JP2011012288A - 高珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】1100℃以上で熱処理しても粗大粒が少なく、且つ高いB8/Bsを示す、浸珪処理に適した極薄珪素鋼板を提供する。
【解決手段】 質量%で、Si:2〜4%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、(B8/Bs)≧0.9である一方向性珪素鋼二次再結晶板の表面を研削してフォルステライト被膜を除去した後、圧下率65〜90%の範囲で冷間圧延を施し、板厚0.03〜0.1mmとした後、これを窒素または窒素水素混合雰囲気中で下記式(1)を満たす時間予備熱処理を施し、その後1100〜1250℃の温度範囲で浸珪処理を施すことを特徴とする高珪素鋼板の製造方法。
【数1】

【選択図】図1

Description

本発明は、高周波電源の小型化・低損失化に好適な、磁束密度の高い極薄高珪素鋼板の製造方法に関するものである。
近年パワーエレクトロニクス技術は、大型の産業用電源のみならず、家電機器の電源やハイブリッドカーの駆動用電源等、様々な分野においても利用されている。とくにIGBT(絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ)を代表とするスイッチング用半導体素子の発展は著しく、その適用範囲がますます高周波化、大容量化する傾向にある。
このようなスイッチング電源のトランス、リアクトルには、従来より珪素鋼板や鉄粉を固めたダストコアが用いられてきた。しかしながら、これらの材料は励磁周波数が高くなると鉄損が急激に上昇し発熱も顕著となる傾向がある。そのため、最近は高周波鉄損の低い鉄基アモルファスや、酸化鉄粉を主体とした軟磁性フェライトも鉄心素材として検討されつつある。
ただしアモルファスのコアは高価であり、また磁歪が大きいため騒音対策が必須となる。一方、軟磁性フェライトは固有抵抗が高く、高周波域で鉄損の主体となる渦電流損の大幅低減が期待される反面、鉄系素材に比べて磁束密度が低いため、周波数が数百kHzで容量の小さな電源には適しているが、IGBTが使われている数kHzで容量の比較的大きな電源では、鉄心が大型化してしまうため不向きと考えられる。
珪素鋼板は比較的安価であり磁束密度も高いことから、商用のみならず数百Hz〜数kHzの高周波電源においても使われている。ただし商用向けの珪素鋼板をそのまま高周波用に転用するのではなく、板厚の薄手化やSi含有量を高めて固有抵抗を高くするなど、渦電流損失を抑え高周波鉄損を低減するための対策が採られている。
板厚を薄手化したものとして、質量%で3%程度のSiを含む板厚0.05〜0.10mmの極薄珪素鋼板が現在市販されている。この極薄珪素鋼板には、板面内で均一な特性を示す無方向性の比較的磁束密度の低いものと、{110}<001>方位集積度を高めた磁束密度の高いものとがある。
極薄珪素鋼板のうち無方向性のものは、圧延の最終板厚を薄くして仕上焼鈍で一次再結晶させる点で、通常板厚の製造プロセスと基本的な違いはない。
極薄珪素鋼板のうち{110}<001>方位集積度を高めたものは、製造プロセスとして、通常の一方向性珪素鋼板と同様に最終仕上板厚まで冷延し、これを一次再結晶、更に二次再結晶させて製造する方法と、板厚0.3mm前後でいったん二次再結晶させて{110}<001>方位集積度を高めた一方向性珪素鋼板を作製した後、再圧延を施し板厚0.10mm以下とし、次いで700〜900℃で一次再結晶焼鈍する方法とが考えられる。しかしながら前者の方法は、冷延板厚が0.10mm以下になると二次再結晶が不安定となり{110}<001>方位の揃った組織を得ることが困難となるため、実際に採用されているのは後者の二次再結晶板の再圧延による方法である。
二次再結晶板の再圧延によるプロセスは、既にM.F.Littmannにより特許文献1に開示されている。こうして得られた{110}<001>方位集積度の高い極薄珪素鋼板は、圧延方向の磁束密度が高いため、鉄心の小型化が期待される。
