JP2011012162A - 難燃性ウレタン樹脂 - Google Patents

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浩行 今野
Yasuhiro Hitai
康裕 比田井
Daishiro Kishimoto
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Abstract

【課題】種々のウレタン樹脂製品に利用可能な汎用性のあるウレタン樹脂であって、良好な難燃性を示し、且つ、多湿環境下における耐久性の改善されたウレタン樹脂製品を提供することが可能な難燃性ウレタン樹脂を提供する。
【解決手段】ポリオールとポリイソシアネートとより構成されるウレタン樹脂にリン系難燃剤により難燃性が付与された難燃性ウレタン樹脂において、
少なくとも上記ウレタン樹脂の一部にリン系難燃剤として(10−[2,3−ジ(n−ヒドロキシアルコキシカルボニル)プロピル]−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシド)を組み込み、難燃性ウレタン樹脂を構成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性ウレタン樹脂に関する。より詳しくは、非ハロゲン系難燃剤である、リン系難燃剤を用い、該リン系難燃剤をウレタン樹脂中に組み込むことにより構成される難燃性ウレタン樹脂に関する。
従来、樹脂製品に難燃性を付与するための手段としては、ヘキサブロモシクロドデカン等のハロゲン元素を含む化合物である難燃剤(以下、単に「ハロゲン系難燃剤」ともいう)を用いることが知られている。ハロゲン系難燃剤の使用によれば、良好な難燃性が示されるが、燃焼時にハロゲン化ガスを発生し、あるいはダイオキシンを発生する等の問題があり、主として環境への影響の観点からは、非ハロゲン系の難燃剤の使用が望まれている。
これに対し、種々の樹脂において、非ハロゲン系であってリン系難燃剤の使用が種々試みられている。リン系難燃剤を使用するにあたり、樹脂に添加または含浸させて当該に樹脂に難燃性を付与する添加型の難燃剤と、樹脂を合成する際に樹脂構成成分と重合させることによって樹脂中に組み込むことが可能な反応型の難燃剤とがある。特に、反応型の難燃剤は、燃焼時の熱によっても、樹脂中に添加された難燃剤が容易には揮発せず、安定した難燃性が示され易いという長所を有する。そのため、リン系難燃剤を使用する際には、反応型のリン系難燃剤を用い、樹脂に組み込むことによって、当該樹脂に難燃性を付与することが好ましい。
非ハロゲン系であって、反応型の難燃剤を用いた例として、たとえば、下記特許文献1には、スチレン系ゴム強化樹脂に対して、含リンエポキシ系難燃剤及びそれ以外のリン系難燃剤を併用した難燃性熱可塑性樹脂組成物の発明が開示されている。上記含リンエポキシ系難燃剤以外のリン系難燃剤としては、縮合リン酸エステル類(縮合リン酸エステル系難燃剤)が好適であることが開示されている。
また別の例としては、下記特許文献2に難燃性熱可塑性樹脂組成物およびその成形体の発明が開示されている。上記難燃性熱可塑性樹脂は、芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体等である樹脂を含有する樹脂組成物に、リン系難燃剤として、ホスフィン酸および/またはホスフィン酸誘導体の金属塩、およびリン酸と含窒素化合物の塩からなる群から選ばれる少なくとも1つが用いられることが開示されている。
また別の例として、例えば、特許文献3に、強度と難燃性に優れた大型の硬質ウレタンスラブストックフォームの発明が開示されている。当該硬質ウレタンスラブストックフォームに難燃性を付与するための難燃剤としては、リン等を含有する反応型難燃剤の使用が好ましいとして、アミン含有型のファイロール6(アグゾノベル社製)などの具体的な難燃剤が例示されている。
特開2009−67996号公報 特開2007−197489号公報 特開昭59−108024号公報
しかしながら、非ハロゲン系難燃剤を用いたウレタン樹脂については、いまだ充分な難燃性樹脂が得られていないのが現状であった。本発明者らは、上述するような従来の難燃性樹脂を参考にして、アミン含有反応型リン系難燃剤を用いて、難燃性のウレタン樹脂を得ることを試みたところ、難燃剤中に含有されるアミンが触媒効果を発揮し瞬時に反応が促進し、樹脂が部分的に重合してしまい、均一な難燃性を発現することができなかった。かかるアミンの触媒効果は、特に、発泡ウレタン樹脂を製造する際には、フォームを瞬時に形成するという点で、上記アミンの触媒作用は好ましく作用する。しかしながら、ウレタンフィルムなどの非発泡のウレタン樹脂を作成する場合には、ある程度の反応時間を設けながら硬化させて樹脂成形品を形成することが一般的であるため、同様にアミン含有反応型リン系難燃剤を用いて、難燃性ウレタンフィルムなどの非発泡ウレタン樹脂を製造しようとすると、アミンの触媒作用により、樹脂の硬化反応の時間が制御できず、ウレタン樹脂成形品を望ましく形成することが困難であった。したがって、アミン含有反応型リン系難燃剤を用いて難燃性が付与されたウレタン樹脂は、汎用性に欠けるという問題があった。
また、アミンを含まない脂肪族系反応型のリン系難燃剤として広く知られる縮合リン酸エステル系難燃剤を用いて、難燃性ウレタン樹脂を形成したところ、発泡ウレタン樹脂、非発泡ウレタン樹脂を問わず、良好な難燃性を示すウレタン樹脂が形成されることが確認された。ところが、これらの難燃性ウレタン樹脂製品は、多湿環境化における耐久性が不良であり、製品寿命の点で問題があった。
