JP2011022010A - 傾斜補正プローブを有するカンチレバー及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】 試料表面に対してプローブが垂直にアプローチすることができ、特に凹凸の大きな構造や深溝構造の観察及び測定に適したカンチレバーとその製造方法を提供すること。
【解決手段】 ダイヤモンド基板上に熱化学加工を用いて形成した針状ダイヤモンドと、前記針状ダイヤモンドと一体に設けられた平板部とを含むプローブを備えるカンチレバーにおいて、前記針状ダイヤモンドの側面を一部除去して作製した第2の針状ダイヤモンドを備えており、前記第2の針状ダイヤモンドは、前記カンチレバーのプローブ取り付け面から垂直に伸びる線に対し、カンチレバーの取り付け角度分の傾斜角度θを有するように加工されている。

【選択図】 図4

Description

本発明は、主として走査型プローブ顕微鏡測定に用いられる傾斜補正プローブを有するカンチレバー及びその製造方法に関する。
近年、走査型プローブ顕微鏡は、従来から得意とする高分解能形状観察装置としてだけでなく、計測装置へと変化しつつある。即ち、凹凸の小さな試料だけでなく、数μm〜数十μmの凹凸の大きな構造や深溝構造を形状観察し、得られた形状像からそれらの段差や側壁の角度を正確に計測することなどが求められており、カンチレバーや装置機構の開発や改良が進められている。
一般的に市販されているシリコン製カンチレバーの探針長さは、10〜15μm程度であるため、上述したような測定要求には適さない。そのため、これらの構造測定に適したプローブ長さと剛性をもち、且つ高分解観察が可能なカンチレバーが必要とされている。
走査型プローブ顕微鏡に用いるカンチレバーにおいて、カンチレバー先端に10μm以上の長さを有する針状ダイヤモンドを探針として備えたカンチレバーが知られている(特許文献1)。特許文献1の探針は、単結晶ダイヤモンド基板上に熱化学加工を用いて形成した針状ダイヤモンドと平板部が一体の単結晶ダイヤモンドからなる構成を有しており、平板部をカンチレバー先端に接着して取り付けることを特徴としたカンチレバーである。
特許文献1の針状ダイヤモンドは数百μm長さに形成することも可能であり、剛性も高いことから、従来市販されているシリコン製カンチレバーでは測定不可能な凹凸の大きな構造や深溝構造などの測定に有用とされている。
段差構造測定に用いられるカンチレバーとして、従来のシリコン製カンチレバーのプローブ先端部を平らに加工した基部に、集束イオンビーム(FIB)を用いた化学蒸着法(CVD)によりダイヤモンドライクカーボン(DLC)の円柱状チップを形成させたものが開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示されている円柱状チップは、カンチレバー走査時には試料面に対して垂直になるように形成されている。
同様に、従来のシリコン製カンチレバーのプローブ先端部に、イオンビーム等の高エネルギービームを用いてカーボンナノチューブ(CNT)を成長させたものが開示されている(特許文献3)。
更に、従来のシリコン製カンチレバーのプローブ先端から約2〜5μm長さを加工した高アスペクト比プローブや、走査型プローブ顕微鏡へのカンチレバー取り付け角度を補正するように加工された傾斜補正プローブが市販されている(非特許文献1)。
一方で、ダイヤモンド小片を先端に取り付けたカンチレバーにおいて、ダイヤモンド小片を集束イオンビーム加工により先鋭化する技術が開示されている(特許文献4)。特許文献4のカンチレバーは、複数のダイヤモンド小片の中から、カンチレバーの先端寸法に合うサイズで、且つ、突起を有するダイヤモンド小片を選択し、集束イオンビームにより突起をさらに先鋭化してカンチレバーに取り付けた加工用プローブを有している。
国際公開WO2007/040283号公報 特開2003−240700号公報 特開2005−308675号公報 特開2006−221981号公報
"走査型プローブ顕微鏡ナノプローブテクノロジー ナノワールド/ナノセンサーズ社SPM・AFM用高アスペクト比プローブ"、[online]、株式会社東陽テクニカ、[平成21年6月10日検索]、インターネット<URL; http://www.toyo.co.jp/spm/probe_ar.htm >
