を揮発させて試料粉末を得た。この試料粉末を以下PPSS450BMS450と称する。得られた試料粉末を用いて電極を作製した。このPPSS450BMS450を70重量%、カーボン(ECP600JD,ライオン社製)を20重量%、バインダーであるポリテトラフルオロエチレンPTFEを10重量%、餅状になるまで乳鉢でよく混練し、シート状に成型した。直径12mmの円形状に切り出して真空乾燥し、正極材とした。この正極材と、負極としてのLi金属と、セパレータとしての多孔質ポリエチレンと、電解液(1M−LiPF6のエチレンカーボネートEC+ジエチルカーボネートDEC(体積比3:7))を用い、図1の評価セルを作製した。得られた評価セルを実施例1とした。なお、Liには厚さ0.4mm、直径18mmのLi板を用い、正極材の重量は3mg、電極面積は1.3cm2で評価した。
図1は評価セル10の説明図であり、図1(a)は評価セル10の組立前の断面図、図1(b)は評価セル10の組立後の断面図である。アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で評価セル10を作製した。評価セル10を組み立てるにあたり、まず、外周面にねじ溝が刻まれたステンレス製の円筒基体12の上面中央に設けられたキャビティ14に、負極16と、ポリエチレン製セパレータ18(微多孔性ポリエチレン膜、東燃化学(株)製)と、正極20とを、この順に、適量の非水系電解液をキャビティ14に注入しながら積層した。さらに、ポリプロピレン製の絶縁リング29を入れ、次いで絶縁性のリング22の穴に液密に固定された導電性の円柱24を正極20の上に配置し、導電性のコップ状の蓋26を円筒基体12にねじ込んだ。さらに、円柱24の上に絶縁用樹脂リング27を配置し、蓋26の上面中央に設けられた開口26aの内周面に刻まれたねじ溝に貫通孔25aを持つ加圧ボルト25をねじ込み、負極16とセパレータ18と固体電解質膜18と正極20とを加圧密着させた。このようにして、評価セル10を作製した。なお、円柱24は、リング22の上面より下に位置し絶縁用樹脂リング27を介して蓋26と接しているため、蓋26と円柱24とは電気的に非接触な状態となっている。また、キャビティ14の周辺にはパッキン28が配置されているため、キャビティ14内に注入された電解液が外部に漏れることはない。この評価セル10では、蓋26と加圧ボルト25と円筒基体12とが負極16と一体化されて全体が負極側となり、円柱24が正極20と一体化されると共に負極16と絶縁されているため正極側となる。このようにして得られた評価セルを実施例1とした。
(元素分析)
得られた試料に対して、元素分析を行った。CHNの元素分析は、全自動元素分析装置(エレメンタール社製、VarioEL)による燃焼法によって行った。硫黄の分析は、フラスコ燃焼−イオンクロマトグラフィーにより分析した。硫黄分析のシステムは、Dionex社製DX320を用い、カラムをIonPacAS12Aとし、移動相をNa2CO3(2.7mmol/L)/NaHCO3(0.3mmol/L)とした。
(ラマンスペクトル分析)
得られた試料に対して、ラマン分光測定を行った。ラマンスペクトル分析は、レーザラマン分光システム(日本分光(株)製、NRS−3300)を用いて測定した。波長532nmの励起光でラマン分光測定を行い、炭素の乱層構造を表す1350cm-1近傍領域のDピークと炭素の積層構造を表す1570cm-1近傍領域のGピークとの強度比D/Gを算出した。実施例1及び実施例5のラマンスペクトルを図3に示す。
(電気化学特性の評価)
得られた評価セルの電気化学特性の評価を行った。電気化学特性の評価では、ポリマー硫黄複合材の単位重量あたりの容量(mAh/g)、充放電効率(%)、硫黄の単位重量あたりの容量(mAh/g−S)、50サイクル目の容量(mAh/g)、充電後・放置時の容量維持率(%)について検討した。まず、評価セルを25℃の恒温槽内に設置し、この温度で初期エージングとして3.0Vから0.5Vまでの領域で0.5mAの定電流充放電を2回行った。そのあと、充放電試験として、1.0V〜3.0Vの領域で0.5mAの定電流充放電を行った。この定電流充放電を50サイクル繰り返すサイクル試験を行い、初回、5サイクル目、50サイクル目の複合材の単位重量あたりの容量(mAh/g)を求めた。なお、ここで示した各電圧値(V)は、Li電位基準の値である。また、5サイクル目の充電容量及び放電容量を用いて、放電容量を充電容量で除算し100を乗じて充放電効率を求めると共に、硫黄の単位重量あたりの容量を算出した。充電後・放置時の放電容量維持率の試験では、サイクル試験とは別に、正極(合材)あたりの充電容量と放電容量を測定し、24時間放置後の放電容量と充電容量とを求め、放電容量を充電容量で除したものに100を乗じて容量維持率を求め、更に10日放置後の放電容量と充電容量とを求め、放電容量を充電容量で除したものに100を乗じて容量維持率を求めた。この試験は、実施例1,5,8及び比較例11に対して行った。
[実施例2]
