JP2011017418A - 防振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】主振動方向だけでなく、この主振動方向と直交する軸直方向でも振動減衰する防振装置において、軸直方向の圧抜きを効果的に行うことが可能となる。
【解決手段】隔壁42には薄肉部42Uが形成されている。受圧液室40A、40Bの圧力の相対変動が、第2オリフィス52A、52Bを通じての副液室30との流体移動で吸収できない程度の高周波で発生すると、薄肉部42Uが変形することで、この圧力変動を緩和できるように決められている。
【選択図】図1

Description

本発明は、振動を発生する部材からの振動の伝達を防止する流体封入式の防振装置に係り、特に、自動車のエンジンマウント等に好適に用いられる防振装置に関する。
例えば、乗用車等の車両では、振動発生部となるエンジンと振動受け部となる車体との間にエンジンマウントとしての防振装置が配設される。この防振装置は、エンジンから発生する振動によって、内筒と外筒とが軸方向に振動すると、主液室と副液室との間の液体移動によってこの振動を減衰させるようになっている。たとえば特許文献1に記載の防振装置では、上記の構造に加えて、軸方向と直交する方向(軸直方向)にも複数の流体室(液室)を配置し、軸直方向の振動を複数の液室間の液体移動によって減衰させるようになっている。
ところで、特許文献1に記載の構造では、インナ軸部材を軸直角方向に貫通する貫通孔を形成すると共に、貫通孔を流体密に閉塞する可動ゴム膜を設け、流体室の圧力が可動ゴム膜に晒されることで、高周波の振動に対して、流体室の圧力変動の緩和(いわゆる「圧抜き」)をする構造とされている。
しかし、特許文献1の構造では、インナ軸部材に形成した貫通孔に可動ゴム膜を設けているため、可動ゴム膜の形状やサイズに制限があり、圧抜きを効果的に行うには限界がある。また、インナ軸部材は一般に金属製とされるため、金属部材に貫通孔を形成すると、製造コストが高くなる。
特開2006−64119号
本発明は上記事実を考慮し、主振動方向だけでなく、この主振動方向と直交する軸直方向でも振動減衰する防振装置において、軸直方向の圧抜きを効果的に行うことが可能で、しかも低コストで製造できる防振装置を得ることを課題とする。
請求項1に記載の発明では、筒状に形成され振動発生部及び振動受け部の一方に連結される第1取付部材と、振動発生部及び振動受け部の他方に連結され、前記第1取付部材の内周側に配置された第2取付部材と、前記第1取付部材と前記第2取付部材との間に配置されて第1取付部材と第2取付部材とを連結する弾性体と、前記弾性部材との間に、液体が封入されると共に前記弾性体の弾性変形に伴って内容積が変化する主液室を構成する仕切部材と、前記仕切部材との間に、液体が封入されると共に液圧変化に応じて内容積が変化する副液室を構成するダイヤフラム部材と、前記主液室と前記副液室との間での液体の移動を可能とする第1制限通路と、前記弾性体に設けられ前記第1取付部材との間に液室を構成する凹部と、前記液室を、前記第1取付部材の軸方向と交差する方向に配列される複数の受圧液室に区画する隔壁と、複数の前記受圧液室どうしの間、又は受圧液室のそれぞれと前記副液室との間での液体の移動を可能とする第2制限通路と、前記隔壁に設けられ、複数の前記受圧液室の間の圧力差を低減する圧力差低減手段と、を有する。
この防振装置では、振動発生部から第1取付部材及び第2取付部材の一方に振動が伝達されると、第1取付部材と第2取付部材との間に配置されてこれらを連結している弾性体が弾性変形する。そして、弾性体の内部摩擦等に基づく吸振作用によって振動が吸収され、振動受け部側へ伝達される振動が低減される。
弾性体と仕切部材との間に構成された主液室と、仕切部材とダイヤフラム部材との間に構成された副液室と、にはそれぞれ液体が封入されており、さらに、主液室と副液室との液体の移動が、第1制限通路により可能とされている。したがって、第1取付部材と第2取付部材とが軸方向に振動し、弾性体の弾性変形に伴って主液室の内容積が変化すると、液体の一部が副液室との間で移動するので、これによって軸方向の入力振動を吸収できる。