特許文献1に開示されているカンチレバーにおいて、針状ダイヤモンドは、ダイヤモンド基板の表面に対しほぼ垂直方向にしか形成することができない。そのため、図1に示すように、針状ダイヤモンド104と平板部106を一体にしたプローブ107をカンチレバーの梁部に取り付けると、針状ダイヤモンド104は、梁部103に対しほぼ垂直方向を向く構成を成していた。
多くの走査型プローブ顕微鏡では、カンチレバーの背面でレーザー光を反射させて検出する光てこ式と呼ばれる機構を用いているために、通常カンチレバーを装着する際には、試料表面201に対し10°〜13°程度の取り付け角度が発生する(図2)。
そのため、特許文献1に開示されるカンチレバーでは、測定試料表面に対してプローブの先端部分が垂直とならず、傾いた状態で測定することになる。この結果、凹凸の小さな試料表面の観察は可能であるものの、凹凸の大きな構造や深溝構造の観察においては、下記のような問題を有していた。
例えば図3に示すように、開口部幅の小さな深溝構造を測定する場合には、プローブ長さが深溝の深さに対し十分であっても底面202にアプローチできず、形状を正確に追従できないという問題を有していた。また、切り立った側壁面を正確に追従できないため、測定された側壁の角度が非対称となり正確に計測できないという問題を有していた。
特許文献2や特許文献3のカンチレバーは、従来のシリコン製カンチレバーの先端部にDLCやCNTを成長させて新たなプローブを形成しているため、剛性が低く、大きな段差構造の測定には強度が十分ではない。またプローブ長さは1〜2μmのものが開示されているのみであり、プローブ長さ以上の深さを有する深溝測定には不向きであるという問題がある。
同様に、非特許文献1のカンチレバーにおいても、従来のシリコン製カンチレバーのプローブ先端部分を加工して作製されるプローブ長さが2μm程度であるため、この長さ以上の深さを有する深溝測定には不向きであるという問題があった。
また、特許文献4のカンチレバーでは、ダイヤモンド小片に集束イオンビーム加工を施して先端を先鋭化しているものの、凹凸の大きな構造や深溝構造測定に適したプローブではなく、試料をナノスケールで加工するための加工用プローブが開示されているのみである。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、試料表面に対してプローブが垂直にアプローチすることができ、特に凹凸の大きな構造や深溝構造の観察及び測定に適したカンチレバーとその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、ダイヤモンド基板に熱化学加工を用いて形成した針状ダイヤモンドと、前記針状ダイヤモンドと一体に設けられた平板部とを含むプローブを備えるカンチレバーにおいて、前記針状ダイヤモンドの側面をイオンビームを用いて一部除去し、第2の針状ダイヤモンドを作製することによって、試料表面に対するプローブ先端部分の傾きを補正し、試料表面とプローブ先端部分とを垂直にすることが可能であることを見出した。
そして本発明のカンチレバーを用いれば、第2の針状ダイヤモンドのみで、凹凸の大きな構造の形状を追従性よく走査でき、切り立った側壁の角度を正確に計測できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、請求項1記載の発明は、ダイヤモンド基板上に熱化学加工を用いて形成した針状ダイヤモンドと、前記針状ダイヤモンドと一体に設けられた平板部とを含むプローブを備えるカンチレバーにおいて、前記針状ダイヤモンドの側面を一部除去して作製した第2の針状ダイヤモンドを備えており、前記第2の針状ダイヤモンドは、前記カンチレバーのプローブ取り付け面から垂直に伸びる線に対し、カンチレバーの取り付け角度分の傾斜角度θを有することを特徴とするカンチレバーである。
ここで、「カンチレバーの取り付け角度分の傾斜角度θ」とは、前述したように、一般的な走査型プローブ顕微鏡にカンチレバーを装着する際に発生する角度であり、具体的には10°〜13°となる。この角度は装置によって若干異なることがある。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、第2の針状ダイヤモンドが、外形直径1μm以下、長さ5μm以上300μm以下であることを特徴とするカンチレバーである。