即ち、望ましい難燃性ウレタン樹脂を得ることは、従来公知の他の難燃性樹脂の技術を転用しただけでは容易に達成されず、ウレタン樹脂特有の問題が存在する。しかして、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、種々のウレタン樹脂製品に利用可能な汎用性のあるウレタン樹脂であって、良好な難燃性を示し、且つ、多湿環境下における耐久性の改善されたウレタン樹脂製品を提供することが可能な難燃性ウレタン樹脂を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、反応型のリン系難燃剤として、(10−[2,3−ジ(n−ヒドロキシアルコキシカルボニル)プロピル]−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシド)を用いて得られた難燃性ウレタン樹脂であれば、発泡、非発泡を問わず、ウレタン樹脂製品を良好に形成することが可能であって、形成された樹脂の難燃性は良好であり、しかも、多湿環境下において非常に優れた耐久性が示されることを見出し、本発明を完成させた。
即ち本発明は、
(1)ポリオールとポリイソシアネートとより構成されるウレタン樹脂にリン系難燃剤により難燃性が付与された難燃性ウレタン樹脂であって、少なくとも上記ウレタン樹脂の一部にリン系難燃剤が組み込まれており、上記リン系難燃剤が、(10−[2,3−ジ(n−ヒドロキシアルコキシカルボニル)プロピル]−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシド)であり、上記n−ヒドロキシアルコキシカルボニルが、2−ヒドロキシエトキシカルボニル、3−ヒドロキシプロポキシカルボニル、4−ヒドロキシブトキシカルボニル、5−ヒドロキシペンチルオキシカルボニル、6−ヒドロキシヘキシルオキシカルボニル、7−ヒドロキシヘプチルオキシカルボニル、8−ヒドロキシオクチルオキシカルボニル、または9−ヒドロキシノニルオキシカルボニルのいずれか1つであることを特徴とする難燃性ウレタン樹脂、
(2)上記ポリイソシアネートの構成成分であるジイソシアネートが、25℃において液状であることを特徴とする上記(1)に記載の難燃性ウレタン樹脂、
(3)上記ポリイソシアネートの構成成分であるジイソシアネートが、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、またはヘキシルメタンジイソシアネートのいずれか1つ、あるいは2以上の組み合わせであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の難燃性ウレタン樹脂、
(4)樹脂中のリン原子濃度が650ppm以上6500ppm以下であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の難燃性ウレタン樹脂、
を要旨とするものである。
本発明において用いられるリン系難燃剤は、反応型の難燃性として使用されるものであり、本発明のウレタン樹脂の少なくとも一部において組み込まれることによって樹脂中に存在していることから、当該ウレタン樹脂の難燃性が良好であるとともに、下記の効果を発揮する。即ち、本発明のウレタン樹脂は、多湿環境下においても樹脂の物性が低下し難く、耐久性が非常に優れている。したがって、本発明のウレタン樹脂は、従来の難燃性ウレタン樹脂製品では得られなかった望ましい難燃性および製品寿命が示される。たとえば、本発明のウレタン樹脂を用いて、樹脂フィルムを形成した場合には、難燃性ウレタン樹脂フィルムであって、製品寿命にも優れ、種々の用途に使用することのできるフィルムを提供することができる。
また本発明は、非ハロゲン系のリン系難燃剤を使用するため、従来のハロゲン系の難燃性付与剤を用いて製造された樹脂と比較し、環境への配慮がなされている。
以下に、本発明の難燃性ウレタン樹脂を実施するための形態を説明する。尚、本発明におけるウレタン樹脂は、本発明において特定される反応性リン系難燃剤が樹脂骨格中に組み込まれることにより難燃性が付与されているものであれば、熱可塑性であるか熱硬化性であるかを問わない。したがって、本発明の難燃性ウレタン樹脂は、たとえば、ウレタンフィルム、ウレタン系接着剤、ウレタン系シーラント、ウレタン系塗料などのいずれであってもよい。即ち、本発明は、ウレタン樹脂の基本構成である、ポリオールとポリイソシアネートは、従来公知のものを適宜選択し、これに特定のリン系難燃剤が組み込まれてなるウレタン樹脂である。
[リン系難燃剤]
本発明において用いられるリン系難燃剤は、(10−[2,3−ジ(n−ヒドロキシアルコキシカルボニル)プロピル]−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシド)であり、上記n−ヒドロキシアルコキシカルボニルにおいて、2−ヒドロキシエトキシカルボニル、3−ヒドロキシプロポキシカルボニル、4−ヒドロキシブトキシカルボニル、5−ヒドロキシペンチルオキシカルボニル、6−ヒドロキシヘキシルオキシカルボニル、7−ヒドロキシヘプチルオキシカルボニル、8−ヒドロキシオクチルオキシカルボニル、または9−ヒドロキシノニルオキシカルボニルのいずれか1つであるものが選択される(以下、上記リン系難燃剤を、単に「本発明におけるリン系難燃剤」ともいう)。
