JP2013206645A - 活物質及び蓄電デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】硫黄を含むものにおいて、エネルギー効率をより高めると共に、高出力時の放電容量をより高める。
【解決手段】本発明の蓄電デバイスは、正極活物質を有する正極20と、負極活物質を有する負極16と、正極20と負極16との間に介在しイオンを伝導するイオン伝導媒体とを備えている。この正極活物質は、硫黄が結合した炭素骨格と、金属と硫黄とが結合した硫化金属構造と、を有しており、炭素骨格に結合した硫黄と金属とが結合した炭素−硫黄−金属構造を有するものである。この正極活物質は、炭素骨格が多環芳香族構造を有していることが好ましい。また、含まれる金属は、Cu及びAgのうち少なくとも1以上であることが好ましい。また、炭素骨格に結合した硫黄に対する金属の元素比が0.1以上1.0以下の範囲であることが好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の蓄電デバイスは、正極活物質を有する正極20と、負極活物質を有する負極16と、正極20と負極16との間に介在しイオンを伝導するイオン伝導媒体とを備えている。この正極活物質は、硫黄が結合した炭素骨格と、金属と硫黄とが結合した硫化金属構造と、を有しており、炭素骨格に結合した硫黄と金属とが結合した炭素−硫黄−金属構造を有するものである。この正極活物質は、炭素骨格が多環芳香族構造を有していることが好ましい。また、含まれる金属は、Cu及びAgのうち少なくとも1以上であることが好ましい。また、炭素骨格に結合した硫黄に対する金属の元素比が0.1以上1.0以下の範囲であることが好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、活物質及び蓄電デバイスに関する。
従来、蓄電デバイスとしては、1672Ah/kgという極めて高い理論容量密度を有する硫黄を電極活物質に用いるものが高容量電池として期待されている。硫黄を用いた蓄電デバイスの基本構成は比較的単純で、正極に硫黄と導電助材カーボンとバインダーを混練したものを用い、負極には金属Liもしくはそれを含む材料を用い、電解液にはLiPF6などの支持塩を溶かしたエーテル系有機電解液が用いられる。蓄電デバイスでは、正極活物質である硫黄や反応生成物であるポリスルフィドイオンの電解液中への溶解度が高いため、それらの溶出・負極との反応(以下シャトル効果ともいう)に伴う、容量低下や充放電効率の低下が問題となっている。これに対する防止法として、例えば、炭素骨格に硫黄を結合させたものが提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。この蓄電デバイスでは、例えば、硫黄が結合した多環芳香族化合物を炭素材として用いることにより、硫黄の酸化還元に伴う容量に、硫黄の酸化還元による多環芳香族化合物の静電容量の増減を重畳させることができ、容量を向上することができる。
しかしながら、硫黄が高濃度に結合した炭素材では、電導度が低く、高電流時の容量低下が起きてしまう問題があった。例えば、自動車用の蓄電デバイスとすることを考慮すると、出力特性の向上と容量向上の両立などが望まれる。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、硫黄を含むものにおいて、エネルギー効率をより高めると共に、高出力時の放電容量をより高めることができる活物質及び蓄電デバイスを提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者は、硫黄が結合した炭素骨格を有する化合物に、金属硫化物を反応させたものを活物質として用いると、エネルギー効率をより高めると共に、高出力時の放電容量をより高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の活物質は、蓄電デバイスに用いられる活物質であって、硫黄が結合した炭素骨格と、金属と硫黄とが結合した硫化金属構造と、を有しており、前記炭素骨格に結合した硫黄と前記金属とが結合した炭素−硫黄−金属構造を有するものである。
本発明の蓄電デバイスは、上述した活物質を電極に備えたものである。
本発明の活物質及び蓄電デバイスでは、エネルギー効率をより高めると共に、高出力時の放電容量をより高めることができる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。例えば、硫黄が結合した炭素骨格と金属との複合化合物を活物質とすることにより、金属硫化物の高い導電性の効果が発揮されるものと推察される。また、硫黄は、炭素および金属に結合しているため、硫黄単体使用時に問題となっている蓄電デバイスの電解液中への溶解などを防止することができ、容量低下や充放電効率低下をより抑制した状態で、繰り返し充放電ができるものと推察される。また、硫黄が結合している炭素骨格は、ファンデルワールス力、π−π相互作用等の分子間相互作用により、分子間が積層した構造をとっていると推察されるが、アニオンの生成などにより層間距離が広がった場合には、電気二重層キャパシタ的な、若しくはイオンのインターカレーション的な大きな静電容量を発現するものと推察される。硫黄が固定化されている場合には1電子の酸化還元しか起こり得ず、低容量化が課題となるが、本発明では、上述したような炭素骨格の静電容量を重畳させることが可能である。このため、炭素骨格に結合した硫黄の酸化還元にともなう容量に加えて、炭素骨格の静電容量を重畳させるという、従来なかった新規な機構により、容量を向上することができたものと推察される。したがって、エネルギー効率をより高めると共に、高出力時の放電容量をより高めることができるものと推察される。
