以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態のエンジン1の制御装置の概略構成図である。エンジン1は図示しない車両に搭載されている。
図1においてエンジン1の燃焼室21には吸気通路23と排気通路24とが開口され、吸気通路23の燃焼室21への開口端に吸気弁25が、排気通路24の燃焼室21への開口端に排気弁26が設けられている。
吸気弁25には、吸気弁25のリフト特性、具体的には吸気弁25のリフト量及び作動角を連続的に拡大しまたは縮小させることが可能なリフト可変機構27と、吸気弁25が最大リフトを迎えるクランク角度位置(つまり吸気弁25のリフト中心角)の位相を連続的に進角側もしくは遅角側に変化させることが可能な位相可変機構28とを備える。リフト可変機構27及び位相可変機構28の機械的な構成は公知であるので、その詳細な説明は省略する。
リフト可変機構27及び位相可変機構28を備えるエンジン1では、吸気弁25のリフト量及び作動角並びに吸気弁25のリフト中心角の位相を運転条件に応じて制御することにより燃焼室21に流入する吸入空気量を制御することができるため、スロットル弁開度により燃焼室21に流入する吸入空気量を制御する場合に比べてポンピングロスを減らすことが可能となり、その分燃費が向上するというメリットがある。
このため、本実施形態ではアクセル開度APOとエンジン回転速度Neとから図2を内容とするマップを検索することにより、吸気弁5のリフト量及び作動角の目標値(以下単に「吸気弁作動角目標値」という。)を算出する。図2に示したように目標吸気圧(後述する)の条件で、吸気弁作動角目標値はアクセル開度APOが大きくなるほど、またエンジン回転速度Neが大きくなるほど大きくなる値である。これは、アクセル開度APOが大きくなるほど、またエンジン回転速度Neが大きくなるほど吸気弁作動角を大きくして燃焼室21に流入する吸入空気量を増やしエンジンの発生するトルクが大きくなるようにするためである。
本実施形態では、吸気弁25のリフト量及び作動角を変化させて吸入空気量を制御するときに、吸気通路23には基本的に運転条件によらない一定のわずかな負圧を生じさせ、実際に燃焼室21内に吸入される空気量の目標値に対する追従性を高めることとしている。なお、大気圧を基準のゼロした場合に、大気圧より小さい圧力は「負圧」(負の圧力)となる。吸気通路23の負圧はブローバイガスの処理などにも有効である。この要求から、吸気通路23にモータ等のアクチュエータ30により開度が制御されるスロットル弁29(スロットル弁装置)を備える。また、実際のスロットル弁開度を検出するスロットルセンサ31が設けられている。
スロットル弁29の下流に生じる吸気圧が目標吸気圧となるようにアクセル開度APOとエンジン回転速度Neとに応じたベーススロットル弁開度TVObaseを予め定めており、このベーススロットル弁開度TVObaseが得られるようにスロットル弁開度を制御する。本実施形態ではアクセル開度APOとエンジン回転速度Neとから図3を内容とするマップを検索することにより、ベーススロットル弁開度TVObaseを算出する。図3に示したように目標吸気圧の条件で、アクセル開度APOとエンジン回転速度Neに応じた目標吸入空気量が得られるようにベーススロットル弁開度TVObaseを適合すればよい。
吸気通路23の吸気ポートに燃料噴射弁33を、燃焼室21の天井に点火プラグ34を備える。エアフローメータ38により検出される吸入空気流量に基づいて目標空燃比の得られる燃料噴射量が算出され、この噴射量の燃料が所定の時期に燃料噴射弁33から噴射供給され、燃焼室21内に形成される混合気に対して所定の時期に点火プラグ34によって着火される。
エンジンには圧縮比を連続的に変化させることが可能な圧縮比可変機構を備える。なお、圧縮比可変機構を備えるこのエンジンは、本出願人が先に提案しており、例えば特開2001−227367号公報等によって公知となっている。従って、その概要のみを図4を参照して説明する。
図4において、クランクシャフト2には、エンジン本体の一部を構成するシリンダブロック1内の主軸受(図示しない)に回転可能に支持されるクランクジャーナル3が各気筒毎に設けられている。各クランクジャーナル3は、その軸心Oがクランクシャフト2の軸心(回転中心)と一致しており、クランクシャフト2の回転軸部を構成している。
また、クランクシャフト2は、軸心Oから偏心して各気筒毎に設けられたクランクピン4と、クランクピン4をクランクジャーナル3へ連結するクランクアーム4aと、軸心Oに対してクランクピン4と反対側に配置され、主としてピストン運動の回転1次振動成分を低減するカウンターウェイト4bとを有している。クランクアーム4aとカウンターウェイト4bとは、この実施形態では一体的に形成されている。
そして、各気筒毎に形成されたシリンダ10に摺動可能に嵌合するピストン9と、上記のクランクピン4とが、複数のリンク部材、すなわちアッパーリンク6とロアーリンク5とにより機械的に連携されている。アッパーリンク6の上端側は、ピストン9に固定的に設けられたピストンピン8に、軸心Oc周りに相対回転可能に外嵌している。また、アッパーリンク6の下端側とロアーリンク5の、ほぼ二等分された一方の本体5aとは、両者を挿通する連結ピン7によって、軸心Od周りに相対回転可能に連結されている。