一方、鋼中Si量を増加することにより固有抵抗を高めて高周波鉄損を下げる方法は、Si量4%を超える薄板の圧延が実質的に困難なため、工業レベルでは、特許文献2には、約3%Siの状態で板厚0.05〜0.3mmまで圧延後、焼鈍の最終工程でSi系のガスを用いてSi付加する浸珪プロセスが開示されている。とくに6.5%Siの場合は高周波鉄損低減のみならず、磁歪がゼロに近いため電源の低騒音化にも絶大な効果がある。
また特許文献3には、同板厚の6.5%Si鋼板より更に高周波鉄損を下げることが可能な、板厚方向に特定のSi濃度勾配を有する材料が開示されている。
ここで、浸珪プロセスにおいて製造された高Siの製品の加工性は重要であり、トランス・リアクトルを作製するときのスリット加工、打ち抜き加工、曲げ加工で破断することのないように、結晶粒径や粒界酸化など加工性改善の対策を講じる必要がある。たとえば特許文献4では、打ち抜き加工性が良好となるように平均粒径を規定している。
{110}<001>方位集積度が高く、且つSi含有量の多い極薄珪素鋼板の製造方法については、特許文献5において{110}<001>方位を有し、B8/Bs>0.9である一方向性珪素鋼板に圧下率60〜90%の冷間圧延を施して板厚0.15mm以下とし、次いで所定の条件で熱処理を施して一次再結晶組織とした後、SiClガスにより浸珪処理を施すこと、更にこれに磁区細分化処理を施すプロセスが開示されている。
米国特許第2473156号公報 特公平05−49745号公報 特許第3896688号公報 特許第2998676号公報 特許第2784683号公報
C.G.Dunn: ActaMet.1(1953),p163 荒井他 日本金属学会会報31,5(1992),p429
家電機器やハイブリッドカーの分野では、電源に対する小型・軽量化、高効率化の要望は極めて強く、鉄心素材に求められる特性も年々厳しくなっている。とくに周波数10kHz前後で比較的大きな電源容量で使われるケースも増えてきているが、このような使用条件に適合した素材は少なく、それぞれ特性改善が望まれている。
商用で一般的に使われている珪素鋼板は板厚0.20〜0.5mmであるが、板厚を0.10mm以下に薄手化して渦電流損を低減することで、高周波用途に適用することができる。またSi量を増加して固有抵抗を高めることによっても高周波鉄損を低減することが可能である。ただし圧延プロセスで4%を超えるSiを含む鋼板を板厚0.10mm以下の極薄珪素鋼板とするのは困難であるため、浸珪プロセス材を除くと、現在市販されている極薄珪素鋼板は、Si量3%前後のものである。この極薄珪素鋼板には無方向性のものと<001>{110}集合組織の集積度を高めたものがあるが、いずれの高周波鉄損も、浸珪プロセスで作製した同板厚の高珪素鋼板には及ばない。
浸珪プロセスによる高珪素鋼板製造方法については、特許文献2や特許文献3に開示されている。それによれば、3%Si前後の珪素鋼熱延板に1回以上の冷間圧延を施して浸珪用素材を作製し、これを1100〜1200℃で浸珪処理することにより作製される。しかしながら、現在こうして得られるのは無方向性の珪素鋼板であり、磁化力800A/mで励磁したときの磁束密度B8と飽和磁束密度Bsの比(B8/Bs)は0.7程度(3%SiでB8=1.42T、6.5%SiでB8=1.26Tに相当)しかない。
パワーエレクトロニクス市場において電源の小型化要望は強く、高珪素鋼板についても大幅な特性向上(たとえば現行比2割以上の鉄心小型化)が望まれている。これに対応する指標はB8/Bs>0.85(3%SiでB8>1.73T、6.5%SiでB8>1.53Tに相当)である。しかしながら、二次再結晶を利用せずに冷延・焼鈍の繰り返しでB8/Bs>0.85の素材を得るのは極めて困難である。