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、第2の針状ダイヤモンドが、外形直径1μm以下、長さ5μm以上100μm以下であることを特徴とするカンチレバーである。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加えて、第2の針状ダイヤモンドが、前記針状ダイヤモンドの側面をイオンビームで加工して作製することを特徴とするカンチレバーである。
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のカンチレバーが、走査型プローブ顕微鏡または細胞操作に用いられることを特徴とするカンチレバーである。
請求項6記載の発明は、ダイヤモンド基板上に熱化学加工を用いて形成した針状ダイヤモンドと、前記針状ダイヤモンドと一体に設けられた平板部とを含むプローブを備えるカンチレバーを準備し、前記針状ダイヤモンドの側面をイオンビーム加工により一部除去し、前記カンチレバーのプローブ取り付け面から垂直に伸びる線に対し、カンチレバーの取り付け角度分だけ傾斜させた第2の針状ダイヤモンドを作製することを特徴とするカンチレバーの製造方法である。
本発明は、以下に記載されるような効果を有する。
請求項1〜3に記載の発明によれば、走査型プローブ顕微鏡測定において、試料表面に対するプローブの傾きを補正し、試料表面とプローブとを垂直にすることが可能であり、且つ、市販されているシリコン製高アスペクト比プローブでは測定不可能な凹凸の大きな構造や深溝構造を観察する場合でも、形状を追従性よく走査でき、切り立った側壁の角度を正確に測定できるカンチレバーを提供できる。
さらに本発明のカンチレバーは、第1の針状ダイヤモンドと第2の針状ダイヤモンドが一体に設けられているため、剛性が高く、機械的強度に優れているという特徴がある。
請求項4に記載の発明によれば、針状ダイヤモンドを加工する際に、イオンビームを用いることによって、測定しようとする試料の形状に合わせて第2の針状ダイヤモンドの外形、長さ、及び傾斜角度を自由に設定することができるという効果を有する。
請求項5に記載の発明によれば、特に、走査型プローブ顕微鏡を用いて凹凸の大きな構造や深溝構造を観察する際に、形状を追従性よく走査でき、切り立った側壁の角度を正確に測定できるという効果を有する。また、本発明のカンチレバーを用いて細胞操作を行う際に、プローブが細胞に斜めに挿入することで受けるダメージ領域の発生及び拡大を防止することができる。
請求項6に記載の発明によれば、試料表面とプローブとを垂直にすることが可能で、さらに凹凸の大きな構造や深溝構造を高精度で観察可能であり、且つ、強度に優れたカンチレバーを効率良く製造することができるという効果を有する。
従来の針状ダイヤモンドと平板部とを含むプローブを備えるカンチレバーを示す図である。 従来のカンチレバーを用いた場合の試料表面とプローブを示す図である。 従来のカンチレバーを用いた深溝測定の様子を示す図である。 本発明に係るカンチレバーの構成を示す図である。 本発明に係るカンチレバーを用いた場合の試料表面とプローブを示す図である。 本発明に係る針状ダイヤモンドの形成工程を示す図である。 本発明に係る第2の針状ダイヤモンドの加工図を示す図である。 本実施例に係る針状ダイヤモンドのSEM写真である。 本実施例に係る第2の針状ダイヤモンドのSEM写真である。
<本発明に係るカンチレバーの形態>
本発明に係るカンチレバーは、ダイヤモンド基板上に熱化学加工を用いて形成した針状ダイヤモンドと、前記針状ダイヤモンドと一体に設けられた平板部とを含むプローブを備えるカンチレバーにおいて、前記針状ダイヤモンドの側面を一部除去して作製した第2の針状ダイヤモンドを備えており、前記第2の針状ダイヤモンドは、前記カンチレバーのプローブ取り付け面から垂直に伸びる線に対し、カンチレバーの取り付け角度分の傾斜角度θを有していることを特徴としている。
本発明に係るカンチレバーの構成を図4に示す。本発明のカンチレバー1は、チップ部2、梁部3、及び、第1の針状ダイヤモンド4、第2の針状ダイヤモンド5、平板部6が一体に形成されたプローブ7で構成される。プローブ7は、単結晶ダイヤモンドで一体に構成されている。
