JP2011026620A - ポリプロピレン及び該ポリプロピレンの電気材料への応用 - Google Patents

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Abstract

【課題】高いレベルの電気絶縁特性を、生産ロット間あるいはロット内での変動幅を実質的にゼロに抑えたポリプロピレンを提供すること。
【解決手段】メルトフローレートが0.1〜30g/10分、13C-NMRスペクトルより算出したメソペンタッド分率が0.90〜0.99、焼成残分がポリプロピレンに対し50重量ppm以下、焼成残分から検出されるチタニウム分および鉄分がポリプロピレンに対し各々1重量ppm以下および0.1重量ppm以下であり、しかも塩素含量がポリプロピレンに対し5重量ppm以下であるポリプロピレン。該ポリプロピレンはフィルムとした場合に、優れた電気絶縁性を発現し、且つ粗面化されるためβ晶核剤などの添加剤を併用することなくキャパシターフィルムに好適に用いられる。また、電線被覆用フィルムや電子材料搬送器具用の材料として有用である。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気材料、特に高度な電気絶縁性が要求される用途に好適に使用されるポリプロピレン、このポリプロピレンから得られるポリプロピレンシート、該シートを延伸成形してなる延伸フィルム、無延伸フィルム並びに前記ポリプロピレンを射出成形してなる電子材料搬送器具に関する。
その優れた電気絶縁特性によって、ポリプロピレンは多種多様な状態で広範囲な電気材料用原料として利用されてきた。例えば、触媒起因の不純物が極めて少ない高純度ポリプロピレンは20μm以下、最近では5μm以下の薄いフィルムとして高性能コンデンサーなどに応用されている。(例えば、特開平6-236709号公報)
しかし、現在使用されているポリプロピレンの電気絶縁特性は全ての用途に万能であるとは言い難く、更に高い絶縁特性を有するポリプロピレンを安定して提供できれば産業上極めて有益であるといえる。この課題を克服する一つの手段として、例えば、特開昭62-113548号公報、特開平2-150443号公報等に開示されているように残留触媒残渣や塩素分を出来るだけ少なくするといった手法を用いることによってポリプロピレンの高純度化検討が盛んに行われてきた。これらの方法によってポリプロピレンの電気絶縁特性が著しく改良されていることを本願発明者も認知するところであるが、このようなポリプロピレンが必ずしも一定レベルの電気絶縁特性を再現性よく与えない場合がある、すなわち電気絶縁特性がポリプロピレン製品のロット間で大きく変動したり、あるいは同一ロットを成型加工して電気材料を製造した場合であっても、電気材料のサンプリング箇所によって電気絶縁特性が大きく変動する場合があることを同時に認めている。ポリプロピレンから電気材料用成形体を工業規模で連続的に製造する場合、その生産スピード、あるいは製造コストの視点からは、原料ポリプロピレンの事前品質管理頻度に制限が加えられることは当然なことである。可能な限り少ない事前品質チェックによって最大限の電気材料用ポリプロピレンを安定的に取得することができれば、ポリプロピレン産業発展への貢献は極めて甚大であるといえる。
特開平6-236709号公報 特開昭62-113548号公報 特開平2-150443号公報
本発明者らは、ポリプロピレンから得られる成形体の電気特性が何故製品ロット間で、あるいはロット内においてさえもサンプリング箇所(サンプリング箇所とは、例えば電気材料が延伸フィルムである場合、測定用に一部切り抜くフィルムの場所をいう。)によって変動する場合があるのかを検討し、また、このような変動を解消するための方策を、原料であるポリプロピレンにさかのぼって鋭意検討し本発明に到達した。
すなわち、下記要件[1]〜[3]を同時に満たす電気材料用ポリプロピレンを用いると前記の課題が解決され、高いレベルの電気絶縁特性を、生産ロット間あるいはロット内での変動幅を実質的にゼロに抑えた電気材料用ポリプロピレンが得られることを見出し本発明に到達したのである。
[1] メルトフローレートが0.1〜30g/10分である。
[2] 13C-NMRスペクトルより算出したメソペンタッド分率が0.90〜0.99である。
[3] 焼成残分がポリプロピレンに対し50重量ppm以下、焼成残分から検出されるチタニウム分および鉄分がポリプロピレンに対し各々1重量ppm以下および0.1重量ppm以下であり、しかも塩素含量がポリプロピレンに対し5重量ppm以下である。
本発明のポリプロピレン(R)の好ましい形態は、上記要件[1]、[2]および[3]に加えて下記要件[4]を満たすポリプロピレンであり、更に好ましい形態は、要件[1]〜[4]に加えて下記要件[5]をも満たすポリプロピレンである。
[4] クロス分別クロマトグラフィー法[以下、"CFC法"と略記する場合がある]において、110℃まで測定した溶出積分量が30重量%以下、100℃まで測定した溶出積分量が7.0重量%以下である。
[5] GPCより求めたMz/Mnが15以上、Mw/Mnが5以上である。
本発明は、前記ポリプロピレン(R)を加熱溶融して押出し、徐冷して得られるβ晶分率が0.15以上のポリプロピレンシート(S)に関する。
本発明は、更に前記ポリプロピレンシート(S)を延伸して得られる延伸フィルム(F)に関する。延伸フィルム(F)の好ましい態様はキャパシターフィルム(F')である。
また、本発明は前記ポリプロピレン(R)を加熱溶融して押出して得られる無延伸フィルム(F")に関する。
さらに、本発明は前記ポリプロピレン(R)を射出成形してなる電子材料搬送器具(A)に関する。
高いレベルの電気絶縁特性を、生産ロット間あるいはロット内での変動幅を実質的にゼロに抑えた電気材料用ポリプロピレンが提供される。
本発明のポリプロピレン(R)は、下記要件[1]〜[3]を同時に満たす電気材料用ポリプロピレンである。
[1] メルトフローレートが0.1〜30g/10分である。