さらにこの防振装置では、弾性体に設けられた凹部と第1取付部材との間に液室が構成されると共に、この液室が、隔壁によって、第1取付部材の軸方向と交差する方向に配列される複数の受圧液室に区画されている。そして、複数の受圧液室どうしの間、又は受圧液室のそれぞれと副液室との間での液体の移動が、第2制限通路により可能とされている。したがって、第1取付部材と第2取付部材とが軸方向と直交する方向(軸直方向)に振動すると、複数の受圧液室どうしの間、又は受圧液室のそれぞれと副液室との間で液体が移動する。これにより、軸直方向においても、入力振動を吸収できる。
隔壁には、複数の受圧液室の間の圧力差を低減する圧力差低減手段が設けられている。したがって、軸直方向に高周波の振動(たとえば、第2制限通路が液体の移動通路として作用しなくなる程度の振動)が入力すると、複数の受圧液室の圧力差を圧力差低減手段が低減させ、受圧液室の圧力変動を抑制する(いわゆる「圧抜き」がなされる)。これにより、軸直方向に高周波の振動が入力した場合でも、この振動を吸収して、防振装置としての機能を発揮できる。
しかも、圧力差低減手段は隔壁に設けられている。第2取付部材等に対し貫通孔を設ける等の加工を施す必要がないので、低コストで製造できる。また、第2取付部材の貫通孔に可動ゴム膜を設けた構成と比較して、実質的に圧抜きとして作用する部分の形状やサイズの自由度が大きくなるので、軸直方向の圧抜きを効果的に行うことが可能になる。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記圧力差低減手段が、前記隔壁を局所的に薄肉とした薄肉部により構成され、前記隔壁の、前記薄肉部以外の部分が薄肉部よりも相対的に厚肉の厚肉部とされている。
したがって、受圧液室間の圧力差、すなわち圧力変動を薄肉部が変形することで吸収できる。隔壁に薄肉部を形成するだけで圧力差低減手段を構成できるので、防振装置全体の性能に与える影響が小さくなり、防振装置本来の防振性能を高く維持できる。
また、隔壁の、薄肉部以外の部分が、薄肉部よりも相対的に厚肉とされた厚肉部とされている。したがって、厚肉部により、第1取付部材と第2取付部材との軸方向の荷重の一部を支持することが可能となる。
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記厚肉部が、前記隔壁において、前記軸方向の一端から他端まで連続している。
したがって、厚肉部が、軸方向の一端から他端まで連続していない構成と比較して、軸方向の荷重の一部をより確実に支持することが可能になる。
請求項4に記載の発明では、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記薄肉部が、前記隔壁を正面視したとき円形に形成されている。
このように薄肉部を円形とすることで、円形以外の形状とした場合と比較して、薄肉部の面積に対する圧抜きの効果を高く発揮させることができる。また、薄肉部をたとえば多角形状とした場合には、薄肉部の周囲に角部が存在するため、この角部に応力集中が起こることがあるが、薄肉部を円形とした場合には角部が存在しないため応力集中も起こらず、隔壁の耐久性が高くなる。
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記弾性体が、前記第2取付部材から前記仕切部材に向かって延在されつつ次第に拡径された円錐台状の円錐部と、前記円錐部から見て前記仕切部材の反対側で前記第2取付部材から径方向外側に延出され前記液室の蓋となる蓋部と、を備えている。
弾性体に、円錐台状の円錐部を形成することで、仕切部材との間に主液室を構成すると共に、弾性体としての体積を大きく確保することが可能となり、耐久性が高くなる。また、弾性体から延出された蓋部によって液室の蓋を構成することで、弾性体の凹部と第1取付部材との間の液室(受圧液室)を確実に維持できる。
本発明は上記の構成としたので、主振動方向だけでなく、この主振動方向と直交する軸直方向でも振動減衰する防振装置において、軸直方向の圧抜きを効果的に行うことが可能で、しかも低コストで製造できる。
