以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照して説明する。
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。
第1実施形態のディスクブレーキ1は、自動二輪車用のディスクブレーキである。図1〜図9,図11,図12においては、車両の左側に配置されるものを図示している。図1〜図5に示すように、このディスクブレーキ1は、制動対象となる車輪(回転体)とともに回転するディスク2と、このディスク2に摩擦抵抗を付与するキャリパ3とを備えている。
図1に示すように、キャリパ3は、ディスク2を跨いだ状態で車両の非回転部(本実施例においては二輪車のフロントフォークの後側)に取り付けられるキャリパボディ5と、図3に示すように、複数、具体的には四つの同形状のピストン6〜9とを有している。なお、以下においては、車両への取付状態をもって説明する。この取付状態におけるディスク2の半径方向をディスク半径方向と称する。また、ディスク2の軸線方向をディスク軸線方向と称する。さらに、ディスク2の回転方向をディスク回転方向と称す。なお、図1〜図4において矢印Fは車両前進時におけるディスク2の回転方向を示しており、車両前進時におけるディスク2の回転方向入口側をディスク回入側と称し、車両前進時におけるディスク2の回転方向出口側をディスク回出側と称す。
図3に示すように、ピストン6はディスク回入側かつアウタ側(車輪に対し反対側)に、ピストン7はディスク回入側かつインナ側(車輪側)に、互いにディスク2を挟んで対向するようにキャリパボディ5に摺動可能に対をなして設けられている。ピストン8はディスク回出側かつアウタ側に、ピストン9はディスク回出側かつインナ側に、互いにディスク2を挟んで対向するようにキャリパボディ5に摺動可能に対をなして設けられている。よって、キャリパ3は、複数、具体的には二対の同形状のピストン6〜9を有する対向ピストン型の4ポットキャリパとなっている。
キャリパボディ5は、ディスク2のアウタ側に配置されるシリンダ部10と、ディスク2のインナ側に配置されるシリンダ部11とを有している。、シリンダ部10およびシリンダ部11は、図5に示すように、それぞれのディスク半径方向外側からディスク2の外周側へ延びるブリッジ部12によりディスク2の半径方向外側で結合されてキャリパボディが一体的に形成されている。
ここで、ブリッジ部12は、図1に示すように、ディスク回入側に配置されるブリッジ構成部15と、ディスク回出側に配置されるブリッジ構成部16と、ディスク回転方向におけるこれらの間位置に配置されるブリッジ構成部17とからなっている。これらブリッジ構成部15〜17がディスク回転方向に離間していることで、ブリッジ部12には、ブリッジ構成部15とブリッジ構成部17との間に、ディスク回入側においてディスク半径方向に貫通する開口部18が、ブリッジ構成部16とブリッジ構成部17との間に、ディスク回出側においてディスク半径方向に貫通する開口部19がそれぞれ形成されている。
ディスク回入側に配置されるブリッジ構成部15のディスク半径方向外側には、図1に示すように、ディスク回入側かつアウタ側かつディスク半径方向外方に指向して突出する略円柱状の通路用凸部23が形成されており、この通路用凸部23のインナ側には、ディスク回入側かつインナ側かつディスク半径方向外方に指向して一部突出する略円柱状の通路用凸部24が形成されている。
ディスク回出側に配置されるブリッジ構成部16のディスク半径方向外側には、ディスク回出側かつアウタ側かつディスク半径方向外方に指向して突出する略円柱状の通路用凸部26が形成されており、この通路用凸部26のインナ側には、ディスク回出側かつインナ側かつディスク半径方向外方に指向して一部突出する略円柱状の通路用凸部27が形成されている。
車載時に上側となるディスク回出側のブリッジ構成部16には、図1,2,4,12に点線で示すように、シリンダ部10とシリンダ部11とを連通する連通路としてブリッジ構成部16を通るブリッジ部連通路30とブリッジ部連通路34とが形成されている。ブリッジ部連通路30は、ブリッジ構成部16の通路用凸部26にこの通路用凸部26の指向方向に沿って形成されている。このブリッジ部連通路30の外側に開口する口部31には、エア抜き用のブリーダプラグ32が取り付けられている。ブリッジ部連通路34は、ディスク回出側のブリッジ構成部16のもう一つの通路用凸部27に、この通路用凸部27の指向方向に沿って形成されている。このブリッジ部連通路34の外側に開口する口部35には、封止用の球状の閉塞プラグ36が取り付けられている。他方、ディスク回入側の通路用凸部23,24には連通路は形成されておらず、よって、ブリーダプラグおよび閉塞プラグも設けられていない。
なお、図1〜図5等においては、車体左側に配置されるディスクブレーキ1を例示しているため、キャリパボディ5における車載時上側となる図1の図示左側の通路用凸部26,27にブリッジ部連通路30,34を形成している。しかしながら、キャリパボディ5には、後述するように左右の取付勝手の違いに対しても共通の素材が用いられている。このため、車体右側に配置されるディスクブレーキの場合、キャリパボディ5における車載時上側となる図1,図2の図示右側および図4の図示左側の通路用凸部23,24に、図12の二点差線で示すようなブリッジ部連通路30’,34’が形成され、上記ブリッジ部連通路30,34は形成されないことになる。
図1に示すように、シリンダ部10には、ディスク回入側およびディスク回出側にディスク半径方向に沿ってマウント穴40,41が貫通形成されている。キャリパ3は、これらのディスク半径方向に沿うマウント穴40,41に挿通される図示略の取付ボルトで車両の車体側に固定される、いわゆるラジアルマウントタイプとなっている。
また、シリンダ部10には、ディスク回転方向の中央位置に、流入通路42がマウント穴40,41と平行に穿設されている。この流入通路42は、シリンダ部10の後述するシリンダ56とシリンダ58とを連通するべく、ディスク半径方向外側の所定範囲に有底状に形成されている。この流入通路42の開口には、ブレーキ液を給排するための図示略のブレーキホースが接続される。
キャリパボディ5には、図1に示すように、ディスク軸線方向に沿ってシリンダ部10およびシリンダ部11間に橋架される複数具体的には二本のパッドピン45,46がディスク回転方向に離間して設けられている。一方のパッドピン45は、キャリパボディ5のディスク回入側の開口部18の位置に、他方のパッドピン46は、ディスク回出側の開口部19の位置にそれぞれ設けられている。これらのパッドピン45,46は、図2に示すようにディスク2の中心から互いに等距離の位置でディスク2の外周側を通るように配置されている。
キャリパボディ5のシリンダ部10およびシリンダ部11には、図3に示すように、ディスク2側に開口し互いにディスク軸線方向において対向して対をなすボア51,52がディスク回入側に形成されている、また、ディスク2側に開口し互いにディスク軸線方向において対向して対をなすボア53,54がディスク回出側に形成されている。つまり、一対のボア51,52および一対のボア53,54の合計二対(複数対)が、ディスク回転方向に離間して設けられている。ディスク回入側の一対のボア51,52は、キャリパボディ5の図1に示すディスク回入側の開口部18の位置に形成されている。また、図3に示すディスク回出側の一対のボア53,54は、キャリパボディ5の図1に示すディスク回出側の開口部19の位置に形成されている。これらボア51〜54は略同形状をなしており、これらボア51〜54のそれぞれに上記した同形状のピストン6〜9が摺動可能に嵌挿されている。
以上により、図3に示すように、ディスク軸線方向に対向する一対のボアがディスク回転方向に複数対、具体的には二対並列に形成されている。これに伴い、ディスク軸線方向に対向する一対のピストンがディスク回転方向に複数対、具体的には二対並列に配置されている。
ここで、シリンダ部10においてディスク回入側のボア51が形成された部分が、ピストン6が挿入される回入側かつアウタ側のシリンダ56となっている。シリンダ部11においてディスク回入側のボア52が形成された部分が、ピストン7が挿入される回入側かつインナ側のシリンダ57となっている。また、シリンダ部10においてディスク回出側のボア53が形成された部分が、ピストン8が挿入される回出側かつアウタ側のシリンダ58となっている。シリンダ部11においてディスク回出側のボア54が形成された部分が、ピストン9が挿入される回出側かつインナ側のシリンダ59となっている。
その結果、キャリパボディ5は、シリンダ56,58がディスク2の一面側にディスク回転方向に並んで複数設けられて一のシリンダ部10をなしている。また、キャリパボディ5は、ディスク2の他面側に他のシリンダ57,59がディスク回転方向に並んで複数設けられて他のシリンダ部11をなしている。これらシリンダ部10およびシリンダ部11同士をブリッジ部12で接続することで対向型のキャリパボディが構成されている。言い換えれば、一のシリンダ部10には、一対のシリンダ56,58がディスク2の一面側にディスク回転方向に並んで設けられている。他のシリンダ部11には、一対のシリンダ57,59がディスク2の他面側にディスク回転方向に並んで設けられている。