[2] 13C-NMRスペクトルより算出したメソペンタッド分率が0.90〜0.99である。
[3] 焼成残分がポリプロピレンに対し50重量ppm以下、焼成残分から検出されるチタニウム分および鉄分がポリプロピレンに対し各々1重量ppm以下および0.1重量ppm以下であり、しかも塩素含量がポリプロピレンに対し5重量ppm以下である。
本発明のポリプロピレン(R)は結晶性のポリプロピレンであり、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと、エチレンもしくは炭素数が4〜20のα-オレフィンとの共重合体である。(以下の説明では、プロピレン、エチレン、炭素数が4〜20のα-オレフィンを総称して「モノマー」と呼称する場合がある。) 上記炭素数が4〜20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらの中ではエチレンまたは炭素数が4〜10のα-オレフィンが好ましい。これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、またブロック共重合体を形成してもよい。これらの、エチレン又はα-オレフィンから導かれる構成単位の総含有量は、ポリプロピレン中に5 mol%以下、好ましくは2 mol%以下である。
本発明のポリプロピレン(R)の、MFR(ASTM D-1238、230℃、荷量2.16kg)は0.1〜30g/10分である。特に0.5〜10g/10分、更に好ましくは1〜8g/10分、特に好ましくは1.5〜5.0g/10分の範囲にあると二軸延伸フィルムの用途に好ましい。またMFRが10〜30g/10分の範囲にあると電子材料搬送器具等高強度成形体の射出成形用に好ましい。
本発明のポリプロピレンの、13C-NMRスペクトルにおけるPmmmm、Pwの吸収強度から下記式(Eq-1)により求められるメソペンタッド分率[M5]の値が、0.90〜0.99、好ましくは0.920〜0.990、更に好ましくは0.932〜0.990、の範囲にある。
Figure 2011026620
(上記式中、[Pmmmm]はプロピレン単位が5単位連続してイソタクチック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度を示し、[Pw]はプロピレン単位のメチル基に由来する吸収強度を示す。)
このようなメソペンタッド分率、[M5]の値が0.90〜0.99、特に0.950以上の場合の高剛性ポリプロピレンから得られるシートや延伸フィルムは、絶縁性能に優れるという特徴に加えて、フィルムの機械物性や寸法安定性に優れるという特徴を併せ持つ。
[M5]が0.90未満では機械物性および電気絶縁性が十分でないことが多く、0.99を超えると延伸成形が難しいという問題が発生することがある。
本発明のポリプロピレンの焼成残分は、ポリプロピレンに対し50重量ppm以下、好ましくは30重量ppm以下であることが望ましい。また、焼成残分(以下の説明では「灰分」と呼ぶ場合がある。)から検出されるチタニウム分がポリプロピレンに対し1重量ppm以下、好ましくは0.5重量ppm以下である。更に焼成残分から検出される鉄分がポリプロピレンに対し、0.1重量ppm以下、好ましくは0.05重量ppm以下である。しかも焼成残分から検出される塩素分はポリプロピレンに対し5重量ppm以下、好ましくは3重量ppm以下であるという特徴を持つ。上記したポリプロピレン中の不純物の内、焼成残分、チタニウム分および塩素分については、これら不純物量が少なければ少ないほど、該ポリプロピレンから得られる電気材料の絶縁特性が向上することは、本願出願人によって既に開示されている特開平6-236709号公報に記載した通りである。本発明において注目すべきは、上記不純物のうち鉄分がポリプロピレンの製造ロット間又は同一製造ロット内での電気絶縁特性が変動する原因物質であることが本発明によって初めて明らかにされたことである。これまでも、10μm以下の薄肉フィルムにおいて広い面積のフィルムを調製しようとする場合に、同一ロット内の部分的欠陥が目立つことがあったが、本発明のポリプロピレンによって、このような部分的欠陥でさえも完全に克服できることが明らかになったのである。(なお、本発明において「ポリプロピレンの製造ロット」とは、一定の条件下で連続生産またはバッチ生産された生産単位としての同一製品の集合体をいう。)
後述する本願実施例および比較例から明らかなように、同一の焼成残分、チタニウム、および塩素含有量にもかかわらず鉄分濃度を0.1重量ppm以下好ましくは0.05重量ppm以下に維持することによってポリプロピレンの製造ロット間またはロット内で電気絶縁性の大きな変動が完全に抑制されることは明瞭であるが、何故このような微小量の変動が品質変動につながるかを解明するためには鉄分の科学的な形態解析を含めて更なる解析が必要である。
このようなポリプロピレンは、優れた電気絶縁性を安定的に再現性よく提供するため、キャパシターフィルム用原反シートあるいはキャパシターフィルム用の原料樹脂として好適に用いられる。
本発明のポリプロピレンが好んで使用される延伸フィルム用途、特に粗面化フィルムにおいては、Mw/Mnが5以上、好ましくは6以上、Mz/Mnが15以上、好ましくは20以上のポリプロピレンが使用される。このような広分子量分布を示すポリプロピレンの成形性は、押出成形体を徐冷した場合にβ晶(本発明のポリプリピレンを用いたβ晶分率は後述するように0.15以上である。)を多く生成することから、特定の温度範囲で延伸することによって粗面化フィルムを得ることができる。このような粗面化フィルムは、フィルム表面に多数の凹凸が生起するので、シリカのような無機物やβ晶核剤を配合しなくても、フィルムのブロッキングを防止することができ、操業性および取り扱いが極めて優れる。なお、狭分子量分布を与えるメタロセン触媒を使用して、例えば水素濃度を制御したり、多段重合を採用したり、或いは広分子量分布ポリプロピレンをブレンドする等の手法を併用することによってMw/Mnを5以上、Mz/Mnを15以上としてもよい。すなわち、本発明のポリプロピレン(R)は、本願特許請求の範囲に記載された要件を満たす限り、その製造法には全く制限を受けない。