本発明の第1実施形態に係る防振装置の構成を軸方向に沿って破断して示す斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る防振装置の内部構造を示す斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る防振装置の内部構造を軸直方向に破断して示す斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る防振装置の構成を示す軸方向の断面図である。 本発明の第1実施形態に係る防振装置の構成を示す軸直方向の断面図である。 防振装置の軸直方向に作用する入力周波数と、±0.3mmの振幅での動ばね定数及び±1.0mmの振幅での損失係数の関係を示すグラフである。 本発明の第1実施形態の変形例に係る防振装置の内部構造を軸直方向に破断して示す斜視図である。 本発明の第1実施形態の変形例に係る防振装置の内部構造を軸直方向に破断して示す斜視図である。 本発明の第1実施形態の変形例に係る防振装置の構成を示す軸直方向の断面図である。 本発明の第1実施形態の変形例に係る防振装置の構成を隔壁において部分的に拡大して示し、(A)は縦方向の断面図、(B)は(A)のX−X線断面図である。
図1には本発明の第1実施形態の防振装置12が示されている。この防振装置12は、例えば、自動車におけるエンジンマウントとして用いられるものである。振動受け部である車体上において、振動発生部となるエンジンを支持する。なお、図面において符号Sは防振装置12の軸心を示しており、この軸心Sに沿った方向を防振装置12の軸方向、軸心Sに直交する方向(軸直方向)を防振装置12の径方向とする。
図2にも詳細に示すように、防振装置12は、略円筒状に形成された外筒14を有している。外筒14の軸方向中央よりも下方の位置には、段部14Dを経て縮径された縮径部14Nが形成されている。また、外筒14の内周面の略全体に渡って、略円筒状の被覆ゴム16が加硫接着され被覆されている。被覆ゴム16の下端近傍からは、ダイヤフラム18が径方向内側へ向かって一体的に延出されている。
ダイヤフラム18は、その中央部が上方に向かって凸となるように湾曲された膜状の部材であり、後述するオリフィス円筒体26との間に副液室30を構成している。そして、ダイヤフラム18が変形することで副液室30が拡縮され、その容積が変化するようになっている。なお、被覆ゴム16の下端は、外筒14の下側から径方向外側へと回り込んでおり、縮径部14Nの外周面に密着されている。外筒14と被覆ゴム16とで、本発明に係る第1取付部材20が構成されている。
外筒14からは、図示しない複数本(たとえば3本)の脚部が径方向外側に延出されており、脚部の先端のボルト挿通孔にボルトを挿通することで、防振装置12が車体に取り付けられる。なお、脚部に代えて(あるいは併用して)外筒14にブラケットを固着し、このブラケットを用いて外筒14を車体に取り付ける構造であってもよい。
外筒14の内部には、軸心Sに位置するように、円筒状の内筒22が配置されている。内筒22の下底部分は閉塞されているが、上底部分は開口されており、内周に雌ネジ22Mが形成されている。この雌ネジ22Mに、たとえばエンジン側のボルト等が捩じ込まれて、エンジンが防振装置12に支持される。なお、本実施形態の防振装置12では、軸直方向の振動を減衰させる効果も奏するものであるが、振動が入力していない状態では、内筒22の軸心は外筒14の軸心と一致している。
内筒22と外筒14(被覆ゴム16)の間には、ゴム弾性体24が配置されており、内筒22と外筒14とが、ゴム弾性体24によって連結されている。さらにゴム弾性体24とダイヤフラム18又は被覆ゴム16の間には、オリフィス円筒体26及び仕切円板32が配置されている。
ゴム弾性体24は、内筒22の下側部分からオリフィス円筒体26に向かって延在されつつ次第に拡径された円錐台状のゴム本体部24Bを有している。さらに、ゴム本体部24Bよりも上方からは、外筒14の上端に向かって(すなわち、ゴム本体部24Bから見て仕切円板32とは反対側に向かって)延在されつつ、次第に拡径された蓋部24Lとを有している。そして、ゴム本体部24B、蓋部24L及び第1取付部材20(被覆ゴム16)との間に、本発明に係る液室40が構成されている。ゴム本体部24Bをこのような形状とすることで、その体積を大きくとることができ、耐久性が向上されている。