本発明の活物質は、蓄電デバイスに用いられる活物質であって、硫黄が結合した炭素骨格(硫黄−炭素骨格)と、金属と硫黄とが結合した硫化金属構造と、を有しており、炭素骨格に結合した硫黄と金属とが結合した炭素−硫黄−金属構造を有する複合化合物である。この複合化合物は、硫化金属の硫黄の少なくとも一部が、硫黄−炭素骨格の硫黄で置き換わっているものとしてもよい。ここで、炭素骨格とは、構造内に複数の炭素(C)を有している構造をいい、炭素のみの結合により骨格を形成していてもよいし、炭素とその他の元素との結合により骨格を形成していてもよい。炭素骨格は、鎖状(直鎖でもよいし分岐鎖を有していてもよい)でもよいし環状でもよいが、環状が好ましく、なかでも、複数の環状構造が連なったものがより好ましい。また、炭素骨格は導電性を有するものであることが好ましい。このような炭素骨格としては、芳香族環構造を有するものが好ましく、なかでも複数の芳香族環がつながった構造を有するものが好ましい。この炭素骨格には、窒素、酸素などのヘテロ元素が含まれていてもよいし、水素が含まれていてもよい。
本発明の活物質において、複合化合物は、硫黄が共有結合している炭素骨格を有するものであればその形態には限定されないが、低分子量では不溶性の性質が出にくいため、ポリマーや、グラファイト構造及びポリアセンのような多環芳香族構造を含むことが好ましい。例えば、炭素骨格として、複数の芳香族環を含む多環芳香族構造を有しているものとしてもよい。ここで、複合化合物は、電子伝導性を有し、硫黄元素の酸化還元の電子輸送に寄与すると考えられる。また、複合化合物では、ファンデルワールス力、π−π相互作用などの分子間相互作用により、分子間が積層した構造をとっていると推察され、アニオンの生成などにより複合化合物間の距離が広がった場合には、電気二重層キャパシタ的な、若しくはイオンインターカレーション的な大きな静電容量を発現すると考えられる。この芳香族環としては、五員環を含むものとしてもよいし、六員環を含むものとしてもよい。また、この芳香族環には、炭素系芳香族環(例えばベンゼン環)を含むものとしてもよいし、硫黄、セレン、窒素、酸素のうち1以上をその環構造に含有する複素環(例えばチオフェン環やピリジン環など)を含むものとしてもよい。また、芳香族環が複素環でつながった構造としてもよい。例えば、ベンゼン骨格がジチアン骨格でつながった構造などが好ましい。また、多環芳香族が複素環でつながった構造などとしてもよい。例えば、アントラセン骨格がジチアン骨格でつながった構造などが好ましい。この多環芳香族としては、例えば、六員環では、アントラセン構造及びフェナントレン構造を有するもの、テトラセン構造、ピレン構造、トリフェニレン構造、テトラフェン構造及びクリセン構造を有するもの、ペンタセン構造、ピセン構造及びペリレン構造を有するものなどが挙げられる。なお、例えば「アントラセン構造を有するもの」とは、アントラセン、アントラセンに置換基が結合したアントラセン誘導体及びアントラセンに五員環化合物が結合したものなどを含むものをいう。置換基としては、アルキル基やヒドロキシル基、ハロゲンなどが挙げられる。このうち、芳香族環は、取り扱いや入手の容易さを考慮すると、ナフタレンとチオフェンとが連結した構造、アントラセン構造、テトラセン構造及びペンタセン構造のうちいずれか1つを含むものであることが好ましい。芳香族環は、できるだけ多くの硫黄元素が結合できるような構造であることが好ましく、例えば、ベンゼン骨格が一列に並んだポリアセン構造などが好ましい。本発明では、硫黄置換基の酸化還元によって発生する多環芳香族部位のキャパシタ成分の重畳によって容量が増大するため、硫黄置換基が多く結合できるよう多環芳香族構造はエッジ部が多いものが好ましいと考えられるからである。ポリアセン構造は、芳香族環が一次元的に連なった骨格を有し、それは炭素のみにより構成されていてもよいし、炭素以外の元素(例えば、硫黄、窒素及び酸素など)を含むものとしてもよい。
本発明の活物質において、複合化合物は、炭素、水素、窒素の総量に対する硫黄の質量比が30%以上70%以下であることが好ましい。この範囲では、硫黄の酸化還元容量が大きくなり、還元時の静電反発が小さくなりすぎずキャパシタとしての容量も発現する。このため、これらの容量の重畳により放電容量を高めることができる。硫黄の質量比の上限は、炭素骨格と結合可能な範囲であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセン構造の外周に硫黄がすべて結合したC2S組成にあたる57%以下であることが好ましい。硫黄の質量比が、硫黄と炭素骨格とが結合可能な範囲であれば、硫黄単体を用いた場合に問題となるシャトル効果の発生を抑制することが可能であり、放電容量の低下を抑制することができる。ここで、エネルギー効率(%)とは、充電に要した電力量が放電時にどれだけ取り出せるかを示す指標である。ここでは、放電時の電力量を直前の充電時の電力量で除したものに100を乗じた値をいう。