上記実施例1の中間工程で得られる褐色固形物0.3gを乳鉢で擦り、硫黄粉末を重量で5倍量加え、PPSS450BMと同様に525℃まで加熱し、試料粉末を得た。これをPPSS525と称する。得られた試料を用いて、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルを実施例2とした。放置時の容量維持率の試験を除き、評価は実施例1と同様に行った。
[実施例3]
1%ジビニルベンゼン架橋ポリスチレン(東京化成工業製)1gに99.9%硫黄粉末(高純度化学製)5gを加えよく混合したものを、試験管内に投入した。その試験管を窒素気流中の管状炉内に入れ、300℃まで1時間かけて昇温した。3時間加熱したあと、温度を400℃まで30分かけて昇温し、3時間放置した。室温まで冷却後、黒色の固まりを得た。このものをボ−ルミリングにより微粒化した。その後、硫黄を5倍量加えよく混ぜた後に、450℃に加熱し3時間保った。こうしてPSS400BMS450を得た。得られた試料を用いて、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルを実施例3とした。評価は、放置時の容量維持率の試験を除き、実施例1と同様に行った。
[実施例4]
可溶性の脱プロトン化したポリアニリン(PAn)を文献(阿部正男他、日東技報、28,63(1990))に従って合成した。ポリアニリン粉末1gを原料として用い、またボールミリングを行わない以外は、実施例3と同様に処理し、黒色粉末PANIS450を得た。得られた試料を用いて、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルを実施例4とした。評価は実施例1と同様に行った。これは窒素含有原料であるが、窒素の含有量は8重量%と低く硫黄と炭素の合計は86重量%あり、且つ環状構造の中に窒素を含まないものであり、比較的高い容量を示した。
[実施例5]
ボールミリングした市販のフェノール樹脂であるカイノール(日本カイノール製)を原料として用いた以外は、実施例4と同様に処理し、黒色粉末KyBMS450を得た。得られた試料を用いて、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルを実施例5とした。評価は、放置時の容量維持率の試験を除き、実施例1と同様に行った。
[実施例6〜8、比較例1〜3の原料合成]
フェノール樹脂の原料であるレゾール液を、以下のように合成した。三角フラスコ内にフェノール(アルドリッチ製)28.2g、0.3molと水を3mlを入れ、そこに、37%ホルムアルデヒド水溶液45ml、0.60molを加え攪拌した。この溶液に50重量%水酸化ナトリウム水溶液5gを、約15分かけて滴下した。65℃まで加熱し2時間攪拌した。室温まで冷却後、ロータリエバポレータで、73%に濃縮し、褐色のレゾール液を得た。次に、塩化亜鉛3.1gに水0.81gを加え、激しく攪拌しながらレゾール1.01gをゆっくり滴下混合した。この溶液を0.5mmのギャップで重ね合わせたガラス板の隙間に入れ、100℃に加熱固化させ、フェノール樹脂シートを得た。
[実施例6]
フェノール樹脂シートを0.1N塩酸、ついで蒸留水でよく洗浄後、乾燥し多孔質フェノール樹脂膜を得た。この膜0.3gに、硫黄粉末約2gを加え、125℃にホットプレート上で加熱し、硫黄が含浸したフェノール樹脂膜を得た。これを原料として用い、実施例4と同様に450℃で処理し、黒色の板状物質を得た。乳鉢でよくすりつぶし、黒色粉末PACS450を得た。得られた試料を用いて、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルを実施例6とした。評価は、放置時の容量維持率の試験を除き、実施例1と同様に行った。
[実施例7]
フェノール樹脂シ−トを水洗せずに、窒素雰囲気下の管状炉内に入れ、50℃刻みで各温度に15分保持しながら、350℃にまで昇温した。その温度の1時間保持後、取り出し、0.1N塩酸、ついで水蒸気で洗浄し、黒色の多孔質膜を得た。これに硫黄を4倍量混ぜ、実施例4と同様に、熱処理、乳鉢で粉砕を行い、黒色粉末PAC350S450を得た。得られた試料を用いて、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルを実施例7とした。評価は、放置時の容量維持率の試験を除き、実施例1と同様に行った。
[実施例8]
フェノール樹脂シートの熱処理温度が400℃である以外は実施例7と同様に処理し、PAC400S450を得た。得られた試料を用いて、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルを実施例8とした。評価は、放置時の容量維持率の試験を除き、実施例1と同様に行った。
[比較例1〜3]
フェノール樹脂シートの熱処理温度が450,510,610℃である以外は、実施例7と同様に処理し、PAC450S450、PAC510S450、PAC610S450を得た。これらの試料を用いて、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルをそれぞれ比較例1〜3とした。評価は、放置時の容量維持率の試験を除き、実施例1と同様に行った。