上記本発明におけるリン系難燃剤の生成方法は特に限定されるものではないが、たとえば以下のとおり生成される。即ち、合成材料として、10−(2,3−ジカルボキシプロピル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファ フェナントレン−10−オキシド(以下、単に「リン酸材料A」)ともいうと、1,n−グリコール(ただしnは2乃至9の整数)を準備し、これらを窒素雰囲気下で、反応温度200℃前後において反応させることにより、上記本発明におけるリン系難燃剤が生成される。上記反応においては、リン酸材料Aにおける末端のカルボキシル基と、1,n−グリコールのヒドロキル基とが脱水縮合反応し、本発明におけるリン系難燃剤が生成されるとともに、副成物として水が生成される。
また本発明におけるリン系難燃剤として、市販品を入手し、それを利用してもよい。市販品としては、三光株式会社製の「M−Ester(10−[2,3−ジ(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)プロピル]−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシド)」などが挙げられる。
尚、上記リン酸材料Aは、特許第4030367号公報によって示される方法により生成することができる。
上記、本発明におけるリン系難燃剤は、本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物を生成する際に、単独で使用してもよいが、良溶媒に溶解させて溶液の状態で使用することが取り扱い容易性の観点から好ましい。尚、本発明におけるリン系難燃剤の良溶媒としては、短鎖グリコールが好ましく用いられるが、特に、3−メチル−1,5ペンタンジオール(MPD)、1,3−ブタンジオール(1,3BD)、1,3−ペンタンジオール(1,3PD)、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(2,4DE)、1,5−ペンタンジオール(1,5PD)、エチレングリコール(EG)とにおいて溶解性が良好であり、中でもEGとの溶解性が特に良好である。尚、上述に列挙する良溶媒として短鎖グリコールと、本発明におけるリン系難燃剤とは、リン系難燃剤1モルに対して、MPD、1,3BD、1,3PD、2,4DE、1,5PDについては各3モル、EGについては4モルの量において、良好な溶解性が確認された。
上記本発明におけるリン系難燃剤は、反応型の難燃剤であって、ウレタン樹脂の骨格へ組み込むことが出来る。即ち、上記本発明におけるリン系難燃剤は、上述のとおりリン酸材料Aにおける2つのカルボキシル基それぞれと、1,n−グリコールにおける一方側のヒドロキシル基とを反応させ、脱水縮合させることによって生成されるため、末端に上記脱水縮合に供与されなかった1,n−グリコールにおける他方側のヒドロキシル基が存在し、当該ヒドロキシル基とウレタン樹脂の構成成分であるイソシアネートにおける−N=C=Oとが重合反応し、これによって、ウレタン樹脂の骨格の一部に上記本発明におけるリン系難燃剤が組み込まれるのである。このとき、ウレタン樹脂に組み込まれた上記リン系難燃剤においては、リン原子を含むリン酸エステル結合部分は、ウレタン樹脂の側鎖部分に位置する。
尚、本発明において「ウレタン樹脂の一部にリン系難燃剤が組み込まれる」とは、ウレタン樹脂を構成する繰り返し単位において、ポリオールとイソシアネートとともに、上記リン系難燃剤である化合物が繰り返し単位の一部として樹脂中に存在することを意味する。
ただし、本発明のウレタン樹脂中において、樹脂中に組み込まれていない上記リン系難燃剤あるいは上記リン系難燃剤由来のリンが、樹脂中に存在していることを除外するものではない。
即ち、上記リン系難燃剤は、該リン系難燃剤における末端ヒドロキシル基と、イソシアネートとが反応して、ウレタン樹脂中に組み込まれるが、反応の過程で、ウレタン樹脂に組み込まれずに未反応のまま残ったリン系難燃剤、あるいは、一度、ウレタン樹脂に組み込まれたリン系難燃剤の一部において、リン酸エステル結合が開裂することによって、樹脂から遊離したリン原子を含む部分が、樹脂中に存在していてもよい。
本発明の難燃性ウレタン樹脂は、良好な難燃性を示すとともに、多湿環境下においても充分な耐久性を示すという優れた性質を示すものであることは上述のとおりである。本発明においてこのように難燃性と耐久性のいずれにおいても良好な性質が示される理由は明らかではない。ただし本発明者らの推察によれば、従来の反応型リン系難燃剤をウレタン樹脂中に組み込んだ場合には、当該反応型のリン系難燃剤中に存在するエステル結合が加水分解により開裂し、ウレタン樹脂の主鎖が切断されて樹脂の分子量の低下が生じ、これによって樹脂の耐久性が落ちていたということが推測された。一方、本発明におけるリン系難燃剤においても、ウレタン樹脂中に組み込まれた際に、樹脂の主鎖に相当する部分にエステル結合が存在するものの、これに先んじて、側鎖に該当する部分に存在するリン酸エステル結合が開裂していることが推察された。これによれば、多湿環境下においても、本発明のウレタン樹脂では、主鎖の切断が抑制あるいは防止されることから分子量の低下が生じ難い。しかも、切断された、リン原子を含む側鎖部分は、ウレタン樹脂骨格とは分離されるものの、ウレタン樹脂中には残存しているので、当該ウレタン樹脂の難燃性を著しく低下させるものではない。したがって、本発明のウレタン樹脂では、難燃性と耐久性のいずれにおいても良好であることが推察された。
[ポリオール]