特許文献5に開示されている極薄珪素鋼板の製造法では、(B8/Bs)>0.9の一方向性珪素鋼二次再結晶板を圧下率60〜90%で冷間圧延し、これを所定の熱処理で一次再結晶焼鈍させた後、SiClガスによる浸珪処理を900℃、Si均一化拡散処理を1000℃で行うことによって、磁束密度が高い極薄の高珪素鋼板が得られるとしている。
しかしながら1000℃以下での浸珪処理は、副生成物の塩化鉄(沸点1023℃)が鋼板表面に残留して浸珪速度が著しく低下するうえ、Si均一化拡散処理にも数時間を要するため、現在行われているように連続ラインで処理するには不適切である。連続ラインで浸珪処理を行なうためには、塩化鉄の沸点1023℃以上、より好ましくは1100℃以上、またSi均一化拡散処理も1100℃以上の温度で短時間で行うことが必須となる。
他方、一般に{110}<001>方位集積度の高い一方向性珪素鋼二次再結晶板を再圧延して熱処理すると、700〜900℃において{110}<001>方位集積度の高い一次再結晶組織が得られ、高いB8を示すものの、1100℃以上の高温で焼鈍すると、{110}<001>方位から大きくずれた結晶粒が周囲の一次再結晶粒を蚕食して粗大粒となり、B8が著しく低下することが良く知られている(例えば非特許文献1及び2)。
1100℃以上で焼鈍すると無方向性珪素鋼レベルまでB8/Bsが下がるため、これでは浸珪用素材として一方向性珪素鋼二次再結晶板の再圧延板を用いる意味がなくなってしまう。
このように一方向性珪素鋼二次再結晶板を再圧延して得られる極薄珪素鋼板は、現状のままでは1100℃以上の温度で1〜30分間の熱処理を行なう連続浸珪ラインの素材としては不向きである。{110}<001>方位集積度が高い極薄の高珪素鋼板を連続浸珪ラインで製造するためには、1100℃以上で熱処理しても粗大粒が少なく、且つ高いB8/Bsを示す浸珪処理に適した極薄珪素鋼板の開発が必須となる。
本発明はこのような問題を解決するためのもので、1100〜1200℃で1分〜30分の熱処理をしても加工性を劣化させる粗大粒が少なく、かつB8/Bsの高い、連続浸珪プロセスに適した極薄珪素鋼板及びその製造方法に関するものである。
{110}<001>方位即ちGOSS方位集積度の高い一方向性珪素鋼二次再結晶板を70%以上圧延すると{111}<112>方位に強く集積した組織が得られ、これを焼鈍すると再びGOSS方位に強く集積した一次再結晶組織が得られる。これらの再結晶粒は互いに近い方位を有するため、隣接する結晶粒を浸食して粒成長しにくい状態となっている。焼鈍温度700〜1000℃では、板厚の数分の1程度の寸法の結晶粒が集まった組織となる。
焼鈍温度を更に上げた場合、GOSSと大きく異なる方位の結晶粒(非GOSS粒)が周囲のGOSS粒を蚕食して一気に粒成長し、板厚の5〜10倍程度の粗大粒となる。このような粒が発生すると、全体のGOSS集積度が低下し、材料の磁束密度B8も低下する。
連続浸珪ラインで効率よく浸珪処理を行うためには、1100℃以上での熱処理が必要となるが、GOSS二次再結晶板の再圧延材は、上述のように高温で非GOSS異常粒が発生してB8低下を招くため、方向性電磁鋼板を用いる意味が無くなってしまう。そこで高温焼鈍時の非GOSS異常粒成長を抑制するため、種々の検討を行った結果、筆者らは次の点を見出した。
異常粒が多く認められる部分では、その周囲に板厚の数分の1程度の寸法のGOSS粒が存在してるが、異常粒が殆ど認められない部分では、全体の組織が板厚の1〜2倍程度の粒径の板厚貫通粒組織となっていた。
またこのような板厚貫通粒が形成された部分に対し、更に数時間の焼鈍を続けたところ、それ以上殆ど粒成長しないことが判った。
そこで高温での非GOSS異常粒成長を抑制するために、1100℃以上で焼鈍する前に700℃〜1000℃の温度域で予備焼鈍を施し、板厚貫通粒を形成させることを試みた。予備焼鈍後の断面ミクロ組織はナイタールエッチングで観察した。その結果、700℃の昇温過程で既に一次再結晶が始まっていること、更に全体的に結晶粒界がエッチングされにくく不明瞭であることが判った。これは隣接する結晶粒同士の方位差が少ないことを示唆している。