しかしながら、ポリプロピレン中の焼成残分量を出来るだけ少なくし、しかもチタン分や塩素分も同時に低減するという視点から、高性能の塩化マグネシウム担持チタン系触媒あるいは、ジルコニウム、チタンなどの第4属遷移金属メタロセン化合物と有機金属化合物、有機アルミニウム化合物と組み合わせた触媒系を用いて重合を行うことが好ましい。
以上述べたような重合条件下で製造されたポリプロピレンは、通常はポリプロピレン中に残存する触媒を分解、あるいは除去する等の後処理が加えられて本発明のポリプロピレンにすることができる。後処理方法としては、本願出願人によって特許出願され既に公開されている特開平6-236709号公報に記載した方法をそのまま採用できる。すなわち、アルコール、グリコールなどで触媒残渣を溶解し炭化水素化合物で洗浄あるいは水で洗浄した後、さらにエポキシ化合物と熱処理するなどの方法によって製造することができるのである。
本発明のポリプロピレン(R)とするためには、焼成残分、チタニウム分および塩素分以外に鉄分量も同時に低減する必要がある。ポリプロピレン中の鉄分量は、前記後処理方法によって、ポリプロピレン当たり1重量ppmの濃度までは焼成残分量に比例して低減化できるが、1重量ppmに満たない領域の濃残存鉄分量を制御するためには、触媒調製工程ないし重合工程の全重合系内に鉄または鉄から誘導される化合物が混入しないような厳密な工程管理を行うことによって0.1重量ppm以下とすることができる。例えば、鉄成分を含む重合器材質からの混入に十分な注意を払うこと、鉄材質からなる粉砕機や粉砕具の使用を可能な限り控えること、鉄成分を含む可能性の高い樹脂溶液や重合触媒成分溶液においては最下層部の溶液部分の使用を控えること等である。もちろん粗ポリプロピレンを、必要に応じて溶媒共存下で融点以上に加熱後溶融状態とし、金属焼結フィルターやセラミックフィルターを用いた精密ろ過等の物理的分離精製方法を使用して鉄分濃度を0.1重量ppm以下としてもよいが大量の成形体の生産には不向きであることは言うまでもない。
なお、本発明のポリプロピレンを乾燥処理することによって、揮発分(例えば約10gの試料を110℃±2℃に保持し1NL/分の窒素気流下で60分間処理した時の重量減少量)を100重量ppm以下、特に10重量ppm以下とするような工夫を加えることによって電子材料の搬送用の用途などにも好適なポリプロピレンとすることができる。
本発明のポリプロピレン(R)は、CFC法で110℃まで測定した溶出積分量が30%以下、好ましくは27%以下、さらに好ましくは25%以下である。また、CFC法で100℃まで測定した溶出積分量が7.0%以下、好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下である。この範囲にあると、フィルムのアンチブロッキング性、スリップ性、寸法安定性、高温下の剛性、外観、特にフィルムを長期に保管した場合のこれら特性が改善される。さらに、キャパシターフィルムとしての電気特性、特に破壊耐電圧が改善される。また、オイル含浸タイプのコンデンサー部品のオイルへの溶け出し量が減少し、電気特性の長期安定性に多大な寄与をすることが考えられる。
上記特性を有するポリプロピレン(R)は170〜280℃、好ましく190〜230℃で加熱溶融して押出し、空冷または、60℃以上、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは90〜110℃の温度に保持された冷却ロールで徐冷した場合に、得られたシートのβ晶分率が0.15以上、好ましくは0.17以上、さらに好ましくは0.18〜0.50となる。なお、このβ晶分率値はβ晶核剤を含まないポリプロピレンの値である。徐冷は、引張り速度0.2〜3m/分、冷却ロールによる冷却時間0.3〜4.5分で行い、冷却ロールを通したシートの厚さが0.1〜3mmとなるように行うのが望ましい。このようなβ晶分率が0.15以上のポリプロピレンであると、延伸した場合のフィルム表面に凹凸が生起するためアンチブロッキング性にも優れ、実用的なキャパシターフィルムとして十分に使用可能である。
前記したように、電気材料用フィルム用途に好適に用いられる本発明のポリプロピレンを製造するための触媒は特に限定される訳ではないが、効率的な生産を達成するために、通常は多段重合が採用される場合が多い。すなわち、プロピレンの重合を2段または3段で行ってもよく、また重合器数など装置上の制約がないのであれば4段以上の多段重合でポリプロピレン(R)を製造してもよく、段数を何ら制限するものではない。
本発明のポリプロピレンを原料として、フィルムなどの電気材料を成形する場合、本発明のポリプロピレンに、必要に応じて、その他の樹脂またはゴムなどを、本発明の目的を損なわない範囲内で添加してもよい。このようなその他の樹脂またはゴムとしては、たとえばポリエチレン、ポリブテン-1、ポリイソブテン、ポリペンテン-1、ポリメチルペンテン-1等のポリα-オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン-1共重合体、プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン・ブテン-1共重合体等のエチレンまたはα-オレフィン・α-オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα-オレフィン・α-オレフィン・ジエン単量体共重合体;スチレン・ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体・ジエン単量体ランダム共重合体;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体などのビニル単量体・ジエン単量体・ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン・ブタジエンランダム共重合体)などの水素化(ビニル単量体・ジエン単量体ランダム共重合体);水素化(スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)などの水素化(ビニル単量体・ジエン単量体・ビニル単量体ブロック共重合体)等があげられる。