本発明のカンチレバーを用いると、走査型プローブ顕微鏡測定において発生するカンチレバーの取り付け角度を補正し、試料表面とプローブ先端部分とを垂直にすることが可能である。さらに、図5に示すように、開口部幅の小さな深溝構造に対しても、側壁とプローブが干渉することなく底面202にアプローチできる。
本発明の特徴であるプローブ7において、第2の針状ダイヤモンド5の長さは5μm以上300μm以下とすることができる。5μm以上とすることで、前述の先端部分が約2μm長さであるシリコン製高アスペクト比プローブでは測定不可能な、凹凸の大きな構造や深溝構造を観察する場合でも、形状を追従性よく走査でき、切り立った側壁の角度を正確に測定できる。また、300μm以下とする理由は、カンチレバーの梁部の先端部分からプローブが突出しない長さとすることができ、カンチレバーの振動状態を安定化できるためである。
第2の針状ダイヤモンド5の長さは、上述したような測定上の実用性と、熱化学加工を用いた針状ダイヤモンドの生産性の観点から、5μm以上100μm以下がさらに好ましい。
一方、第1の針状ダイヤモンド4の断面形状は、略長方形か略楕円とするのが好ましい。第1の針状ダイヤモンド4の断面形状は厳密である必要はなく、第2の針状ダイヤモンドが、測定試料の形状及び測定装置に適した傾斜角度と長さを確保できる形状であればよい。前記略長方形とは、長方形の角が丸みを帯びていてもよく、短辺または長辺が湾曲していてもよい。
本発明のプローブ7をカンチレバーの梁部3に取り付ける際には、梁部3の両側面と、前記略長方形の長辺又は、前記略楕円の長軸とを略平行とするのが好ましい。このような配置で取り付けることで、傾斜させた第2の針状ダイヤモンドの長さを長く残すことができる。さらに、短辺又は短軸方向がイオンビーム加工面の奥行き方向となるため、加工時間を短くすることができる。
本発明のカンチレバーの形態は、測定上の実用性、熱化学加工を用いた針状ダイヤモンドの生産性、及び第2の針状ダイヤモンドの加工性の観点から、第1の針状ダイヤモンド4の断面形状が10μm×1μmの略長方形で長さが20μm以上60μm以下、第2の針状ダイヤモンド5の断面形状が略円形で長さが5μm以上40μm以下が最も好ましい。
<本発明に係るカンチレバーの製造方法>
本発明に係るカンチレバーの製造方法について以下に説明する。
本発明に係るカンチレバーにおいて、第2の針状ダイヤモンドを設けるための土台となる針状ダイヤモンドは、図6(a)〜(e)に示す工程で製造される。
針状ダイヤモンドを作製するためのダイヤモンド基板8には、天然のほか、高圧合成法や気相合成法で作製された単結晶ダイヤモンドを用いることができる。単結晶ダイヤモンドは、BやP等を不純物としてドーピングすることにより、その電気伝導率を絶縁体から金属並みまで変化させることが可能であるから、針状ダイヤモンドの用途に応じて適宜選択すればよい。
多結晶ダイヤモンドを用いることもできるが、熱化学加工によって得られる構造体の表面に粒界に起因する凹凸が発生する可能性があるため、針状ダイヤモンドのように微細な構造体を得ようとする場合には、単結晶ダイヤモンドを用いることが好ましい。
単結晶ダイヤモンド基板を用いる場合、容易に入手できる(100)面を基板上面に持つ単結晶ダイヤモンド基板を用い、走査型プローブ顕微鏡装置搭載時に、カンチレバーのスキャン方向と耐摩耗性の大きなダイヤモンド<110>軸方向が平行になるように設計するのが好ましい。
当該ダイヤモンド基板8は、(得ようとする針状ダイヤモンドの針状部の長さ)+(得ようとする平板部の厚さ)がダイヤモンド基板の厚みとなるように、上下面を研磨加工することによって仕上げる。この際、両面を表面粗さRaで1nm以下、好ましくは0.1nm程度になるように鏡面研磨を行う。
鏡面研磨されたダイヤモンド基板8を十分に洗浄した後、スパッタ装置等の成膜装置中に設置し、0.01Pa〜10Paの圧力下で基板温度を600℃〜1800℃に設定し、ダイヤモンド基板表面上にNi等の炭素を溶解しうる金属またはそれらの合金からなる単結晶金属膜9を膜厚0.1μm以上形成する(図6(b))。炭素を溶解しうる金属として、Ni以外にはRh,Pd,Pt,Ir,W,Mo,Mn,Fe,Ti,Cr,Coなどとそれらの合金を用いることができる。
ダイヤモンド基板8上に形成された単結晶金属膜9に、ダイヤモンド表面が露出するように、すなわち単結晶金属膜9のみを貫通するように、レーザー加工等を用いて複数個の凹部10を形成する(図6(c))。