また700〜1000℃での予備焼鈍時間を長くしても、微細な一次粒はほとんど粒成長しないか、あるいは焼鈍途中で異常粒成長してしまい、正常粒成長による板厚貫通粒組織は得られなかった。これらの試料を窒素中1100℃×2分の仕上焼鈍を施したところ、上記予備熱処理をしない場合と同様、試料の全体または一部に非GOSS異常粒が存在し、B8/Bsは大幅に低下した。
次に仕上焼鈍前の予備熱処理として、450〜650℃の焼鈍を試みた。このような低温焼鈍では、初期に歪みの回復が生じ、しばらく時間が経過してから再結晶が開始する。700℃以上で焼鈍したものと比較すると、低温で焼鈍した場合の再結晶粒径はやや大きく、結晶粒界も比較的明瞭に認められた。温度と均熱時間を変えて予備熱処理した後、窒素中1100℃×2分の仕上焼鈍を施したところ、ある条件において異常粒が全く発生せずB8/Bsも0.85以上の高い値を示すことが判明した。異常粒の発生しなかった試料は板厚貫通粒組織となっていた。予備熱処理条件と1100℃仕上焼鈍後のB8/Bsの関係を図1に示す。図中○印は仕上焼鈍後のB8/Bsが0.85以上を示すもの、×印は0.85未満を示すものを表し、×印のサンプルでは異常粒が顕著に認められた。
予備熱処理が450℃以下では長時間焼鈍しても仕上焼鈍時の非GOSS異常粒発生、B8低下は避けられず、また700℃以上でも同様の結果を示す。500〜650℃の範囲で温度に対応し一定時間以上予備熱処理することで、仕上焼鈍時に一次再結晶粒が正常粒成長して板厚貫通粒組織となり、非GOSS異常粒のないB8の高い試料が得られた。
その理由については以下のように考えている。まず500〜650℃で一定時間焼鈍することにより、圧延によって導入された転位が再配列し歪みを低減(再結晶前の回復段階)。その結果、一次再結晶時の核発生サイトが減少し、一次粒は比較的大きく成長する。このような場合、仕上焼鈍時に板厚貫通粒組織を形成しやすく、非GOSS異常粒によるB8低下を避けることができる。時間が短い場合は回復が不十分なため上記効果は得られない。
また450℃以下で予備熱処理した場合、長時間処理しても回復が不十分であるため、上記効果は得られない。
一方700℃以上で予備熱処理した場合は、昇温過程から再結晶が始まるため、圧延で内部に導入された多くの核発生サイトから一次粒が生じ、互いに方位が揃っているため粒成長の妨げとなり、板厚貫通粒組織を形成する前に非GOSS方位の粒が異常粒成長してしまう。
適正な予備熱処理温度と時間の関係は、原子の移動即ち平均拡散距離が同じとなるように定めると、図1の斜線部下辺の線が境界となる。その関係は式(1)で表すことができる。
本発明は上述した知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
第一の発明は、質量%で、Si:2〜4%を含み、(B8/Bs)≧0.9である一方向性珪素鋼二次再結晶板の表面を研削してフォルステライト被膜を除去した後、圧下率65〜90%の範囲で冷間圧延を施し、板厚0.03〜0.1mmとした後、これを窒素または窒素水素混合雰囲気中で下記式(1)を満たす時間予備熱処理を施し、その後1100〜1250℃の温度範囲で浸珪処理を施すことを特徴とする高珪素鋼板の製造方法である。
第二の発明は、質量%で、Si:2〜4%を含み、(B8/Bs)≧0.9であるフォルステライト被膜を有しない一方向性珪素鋼二次再結晶板に圧下率65〜90%の範囲で冷間圧延を施し、板厚0.03〜0.1mmとした後、これを窒素または窒素水素混合雰囲気中で下記式(1)を満たす時間予備熱処理を施し、その後1100〜1250℃の温度範囲で浸珪処理を施すことを特徴とする高珪素鋼板の製造方法である。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は全て質量%である。