この複合化合物では、還元状態では2本の結合手の一方のみが芳香族環構造に結合したアニオンとなっていると考えられる。このとき、アニオンは結合している多環芳香族化合物に非局在化するため、多環芳香族化合物の分子間距離が静電反発によって広がり、溶媒やリチウムイオンが層間に入り込めるようになり、比表面積が一気に増大する。従って、硫黄元素の還元によりキャパシタとしての静電容量が大幅に増大し、これが硫黄由来の放電容量に重畳されるため、大きな容量を発現できるものと推察される。
本発明の活物質において、複合化合物は、金属と硫黄とが結合した硫化金属構造を有する。この金属としては、例えば、Cu、Ag、Ni、Tiなどのうち1以上とすることができるが、硫化物の導電性が高く、且つ豊富に存在するという観点で、銅が特に好ましい。この金属は、炭素骨格に結合した硫黄に対する金属の元素比が0.1以上1.0以下の範囲であることが好ましく、0.3以上0.5以下の範囲であることがより好ましい。この元素比が0.1以上では、導電性向上の効果がより得られやすく、この元素比が1.0以下では、金属硫化物の影響が強くなりすぎず、容量低下などをより抑制することができる。炭素−硫黄−金属構造において、金属は、少なくとも硫黄−炭素骨格の硫黄と結合していればよく、硫黄−炭素骨格の硫黄とのみ結合しているものとしてもよいし、炭素骨格に結合していない硫黄と更に結合しているものとしてもよい。
ここで、蓄電デバイスの電極活物質に用いる複合化合物の具体例について説明する。表1に複合化合物の硫黄−炭素骨格の一例を示す。本発明の複合化合物の硫黄−炭素骨格としては、例えば、外周に硫黄が結合したピリジン環が一列に並んだポリアセン構造を有する次式(1)に示すものが挙げられる(以下PAN系とも称する)。なお、式中の「n」は、任意の整数である(以下同じ)。また、硫黄−炭素骨格としては、ナフタレン骨格が芳香族複素環である二つのチオフェン骨格でつながったポリアセン構造を有する次式(2)に示すものが挙げられる(以下PNV系とも称する)。また、硫黄−炭素骨格としては、アントラセン骨格が複素環のジチアン様骨格でつながったポリアセン構造の外周に硫黄が結合した構造を有する次式(3)に示すものが挙げられる(以下AN系とも称する)。また、硫黄−炭素骨格としては、ベンゼン骨格が複素環のジチアン様骨格およびチオフェン様骨格でつながったポリアセン構造を有する次式(4)に示すものが挙げられる(以下PPS系とも称する)。また、硫黄−炭素骨格としては、外周に硫黄が結合したナフトピレン骨格が芳香族複素環である二つのチオフェン様骨格でつながったポリアセン構造を有する次式(5)に示すものが挙げられる(以下NPY系とも称する)。また、硫黄−炭素骨格としては、ペンタセン骨格の外周に硫黄が結合した構造を有する次式(6)に示すものが挙げられる(以下PEN系とも称する)。なお、式(1)〜(6)は、硫黄が理想的に結合したものであり、これよりも硫黄が少なくてもよい。
本発明の複合化合物は、例えば、式(1)の硫黄−炭素骨格を例にすると、硫黄−炭素骨格中の硫黄に金属Meが結合した炭素−硫黄−金属構造を有し、例えば、式(7)に示すような構造を有することが予想される。
次に、上述した炭素−硫黄−金属構造を有する複合化合物の製造方法についてその一例を説明する。なお、本発明の複合化合物は、以下に説明する製造方法に限定されるものではない。例えば、金属硫化物と硫黄−炭素骨格化合物と硫黄とを混合し、加熱焼成したのち、過剰な硫黄成分を除去することによって得ることができる。また、硫黄−炭素骨格化合物を合成する際に、金属硫化物を混在させることによって作製することもできる。なお、反応性が高い金属を用いた場合には、金属単体や金属硫化物と硫黄−炭素骨格とを混合することにより、一部の金属が硫黄−炭素骨格化合物中の硫黄と結合するなど、本発明の複合化合物を得ることができることも考えられる。
硫黄−炭素骨格のうち、硫黄が結合した多環芳香族化合物の作製法としては、芳香環に塩素等のハロゲンが結合した化合物と、硫化ナトリウムや硫化リチウム等とを反応させ、ハロゲンと硫黄を置換して作製することができる。その他の手法として、ポリマーやアントラセン、テトラセン、ペンタセンなどの比較的低分子の多環芳香族化合物と過剰量の硫黄とを窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気下、硫黄の融点以上の温度、例えば、300℃の高温で反応させ、硫化水素を除去しながら、硫黄−炭素骨格を形成するものとしてもよい。これを、硫黄の沸点付近の450℃に加熱するか、二硫化炭素等の硫黄を溶解する溶媒で硫黄を除去し、目的の硫黄−炭素骨格を有する多環芳香族化合物を得ることができる。ポリマーを用いる場合、ポリマーが熱可塑性の場合には硫黄とポリマー両方が溶融し、均一に混ざらない場合が生じるため、攪拌の機構を取り入れるか、熱硬化性のポリマーを使用することが好ましい。硫黄−炭素骨格を有する多環芳香族化合物を作製するポリマーとしては、例えば、芳香族環を分子内に有するポリマー例えば、ポリナフタレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンなどが好適である。