凹部の形状は、熱化学加工によって形成される針状ダイヤモンドの断面形状に応じて決定されるため、本発明では、凹部の形状を略長方形又は略楕円形とするのが好ましい。凹部の間隔は40μm程度が好ましい。凹部の形成方法は、針状ダイヤモンドの形状に応じて、機械加工,レーザー加工,フォトリソグラフィ,集束イオンビーム等を用いることができる。
単結晶金属膜9に凹部10を形成させた後、当該サンプルに対し、大気圧水素雰囲気中において600℃〜1000℃の温度で、3〜100時間熱処理し熱化学加工を行うと、単結晶金属膜中に取り込まれたダイヤモンドを構成する炭素原子が、単結晶金属膜の表面において雰囲気ガスと反応することにより炭化物を生成し、単結晶金属膜が形成されている部分のダイヤモンドのみが加工されていくこととなる。
熱処理を行う雰囲気は、水素雰囲気中の他、酸素,不活性ガス雰囲気中もしくは真空中でも行うことができる。また、針状ダイヤモンド11の針状部の長さは、熱化学加工を行う熱処理温度,熱処理時間,雰囲気等の条件によってコントロールすることが可能である。
例えば、本発明のプローブに用いる針状ダイヤモンドを水素雰囲気中950℃で得ようとすれば、15μmより長くするには5時間、50μm以上の長さとするには17時間、200μm以上の長さとするには67時間、500μm長さとするには167時間の条件で熱化学加工を行うことができる。ただし、熱処理温度と熱処理時間には相関性があるため、上述した熱化学加工条件はあくまで一例である。
以上のような熱化学加工の結果、凹部10によってダイヤモンド基板8の表面を露出させた部分のみが加工されずに残り、針状ダイヤモンド11を形成する(図6(d))。熱化学加工後に、ダイヤモンド基板上に残存する単結晶金属膜9は、硝酸等を用いて除去することができる(図6(e))。
以上の工程により、針状ダイヤモンド11が得られる。
続いて、ダイヤモンド基板表面に形成された針状ダイヤモンド11の周辺の平板部6を含むように切り出す。このとき、平板部6の少なくとも一つの側面に、ダイヤモンドの結晶方位を示すための平面を有するものを用いることが好ましい。この平面の結晶方位は、カンチレバーの走査方向と最も耐摩耗性のある結晶方位とが平行になるようにダイヤモンドプローブを取り付けた際に、カンチレバーの梁部の側面と平行になる結晶方位を選択することが好ましい。
平板部6の形状は、長方形をはじめとした多角形など、カンチレバーの梁部に固定可能で、且つ、十分な接着面積を有し、取り付けの際のハンドリングスペースが確保できていることが必要である。また、カンチレバーとしての特性に支障をきたさない重さに設定される必要がある。
例えば、外形50×30μm角以上200×300μm角以下、厚み5μm以上〜30μm以下が好ましい。外形が50×30μm角より小さいと、平板部をハンドリングするスペースが確保できず、200×300μm角より大きいと、カンチレバーの先端に取り付けた際、平板部の重みでカンチレバーの振動等の動きに支障をきたす恐れがあるため好ましくない。
また、厚みが5μmより小さいと熱化学加工によって作製される針状ダイヤモンドの歩留まりが悪くなり、30μmより大きいと、カンチレバーの先端に取り付けた際、平板部の重みでカンチレバーの振動等の動きに支障をきたす恐れがあるため好ましくない。好ましくは、外形50×30μm角程度, 厚み15μm程度が、最も針状ダイヤモンドを作製しやすく、カンチレバーとしての特性を妨げることがない。
また、針状ダイヤモンド11を複数本含むように平板部を切り出すと、マルチ加工や直流4端子法測定等が可能な、デュアルもしくはマルチプローブ型のダイヤモンドカンチレバーとして用いることができる。例えば、2本のプローブを用いることで細胞内外の電位差を測定することも可能である。
プローブ7を取り付けるカンチレバーとして、市販されているカンチレバーやプローブレスカンチレバーを用いることができる。梁部の材質は、走査型プローブ顕微鏡観察における測定対象物によって最適なバネ定数をもつ材質を選択すれば良い。
プローブを梁部に固定する方法としては、液状の接着剤等を用いて、平板部の裏面を梁部に接着して固定する方法を用いることができる他、接着剤を用いずに接合などの方法で物理的に固定する方法を用いることができる。接着剤としては、液状の接着剤の他、Au,Ti等を用いて金属接合によって固定することも可能である。