本発明によれば、高周波鉄損に優れた高珪素鋼板を浸珪処理により製造することができる。また、本発明の極薄珪素鋼板は1100℃以上で熱処理しても粗大粒が少なく、且つ高いB8/Bsを示すので、連続浸珪ラインでの浸珪処理に適した極薄珪素鋼板である。
予備熱処理条件と1100℃仕上焼鈍後のB8/Bsの関係を説明する図である。 予備熱処理後と仕上焼鈍(1100℃×2min)後の断面ミクロ組織を示す図である。
以下に本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の高珪素鋼板を製造するにあたり、その素材である一方向性珪素鋼二次再結晶板のSi量は2〜4%とする。
素材のSi量が2%未満の場合、最後の浸珪処理に時間がかかるため好ましくなく、また4%を超える場合は素材が硬くなり、スラブ、熱延、冷延で欠陥が生じて歩留まりを低下させるため好ましくない。したがって素材のSi量の範囲は2〜4%とした。
なお、本発明の素材である一方向性珪素鋼二次再結晶板は、上記の基本成分以外の成分組成については、少なくともB8/Bsが0.9以上となる成分組成であればよいが、所望の特性に応じて、例えば以下に述べる成分を適宜含有させることができる。
Mn:2.5%以下
Mnも、Siと同様に磁気特性を改善するのに有効な元素であるが、その量が2.5%を超えると飽和磁束密度が大きく低下し、鉄損が増大する。したがって、Mnは2.5%以下の範囲で含有することができる。
sol.Al:0.0025〜0.030%
通常の方向性電磁鋼板製品の地鉄に含まれるsol.Alは0.0025%以下程度であるが、本発明では、1100℃以上での浸珪処理において結晶粒成長を抑制し、磁気特性に望ましくない結晶方位を有する結晶粒の成長を抑制するために上記の範囲で含有することができる。
Sb:0.005〜0.10%、Sn:0.005〜0.50%、Bi:0.001〜0.05%
これらの元素も浸珪処理において磁気特性劣化を抑制する効果があるので、これらの1種または2種以上を上記の範囲で含有することができる。
Cr:0.01〜0.8%、Ni:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜0.5%
これらの元素は比抵抗を高め、高周波鉄損を低減させる効果がある。一方、Cr量が0.8%を超える、Cu量が0.5%を超えると飽和磁束密度が低下する。また、Ni量が1.0%を超えると硬化が著しくなり、冷間圧延が困難となるので、これらの1種または2種以上を上記の範囲で含有することができる。
次に本発明の高珪素鋼板の製造方法について説明する。
再圧延前のGOSS二次再結晶板は、純化焼鈍を施した被膜付きの方向性電磁鋼板製品であってもよく、また被膜を有しない二次再結晶板であっても良い。被膜付きの場合、その除去は機械的研磨を利用しても化学的腐食を利用しても良い。
方向性電磁二次再結晶板のB8/Bsが0.9未満の場合は、再圧延・焼鈍後のGOSS集積度が低下する。このためB8/Bs≧0.9とした。
再圧延の圧下率は高くなるほど焼鈍後のGOSS集積度が改善される傾向にあるが、90%を超えると逆に低下する。一方、圧下率が65%未満では良好な集合組織を得ることができない。従って、圧下率の範囲は65〜90%とした。
また高周波用途を目的としているため、渦電流低減の観点から0.1mmを超える板厚は良好な鉄損特性を得ることができない。一方、板厚0.03mm未満となると、製造安定性、加工歩留まりが低下するので板厚は0.03〜0.1mmの範囲とした。
再圧延後の予備処理条件については既に説明したが、これを連続焼鈍炉で行っても箱型焼鈍炉で行っても良い。
仕上焼鈍に相当する浸珪処理は効率の観点から下限温度を1100℃とし、また浸珪中の表層高Si領域の融点が低いことから上限を1250℃とした。
また浸珪処理後、十分に拡散処理を行って高Siの均一材としても良く、また浸珪後の拡散温度・時間を調整して板厚Si濃度勾配を有する高周波用電磁鋼板としても良い。
浸珪前に鋼板表面にピッチ性の溝を形成する、または浸珪後に表面をレーザー照射等の物理的手段によってピッチ性の歪みを与えることによって磁区を細分化し、高周波鉄損低減を図っても良い。