本発明のウレタン樹脂を構成するために用いられるポリオールは、ウレタン樹脂を構成するための成分として従来公知のものであれば、特に限定されず、用いることができる。たとえば、具体例としては、本発明におけるポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサンポリオール等を挙げることができる。上記各ポリオールは、ウレタン樹脂中に1種あるいは2種以上の組み合わせ(縮合重合物を含む)で存在していても良い。
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ−2−メチルテトラメチレングリコール等が挙げられる。
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸と多価アルコールの縮合物であるポリブタンジオールアジペート、ポリ−3−メチルペンタンジオールアジペート、ポリ−1,6−ヘキサンジオールアジペート、ポリネオペンチルグリコールアジペートあるいは、アルキレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジメチロールヘプチン、ノナンジオール等とセバシン酸、アゼライン酸、イソフタール酸、フタル酸等の二塩基酸とのエステル化物等が挙げられる。
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリ−1,6ヘキサンジオールカーボネートの他に、プロピレンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール等のアルキレングリコールを適宜組み合わせて合成して得られるポリアルキレンカーボネートポリオールが挙げられる。
前記ポリシロキサンポリオールとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオールやメチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
また必要に応じて、短鎖ジオール化合物を用いて各種物性を調整してもよい。上記短鎖ジオール化合物は、ウレタン樹脂の生成に用いられる従来公知の短鎖ジオール化合物を適宜使用することができるが、例えば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ノナンジオール、オクタンジオール、ジメチロールヘプタン、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ヘキサンジオール等のグリコール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等、ウレタン樹脂におけるポリオール成分の短鎖ジオールとして従来公知の化合物を適宜選択により使用可能である。
[ポリイソシアネート]
本発明のウレタン樹脂を構成するために用いられるポリイソシアネートは、ウレタン樹脂を構成するための成分として従来公知のものであれば、特に限定されず、用いることができる。たとえば、トリレンジイソシアネート(以下、「TDI」ともいう)、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」ともいう)、ノルボルナンジイソシアネート(以下、「NBDI」ともいう)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」ともいう)、ヘキシルメタンジイソシアネート(以下、「HMDI」ともいう)、またはジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」ともいう)などを挙げることができる。ポリイソシアネートは、1種のものを用いてもよいし、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。ただし、いずれのポリイソシアネートを用いるかについては、本発明において用いられるリン系難燃剤との相溶性などに留意して適宜決定される。
上記相溶性の観点からは、常温で液状であるポリイソシアネートを用いることが望ましい。即ち、リン系難燃剤と常温で液状であるポリイソシアネートとを混合させる際にはポリイソシアネートを高温にすることなく、好ましい相溶性が示される。そのため、容易に本発明におけるリン系難燃剤をポリイソシアネートに容易に溶かし込むことができるので、上記リン系難燃剤とポリイソシアネートとを重合させることが容易である点で、望ましい。特に、TDI、HDI、IPDI、NBDI及びHMDIは、常温で液状であり、且つ、極性も高いので、本発明におけるリン系難燃剤との相溶性が高く、該リン系難燃剤の良溶媒となる性質を有している。したがって上記5種のポリイソシアネートは、本発明に用いられるポリイソシアネートとして特に望ましい。尚、本発明および本明細書において「常温」というときは、特に断りがない場合には、25℃であることを意味する。
なお、TDI、HDI、IPDI、NBDI及びHMDIは本発明のリン系難燃剤と誘電率の値が近似するが、誘電率の値が近似すると、両者は相溶性に優れるものである。
以上に説明する本発明の難燃性ウレタン樹脂において、本発明におけるリン系難燃剤、ポリオール、ポリイソシアネートの配合割合は、目的とするウレタン樹脂製品によって適宜決定することができるが、特にリン系難燃剤の配合量については、後述するウレタン樹脂中のリン原子の濃度を勘案し、その配合量を決定することが望ましい。一方、ポリオールおよびポリイソシアネートは、用いられるポリオール及びポリイソシアネートの種類や、作成される樹脂の形態が、発泡樹脂であるか、非発泡樹脂であるか、などによって適宜決定してよく、ウレタン樹脂として一般的に知られる配合量と同様の量で配合することができる。