他の重合体の添加量は、添加する樹脂の種類またはゴムの種類により異なり、前記のように本発明の目的を損なわない範囲であればよいが、通常ポリプロピレン100重量部に対して約5重量部以下であることが好ましい。
また本発明のポリプロピレンを原料としてシートやフィルムを成形する場合、本発明のポリプロピレンには、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属石鹸、塩酸吸収剤などの安定剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を本発明の目的を損なわない範囲内で添加してもよい。
本発明のポリプロピレンシートは前記ポリプロピレンを上記方法でシート状に成形したシートであり、β晶分率が0.15以上のシートである。シートの成形法はTダイまたはサーキュラーダイであってもよい。これらのシートの厚さは限定されないが、通常0.1〜3mm、好ましくは0.2〜1.5mmであるのが望ましい。本発明のポリプロピレンシートは必要に応じて更に延伸処理を行い、延伸フィルムを得ることができる。本発明のキャパシターフィルム用原反シートは延伸してキャパシターフィルムとして用いられる。延伸は、通常100℃〜融点の間の温度にフィルムを再加熱して、延伸ロールおよび/またはテンター式延伸、またチューブラー式延伸等の公知の方法で延伸することができる。延伸倍率は二軸延伸の場合は縦3〜7倍、横3〜11倍程度である。この延伸処理により、機械的強度、剛性が優れ、表面の凹凸の数が多く、粗面化されたフィルムを製造することができる。
本発明のポリプロピレンから得られるシートは電気的絶縁特性が優れているので、キャパシターフィルム用の原反シートとして優れている。それを延伸、好ましくは二軸延伸した場合、表面凹凸の数が多く、粗面化されているためアンチブロッキング効果が優れている。このように電気的絶縁特性に優れ、表面凹凸が多くアンチブロッキング効果に優れているフィルムはコンデンサー用のキャパシターフィルムとして好適に利用することができる。キャパシターフィルムの厚さは限定されないが、通常2〜100μm、好ましくは4〜50μmであるのが望ましい。
本発明のポリプロピレンの、延伸フィルム以外の電気材料用途として例えば高圧電線ケーブル用の絶縁フィルムが挙げられる。絶縁フィルムは絶縁紙に押出ラミネートするタイプが一般的であり、無延伸フィルムに相当する。本発明のポリプロピレンから得られる無延伸フィルムは電気的絶縁特性に優れる。
本発明のポリプロピレンの、延伸フィルム以外の電気材料用途として、電子材料搬送器具が挙げられる。具体的には、電気・電子機器に用いられる平板状の電子材料、特にプリント配線板やシャドウマスク、アパーチャグリル等の小径孔を多数有する電子材料を、吸着して搬送するための吸着搬送手段の一つである、静電吸着方式における静電吸着板である。本発明のポリプロピレンからなる静電吸着ユニットによれば、電子材料、特に小径孔を多数有するプリント配線板やシャドウマスクが確実に静電吸着され、また脱離させたい時に、任意に、また確実にタイミング良く脱離させることが出来る。従って本発明の静電吸着ユニットを用いれば、雰囲気温湿度、また静電吸着板や吸着搬送物の材質や表面状態等の要因によらず確実に脱離が出来る秀逸な効果をもたらす。
次に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。なお、実施例に記載した物性の測定方法は次の通りである。
[m1] メルトフローレート(MFR)
ASTM D-1238の方法により230℃、荷重2.16kgで測定した。シリンダーには特に窒素は導入せず、直接ペレットをシリンダーに投入し溶融させた。
[m2] Mw、MnおよびMz
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を使用して以下の条件で測定した。
測定装置:Waters社製150CVtype
サンプル濃度:7.5mg/4ml
カラム:昭和電工(株)製 Shodex AD-806ms
測定温度:135℃
溶媒:o-ジクロロベンゼン
ポリスチレン換算
[m3]多段重合における二段目以降の重合槽で生成した樹脂の極限粘度
下記計算式(Eq-2)により求めた。
Figure 2011026620
[m4] β晶分率
A. Turner Jones et al, Macromol. Chem., 75, 134(1964) に記載されている方法に従ってβ晶分率を求めた。すなわち、サンプルシートとしてはポリプロピレンを200℃で加熱溶融してTダイから押出し、95℃の温度に保持された1個の冷却ロールにより、引張り速度1.0m/分、冷却ロールによる冷却時間0.94分の条件で徐冷し、冷却ロールを通したシートの厚さが0.5mmのシートを用いた。このシートについて次の条件でX線回折を行い下記式(Eq-3)から算出した。
(X線回折)
測定装置:理学電機(株)製RINT2500
X線:Cu、K、50kV、300mA
Cuターゲット
ポイントフォーカス
透過法
試料回転法
散乱スリット:1 deg
受光スリット:0.3mm
走査モード:連続
スキャンスピード:2°/min
走査幅:2θ
Figure 2011026620
[上式(Eq-3)中、Hβ1はβ晶(2θ=16°のピーク)の結晶部の散乱に対応するピークの高さ(強度)、Hα1はα晶(110)の結晶部の散乱に対応するピークの高さ(強度)、Hα2はα晶(040)の結晶部の散乱に対応するピークの高さ(強度)、Hα3はα晶(130)の結晶部の散乱に対応するピークの高さ(強度)である。ただし、いずれの値も非晶部の散乱を差し引いた後のピーク高さである。]