オリフィス円筒体26は、略円板状のオリフィス円板部26Dと、このオリフィス円板部26Dの外周から上方に立設された略円筒状のオリフィス円筒部26Eと、を有している。オリフィス円筒部26Eの下面の外縁部分は、段部14Dにおいてゴム弾性体16上に支持されている。また、オリフィス円板部26Dの上方には、仕切円板32が支持されており、仕切円板32と、ゴム弾性体24のゴム本体部24Bとの間には、主液室28が構成されている。主液室28には、主液室28には、エチレングリコール、シリコンオイル等の液体が満たされている。さらに、オリフィス円板部26Dとダイヤフラム18との間に副液室30が構成されている。副液室30にも主液室28と同様に、エチレングリコール、シリコンオイル等の液体が満たされている。
オリフィス円板部26Dの中央には、上面側を円形に凹ませた上凹部56Aと、下面側を円形に凹ませた下凹部56Bが形成され、これによってオリフィス円板部26Dが部分的に薄肉となった薄肉部58が形成されている。上凹部56Aには、円形のメンブラン34が隙間無く収容され、さらにメンブラン34は上方から仕切円板32で覆われている。薄肉部58及び仕切円板32には複数の貫通孔60、62が形成されており、主液室28と副液室30の圧力が、それぞれ貫通孔60、62を通じてメンブラン34に作用するようになっている。
メンブラン34には環状の薄肉環部34Sが形成されており、主液室28と副液室30の圧力の相対変動が、後述する第1オリフィス36を通じての流体移動で吸収できない程度の高周波で発生すると、メンブラン34の薄肉環部34Sが変形することで、この圧力変動を緩和する。
オリフィス円板部26Dには、薄肉部58を取り囲む螺旋状の第1オリフィス36が形成されている。第1オリフィス36の上端は、仕切円板32に形成された連通孔38を通じて主液室28に連通し、第1オリフィス36の下端は、下方に開放されて副液室30に連通している。これにより、第1オリフィス36は、主液室28と副液室30との間での液体の移動を許容する流路となっている。特に、第1オリフィス36の流路としての長さ及び断面積は、特定の周波数範囲の振動(たとえばシェイク振動)に対応して設定されており、主液室28と副液室30との液体移動により、この振動エネルギーを吸収できるように調整されている。
図2及図3からも分かるように、ゴム本体部24Bと蓋部24Lの間には、液室40を軸直方向に仕切る2枚の隔壁42が形成されている。隔壁42は軸心Sを中心として対称な形状とされ、蓋部24Lからゴム本体部24Bまで連続している。また、隔壁42の先端(軸心Sから最も離れた側の端部)は、図4及び図5にも示すように、第1取付部材20(被覆ゴム16)の内側に圧接されている、この隔壁42によって、液室40が、2つの受圧液室40A、40Bに区画されている。なお、図4から分かるように、隔壁42は、その上部が蓋部24Lよりも上方に延出されている。
図1に示すように、ゴム弾性体24のゴム本体部24Bの外周面には、扁平な円筒状の保持筒44が配置されて加硫接着されている。保持筒44は、オリフィス円筒体26のオリフィス円筒部26Eの内周面に圧着されており、これにより、ゴム弾性体24とオリフィス円筒体26との不用意な位置ズレが抑制されている。また、ゴム弾性体24の蓋部24Lの外周面には、リング状の保持環46が配置されて加硫接着されている。保持環46の下面は外筒14の上面に密着されており、保持環46が外筒14に対し固定されることで、ゴム弾性体24の蓋部24Lが外筒14に対し固定されている。
保持筒44と保持環46は、これらの間に形成された複数の支持板48によって連結されて一体化されている。本実施形態では、図5にも詳細に示すように、支持板48は、軸心Sを中心として対称な位置となるように2つ形成されており、周方向に見て所定の長さ(幅)で、隔壁42の中間に位置するように形成されている。支持板48のそれぞれは、軸心Sを中心とする円弧状に湾曲されており、支持板48の内面(軸心S側の内周面)には、ゴム弾性体24のゴム本体部24Bと蓋部24Lを構成するゴムが延出されて加硫接着されており、支持板48の内面側がこのゴムで覆われている。これに対し、支持板48の外面は、被覆ゴム16に圧接されている。