ロアーリンク5は、クランクピン4を狭持するように、2つの本体5a、5bを取付けて構成されており、この狭持部分でクランクピン4と軸心Oe周りに相対回転可能に装着されている。ほぼ2等分された他方のロアーリンク本体5bと制御リンク(サードリンク)11の上端側とは、両者を挿通する連結ピン12によって軸心Of周りに相対回転可能に連結されている。
この制御リンク11の下端側は、シリンダブロック1に回動可能に支持される、偏心カム部14を有する制御軸13に、その軸心Ob周りに揺動可能に外嵌,支持されている。すなわち、制御軸13の外周には偏心カム部14が回転可能に設けられており、偏心カム部14の軸心Oaは、制御軸13の軸心Obに対して所定量偏心している。この偏心カム部14は、ウォームギア15を介して圧縮比制御アクチュエータ16によって、エンジンンの運転状態に応じて回動制御されるとともに、任意の回動位置で保持されるようになっている。アクチュエータ16としては電動機を使用することが好ましい。高温条件での動作が必要な場合は電動機をSRM(Switched Reluctance Motor)とし、電動機負荷として高トルクが必要な場合はIPM(Interior Permanent Magnet)モータとすることが好ましい。
このような構成により、クランクシャフト2の回転に伴って、クランクピン4,ロアーリンク5,アッパーリンク6及びピストンピン8を介してピストン9がシリンダ10内を昇降するとともに、ロアーリンク5に連結する制御リンク11が、下端側の揺動軸心Obを支点として揺動する。
また、上記の圧縮比制御アクチュエータ16により偏心カム部14を回動制御することにより、制御リンク11の揺動軸心となる制御軸13の軸心Obが偏心カム部14の軸心Oa周りに回転し、つまり制御リンク11の揺動中心位置Obが機関本体(及びクランクシャフト回転中心O)に対して移動する。これにより、ピストン9の行程が変化して、エンジンの各気筒の圧縮比が可変制御される。参考として、図5に、ピストン上死点位置における3つのリンク6、5、11の姿勢を模式的に示すと、図5左側は高圧縮比位置での、図5右側は低圧縮比位置での各リンク姿勢である。
この圧縮比可変機構の最大の特徴は制御軸13の角位置制御により、ピストン9の上死点位置(燃焼室容積)を変えられる点にあり、いわゆる圧縮比可変機構としての機能を発揮する。本実施形態では、複リンク式圧縮比可変機構で説明しているが、圧縮比可変機構は複リンク式に限られるものでない。例えば吸気弁の閉時期を変更することにより実圧縮比を変化させることが可能である。
一般的に圧縮比を上げるとエンジンの熱効率が向上することが知られている。その一方で、圧縮比を上げすぎるとノッキングが発生するため、特に高負荷領域ではあまり圧縮比を上げることができない。そのため、圧縮比可変機構を有するエンジン1においては、図7に示したように目標吸入空気量(tQac h)が小さな低負荷側で目標圧縮比(CR0)を大きく、目標吸入空気量(tQac h)が大きな高負荷側で目標圧縮比(CR0)を小さく設定することで、ノッキングを発生させずに燃料消費量を向上させている。
図1に戻り、エンジン1にはさらに、排気タービン46とコンプレッサ47とが同軸に配置されるターボ過給機45を備える。このターボ過給機45は、排気のエネルギーを利用して排気タービン46を回し、この動力でコンプレッサ47を駆動することによって、吸入空気を予圧するものである。また、排気タービン46をバイパスする通路48に常閉のウェイストゲートバルブ49が設けられている。このウェイストゲートバルブ49は設定過給圧以上となったときに排気をバイパスして逃し、過給圧が設定過給圧以上とならないようにするものである。スロットル弁29上流の吸気通路23に実際の過給圧を検出する過給圧センサ39が設けられている。
このように圧縮比可変機構を有するエンジン1に対して、さらにターボ過給機45が設けられるときには、目標圧縮比の求め方を次のように自然吸気のエンジンと異ならせている。すなわち、アクセル開度APOとエンジン回転速度Neとに応じて自然吸気時の目標吸入空気量tQacが図6に示したように定まっているので、大気圧Paと実過給圧rPbとの比でこの自然吸気時の目標吸入空気量tQacを補正して、つまり
tQac h=tQac×Pa/rPb …(1)
の式により過給時の目標吸入空気量である過給圧補正目標吸入空気量tQac hを算出している。
ターボ過給機45を備えておらず、自然吸気の状態では(1)式右辺の分数であるPa/rPbの値が1となり、過給圧補正目標吸入空気量tQac hは目標吸入空気量tQacと一致する。一方、ターボ過給機45が働く過給時には大気圧Paよりも実過給圧rPbが大きくなるため、(1)式右辺の分数であるPa/rPbの値が1より小さな正の値となり、過給圧補正目標吸入空気量tQac hは目標吸入空気量tQacよりも小さくなる。このように、過給時に過給圧補正目標吸入空気量tQac hを目標吸入空気量tQacよりも小さくしているのは、自然吸気時よりも過給時のほうが吸気の圧力が大気圧よりも高い分だけ多く吸入空気が燃焼室21に入り過ぎるためである。つまり目標吸入空気量tQacを超える吸入空気量が燃焼室21に流入すると、その分燃焼室21内の圧力及び温度が上昇してノッキングが生じないとも限らない。そこで、過給時には自然吸気時に適合している目標吸入空気量tQacよりも小さな吸入空気量(tQac h)とすることによって、過給時の実質の吸入空気量を自然吸気時の実質の吸入空気量と同じにし、これによってノッキングが生じないようにしているのである。
