JP2011006943A - ずれ止めおよび合成桁 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の材料や設計法の範囲では困難であった合成桁のスタッド本数削減が可能となり、鋼桁の製作性向上、橋梁構造の合理化、コスト縮減などのメリットを得ることができるずれ止めおよび合成桁を提供する。
【解決手段】鋼桁2の上フランジ4F上にコンクリート床版1を一体化してなる合成桁のずれ止めとして、鋼の化学組成が、質量%で、C:0.01%以上、0.15%以下、Si:0.03%以上、0.6%以下、Mn:4/3%以上、2.0%以下、sol.Al:0.005%超、0.10%以下、N:0.0005%以上、0.008%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、組織が、主として、ベイナイトおよびマルテンサイト、またはベイナイトもしくはマルテンサイトで構成され、かつ、(200)面からのX線回折強度の半価幅が0.20度以上である疲労き裂進展抵抗性に優れたFCA鋼材からなる頭付きスタッド3Fを用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、主に道路橋などの橋梁に用いられるスタッドジベルなどのずれ止めおよび合成桁に関するものである。
道路橋などに用いられる合成桁では、図7に示すようにコンクリート床版1と鋼桁2とをずれ止めにより結合し、両者を一体化させている。また、非合成桁として設計される橋梁においても、合成桁の場合よりは本数が少なくなるが、床版と桁とが分離してしまわないようにスラブアンカーとしてずれ止めが用いられている。
合成桁のずれ止めとしては、頭付きスタッド3(図8参照)、ブロックジベル5(図9参照)、孔あき鋼板ジベル6(図10参照)などが用いられるが、ずれ止めを鋼桁2へ取り付ける施工の容易さから頭付きスタッド3が多用されている。
また、橋梁架設の現場工期短縮の観点から開発されたものとして、プレキャスト床版(図3、図6参照)を用いた鋼橋が知られており、図11に示すようなねじ式スタッド10(ねじ付スタッド11、高ナット12、ボルト13を組み合わせて頭付きスタッドの代替としたもの)が用いられる。
このねじ式スタッド10は、プレキャスト床版を鋼桁2上に敷設する際にずれ止めが邪魔にならないように工夫されたものであり、プレキャスト床版を敷設した後、ねじ付スタッド11に高ナット12とボルト13を取り付けてずれ止めを形成するものである。
これらの合成桁のスタッドを設計する場合、降伏および破壊に対する強度を確保するとともに、スタッドの疲労に対する安全性を確保する必要がある。しかしながら、従来の設計思想においては、以下に述べる理由からスタッドの許容せん断力を基に設計が行われており、スタッドの疲労に対する照査は行われていない。そのため、構造や材料の選定面からスタッドの疲労を考慮した合理的な設計を行おうとしたものがなかった。
すなわち、「道路橋示方書」(非特許文献1)などの設計基準では、スタッドを取り囲むコンクリートの強度を高めることで、許容せん断力を増大させることができることになるが、非特許文献1に示されるスタッドの許容せん断力は、一般に降伏に対して3以上、破壊に対して6以上の安全率を持つとされているのに対し、疲労に対する安全率は明らかにされていない。
道路橋設計の実務においては、非特許文献1に示されるスタッドの許容せん断力が比較的大きな安全率を有することを理由に、スタッドは疲労に対しても十分な安全性を有するものとみなして照査は省略されている。
一方、スタッドの疲労強度は「鋼道路橋の疲労設計指針」(非特許文献2)に規定されているが、この基準によれば、繰返しせん断力を受けるスタッドの疲労強度はコンクリート強度やスタッド鋼材の降伏点や引張強さに依存せず、スタッド軸部に作用するせん断応力の変動範囲のみで整理されている。
非特許文献2にはスタッド自体の疲労強度は示されているものの、鋼橋を構成する鋼板や鋼板どうしの溶接部を主な疲労の着目点としていることから、スタッドの疲労に対する安全性を検討する場合の荷重条件(荷重載荷方法、応力範囲の繰り返し回数の算出方法など)が明確でなく、道路橋設計の実務においては、上述の通り、スタッド自体の疲労に対する照査は省略されている。