本実施形態では、保持筒44、保持環46及び支持板48が金属等により一体的に形成され、さらに保持筒44及び保持環46の内側でゴム弾性体24が加硫接着されて一体化されている。そして、このように一体化された部材が、第1取付部材20(被覆ゴム16)の内側に圧入されるようになっている。
本実施形態では特に、支持板48の幅方向(被覆ゴム16の内周面に沿った方向)と、隔壁42とが、軸心Sに沿った方向に見て略平行となるように、支持板48と隔壁42との位置関係が決められている。換言すれば、軸心Sに沿った方向に見て、支持板48と隔壁42とが、中心角90度の位置で周方向に交互に、且つ均等間隔で配置されていることになる。
オリフィス円筒体26のオリフィス円筒部26Eの外周面には凹溝50が形成されている。この凹溝50が形成された部分では、オリフィス円筒部26Eと第1取付部材20(被覆ゴム16)との間に、受圧液室40A、40Bのそれぞれに対応した、2つの第2オリフィス52A、52Bが構成されている。第2オリフィス52A、52Bは、その上端の一部が開放されてそれぞれ対応する受圧液室40A、40Bに連通し、その下端の一部も開放されて副液室30に連通している。これにより、第2オリフィス52A、52Bはそれぞれ、対応する受圧液室40A、40Bと副液室30との間で流体の移動を許容する流路となっている。第2オリフィス52A、52Bの流路としての長さ及び断面積は、特定の周波数範囲の振動に対応して設定されており、受圧液室40A、40Bと副液室30との液体移動により、この振動エネルギーを吸収できるように調整されている。
図4及び図5に詳細に示すように、隔壁42のそれぞれには、上下方向の略中央で、且つ径方向の略中央の位置において、隔壁42の両面を局所的に凹ませた円形の凹部54が形成されている。すなわち、隔壁42にはこの凹部54により、局所的に薄肉とされた薄肉部42Uが形成されると共に、薄肉部42U以外の部分が、相対的に厚肉の厚肉部42Aとなっている。特に厚肉部42Aは、隔壁42の径方向外側及び内側において、上端(蓋部24L)から下端(ゴム本体部24B)まで連続する形状となっている。凹部54は、隔壁42を正面から見たときに円形となるように形成されている。
薄肉部42Uにおける隔壁42の厚さは、受圧液室40A、40Bの圧力の相対変動が、第2オリフィス52A、52Bを通じての副液室30との流体移動で吸収できない程度の高周波で発生すると、薄肉部42Uが変形することで、この圧力変動を緩和できるように決められている。これに対し、厚肉部42Aの厚さは、隔壁42を被覆ゴム16に対し確実に圧着させて隔壁42と被覆ゴム16との間を液密させ、さらに、蓋部24Lを確実に支持すると共に、内筒22と外筒14とが相対移動したときには弾性変形することで、相対移動に対する抗力を発揮すると共に、内部摩擦によって相対移動のエネルギーを効果的に散逸させることができるように決められている。
次に、本実施形態の防振装置12の作用を説明する。
エンジンが作動すると、エンジンからの振動が内筒22を介してゴム弾性体24に伝達される。このとき、ゴム弾性体24は吸振主体として作用し、ゴム弾性体24の変形に伴った内部摩擦等による減衰作用により入力振動が吸収される。
ここで、エンジンから防振装置12に入力する主要な振動としては、エンジン内のピストンがシリンダ内で往復移動することにより発生する振動(主振動)と、エンジン内のクランクシャフトの回転速度が変化することにより生じる振動(副振動)とが挙げられる。また、車体側から防振装置12に入力する振動にも、前述の主振動と副振動に近い入力がある。ゴム弾性体24は、入力振動が主振動であっても副振動であっても、その内部摩擦等による減衰作用により吸収可能である。実際には、これら主振動と副振動とが合成された振動が防振装置12に作用するが、以下では便宜上、これらの振動ごとに分けて、防振装置12の挙動を説明する。なお、この防振装置12では、配置方向の一例として、主振幅の方向が防振装置12における軸方向と一致し、副振幅の方向が防振装置12における軸直方向と一致するように配置している。