そして、このようにして求めた過給圧補正目標吸入空気量tQac hとエンジン回転速度Neとに応じた目標圧縮比基本値CR0を前述した図7に示したように定めている。
アクセル開度センサ36からのアクセル開度APO、エンジン回転速度センサ37からの回転速度Ne、エアフローメータ38からの吸入空気流量の信号が入力されるエンジンコントローラ35では、これらの信号に基づいて、図2に示される吸気弁作動角目標値、図3に示されるベーススロットル弁開度、図7に示される目標圧縮比基本値CR0、燃料噴射量、点火時期をそれぞれ算出する。そして、算出した吸気弁作動角目標値が得られるようにリフト可変機構27のアクチュエータを駆動し、算出したベーススロットル弁開度が得られるようにスロットル弁29のアクチュエータ30を駆動すると共に、算出した目標圧縮比基本値CR0が得られるように圧縮比アクチュエータ16を駆動する。また、最適なタイミングで吸気弁25が開かれるように位相可変機構28のアクチュエータを駆動する。また、算出した燃料噴射量及び点火時期が得られるように燃料噴射弁33及び点火プラグ34を制御する。
さて、現状制御において目標圧縮比基本値CR0が得られるように圧縮比アクチュエータ16を制御していても、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があることが判明している。この現状制御での作用を図8を参照して説明すると、図8は高車速状態及び定常走行状態にある途中のt1のタイミングよりt2のタイミングまでアクセルペダルを戻す減速操作を行い、t2のタイミングよりt3のタイミングまでアクセル開度APOを維持し、t3のタイミングよりt5のタイミングまでアクセルペダルを再び踏み込んで加速操作を行い、t5のタイミングでアクセル開度APOを一定に維持した場合に、スロットル弁開度TVO、過給圧補正目標吸入空気量tQac h、実過給圧rPb、目標圧縮比基本値CR0がどのように変化するのかを示している。
図8においては、圧縮比アクチュエータ16の応答遅れは過給圧が低下するときの応答遅れよりも十分小さく、目標圧縮比基本値CR0と実圧縮比とはほぼ等しいと仮定する。
現在の過給圧状態、特に高負荷時のように高い過給圧状態にあるt1のタイミングで車両の減速が行われると、目標吸入空気量tQacが減少するので、過給圧補正吸入空気量tQac hも減少する。このとき、目標圧縮比基本値CR0は、燃費向上のため過給圧補正吸入空気量tQac hの減少に合わせて大きくなる。
ターボ過給機45には負荷変化に対して大きな応答遅れがあるため、目標吸入空気量tQacの減少が実過給圧rPbに現れるまでにかなりの時間を要する。つまり、実過給圧rPbは車両の減速時に急には低下できず、減速を終了したt2のタイミングよりさらに遅れたタイミングでやっと低下し始める(図8の第4段目参照)。かつ、t3からの再加速を受けてスロットル弁29がt4のタイミングより大きく開かれると、このとき実過給圧rPbが十分に低下し切っていないために、燃焼室21内に流入する実質の吸入空気量が、低負荷状態より加速を行う場合よりも大きくなる(図8の第3段目のt4以降参照)。
この結果、燃焼室21内の圧力及び温度が意図しないのに上昇し、ノッキングの発生が懸念される。この場合に、目標圧縮比基本値CR0を小さくできれば燃焼室21内に流入する実質の吸入空気量が大きくても、燃焼室21内の圧力及び温度の上昇を抑制することが可能となり、ノッキングの発生を回避できることとなる。
しかしながら、目標圧縮比基本値CR0は、もともと定常運転時に適合して設定されているため、このような高過給圧状態からの減速再加速時に実過給圧rPbが遅れて低下することを考慮してまで設定されていない。このため、目標圧縮比基本値CR0は、高過給圧状態からの減速再加速時に遅れて低下する実過給圧rPbに関係なく再加速の行われるt4のタイミングより、過給圧補正吸入空気量tQac hの上昇に合わせて低下する(図8の最下段参照)。このように、目標圧縮比基本値CR0が定常運転時に適合して設定されているために、減速再加速時に圧縮比が高い状態のまま燃焼室21内に流入する吸入空気量が増加するので、燃焼室21内が高圧及び高温となってノッキングが発生する可能性がある。
こうした減速再加速時の直前に過給圧が高い状態となっている場合があることを考慮し、減速再加速が行われてもスロットル弁29を絞って燃焼室21内に流入する吸入空気量を制限することでノッキングを回避することが可能ではあるが、この方法ではエンジンの発生するトルクが犠牲になり加速性能が悪化してしまう。
そこで本実施形態は、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があるか否かを予め判定し、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があると判定されたとき、目標圧縮比(CR0)を減量側に補正することによって、高過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合におけるノッキングを回避する。このとき、スロットル弁29の開度は、加速に要求される吸入空気量を確保する開度に維持して、補正はしない。あるいは、本発明の圧縮比の低下補正を行わない場合に必要となる、ノッキングを回避するための吸入空気量の絞りほどでないにしても、所定量だけスロットル弁29を絞る補正を行って、ノッキングをより安全側で抑制するようにすることもできる。
エンジンコントローラ35で行われるこの制御を図10、図11A、図11Bを参照して詳述する。
