JP2011011222A - 熱延鋼板の冷却装置、熱延鋼板の製造装置及び製造方法 - Google Patents

熱延鋼板の冷却装置、熱延鋼板の製造装置及び製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】超微細結晶粒を有する熱延鋼板を製造することが可能な熱延鋼板の冷却装置及び熱延鋼板の製造装置、並びに、超微細結晶粒を有する熱延鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】熱間仕上げ圧延機列における最終スタンドの下工程側に配置され、搬送される鋼板へ向けて高圧ジェット水を噴射可能に設けられた複数のフラットスプレーノズルを備えるヘッダーを具備し、最終スタンドのワークロールの半径相当位置以内から最終スタンドのハウジングポスト出側までの区間で、鋼板へ向けてフラットスプレーノズルから高圧ジェット水を鋼板の搬送方向へ連続的に噴射可能に構成され、ノズルにねじり角が付与され、少なくとも鋼板の搬送方向最上流側に位置するノズルから、垂直面と交差する方向へ高圧ジェット水が噴射され、少なくとも垂直面と交差する方向へ高圧ジェット水を噴射するノズルに水平面内傾き角が付与されている、熱延鋼板の冷却装置とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱延鋼板の冷却装置、熱延鋼板の製造装置及び製造方法に関する。本発明は、特に、超微細結晶粒を有する熱延鋼板を製造する際に好適に用いられる熱延鋼板の冷却装置及び熱延鋼板の製造装置、並びに、超微細結晶粒を有する熱延鋼板の製造方法に関する。
自動車用や構造材用等として用いられる鋼材は、強度、加工性、靭性といった機械的特性に優れることが求められ、これらの機械的特性を総合的に高めるには、熱延鋼板の結晶粒を微細化することが有効である。そのため、微細結晶粒を有する熱延鋼板を得るための製造方法が数多く模索されてきている。また、結晶粒を微細化すれば、合金元素の添加量を削減しても優れた機械的性質を具備した高強度熱延鋼板を製造することが可能になる。
熱延鋼板の結晶粒の微細化方法としては、熱間仕上げ圧延の特に後段において、高圧下圧延を行ってオーステナイト粒を微細化するとともに粒内に圧延歪を蓄積させ、冷却後(又は変態後)に得られるフェライト粒の微細化を図る方法等が知られている。そして、オーステナイト粒の再結晶や回復を抑制してフェライト変態を促進させるという観点からは、圧延後の短時間で鋼板を所定の温度以下(例えば、720℃以下)まで冷却することが有効である。すなわち、微細結晶粒を有する熱延鋼板を製造するためには、熱間仕上げ圧延に引き続き、従来よりも早く冷却することが可能な冷却装置を設置し、圧延後の鋼板を急冷することが有効である。
圧延機の出側で圧延直後の鋼板を急冷し特性に優れた鋼板を得ることを目的とした技術として、例えば特許文献1には、熱間圧延材の材質制御方法及び装置が開示されており、特許文献1には、圧延直後の材料を急冷するために、直近急冷装置の水冷ノズルをロールバイトに向け傾斜させて取付け、噴射圧50〜200kg/cmで冷却水を噴射する熱間圧延材の材質制御方法が開示されている。また、設備コスト面や設備保全性等に優れた鋼板の熱間圧延設備及び熱間圧延方法を提供することを目的とした技術として、例えば特許文献2には、棒状冷却水を圧延機側に向いて伏角30°〜60°で噴射するノズルを有するヘッダーを備えた鋼板の熱間圧延設備が開示されている。また、微細結晶粒を有する熱延鋼板の製造を可能にする技術として、例えば特許文献3には、C:0.01〜0.3質量%を含有する炭素鋼又は低合金鋼からなる鋼板又はスラブを多パス熱間圧延して熱延鋼板を製造する方法であって、最終圧延パスをAr点以上の温度で終了し、その後0.4秒以内に720℃以下まで冷却することを特徴とする、超微細結晶粒熱延鋼板の製造方法が開示されている。
特開昭60−243226号公報 特開2007−61838号公報 特開2005−213595号公報
しかしながら、上記特許文献に開示された技術には、以下のような問題があった。
(1)圧延直後の鋼板を急冷するために鋼板へ向けて大量の冷却水を噴射すると、特に鋼板の上面に大量の冷却水が滞留すると考えられる。ロールバイトの出口近傍に大量の冷却水が滞留すると、鋼板を急冷すること、及び、鋼板を均一に冷却することが困難になり、超微細結晶粒(例えば、平均粒径が3μm以下の結晶粒をいう。以下において同じ。)を有する熱延鋼板(以下において、「超微細粒鋼」ということがある。)を製造することが困難になる。そのため、超微細粒鋼を製造するには、特に鋼板上面の排水性を向上させることが重要である。しかしながら、特許文献1に開示されている技術には、排水性を向上させるための対策が施されていない。また、特許文献2に開示されている技術は、鋼板の上面へ冷却水を積極的に滞留させる技術である。また、特許文献3には、最終圧延パス終了から0.4秒以内に鋼板を720℃まで冷却し得る冷却装置の詳細な構成については開示されていない。したがって、特許文献1〜特許文献3に開示されている技術を単に用いても、鋼板を急冷することが困難であり、超微細粒鋼を製造することは困難である。
(2)超微細粒鋼を製造する際に必要とされる急冷は、例えば特許文献3に示される通り少なくとも400℃/s以上の冷却速度を有するものであり、それには鋼板を核沸騰冷却することが求められる。超微細粒鋼を製造する際に必要とされる急冷では、冷却水を所定の圧力以上で鋼板表面へと衝突させることが必要になるのに対し、特許文献2に開示されている技術では、鋼板へと供給される棒状冷却水の噴射角度を主に規定しているのみである。また、特許文献2では鋼板に噴射された冷却水がロールバイトの出口まで流れるためロールバイト部直後からの冷却が可能であるとしているが、衝突後に鋼板上を流れる冷却水では十分な急冷はできず、この部分の冷却は超微細結晶粒の形成にほとんど寄与しない。
(3)棒状冷却水はフラットスプレーノズルから噴射された冷却水と比較して、鋼板の表面へ衝突する衝突面の面積が小さい。そのため、特許文献2に開示されている技術を用いて鋼板を急冷しようとすると、鋼板表面に冷却水が衝突する部位と冷却水が衝突しない部位との間で冷却ムラが生じやすくなる。
(4)特許文献1や特許文献2に開示されている技術にフラットスプレーノズルを単に適用すると、鋼板の幅方向に隣接するフラットスプレーノズルそれぞれから噴射された高圧ジェット水の鋼板表面における衝突域の境界部位(2つの衝突域がオーバーラップする部位)で冷却水の干渉等が生じ、鋼板の幅方向に冷却ムラが生じてしまう。
すなわち、上記特許文献に開示された技術には、超微細粒鋼を製造することが困難であるという問題があった。また、鋼板を均一に冷却することが困難であるという問題もあった。
そこで、本発明は、超微細結晶粒を有する熱延鋼板を製造することが可能な熱延鋼板の冷却装置及び熱延鋼板の製造装置、並びに、超微細結晶粒を有する熱延鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、超微細粒鋼の製造に関する研究調査を行い、以下の知見を得た。
1)図14に示されるように、Ar点以上の温度域で圧延された後、0.2秒以内に720℃までの冷却を完了すると、結晶粒をさらに微細化することが可能になる。
2)Ar点以上の例えば820℃から720℃までの100℃降下の冷却を、圧延後0.2秒以内で終了させるには、600℃/s以上の冷却速度で急冷を行う必要がある。600℃/sの冷却速度で鋼板を冷却した場合、鋼板の温度を100℃低下させるための所要時間は0.167秒である。したがって、冷却を0.2秒以内で終了させるためには、圧延後0.033秒以内に冷却を開始する必要がある。例えば、鋼板を10m/sの速度で移動させた場合、0.033秒で移動する距離は0.33mである。したがって、圧延後の急冷は、熱間圧延機列における最終スタンドのワークロールの半径相当距離以内から開始し、少なくとも熱間圧延機列における最終スタンド内ではほぼ連続して急冷する必要がある。