上述する本発明の難燃性樹脂には、その使用目的に応じ、さらに任意の成分を含有させ、目的に応じた種々のウレタン樹脂を製造することができる。
あるいは、本発明を用い難燃性ウレタンフィルム又はシートを製造する場合には、上述する本発明のウレタン樹脂の構成成分であるポリオール、ポリイソシアネート及びリン酸系難燃剤を、さらに酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル溶媒、必要に応じて短鎖グリコールを用いて混合させるとともに、必要に応じて短鎖グリコールや触媒などを用い、従来公知の方法によりウレタンフィルム又はシートとして製造することができる。
あるいはまた、上記難燃性ウレタンフィルム又はシートと同様の構成であって、希釈率を変更することによって、難燃性ウレタン系接着剤を製造することもできる。
上述に例示される種々の難燃性ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂中に本発明におけるリン系難燃剤が組み込まれていることが重要であって、より詳しくは、ウレタン樹脂を構成するイソシアネートの一部と上記リン系難燃剤とが重合することにより、ウレタン樹脂骨格に取り込まれていればよく、この点を除けば、ウレタンフィルム、ウレタン系接着剤、ウレタン系シーラント、ウレタン系塗料などの形態で知られるいずれかのウレタン樹脂として従来公知の方法により製造することが可能である。
[リン原子濃度]
以上に説明する本発明の難燃性ウレタン樹脂は、その目的に応じて、含有されるリン原子濃度を適宜決定してよい。即ち、求められる難燃性の程度によって、使用する上記リン系難燃剤の量を決定することができる。中でも、リン原子濃度が、650ppm以上6500ppm以下であることにより、種々のウレタン樹脂製品において充分な難燃性をウレタン樹脂に付与することができ、且つ、経済的に不利益が生じず好ましい。
本発明の難燃性ウレタン樹脂におけるリン原子濃度は、本発明におけるリン系難燃剤由来のリン原子の濃度であって、ウレタン樹脂に組み込まれているもの、およびウレタン樹脂に組み込まれてはいないが、樹脂中に含有されているもののどちらも含む。即ち、本発明のウレタン樹脂を形成する過程において、イソシアネートと上記リン系難燃剤との重合反応において、未反応のまま残ったリン系難燃剤におけるリン原子、および、一度、ウレタン樹脂中に組み込まれ、そのあと、リン酸エステル結合部分が開裂することによって、ウレタン樹脂骨格から離れた状態になったリン原子を含む趣旨である。
上記リン原子濃度は、ICP発光分光分析により測定することができる。あるいは、本発明の難燃性ウレタン樹脂を生成するに当たり用いられるリン系難燃剤を含む、リン原子含有の材料の配合量から、理論値としてリン原子濃度を算出することもできる。具体的には、リン原子量を樹脂組成物の固形分量で除することにより、生成される難燃性ウレタン樹脂中に含有されるリン原子濃度を算出することができる。
[難燃性評価]
また、本発明に難燃性ウレタン樹脂組成物の難燃性は、その目的に応じて、上述リン原子濃度を勘案し、その難燃性の度合を決定することができる。本発明において難燃性は、たとえば「限界酸素指数」で評価することができる。限界酸素指数が大きいほど難燃効果が高いと判断されるが、限界酸素指数が26以上であれば難燃性が付与されていると理解され、限界酸素指数が30以上であればより好ましい。上記限界酸素指数の測定は、プラスチックの燃焼試験方法(JIS K 7201)に準じて実施される。
ただし、本発明の難燃性の評価は限界酸素指数に限定されるものではない。たとえば、本発明の難燃性ウレタン樹脂を用いて、難燃性の合成皮革を製造した場合には、その難燃性は、米国自動車安全規格であるFMVSS−302(水平式燃焼試験)により評価することもできる。本試験は、試験体の燃焼速度を求める試験であり、得られる数値が小さいほど、燃え難いことを示す。本発明の難燃性合成皮革の難燃性は、その用途、および目的に応じて決定される。また本発明の難燃性ウレタン樹脂を用いる以外にも、基布等に難燃性を付与することにより、合成皮革としてより高い難燃性を示すことが可能である。例えば、車輛用あるいは、家具用に使用する場合には、45mm/min以下であることが望ましく、かかる難燃性は、合成皮革を構成する他の層がいずれも非難燃であっても、本発明の難燃性ウレタン樹脂からなる層にのみ依存して発揮される。
[耐久性評価]
本発明の難燃性ウレタン樹脂の高湿環境下における耐久性評価は、ジャングル試験(jungle test)前後のサンプルの100%モジュラス(kgf/cm)、引張強度(TSB(kgf/cm))、破断伸び(EB(%))を測定して評価することができる。より詳しくは、本発明のウレタン樹脂の耐久性を予め評価するためには、該ウレタン樹脂形成材料を離型紙上に塗布してフィルム状のサンプルを作成し、当該サンプルを、恒温恒湿機内に設置後、70℃、95%RHの条件において規定の日数が経過後、上記サンプルをとり出す。そして、100%モジュラス、引張強度、破断伸びを測定することにより測定することができる。
上記100%モジュラス(kgf/cm)は、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に記載の方法に準拠して測定される、フィルムの伸びが100%であるときの引張応力である。本発明において、1週間のジャングル試験を経たサンプルの100%モジュラスが、ジャングル試験前の100%モジュラスの80%以上の値を保持していれば、耐久性が良好であると評価される。