また、必要に応じて、プローブの表面には、導電性を付与するための金属コーティングや撥水性をもたせるためのフッ素終端をはじめとして、様々な測定に用いるための表面化学終端や化学修飾が可能である。
<第2の針状ダイヤモンドの加工>
上記手段により作製された、針状ダイヤモンド11と一体に設けられた平板部6を含むプローブ7を備えるカンチレバーに対し、図7に示すように、針状ダイヤモンド11の側面を一部除去して、第2の針状ダイヤモンド5を作製する。
第2の針状ダイヤモンド5を作製するには、イオンビームを用いて加工するのが好ましい。その理由は、測定しようとする試料の形状に合わせて第2の針状ダイヤモンドの外形及び長さを設定することができるからである。
イオンビーム加工は、図7に示すように、針状ダイヤモンド11の長辺側(梁部3の側面側)からイオンビームを照射し、第2の針状ダイヤモンド5を残すようにそれ以外の部分(図7の斜線部分)が完全に除去されるまで加工を行う。その際、カンチレバーのプローブ取り付け面から垂直に伸びる線に対し、カンチレバーの取り付け角度分の傾斜角度θを補正するように加工を行う。また、必要に応じて、第2の針状ダイヤモンド5の先端を先鋭化することができる。
次に、本発明にかかる実施例について具体的に説明する。
<カンチレバーの作製>
本実施例では、高圧合成法で作製された大きさ約4mm角の(100)面単結晶ダイヤモンド基板を用いた。単結晶ダイヤモンド基板0.15mm厚さに上下面を研磨し、表面粗さRaを0.1nm以下に仕上げた。
表面を水素終端したダイヤモンド単結晶基板上に、スパッタリング法を用いて、アルゴン雰囲気中で、基板を600℃程度に加熱しながら厚み約1μmのNi単結晶薄膜をエピタキシャル成長させた。この時の出力は100W, 成膜速度は1.2μm/hであった。この条件下で得られたNi膜は(100)面に配向した単結晶膜であった。
次にNi単結晶薄膜上にパルスレーザーを用いて約1μm×10μmの長方形状の凹部を複数個形成し、ダイヤモンド表面を一部露出させた。形成した凹部の配列間隔は40μmであった。その後、水素100%、大気圧下950℃で約20時間熱処理を施して熱化学加工を行い、針状ダイヤモンドを作製した。
その後、熱化学加工後に単結晶ダイヤモンド基板上に残っているNi薄膜を硝酸で除去した。この熱化学加工により得られた針状ダイヤモンドの長さは約65μmであった。
単結晶ダイヤモンド基板から、針状ダイヤモンドの外周に、外形30×50μm、厚み15μmの平板部を含むように切り出し、Siカンチレバーの梁部に液状接着剤(エポキシ樹脂)を用いて固定し、図8に示すカンチレバーを作製した。
<第2の針状ダイヤモンドの加工>
走査型プローブ顕微鏡装置への取り付け時の傾きを補正するために、上記工程で得られた針状ダイヤモンドに対し、集束イオンビームを用いて加工を行い、θ=13度の傾きを持つ直径約1μmの第2の針状ダイヤモンドを作製した。得られた第2の針状ダイヤモンドの長さは約38μmであった。
具体的には、図7に示すように、針状ダイヤモンド11の長辺側からイオンビームを照射し、第2の針状ダイヤモンドを残すように、加速電圧40kV、注入量2.64×1017ion/cmで粗加工を行った後に、加速電圧40kV、注入量1.40×1017ion/cmで仕上げ加工を行った。本実施例における加工時間は約6時間であった。図9に傾きを補正したプローブ先端部のSEM画像を示す。
以上の工程により得られた本実施例のカンチレバーと、比較用に、図1に示す従来のカンチレバーを用いて、走査型プローブ顕微鏡観察を行った。
本実施例により得られたカンチレバー及び従来のカンチレバーを走査型プローブ顕微鏡に取り付け、凹凸の大きな段差構造の測定を行った。段差構造の形状は、(1)開口部10μm×6μm、深さ7μm、及び、(2)開口部10μm×8μm、深さ14μmであった。前記(1)、(2)ともに、短辺の側壁の角度及び長辺の側壁の角度は、それぞれ85°、88°であった。カンチレバーの走査方向は、開口部の短辺方向に垂直な方向とした。
本発明のカンチレバーを用いて測定し得られた段差構造の断面形状から、その深さを計測したところ、段差構造の深さ値に等しい(1)約7μm、(2)約14μmという値が得られた。一方で、従来のカンチレバーを用いて測定した深さ値は、段差構造の深さ値よりも大幅に小さく(1)約5.4μm、(2)10.6μmと計測され、底面までプローブ到達していないことが予想された。以上のことから、本実施例により得られたカンチレバーを用いると、深さの大きな段差構造の底面に、プローブが確実にアプローチでき形状に追従できることが分かった。