3)鋼板へと噴射された冷却水が鋼板に衝突する圧力と鋼板の冷却速度との間には相関があり(図12参照)、冷却水が鋼板に衝突する圧力を増大させることによって鋼板の冷却速度を増大させることが可能になる。そのため、600℃/s以上の冷却速度で急冷を行うには、鋼板へ向けて高圧ジェット水を噴射する必要があり、鋼板を核沸騰冷却する必要がある。
4)鋼板を600℃/s以上の冷却速度で急冷するために必要とされる、鋼板表面への高圧ジェット水の衝突圧力を確保するには、鋼板表面に滞留する冷却水の水量を低減することが有効である。それゆえ、超微細粒鋼を製造するには、排水性を向上させることが重要である。
5)超微細粒鋼を製造する際においても、鋼板を均一に冷却することが重要である。鋼板表面からの排水が妨げられると、鋼板表面に滞留する冷却水の水位が増して冷却の不均一性を増大させる虞がある。したがって、均一冷却の面からも、排水性を向上させることは重要である。
6)設備保全性を向上させるためには、特に機器の駆動部へと到達する水量を低減することが有効である。この水量を低減するには、鋼板表面における冷却水の流れの方向を特定することが有効である。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたもので、その要旨は以下の通りである。
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするため、添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。また、以下において、フラットスプレーノズルの軸方向と垂直方向とのなす角を「垂直面内傾き角」ということがある。
本発明の第1の態様は、熱間仕上げ圧延機列(11)における最終スタンド(11g)の下流側に配置され、パスラインを搬送される鋼板(1)へ向けて高圧ジェット水を噴射可能に設けられた複数のフラットスプレーノズル(21a、21a、…、22a、22a、…)を備えるヘッダー(21、22)を具備する熱延鋼板の冷却装置(20)であって、最終スタンドのワークロールの半径相当位置以内から最終スタンドのハウジングポスト出側までの区間で、鋼板へ向けて、フラットスプレーノズルから高圧ジェット水を鋼板の搬送方向へ連続的に噴射可能に構成され、フラットスプレーノズルには、ねじり角が付与され、少なくとも鋼板の搬送方向の最上流側に配置されているフラットスプレーノズルから噴射される高圧ジェット水は、鋼板の搬送方向上流側へ向けて垂直面と交差する方向へと噴射され、少なくとも、鋼板の搬送方向上流側へ向けて垂直面と交差する方向へ高圧ジェット水を噴射するフラットスプレーノズルには、水平面内傾き角が付与されていることを特徴とする、熱延鋼板の冷却装置である。
ここに、「下流側」とは、鋼板(1)の搬送方向の下流側をいう。また、「高圧ジェット水」とは、鋼板(1)を核沸騰冷却し得る圧力を有する噴流水をいう。また、「最終スタンドのワークロールの半径相当位置」とは、図3に示すように、圧延される鋼板(1)と最終スタンドのワークロール(11gw、11gw)とが接触する部位(より詳細には、鋼板(1)の上面と接触するワークロール(11gwu)の下死点、及び、鋼板(1)の下面と接触するワークロール(11gwd)の上死点。以下において、当該部位を「ロールバイト部」ということがある。)から鋼板(1)の搬送方向下流側へ最終スタンドのワークロール(11gw、11gw)の半径分だけ離れた位置をいう。また、「最終スタンドのワークロールの半径相当位置以内から」とは、最終スタンドのワークロールの半径相当位置とロールバイト部との間(最終スタンドのワークロールの半径相当位置よりもロールバイト部側)に存在する鋼板(1)の表面へ、ノズル(21a、21a、…、22a、22a、…)から噴射された高圧ジェット水が供給されることをいう。高圧ジェット水を連続的に噴射する区間の厳密な開始点は、ワークロールの半径相当位置以内において高圧ジェット水が直接鋼板に衝突する部位の最も上流側、すなわちロールバイト部に近い点である。高圧ジェット水を噴射するノズルを、最終スタンドのワークロールに最も近接させて設置する場合には、ノズルの噴射孔の中心からワークロールの表面に引いた接線が鋼板の表面に達する点が、高圧ジェット水を連続的に噴射する区間の厳密な開始点に相当する。また、「最終スタンドのハウジングポスト出側」とは、最終スタンドのハウジングポスト(11gh)の外面(鋼板搬送方向下流側の外面)をいう。また、「ノズルから高圧ジェット水を鋼板の搬送方向へ連続的に噴射可能に構成されている」とは、鋼板(1)の搬送方向に所定の間隔で配置された複数のノズル(21a、21a、…、22a、22a、…)から鋼板(1)の表面へ向けて高圧ジェット水を連続的に噴射可能に構成されていることをいう。また、「ねじり角」とは、フラットスプレーノズルから噴射された高圧ジェットが鋼板の被冷却面へ衝突することによって形成される帯状又は長円状の噴流衝突域の長手方向(噴流衝突域が長円状の場合は長軸方向)と鋼板の板幅方向とのなす角をいう。また、「ねじり角が付与され」とは、上記噴流衝突域の長手方向と鋼板の板幅方向とが非平行となるように、フラットスプレーノズルが配置されていることをいう。また、「水平面内傾き角が付与されている」とは、フラットスプレーノズルから噴射された高圧ジェット水によって急冷される鋼板の上面図又は下面図を記載した場合に、鋼板の搬送方向とフラットスプレーノズルの軸方向とが非平行となるように、フラットスプレーノズルが配置されていることをいう。
また、上記本発明の第1の態様において、フラットスプレーノズルの少なくとも一部に、ノズルねじり角が付与されていないことが好ましい。
ここに、「ノズルねじり角」とは、例えば、ヘッダーが幅方向に平行に且つ水平に配置され、円筒状であり、さらに円筒の中心軸とフラットスプレーノズルの中心軸とが同一平面内に配置されている場合、フラットスプレーノズルの軸方向の正面から見て、フラットスプレーノズルの長円部の長軸とヘッダーの軸とがなす角をいう(図8(c)参照)。なお、ヘッダーの形状及び配置はこれに限定されるものではない。また、「ノズルねじり角が付与されていない」とは、ノズルねじり角を0にすることをいう。
また、上記本発明の第1の態様において、鋼板の搬送方向に隣接するフラットスプレーノズルそれぞれに、水平面内傾き角が付与される場合、水平面内傾き角が付与された、鋼板の搬送方向に隣接するフラットスプレーノズルを第1フラットスプレーノズル及び第2フラットスプレーノズルとし、第1フラットスプレーノズルに付与された水平面内傾き角をα[rad](0<|α|<π)、第2フラットスプレーノズルに付与された水平面内傾き角をβ[rad](0<|β|<π)とするとき、α・β<0であることが好ましい。
ここに、「α・β<0」とは、例えば、高圧ジェット水が鋼板幅方向一端側(例えば、最終スタンドの作業側)へ向けて噴射されるように第1フラットスプレーノズルの水平面内傾き角を決定した場合には、高圧ジェット水が鋼板幅方向他端側(例えば、最終スタンドの駆動側)へ向けて噴射されるように、第2フラットスプレーノズルの水平面内傾き角が決定されることをいう。
また、上記本発明の第1の態様において、高圧ジェット水が、鋼板の少なくとも上面へ向けて噴射されることが好ましい。