これらのポリマーは、多環芳香族構造の発達を促しやすく、好ましい。そのほか、ポリアクリロニトリルのようにピリジン環骨格が形成されるものや、ポリアセンの原料として用いられているフェノール樹脂、炭化水素系として、ポリスチレン(PS)、異元素含有系としてポリ−p−フェニレンスルフィド(PPS)などが好適である。窒素元素を含む原料としては、前述のポリアクリロニトリルのほか、ポリアニリンや、ポリピロールなどが挙げられる。複合化合物の金属の原料としては、金属硫化物を使用することが好ましい。この金属硫化物の形態に関しては、過剰硫黄除去の時点で余分な硫黄が除かれるため、金属の価数はどのようなものを用いてもよい。また、金属硫化物と硫黄−炭素骨格化合物とを混合し加熱するときに、過剰硫黄を含んだ状態とすることが好ましい。こうすれば、金属の均一分散が難しい場合などにおいても、溶解度を上げることができ、例えば、硫化金属を金属ポリ硫化物の状態にするなどして、均一分散させ、硫黄−炭素骨格化合物と反応させることができる。
次に、本発明の蓄電デバイスについて説明する。本発明の蓄電デバイスは、上述した活物質を電極に備えたものである。この蓄電デバイスでは、例えば、活物質である複合化合物を正極活物質としてもよいし、負極活物質としてもよい。即ち、本発明の蓄電デバイスは、複合化合物を正極活物質として有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しイオンを伝導するイオン伝導媒体とを備えたものとしてもよい。また、本発明の蓄電デバイスは、正極活物質を有する正極と、上記複合化合物を負極活物質として有する負極と、正極と負極との間に介在しイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えたものとしてもよい。伝導するイオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム及びカリウムなどの第1族元素のイオンやマグネシウム及びカルシウムなどの第2族元素のイオンとしてもよい。このうち、エネルギー密度の観点から、リチウムイオンが好ましい。ここでは、炭素−硫黄−金属構造を有する複合化合物を正極活物質として用い、イオン伝導媒体がリチウムイオンを伝導する場合を主として説明する。
本発明の蓄電デバイスにおいて、正極は、例えば上述した活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質は、上述した複合化合物である。
本発明の蓄電デバイスにおいて、負極活物質は、金属または金属イオンを含むものであることが好ましい。負極活物質は、リチウムを吸蔵放出する材料を含むものとしてもよい。ここで、リチウムを吸蔵放出する材料としては、例えば金属リチウムやリチウム合金のほか、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、リチウムを吸蔵放出する炭素質物質などが挙げられる。リチウム合金としては、例えば、アルミニウムやシリコン、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウムなどとリチウムとの合金が挙げられる。金属酸化物としては、例えばスズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物などが挙げられる。金属硫化物としては、例えばスズ硫化物やチタン硫化物などが挙げられる。金属窒化物としては、例えば窒化リチウムなどが挙げられる。リチウムを吸蔵放出する炭素質物質としては、例えば黒鉛、コークス、メソフェーズピッチ系炭素繊維、球状炭素、樹脂焼成炭素などが挙げられる。この負極は、例えば負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。
本発明の蓄電デバイスにおいて、正極及び負極に用いられる導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック、ケッチェンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばエタノール、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
本発明の蓄電デバイスにおいて、イオン伝導媒体は、溶媒に支持塩を溶解した電解液としてもよい。支持塩としては、通常のリチウム二次電池に用いられるリチウム塩であれば特に限定されるものではなく、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、Li(C2F5SO2)2N、LiPF6,LiClO4,LiBF4,などの公知の支持塩を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。イオン伝導媒体の溶媒としては、特に限定されないが、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びプロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート類、ジメトキシエタン(DME)、トリグライム及びテトラグライムなどのエーテル類、ジオキソラン(DOL)、テトラヒドロフランなどの環状エーテル及び、それらの混合物が好適である。