同様に、段差構造の断面形状からその側壁の角度を計測したところ、本発明のカンチレバーを用いて測定した場合は、(1)及び(2)の短辺の側壁の角度は約83°、(1)及び(2)の長辺の側壁の角度は約85°という値が得られ、段差構造の角度値にほぼ等しい値が得られることが確認された。
一方で、従来のカンチレバーを用いて測定した場合は、カンチレバーの走査方向に垂直な短辺の側壁の角度値が極端に小さく計測され、(1)及び(2)の短辺の側壁の角度は約46°と計測され、プローブが段差構造の側壁に対し傾きをもっているために側壁に追従できていないことが確認された。また、(1)及び(2)の長辺の側壁の角度は約80°と計測された。
以上のことから、本実施例により得られたカンチレバーを用いると、深さの大きな段差構造の切り立った側壁に、プローブが確実に追従できるため、正確な側壁の角度計測が可能となる。
本発明に係るカンチレバーは、プローブをカンチレバーの梁部に取り付けた後に加工し、第2の針状ダイヤモンドを作製する方法を採用しているため、プローブを取り付ける土台を用途に応じて変更することで、走査型プローブ顕微鏡用のカンチレバー以外の種々の用途に利用できる。例えば、針状体を用いて細胞内に遺伝子やタンパク質を導入する細胞操作において、本発明のプローブを用いると細胞へのダメージをより抑えることができる。
1, 101 カンチレバー
2 チップ部
3, 103 梁部
4, 第1の針状ダイヤモンド
11,104 針状ダイヤモンド
5 第2の針状ダイヤモンド
6, 106 平板部
7, 107 プローブ
8 ダイヤモンド基板
9 単結晶金属膜
10 凹部
201 試料表面
202 底面

Claims (6)

  1. ダイヤモンド基板上に熱化学加工を用いて形成した針状ダイヤモンドと、前記針状ダイヤモンドと一体に設けられた平板部とを含むプローブを備えるカンチレバーにおいて、前記針状ダイヤモンドの側面を一部除去して作製した第2の針状ダイヤモンドを備えており、前記第2の針状ダイヤモンドは、前記カンチレバーのプローブ取り付け面から垂直に伸びる線に対し、カンチレバーの取り付け角度分の傾斜角度θを有していることを特徴とするカンチレバー。
  2. 前記第2の針状ダイヤモンドは、外形直径1μm以下、長さ5μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1記載のカンチレバー。
  3. 前記第2の針状ダイヤモンドは、外形直径1μm以下、長さ5μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1記載のカンチレバー。
  4. 前記第2の針状ダイヤモンドは、前記針状ダイヤモンドの側面をイオンビームで加工して作製することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカンチレバー。
  5. 前記カンチレバーは、走査型プローブ顕微鏡又は細胞操作に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカンチレバー。
  6. ダイヤモンド基板上に熱化学加工を用いて形成した針状ダイヤモンドと、
    前記針状ダイヤモンドと一体に設けられた平板部とを含むプローブを備えるカンチレバーを準備し、前記針状ダイヤモンドの側面をイオンビーム加工により一部除去し、前記カンチレバーのプローブ取り付け面から垂直に伸びる線に対し、カンチレバーの取り付け角度分の傾斜角θを有する第2の針状ダイヤモンドを作製することを特徴とするカンチレバーの製造方法。
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JP7448168B2 (ja) 2020-01-14 2024-03-12 パーク システムズ コーポレーション 傾いたチップを利用して測定対象の表面の特性を得る方法、この方法が遂行されるための原子顕微鏡及びこの方法が遂行されるために格納媒体に格納されたコンピュータプログラム

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