[m5] フィッシュアイ(FE)分析
25mmΦのTダイ成形機で50μmのフィルムを製膜し、目視によりFEを観察した。FEの直径が200μm以上のものを目視でカウントし、単位面積当たりの個数として算出した。
[m6] 極限粘度[η]
135℃のテトラリン中で測定した。
[m7] 灰分量
ペレットをるつぼに入れ完全に燃焼させて、そのるつぼを電気炉内で800℃で2時間、灰化させた。るつぼに残った灰を計測し灰分(wtppm)を求めた。
[m8] 塩素含有量
ポリプロピレン0.8gを三菱化成社製燃焼装置でアルゴン/酸素気流下で、400〜900℃で燃焼した後、燃焼ガスを超純水で捕集し濃縮後の試料液を、日本ダイオネック(株)DIONEX-DX300型イオンクロマト測定装置を用いて、陰イオンカラムAS4A-SC(ダイオネッス社製)を用いて測定した。
[m9] 鉄分含有量
ポリプロピレン10gを精秤し、この試料を300℃で4時間、さらに800℃で4 時間処理し、灰化させた後、残留物を塩酸水溶液としてICP-MS分析(プラズマ誘導結合質量分析)した。
[m10] 溶出積分量
クロス分別クロマトグラフを用いて測定した。
機器:三菱油化(株) CFC T150A型
条件:GPCカラム Shodex AT-806MS
GPCカラム温度 135℃
溶離液 o-ジクロロベンゼン
流速 1 ml/min
溶出区分 0から135℃で,5℃きざみ。
100℃までの溶出量の総量、および110℃までの溶出量の総量をそれぞれの積分量として表した。
[m11] ヘイズ(HAZE)
延伸フィルムにつき、JISK7105に準じて求めた。
[m12] 絶縁破壊電圧(BDV)
80℃においてJIS-2330に準拠して測定した。また、同一フィルムについて任意の位置にある測定用試験片を20枚採取し、これらについてBDV測定を行い、BDV値の偏差(σ)を次式(Eq-4)に従い算出した。BDVのばらつきはσを100で割った百分率で表示した。
σ= (最大BDV-最小BDV)/最大BDV -------- (Eq-4)
[m13] メソペンタッド分率([M 5 ])
13C-NMRを用いて測定した。
機器:日本電子製 JNM-LA400型
溶媒:重水素化ベンゼン/1,2,4-トリクロロベンゼン混合
測定条件:パルス繰り返し時間は5秒。積算回数は20000回。測定温度は125℃。
計算方法はメチル炭素領域の全ピーク面積に対するPmmmmのピークの面積分率(前記Eq-1参照)で行った。
[実施例1]
(1) ポリプロピレンの製造
[固体状チタン触媒成分(a)の調製]
内容積10リットルのガラス製容器に、無水塩化マグネシウム(フレーク状にしたものをさらに粉砕したもの)952g、デカン4420mlおよび2-エチルヘキシルアルコール3906gを、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に無水フタル酸213gを添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合を行って無水フタル酸を溶解させた。
このようにして得られた均一溶液を23℃まで冷却し10時間放置した後、この均一溶液から液面から10cmの位置から上澄みを50ml/分で750mlを抜き出した。別の10リットルの容器の-20℃の四塩化チタン2000ml中に上記塩化マグネシウムの溶液を1時間にわたって滴下した。滴下後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)52.2gを添加し、これより2時間攪拌しながら同温度に保持した。次いで熱時濾過にて固体部を採取し、この固体部を2750mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。
加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。上記のように調製された固体状チタン触媒成分(a)はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分(a)は、チタンを3重量%、塩素を58重量%、マグネシウムを18重量%およびDIBPを21重量%の量で含有していた。
[予備重合触媒の調製]
10リットルの攪拌機付きオートクレーブ中に、窒素雰囲気下、精製ヘプタン7 リットル、トルエチルアルミニウム0.16mol、および上記で得られた固体状チタン触媒成分(a)をチタン原子換算で0.053mol装入した後、プロピレンを900g導入し、温度5℃以下に保ちながら、1時間反応させた。
重合終了後、反応器内を窒素で置換し、上澄液の除去および精製ヘプタンによる洗浄を3回行った。得られた予備重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して触媒供給槽に移し、固体状チタン触媒成分(a)濃度で1g/Lとなるよう、精製ヘプタンにより調整を行った。この予備重合触媒は固体状チタン触媒成分(a)1g当りポリプロピレンを10g含んでいた。
[重合]
内容積140リットルの攪拌機付き重合槽1に液化プロピレンを20リットル装入し、この液位を保ちながら、液化プロピレン80kg/hr、予備重合触媒18g/hr、トリエチルアルミニウム47mmol/hr、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン9mmol/hrを連続的に供給し、温度73℃で重合した。また水素は重合槽1には供給しなかった。この重合槽1で生成した重合体の生成量比(重合体全体に占める重合槽1の生成量の割合)は表1に示した。得られた重合体を内容積500リットルの攪拌機付き重合槽2にスラリー状のまま送液した。
なお得られたポリマーの一部をサンプリングし、極限粘度を測定したところ6.0dl/gであった。