シリンダ部11における底部62および底部63が位置するシリンダ部10と反対側の端部の外周縁部は、円弧状部65,66,67,68,69,72,73,74と直線状部70,71とで形成されている。円弧状部65は、ディスク回転方向の中央かつディスク半径方向外側にあってディスク半径方向内方に凹状をなしている。円弧状部66,67は、円弧状部65のディスク回転方向両側にあって、ディスク半径方向外方に凸状をなしている。円弧状部68,69は、円弧状部66,67のディスク回転方向両側にあってディスク半径方向内方に若干凹状をなしている。直線状部70,71は、円弧状部68,69のそれぞれの円弧状部66,67とは反対側からディスク半径方向内方に延出している。円弧状部72,73は、直線状部70,71のそれぞれの円弧状部68,69とは反対側から互いに近接側に設けられてディスク半径方向内方に凸状をなしている。円弧状部74は、これら円弧状部72,73を結ぶようにディスク半径方向外方に凹状をなしている。
シリンダ57の底部62には、上記した円弧状部66の位置に、ディスク半径方向外側に突出する突出部76が形成されている。また、シリンダ59の底部63にも、上記した円弧状部67の位置に、ディスク半径方向外側に突出する突出部77が形成されている。そして、突出部76および突出部77の位置に、後述する摩擦攪拌接合(FSW)により生じる、残存穴部79および残存穴部80が残存形成されている。
ここで、突出部76およびこれに形成された残存穴部79は、これらに対応するボア52の中心を通り図1,図3に示すマウント穴40,41と平行な線上に配置されている。突出部77およびこれに形成された残存穴部80は、これら突出部77および残存穴部80に対応するボア54の中心を通り、図1,図3に示すマウント穴40,41と平行な線上に配置されている。言い換えれば、突出部76の頂点とこれに対応するボア52の中心とを結ぶ線L1と、突出部77の頂点とこれに対応するボア54の中心とを結ぶ線L2とは、キャリパ3のディスク回転方向の中央位置とディスク2の中心とを結ぶ線Oに対して、平行をなすとともに等距離の位置に配置されており、突出部76,77は互いに平行な方向に突出している。また、残存穴部79は、突出部76を形成する円弧状部66の中心位置に配置されており、残存穴部80は、突出部77を形成する円弧状部67の中心位置に配置されている。
図6のA−A断面である図7に示すように、各ボア51〜54は、キャリパボディ5を主体的に構成する一体成形されたキャリパボディ本体86に形成されており、図3に示すピストン6〜9を摺動可能に嵌合させる同形状の嵌合内径部51a〜54aと、嵌合内径部51a〜54aよりも底側にある、嵌合内径部51a〜54aよりも大径の大径内径部51b〜54bとを有している。また、嵌合内径部51a〜54aの軸線方向における略中間位置には、嵌合内径部51a〜54aよりも大径で図示略のピストンシールを保持するための同形状のシール周溝51c〜54cおよびシール周溝51d〜54dが形成されている。ピストン6〜9は、嵌合内径部51a〜54aおよび図示略のピストンシールを摺動する。ここで、嵌合内径部51a〜54a、大径内径部51b〜54b、シール周溝51c〜54cおよびシール周溝51d〜54dは、キャリパボディ本体86の鋳造後の切削加工により形成されている。なお、大径内径部51b〜54bは鋳造により形成、つまり鋳肌の状態としてもよい。
図1に示すように、キャリパボディ5のディスク回入側の開口部18には、ディスク回入側の一対のブレーキパッド81,82が配置されている。これら一対のブレーキパッド81,82は、ディスク回入側のパッドピン45によって、ディスク軸線方向に移動可能に支持されている。キャリパボディ5のディスク回出側の開口部19にも、ディスク回出側の一対のブレーキパッド83,84が配置されている。これらディスク回出側の一対のブレーキパッド83,84も、ディスク回出側のパッドピン46によって、ディスク軸線方向に移動可能に支持されている。これにより、キャリパ3には、複数対具体的には二対のブレーキパッド81〜84がディスク軸線方向に移動可能に支持されている。
図3に示すように、ディスク回入側の一対のブレーキパッド81,82は、ディスク2の軸線方向における両面にそれぞれ配置されることになり、ディスク回出側の一対のブレーキパッド83,84も、ディスク2の軸線方向における両面にそれぞれ配置されることになる。そして、ディスク回入側の一対のブレーキパッド81,82は、これらのディスク2とは反対側に位置するようにキャリパボディ5に設けられたディスク回入側の一対のピストン6,7でそれぞれ押圧されてディスク2に押し付けられる。また、ディスク回出側の一対のブレーキパッド83,84は、これらのディスク2とは反対側に位置するようにキャリパボディ5に設けられたディスク回出側の一対のピストン8,9でそれぞれ押圧されてディスク2に押し付けられる。これにより、ディスクブレーキ1は、車両に制動力を発生させるようになっている。なお、ブレーキパッド81〜84のディスク半径方向外側には、図1に示すように、これらブレーキパッド81〜84をディスク半径方向内方及びディスク回出側へ押圧するパッドスプリング85が設けられている。
なお、キャリパボディ5には、各ピストン6〜9を作動させるためのブレーキ液をボア51〜54内に導入する通路が形成されている。つまり、図7および図8に示すように、シリンダ部10には、外部に対するブレーキ給排用の上記した流入通路42が両側のボア51,53の間位置にてこれらの大径内径部51b,53bに連通するように穿設されており、この流入通路42によって両側のボア51,53同士が連通することになる。また、シリンダ部11には、両側のボア52,54の間位置にて互いに交差するようにディスク回入側およびディスク回出側に穿設されることで、両側のボア52,54の大径内径部52b,54b同士を連通する連通路としてのシリンダ間連通路52e,54eが形成されている。言い換えれば、シリンダ間連通路52e,54eは、ディスク2の一面側にディスク回転方向に並んでいるシリンダ57,59同士を連通する。
キャリパボディ5には、ディスク回出側に、対向するディスク回出側のボア53,54の大径内径部53b,54b同士を連通する上記したブリッジ部連通路30,34が、互いにキャリパボディ5内で交差するように外側から穿設されている。つまり、ブリッジ部連通路30は、通路用凸部26からブリッジ部12およびシリンダ部11を通って大径内径部54bまで穿設されており、ブリッジ部連通路34は、通路用凸部27からブリッジ部12およびシリンダ部10を通って大径内径部53bまで、途中でブリッジ部連通路30に交差しつつ穿設されている。これにより、ブリッジ部連通路30,34は、ブリッジ部12に形成されて、ディスク2の両面側に設けられたシリンダ56〜59のうちディスク回転方向同側にあるシリンダ58,59同士を連通する。
キャリパボディ5を主体的に構成する上記したキャリパボディ本体86は、図7および図8に示すように、上記したシリンダ部10とシリンダ部11とブリッジ部12とが、シリンダ部10およびシリンダ部11のうちの一方側であるシリンダ部11のシリンダ57,59の底部62,63の一部を除いて、例えばアルミニウム合金の鋳造品からなる一体成形の素材から加工されて形成される。
このキャリパボディ本体86は、シリンダ57のボア52の底部62の位置に開口部91を、また、シリンダ59のボア54の底部63の位置にも開口部91と同形状の開口部92を有する形状に一体成形の素材から加工されて形成されている。キャリパボディ5は、このキャリパボディ本体86と、このキャリパボディ本体86の開口部91,92を塞ぐ図9(a),(b)に示す同形状の二枚の蓋部材94,95とにより構成される。
ここで、図7および図8に示すキャリパボディ本体86は、車両に対する取り付けの左右の勝手違いに対しても共通となるようディスク回転方向の中央に対してディスク回入側およびディスク回出側が対称に鋳造された素材から形成されることになる。そして、この素材に対して、左右の取付方向に関わらず、図1に示すマウント穴40,41および流入通路42と、図7に示す開口部91,92、嵌合内径部51a〜54a、大径内径部51b〜54b、シール周溝51c〜54c、シール周溝51d〜54dおよびシリンダ間連通路52e,54eとがそれぞれ加工される。そして、左右の取付方向に応じて、車載時上側となるブリッジ部のみに、図12中点線で示すブリッジ部連通路30,34または図12中二点鎖線で示すブリッジ部連通路30’,34’のいずれかがドリル加工する等して形成される。なお、開口部91,92および嵌合内径部51a〜54aは素材の状態で下穴が形成されており、下穴を切削加工することで仕上げられる。
図9に示す蓋部材94,95は、例えばアルミニウム合金製で円板状に形成されている。蓋部材94,95は、図7および図8に示すキャリパボディ本体86の開口部91,92に嵌合されるため、これらの開口部91,92より僅かに小さい外径に形成されている。蓋部材94,95は、同形状をなしており、図9に示すように、一定厚さの円板部94a,95aと、円板部94a,95aの中央から軸線方向一側に一定高さ突出する凸部94b,95bとを有している(図9では蓋部材94に関連する符号を付し、蓋部材95に関連する符号をその後に括弧付きで記載している)。