質量%でSi:3.2%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる板厚0.30mmの一方向性珪素鋼二次再結晶板(B8/Bs=1.91T)の絶縁被膜を酸洗除去して板厚0.29mmとした後、圧下率70%、板厚0.086mmまで冷間圧延した。これを100%N中で650℃、700℃それぞれ10分間の予備熱処理を施した後、昇温速度18℃/sで加熱し1100℃で3分間の仕上焼鈍を行った。仕上焼鈍後の磁気特性は単板磁気測定装置で評価した。また予備熱処理後、及び仕上焼鈍後の試料断面ミクロ組織を比較した。
図2に試験結果を示す。予備焼鈍を650℃、700℃で行った場合、ともに一次再結晶組織であるが、650℃の方が結晶粒径が大きいことがわかる。また700℃焼鈍材の結晶粒界が不明瞭であるのに対し、650℃焼鈍材の粒界は比較的明瞭であった。更に1100℃仕上焼鈍後の組織を比較すると、予備焼鈍650℃材は全体が板厚の1〜2倍程度の貫通粒であるのに対し、700℃焼鈍材は板厚の5〜10倍程度の異常粒が多く存在し、その間に板厚の数分の一程度の微細な粒が残っていた。
仕上焼鈍後のB8は、予備焼鈍650℃材が1.79T、700℃材が1.48Tであった。なお仕上焼鈍材の結晶方位解析を行った結果、異常粒はGOSSと大きく異なる方位の結晶粒であることが判明した。
質量%でSi:3.2%、Mn:0.10%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる板厚0.23mmの一方向性珪素鋼二次再結晶板(B8/Bs=1.93T)の絶縁被膜を酸洗除去して板厚0.22mmとした後、圧下率70%、板厚0.065mmまで冷間圧延した。これを種々の条件で予備熱処理を施した後、窒素中昇温速度18℃/sで加熱し1200℃において20%のSiClガスを炉内に供給して1〜2分間の浸珪処理、更にSiClガスを止めて2分間の拡散処理を行った。浸珪後の試料のSi濃度は処理前後の重量減少率から求めた。浸珪試料の磁気測定は単板磁気測定装置で評価した。
その結果を表1に示す。
予備熱処理なし、または予備熱処理温度450℃以下の場合、浸珪後のB8/Bsは0.75前後と低い。
また予備熱処理温度700℃以上の場合、同様にB8/Bsが低い値を示した。
マクロ組織観察の結果、これらの試料は全面に異常粒が発生していることが判った。
一方、予備熱処理温度500〜650℃で本発明の条件式を満たす時間処理した場合、浸珪後のB8/Bsは0.85を超える高い値を示し、その組織に異常粒は殆ど認められなかった。
本発明により、1100℃以上の高温で連続浸珪を行っても高い磁束密度を有する極薄高珪素鋼板を製造することが可能となった。
本発明の高珪素鋼板は、高周波鉄損に優れるのでトランス、モータ、リアクトル等の鉄心材料として多様な用途に用いることができる。

Claims (2)

  1. 質量%で、Si:2〜4%を含み、(B8/Bs)≧0.9である一方向性珪素鋼二次再結晶板の表面を研削してフォルステライト被膜を除去した後、圧下率65〜90%の範囲で冷間圧延を施し、板厚0.03〜0.1mmとした後、これを窒素または窒素水素混合雰囲気中で下記式(1)を満たす時間予備熱処理を施し、その後1100〜1250℃の温度範囲で浸珪処理を施すことを特徴とする高珪素鋼板の製造方法。
  2. 質量%で、Si:2〜4%を含み、(B8/Bs)≧0.9であるフォルステライト被膜を有しない一方向性珪素鋼二次再結晶板に圧下率65〜90%の範囲で冷間圧延を施し、板厚0.03〜0.1mmとした後、これを窒素または窒素水素混合雰囲気中で下記式(1)を満たす時間予備熱処理を施し、その後1100〜1250℃の温度範囲で浸珪処理を施すことを特徴とする高珪素鋼板の製造方法。
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