また、上記本発明の第1の態様において、上記区間における、高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値が、3.5kPa以上であることが好ましい。
ここに、「高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値」とは、鋼板幅方向における任意の位置、例えば幅方向中央部で、鋼板搬送方向の線分に沿って鋼板表面が受ける高圧ジェット水の衝突圧力を測定又は算出し、これを所定の領域で平均化したものをいう。鋼板を板幅方向に均一に冷却するためには、鋼板幅方向のすべての領域において、この鋼板搬送方向平均値を等しくすることが望ましい。少なくともノズルピッチ相当の幅を持つ面で考えても、線分上で求めた鋼板面衝突圧力と等しくなるべきである。従って、上記鋼板搬送方向平均値を求めるにあたり、ノズル一個が受け持つ鋼板面での平均衝突圧力を鋼板の搬送方向に並ぶノズル列毎に求めて、これを鋼板の搬送方向に平均化しても良い。本発明では、例えば図13に示すように、鋼板幅方向におけるノズルピッチをA、鋼板の搬送方向におけるノズルピッチ、すなわちヘッダー間隔をBとするとき、面積がA×Bで表される平行四辺形領域に衝突した冷却水の力(衝突力)を、当該平行四辺形の面積A×Bで除することによって導出される、鋼板へと衝突した冷却水の圧力の平均値を、高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値とすることができる。
また、上記本発明の第1の態様において、冷却装置(20)の鋼板幅方向両端面と最終スタンド(11g)の鋼板幅方向両端面との間に、冷却水を排出可能な空間が確保されていることが好ましい。
ここに、「冷却装置(20)の鋼板幅方向両端面」とは、鋼板(1)の幅方向両端側における冷却装置(20)の外面をいう。また、「最終スタンド(11g)の鋼板幅方向両端面」とは、鋼板(1)の幅方向両端側における最終スタンドのハウジングポスト(11gh)の内面をいう。
また、上記本発明の第1の態様において、ヘッダー(21、31、22、32)が複数備えられ、該ヘッダーの少なくとも一部は、鋼板(1)の搬送方向及び鋼板(1)の幅方向のそれぞれへ複数列に配置されたノズル(31a、31a、…、32a、32a、…)へ冷却水を一括供給可能に構成されていることが好ましい。
また、ヘッダーの少なくとも一部が、鋼板の搬送方向及び鋼板の幅方向のそれぞれへ複数列に配置されたノズルへ冷却水を一括供給可能に構成されている上記本発明の第1の態様において、鋼板の上面側に複数のヘッダー(21、31)が配置され、鋼板の上面側に設けられているヘッダーのうち、少なくとも鋼板の搬送方向最上流側に配置されたヘッダー(31)が、鋼板の搬送方向及び鋼板の幅方向のそれぞれへ複数列に配置されたノズル(31a、31a、…)へ冷却水を一括供給可能に構成されているヘッダーであることが好ましい。
また、ヘッダーの少なくとも一部が、鋼板の搬送方向及び鋼板の幅方向のそれぞれへ複数列に配置されたノズルへ冷却水を一括供給可能に構成されている上記本発明の第1の態様において、鋼板の下面側に複数のヘッダー(22、32)が配置され、鋼板の下面側に設けられているヘッダーのうち、少なくとも鋼板の搬送方向最上流側に配置されたヘッダー(32)が、鋼板の搬送方向及び鋼板の幅方向のそれぞれへ複数列に配置されたノズル(32a、32a、…)へ冷却水を一括供給可能に構成されているヘッダーであることが好ましい。
本発明の第2の態様は、熱間仕上げ圧延機列(11)における最終スタンド(11g)と、上記本発明の第1の態様にかかる熱延鋼板の冷却装置(20)とを、鋼板(1)の搬送方向に順に備えることを特徴とする、熱延鋼板の製造装置(10)である。
本発明の第3の態様は、上記本発明の第2の態様にかかる熱延鋼板の製造装置(10)を用いて、熱間仕上げ圧延機列(11)における最終スタンド(11g)で圧延された鋼板(1)を処理する工程を含むことを特徴とする、熱延鋼板の製造方法である。
本発明では、最終スタンドのワークロール半径相当位置よりもロールバイト部側の部位から最終スタンドのハウジングポスト出側までの区間において、高圧ジェット水により、鋼板が連続的に冷却されるので、オーステナイト組織の回復等を抑制しながら圧延された鋼板を急冷することが可能になる。さらに、本発明では、フラットスプレーノズルに、ねじり角並びに垂直面内傾き角及び水平面内傾き角が付与されているので、鋼板の表面に滞留し得る冷却水の排水性を向上させること及び鋼板の均一冷却性を向上させることが可能になる。排水性を向上させることにより、鋼板を急冷することが容易になる。したがって、本発明によれば、超微細結晶粒を有する熱延鋼板を製造することが可能な熱延鋼板の冷却装置及び熱延鋼板の製造装置、並びに、超微細結晶粒を有する熱延鋼板の製造方法を提供することが可能になる。
本発明にかかる熱延鋼板の製造装置の一部を模式的に示す図である。 図1から本発明の熱延鋼板の冷却装置が配置される部分を抽出し拡大して示す図である。 最終スタンドのワークロールの半径相当位置及び最終スタンドのハウジングポスト出側を説明する図である。 垂直面内傾き角θ1を説明する図である。 垂直面内傾き角θ1のみが付与されたフラットスプレーノズル列から噴射された高圧ジェット水の形態を示す図である。 垂直面内傾き角θ1及び水平面内傾き角θ2が付与されたフラットスプレーノズル列から噴射された高圧ジェット水の形態を示す図である。 ねじり角βを説明する図である。 ノズルねじり角θ3を説明する図である。 フラットスプレーノズルと鋼板表面に形成される噴流衝突域との配置を3次元的に示す図である。 異なる向きに水平面内傾き角が付与された、鋼板の搬送方向に隣接する3つのフラットスプレーノズル列から噴射された高圧ジェット水による衝突域形状例を示す図である。 他の実施形態にかかる本発明の熱延鋼板の製造装置の一部を模式的に示す図である。 高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値と鋼板の平均冷却速度との関係を示す図である。 高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値を説明する図である。 720℃までの冷却所要時間と得られるフェライト粒径との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の熱延鋼板の冷却装置20、及び、該冷却装置20を備えた本発明の熱延鋼板の製造装置10の一部を概略的に示した図である。図1において、鋼板1は紙面左(上流側)から右(下流側)の方向へと搬送されており、紙面上下方向が鉛直方向である。以下において、当該上流側・下流側方向を搬送方向と記載することがあり、これに直交する方向で、通板される鋼板の板幅の方向を鋼板幅方向と記載することもある。また、見やすさのため、図では、繰り返しとなる符号の記載を省略することがある。
図1に示すように、本発明の熱延鋼板の製造装置10(以下において、単に「製造装置10」ということがある。)は、熱間仕上げ圧延機列11、本発明の熱延鋼板の冷却装置20(以下において、単に「冷却装置20」ということがある。)、搬送ロール12、及び、ピンチロール13を備えている。また図示及び説明は省略するが、熱間仕上げ圧延機列11より上流側には、加熱炉や粗圧延機列等が配置され、熱間仕上げ圧延機列11によって圧延される鋼板の条件を整えている。一方、ピンチロール13の下流側には他の冷却装置や巻き取り機等が配置され、鋼板をコイルとして出荷するための各種設備が配置されている。