図7に示すキャリパボディ本体86の開口部91,92は、内周面に段差部等のないストレートな同径の円筒面形状とされ、図9に示す蓋部材94,95も同様に外周面がストレートな円筒面形状とされている。
ここで、図7に示すように、キャリパボディ本体86の開口部91は、シリンダ57の底部62にボア52と同軸中心の円形に形成されている。開口部91の内径はボア52の嵌合内径部52aの内径よりも小さくされている。また、キャリパボディ本体86の開口部92は、シリンダ59の底部63にボア54と同軸中心の円形に形成され、その内径はボア54の嵌合内径部54aの内径よりも小さくされている。
キャリパボディ本体86の開口部91,92は、キャリパボディ本体86の鋳造後にボア51〜54の内周面の加工を行うための加工孔として利用される。例えば、開口部91は、開口部91自体の加工を終えた時点、または、鋳造直後の開口部91の下穴の段階で、シリンダ部10のボア51およびシリンダ部11のボア52の内周面に嵌合内径部51a,52a、大径内径部51b,52b、シール周溝51c,52cおよびシール周溝51d,52dおよびシリンダ間連通路52eを加工形成する際に、切削工具の挿入孔として用いられる。同様に、開口部92は、開口部92自体の加工を終えた時点、または、鋳造直後の開口部92の下穴の段階で、シリンダ部10のボア53およびシリンダ部11のボア54の内周面に嵌合内径部53a,54a、大径内径部53b,54b、シール周溝53c,54c、シール周溝53d,54dおよびシリンダ間連通路53eを加工形成する際に、切削工具の挿入孔として用いられる。
キャリパボディ本体86は、鋳造後に上記したボア51〜54の内周面の切削加工および開口部91,92の切削加工を行う工程と、流入通路42,シリンダ間連通路52e,54eを穿設加工する工程と、ブリッジ部連通路30,34またはブリッジ部連通路30’,34’を穿設加工する工程とが終了すると、シリンダ57,59の開口部91,92に蓋部材94,95が以下のようにして摩擦攪拌接合によって接合されることで開口部91,92が閉塞される。
この摩擦攪拌接合で使用される接合工具100は、図10に示すように、円柱状の大径軸部101とこの大径軸部101よりも小径でこの大径軸部101と同軸の円柱状の先端軸部102とを有している。大径軸部101の先端側のショルダ101Aには、円弧状の凹部103が形成され、凹部103の中心から先端軸部102が立設している。また、先端軸部102は外周にねじ部を有し、その先端104は球面状となっている。なお、上記接合工具100を用いた摩擦攪拌接合の具体的な方法に関しては、例えば、米国特許第5460317号のFig12A〜Cに示されている。
蓋部材94,95のキャリパボディ本体86への取り付けにあたっては、開口部91に蓋部材94を、開口部92に蓋部材95を、それぞれ、凸部94b,95bを内側にして嵌合させて、蓋部材94,95をボア52,54側から支持する。
次に、この状態から、図12に示すように、例えば、シリンダ57の開口部91と蓋部材94との接合境界に対して摩擦攪拌接合を行う。この摩擦攪拌接合の際には、高速回転する接合工具100の先端軸部102を、開口部91の開口部92とは反対側を開始点として、開口部91と蓋部材94との接合境界に沿って所定方向(図12の時計回り方向)に連続的に移動させ、蓋部材94の全周に亘って円形状に摩擦攪拌接合を行うことで、蓋部材94とキャリパボディ本体86との境界部分を一体化する。すると、蓋部材94とキャリパボディ本体86との境界部分に倣ってループ状の摩擦攪拌接合の接合軌跡110が形成される。
そして、接合工具100を、これが蓋部材94の外周の接合開始点位置に戻ったところで、蓋部材94とキャリパボディ本体86との接合軌跡110の接線方向に沿って直線状に移動させ、シリンダ57の底部62よりもディスク半径方向外側に突出する突出部76に逃がした後、キャリパボディ5から引き抜く。
これにより、接合軌跡110から連続する接合工具100の摩擦攪拌接合の移動軌跡111が、接合軌跡110から外側の突出部76の方向に直線状に延出することになる。また、接合工具100が引き抜かれた突出部76の位置に、接合工具100の先端軸部102により残存穴部79が形成されることになる。残存穴部79は、ループ状の接合軌跡110よりもその外径方向外側に形成される。残存穴部79は、ループ状の接合軌跡110とは重ならないようになっている。
また、開口部91に蓋部材94を接合する際の接合工具100の接合軌跡110および移動軌跡111と同じ軌跡で接合工具100を移動させることで、シリンダ59の開口部92と蓋部材95との接合境界に対して摩擦攪拌接合を行う。つまり、高速回転する接合工具100の先端軸部102を、開口部92の開口部91側を開始点として開口部92と蓋部材95との接合境界に沿って所定方向(図12の時計回り方向)に連続的に移動させ、蓋部材95の全周に亘って円形状に摩擦攪拌接合を行うことで、蓋部材95とキャリパボディ本体86との境界部分を一体化する。すると、蓋部材95とキャリパボディ本体86との境界部分に倣ってループ状の摩擦攪拌接合の接合軌跡112が形成される。
そして、接合工具100を、これが蓋部材95の外周の接合開始点位置に戻ったところで、蓋部材95とキャリパボディ本体86との接合軌跡112の接線方向に沿って直線状に移動させ、シリンダ59の底部63よりもディスク半径方向外側に突出する突出部77に逃がした後、キャリパボディ5から引き抜く。
これにより、接合軌跡112から連続する接合工具100の摩擦攪拌接合の移動軌跡113が、接合軌跡112から外側の突出部77の方向に直線状に延出することになり、また、接合工具100が引き抜かれた突出部77の位置に、接合工具100の先端軸部102により残存穴部80が形成されることになる。残存穴部80は、ループ状の接合軌跡112よりもその外径方向外側に形成される。残存穴部80は、ループ状の接合軌跡112とは重ならない。
勿論、上記した開口部92への蓋部材95の接合を先に行い、その後で、上記した開口部91への蓋部材94の接合を行っても良く、上記した両方の接合を同時に並行して行っても良い。
以上により、ディスク回入側のシリンダ57の接合軌跡110、移動軌跡111および残存穴部79と、ディスク回出側のシリンダ59の接合軌跡112、移動軌跡113および残存穴部80は、同位相かつ同形状に形成される。
ここで、突出部76は、シリンダ57に連通するシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位とシリンダ57の周回り方向において一致しない位置に形成されている。その結果、摩擦攪拌接合の終了位置111aが、シリンダ57に連通するシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位とシリンダ57の周回り方向において一致しない位置で、このループ状の摩擦攪拌接合の接合軌跡110からずれたシリンダ57の外周側位置に配置される。この場合、摩擦攪拌接合の終了位置111aは、摩擦攪拌接合のための接合工具100をキャリパボディ5から引き抜くときの位置で接合工具100によってキャリパボディ5の素材が攪拌される部分を指している。具体的には、図12において残存穴部79の外周に実線と点線とで示される円形部分が終了位置111aとなっている。したがって、終了位置111aは、シリンダ間連通路52e,54eに対し、上記周回り方向において一致しない位置とするには、残存穴部79の中心から少なくとも接合工具100の大径軸部101のショルダ101Aの半径長さ以上離すことになる。すなわち、摩擦攪拌接合により攪拌される領域は、ショルダ101Aの直径によって規定され、通常この直径以下となるので、残存穴部79の中心からショルダ101Aの半径長さ以上離すことで、前記終了位置111aの攪拌によりシリンダ間連通路52e,54eが狭められたりすることを防止できる。
同様に、突出部77は、シリンダ59に連通するブリッジ部連通路30及びシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位とシリンダ59の周回り方向において一致しない位置に形成されている。その結果、摩擦攪拌接合の終了位置113aが、シリンダ59に連通するブリッジ部連通路30及びシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位とシリンダ59の周回り方向において一致しない位置で、このループ状の摩擦攪拌接合の接合軌跡112からずれたシリンダ57の外周側位置に配置される。この場合も、上記終了位置111aと同様に、終了位置113aも、ブリッジ部連通路30及びシリンダ間連通路52e,54eに対し、上記周回り方向において一致しない位置とするには、残存穴部80の中心から少なくとも接合工具100の大径軸部101のショルダ101Aの半径長さ以上離すことになる。