まず、主振動が防振装置12に入力された場合について説明する。この防振装置12では、主液室28が第1オリフィス36を通して副液室30に連通されている。したがって、内筒22にエンジン側から主振動が入力されると、ゴム弾性体24が主振幅方向に沿って弾性変形すると共に、主液室28の内容積を拡縮させる。これにより、第1オリフィス36を通して主液室28と副液室30とを、液体が入力振動に同期して相互に流通する。
ここで、第1オリフィス36における路長及び断面積は特定の入力振動(たとえばシェイク振動)の周波数に対応するように設定されている。このため、第1オリフィス36を通して主液室28と副液室30との間を相互に流通する液体に共振現象(液柱共振)が生じる。この液柱共振に伴う液体の圧力変化及び粘性抵抗により、主振幅方向の入力振動を特に効果的に吸収できる。
さらに、主振幅方向の入力振動の周波数が高く、第1オリフィス36が目詰まり状態、すなわち液体が流れにくくなった場合には、メンブラン34が入力振動に同期して軸方向に沿って振動する。そしてこれにより、主液室28内の液圧上昇に伴う動ばね定数の上昇を抑えることができる。すなわち、主振幅方向におけるこのような高周波振動の入力時も、いわゆる「圧抜き」を行うことで、ゴム弾性体24の動ばね定数を低く維持し、このゴム弾性体24の弾性変形等により高周波振動も効果的に吸収できる。
次に、副振動が防振装置12に入力された場合について説明する。本実施形態の防振装置12では、受圧液室40A、40Bがそれぞれ、第2オリフィス52A、52Bを通して副液室30に連通されている。したがって、内筒22にエンジン側から副振動が入力されると、ゴム弾性体24が副振幅方向に沿って弾性変形すると共に、受圧液室40A、40Bの内容積を拡縮させる。これにより、第2オリフィス52A、52Bを通して受圧液室40A、40Bと副液室30とを液体が、入力振動に同期して相互に流通する。
ここで、第2オリフィス52A、52Bにおける路長及び断面積は特定の入力振動の周波数に対応するように設定されている。このため、第2オリフィス52A、52Bを通して受圧液室40A、40Bと副液室30との間を相互に流通する液体に共振現象(液柱共振)が生じる。この液柱共振に伴う液体の圧力変化及び粘性抵抗により、副振幅方向の入力振動を特に効果的に吸収できる。
さらに、副振幅方向の入力振動の周波数が高く、第2オリフィス52A、52Bが目詰まり状態、すなわち液体が流れにくくなった場合には、隔壁42の薄肉部42Uが入力振動に同期して振動する。そしてこれにより、受圧液室40A、40B内の液圧変化に伴う動ばね定数の上昇を抑えることができる。すなわち、本実施形態では、上記した主振動方向だけでなく、副振動方向における高周波振動の入力時も、いわゆる「圧抜き」を行うことで、ゴム弾性体24の動ばね定数を低く維持し、このゴム弾性体24の弾性変形等により高周波振動も効果的に吸収できる。
図6には、副振幅方向の入力振動の周波数に対する、ゴム弾性体24の動ばね定数及び損失係数の関係の一例が示されている。このグラフにおいて、太線が動ばね定数、細線が損失係数を示す。また、それぞれにおいて、実線は本実施形態の防振装置12を示し、二点鎖線は比較例の防振装置を示している。比較例の防振装置では、隔壁42に本実施形態の薄肉部42Uに相当する部分は形成されていないが、これ以外は本実施形態の防振装置12と同一の構造とされている。
このグラフにおいて、まず、細線の実線と二点鎖線とを比較すると分かるように、特に高周波の領域(たとえば15Hz以上)において、本実施形態と比較例とでは、ほぼ同等の損失係数となっている。また、太線の実線と二点鎖線とを比較すれば分かるように、高周波の領域において、本実施形態では比較例よりも、動ばね定数が低下している。特に、受圧液室40A、40Bのそれぞれを副液室と連通する構造の防振装置では、高周波の領域における動ばね定数が高くなることが想定されるが、本実施形態では、この高周波の領域における動ばね定数を確実に低下させている。