また上記引張強度(kgf/cm)はJIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に記載の方法に準拠して測定される。本発明において、1週間のジャングル試験を経たサンプルの引張強度(kgf/cm)が、ジャングル試験前の引張強度(kgf/cm)の80%以上の値を保持していれば、耐久性が良好であると評価される。
また上記破断伸び(%)は、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に記載の方法に準拠して測定される。本発明において、1週間のジャングル試験を経たサンプルの破断伸び(%)が、ジャングル試験前の破断伸び(%)の80%以上の値を保持していれば、耐久性が良好であると評価される。
以上のとおり、測定される100%モジュラス、引張強度、破断伸びのいずれもが、良好と評価される場合に本発明では多湿環境下における耐久性が良好であると判断することができる。即ち、本発明の難燃性ウレタン樹脂において、上述するジャングル試験において求められる各種の物性値が、ジャングル試験1週間後においても初期の物性を維持している(ジャングル試験前の物性値に対し、ジャングル試験後における物性値が80%以上に維持されている)場合に、耐久性がある評価される。
以下、実施例、及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本発明におけるリン系難燃剤としてM−Ester(三光(株)製、(10−[2,3−ジ(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)プロピル]−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシド))を準備し、M−Esterをエチレングリコール及びジエチレングリコールで分散させた後、さらにイソシアネートとしてTDI−80(三井化学社製、コスモネートT80)、ポリオールとしてPX1000(三洋化成社製、プライムポールPX1000)を加え、最後に、酢酸プロピルで固形分濃度が80%となるよう希釈したものを2Lフラスコに流し込んだ。そして、上記2Lフラスコ中に、さらにスズ触媒としてDBTDL(ジブチル錫ジラウレート)を添加し、80℃で4時間反応させて、末端にヒドロキシル基を有するウレタンプレポリマー(以下、「PU1」ともいう)を合成した。尚、PU1を合成するために用いた各材料の添加量は下記に示される量の0.076倍量とした。
M−Ester・・・・・・・・・・・・606.1g
エチレングリコール・・・・・・・・・・370.1g
ジエチレングリコール・・・・・・・・・・18.0g
イソシアネート(TDI−80)・・・2565.5g
ポリオール・・・・・・・・・・・・・7498.9g
酢酸プロピル・・・・・・・・・・・・4741.5g
ジブチル錫ジラウレート・・・・・・・・・・0.35g
次に、上述のとおり合成されたPU1、100gに、ポリイソシアネートとしてコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)社製)を15g、ウレタン反応用触媒としてレザミンUD103NT(大日精化工業(株)社製)を3g、混合させ、離型紙上に塗布し、80℃で30分、120℃で20分熱風循環式オーブン内で反応促進及び乾燥を行った。次いで、乾燥デシケータ中にて室温まで放冷し、3日間放置して養生し厚み130μmのポリウレタンフィルムを作成し、これを実施例1とした。
難燃性評価:
実施例1であるポリウレタンフィルムの難燃性を評価するため、JIS K 7201に準拠して限界酸素指数(LOI値)を測定した。測定結果は表1に示す。
耐久性評価:
実施例1であるポリウレタンフィルムのサンプルを3つ準備した。そして、これら2つを、70℃、95%RHに維持された恒温恒湿機内に設置し、1週間後に取り出したサンプルをジャングル試験1週間経過サンプル(1W)とした。またジャングル試験未実施のサンプルをジャングル試験未試験サンプル(0W)とした。各サンプルについて、JIS K 6251に準拠して、100%モジュラス(kgf/cm)、引張強度TSB(kgf/cm)、破断伸びEB(%)を測定した。そして、以下のとおり耐久性を評価した。各測定結果、及び評価結果は表1に示す。
(実施例2)
コロネートLの使用量を20gに変更した以外には、実施例1と同様にポリウレタンフィルムを作成し、これを実施例2とした。
(実施例3)
定法により窒素ガス雰囲気とした2Lフラスコ内に、ポリオール成分としてクラレポリオールC1090(液状ポリカーボネートジオール、MW974)((株)クラレ製ポリカーボネートジオール)、及びポリオールPX1000(MW984)を25℃に調整したものを注ぎ込んだ。次いで、25℃に調整したM−Ester、エチレングリコール、及びジエチレングリコールを攪拌により混合し、さらに溶媒である酢酸プロピルを下記量の4分の1量を添加して分散、溶解させて得た溶液1を、ロートを使用して上記2Lフラスコ内に滴下し、更に、酢酸プロピルを下記量の4分の2量を用いて、ロートに付着した溶液1を洗浄した。
次いで、2Lフラスコ内における混合溶液が透明で略均一な状態になったことを肉眼で確認した後、40℃に調整したイソシアネートTDI−100(三井化学社製)をロートを用いて一挙に上記2Lフラスコ内に添加し、酢酸プロピルを下記量の4分の1量を用いて、ロートに付着したイソシアネートを洗浄した。