ここで、上記はキャリパボディ5が車両左側に配置される場合であり、車両右側に配置される場合は、図12に二点鎖線で示すように、通路用凸部23,24にブリッジ部連通路30’,34’が形成されることになる。この場合、突出部76は、シリンダ57に連通するブリッジ部連通路30’及びシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位とシリンダ57の周回り方向において一致しない位置に形成されることになる。その結果、摩擦攪拌接合の終了位置111aが、シリンダ57に連通するブリッジ部連通路30’及びシリンダ間52e,54eが形成される部位とシリンダ57の周回り方向において一致しない位置で、このループ状の摩擦攪拌接合の接合軌跡110からずれたシリンダ57の外周側位置に配置される。この場合も、摩擦攪拌接合の終了位置111aは、ブリッジ部連通路30’及びシリンダ間連通路52e,54eに対し、上記周回り方向において一致しない位置とするには、残存穴部79の中心から少なくとも接合工具100の大径軸部101のショルダ101Aの半径長さ以上離すことになる。
キャリパボディ5が車両右側に配置される場合、突出部77は、シリンダ59に連通するシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位とシリンダ59の周回り方向において一致しない位置に形成されている。その結果、摩擦攪拌接合の終了位置113aが、シリンダ59に連通するシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位とシリンダ59の周回り方向において一致しない位置で、このループ状の摩擦攪拌接合の接合軌跡112からずれたシリンダ57の外周側位置に配置される。この場合も、摩擦攪拌接合の終了位置113aは、シリンダ間連通路52e,54eに対し、上記周回り方向において一致しない位置とするには、残存穴部80の中心から少なくとも接合工具100の大径軸部101のショルダ101Aの半径長さ以上離すことになる。
なお、車両の右側に配置されるキャリパボディ5を製造する場合と、車両の左側に配置されるキャリパボディ5を製造する場合とで、接合工具100を同じ接合軌跡110,112および移動軌跡111,113で移動させるようになっている。このようにして、左右の勝手違いのキャリパボディ5を同じ設定の摩擦攪拌接合装置で処理を行い、左右の勝手違いでの装置の段取替えを不要としている。このため、ディスクブレーキの製造効率が向上する。
ここで、上記した特許文献1のディスクブレーキでは、摩擦攪拌接合の終了位置がキャリパボディ内に形成されたブレーキ液流通用の通路の近くとなってしまい、通路を用いたブレーキ液の流通の妨げとなる可能性があった。
これに対し、第1実施形態のディスクブレーキ1によれば、ディスク回入側のシリンダ57における摩擦攪拌接合の終了位置111aが、シリンダ57に連通する連通路52e,54eが形成される部位とシリンダ57の周回り方向において一致しない位置で、ループ状の摩擦攪拌接合の接合軌跡110からずれたシリンダ57の外周側位置に配置されている。このため、ディスク回出側のシリンダ59における摩擦攪拌接合の終了位置113aが、シリンダ59に連通する連通路であるブリッジ部連通路30,30’及びシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位とシリンダ59の周回り方向において一致しない位置で、摩擦攪拌接合の接合軌跡112からずれたシリンダ59の外周側位置に配置されている。よって、いずれのシリンダ57,59においても摩擦攪拌接合の終了位置111a,113aを、ブリッジ部連通路30,30’及びシリンダ間連通路52e,54eから離して、薄肉部が発生しないように適正化することができる。したがって、摩擦攪拌接合の隆起により連通路(ブリッジ部)ブレーキ液の流通に妨げが生じることを防止でき、また、キャリパ3の耐圧強度を向上させることができる。すなわち、液圧に関する性能についての支障を抑えたディスクブレーキを提供することができる。
本実施形態においては、キャリパボディ5のキャリパボディ本体86が、車両の左右に共通となるようディスク回転方向の中央に対してディスク回入側およびディスク回出側が対称に形成された素材から形成されるものであり、車両の左側に配置される場合と右側に配置される場合とがあって、ディスク回転方向両側の通路用凸部23,24および通路用凸部26,27のいずれにもブリッジ部連通路30,30’,34,34’が形成される可能性がある。このことから、図12に破線および実線で示すように、左配置用として通路用凸部26,27にブリッジ部連通路30,34が形成されても、図12に二点鎖線で示すように、右配置用として通路用凸部23,24にブリッジ部連通路30’,34’が形成されても、摩擦攪拌接合の終了位置が上記関係を満足するようになっている。このため、共通の素材を左右に勝手違いで用いるようにしても、摩擦攪拌接合の隆起によりブレーキ液の流通に妨げが生じることを防止でき、また、キャリパ3の耐圧強度を向上させることができる。すなわち、液圧に関する性能についての支障を抑えたディスクブレーキを提供することができる。
本実施形態においては、キャリパボディ5は、シリンダ56,58がディスク2の一面側にディスク回転方向に並んで複数設けられて一のシリンダ部10をなし、ディスク2の他面側に他のシリンダ57,59がディスク回転方向に並んで複数設けられて他のシリンダ部11をなし、ブリッジ部12がシリンダ部10およびシリンダ部11同士を接続する対向型のキャリパボディ5であって、ブリッジ部12に形成されて、ディスク2の両面側に設けられたシリンダ56〜69のうちの少なくとも一のシリンダ58,59同士を連通するブリッジ部連通路30,34と、ディスク2の一面側にディスク回転方向に並んでいるシリンダ57,59同士を連通するシリンダ間連通路52e,54eとを有する。そして、摩擦攪拌接合の終了位置111a,113aを、これらのブリッジ部連通路30、シリンダ間連通路52e,54eから離して、薄肉部が発生しないように適正化することができる。したがって、4ポット対向型のキャリパ3の耐圧強度が向上する。すなわち、液圧に関する性能についての支障を抑えたディスクブレーキを提供することができる。
本実施形態においては、シリンダ57において、これに連通するシリンダ間連通路52e,54eに対し、上記周回り方向において一致しない位置とするには、摩擦攪拌接合の終了位置111aを、残存穴部79の中心から少なくとも接合工具100の大径軸部101のショルダ101Aの半径以上離している。このため、シリンダ57の底部62の摩擦攪拌接合時に、シリンダ間連通路連通路52e,54eへ摩擦攪拌部分が飛び出して閉塞や変形を生じることを確実に防ぐことができる。同様に、シリンダ59においても、これに連通するブリッジ部連通路30、シリンダ間連通路52e,54eに対し、上記周回り方向において一致しない位置とするには、摩擦攪拌接合の終了位置113aを、残存穴部80の中心から少なくとも接合工具100の大径軸部101のショルダ101Aの半径以上離しているため、シリンダ59の底部63の摩擦攪拌接合時に、連通路30,52e,54eへ摩擦攪拌部分が飛び出して閉塞や変形を生じることを確実に防ぐことができる。したがって、シリンダ57,59へのブレーキ液圧の確実な供給を行うことができる。すなわち、液圧に関する性能についての支障を抑えたディスクブレーキを提供することができる。
本実施形態においては、車両の右側に配置されるキャリパボディ5を製造する場合と、車両の左側に配置されるキャリパボディ5を製造する場合とで、共通の素材を用いて、接合工具100を同じ接合軌跡110,102および移動軌跡111,103で移動させるようになっている。したがって、左右の勝手違いのキャリパボディ5を同じ設定の摩擦攪拌接合装置で処理することができ、勝手違いでの装置の段取替えを不要とすることができる。すなわち、ディスクブレーキの製造効率を向上させることができる。
本実施形態においては、シリンダ57とシリンダ59とで、開口部91,92を共通とし、蓋部材94,95を共通としており、しかも、突出部76,77を平行な方向に突出させているため、一本の接合工具100で、複数のシリンダ57,59を順次摩擦攪拌接合する場合に、一本の接合工具100を同じ軌跡で移動させることができる。したがって、摩擦攪拌接合装置において、接合工具100の移動プログラムを複数のシリンダ57,59で共通化でき、プログラムの簡略化が図れる。また、複数の接合工具100で複数のシリンダ57,59を同時に摩擦攪拌接合する場合であっても、複数の接合工具100を同じ軌跡で移動させることができる。したがって、この場合も、接合工具100の移動プログラムを簡素化できる。すなわち、ディスクブレーキの製造効率を向上させることができる。
本実施形態においては、ディスク回転方向一側のシリンダ57の接合軌跡110、移動軌跡111および残存穴部79と、ディスク回転方向他側のシリンダ59の接合軌跡112、移動軌跡113および残存穴部80を同位相かつ同形状にするため、意匠性が向上する。
なお、本実施形態においては、二対のピストンを有する対向ピストン型の4ポットキャリパを例に説明を行なったが、三対のピストンを有する対向ピストン型の6ポットキャリパや四対以上のピストンを有するキャリパに適用しても良い。この場合でも、ブリッジ部に設けられるブリッジ部連通路が形成される部位やシリンダ部間に設けられるシリンダ間連通路が形成される部位と、摩擦攪拌接合の終了位置が、シリンダの周回り方向において一致しない位置に配置されるようにすることで、上記と同様の効果を奏することができる。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図13に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。