また、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートなどのイオン液体を用いることもできる。イオン伝導媒体は、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリルなどの高分子類又はアミノ酸誘導体やソルビトール誘導体などの糖類に、支持塩を含む電解液を含ませてゲル化してもよい。なお、金属硫化物系電池の電解液では、一般的なリチウムイオン電池で使用される炭酸エステル系の電解液は充電反応ができなくなるという現象が起きるため使用できず、可燃性の高いエーテル系の電解液を使用せざるを得ないことがある。これに対して、本発明の複合化合物では、硫黄が固定化されているため、リチウムイオン電池で使用される炭酸エステル系の電解液を用いることができる。
本発明の蓄電デバイスは、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、蓄電デバイスの使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムや、ポリイミド三次元多孔フィルムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
本発明の蓄電デバイスの形状は、特に限定されないが、例えばコインセル型、巻電池型、ラミネート型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。
本発明の蓄電デバイスは、初期充放電において、Li電位基準で0.5V〜3.0Vの範囲で、エージング処理を、電極活物質を備えた電極に施すものとすることが好ましい。こうすると、容量をより高めることができる。
以上詳述した本発明の活物質及び蓄電デバイスでは、エネルギー効率をより高めると共に、高出力時(例えば電流密度が2A/g以上など)の放電容量をより高めることができる。ここで、本発明の蓄電デバイスの活物質の容量発現機構について考察する。本発明の活物質である複合化合物は、ファンデルワールス力、π−π相互作用等の分子間相互作用により、分子間が積層した構造をとるものと推察される。この活物質を正極に用いた場合、放電時の硫黄置換基の還元により、アニオンが生成する。このとき、アニオンは結合している多環化合物に非局在化し、多環化合物の分子間距離が静電反発によって広がり、溶媒やリチウムイオンが層間に入り込みやすくなり、比表面積が一気に増大すると考えられる。したがって、硫黄原子の還元によりキャパシタとしての静電容量が大幅に増大し、これが、硫黄由来の放電容量に重畳されるため、大きな容量が発現するものと推察される。また、硫黄の酸化還元電位はLi電極基準で約2V付近であるのに対し、カーボンでは3V強である。したがって、2V付近で一気に静電容量が大きくなった場合には、カーボンの開放電圧3V強から硫黄の還元電位約2Vの差分の電圧に相当する容量が、2V付近で一気に発現することになり、電池に似た定電圧放電(キャパシタとしては負に帯電する充電)が起きることになる。充電時にはその逆の現象が可逆的に起きる。また、構造内に金属が含まれるため、導電性がより向上し、このため、エネルギー効率や出力が向上するものと考えられる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本発明の蓄電デバイスを具体的に作製した例を実施例として説明する。
[実施例1]
ポリアクリロニトリル(アルドリッチ製)3gに硫黄粉末(75μm以下、99.99%、高純度化学製)15gを加えよく混合したものを、試験管内に投入した。その試験管を窒素気流中の管状炉内に入れ、300℃まで1時間かけて昇温した。3時間加熱したあと、温度を450℃まで30分かけて昇温し、3時間放置して過剰な硫黄を除去した。室温まで冷却後、黒色粉末の試料(硫黄濃度38質量部)を得た。これを、以下PANS(硫黄−炭素骨格化合物)と称する。このPANSを100mg、硫黄を200mg、硫化銅CuSを42mg秤量して混合し、同様に試験管内に入れ、管状炉にて窒素雰囲気下200℃で1時間、その後、315℃で3時間保持してPANSと硫化銅と反応させたあと、450℃で2時間保持して過剰の硫黄を除去した。得られた室温まで冷却後、黒色粉末(PANS−CuS)を得た。この黒色粉末では、金属硫化物CuS中の硫黄の全量がPANSの硫黄に置換したときの元素比(金属/硫黄−炭素骨格化合物中の硫黄)は、0.37である。これを実施例1の活物質とした。このPANS−CuS(1:0.37)を70質量%、カーボン(ECP600JD,ライオン社製)を20質量%、バインダーとしてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を10質量%となるように配合し、餅状になるまで乳鉢でよく混練し、シート状に成型した。このシートを直径12mmの円形状に切り出し、真空乾燥して正極材とした。この正極材と、負極としてのリチウム金属と、セパレーターとしての多孔質ポリエチレンと、電解液(1M−LiPF6を含むエチレンカーボネートEC+ジエチルカーボネートDEC(体積比3:7))とを用い、図1の評価セルを作成した。この得られた評価セルを実施例1の評価セルとした。なお、Li金属は厚さ0.4mm、直径18mmのLi板を用い、正極材の質量は3mg、電極面積は1.3cm2で評価した。