図10はエンジンコントローラ35で行われる圧縮比制御の機能をブロックで示した概略図で、目標吸入空気量算出手段51、過給圧補正目標吸入空気量算出手段52、目標圧縮比基本値算出手段53、ノッキング発生事前判定手段54、目標圧縮比補正量算出手段55、目標圧縮比算出手段56からなっている。
目標吸入空気量算出手段51ではアクセル開度APOとエンジン回転速度Neとに基づいて目標吸入空気量tQacを算出する。過給圧補正目標吸入空気量算出手段52では、この目標吸入空気量tQacと、実過給圧rPbと、大気圧Paとから上記(1)式を用いて過給圧補正目標吸入空気量tQac hを算出する。
ノッキング発生事前判定手段54では、実過給圧rPbと、エンジン回転速度Neと、吸気温度Tmとに基づいて、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があるか否かを予め判定する。このノッキング発生事前判定手段54により、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があると判定されたとき、目標圧縮比補正量算出手段55では、過給圧補正目標吸入空気量tQac hと、実過給圧rPbと、エンジン回転速度Neとに基づいて圧縮比補正量CRh0を算出し、目標圧縮比算出手段56では、前記目標圧縮比基本値CR0からこの圧縮比補正量CRh0を減算した値を目標圧縮比tCRとして、つまり、
tCR=CR0−CRh …(2)
の式により目標圧縮比tCRを算出する(目標圧縮比を減量補正する)。
エンジンコントローラ35では、このようにして算出した目標圧縮比tCRを駆動信号に変換し、圧縮比アクチュエータ16に出力し、これによって目標圧縮比tCRとなるようにする。
図11A、図11Bは図10の各手段51〜56で行われる操作、つまり目標圧縮比の算出方法をフローチャートで示したもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ1ではアクセル開度センサ36により検出されるアクセル開度APO、エンジン回転速度センサ37により検出されるエンジン回転速度Ne、過給圧センサ39により検出される実過給圧rPb、大気圧センサ40により検出される大気圧Pa、吸気温度センサ41により検出される吸気温度Tmを読み込む。
ステップ2ではアクセル開度APOとエンジン回転速度Neから図6を内容とするマップを検索することにより、自然吸気時の目標吸入空気量tQacを算出する。図6に示したように自然吸気時の目標吸入空気量tQacは、エンジン回転速度Neが一定の条件でアクセル開度APOが大きくなるほど大きくなり、またアクセル開度APOが一定の条件でエンジン回転速度Neが大きくなるほど大きくなる。
ここで、自然吸気時の目標吸入空気量tQacは、過給時には目標過給圧の代用値となる。つまり、過給時に自然吸気時の目標吸入空気量tQacが得られれば、目標過給圧が得られていることとなる。
ステップ3では、過給圧センサ39により検出される実過給圧rPbと、大気圧センサ40により検出される大気圧Paとを用いて、上記(1)式により過給圧補正目標吸入空気量tQac hを算出する。前述したように、過給時に過給圧補正目標吸入空気量tQac hを自然吸気時の目標吸入空気量tQacよりも小さくしているのは、自然吸気時よりも過給時のほうが吸気の圧力が大気圧よりも高い分だけ多く吸入空気が燃焼室21に入り過ぎ、その分燃焼室21内の圧力及び温度が上昇してノッキングが生じないとも限らないので、これを避けるためである。
ステップ4では、この過給圧補正目標吸入空気量tQac hとエンジン回転速度Neとから図7を内容とするマップを検索することにより、目標圧縮比基本値CR0を算出する。図7に示したように目標圧縮比基本値CR0は、エンジン回転速度Neが一定の条件で過給圧補正目標吸入空気量tQac hが大きくなるほど小さくなる。これは、過給圧補正目標吸入空気量tQac hが小さくなる低負荷時には目標圧縮比基本値CR0を大きくしてエンジン1の熱効率を高めているのであるが、過給圧補正目標吸入空気量tQac hが大きくなる高負荷時にも目標圧縮比基本値CR0を高くしていると、ノッキングが発生するので、高負荷側ほど目標圧縮比基本値CR0を小さくしてノッキングの発生を防止するためである。また、過給圧補正目標吸入空気量tQac hが一定の条件では目標圧縮比基本値CR0はエンジン回転速度Neにあまり依存せず、高回転速度域に限ってエンジン回転速度Neが大きくなるほど小さくなる。
ステップ5では、実過給圧rPbとエンジン回転速度Neとをパラメータとして、目標圧縮比基本値毎に現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性がある領域(この領域を以下、単に「ノッキング発生領域」という。)の境界を定めたマップ(このマップを以下「基本マップ」という。)のうちから、算出した目標圧縮比基本値CR0に対応する基本マップを選択する。例えば、目標圧縮比基本値CR0について小さい側から10、12、14であるとし、これらを第1、第2、第3の目標圧縮比基本値とした場合に、3つの各目標圧縮比基本値での基本マップの内容を図12に重ねて示すと、第1目標圧縮比基本値(=10)でのノッキング発生領域の境界Aよりも第2圧縮比基本値(=12)でのノッキング発生領域の境界Bのほうが、第2目標圧縮比基本値(=12)でのノッキング発生領域の境界Bよりも第3目標圧縮比基本値(=14)でのノッキング発生領域の境界Cのほうが図12において右下に向かって移動している。つまり、目標圧縮比基本値CR0が高くなるほどノッキング発生領域は実過給圧rPbが小さくなりかつエンジン回転速度Neが高くなる側へと拡大することとなる。これは、ノッキングが、火花点火により未燃焼混合気の全体に火炎伝播し終わる前に、火炎前方に残っている未燃焼混合気(エンドガス)が高温高圧のため自発火して過激な圧力上昇を生じる現象であるところ、実過給圧rPbやエンジン回転速度Neが同じでも目標圧縮比基本値が高いほうがノッキングが生じがちになるためである。