また、本実施形態の防振装置12では、隔壁42において薄肉部42U以外の部分を厚肉部42Aとしており、この厚肉部42Aによって、隔壁42は所定の厚みを有していることになるので、軸直方向における振動減衰効果を十分に発揮させることができる。加えて、厚肉部52Aによって、ゴム弾性体24の蓋部24Lをゴム本体部24Bに対し確実に支持できるようにしている。特に、厚肉部42Aは、隔壁42の径方向外側及び内側において、上端(蓋部24L)から下端(ゴム本体部24B)まで連続する形状となっている。このため、内筒22に主振幅方向の主振動が入力した場合には、荷重の一部を厚肉部42Aで支持できる(ゴム弾性体24全体として、主振動方向の荷重を支持できる部分が増えていることになる)。
しかも、本実施形態の防振装置12では、軸直方向での「圧抜き」を行うために、隔壁42に薄肉部42Uを形成するだけで済み、防振装置12における他の部位の形状変更等を伴わないので、防振装置12の全体としての性能に与える影響が少なくなる。すなわち、防振装置12は本来的に求められる防振性能を高く維持できる。
もちろん、本発明に係る薄肉部としては、上記した円形の薄肉部42Uに限定されない。すなわち、受圧液室40A、40Bについて「圧抜き」を行うことが可能であればよい。ただし、円形以外の形状にしたときには、薄肉部42Uを正面から見たときに薄肉部42Uの外周部分の曲率が変化することとなる。特に、薄肉部42Uをたとえば多角形状等に形成すると、曲率が局所的に大きい部分(角部が該当する)が存在するため、このような部分に応力集中が生じやすい。これに対し、薄肉部を円形にすると、応力集中を防止でき、耐久性が高くなるので、好ましい。しかも、薄肉部42Uを円形にすると、薄肉部42Uを正面視したときの面積に対する「圧抜き」の効果が、円形以外の形状と比較して高くなる。
また、上記では、2枚の隔壁42のそれぞれにおいて、両面に薄肉部42Uを形成した例を挙げたが、薄肉部42Uを形成する部位や数も、これに限定されない。たとえば図7に示す第1変形例のように、それぞれの隔壁42の一方の面にのみ薄肉部42Uを形成してもよい。また、図8に示す第2変形例のように、一方の隔壁42にのみ、その両面に薄肉部42Uを形成してもよい。
また、上記では、支持板48の幅方向(被覆ゴム16の内周面に沿った方向)と、隔壁42とが、軸心Sに沿った方向に見て略平行となるように支持板48を配置した例を挙げたが、これに代えて、たとえば図9に示すように、隔壁42の先端側(内筒22から遠い側)に支持板48が配置され、隔壁42に加硫接着された構成でもよい。図9に示す構造では、隔壁42の先端が被覆ゴム16に圧接されているので、隔壁42に過大な入力が作用した場合には、被覆ゴム16との間に僅かなズレ(ただし、被覆ゴム16との間に隙間が生じることはない)が生じ、隔壁42への応力集中を緩和できるので、耐久性が高くなる。ただし、図5に示す構造のゴム弾性体24を製造する場合には、金型に対する単一の抜き方向だけでは金型を抜くことが困難となるので(たとえば、矢印N1方向に抜く場合には、凹部54に入り込んだ金型部分を抜くのが難しい。また、矢印N2方向に抜く場合には、支持板48に当たる)、金型の構造が複雑になる。これに対し、図9に示す構造では、ゴム弾性体24を製造する場合に、金型を矢印N3方向に抜くことができる。
さらに、本発明の圧力差低減手段としては、隔壁42を部分的に薄肉とした薄肉部42Uに限定されず、たとえば図10に示す変形例の構造としてもよい。この構造では、隔壁42に、受圧液室40A、40Bを連通する連通路64を形成し、この連通路64内に、受圧液室40A側の部分と、受圧液室40B側の部分とに移動可能に区画する移動部材66を配置している。移動部材66は、連通路64に沿った両側からバネ68によって保持されており、初期位置から変位すると初期位置に戻そうとする力がバネ68から作用する。したがって、この構造では、受圧液室40A、40Bの間で圧力差が生じると、連通路64内で移動部材66が移動し、この圧力差を低減する。もちろん、図1等に示した薄肉部42Uを形成するほうが、簡単な構造で圧力差低減手段を構成できる。