その後、2Lフラスコ内を完全に窒素ガス雰囲気とし、還流冷却器下、25℃の恒温槽内に浸漬した状態で反応を行い、初期の反応熱の発生を抑制した。除々に反応熱により反応系温度が上昇し、15分後に35℃で一定になったことを確認してから70℃まで45分で昇温した。次いで25分間で80℃まで上昇し80℃でさらに210分間維持した後、25℃まで冷却しとり出した。透明で粘着性に富み、末端にヒドロキシル基を有するウレタンプレポリマーを合成した(以下、「PU3」ともいう)。
尚、PU3を合成するために用いた各材料の添加量は下記に示される量の0.076倍量とした。
M−Ester・・・・・・・・・・・・・・・606.1g
エチレングリコール・・・・・・・・・・・・・370.1g
ジエチレングリコール・・・・・・・・・・・・・18.0g
イソシアネート(TDI−100)・・・・・2531.7g
ポリオール(C1090)・・・・・・・・・3710.9g
ポリオール(PX1000)・・・・・・・・3749.0g
酢酸プロピル・・・・・・・・・・・・・・・4741.5g(70%溶液)
ジブチル錫ジラウレート・・・・・・・・・・・・・0.35g
上記PU3を用いたこと、および酢酸プロピル20gをさらに添加したこと以外は、実施例1と同様にウレタンフィルムを作成し、これを実施例3とした。
(実施例4)
クラレポリオールC1090を、ニッポランN965(MW966)(日本ポリウレタン工業社製)に変更したこと、溶媒として酢酸プロピルを酢酸nプロピルに変更したこと、およびウレタンプレポリマーを合成するための材料の使用料を下記のとおり変更したこと以外は、PU3と同様にウレタンプレポリマーを合成し、これをPU4とした。そして、上記PU4を用いたこと以外は実施例1と同様にウレタンフィルムを作成し、これを実施例4とした。
M−Ester・・・・・・・・・・・・・・・85.4g
エチレングリコール・・・・・・・・・・・・・52.1g
ジエチレングリコール・・・・・・・・・・・・・2.5g
イソシアネート(TDI−100)・・・・・344.1g
ポリオール(ニッポランN965)・・・・・493.6g
ポリオール(PX1000)・・・・・・・・501.5g
酢酸nプロピル・・・・・・・・・・・・・・369.9g(80%溶液)
ジブチル錫ジラウレート・・・・・・・・・・・・0.074g
上記PU4を用いたこと、および酢酸nプロピル20gをさらに添加したこと以外は、実施例1と同様にウレタンフィルムを作成し、これを実施例4とした。
(実施例5)
ポリオールPとしてニッポランN965(MW966)(日本ポリウレタン工業社製)のみを用いたこと、溶媒として酢酸nプロピルを用いたこと、およびプレポリマーを合成する材料の使用量を下記のとおり変更したこと以外は、PU3と同様にプレポリマーを合成し、これをPU5とした。そして、PU5を用いたこと以外は、実施例1と同様にウレタンフィルムを作成し、これを実施例5とした。
M−Ester・・・・・・・・・・・・・・・・73.2g
エチレングリコール・・・・・・・・・・・・・・44.6g
ジエチレングリコール・・・・・・・・・・・・・・2.2g
イソシアネート(TDI−100)・・・・・・295.3g
ポリオール(ニッポランN965)・・・・・・845.1g
酢酸nプロピル・・・・・・・・・・・・・・・540.2g(70%溶液)
(比較例1)
従来のリン酸縮合エステルであるリン系難燃剤としてExolit100(クラリアントジャパン(株)製 MW196)を準備し、これにイソシアネートとしてMDI(三井化学社製、コスモネート)、ポリオールとしてTA22−756M(MW1027、DMH/SAポリエステル)(日立化成ポリマー社製)を加え、最後に、酢酸プロピルで固形分量が80%となるよう希釈したものを2Lフラスコに流し込んだ。そして、PU1と同様にウレタンプレポリマーを合成し、PU6とした。そしてPU6を用いたこと以外は実施例1と同様にポリウレタンフィルムを作成し、これを比較例1とした。尚、PU6を合成するために用いた各材料の添加量は下記に示される量の0.076倍量とした。
ポリオールTA22−756M・・・・・・・・・・・・・・3194g
Exolit100(主成分)・・・・・・・・・・・・・・・152.9g
Exolit100中に含有されるエチレングリコール・・・・・43.5g
イソシアネート(MDI)・・・・・・・・・・・・・・・・1380g
酢酸プロピル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4770g(50%溶液)
ジブチル錫ジラウレート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.47g
(比較例2)
短鎖グリコールとしてMPD(3−メチル−1,5−ペンタンジオール、クラレ社製)を用い、且つ、材料の使用量を下記のとおり変更したこと以外は、上記PU6と同様に、ウレタンプレポリマーを合成しPU7とした。尚、PU7を合成するために用いた各材料の添加量は下記に示される量の0.076倍量とした。
ポリオールTA22−756M・・・・・・・・・・・・・・・821.6g
Exolit100(主成分)・・・・・・・・・・・・・・・・50.2g
Exolit100中に含有されるエチレングリコール・・・・・14.2g
短鎖グリコール(MPD)・・・・・・・・・・・・・・・・・994g
イソシアネート(MDI)・・・・・・・・・・・・・・・・・598g
酢酸プロピル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1973g(50%溶液)
ジブチル錫ジラウレート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.25g