ここでは、目標圧縮比基本値CR0について小さい側から10、12、14の3つを挙げたが、この値に限定されるものでない。目標圧縮比基本値CR0の最小値や最大値はエンジン仕様により予め定まっている。また、目標圧縮比基本値CR0の数値も2飛ばしの数でなく、1飛ばしの数でもかまわない。ノッキング発生領域の境界を表す個数は、メモリ容量に余裕があれば多くできるし、余裕がなければ少なくすればよい。
図12において例えば、図11Aステップ4で算出された目標圧縮比基本値CR0が第1目標圧縮比基本値(=10)の場合であったとすれば、実過給圧rPb及びエンジン回転速度Neから定まる運転点がノッキング発生領域の境界Aより上側にあるとき、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があることとなる。これに対して、実過給圧rPb及びエンジン回転速度Neから定まる運転点がノッキング発生領域の境界Aより下側にあるとき、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性がないこととなる。これより、ノッキング発生領域の境界Aが現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性がある実過給圧rPb及びエンジン回転速度Neの各上限値を決定している。言い換えると、ノッキング発生領域の境界Aを辿るときの実過給圧rPb及びエンジン回転速度Neが、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性がある実過給圧rPb及びエンジン回転速度Neの各上限値である。従って、目標圧縮比に基づいて基本マップを選択することが、目標圧縮比基本値に基づいて現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性がある実過給圧rPb及びエンジン回転速度Neの各上限値を決定することに相当している。
ステップ6では、吸気温度Tmから図13を内容とするテーブルを検索することにより吸気温度補正量Hを算出し、ステップ7でこの補正量Hを用いて基本マップを修正する。
吸気温度補正量Hは、図13に示したように吸気温度Tmが基準温度T0に等しいときゼロであり、吸気温度Tmが基準温度T0より高くなるほど大きくなる。この逆に、吸気温度Tmが基準温度T0より低くなるほど吸気温度補正量Hは負の値で大きくなる。ここで、基準温度T0は、基本マップを適合したときの吸気温度である。
この吸気温度補正量Hを用いた基本マップの修正については、図14を参照して説明する。図14に示したように、基本マップの内容であるノッキング発生領域の境界が、実線であったとすると、実線で示されるノッキング発生領域の境界は吸気温度Tmが基準温度T0であるときに、最適となるものである。従って、吸気温度Tmが基準温度Tm0より高くなると、ノッキング発生領域の境界が実線から外れて破線へと下向きに移動し、吸気温度Tmが基準温度T0であるときよりもノッキング発生領域が拡大する。これは、実過給圧rPbやエンジン回転速度Neが同じでも吸気温度Tmが基準温度T0より高いほうが吸気温度Tmが基準温度T0であるときよりも現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性が高くなるためである。すなわち、吸気温度Tmが高い方が燃焼室21内でそのだけ高くなる圧力及び温度にエンドガスが晒されることから、ノッキングが生じる可能性が高くなる。一方、吸気温度Tmが基準温度T0より低くなると、ノッキング発生領域の境界が実線から外れて一点鎖線へと上向きに移動し、吸気温度Tmが基準温度T0であるときよりもノッキング発生領域が縮小する。これは、実過給圧rPbやエンジン回転速度Neが同じでも吸気温度Tmが基準温度T0より低いほうが現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合に吸気温度Tmが基準温度T0であるときよりもノッキングが生じる可能性が低くなるためである。すなわち、吸気温度Tmが低い方が燃焼室21内でそのだけ低くなる圧力及び温度にエンドガスが晒されるので、ノッキングが生じる可能性が低くなる。
このように、ノッキング発生領域の境界は吸気温度Tmの影響を受けるので、吸気温度Tmが基準温度T0より外れたときにも、実線で示される境界を用いて、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があるか否かを判定したのでは、実過給圧rPb及びエンジン回転速度Neによれば実際には、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があるのに、ノッキングが生じる可能性がないと、あるいは現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性が実際にはないのに、ノッキングが生じる可能性があると誤判定されることが考えられる。そこで、吸気温度Tmが基準温度T0から外れることがあっても、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があるか否かの判定に誤判定が生じることがないように、補正量Hを用いて基本マップを修正するのである。例えば、吸気温度Tmが基準温度T0より高い場合には、基本マップに対して補正量Hの分だけノッキング発生領域の境界を下方へと修正する。一方、吸気温度Tmが基準温度T0より低い場合には、基本マップに対して補正量Hの分だけノッキング発生領域の境界を上方へと修正する。