重合槽2では液位300リットルを保ちながら、新たに液化プロピレン70kg/hrを連続的に供給し、温度71℃で重合した。また、水素も重合槽2の気相部の濃度を0.4mol%に保つように連続的に供給した。重合槽2で生成した重合体の生成量比(重合体全体に占める重合槽2の生成量の割合)は表1に示した。得られた重合体を内容積500リットルの攪拌機付き重合槽3にスラリー状のまま送液した。なお得られたポリマーの一部をサンプリングし、極限粘度を測定したところ1.9 dl/gであった。この結果から、重合槽2で生成している重合体の極限粘度は計算により1.8 dl/gであると判断した。
重合槽3では液位300リットルを保ちながら、新たに液化プロピレン56kg/hrを連続的に供給し、温度70℃で重合した。また水素も重合槽2と同様に、気相部の濃度を0.4mol%に保つように連続的に供給した。得られたスラリーは10mlのメタノールを加え失活後、液体プロピレンによる洗浄槽に送液後、攪拌・静止・上澄の除去・液状プロピレンの追加(1回当たり100リットル)と言う操作を7回繰り返してポリプロピレンパウダーを洗浄した。
重合槽3で生成した重合体の生成量比(重合体全体に占める重合槽3の生成量の割合)は表1に示した。その後、プロピレンを蒸発させてポリプロピレンパウダーを得た。このサンプルの極限粘度を測定したところ1.8 dl/gであった。この結果から、重合槽3で生成しているポリプロピレンの極限粘度は計算により1.8 dl/gであると判断した。
[ペレット化]
得られたポリプロピレン100重量部に対して、酸化防止剤として3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエンを0.1重量部、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム 0.01重量部を配合し、単軸押出機を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練してポリプロピレンのペレット化を行った。造粒機は(株)ジーエムエンジニアリング製GMZ50-32(L/D=32、単軸)を使用した。得られたペレットのクロス分別の積分量を分析したところ、110℃までの溶出量の総量、つまり積分量は21.3%、100℃までの溶出量の総量、つまり積分量は3.5%であった。
得られたペレットについて焼成残分中のチタニウム分を測定したところ、ポリプロピレンに対しチタニウム分は0.5重量ppmであった。その他の物性測定値を表1および表2にまとめた。
(2) シート成形
上記で得られたポリプロピレンのペレットを50mmΦ押出機で200℃に溶融し、Tダイから押出し、95℃の温度に保持された1個の冷却ロールにより、引張り速度1.0m/分、チルロールによる冷却時間0.94分の条件で徐冷し、厚さが0.5mmのシートを得た。シート成形条件の詳細は下記の通りである。このチルロールを通したシートをカットし、X線回析装置を用いて前記方法でβ晶分率を求めた。結果を表2に示す。
成形装置:ナカタニ機械(株)製VSK型50
成形温度:シリンダー、ダイス温度=200℃
ダイスリップ幅:600mm
チルロール温度:95℃
エアーギャップ:60mm
引取速度:1.0m/min
チルロール径:450mm
(3) フィルム成形
上記(2)で得られたシートを85mm×85mmにカットし、次の条件で二軸延伸し厚さ14μmの二軸延伸フィルムを得た。フィルムの物性を表3に示した。
延伸装置:ブルックナー社製KAROIV
予熱温度:152℃
予熱時間:60秒
延伸倍率:5×7倍(MD方向5倍、TD方向7倍)の逐次二軸延伸
延伸速度:10m/分
[実施例2]
重合を次のように変更した以外は実施例1と同様に行った。
[重合]
内容積140 リットルの攪拌機付き重合槽1に液化プロピレン 100リットルを装入し、この液位を保ちながら、液化プロピレン105 kg/hr、実施例1で得られた予備重合触媒18 g/hr、トリエチルアルミニウム 47mmol/hr、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン9 mmol/hrを連続的に供給し、温度73℃で重合した。また水素も重合槽1の気相部の濃度を0.01 mol%に保つように連続的に供給した。この重合槽1で生成した重合体の生成量比は表1に示した。得られた重合体を内容積500リットルの攪拌機付き重合槽2にスラリー状のまま送液した。なお得られたポリマーの一部をサンプリングし、極限粘度を測定したところ3.9 dl/gであった。
重合槽2では液位300リットルを保ちながら、新たに液化プロピレン140kg/hrを連続的に供給し、温度71℃で重合した。また、水素も重合槽2の気相部の濃度を0.57 mol%に保つように連続的に供給した。重合槽2で生成した重合体の生成量比は表1に示した。得られた重合体を内容積500リットルの攪拌機付き重合槽3にスラリー状のまま送液した。なお得られたポリマーの一部をサンプリングし、極限粘度を測定したところ2.0 dl/gであった。この結果から、重合槽2で生成している重合体の極限粘度は計算により1.5 dl/gであると判断した。
重合槽3では液位300リットルを保ちながら、新たに液化プロピレン55 kg/hrを連続的に供給し、温度70℃で重合した。また水素も重合槽2と同様に、気相部の濃度を0.57 mol%に保つように連続的に供給した。得られたスラリーは失活後、液体プロピレンによる洗浄槽に送液後、ポリプロピレンパウダーを洗浄した。重合槽3で生成した重合体の生成量比は表1に示した。その後、プロピレンを蒸発させてポリプロピレンパウダーを得た。このサンプルの極限粘度を測定したところ1.8 dl/gであった。この結果から、重合槽3で生成しているポリプロピレンの極限粘度は計算により1.5 dl/gであると判断した。
[ペレット化]
得られたポリプロピレンを用いて、実施例1と同様にしてポリプロピレンペレットを得た。得られたペレットについて測定した物性を表1および表2にまとめる。得られたペレットのクロス分別の積分量を分析したところ、110℃までの溶出量の総量、つまり積分量は20.7%、100℃までの溶出量の総量、つまり積分量は3.4%であった。