熱延鋼板は概ね次のように製造される。すなわち、加熱炉から抽出され粗圧延機で所定の厚さまで圧延された粗バーが、温度を制御されながら連続的に熱間仕上げ圧延機列11で所定の厚さまで圧延される。その後、冷却装置20によって急速に冷却される。ここに、冷却装置20は、熱間仕上げ圧延機列11の最終スタンドのハウジングポスト11ghの内側から最終スタンドのワークロール11gw、11gw(図2参照。以下において、鋼板1の上面と接触するワークロール11gwを「ワークロール11gwu」、鋼板1の下面と接触するワークロール11gwを「ワークロール11gwd」ということがある。)に極力近接するように設置されている。そして、ピンチロール13を通過した鋼板は、その後、他の冷却装置により所定の巻き取り温度まで冷却され、巻取り機によりコイル状に巻き取られる。
上述のように、製造装置10は、熱間仕上げ圧延機列11を備えている。本実施形態では、7機の圧延機(11a、11b、11c、…、11g)が搬送方向に沿って並列されている。ぞれぞれの圧延機11a、11b、…、11gは、いわゆる各スタンドを構成する圧延機で、最終製品において必要とされる厚さ、機械的性質、表面品質等の条件を満たすことができるように圧下率等が設定されている。
図2は、冷却装置20が配置される部分を拡大して示す図である。図2は、最終スタンド11gのロールバイト部通過直後から鋼板の上面及び下面を急冷する冷却装置20の様子を示しており、図2の点線は高圧ジェット水を表している。また、図3は、最終スタンドのワークロールの半径相当位置、及び、最終スタンド11gのハウジングポスト11ghの出側を説明する図である。図3の紙面左側が鋼板の搬送方向上流側(以下において、単に「上流側」ということがある。)であり、図3の紙面右側が鋼板の搬送方向下流側(以下において、単に「下流側」ということがある。)である。以下、図2及び図3を参照しつつ、冷却装置20について具体的に説明する。
図2及び図3に示すように、冷却装置20は、熱間仕上げ圧延機列11における最終スタンド11gの下流側に配置されている。冷却装置20は、鋼板1の上面へ向けて高圧ジェット水を噴射するフラットスプレーノズル21a、21a、…(以下において、単に「ノズル21a」等ということがある。)が鋼板1の幅方向に複数個接続されたヘッダー21、21、…と、鋼板1の下面へ向けて高圧ジェット水を噴射するフラットスプレーノズル22a、22a、…(以下において、単に「ノズル22a」等ということがある。)が鋼板1の幅方向に複数個接続されたヘッダー22、22、…と、を備えている。冷却装置20において、ヘッダー21、21、…、及び、ヘッダー22、22、…は、鋼板1の搬送方向へ複数列に配置されており、ノズル21a及びノズル22aは、最終スタンド11gのハウジングポスト内側のみならず、最終スタンド11gのハウジングポストの下流側にも連続的に配置されている。ノズル21a、21a、…、及び、ノズル22a、22a、…には、ねじり角及び水平面内傾き角が付与されており、上流側に配置されているノズル21a、21a、…、及び、ノズル22a、22a、…には、さらに、垂直面内傾き角が付与されている。鋼板1の搬送方向に隣接するノズル21a、21a、及び、ノズル22a、22aには、互いに異なる向きに、水平面内傾き角が付与されており、鋼板1の幅方向に複数個備えられているノズル21a、21a、…に付与されている水平面内傾き角の向き及び大きさ、及び、鋼板1の幅方向に複数個備えられているノズル22a、22a、…に付与されている水平面内傾き角の向き及び大きさは、それぞれ同一とされている。ヘッダー21、21、…は、複数のノズル21a、21a、…へ冷却水を供給可能に構成され、ヘッダー22、22は、複数のノズル22a、22a、…へ冷却水を供給可能に構成されている。ノズル21a、21a、…と鋼板1の上面との間には、ノズル21a、21a、…と鋼板1との衝突等を防止する上面ガイド23、23が備えられ、ノズル22a、22a、…と鋼板1の下面との間には、ノズル22a、22a、…と鋼板1との衝突等を防止する下面ガイド24、24が備えられている。冷却装置20は、最終スタンド11gのワークロール11gwuに近接して備えられるヘッダー21、21、…と上面ガイド23とが一体に構成されるとともに、最終スタンド11gのワークロール11gwdに近接して備えられるヘッダー22、22、…と下面ガイド24とが一体に構成されている。そのため、例えば、最終スタンドのワークロール11gw、11gwを交換する際には、最終スタンドのワークロール11gwuに近接して備えられる上面ガイド23とともにヘッダー21、21、…を移動させ、且つ、最終スタンドのワークロール11gwdに近接して備えられる下面ガイド24とともにヘッダー22、22、…を移動させることができ、これによって、駆動側(図2の紙面奥側)のチョックが操作側まで抜け出てくる空間が空き、ロール交換の作業が可能になる。
図2及び図3に示すように、冷却装置20を用いて鋼板1を急冷する際には、最上流側に設置されたノズル21aから噴射された高圧ジェットの衝突域が、最終スタンド11gのワークロール半径相当位置よりもロールバイト部側の領域へと達し、且つ、最上流側に設置されたノズル22aから噴射された高圧ジェットの衝突域が、最終スタンド11gのワークロール半径相当位置よりもロールバイト部側の領域へと達する。さらに、図2及び図3に示すように、冷却装置20に備えられるノズル21a、21a、…、及び、ノズル22a、22a、…は、鋼板の搬送方向に沿って連続的に配置されている。そのため、冷却装置20を用いることにより、最終スタンド11gのワークロール半径相当位置以内から最終スタンドのハウジングポスト11ghの出側までの区間において、高圧ジェット水を鋼板1の上面及び下面へと連続的に噴射することができる。高圧ジェット水を鋼板1の上面及び下面へと噴射することにより、鋼板1の表面に滞留水が存在していても、ノズル21aやノズル22aから噴射された高圧ジェット水は鋼板表面の沸騰膜を貫通することができるので、鋼板1を核沸騰冷却する(急冷する)ことが可能になる。すなわち、冷却装置20をかかる形態とすることにより、ロールバイト部を通過した鋼板1の上下面を、より早く、より強く、連続的に、冷却することが可能になる。したがって、本発明によれば、超微細粒鋼を製造することが可能な冷却装置20を提供することができる。
図4は、垂直面内傾き角θ1を説明する図である。上述のように、上流側に配置されているノズル21a及びノズル22aには、垂直面内傾き角θ1が付与されている。かかる形態とすることにより、最終スタンド11gのワークロールの半径相当位置以内に位置する鋼板の表面に、高圧ジェットの衝突域を形成することが容易になるので、超微細粒鋼を製造することが容易になる。
図5は、垂直面内傾き角θ1のみが付与されたフラットスプレーノズル列から噴射された高圧ジェット水の形態を簡略化して示す図である。図5の紙面上下方向が鋼板幅方向であり、図5の紙面左右方向が鋼板の搬送方向である。図5に示すように、垂直面内傾き角θ1のみが付与されたフラットスプレーノズル列から噴射された高圧ジェット水を用いて鋼板を冷却すると、鋼板の幅方向に隣り合うフラットスプレーノズルから噴射された高圧ジェットの衝突域の境界部位において、冷却水の干渉等が発生する。そのため、垂直面内傾き角θ1のみが付与されたフラットスプレーノズル列を備える冷却装置を用いて鋼板を冷却しても、鋼板を均一に冷却することは困難である。そこで、本発明の冷却装置20に備えられるノズル21a、21a、…、及び、ノズル22a、22a、…には、垂直面内傾き角θ1に加えて、さらに水平面内傾き角θ2を付与している。