また、上記では、防振装置12として、受圧液室40A、40Bが第2制限通路(第2オリフィス52A、52B)によって副液室30と連通された構造のものを例に挙げたが、これ以外の構造を採用することもできる。たとえば、上記の第2オリフィス52A、52Bに代えて、受圧液室40A、40Bどうしを直接的に連通する直接連通路を第2制限通路として設けた構造でもよい。さらに、第2制限通路として、上記の直接連通路と、本発明の実施形態の第2オリフィス52A、52Bとを併用してもよい。特に、受圧液室40A、40Bを副液室30と連通させると、副液室の拡縮により、受圧液室の圧力変動をより効果的に吸収できる。また、受圧液室40A、40Bと副液室とを連通した構成では、副液室の容積変化が発生することで、上述したように高周波の領域での動ばね定数が高くなることが想定される。したがって、本発明は、特に、受圧液室40A、40Bと副液室とを連通した構成に対し好適である。
いずれの構成においても、本実施形態の防振装置12では、2つの受圧液室40A、40Bを区画する隔壁42に、これら受圧液室40A、40Bの圧抜きを行うための薄肉部42Uを形成しており、内筒22に貫通孔を形成する等の加工を施す必要がないので、低コストで製造できる。また、内筒22の貫通孔に可動ゴム膜等を設けた構成では、可動ゴム膜の形状やサイズ)に対する制限が大きいが、本実施形態のように隔壁42に薄肉部42Uを設けると、形状やサイズの自由度が高くなるので、より確実に軸直方向の圧抜きを行うことが可能になる。
12 防振装置
14 外筒
16 被覆ゴム
18 ダイヤフラム
20 取付部材
22 内筒
24 ゴム弾性体
24B ゴム本体部
24L 蓋部
26 オリフィス円筒体
26E オリフィス円筒部
26D オリフィス円板部
28 主液室
30 副液室
32 仕切円板
34 メンブラン
36 オリフィス
38 連通孔
40 液室
40A、40B 受圧液室
42 隔壁
42A 厚肉部
42U 薄肉部
44 保持筒
46 保持環
48 支持板
50 凹溝
52A オリフィス
54 凹部
S 軸心

Claims (5)

  1. 筒状に形成され振動発生部及び振動受け部の一方に連結される第1取付部材と、
    振動発生部及び振動受け部の他方に連結され、前記第1取付部材の内周側に配置された第2取付部材と、
    前記第1取付部材と前記第2取付部材との間に配置されて第1取付部材と第2取付部材とを連結する弾性体と、
    前記弾性部材との間に、液体が封入されると共に前記弾性体の弾性変形に伴って内容積が変化する主液室を構成する仕切部材と、
    前記仕切部材との間に、液体が封入されると共に液圧変化に応じて内容積が変化する副液室を構成するダイヤフラム部材と、
    前記主液室と前記副液室との間での液体の移動を可能とする第1制限通路と、
    前記弾性体に設けられ前記第1取付部材との間に液室を構成する凹部と、
    前記液室を、前記第1取付部材の軸方向と交差する方向に配列される複数の受圧液室に区画する隔壁と、
    複数の前記受圧液室どうしの間、又は受圧液室のそれぞれと前記副液室との間での液体の移動を可能とする第2制限通路と、
    前記隔壁に設けられ、複数の前記受圧液室の間の圧力差を低減する圧力差低減手段と、
    を有する防振装置。
  2. 前記圧力差低減手段が、
    前記隔壁を局所的に薄肉とした薄肉部により構成され、
    前記隔壁の、前記薄肉部以外の部分が薄肉部よりも相対的に厚肉の厚肉部とされている請求項1に記載の防振装置。
  3. 前記厚肉部が、前記隔壁において、前記軸方向の一端から他端まで連続している請求項2に記載の防振装置。
  4. 前記薄肉部が、前記隔壁を正面視したとき円形に形成されている請求項2又は請求項3に記載の防振装置。
  5. 前記弾性体が、前記第2取付部材から前記仕切部材に向かって延在されつつ次第に拡径された円錐台状の円錐部と、
    前記円錐部から見て前記仕切部材の反対側で前記第2取付部材から径方向外側に延出され前記液室の蓋となる蓋部と、
    を備えている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の防振装置。
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