[比較例4〜8]
ポリマーとしてポリピロール(SSPY、ティーエーケミカル製)を用いた以外は実施例4と同様に処理し、SSPYS450を得た。得られた試料を用いて、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルを比較例4とした。また、硫黄を加えずに590℃で熱処理を行う以外は、実施例5と同様に処理し、黒色のKYBM590を得た。得られた試料を用いて、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルを比較例5とした。また、硫黄を加えずに熱処理を行う以外は実施例6と同様に処理し、黒色のPAC450を得た。得られた試料を用いて、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルを比較例6とした。また、ニコチン酸カルシウムを510℃で熱処理し炭化した後、酸処理によって得られたカーボン材に、硫黄を5倍量加え、450℃にて実施例4と同様に処理し、CS450を得た。得られた試料を用いて、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルを比較例7とした。また、カーボン材M30(大阪ガス製)に硫黄を加え、330℃で加熱処理し、M30Sを得た。得られた試料を用いて、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルを比較例8とした。比較例4〜8についての評価は、放置時の容量維持率の試験を除き、実施例1と同様に行った。
[比較例9〜11]
硫黄を0重量%、20重量%、50重量%とし、それにPTFEを10重量%、残量をカーボン(ECP600JD,ライオン社製)として混合したものを、それぞれECPS0%、ECPS20%、ECPS50%とした。これらの試料をそれぞれ正極材に用い、実施例1と同様の工程を経て得られた評価セルをそれぞれ比較例9〜11とした。評価について、硫黄単体が含まれていると上記電解液(EC+DEC)では動作しないため、硫黄単体が含まれていても評価セルが動作するように、比較例11の電解液は、1M−LiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド)のジメトキシエタン+ジオキソラン(体積比9/1)液とした。
[比較例12]
特開2003−123758の実施例1に従って合成した。Ar雰囲気下、硫化ナトリウム9水和物21.6gにエタノール/水1:1混合溶媒50mlを加え、1時間攪拌し溶解させた。そこに、硫黄12.8gを加え攪拌し、褐色の液体を得た。50℃に加熱1時間攪拌した後、真空濃縮した。ここに、ジメチルホルムアミド135mlを加え、そこに、ヘキサクロロブタジエンを加えた。一晩放置後水を加え、沈殿させ、固形分を濾過し採取した。アセトンで洗浄し、ピンク色の固体を得た。これを200℃で加熱乾燥させ、ボールミリングし、HCBS200BMを得た。評価は、EC+DECでは動作しなかったため、電解液を、1M−LiTFSIのジメトキシエタン+ジオキソラン(体積比9/1)液とした。他は実施例1と同様に行った。
実施例1〜8及び比較例1〜12の容量、充放電効率などの評価結果をまとめて表1に示し、実施例1,5,8及び比較例11の充電後放置時の容量維持率をまとめて表2に示す。図2には代表例である、実施例1の充放電挙動を示した。一般的な硫黄単体の充放電では、それぞれ硫黄の酸化状態に応じて、容量変化に対して電圧が略一定値を示すプラトー域は2段の特性が出ることが知られているが、実施例1ではこのプラトー域は1段であり、電圧安定性に優れる特性であった。なお、ここでは省略するが、他の実施例でも容量は異なるものの、実施例1とほぼ同様の波形であった。図3には代表例として実施例1及び実施例5のラマンスペクトルを示した。グラファイト構造のGピークとDピークがそれぞれ、1570cm-1近傍と、1350cm-1近傍に観察された。特開2002−154815に記載の硫化カーボンは1444cm-1付近に主ピークを持つとあることからも、本発明の構造と違うことが明らかである。表1に示すように、芳香族構造を有するポリマーと硫黄とを不活性雰囲気下で熱処理したものは、高い容量を示しており、充放電効率も100%であった。これらを硫黄当たりの容量でみると、一価の硫黄の理論容量である862mAh/gを超えており、硫黄の酸化還元容量に静電容量が重畳し、大きな容量が得られていることが明らかとなった。図4、5には代表例として実施例1のPPSS450BMS450と比較例11のECPS50%に関し、3Vまで充電後2.2V〜3V、もしくは、2.5〜3V、1Vまで放電後1V〜2Vの領域で測定したサイクリックボルタンメトリーを示した。これらを比較すれば、充電後、及び放電後のキャパシタとしての静電容量の変化が分かる。