図11Bにおいてステップ8では、吸気温度補正量Hにより修正された基本マップ(この修正された基本マップを以下「修正後マップ」という。)上で、実過給圧rPb及びエンジン回転速度Neから定まる運転点(以下、この実過給圧rPb及びエンジン回転速度Neから定まる運転点を、単に「運転点」ともいう。)がノッキング発生領域にあるか否かをみる。修正後マップ上で運転点がノッキング発生領域の境界より上側にあれば運転点がノッキング発生領域にある、従って現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があると判断してステップ9、10、11、12に進む。
この場合、運転点は実過給圧rPbとエンジン回転速度Neに応じて動くので、修正後マップ上で運転点がノッキング発生領域の境界より上側にある状態は、所定の時間続く。所定の時間は一概にいえないが、車両の減速前の実過給圧の状態、減速の程度及び減速時間、再加速の程度及び再加速時間などに依存する。
ステップ9〜12は目標圧縮比を減量補正する部分である、まず、ステップ9では過給圧補正目標吸入空気量tQac hと実過給圧rPbとから図15を内容とするマップを検索することにより、圧縮比補正量基本値CRh0を、ステップ10ではエンジン回転速度Neから図16を内容とするテーブルを検索することにより、圧縮比補正量基本値の回転速度補正率hnをそれぞれ算出する。ステップ11では、この回転速度補正率hnを圧縮比補正量基本値CRh0に乗算して、つまり
CRh=CRh0×hn …(3)
の式により圧縮比補正量CRhを算出する。ステップ12では目標圧縮比基本値CR0からこの圧縮比補正量CRhを差し引いた値を目標圧縮比tCRとして、つまり上記(2)式により目標圧縮比tCRを算出する。
図15に示したように圧縮比補正量基本値CRh0は、過給圧補正目標吸入空気量tQac hが一定の条件で実過給圧rPbが高くなるほど大きくなる値である。これは、実過給圧rPbが高いほど現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合に再加速によりスロットル弁開度が大きくなって体積効率が上昇し、ノッキングが生じる可能性が高まるので、ノッキングが生じる可能性がなくなるように圧縮比補正量基本値CRh0を大きくし、これによって現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合の目標圧縮比tCRを小さくするためである。
図15に示したように実過給圧rPbが高い状態で圧縮比補正量基本値CRh0は過給圧補正目標吸入空気量tQac hが小さくなるほど大きくなる値である。これは、過給圧補正目標吸入空気量tQac hが小さいほど現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合に再加速により圧縮比が高くなりノッキングが生じる可能性が高まるので、ノッキングが生じる可能性がなくなるように圧縮比補正量基本値CRh0を大きくし、これによって現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合の目標圧縮比tCRを小さくするためである。
図15に示した圧縮比補正量基本値CRh0の特性は、エンジン回転速度Neが基準回転速度N0の条件で現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性がないように適合した特性である。このため、エンジン回転速度Neが基準回転速度N0の条件では圧縮比補正量基本値CRh0のままでよいので、図16に示したように、エンジン回転速度Neが基準回転速度N0のとき回転速度補正率hnは、1.0である。このとき、上記(3)式より圧縮比補正量CRhは圧縮比補正量基本値CRh0と一致する。
一方、エンジン回転速度Neが基準回転速度N0より小さくなると、そのエンジン回転速度Neが小さくなった分だけ現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性が高くなる。これは、低回転速度になるほど燃焼室21内でエンドガスが高圧高温に晒される時間が長くなり、ノッキングが生じる確率が高くなるためである。このため、エンジン回転速度Neが基準回転速度N0より小さいときには、図16に示したように回転速度補正率hnを1.0より大きな値とし、これによって上記(2)式より圧縮比補正量CRhを圧縮比補正量基本値CRh0より大きくすることで、エンジン回転速度Neが基準回転速度N0より小さい領域で現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にもノッキングが生じる可能性がないようにする。