図13は、本発明に係る第2実施形態のディスクブレーキのキャリパボディを示す摩擦攪拌接合を説明するための背面図である。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態のディスクブレーキも、第1実施形態と同様、自動二輪車用のものである。
第2実施形態のディスクブレーキにおいては、キャリパボディ5のシリンダ部11の摩擦攪拌接合の方法が第1実施形態と相違している。第2実施形態では、シリンダ部11のシリンダ部10とは反対側の端部の外周縁部のうち、直線状部70,71の間のディスク半径方向外側部分が、ディスク回転方向の中央においてディスク半径方向外方に凸状をなすように接続された直線状部115,116で形成されている。
これにより、シリンダ部11の底部には、ディスク回転方向の中央である上記した直線状部115,116の境界近傍に、ディスク半径方向外側に突出する突出部117が一つのみ形成されている。そして、この突出部117の位置に、摩擦攪拌接合により生じる、残存穴部80が一つのみ残存形成されている。突出部117および残存穴部80は、キャリパボディ5のディスク回転方向の中央を通るディスク半径方向に沿う線上に配置されている。
第2実施形態においても、キャリパボディ5は、ボア52,54の底部62,63の位置に開口部91,92を有する形状に一体成形の素材から加工されて形成されるキャリパボディ本体86と、このキャリパボディ本体86の開口部91,92を塞ぐ蓋部材94,95とにより構成されている。キャリパボディ本体86は、ディスク回転方向の中央に対してディスク回入側およびディスク回出側が対称に形成された素材に対して、左右の取付勝手の違いに応じて、車載時上側となるディスク回出側のみにブリッジ部連通路30,34を穿設加工する等して形成される。ここで、図13では、第1の実施形態と同様に車体左側に配置される場合のブリッジ部連通路30,34を破線および実線で、車体右側に配置される場合のブリッジ部連通路30’,34’を二点鎖線で示している。
そして、キャリパボディ本体86の開口部91,92に蓋部材94,95を嵌合させた状態から、例えば、シリンダ57の開口部91と蓋部材94との接合境界に対して摩擦攪拌接合を行う。
この摩擦攪拌接合の際には、例えば、高速回転する接合工具100の先端軸部102を、開口部91のディスク半径方向外側を開始点として、開口部91と蓋部材94との接合境界に沿って所定方向(図13の時計回り方向)に連続的に移動させ、蓋部材94の全周に亘って円形状に摩擦攪拌接合を行うことで、蓋部材94とキャリパボディ本体86との境界部分を一体化する。すると、蓋部材94とキャリパボディ本体86との境界部分に倣ってループ状の摩擦攪拌接合の接合軌跡110が形成される。
そして、接合工具100を、これが蓋部材94の外周の接合開始点位置に戻ったところで、蓋部材94とキャリパボディ本体86との接合軌跡110の接線方向に沿って直線状部115と平行に直線状に移動させ、シリンダ57の底部62よりもディスク半径方向外側に突出する突出部117に逃がし、キャリパボディ5のディスク回転方向の中央に位置させたところで、キャリパボディ5から引き抜く。
これにより、接合軌跡110から連続する接合工具100の摩擦攪拌接合の移動軌跡111が、接合軌跡110から外側の突出部117の方向に直線状部115と平行に直線状に延出することになる。
次に、高速回転する接合工具100の先端軸部102を、開口部92の開口部91側を開始点として開口部92と蓋部材95との接合境界に沿って所定方向(図13の時計回り方向)に連続的に移動させる。このように、蓋部材95の全周に亘って円形状に摩擦攪拌接合を行うことで、蓋部材95とキャリパボディ本体86との境界部分を一体化する。すると、蓋部材95とキャリパボディ本体86との境界部分に倣ってループ状の摩擦攪拌接合の接合軌跡112が形成される。
そして、接合工具100が蓋部材95の外周の接合開始点位置に戻ったところで、接合工具100を蓋部材95とキャリパボディ本体86との接合軌跡112の接線方向に沿って移動軌跡111の終了位置111aに向けて直線状に移動させ、シリンダ59の底部76よりもディスク半径方向外側に突出する突出部117に逃がす。その後、接合工具100を移動軌跡111の終了位置111aまで移動させて、移動軌跡111の終了位置111aに位置したところで、キャリパボディ5から引き抜く。
これにより、接合軌跡112から連続する接合工具100の摩擦攪拌接合の移動軌跡113が、接合軌跡112から外側の突出部117の方向に直線状に延出することになる。また、ディスク2の一側においてディスク回転方向に並んだ一対のシリンダ57,59毎の摩擦攪拌接合の終了位置111a,113aが、一対のシリンダ57,59の間の共通した位置に配置されるとともに、一対のシリンダ57,59間のディスク回転方向中央、すなわちキャリパボディ5のディスク回転方向中央に配置される。また、接合工具100が引き抜かれた突出部117の位置に、接合工具100の先端軸部102により残存穴部80が形成されることになる。残存穴部80は、接合軌跡110,112よりも外径方向外側に形成される。残存穴部80は、接合軌跡110,112とは重ならない。
勿論、上記した開口部92への蓋部材95の接合を先に行い、その後で、上記した開口部91への蓋部材94の接合を行っても良い。その場合も、開口部92への蓋部材95の接合時に生じた移動軌跡113の終了位置113aに、開口部91への蓋部材94の接合時に生じる移動軌跡111の終了位置111aが重なるように接合工具100を移動させる。
ここでも、突出部117は、キャリパボディ5が車体左側に配置される場合にシリンダ57に連通するシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位(車体右側に配置される場合にシリンダ57に連通するブリッジ部連通路30シリンダ間52e,54eが形成される部位)とシリンダ57の周回り方向において一致しない位置に形成されている。その結果、摩擦攪拌接合の終了位置111a,113aが、車体左側に配置される場合にシリンダ57に連通するシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位(車体右側に配置される場合にシリンダ57に連通するブリッジ部連通路30’シリンダ間連通路52e,54eが形成される部位)とシリンダ57の周回り方向において一致しない位置で、この摩擦攪拌接合の接合軌跡110からずれたシリンダ57の外周側位置に配置される。この場合も、摩擦攪拌接合の終了位置111a,113aをシリンダ間連通路52e,54e(あるいはブリッジ部連通路30’シリンダ間連通路52e,54e)に対し、上記周回り方向において一致しない位置とするには、残存穴部80の中心から少なくとも接合工具100の大径軸部101のショルダ101Aの半径以上離している。
同様に、突出部117は、キャリパボディ5が車体左側に配置される場合にシリンダ59に連通するブリッジ部連通路30、シリンダ間連通路52e,54eが形成される部位(車体右側に配置される場合にシリンダ59に連通するシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位)とシリンダ59の周回り方向において一致しない位置に形成されている。その結果、摩擦攪拌接合の終了位置111a,113aが、車体左側に配置される場合にシリンダ59に連通するブリッジ部連通路30、シリンダ間連通路52e,54eが形成される部位(車体右側に配置される場合にシリンダ59に連通するシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位)とシリンダ59の周回り方向において一致しない位置で、この摩擦攪拌接合の接合軌跡112からずれたシリンダ57の外周側位置に配置される。この場合も、摩擦攪拌接合の終了位置111a,113aをブリッジ部連通路30、シリンダ間連通路52e,54e(あるいはシリンダ間連通路52e,54e)に対し、上記周回り方向において一致しない位置とするには、残存穴部80の中心から少なくとも接合工具100の大径軸部101のショルダ101Aの半径以上離している。
以上に述べた第2実施形態のディスクブレーキによれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、ディスク2の一側においてディスク回転方向に並んだ一対のシリンダ57,59毎の摩擦攪拌接合の終了位置111a,113aを、一対のシリンダ57,59の間の共通した位置に配置することになるため、複数のシリンダ57,59に対して残存穴部80を一箇所にすることができる。
また、シリンダ57,59の摩擦攪拌接合の終了位置111a,113aを、キャリパボディ5のディスク回転方向の中央に配置するため、残存穴部80とボア52,54との距離を大きく確保することが比較的容易であり、また、意匠性も向上する。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図14に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。