図6は、水平面内傾き角θ2を説明する図である。図6の紙面上下方向が鋼板幅方向であり、図6の紙面左右方向が鋼板の搬送方向である。以下、図6の紙面下側を最終スタンドの作業側、紙面上側を最終スタンドの駆動側という。図6に示すフラットスプレーノズルには、図4に示す垂直面内傾き角θ1が付与されており、さらに、紙面下側、すなわち、最終スタンドの作業側へ、水平面内傾き角θ2が付与されている。かかる形態で設置されたフラットスプレーノズルから高圧ジェット水を噴射することにより、鋼板表面の水を、最終スタンドの作業側へ排出することが容易になる。
図7は、ねじり角βを説明する図である。ねじり角は、高圧ジェットの噴流衝突域の長軸と鋼板の板幅方向とのなす角である。図6に示すように、垂直面内傾き角θ1及び水平面内傾き角θ2が付与されたフラットスプレーノズル列から鋼板へ向けて高圧ジェット水を噴射し、図7で定義されるねじり角βを有する隣接する高圧ジェットの衝突域を、鋼板の幅方向にオーバーラップさせると、鋼板の幅方向における冷却ムラを低減することが可能になる。水平面内傾き角θ2を付与したフラットスプレーノズルから鋼板へ向けて高圧ジェット水を噴射すると、鋼板表面に、最終スタンドの駆動側から作業側へと向かう水の流れを形成することができるので、最終スタンドの作業側へ排水することが容易になる。すなわち、フラットスプレーノズルへ水平面内傾き角を付与することにより、排水性を向上させることが可能になる。排水性を向上させることにより、鋼板表面に滞留する冷却水の水位を低減することが可能になるので、鋼板を急冷することが容易になる。したがって、最終スタンドのワークロールの半径相当距離以内へ向けて高圧ジェット水を噴射するために垂直面内傾き角が付与されたフラットスプレーノズルに、さらに水平面内傾き角を付与する本発明によれば、最終スタンドのワークロールの半径相当距離以内に存在する鋼板表面を急冷することが容易になるので、超微細粒鋼を製造することが可能になる。
なお、図6では、最終スタンドの作業側へ水平面内傾き角を付与したフラットスプレーノズルを例示したが、最終スタンドの駆動側へ水平面内傾き角を付与したフラットスプレーノズルから鋼板へ向けて高圧ジェット水を噴射すると、鋼板表面に、最終スタンドの作業側から駆動側へと向かう水の流れを形成することができるので、最終スタンドの駆動側へ排水することが容易になる。
このように、垂直面内傾き角が付与されたフラットスプレーノズルへ、さらに水平面内傾き角を付与することにより、排水性を向上させることが可能になる。水平面内傾き角が付与されたフラットスプレーノズルから噴射された高圧ジェット水は、鋼板幅方向の速度成分を有している。そのため、高圧ジェット水が鋼板の被冷却面へ衝突した後の冷却水も、鋼板幅方向の速度成分を持ち続け、鋼板幅方向への排水が促進される。本発明の冷却装置では、鋼板幅方向に所定の間隔で配置された複数のフラットスプレーノズルには同一の水平面内傾き角が付与されているので、鋼板幅方向への排水はヘッダー毎に促進される。
図8は、ノズルねじり角θ3を説明する図である。図8(a)は、鋼板搬送方向の上流側から、垂直面内傾き角θ1及び水平面内傾き角θ2が付与された複数のフラットスプレーノズルを備えたヘッダーを見た図、図8(b)は、図8(a)のヘッダーを垂直面内傾き角θ1=π/2となるように回転させた図、図8(c)は、図8(b)のヘッダーを水平面内で回転させ、フラットスプレーノズルを真正面から見た図である。本発明の冷却装置では、鋼板の均一冷却を容易にする等の観点から、ノズルねじり角θ3=0とすることが好ましい。それゆえ、上記冷却装置20では、ノズル21a、22aにノズルねじり角が付与されていない。
図9は、衝突域形状を説明する図である。図9(a)及び図9(c)は、フラットスプレーノズルと鋼板表面に形成される噴流衝突域との配置を3次元的に示す図である。また、図9(b)は図9(a)から衝突域形状のみを抽出した図であり、図9(d)は図9(c)から衝突域形状のみを抽出した図である。図9(a)に示すように、噴流衝突域の長軸方向一端からフラットスプレーノズルの噴射孔までの距離と、噴流衝突域の長軸方向他端からフラットスプレーノズルの噴射孔までの距離とが等しくなるようにフラットスプレーノズルを配置すると、図9(b)に示されるように衝突域が対称な形状になる。フラットスプレーノズルをこのように配置すると、鋼板を均一に冷却することが可能になり、排水性を向上させることも可能になる。これに対し、図9(c)に示すように、噴流衝突域の長軸方向一端からフラットスプレーノズルの噴射孔までの距離と、噴流衝突域の長軸方向他端からフラットスプレーノズルの噴射孔までの距離とが等しくならないようにフラットスプレーノズルを配置すると、図9(d)に示されるように衝突域が非対称な形状になる。フラットスプレーノズルをこのように配置すると、鋼板を均一に冷却することが困難になる。これは、噴流衝突域の長軸方向一端からフラットスプレーノズルの噴射孔までの距離と、噴流衝突域の長軸方向他端からフラットスプレーノズルの噴射孔までの距離とが等しい場合に均一冷却性を確保できるように、フラットスプレーノズルが設計されているためである。したがって、本発明では、図9(a)に示されるように、フラットスプレーノズルを配置することが好ましい。
図10は、冷却装置20から、鋼板の搬送方向に隣接する3つのフラットスプレーノズル列を抽出し、これらのフラットスプレーノズル列から噴射された高圧ジェット水による衝突域形状例を示す図である。図10の矢印は、排水方向を示している。図10の紙面上下方向が鋼板の幅方向であり、図10の紙面左右方向が鋼板の搬送方向である。図10に示す3つのフラットスプレーノズル列のうち、最上流側に配置されているフラットスプレーノズル列に付与されている水平面内傾き角をd1、このフラットスプレーノズル列と隣接するフラットスプレーノズル列に付与されている水平面内傾き角をd2、最下流側に配置されているフラットスプレーノズル列に付与されている水平面内傾き角をd3とする。また、反時計回りの向きへ付与された水平面内傾き角を正の角度で表し、時計回りの向きへ付与された水平面内傾き角を負の角度で表すものとする。このとき、図10に示す形態では、d1>0、d2<0、d3>0となっている。つまり、冷却装置20では、鋼板の搬送方向に隣接するフラットスプレーノズルを第1フラットスプレーノズル及び第2フラットスプレーノズルとし、第1フラットスプレーノズルに付与された水平面内傾き角をα[rad](0<|α|<π)、第2フラットスプレーノズルに付与された水平面内傾き角をβ[rad](0<|β|<π)とするとき、α・β<0となっている。かかる形態で水平面内傾き角を付与すると、図10に示すように、図10の紙面上側へと向かう水平面内傾き角d1が付与されたフラットスプレーノズル列から噴射された冷却水の排水を阻害することなく、水平面内傾き角d2が付与されたフラットスプレーノズル列から噴射された冷却水を図10の紙面下側へと排水することが可能になる。また、同様に、図10の紙面下側へと向かう水平面内傾き角d2が付与されたフラットスプレーノズル列から噴射された冷却水の排水を阻害することなく、水平面内傾き角d3が付与されたフラットスプレーノズル列から噴射された冷却水を図10の紙面上側へと排水することが可能になる。すなわち、かかる形態とすることにより、鋼板の搬送方向に隣接する複数のフラットスプレーノズルに水平面内傾き角を付与した場合であっても、排水性を向上させることが可能になり、当該効果に加えて、さらに、鋼板幅方向における冷却の均一性を向上させることが可能になる。
本発明において、最上流側に配置されるフラットスプレーノズル列に付与される水平面内傾き角の向きは、特に限定されるものではないが、最終スタンドの設備保全性を向上させやすい形態にする等の観点からは、最上流側に配置されたフラットスプレーノズル列から噴射された冷却水が、最終スタンドの作業側へと排水されるように、水平面内傾き角を付与することが好ましい。通常、圧延ロールの駆動軸側にはユニバーサルジョイントや減速機等が配置されているほか、数多くの油圧機器や計測配線等存在している。これらの機器等に大量の水が飛散すると、故障等の発生頻度が増大し、設備保全性の低下を招く。それゆえ、最終スタンドの作業側へ排水させることにより、設備保全性を向上させることが可能になる。