ポリアクリロニトリル(アルドリッチ製)3gに硫黄粉末(75μm以下、99.99%、高純度化学製)15gを加えよく混合したものを、試験管内に投入した。その試験管を窒素気流中の管状炉内に入れ、300℃まで1時間かけて昇温した。3時間加熱したあと、温度を450℃まで30分かけて昇温し、3時間放置して過剰な硫黄を除去した。室温まで冷却後、黒色粉末の試料(硫黄濃度38質量部)を得た。これを、以下PANS(硫黄−炭素骨格化合物)と称する。このPANSを100mg、硫黄を200mg、硫化銅CuSを42mg秤量して混合し、同様に試験管内に入れ、管状炉にて窒素雰囲気下200℃で1時間、その後、315℃で3時間保持してPANSと硫化銅と反応させたあと、450℃で2時間保持して過剰の硫黄を除去した。得られた室温まで冷却後、黒色粉末(PANS−CuS)を得た。この黒色粉末では、金属硫化物CuS中の硫黄の全量がPANSの硫黄に置換したときの元素比(金属/硫黄−炭素骨格化合物中の硫黄)は、0.37である。これを実施例1の活物質とした。このPANS−CuS(1:0.37)を70質量%、カーボン(ECP600JD,ライオン社製)を20質量%、バインダーとしてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を10質量%となるように配合し、餅状になるまで乳鉢でよく混練し、シート状に成型した。このシートを直径12mmの円形状に切り出し、真空乾燥して正極材とした。この正極材と、負極としてのリチウム金属と、セパレーターとしての多孔質ポリエチレンと、電解液(1M−LiPF6を含むエチレンカーボネートEC+ジエチルカーボネートDEC(体積比3:7))とを用い、図1の評価セルを作成した。この得られた評価セルを実施例1の評価セルとした。なお、Li金属は厚さ0.4mm、直径18mmのLi板を用い、正極材の質量は3mg、電極面積は1.3cm2で評価した。
図1は評価セル10の説明図であり、図1(a)は評価セル10の組立前の断面図、図1(b)は評価セル10の組立後の断面図である。アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で評価セル10を作製した。評価セル10を組み立てるにあたり、まず、外周面にねじ溝が刻まれたステンレス製の円筒基体12の上面中央に設けられたキャビティ14に、負極16と、ポリエチレン製セパレータ18(微多孔性ポリエチレン膜、東燃化学(株)製)と、正極20とを、この順に、適量の非水系電解液をキャビティ14に注入しながら積層した。さらに、ポリプロピレン製の絶縁リング29を入れ、次いで絶縁性のリング22の穴に液密に固定された導電性の円柱24を正極20の上に配置し、導電性のコップ状の蓋26を円筒基体12にねじ込んだ。さらに、円柱24の上に絶縁用樹脂リング27を配置し、蓋26の上面中央に設けられた開口26aの内周面に刻まれたねじ溝に貫通孔25aを持つ加圧ボルト25をねじ込み、負極16とセパレータ18と正極20とを加圧密着させた。このようにして、評価セル10を作製した。なお、円柱24は、リング22の上面より下に位置し絶縁用樹脂リング27を介して蓋26と接しているため、蓋26と円柱24とは電気的に非接触な状態となっている。また、キャビティ14の周辺にはパッキン28が配置されているため、キャビティ14内に注入された電解液が外部に漏れることはない。この評価セル10では、蓋26と加圧ボルト25と円筒基体12とが負極16と一体化されて全体が負極側となり、円柱24が正極20と一体化されると共に負極16と絶縁されているため正極側となる。このようにして評価セルを作成した。
(電気化学特性の評価)
得られた評価セルの電気化学特性の評価を行った。電気化学特性の評価では、エネルギー効率(%)及び出力特性について検討した。まず、評価セルを25℃の恒温槽内に設置し、この温度で初期エージングとして、0.5Vから3.0Vまでの領域で0.5mA定電流充放電を2回行った。そのあと、充放電試験として1.0Vから3.0Vの領域で0.5mA定電流での充放電サイクル試験を行った。このとき、エネルギー効率E(%)は、放電時の電力量WD(W)、直前充電時の電力量WC(W)としたときに、E=(WD/WC)×100の式により求めた。また、初期エージングを行ったセルを用い、電流を0.1mA〜20mAまで変化させながら出力特性試験を行った。
得られた評価セルの電気化学特性の評価を行った。電気化学特性の評価では、エネルギー効率(%)及び出力特性について検討した。まず、評価セルを25℃の恒温槽内に設置し、この温度で初期エージングとして、0.5Vから3.0Vまでの領域で0.5mA定電流充放電を2回行った。そのあと、充放電試験として1.0Vから3.0Vの領域で0.5mA定電流での充放電サイクル試験を行った。このとき、エネルギー効率E(%)は、放電時の電力量WD(W)、直前充電時の電力量WC(W)としたときに、E=(WD/WC)×100の式により求めた。また、初期エージングを行ったセルを用い、電流を0.1mA〜20mAまで変化させながら出力特性試験を行った。
[実施例2〜4]