図14は、本発明に係る第3実施形態のディスクブレーキのキャリパボディを示す摩擦攪拌接合を説明するための背面図である。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態のディスクブレーキも、自動二輪車用のものである。
第3実施形態のディスクブレーキは、第1実施形態のディスクブレーキに対して、大略、キャリパ3のディスク回入側のシリンダ56,57に関する構成をなくしたものである。つまり、第3実施形態のディスクブレーキのキャリパボディ5においては、ディスク2の一面側であるアウタ側に配置されるシリンダ部10に、一つの第1実施形態のボア53と同様のボア(図示略)のみが形成されている。また、キャリパボディ5においては、ディスク2の他面側であるインナ側に配置されるシリンダ部11に、他の一つのボア54のみが形成されている。これらシリンダ部10およびシリンダ部11同士は、ブリッジ部12により接続される。その結果、第3実施形態のディスクブレーキのキャリパは、一対の同形状のピストンを、ディスク2を介して対向状態で保持する対向ピストン型の2ポットキャリパとなっている。
ブリッジ部12は、ディスク回転方向両側に配置されるブリッジ構成部15,16からなっており、ディスク回転方向におけるこれらの間位置にはブリッジ構成部は設けられていない。よって、ブリッジ部12には、ブリッジ構成部15とブリッジ構成部16との間に、ディスク回転方向中央においてディスク半径方向に貫通する一つの開口部19のみが形成されている。
ブリッジ構成部15には、通路用凸部23,24が、ブリッジ構成部16には、通路用凸部26,27が形成されている。そして、車両左右方向一側に配置される場合、図14に破線および実線で示すように、ブリッジ構成部16の通路用凸部26,27に、ブリッジ構成部16を通るブリッジ部連通路30,34が形成されている。ブリッジ部12に形成されたこれらのブリッジ部連通路30,34は、キャリパボディ5内で互いに交差しており、ディスク2を挟んで対向する一対のシリンダ部10の図示略のボアおよびシリンダ部11のボア54同士を連通する。
なお、キャリパボディ5は、そのキャリパボディ本体86に、左右の取付勝手の違いに対しても、ディスク回転方向の中央に対してディスク回入側およびディスク回出側が対称の形状をなす共通の素材を用いることになり、車体左右方向逆側に配置される場合、キャリパボディ5におけるブリッジ構成部15の通路用凸部23,24に、図14に二点鎖線で示すように連通路30,34が形成されることになる。
キャリパボディ5には、ディスク軸線方向に沿ってシリンダ部10およびシリンダ部11間に橋架される図示略のパッドピンが一本のみ、キャリパボディ5のディスク回転方向中央に、ディスク2の外周側を通るように設けられており、この一本のパッドピンに、図示略の一対のブレーキパッドが支持されている。
シリンダ部11の底部63を有するシリンダ部10とは反対側の端部の外周縁部は、ディスク回転方向の中央かつディスク半径方向外側にディスク半径方向外方に凸状をなすように円弧状部67が設けられている。この円弧状部67のディスク回転方向両側に、ディスク半径方向内方に若干凹状をなす円弧状部68,69が設けられている。この円弧状部68,69のそれぞれの円弧状部66とは反対側にディスク半径方向内方に延出する直線状部70,71が設けられている。この直線状部70,71のそれぞれの円弧状部68,69とは反対側がディスク半径方向内方に凸状をなす円弧状部73で繋がっている。
シリンダ部11の底部63には、ディスク回転方向の中央である上記した円弧状部67の位置に、ディスク半径方向外側に突出する突出部77が一つのみ形成されている。そして、突出部77の位置に、摩擦攪拌接合により生じる、残存穴部80が残存形成されている。突出部77および残存穴部80は、ボア54の中心を通るディスク半径方向に沿う線上に配置されている。
そして、第3実施形態においても、キャリパボディ5は、ボア54の底部63の位置に開口部92を有する形状に一体成形の素材から加工されて形成されるキャリパボディ本体86と、このキャリパボディ本体86の開口部92を塞ぐ蓋部材95とを有しており、キャリパボディ本体86は、ディスク回転方向の中央に対してディスク回入側およびディスク回出側が対称に形成された素材に対して、左右の取付勝手の違いに応じて、ディスク回転方向の所定の片側にのみブリッジ部連通路30,34または30',34'を穿設加工する等して形成される。
そして、キャリパボディ本体86の開口部92に蓋部材95を嵌合させてこれらの接合境界に対して摩擦攪拌接合を行う。つまり、高速回転する接合工具100の先端軸部102を、開口部92のディスク回転方向一側を開始点として、開口部92と蓋部材95との接合境界に沿って所定方向(図14の時計回り方向)に連続的に移動させ、蓋部材95の全周に亘って円形状に摩擦攪拌接合を行うことで、蓋部材95とキャリパボディ本体86との境界部分を一体化する。すると、蓋部材95とキャリパボディ本体86との境界部分に倣ってループ状の摩擦攪拌接合の接合軌跡112が形成される。
そして、接合工具100を、これが蓋部材95の外周の接合開始点位置に戻ったところで、蓋部材95とキャリパボディ本体86との接合軌跡112の接線方向に沿って直線状に移動させ、シリンダ部11の底部63よりもディスク半径方向外側に突出する突出部77に逃がし、キャリパボディ5のディスク回転方向の中央に位置させたところで、キャリパボディ5から引き抜く。
これにより、接合軌跡112から連続する接合工具100の摩擦攪拌接合の移動軌跡113が、接合軌跡112から外側の突出部77の方向に直線状に延出することになり、また、接合工具100が引き抜かれた突出部77の位置に、接合工具100の先端軸部102により残存穴部80が形成されることになる。残存穴部80は、接合軌跡112よりもその外径方向外側に形成される。つまり、残存穴部80は、接合軌跡112とは重ならない。さらに、シリンダ部11の摩擦攪拌接合の終了位置113aは、キャリパボディ5のディスク回転方向の中央に配置される。
ここでも、突出部77は、キャリパボディ5が車体左右方向のいずれに配置されても、シリンダ部11のボア54に連通するブリッジ部連通路30及びブリッジ部連通路30’が形成される部位とシリンダ部11の周回り方向において一致しない位置に形成されており、その結果、摩擦攪拌接合の終了位置113aが、シリンダ部11に連通するブリッジ部連通路30及びブリッジ部連通路30’が形成される部位とシリンダ部11の周回り方向において一致しない位置で、この摩擦攪拌接合の接合軌跡112からずれたシリンダ部11の外周側位置に配置される。この場合も、摩擦攪拌接合の終了位置113aを連通路30に対し、上記周回り方向において一致しない位置とするには、残存穴部80の中心から少なくとも接合工具100の大径軸部101のショルダ101Aの半径以上離す。
第3実施形態のディスクブレーキによれば、ボアを一つのみ有するシリンダ部10が一つディスク2の一面側に設けられ、ディスク2の他面側にボア54を一つのみ有する他のシリンダ部11が一つのみ設けられ、ブリッジ部12がシリンダ部10およびシリンダ部11同士を接続する対向型のキャリパボディ5に、ブリッジ部12に形成されて、シリンダ部10およびシリンダ部11同士を連通するブリッジ部連通路30,34を形成する場合でも、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、シリンダ部11の摩擦攪拌接合の終了位置113aが、キャリパボディ5のディスク回転方向の中央に配置されるため、意匠性が向上する。
「第4実施形態」
次に、第4実施形態を主に図15および図16に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。
図15は、本発明に係る第4実施形態のディスクブレーキのキャリパボディを示す摩擦攪拌接合を説明するための正面図である。図16は、本発明に係る第4実施形態のディスクブレーキのキャリパボディを示す背面図である。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第4実施形態のディスクブレーキも、第1実施形態と同様、自動二輪車用のものである。
第4実施形態のディスクブレーキのキャリパボディ5は、ディスク回転方向に沿って長い形状をなすとともに、第1実施形態とは逆にディスク2を挟んでアウタ側(車輪に対し反対側)に配置されるシリンダ部11と、ディスク回転方向に沿って長い形状をなすとともにインナ側(車輪側)に配置される爪部121と、シリンダ部11および爪部121のそれぞれのディスク半径方向外側からディスク2の外周側へ延びてシリンダ部11と爪部121とをディスク2の半径方向外側で結ぶブリッジ部12とが一体に形成されたものである。
図16に示すように、シリンダ部11には、ディスク回転方向両側にディスク軸線方向に沿ってスライドピン穴123,124が形成されており、ディスク半径方向内側のディスク回転方向中央にもディスク軸線方向に沿ってスライドピン穴125が形成されている。キャリパボディ5は、これらのディスク軸線方向に沿うスライドピン穴123,124,125に嵌合される図示略のスライドピンで車両の車体側にディスク軸線方向にスライド可能に支持される、いわゆるピンスライドタイプとなっている。総じて、本第4の実施の形態のディスクブレーキは、いわゆるダンデム型のピンスライドタイプのディスクブレーキとなっている。