また、上述のように、本発明では、フラットスプレーノズルに水平面内傾き角を付与することで、鋼板表面の水の流れ方向を特定することが可能になる。従来のように、ノズルに水平面内傾き角を付与しない場合には、鋼板表面の水の流れ方向を特定することが困難であったため、水飛散対策を施す場合には、鋼板幅方向の両端に施す必要があった。これに対し、本発明では、鋼板表面の水の流れ方向を特定することが可能になるので、鋼板幅方向の一端に水飛散対策を施すことによって、設備保全性を向上させることが可能になる。それゆえ、本発明によれば、設備保全コストを低減することも可能になる。
また、本発明において、鋼板の搬送方向の複数列のフラットスプレーノズルに垂直面内傾き角を付与する場合、鋼板の搬送方向に隣接するフラットスプレーノズル列それぞれに付与する垂直面内傾き角の大きさは、特に限定されるものではないが、上流側のフラットスプレーノズル列から噴射された高圧ジェット水による鋼板の冷却を妨げ難い形態にする等の観点からは、下流側に配置されるフラットスプレーノズル列の垂直面内傾き角を、上流側に配置されるフラットスプレーノズル列の垂直面内傾き角以下にすることが好ましい。上述の冷却装置20では、下流側に配置されるフラットスプレーノズル列の垂直面内傾き角が、上流側に配置されるフラットスプレーノズル列の垂直面内傾き角以下とされている。
また、本発明において、鋼板の搬送方向に隣接するフラットスプレーノズルそれぞれから鋼板へ向けて噴射される高圧ジェット水の単位時間当たりの水量は、特に限定されるものではない。ただし、上流側のフラットスプレーノズル列から噴射された高圧ジェット水による鋼板の冷却を妨げ難い形態にする等の観点からは、下流側に配置されるフラットスプレーノズル列から噴射される高圧ジェット水の単位時間当たりの水量を、このフラットスプレーノズルの上流側に隣接して配置されるフラットスプレーノズル列から噴射される高圧ジェット水の単位時間当たりの水量以下にすることが好ましい。
本発明に関する上記説明では、鋼板の幅方向に配置された複数のフラットスプレーノズルが1つのヘッダーに接続され、鋼板の搬送方向に隣接するフラットスプレーノズルは異なるヘッダーに接続されている形態を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。図11は、他の実施形態にかかる本発明の熱延鋼板の冷却装置30の一部を拡大して、概略的に示した図である。図11において、図1に示す製造装置10と同様に構成されるものには、図1で使用した符号と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。また、図11では、上面ガイド及び下面ガイドの記載を省略しており、鋼板の上面側に配設されている各フラットスプレーノズル列から噴射された高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値(ノズル列毎の平均衝突圧)の概念、及び、連続冷却領域で鋼板搬送方向に平均した、高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値(連続冷却領域の平均衝突圧)の概念も併せて示している。
図11に示すように、本発明の熱延鋼板の冷却装置30(以下において、単に「冷却装置30」ということがある。)は、鋼板1の上面側に、最上流側の3列のフラットスプレーノズル列を構成する各フラットスプレーノズル31a、31a、…(以下において、単に「ノズル31a」等ということがある。)へ冷却水を供給可能に構成されたヘッダー31が備えられ、鋼板1の下面側にも、最上流側の3列のフラットスプレーノズル列を構成する各フラットスプレーノズル32a、32a、…(以下において、単に「ノズル32a」等ということがある。)へ冷却水を供給可能に構成されたヘッダー32が備えられるほかは、冷却装置20と同様に構成されている。ヘッダー31に接続された、鋼板1の搬送方向最上流側から2列のノズル31a、31a、及び、ヘッダー32に接続された、鋼板1の搬送方向最上流側から2列のノズル32a、32aには、垂直面内傾き角が付与されており、冷却装置30に備えられているすべてのノズル(ノズル31a、ノズル32a、ノズル21a、及び、ノズル22a)には、水平面内傾き角が付与されている。冷却装置30において、鋼板1の搬送方向最上流側に配置されたノズル31a、32aに付与されている垂直面内傾き角は、当該ノズル31a、32aと鋼板1の搬送方向下流側に隣接するノズル31a、32aに付与されている垂直面内傾き角以上とされている。また、鋼板1の搬送方向最上流側に配置されたノズル31a、32aから噴射された高圧ジェット水は、最終スタンド11gのワークロール11gwu、11gwdの半径相当位置よりもロールバイト部側の領域へと達している。それゆえ、このような冷却装置30であっても、冷却装置20と同様に、超微細粒鋼を製造することが可能になる。
図12は、高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値と鋼板の平均冷却速度との関係を示す図である。図12の縦軸は、表面に冷却水が滞留していない板厚3mmの鋼板の温度を750℃から600℃まで両面から冷却する際の平均冷却速度[℃/s]であり、図12の横軸は、高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値[kPa]である。また、図13は、高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値を説明する図である。図12に示すように、高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値と鋼板の平均冷却速度との間には相関があり、高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値を増大させると、鋼板の平均冷却速度を増大させることが可能になる。また、図13に示すように、高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値は、鋼板表面へと到達した冷却水の鋼板幅方向のノズルピッチをA、鋼板搬送方向のノズルピッチをBとするとき、面積がA×Bで表される四辺形領域に到達した冷却水の力(衝突力)を、当該四辺形領域の面積A×Bで除することによって導出される、ノズルあたりの平均衝突圧を搬送方向の当該区間で平均化したものである。
本発明において、冷却装置20、30から鋼板1へと噴射される高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値(以下において、「鋼板面衝突圧力平均値」という。)は、特に限定されるものではない。ただし、オーステナイト粒の回復等を抑制しながら鋼板1を急冷可能な形態にする等の観点からは、鋼板面衝突圧力平均値を3.5kPa以上とすることが好ましい。鋼板面衝突圧力平均値を3.5kPa以上とすることにより、600℃/s以上の平均冷却速度で鋼板を急冷することが可能になる。また、本発明において、結晶組織をより微細化可能な形態にする等の観点からは、1000℃/s以上の平均冷却速度で鋼板を急冷することが好ましい。1000℃/s以上の平均冷却速度で鋼板を急冷可能な形態にする観点から、本発明では、鋼板面衝突圧力平均値を、8kPa以上とすることがより好ましい。冷却速度は板厚によって変わり、近似的にはほぼ板厚に反比例する。板厚が3mmの鋼板を1000℃/sの平均冷却速度で急冷する能力を本発明の熱延鋼板の冷却装置が有していれば、板厚が5mmの鋼板を600℃/sの平均冷却速度で急冷することが可能になる。