この反対に、エンジン回転速度Neが基準回転速度N0より大きくなると、その回転速度が大きくなった分だけ現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性が低くなる。これは、高回転速度になるほど燃焼室21内でエンドガスが高圧高温に晒される時間が短くなり、ノッキングが生じる確率が低くなるためである。このため、エンジン回転速度Neが基準回転速度N0より大きいときには、図16に示したように回転速度補正率hnを1.0より小さな正の値とし、これによって(3)式より圧縮比補正量CRhを圧縮比補正量基本値CRh0より大きくすることで、エンジン回転速度Neが基準回転速度N0より大きい領域で現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合に圧縮比を高く保ち、エンジン1の熱効率を良くして燃費を良くする。
運転点がノッキング発生領域の境界より上側に暫くとどまった後に、ノッキング発生領域の境界より下側へと運転点が移れば、運転点がノッキング発生領域を外れた、従ってもはやノッキングが生じる可能性がないと判断して、図11Bにおいてステップ8よりステップ13に進み、目標圧縮比基本値CR0をそのまま目標圧縮比tCRとする。
また、運転点がもともとノッキング発生領域の境界より下側にあれば運転点がノッキング発生領域にない、従って現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性がないと判断して、図11Bにおいてステップ8よりステップ13に進み、目標圧縮比基本値CR0をそのまま目標圧縮比tCRとする。
このようにして算出した目標圧縮比tCRは、図示しないフローにおいて駆動信号に変換され、圧縮比アクチュエータ16に出力される。
本実施形態の作用を図9を参照して説明すると、図9は図8と同一の条件において、スロットル弁開度TVO、過給圧補正目標吸入空気量tQac h、実過給圧rPb、目標圧縮比tCRがどのように変化するのかを示している。図8と相違するのは、目標圧縮比tCRである。
本実施形態では、例えばt11のタイミングからt12のタイミングまでの間で現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があると判定される。そして、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があると判定されたとき、図9第3段目の過給圧補正目標吸入空気量tQac hと、図9第4段目の実過給圧rPbと、そのときのエンジン回転速度Neとから圧縮比補正量CRhが正の値で算出され、目標圧縮比基本値CR0からこの正の値の圧縮比補正量CRhを差し引いた値が目標圧縮比tCRとして算出される。
この結果、t11のタイミングからt12のタイミングまでの間で目標圧縮比基本値CR0よりも目標圧縮比tCRが小さくなっている(図9最下段の一点鎖線参照)。すなわち、実過給圧rPbが高い状態で減速再加速によりスロットル弁29が開かれた場合に、ターボ過給機45の応答遅れにより実過給圧rPbの低下が遅れても、その遅れに見合って圧縮比を下げることが可能となり、これによって実過給圧rPbが高い状態より車両の減速再加速が行われた場合のノッキングを回避することが可能となった。
このように、本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、圧縮比可変機構と、目標圧縮比(CR0)を設定する目標圧縮比設定手段(図11Aのステップ3参照)と、この設定された目標圧縮比(CR0)となるように圧縮比可変機構を制御する制御手段(35)と、ターボ過給機45と、リフト可変機構27(吸入空気量調整手段)と、このリフト可変機構27を用いて吸入空気量を運転条件に応じて制御する吸入空気量制御手段(35)とを備えたエンジンにおいて、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があるか否かを予め判定するノッキング発生事前判定手段(図11Bのステップ8参照)と、この判定手段により現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があると判定されたとき、目標圧縮比(CR0)を減量側に補正する目標圧縮比減量補正手段(図11Bのステップ9〜12参照)とを備えるので、高負荷状態のように実過給圧rPbが高い状態で減速再加速によりスロットル弁29が開かれた場合に、ターボ過給機45の応答遅れにより実過給圧rPbの低下が遅れても、その遅れに見合って圧縮比を下げることが可能となり、実過給圧rPbが高い状態で車両の減速再加速が行われた場合におけるノッキングの発生を回避できる。
本実施形態(請求項2に記載の発明)によれば、目標圧縮比設定手段は、エンジンの運転条件に基づいて自然吸気時の目標吸入空気量tQacを算出する目標吸入空気量算出手段(図11Aのステップ2、図6参照)と、大気圧Paと実過給圧rPbとの比でこの自然吸気時の目標吸入空気量tQacを補正して過給時の目標吸入空気量である過給圧補正目標吸入空気量tQac hを算出する過給圧補正目標吸入空気量算出手段(図11Aのステップ3参照)と、この過給圧補正目標吸入空気量tQac hに基づいて目標過給圧(CR0)を設定する手段(図11Aのステップ4、図7参照)とからなるので、過給時には過給圧補正目標吸入空気量tQac hが自然吸気時の目標吸入空気量tQacよりも小さくなり、これによって、過給時に自然吸気時の目標吸入空気量tQacよりも大きな吸入空気量が燃焼室に流入することによるノッキングの発生を防止できる。