従来の硫黄単体を用いた比較例11(ECPS50%)では、両領域のキャパシタ成分はほとんど差が無く、小さいのに対し、実施例1(PPSS450BMS450)では、放電後の1〜2V域のキャパシタ成分が非常に大きく、充電後の2.2−3V域の10倍の静電容量となっていることが分かる。これは、これまで報告例のない新しい現象であり、この結果、極めて高性能な活物質が実現できた。キャパシタ成分は多環芳香族部分への静電容量による電荷蓄積であると推察され、その骨格の発達が重要であると考えられる。表1に示すように、多環芳香族構造の発達の指標であるD/G値が0.2以上、1.0未満のもので良好な容量を示しており、比較例1〜3のようにD/Gが1以上の場合は容量低下が起きた。また、硫黄濃度も当然影響し、比較例4の様に、硫黄濃度が30重量%以下では、容量は低かった。逆に硫黄濃度が80重量%以上ある比較例12では、むしろ、容量も小さく、硫黄の溶解が起きるため充放電効率が低いという結果であった。これらのことから、硫黄濃度は、30重量%以上、80重量%以下、更に望ましくは、40重量%以上70重量%以下が望ましいことが明らかとなった。硫黄と炭素の合計重量としてみると、最も低い実施例5のものでも86重量%以上であった。実施例5はポリアニリンを原料として窒素元素を含んでいるが、複合材中の窒素濃度は8重量%以下と高くないため、高容量を示したものと考えられた。このように他の元素を不純物として含んでいてもその総量が15重量%以下の場合には、悪影響は小さいことが分かった。
Figure 2011028949
Figure 2011028949
表2に示すように、放置試験を行った結果、本発明のものは、24時間放置後は99〜100%、10日間放置後でも95%程度の容量維持率があり、従来の硫黄単体を用いた比較例11(ECPS50%)の容量維持率26%、10%に比べると極めて良好であることが分かった。本発明の正極材の作製法は、芳香族構造を有するポリマーと硫黄を不活性雰囲気下で熱処理することを特徴とする。硫黄なしで熱処理した比較例5、6や、カーボン化してから硫黄と熱処理した比較例7、8,一部カーボン化してから硫黄と熱処理した比較例1〜3を見ても、容量は小さい値に留まっており、本発明の実施例1〜8ではより高い電池性能を示した。また、環状構造の中に窒素を含む多環芳香族化合物(ポリピロール)を原料として構成された比較例4では、硫黄の含有量が低く、容量が低かった。また、単に硫黄とカーボンを混ぜただけの比較例10〜12では、硫黄濃度が50重量%と高い場合には充放電効率や容量維持率が悪く、濃度が20重量%と低い場合は容量が低いことがわかった。
本発明は、電池に関する産業分野に利用可能である。
10 評価セル、12 円筒基体、14 キャビティ、16 負極、18 セパレータ、20 正極、22 リング、24 円柱、25 加圧ボルト、25a 貫通孔、26 蓋、26a 開口、27 絶縁用樹脂リング、28 パッキン、29 絶縁リング。

Claims (8)

  1. 炭素と硫黄とを主成分とし硫黄の含有量が38重量%を超え70重量%以下であり硫黄と炭素との元素比S/Cが0.25を超え1.00以下である、硫黄が結合し環状構造の中に窒素を含まない多環芳香族化合物を電極活物質に用いた、蓄電デバイス。
  2. 前記多環芳香族化合物は、ラマンスペクトルにおけるグラファイト構造のDピークとGピークとの強度比D/Gが0.2以上1.0未満を示す、請求項1に記載の蓄電デバイス。
  3. 初期充放電においてLi電位基準で0.5V以下の範囲のエージング処理を前記活物質を備えた電極に施した、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
  4. 前記多環芳香族化合物は、炭素と硫黄との含有量の合計が85重量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイスであって、
    前記多環芳香族化合物を正極活物質として有する正極と、
    負極活物質を有する負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
    を備えた蓄電デバイス。
  6. 蓄電デバイスの電極に用いられる電極活物質を製造する製造方法であって、
    窒素を含まない環状構造を有するポリマー化合物と硫黄とを混合し加熱して該環状構造を有する化合物と硫黄とを結合させた結合体を生成させる生成工程と、
    前記結合体を硫黄の含有量が38重量%を超え70重量%以下であり且つ硫黄と炭素との元素比S/Cが0.25を超え1.00以下である多環芳香族化合物となるように処理する硫黄量適正化工程と、
    を含む電極活物質の製造方法。
  7. 前記硫黄量適正化工程では、前記結合体と硫黄とを混合し不活性ガス雰囲気中で硫黄の沸点以上の温度で加熱する処理を行う、請求項6に記載の電極活物質の製造方法。
  8. 前記生成工程では、前記ポリマー化合物としてポリフェニレンスルフィド,ポリスチレン、フェノール樹脂及びポリアニリンのうち少なくとも1以上を用いる、請求項6又は7に記載の電極活物質の製造方法。
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