特許文献1には、耐疲労き裂進展特性に優れた鋼材とその製造法が開示されており、この技術の鋼材は通常の炭素鋼に比べて、疲労き裂の発生が抑制されること、疲労き裂が発生した場合でもその後の疲労き裂進展抵抗性が高く疲労き裂の成長を抑制されることが示されている。また、同技術の鋼材(以下、本明細書においては「FCA鋼」と言う場合がある。)は溶接性、加工性、耐食性など鋼材に要求される諸特性は、従来鋼と同等またはそれ以上となる。
特許第3770208号公報
社団法人日本道路協会、「道路橋示方書・同解説II 鋼橋編」、平成14年3月、p.335−336 社団法人日本道路協会、「鋼道路橋の疲労設計指針」、平成14年3月、p.9−12、p.21 平城弘一、松井繁之、「頭付きスタッドの疲労強度に及ぼすスタッド余盛り形状の影響」、構造工学論文集Vol.34A、1988年3月、p.501−512 社団法人プレストレスト・コンクリート建設業協会、「道路橋用プレキャスト床版 設計・製造便覧 JIS A 5373-2004」、平成16年7月、p.78(図4.1)
背景技術の項に挙げたずれ止めのうち、頭付きスタッドならびにねじ式スタッドを用いた合成桁は以下の問題を有する。
(1) 合成桁として設計された橋梁では、鋼桁上フランジ上に設置するスタッドが多数になる。このため、鋼桁の製作に手間がかかる、場所打ちコンクリート床版の場合には配筋が困難になる、プレキャストコンクリート床版の場合にはスタッドを配置するための箱抜き孔が大きくなって床版の設計が困難になる、などの問題がある。
このような背景から合成桁ではスタッドの本数を極力減らすことが望まれている。
(2) プレキャスト床版を有する鋼桁では、前述の通りねじ式スタッドが用いられるが、ねじ式スタッドはねじ部と溶接余盛部とが近接しており、頭付きスタッドに比べて疲労強度が低下する懸念がある。その一方で、プレキャスト床版を有する合成桁は施工例が少なく、ねじ式スタッドの疲労強度が問題視されることはなかったが、プレキャスト床版を合成桁へ適用するためには、ねじ式スタッドの疲労強度の問題を解決する必要がある。
以上に述べた背景から、床版と鋼桁とを結合するスタッドの本数を極力減らすには、コンクリート強度を高めてスタッドの降伏および破壊に対する強度を向上させるだけでは不十分であり、スタッドの疲労強度を向上させる必要があると考えられるが、従来のスタッドや従来の設計法を用いる限りスタッド本数は削減できないという問題が生じることとなる。
本発明では、これらの問題を解決するためには、スタッド自体の疲労強度を高める必要があるという点に着目した。
すなわち、本発明は従来の材料や設計法の範囲では困難であった合成桁のスタッド本数削減が可能となり、鋼桁の製作性向上、橋梁構造の合理化、コスト縮減などのメリットを得ることができるずれ止めおよび合成桁を提供することを目的としている。
本願の請求項1に係るずれ止めは、その素材として、鋼の化学組成が、質量%で、C:0.01%以上、0.15%以下、Si:0.03%以上、0.6%以下、Mn:4/3%以上、2.0%以下、sol.Al:0.005%超、0.10%以下、N:0.0005%以上、0.008%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、組織が、主として、ベイナイトおよびマルテンサイト、またはベイナイトもしくはマルテンサイトで構成され、かつ、(200)面からのX線回折強度の半価幅が0.20度以上である疲労き裂進展抵抗性に優れた鋼材を用いたことを特徴とするものである。
請求項2は、請求項1に係るずれ止めにおいて、すれ止めがねじ付きスタッドと高ナットとボルトから構成され、前記ねじ付きスタッドに、鋼の化学組成が、質量%で、C:0.01%以上、0.15%以下、Si:0.03%以上、0.6%以下、Mn:4/3%以上、2.0%以下、sol.Al:0.005%超、0.10%以下、N:0.0005%以上、0.008%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、組織が、主として、ベイナイトおよびマルテンサイト、またはベイナイトもしくはマルテンサイトで構成され、かつ、(200)面からのX線回折強度の半価幅が0.20度以上である疲労き裂進展抵抗性に優れた鋼材を用いたことを特徴とするものである。
本願の請求項3に係る合成桁は、鋼桁の上フランジ上にコンクリート床版を一体化してなる合成桁であって、前記鋼桁の上フランジに請求項1または2記載のずれ止めを溶植してあることを特徴とするものである。