シリンダ部11には、ディスク2側に開口する複数のボア52,54がディスク回転方向に並んで形成されており、ボア52が形成された部分がシリンダ57となり、ボア54が形成された部分がシリンダ59となる。そして、これらボア52,54のそれぞれに同形状のピストンが摺動可能に嵌挿されることになる。
その結果、キャリパボディ5は、ディスク2の一面側にディスク回転方向に並んで複数のシリンダ57,59が設けられてシリンダ部11をなし、ディスク2の他面側に爪部121が設けられ、ブリッジ部12が爪部121とシリンダ部11とを接続するフィスト型のキャリパボディとなっている。
図15に示すように、シリンダ部11の爪部121とは反対側の端部の外周縁部は、ディスク回転方向の中央かつディスク半径方向外側にあってディスク半径方向内方に凹状をなす円弧状部130と、円弧状部130のディスク回転方向両側にあって、ディスク半径方向外方かつ相互に離間する方向に斜めに延出する直線状部131,132と、直線状部131,132のディスク回転方向両側にあってディスク半径方向外方に凸状をなす円弧状部133,134と、円弧状部133,134のディスク回転方向両側にあってディスク半径方向内方かつ相互に離間する方向に斜めに延出する直線状部135,136と、直線状部135,136のディスク半径方向内側にあってディスク半径方向内方に凸状をなす円弧状部137,138と、円弧状部137,138のそれぞれの近接側を結ぶ、ディスク半径方向外方に凹状をなす円弧状部139とを有している。
シリンダ57の底部62には、上記した円弧状部133の位置に、ディスク半径方向外側に突出する突出部76が形成されており、シリンダ59の底部63にも、上記した円弧状部134の位置に、ディスク半径方向外側に突出する突出部77が形成されている。そして、第1実施形態と同様、突出部76および突出部77の位置に、摩擦攪拌接合により生じる、残存穴部79および残存穴部80が残存形成されている。
ここでも、対応する突出部76および残存穴部79とボア52の中心とを結ぶ線と、対応する突出部77および残存穴部80とボア54の中心とを結ぶ線とは、キャリパボディ5のディスク回転方向の中央位置とディスク2の中心とを結ぶ線に対して、平行をなすとともに等距離の位置に配置されており、突出部76,77は互いに平行な方向に突出している。また、残存穴部79は、突出部76を形成する円弧状部66の中心位置に配置されており、残存穴部80は、突出部77を形成する円弧状部67の中心位置に配置されている。
キャリパボディ5のシリンダ部11には、両側のボア52,54の間位置にて両側のボア52,54の大径内径部52b,54b同士を連通するシリンダ間連通路52e,54eが形成されている。
また、キャリパボディ5のシリンダ部11には、ディスク回転方向一側に、図示略のブリーダプラグが取り付けられるとともに車載時上側となるボア54に大気連通するブリーダ連通路148が、外側から穿設されている。ここで、キャリパボディ5は、そのキャリパボディ本体86が、ディスク回転方向の中央に対してディスク回入側およびディスク回出側が対称に形成された素材に対して、左右の取付勝手の違いに応じて、ディスク回転方向の所定の片側にブリーダ連通路148,148’を穿設加工する等して形成されることになるが、図15では、車体左側に配置される場合に車載時上側となる位置に形成されるブリーダ連通路148を破線で、車体右側に配置される場合に車載時上側となる位置に形成されるブリーダ連通路148’を二点鎖線で示している。
第4実施形態においても、キャリパボディ5は、ボア52,54の底部位置に開口部91,92を有する形状に一体成形の素材から加工されて形成されるキャリパボディ本体86と、このキャリパボディ本体86の開口部91,92を塞ぐ蓋部材94,95とを有している。そして、第1実施形態と同様、キャリパボディ本体86の開口部91,92に蓋部材94,95を嵌合させて第1実施形態と同様に摩擦攪拌接合を行う。
第1実施形態と同様、突出部76は、キャリパボディ5が車体左側に配置される場合にシリンダ57に連通するシリンダ間連通路52e,54eおよびブリーダ連通路148が形成される部位(車体右側に配置される場合にシリンダ57に連通するシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位)とシリンダ57の周回り方向において一致しない位置に形成されている。その結果、摩擦攪拌接合の終了位置111aが、車体左側に配置される場合にシリンダ57に連通するシリンダ間連通路52e,54eおよびブリーダ連通路148が形成される部位(車体右側に配置される場合にシリンダ57に連通するシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位)とシリンダ57の周回り方向において一致しない位置で、この摩擦攪拌接合の接合軌跡110からずれたシリンダ57の外周側位置に配置される。この場合も、摩擦攪拌接合の終了位置111aを連通路52e,54e,148(あるいは連通路52e,54e)に対し、上記周回り方向において一致しない位置とするには、残存穴部97の中心から少なくとも接合工具100の大径軸部101のショルダ101Aの半径以上離している。
突出部77は、キャリパボディ5が車体左側に配置される場合にシリンダ59に連通するシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位(車体右側に配置される場合にシリンダ59に連通するシリンダ間連通路52e,54eおよびブリーダ連通路148’が形成される部位)とシリンダ59の周回り方向において一致しない位置に形成されている。その結果、摩擦攪拌接合の終了位置113aが、キャリパボディ5が車体左側に配置される場合にシリンダ59に連通するシリンダ間連通路52e,54eが形成される部位(車体右側に配置される場合にシリンダ59に連通するシリンダ間連通路52e,54eおよびブリーダ連通路148’が形成される部位)とシリンダ59の周回り方向において一致しない位置で、この摩擦攪拌接合の接合軌跡112からずれたシリンダ59の外周側位置に配置される。この場合も、摩擦攪拌接合の終了位置113aをシリンダ間連通路52e,54e(あるいはシリンダ間連通路52e,54e、ブリーダ連通路148,148’)に対し、上記周回り方向において一致しない位置とするには、残存穴部80の中心から少なくとも接合工具100の大径軸部101のショルダ101Aの半径以上離している。
以上に述べた第4実施形態のディスクブレーキによれば、シリンダ57,59がディスク2の一面側にディスク回転方向に並んで複数設けられてシリンダ部11をなし、ディスク2の他面側に爪部121が設けられ、ブリッジ部12が爪部121とシリンダ部11とを接続するフィスト型のキャリパボディ5に、ブリーダ連通路148,148’と、ディスク2の一面側にディスク回転方向に並んでいるシリンダ57,59同士を連通するシリンダ間連通路52e,54eとを形成する場合でも、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
「第5実施形態」
次に、第5実施形態を主に図17および図18に基づいて第4実施形態との相違部分を中心に説明する。
図17は、本発明に係る第5実施形態のディスクブレーキのキャリパボディを示す摩擦攪拌接合を説明するための正面図である。図18は、本発明に係る第5実施形態のディスクブレーキのキャリパボディを示す背面図である。なお、第4実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第5実施形態のディスクブレーキも、自動二輪車用のものである。
第5実施形態のディスクブレーキは、第4実施形態のディスクブレーキに対して、大略、キャリパの一側のシリンダ59に関する構成をなくしたものである。つまり、第5実施形態のディスクブレーキのキャリパボディ5においては、ディスク2の一面側であるアウタ側に配置されるシリンダ部11に、一つのボア52のみが形成され、ブリッジ部12が、シリンダ部11および爪部121同士を接続する。本第5実施形態のディスクブレーキは、いわゆるシングル型のピンスライドタイプのディスクブレーキとなっている。
シリンダ部11のディスク回転方向一側には、ボア52とブリーダプラグとを連通させるブリーダ連通路148が形成されている。なお、キャリパボディ5は、そのキャリパボディ本体86に、左右の取付勝手の違いに対しても共通の素材を用いることになるが、車体左右方向一側に配置される場合に、キャリパボディ本体86における図17の図示左側に、破線で示すようにブリーダ連通路148が形成されることになり、車体左右方向逆側に配置される場合に、キャリパボディ本体86における図17の図示右側に、二点鎖線で示すようにブリーダ連通路148’が形成されることになる。