CuS量を21mg、58mg、117mgにした以外は、実施例1と同様の処理を施し、得られた黒色粉末をそれぞれ、実施例2(PANS−CuS0.19)、実施例3(PANS−CuS0.51)、実施例4(PANS−CuS1.0)の活物質とした。これら実施例2〜4の活物質を用いて実施例1と同様に作製したものを、それぞれ実施例2〜4の評価セルとした。評価は実施例1と同様に行った。
CuS量を21mg、58mg、117mgにした以外は、実施例1と同様の処理を施し、得られた黒色粉末をそれぞれ、実施例2(PANS−CuS0.19)、実施例3(PANS−CuS0.51)、実施例4(PANS−CuS1.0)の活物質とした。これら実施例2〜4の活物質を用いて実施例1と同様に作製したものを、それぞれ実施例2〜4の評価セルとした。評価は実施例1と同様に行った。
[実施例5]
PANSの代わりとしてポリアクリロニトリルを1g、硫黄を4g、硫化銅CuSを0.564gを混合した以外は、実施例1と同様の処理を行い、得られたものを実施例5(PAN−CuS)の活物質とした。この実施例5は、PANSを経ることなくPANS−CuSを直接合成したものである。この実施例5の活物質を用いて実施例1と同様に作製したものを実施例5の評価セルとした。
PANSの代わりとしてポリアクリロニトリルを1g、硫黄を4g、硫化銅CuSを0.564gを混合した以外は、実施例1と同様の処理を行い、得られたものを実施例5(PAN−CuS)の活物質とした。この実施例5は、PANSを経ることなくPANS−CuSを直接合成したものである。この実施例5の活物質を用いて実施例1と同様に作製したものを実施例5の評価セルとした。
[実施例6]
CuSの代わりにAg2Sを151mg用いた以外は実施例1と同じ処理を行い、得られたものを実施例6(PANS−Ag2S)の活物質とした。この実施例6の活物質を用いて実施例1と同様に作製したものを実施例6の評価セルとした。
CuSの代わりにAg2Sを151mg用いた以外は実施例1と同じ処理を行い、得られたものを実施例6(PANS−Ag2S)の活物質とした。この実施例6の活物質を用いて実施例1と同様に作製したものを実施例6の評価セルとした。
[実施例7]
ポリアクリロニトリルの代わりにアントラセンを用い、ANS(硫黄濃度59質量部)を得た。このANSを用いると共に、CuSを85mg用いた以外は、実施例1と同様の処理を行い、得られたものを実施例7(ANS−CuS0.49)とした。
ポリアクリロニトリルの代わりにアントラセンを用い、ANS(硫黄濃度59質量部)を得た。このANSを用いると共に、CuSを85mg用いた以外は、実施例1と同様の処理を行い、得られたものを実施例7(ANS−CuS0.49)とした。
[比較例1〜4]
PANS−CuS0.37の代わりにPANS、ANS、CuSをそれぞれ比較例1〜3の活物質とした。また、実施例1と同じ混合比のPANSとCuSを加熱することなく混合したものを比較例4の活物質とした。この比較例1〜4の活物質を用いて実施例1と同様に作製したものを比較例1〜4の評価セルとした。
PANS−CuS0.37の代わりにPANS、ANS、CuSをそれぞれ比較例1〜3の活物質とした。また、実施例1と同じ混合比のPANSとCuSを加熱することなく混合したものを比較例4の活物質とした。この比較例1〜4の活物質を用いて実施例1と同様に作製したものを比較例1〜4の評価セルとした。
[比較例5]
CuSの代わりにFeSを54mg用いた以外は実施例1と同じ処理を行い、得られたものを比較例5(PANS+FeS)の活物質とした。この比較例5の活物質を用いて実施例1と同様に作製したものを比較例5の評価セルとした。
CuSの代わりにFeSを54mg用いた以外は実施例1と同じ処理を行い、得られたものを比較例5(PANS+FeS)の活物質とした。この比較例5の活物質を用いて実施例1と同様に作製したものを比較例5の評価セルとした。
表2には、実施例1〜4,6,7及び比較例5における、焼成後の実測質量減少率(焼成後/仕込%)、金属硫化物の硫黄分がすべて硫黄−炭素骨格化合物の硫黄と置換した場合の質量減少率を示した。なお、表中の組成は、金属硫化物中の硫黄の全量が、硫化−炭素骨格化合物の硫黄に置換したときの元素比(金属/硫黄−炭素骨格化合物中の硫黄)を表す。表2に示すように、比較例5のFeSを除き、すべてのもので焼成後に質量減少がおき、金属硫化物の硫黄と硫黄−炭素骨格化合物の硫黄とが置換されていることがわかる。特に、CuSを複合化した場合の減少率は大きく、全量置換にほぼ一致し、効率的な複合化が起きているものと推察される。
図2は、実施例1〜4、比較例1の電流密度とエネルギー効率との関係の測定結果である。図3は、実施例1〜4、比較例1の電流密度と放電容量との関係の測定結果である。この図2、3は、PANS−CuSのCuS仕込組成を変えた試料の検討結果である。なお、図3では、電流0.1mAで放電した際の放電容量を値1として規格化した結果を示した。図2、3に示すように、硫黄−炭素骨格化合物(PANS)にCuSを結合させることによって、3A/g前後の比較的大電流におけるエネルギー効率、および放電容量が向上していることがわかった。特に、実施例1のPANS−CuS0.37が良好な結果であった。ここで、結合させるCuS量が少なすぎると導電性向上の効果が得られにくく、CuS量が多すぎるとCuSの影響が強くなり容量低下することが考えられた。このため、CuS量には最適値があると考えられ、炭素骨格に結合した硫黄に対する金属の元素比は、0.1以上1.0以下の範囲、より好ましくは0.3以上0.5以下がより好ましい組成であると。推察された。