また、上記で得られたポリプロピレンペレットから実施例1と同様の方法で得られるシートのβ晶分率、および二軸延伸後のフィルム物性を表3に示す。
[実施例3]
重合を次のように変更した以外は実施例1と同様に行った。
[重合]
内容積140 リットルの攪拌機付き重合槽1に液化プロピレン 100リットルを装入し、この液位を保ちながら、液化プロピレン83 kg/hr、実施例1で得られた予備重合触媒18 g/hr、トリエチルアルミニウム 47mmol/hr、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン9 mmol/hrを連続的に供給し、温度73℃で重合した。また水素も重合槽1の気相部の濃度を0.30 mol%に保つように連続的に供給した。この重合槽1で生成した重合体の生成量比は表1に示した。得られた重合体を内容積500リットルの攪拌機付き重合槽2にスラリー状のまま送液した。なお得られたポリマーの一部をサンプリングし、極限粘度を測定したところ2.1 dl/gであった。
重合槽2では液位300リットルを保ちながら、新たに液化プロピレン217kg/hrを連続的に供給し、温度71℃で重合した。また、水素も重合槽2の気相部の濃度を0.30 mol%に保つように連続的に供給した。重合槽2で生成した重合体の生成量比は表1に示した。得られた重合体を内容積500リットルの攪拌機付き重合槽3にスラリー状のまま送液した。なお得られたポリマーの一部をサンプリングし、極限粘度を測定したところ2.1 dl/gであった。この結果から、重合槽2で生成している重合体の極限粘度は計算により2.1 dl/gであると判断した。
重合槽3では液位300リットルを保ちながら、新たに液化プロピレン75 kg/hrを連続的に供給し、温度70℃で重合した。また水素も重合槽2と同様に、気相部の濃度を0.30 mol%に保つように連続的に供給した。得られたスラリーは失活後、液体プロピレンによる洗浄槽に送液後、ポリプロピレンパウダーを洗浄した。重合槽3で生成した重合体の生成量比は表1に示した。その後、プロピレンを蒸発させてポリプロピレンパウダーを得た。このサンプルの極限粘度を測定したところ2.1 dl/gであった。この結果から、重合槽3で生成しているポリプロピレンの極限粘度は計算により2.1 dl/gであると判断した。
[ペレット化]
得られたポリプロピレンを用いて、実施例1と同様にしてポリプロピレンペレットを得た。得られたペレットについて測定した物性を表1および表2にまとめる。得られたペレットのクロス分別の積分量を分析したところ、110℃までの溶出量の総量、つまり積分量は22.5%、 100℃までの溶出量の総量、つまり積分量は3.6%であった。
また、上記で得られたポリプロピレンペレットから実施例1と同様の方法で得られるシートのβ晶分率、および二軸延伸後のフィルム物性を表3に示す。
[実施例4]
重合を次のように変更した以外は実施例1と同様に行った。結果を表1〜表3に示す。
[重合]
内容積140リットルの攪拌機付き重合槽1に液化プロピレン100リットルを装入し、この液位を保ちながら、液化プロピレン64kg/hr、実施例1で得られた予備重合触媒18g/hr、トリエチルアルミニウム47mmol/hr、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン9mmol/hrを連続的に供給し、温度73℃で重合した。また水素は重合槽1には供給しなかった。この重合槽1で生成した重合体の生成量比は表1に示した。得られた重合体を内容積500リットルの攪拌機付き重合槽2にスラリー状のまま送液した。なお得られたポリマーの一部をサンプリングし、極限粘度を測定したところ6.0dl/gであった。
重合槽2では液位300リットルを保ちながら、新たに液化プロピレン86kg/hrを連続的に供給し、温度71℃で重合した。また、水素も重合槽2の気相部の濃度を0.55mol%に保つように連続的に供給した。重合槽2で生成した重合体の生成量比は表1に示した。得られた重合体を内容積500リットルの攪拌機付き重合槽3にスラリー状のまま送液した。なお得られたポリマーの一部をサンプリングし、極限粘度を測定したところ2.0dl/gであった。この結果から、重合槽2で生成している重合体の極限粘度は計算により1.6dl/gであると判断した。
重合槽3では液位300リットルを保ちながら、新たに液化プロピレン56kg/hrを連続的に供給し、温度70℃で重合した。また水素も重合槽2と同様に、気相部の濃度を0.55mol%に保つように連続的に供給した。得られたスラリーは失活後、液体プロピレンによる洗浄槽に送液後、ポリプロピレンパウダーを洗浄した。重合槽3で生成した重合体の生成量比は表1に示した。その後、プロピレンを蒸発させてポリプロピレンパウダーを得た。このサンプルの極限粘度を測定したところ1.9dl/gであった。この結果から、重合槽3で生成しているポリプロピレンの極限粘度は計算により1.6dl/gであると判断した。なお、得られたペレットのクロス分別の積分量を分析したところ、110℃までの溶出量の総量、つまり積分量は21.0%、100℃までの溶出量の総量、つまり積分量は3.5%であった。
[実施例5]
重合を次のように変更した以外は実施例1と同様に行った。
[重合]
内容積140 リットルの攪拌機付き重合槽1に液化プロピレン 100リットルを装入し、この液位を保ちながら、液化プロピレン105 kg/hr、実施例1で得られた予備重合触媒18 g/hr、トリエチルアルミニウム 47mmol/hr、ジシクロペンチルジメトキシシラン55mmol/hrを連続的に供給し、温度73℃で重合した。また水素も重合槽1の気相部の濃度を0.01 mol%に保つように連続的に供給した。この重合槽1で生成した重合体の生成量比は表1に示した。得られた重合体を内容積500リットルの攪拌機付き重合槽2にスラリー状のまま送液した。なお得られたポリマーの一部をサンプリングし、極限粘度を測定したところ3.9 dl/gであった。