シリンダ部11の爪部121とは反対側の端部の外周縁部は、ディスク回転方向の中央かつディスク半径方向外側にディスク半径方向外方に凸状をなすように円弧状部133が設けられており、この円弧状部133のディスク回転方向両側に、ディスク半径方向内方かつ相互に離間する方向に斜めに延出する直線状部131,135が設けられ、これら直線状部131,135のディスク半径方向内側にディスク半径方向内方に凸状をなす円弧状部150が設けられている。
シリンダ部11の底部62には、ディスク回転方向の中央である上記した円弧状部1333の位置に、ディスク半径方向外側に突出する突出部76が一つのみ形成されている。そして、突出部76の位置に、摩擦攪拌接合により生じる、残存穴部79が残存形成されている。突出部76および残存穴部79は、キャリパボディ5のディスク回転方向中央にあるボア52の中心を通るディスク半径方向に沿う線上に配置されている。
そして、第5実施形態においても、キャリパボディ5は、ボア52の底部位置に開口部91を有する形状に一体成形の素材から加工されて形成されるキャリパボディ本体86と、このキャリパボディ本体86の開口部91を塞ぐ蓋部材94とを有しており、キャリパボディ本体86は、ディスク回転方向の中央に対してディスク回入側およびディスク回出側が対称に形成された素材に対して、左右の取付勝手の違いに応じて、ディスク回出側のみにブリーダ連通路148,148’を穿設加工する等して形成される。
そして、キャリパボディ本体86の開口部91に蓋部材94を嵌合させてこれらの接合境界に対して第4実施形態と同様の摩擦攪拌接合を行う。
その結果、残存穴部79が、接合軌跡110よりもその外径方向外側に形成される。つまり、残存穴部79は、接合軌跡110とは重ならない。さらに、シリンダ部11の摩擦攪拌接合の終了位置111aは、キャリパボディ5のディスク回転方向の中央に配置される。
ここでも、突出部76は、シリンダ部11のボア52に連通するブリーダ連通路148が形成される部位とシリンダ部11の周回り方向において一致しない位置に形成されており、その結果、摩擦攪拌接合の終了位置111aが、シリンダ部11に連通するブリーダ連通路148および148’が形成される部位とシリンダ部11の周回り方向において一致しない位置で、この摩擦攪拌接合の接合軌跡110からずれたシリンダ部11の外周側位置に配置される。具体的に、摩擦攪拌接合の終了位置111aをブリーダ連通路148に対し、上記周回り方向において一致しない位置とするには、残存穴部79の中心から少なくとも接合工具100の大径軸部101のショルダ101Aの半径以上離している。
以上に述べた第5実施形態のディスクブレーキによれば、シリンダ部11がディスク2の一面側に一つ設けられ、ディスク2の他面側に爪部121が設けられ、ブリッジ部12が爪部121とシリンダ部11とを接続するフィスト型のキャリパボディ5に、ブリーダ連通路148を形成する場合でも、第4実施形態と同様の効果を奏することができる。
ここで、上記各実施形態において、「シリンダに連通する通路」とは、ブリッジ部連通路30,30’、シリンダ間連通路52e,54e及びブリーダ連通路148,148’を示している。
また、「シリンダに連通する通路が形成される部位」(以下、連通路形成部位と省略して記載する)とは、ブリッジ部連通路30、シリンダ間連通路52e,54e及びブリーダ連通路148のように実際に通路が形成されている部位の他、ブリッジ部連通路30’やブリーダ連通路148’のように左右の勝手違いとなるときに通路が形成される予定の部位を含むものとなっている。
上記実施の形態によれば、車両の車輪とともに回転するディスクの両面に配置された一対のブレーキパッドを押圧するピストンが挿入され前記ディスクの少なくとも一面側に位置するシリンダと、該シリンダの外周から前記ディスクの外周側へ延びるブリッジ部と、が一体に形成され、車両の左右に共通となるよう前記ディスクの回転方向中央に対してディスク回入側およびディスク回出側が対称に形成された素材から構成されるキャリパボディを有し、前記シリンダが、底部の蓋部材と、該蓋部材を摩擦攪拌接合によって接合することで閉塞される開口部とを備え、前記摩擦攪拌接合の終了位置が、前記シリンダに連通する通路が形成される部位と前記シリンダの周回り方向において一致しない位置で、該摩擦攪拌接合の接合軌跡からずれた前記シリンダの外周側位置に配置されるようになっている。これにより、摩擦攪拌接合の隆起により連通路のブレーキ液の流通に妨げが生じることを防止できる。また、キャリパ3の耐圧強度を向上させることができる。したがって、液圧に関する性能についての支障を抑えたディスクブレーキを提供することができる。
車両の車輪とともに回転するディスクの両面に配置された一対のブレーキパッドを押圧するピストンが挿入されるシリンダと、該シリンダの外周から前記ディスクの外周側へ延びるブリッジ部とが一体に形成され、車両の左右に共通となるよう前記ディスクの回転方向中央に対してディスク回入側およびディスク回出側が対称に形成された素材から形成されるキャリパボディを有し、前記シリンダは、前記ディスクの一面にディスク回転方向に並んで複数設けられるとともに、前記ディスクの他面にもディスク回転方向に並んで複数設けられ、前記ブリッジ部が前記ディスクの両面にそれぞれ設けられた前記複数のシリンダ同士を接続して対向型のキャリパボディを構成し、前記ブリッジ部に形成されて、前記ディスクの両面にそれぞれ設けられた前記複数のシリンダのうちの一のシリンダ同士を連通するブリッジ部連通路と、前記ディスクの一面にディスク回転方向に並んでいる前記シリンダ同士を連通するシリンダ間連通路とを有し、前記ディスクの一面の前記複数のシリンダの各々が、底部の蓋部材と、該蓋部材を摩擦攪拌接合によって接合することで閉塞される開口部とを備え、前記複数のシリンダにおける前記摩擦攪拌接合の終了位置の各々が、前記ブリッジ部連通路及び前記シリンダ間連通路が形成される部位と前記シリンダの周回り方向において一致しない位置で、該摩擦攪拌接合の接合軌跡からずれた前記シリンダの外周側位置に配置されるようになっている。これにより、摩擦攪拌接合の隆起によりブリッジ部連通路及び前記シリンダ間連通路のブレーキ液の流通に妨げが生じることを防止できる。また、キャリパの耐圧強度を向上させることができる。したがって、液圧に関する性能についての支障を抑えた対向4ポット型のディスクブレーキを提供することができる。
車両の車輪とともに回転するディスクの両面に配置された一対のブレーキパッドを押圧するピストンが挿入されるシリンダと、該シリンダの外周から前記ディスクの外周側へ延びるブリッジ部と、が一体に形成され、車両の左右に共通となるよう前記ディスクの回転方向中央に対してディスク回入側およびディスク回出側が対称に形成された素材から形成されるキャリパボディを有し、前記シリンダは、前記ディスクの一面に一つ設けられるとともに、前記ディスクの他面にも一つ設けられ、前記ブリッジ部が前記シリンダ同士を接続して対向型のキャリパボディを構成し、前記通路は、前記ブリッジ部に形成されて前記シリンダ同士を連通するブリッジ部連通路を有し、前記ディスクの一面のシリンダが、底部の蓋部材と、該蓋部材を摩擦攪拌接合によって接合することで閉塞される開口部とを備え、前記摩擦攪拌接合の終了位置が、前記ブリッジ部連通路が形成される部位と前記シリンダの周回り方向において一致しない位置で、該摩擦攪拌接合の接合軌跡からずれた前記シリンダの外周側位置に配置されるようになっている。これにより、摩擦攪拌接合の隆起によりブリッジ部連通路のブレーキ液の流通に妨げが生じることを防止できる。また、キャリパの耐圧強度を向上させることができる。したがって、液圧に関する性能についての支障を抑えた対向2ポット型のディスクブレーキを提供することができる。
また、シリンダは、前記ディスクの一面にディスク回転方向に並んで複数設けられ、前記ディスクの他面に爪部が設けられ、前記ブリッジ部が前記爪部と前記シリンダ部とを接続してフィスト型のキャリパボディを構成し、前記通路は、前記シリンダと大気連通してブリーダプラグにより閉止されるブリーダ連通路と、前記ディスクの一面側にディスク回転方向に並んでいるシリンダ同士を連通するシリンダ間連通路とであって、前記摩擦攪拌接合の終了位置が、前記ブリーダ連通路及びシリンダ間連通路が形成される部位と前記シリンダの周回り方向において一致しない位置で、該摩擦攪拌接合の接合軌跡からずれた前記シリンダの外周側位置に配置されている。
また、シリンダは、前記ディスクの一面に一つ設けられ、前記ディスクの他面に爪部が設けられ、前記ブリッジ部が前記爪部と前記シリンダ部とを接続してフィスト型のキャリパボディを構成し、前記通路は、前記シリンダと大気連通してブリーダプラグにより閉止されるブリーダ連通路であって、前記摩擦攪拌接合の終了位置が、前記ブリーダ連通路が形成される部位と前記シリンダの周回り方向において一致しない位置で、該摩擦攪拌接合の接合軌跡からずれた前記シリンダの外周側位置に配置されている。
また、シリンダ部には、一対のシリンダが設けられ、該2つのシリンダの前記摩擦攪拌接合の終了位置の各々は、前記一対のシリンダの間に共通した位置に配置されるようになっている。これにより、一対のシリンダに対して摩擦攪拌接合の残存穴部を一箇所にすることができ、残存穴部によるキャリパボディの剛性低下を抑制することができる。
また、シリンダの前記摩擦攪拌接合の終了位置は、前記シリンダ又はシリンダ間のディスク回転方向中央に配置されるようになっている。このため、ディスクブレーキの意匠性が向上する。