図4は、実施例1,5、比較例1、4の電流密度とエネルギー効率との関係図であり、図5は、実施例1,5、比較例1、4の電流密度と放電容量との関係図である。実施例5と実施例1とは、よく似た挙動を示しており、活物質の作製方法は、原料ポリマーと金属硫化物と硫黄とを混合加熱焼成してもよいし、硫黄−炭素骨格化合物(例えばPANS)の作製後に金属硫化物と複合化させてもよいことがわかった。また、PANSとCuSとを単に混ぜただけの比較例4では、比較例1よりは若干特性向上が見られるが、同じ元素比のCuが入っているのもかかわらず、実施例1,5に比べ、特性向上は限定的であった。このことから、加熱処理により、硫化銅の銅と炭素骨格に結合した硫黄とを結合させることが効果的であることがわかった。
図6は、硫化銀、硫化鉄を用いた実施例6、比較例1、5の電流密度と放電容量との関係図である。硫化鉄を用いた比較例5は効果がないのに対し、硫化銀を用いた実施例6では、高電流時の容量が高いことがわかった。表2に示すように、比較例5では焼成後の質量変化がない。即ち、硫化鉄の硫黄と硫黄−炭素骨格化合物中の硫黄とが置換しておらず、硫化鉄が炭素骨格に結合していないものと推察された。したがって、金属と硫黄−炭素骨格化合物中の硫黄とが結合した状態が、発電特性の向上に必要であるものと推察された。
比較例3は、硫黄−炭素骨格がなく硫化銅のみを活物質にした正極材を用いた評価セルであり、これを用いて電池特性を評価したが、出力特性を評価するまでもなく、わずか5サイクル目で初期容量の32%、10サイクル目で初期容量の5%以下の容量に低下した。このことからも、金属と硫黄−炭素骨格化合物中の硫黄とが結合した状態が、発電特性の向上に必要であるものと推察された。また、別の見方をすれば、リチウムイオン電池で良好な電解液として知られる炭酸エステル系の溶媒を硫化金属系の電池に用いることはできないが、金属と硫黄−炭素骨格化合物中の硫黄とが結合した状態とすることにより、炭酸エステル系の溶媒を含む電解液を有効に用いることができるといえる。
図7は、実施例7、比較例2の電流密度とエネルギー効率との関係図であり、図8は、実施例7、比較例2の電流密度と放電容量との関係図である。この結果から、炭素骨格がANSに変わっても、金属と、硫黄−炭素骨格化合物中の硫黄とが結合した構造を有すれば、エネルギー効率向上効果や大電流時の容量増大が発現することがわかった。
10 評価セル、12 円筒基体、14 キャビティ、16 負極、18 セパレータ、20 正極、22 リング、24 円柱、25 加圧ボルト、25a 貫通孔、26 蓋、26a 開口、27 絶縁用樹脂リング、28 パッキン、29 絶縁リング。
Claims (5)
- 蓄電デバイスに用いられる活物質であって、
硫黄が結合した炭素骨格と、金属と硫黄とが結合した硫化金属構造と、を有しており、前記炭素骨格に結合した硫黄と前記金属とが結合した炭素−硫黄−金属構造を有する、
活物質。 - 前記炭素骨格は、多環芳香族構造を有している、請求項1に記載の活物質。
- 前記金属は、Cu及びAgのうち少なくとも1以上である、請求項1又は2に記載の活物質。
- 前記炭素骨格に結合した硫黄に対する前記金属の元素比が0.1以上1.0以下の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の活物質。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の活物質を電極に備えた、蓄電デバイス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012072756A JP2013206645A (ja) | 2012-03-28 | 2012-03-28 | 活物質及び蓄電デバイス |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017041434A (ja) * | 2015-06-05 | 2017-02-23 | ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングRobert Bosch Gmbh | リチウム硫黄セル用のカソード材料 |
US10033046B2 (en) * | 2016-10-31 | 2018-07-24 | Nissan North America, Inc. | Transition metal containing nitrogen-doped carbon support structure for sulfur active material as a cathode for a lithium-sulfur battery |
-
2012
- 2012-03-28 JP JP2012072756A patent/JP2013206645A/ja active Pending
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