重合槽2では液位300リットルを保ちながら、新たに液化プロピレン140kg/hrを連続的に供給し、温度71℃で重合した。また、水素も重合槽2の気相部の濃度を0.57 mol%に保つように連続的に供給した。重合槽2で生成した重合体の生成量比は表1に示した。得られた重合体を内容積500リットルの攪拌機付き重合槽3にスラリー状のまま送液した。なお得られたポリマーの一部をサンプリングし、極限粘度を測定したところ2.0 dl/gであった。この結果から、重合槽2で生成している重合体の極限粘度は計算により1.5 dl/gであると判断した。
重合槽3では液位300リットルを保ちながら、新たに液化プロピレン55 kg/hrを連続的に供給し、温度70℃で重合した。また水素も重合槽2と同様に、気相部の濃度を0.35 mol%に保つように連続的に供給した。得られたスラリーは失活後、液体プロピレンによる洗浄槽に送液後、ポリプロピレンパウダーを洗浄した。重合槽3で生成した重合体の生成量比は表1に示した。その後、プロピレンを蒸発させてポリプロピレンパウダーを得た。このサンプルの極限粘度を測定したところ1.8 dl/gであった。この結果から、重合槽3で生成しているポリプロピレンの極限粘度は計算により1.5 dl/gであると判断した。
[ペレット化]
得られたポリプロピレンを用いて、実施例1と同様にしてポリプロピレンペレットを得た。得られたペレットについて測定した物性を表1および表2にまとめる。得られたペレットのクロス分別の積分量を分析したところ、110℃までの溶出量の総量、つまり積分量は17.1%、100℃までの溶出量の総量、つまり積分量は2.3%であった。NMRで求めたメソペンタッド分率は0.981であった。
また、上記で得られたポリプロピレンペレットから実施例1と同様の方法で得られるシートのβ晶分率、および二軸延伸後のフィルム物性を表3に示す。
[比較例1]
固体状チタン触媒成分を以下の条件で重合製造した以外は実施例1と同様に行った結果を表1〜表3に示す。
[固体状チタン触媒成分(a')の調製]
内容積10リットルのガラス製容器に、無水塩化マグネシウム(フレーク状にしたものをさらに粉砕したもの)952g、デカン4420mlおよび2-エチルヘキシルアルコール3906gを、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に無水フタル酸213gを添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合を行って無水フタル酸を溶解させた。
このようにして得られた均一溶液を23℃まで冷却し10時間放置した後、この均一溶液からガラス容器の底に設けられたノズルより750ml抜き出した。別の10リットルの容器の-20℃の四塩化チタン2000ml中に上記塩化マグネシウムの溶液を1時間にわたって滴下した。滴下後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)52.2gを添加し、これより2時間攪拌しながら同温度に保持した。次いで熱時濾過にて固体部を採取し、この固体部を2750mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。
加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のn-デカンおよびn-ヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。上記のように調製された固体状チタン触媒成分(a')はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分(a)は、チタンを3重量%、塩素を58重量%、マグネシウムを18重量%およびDIBPを21重量%の量で含有していた。
得られたペレットについて焼成残分中のチタニウム分を測定したところ、ポリプロピレンに対しチタニウム分は0.7重量ppmであった。その他の物性測定値を表1および表2にまとめた。
[比較例2]
比較例1に記載した方法と全く同様に、ポリプロピレンの製造、シート成形およびフィルム成形を行った。得られたポリプロピレンの性状値を表1および表2に、フィルム性状を表3に示した。
Figure 2011026620
Figure 2011026620
Figure 2011026620
本発明のポリプロピレンは、不純物量が極めて少なく、また特定の条件下で徐冷することによりβ晶分率を高くすることができ、これによりシートを成形した際にβ晶の含有率の高い高品質なシートを容易に得ることができる。このような本発明のポリプロピレンは電気絶縁性及びアンチブロッキング性に優れたキャパシターフィルムや無延伸フィルム、または電子材料搬送器具に好適に使用される。

Claims (3)

  1. 下記要件[1]〜[3]を同時に満たすポリプロピレン。
    [1] メルトフローレートが0.1〜30g/10分である。
    [2] 13C-NMRスペクトルより算出したメソペンタッド分率が0.90〜0.99である。
    [3] 焼成残分がポリプロピレンに対し50重量ppm以下、焼成残分から検出されるチタニウム分および鉄分がポリプロピレンに対し各々1重量ppm以下および0.1重量ppm以下であり、しかも塩素含量がポリプロピレンに対し5重量ppm以下である。
  2. クロス分別クロマトグラフィー(CFC)法において、110℃まで測定した溶出積分量が30重量%以下、100℃まで測定した溶出積分量が7.0重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン。
  3. GPCで求めたMz/Mnが15以上かつMw/Mnが5以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリプロピレン。
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