(比較例3)
上述する比較例2に用いたPU7にさらに、耐久性向上剤として耐加水分解性向上剤であるエポキシ化合物EX614B(ナガセケムテックス(株)製)を14.39g添加したこと以外は、上記PU7と同様に、ウレタンプレポリマーを合成し、PU8とした。そして上記PU8を用いたこと以外は実施例1と同様に、ウレタンフィルムを作成し、これを比較例3とした。
(比較例4)
MPDの替わりに2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを用いたこと以外はPU7と同様に、ウレタンプレポリマーを合成し、これをPU9とした。そして、上記PU9を用いたこと以外は実施例1と同様にウレタンフィルムを作成し、これを比較例4とした。
(比較例5)
MPDの替わりにNPG(ネオペンチルグリコール、東京化成社製)を用いたこと以外はPU7と同様に、ウレタンプレポリマーを合成し、これをPU10とした。そして、上記PU10を用いたこと以外は実施例1と同様にウレタンフィルムを作成し、これを比較例5とした。
上述のとおり得られた実施例2乃至5及び比較例1乃至5について、実施例1と同様に難燃性評価を実施した。また、実施例1及び比較例2、3については耐久性評価を実施した。評価結果については、表1に示す。
表1に示すように、実施例1乃至5については、いずれもLOI値が高く、優れた難燃性を示すことがわかる。また、実施例1は、100%モジュラス(kgf/cm)、引張強度TSB(kgf/cm)、破断伸びEB(%)のいずれも初期物性が保持されており、本願発明の難燃性ウレタン樹脂は耐久性に優れることがわかる。
(参考例1)
上記PU3を100g、ポリイソシアネートとしてコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)社製)を15g、ウレタン反応用触媒としてレザミンUD103NT(大日精化工業(株)社製)を3g、酢酸プロピルを10g、DMFを10g用い、これら混合させ、難燃性ウレタン接着剤を作成した。
一方、合成皮革用の基布として、150d/48f ポリエステルフィラメント糸を使用した編み組織がモックロディアのニットに、難燃剤としてビゴール(主成分:ヘキサブロモシクロドデカン、大京化学社製)を、対繊維重量10%、分散染料(kayalon Polyester Black、日本化薬社製)を対繊維重量1%で吸尽させてベージュに染色したものを準備した。尚、基布自体の限界酸素指数を測定したところLOI値は、32であった。
また合成皮革の表皮として、クリスボンNY331(DIC(株)製)を100g、顔料としてダイラックブラックL1770を20g、酢酸プロピルを10g、DMFを10g用い、これらを混合させたものを、離型紙DE52(大日本印刷(株)製)上に、150g/mの塗布量で塗布し、約115℃の温度で90秒間乾燥させたものを準備した。
そして、上記基布の一方側面に、上述のとおり作成した難燃性ウレタン接着剤を150g/mの塗布量で塗布し、約115℃の温度で90秒間乾燥させ、溶媒を除去して、接着層を形成した。次いで、上記表皮の露出面側(離型紙が積層されていない面側)と上記
接着層面を接合し、続いて、基布の背面から100℃で加熱しながら、基布、接着層、表皮を圧着させ、最後に、離型紙を剥がして、合成皮革を完成させた。
上記合成皮革について、米国自動車安全規格であるFMVSS−302(水平式燃焼試験)の燃焼速度は55mm/min以下であり、優れた難燃性を示すことがわかる。
Figure 2011012162

Claims (4)

  1. ポリオールとポリイソシアネートとより構成されるウレタン樹脂にリン系難燃剤により難燃性が付与された難燃性ウレタン樹脂であって、
    少なくとも上記ウレタン樹脂の一部にリン系難燃剤が組み込まれており、
    上記リン系難燃剤が、(10−[2,3−ジ(n−ヒドロキシアルコキシカルボニル)プロピル]−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシド)であり、
    上記n−ヒドロキシアルコキシカルボニルが、2−ヒドロキシエトキシカルボニル、3−ヒドロキシプロポキシカルボニル、4−ヒドロキシブトキシカルボニル、5−ヒドロキシペンチルオキシカルボニル、6−ヒドロキシヘキシルオキシカルボニル、7−ヒドロキシヘプチルオキシカルボニル、8−ヒドロキシオクチルオキシカルボニル、または9−ヒドロキシノニルオキシカルボニルのいずれか1つである
    ことを特徴とする難燃性ウレタン樹脂。
  2. 上記ポリイソシアネートの構成成分であるジイソシアネートが、25℃において液状であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性ウレタン樹脂。
  3. 上記ポリイソシアネートの構成成分であるジイソシアネートが、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、またはヘキシルメタンジイソシアネートのいずれか1つ、あるいは2以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性ウレタン樹脂。
  4. 樹脂中のリン原子濃度が650ppm以上6500ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の難燃性ウレタン樹脂。
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