上述のように、鋼板面衝突圧力平均値は、フラットスプレーノズルから噴出される高圧ジェット水の衝突力を当該フラットスプレーノズルが受け持つ冷却面積で除したものに等しい。したがって圧力を測定する代わりに衝突力を計測しても、鋼板面衝突圧力平均値を算出することができる、また、高圧ジェット水の衝突力はその流量、流速から求めることができ、流量及び流速は、フラットスプレーノズルへの給水圧力に依存するため、所定の圧力損失を見込めば、フラットスプレーノズルへの給水圧力から、鋼板面衝突圧力平均値を概算することもできる。鋼板面衝突圧力平均値の算出方法の一例を、以下に記載する。
鋼板面衝突圧力平均値Ps=F/(A・B)・10 [kPa]
ここで、Aは鋼板幅方向ノズルピッチ[mm]、Bは搬送方向ノズルピッチ[mm]、Fは高圧ジェット水の鋼板表面への衝突力[N]である。衝突力Fは、以下の式で求めることができる。
衝突力F=0.745・C・q・P0.5 [N]
ここで、Cは損失係数(0.8〜1.0程度)、qはフラットスプレーノズルの流量[L/min]、Pは給水圧力[MPa]である。なお、フラットスプレーノズルの流量は、ノズル形式(特性)に応じ、給水圧力との関係で定まる。
本発明に関する上記説明では、熱間圧延機列の最終スタンド11gのハウジングポスト11gh出側までの区間のみならず、当該区間よりも下流側の領域にも、フラットスプレーノズル21a、22aが配置されている形態を示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。ただし、圧延終了後短時間内に、720℃より低い温度まで鋼板を急冷することが求められる場合であっても、当該急冷を実施可能な冷却装置を提供可能にする等の観点からは、熱間圧延機列の最終スタンドのハウジングポスト出側までの区間、及び、当該区間よりも下流側の領域に、フラットスプレーノズルが連続的に配置されていることが好ましい。
また、本発明に関する上記説明では、垂直面内傾き角及び水平面内傾き角が付与されたフラットスプレーノズルが鋼板の上面側及び下面側に設置されている形態を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。鋼板の下面側へと噴射された高圧ジェット水は、重力によって鋼板の下方へ落下するため、通常、鋼板の下面側の排水性は、鋼板の上面側の排水性よりも良好である。それゆえ、本発明は、垂直面内傾き角及び水平面内傾き角が付与されたフラットスプレーノズルが鋼板の上面側にのみ配置される形態とすることも可能である。ただし、鋼板の上面側及び下面側の冷却均一性を確保する等の観点からは、垂直面内傾き角及び水平面内傾き角が付与されたフラットスプレーノズルが鋼板の上面側及び下面側に設置されている形態とすることが好ましい。
また、本発明において、鋼板の表面に滞留水が存在すると、ノズル21aから噴射された高圧ジェット水の圧力が滞留水によって低減され、鋼板1の表面における高圧ジェット水の衝突圧力が低減しやすい。そのため、鋼板1を急冷しやすい形態にする等の観点からは、鋼板1の表面の滞留水を低減することが好ましい。かかる観点から、本発明では、冷却装置20の鋼板幅方向両端面と最終スタンド11gの鋼板幅方向両端面との間に、冷却水を排出可能な空間が確保されていることが好ましい。
また、本発明の冷却装置20に関する上記説明では、鋼板1の上面側に配置されたヘッダー21と上面ガイド23とが一体に構成され、且つ、鋼板1の下面側に配置されたヘッダー22と下面ガイド24とが一体に構成される形態を例示したが、本発明の熱延鋼板の冷却装置は当該形態に限定されるものではない。本発明の熱延鋼板の冷却装置は、鋼板の下面側に配置されたヘッダーと下面ガイドとが一体に構成されない形態や、鋼板の上面側に配置されたヘッダーと上面ガイドとが一体に構成されない形態とすることも可能である。ただし、熱間圧延機列の最終スタンドに備えられるロールの交換作業を可能とし、その効率を向上させやすい形態にする等の観点からは、鋼板の上面側に配置されたヘッダーと上面ガイドとを同時に退避あるいは復帰動作させることが好ましく、そのために一体に構成することが好ましい。同様に、鋼板の下面側に配置されたヘッダーと下面ガイドとが一体に構成される形態とすることが好ましい。本発明において、鋼板の上面側に設置されるヘッダー及び上面ガイド、並びに、鋼板の下面側に設置されるヘッダー及び下面ガイドは、油圧シリンダー等の公知の手段を用いて移動させることができる。
このように、本発明の冷却装置20、30を用いることにより、超微細粒鋼を製造することが可能になる。したがって、冷却装置20を備える製造装置10や冷却装置30を備える本発明の熱延鋼板の製造装置を用いることにより、超微細粒鋼を製造することが可能になる。さらに、冷却装置30を備える本発明の熱延鋼板の製造装置や製造装置10を用いて熱間仕上げ圧延機列における最終スタンドで圧延された鋼板を処理する工程を有する形態とすることにより、超微細粒鋼を製造することが可能な、熱延鋼板の製造方法を提供することが可能になる。
熱延実機縮尺1/4程度の試験圧延機、及び、鋼板の上面側及び下面側に対称なヘッダーを備える冷却装置を用いて、以下に示す実験条件の下で実験を行い、圧延直後の冷却可能性、鋼板の冷却均一性、及び、水飛散対策コストを評価した。各実験に共通の条件について最初に記載し、引き続き、実験毎に異なる条件を表1〜表5に示す。
<共通の条件>
冷却される鋼板の板幅:300mm
冷却される鋼板の板厚:2mm
圧延後鋼板温度:850℃
鋼板の圧延速度:200mpm
ジェット水の水圧:1.5MPa
フラットスプレーノズルの拡がり量:鋼板衝突位置で約100mm
鋼板幅方向のノズルピッチ:50mm
鋼板幅方向のノズル数:8個
ヘッダー毎の給水量:144L/min
鋼板搬送方向のヘッダー列数:4列
<実験毎の条件>
実施例1(本発明例)の条件を表1に、実施例2(本発明例)の条件を表2に、比較例1の条件を表3に、比較例2の条件を表4に、比較例3の条件を表5に、それぞれ示す。表1〜表5において、「1列目」とは、鋼板の搬送方向最上流側(熱間圧延機列の最終スタンドに最も近い側)に配置されたフラットスプレーノズル列を意味し、以後、鋼板の搬送方向下流側へ移動するにつれて、「2列目」、「3列目」、及び、「4列目」と表記した。また、表1及び表2において、「+」とは、最終スタンドの作業側へ排水されるように水平面内傾き角を付与したことを意味し、「−」とは、最終スタンドの駆動側へ排水されるように水平面内傾き角を付与したことを意味する。
Figure 2011011222
Figure 2011011222
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Figure 2011011222
Figure 2011011222
<結果>
実施例1、実施例2、及び、比較例1〜3の結果を、表6に併せて示す。
Figure 2011011222
表6において、「圧延直後の冷却」は、最終スタンドのワークロールの半径相当距離以内から鋼板を冷却できたものを○とし、最終スタンドのワークロールの半径相当距離以内から鋼板を冷却できなかったものを×とした。また、「水飛散対策コスト及び設備保全性」は、最終スタンドの駆動側又は作業側にのみ水飛散対策を注力可能だったため水飛散対策コストが安価であり設備保全性が良好であったものを○とし、最終スタンドの駆動側及び作業側に水飛散対策を施す必要があったため水飛散対策コストが高価であり設備保全性が低下したものを×とした。また、「冷却の均一性」は、以下の基準で評価した。