本実施形態(請求項3に記載の発明)によれば、目標圧縮比減量補正手段は、過給圧補正目標吸入空気量tQac hと実過給圧rPbとに基づいて圧縮比補正量(CRh0)を算出する圧縮比補正量算出手段(図11Bのステップ9、図15参照)と、目標圧縮比(CR0)からこの圧縮比補正量(CRh0)を減算した値を改めて目標圧縮比とする手段(図11Bのステップ12参照)とからなるので、過給圧補正目標吸入空気量tQac hや実過給圧rPbに関係なく、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合におけるノッキングの発生を回避できる。
本実施形態(請求項4に記載の発明)によれば、圧縮比補正量(CRh0)を、実過給圧rPbが高いほどを大きくするので(図15参照)、車両の減速再加速前の現在の実過給圧rPbの大小に関係なく、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合におけるノッキングの発生を回避できる。
本実施形態(請求項5に記載の発明)によれば、圧縮比補正量(CRh0)を、過給圧補正目標吸入空気量tQac hが小さいほど大きくするので(図15参照)、車両の減速再加速前の現在の過給圧補正目標吸入空気量tQac hの大小に関係なく、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合におけるノッキングの発生を回避できる。
本実施形態(請求項6に記載の発明)によれば、圧縮比補正量(CRh0)をエンジンの回転速度Neで補正するので(図11Bのステップ10、11参照)、車両の減速再加速前に特に低回転速度側にあり、この状態でのエンジンの回転速度Neに関係なく、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合におけるノッキングの発生を回避できる。
本実施形態(請求項7に記載の発明)によれば、ノッキング発生事前判定手段は、現在の過給圧状態より減速再加速が行われた場合にノッキングの発生を回避することの可能な実過給圧及びエンジン回転速度の各上限値を目標圧縮比(CR0)毎に決定する実過給圧・エンジン回転速度上限値決定手段(図11Aのステップ5参照)を備え、現在の実過給圧rPb及びエンジン回転速度Neが実過給圧・エンジン回転速度上限値決定手段により決定される実過給圧及びエンジン回転速度の各上限値より上方にある場合に、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があると判定するので(図11Bのステップ8参照)、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があるか否かの判定を簡易に行うことができる。
本実施形態(請求項10に記載の発明)によれば、吸気温度センサ41(温度検出手段)を備え、吸気温度Tmに基づいてノッキング発生領域(現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性がある領域)の境界を修正するので、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性があるか否かの判定を、吸気温度Tmに関係なく精度良く行うことができる。
本実施形態(請求項13に記載の発明)によれば、目標圧縮比(CR0)を減量側に補正するとき、スロットル弁開度TVOを補正しない。すなわち、現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にスロットル弁29を絞って吸入空気量を制限することはしないので、トルクが犠牲になることがなく加速性能の悪化を抑制できる。
実施形態では、吸気弁25のリフト量及び作動角並びに吸気弁25のリフト中心角の位相を運転条件に応じて制御することにより燃焼室21に流入する吸入空気量を制御する場合で説明したが、この場合に限られるものでない。リフト可変機構27及び位相可変機構28を備えていないエンジンにおいて、スロットル弁開度により燃焼室21に流入する吸入空気量を制御する場合にも本発明の適用がある。
実施形態では、目標吸入空気量tQacに基づいて過給圧補正目標吸入空気量tQac hを算出し、この過給圧補正目標吸入空気量tQac hに基づいて目標圧縮比基本値CR0を算出する場合で説明したが、目標エンジントルクtTengに基づいて過給圧補正目標エンジントルクtTeng h(=tTeng×Pa/rPb)を算出し、この過給圧補正目標エンジントルクtTeng hに基づいて目標圧縮比基本値CR0を算出するようにしてもかまわない。
実施形態では、過給圧センサ39により実過給圧rPbを検出する場合で説明したが、実過給圧を推定する公知技術(特開2005−155506号公報、特開2001−90543号公報、特開2000−220501号公報参照)があるので、この公知技術を用いて実過給圧を推定するようにしてもかまわない。
実施形態では、吸気温度Tmに基づいてノッキング発生領域(現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性がある領域)の境界を修正する場合で説明したが、この場合に限られるものでない。冷却水温度に基づいてノッキング発生領域(現在の過給圧状態より車両の減速再加速が行われた場合にノッキングが生じる可能性がある領域)の境界を修正するようにしてもかまわない。