◎:幅方向の温度ムラが20℃未満
○:幅方向の温度ムラが20℃以上30℃未満
△:幅方向の温度ムラが30℃以上40℃未満
×:幅方向の温度ムラが40℃以上
なお、上述のように、冷却均一性と排水性との間には相関がある。水平面内傾き角を付与したフラットスプレーノズルを用いて冷却した実施例1及び実施例2では、鋼板表面において水の流れ方向を特定することができたため、比較例1〜3と比較して、排水性を向上させることができた。
表6より、本発明によれば、圧延直後から冷却すること、及び、排水性を向上させて鋼板を均一に(幅方向の温度ムラを30℃未満に抑えて)冷却することが可能であった。したがって、本発明の冷却装置を用いることにより、超微細粒鋼を製造することが可能になる。これに対し、ノズルに垂直面内傾き角を付与せずノズルねじり角のみを付与した比較例1は、排水性が向上し、鋼板を均一に冷却することができたが、圧延直後から鋼板を冷却することができなかった。また、垂直面内傾き角のみを付与し水平面内傾き角及びノズルねじり角を付与しなかった比較例2は、排水性が低下し、幅方向の温度ムラが40℃以上となった。加えて、比較例2では水平面内傾き角を付与しなかったため、水飛散対策を最終スタンドの駆動側及び作業側に施す必要があり、水飛散対策コストが増大した。また、ノズルに垂直面内傾き角及びノズルねじり角を付与した比較例3は、鋼板表面に衝突することによって形成される高圧ジェットの衝突域が非対称な形状となったため、実施例1及び実施例2よりも冷却均一性が低下した。加えて、比較例3では、ノズルに垂直面内傾き角及びノズルねじり角を付与した一方、水平面内傾き角を付与しなかったため、実施例1及び実施例2よりも排水性が低下した。
以上、現時点において実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う熱延鋼板の冷却装置、熱延鋼板の製造装置、及び、熱延鋼板の製造方法も、本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明の熱延鋼板の冷却装置、熱延鋼板の製造装置、及び、熱延鋼板の製造方法は、超微細結晶粒を有する熱延鋼板の製造に用いることができる。また、超微細結晶粒を有する熱延鋼板は、自動車用、家電用、機械構造用、建築用等の用途に使用される素材として用いることができる。
1…鋼板
10…熱延鋼板の製造装置
11…熱間仕上げ圧延機列
11g…最終スタンド
11gh…最終スタンドのハウジングポスト
11gw…最終スタンドのワークロール
11gwu…最終スタンドのワークロール
11gwd…最終スタンドのワークロール
12…搬送ロール
13…ピンチロール
20…熱延鋼板の冷却装置
21…ヘッダー
21a…フラットスプレーノズル
22…ヘッダー
22a…フラットスプレーノズル
23…上面ガイド
24…下面ガイド
30…熱延鋼板の冷却装置
31…ヘッダー
31a…フラットスプレーノズル
32…ヘッダー
32a…フラットスプレーノズル

Claims (11)

  1. 熱間仕上げ圧延機列における最終スタンドの下流側に配置され、パスラインを搬送される鋼板へ向けて高圧ジェット水を噴射可能に設けられた複数のフラットスプレーノズルを備えるヘッダー、を具備する熱延鋼板の冷却装置であって、
    前記最終スタンドのワークロールの半径相当位置以内から前記最終スタンドのハウジングポスト出側までの区間で、前記鋼板へ向けて、前記フラットスプレーノズルから前記高圧ジェット水を前記鋼板の搬送方向へ連続的に噴射可能に構成され、
    前記フラットスプレーノズルには、ねじり角が付与され、
    少なくとも前記鋼板の搬送方向の最上流側に配置されている前記フラットスプレーノズルから噴射される前記高圧ジェット水は、前記鋼板の搬送方向上流側へ向けて垂直面と交差する方向へと噴射され、
    少なくとも、前記鋼板の搬送方向上流側へ向けて垂直面と交差する方向へ前記高圧ジェット水を噴射する前記フラットスプレーノズルには、水平面内傾き角が付与されていることを特徴とする、熱延鋼板の冷却装置。
  2. 前記フラットスプレーノズルの少なくとも一部に、ノズルねじり角が付与されていないことを特徴とする、請求項1に記載の熱延鋼板の冷却装置。
  3. 前記鋼板の搬送方向に隣接する前記フラットスプレーノズルそれぞれに、前記水平面内傾き角が付与され、
    前記水平面内傾き角が付与された、前記鋼板の搬送方向に隣接する前記フラットスプレーノズルを第1フラットスプレーノズル及び第2フラットスプレーノズルとし、前記第1フラットスプレーノズルに付与された前記水平面内傾き角をα[rad](0<|α|<π)、前記第2フラットスプレーノズルに付与された前記水平面内傾き角をβ[rad](0<|β|<π)とするとき、α・β<0であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱延鋼板の冷却装置。
  4. 前記高圧ジェット水が、前記鋼板の少なくとも上面へ向けて噴射されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱延鋼板の冷却装置。
  5. 前記区間における、前記高圧ジェット水の鋼板面衝突圧力の鋼板搬送方向平均値が、3.5kPa以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱延鋼板の冷却装置。
  6. 前記冷却装置の鋼板幅方向両端面と前記最終スタンドの鋼板幅方向両端面との間に、冷却水を排出可能な空間が確保されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱延鋼板の冷却装置。
  7. 前記ヘッダーが複数備えられ、該ヘッダーの少なくとも一部は、前記鋼板の搬送方向及び前記鋼板の幅方向のそれぞれへ複数列に配置された前記フラットスプレーノズルへ冷却水を一括供給可能に構成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱延鋼板の冷却装置。
  8. 前記鋼板の上面側に複数の前記ヘッダーが配置され、
    前記鋼板の上面側に設けられている前記ヘッダーのうち、少なくとも前記鋼板の搬送方向最上流側に配置された前記ヘッダーが、前記鋼板の搬送方向及び前記鋼板の幅方向のそれぞれへ複数列に配置された前記ノズルへ冷却水を一括供給可能に構成されている前記ヘッダーであることを特徴とする、請求項7に記載の熱延鋼板の冷却装置。
  9. 前記鋼板の下面側に複数の前記ヘッダーが配置され、
    前記鋼板の下面側に設けられている前記ヘッダーのうち、少なくとも前記鋼板の搬送方向最上流側に配置された前記ヘッダーが、前記鋼板の搬送方向及び前記鋼板の幅方向のそれぞれへ複数列に配置された前記ノズルへ冷却水を一括供給可能に構成されている前記ヘッダーであることを特徴とする、請求項7又は8に記載の熱延鋼板の冷却装置。
  10. 熱間仕上げ圧延機列における最終スタンドと、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱延鋼板の冷却装置とを、鋼板の搬送方向に順に備えることを特徴とする、熱延鋼板の製造装置。
  11. 請求項10に記載の熱延鋼板の製造装置を用いて、熱間仕上げ圧延機列における最終スタンドで圧延された鋼板を処理する工程を含むことを特徴とする、熱延鋼板の製造方法。
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