請求項4は、請求項3に係る合成桁において、前記上フランジにも、鋼の化学組成が、質量%で、C:0.01%以上、0.15%以下、Si:0.03%以上、0.6%以下、Mn:4/3%以上、2.0%以下、sol.Al:0.005%超、0.10%以下、N:0.0005%以上、0.008%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、組織が、主として、ベイナイトおよびマルテンサイト、またはベイナイトもしくはマルテンサイトで構成され、かつ、(200)面からのX線回折強度の半価幅が0.20度以上である疲労き裂進展抵抗性に優れた鋼材を用いたことを特徴とするものである。
上記鋼材(FCA鋼)の組織や化学組成に関しては、特許文献1に記載されているように、次のとおりである。
組織:本発明で用いるFCA鋼は、容易に高強度を得るために、その組織は、主として、ベイナイトおよびマルテンサイト、またはベイナイトもしくはマルテンサイトで主に構成される。上記ベイナイトは上部ベイナイト、下部ベイナイト、アシキュラーフェライト、グラニュラーベイナイトなどの組織を含むものであり、上記マルテンサイトはほとんどの場合、ラスマルテンサイトである。
「主として」との意味は、鋼の組織においてこれらの組織の構成比率が合計で面積率にて95%以上であることを意味する。残りの組織は特に限定するものではなく、粒界フェライト組織、粒状フェライト組織、パーライト組織など、通常観察される組織で構わない。
X線回折の半価幅:半価幅は、X繰回折強度の分布において、回折強度がピーク強度の1/2 となる部分の分布幅を回折角度で示した値である。高温で生成し、転位密度の小さな組織ほど半価幅は小さいものとなる。半価幅の大きな組織ほど転位密度が大きく、疲労 き裂進展抵抗性が優れる。
X線回折を行う結晶面は、最も一般的に用いられる理由から、(200)面を対象とした。本発明で規定する半価幅は、良好な疲労き裂進展抵抗性を得るために、(200)面での回折強度の半価幅が0.20度以上のものとする。なお、結晶面は(110) でも良いが、この場合は0.14度以上のものとなる。
鋼の化学組成は、以下のものとするのが望ましい。
C:鋼の強度を高めるのに有効な元素であり、鋼の強度を得るために、0.01%以上含有させる。しかしながら0.15%を超えて含有させると靱性が劣化するので、これを避けるためにC含有量は0.15%以下とする。より望ましくは0.10%以下である。
Si:鋼の脱酸に有効な元素であり、その効果を得るために0.03%以上含有させる。しかしながら0.6 %を超えて含有させると、M−A組織の形成が促進される。M−A組織は、ベイナイト組織中に形成される島状マルテンサイトの一種で、残留オーステナイトを含むM−A変態生成物である。M−A組織は非常に硬度が高く、容易に靱性を劣化させることが知られている。従って靱性劣化を避けるためにSi含有量は0.6 %以下とする。より望ましくは0.3 %以上、0.5 %以下である。
Mn:焼入性向上に有効な元素であり、強度上昇と疲労き裂進展抵抗性を向上させるために、0.5 %以上含有させる。他方、2.0 %を超えると靱性が劣化するので、Mn含有量は2.0 %以下とする。
ただし、後述するようにBを含有する場合にはMn:0.3 %以上、2.0 %以下としてもよい。
sol.Al:AlはSiとともに脱酸に必要な元素であり、その効果を得るために0.005 %超のsol.Alを含有させる。他方、sol.Al含有量が0.10%を超えるとM−A比率 (M−A組織の存在比率) が増加し靱性が劣化する。これを避けるためにsol.Al含有量は0.10%以下とする。
N:AlやTiと結合して析出物となり、オーステナイト粒の細粒化に寄与し靱性を改善する作用がある。この効果を得るために、Nは0.0005%以上含有させる。他方N含有量が0.008 %を超えるとM−A比率が増加し靱性が劣化する。これを避けるためにため、N含有量は0.008 %以下とする。
B:必須元素ではないが、Bは焼入性を著しく高める作用があり、強度上昇と疲労き裂進展抵抗性を向上させるのに有効である。従ってさらにこれらの効果を得るために含有させても構わない。上記効果を得るには、0.0003%以上含有させるのが有効である。しかしながらBを0.0030%を超えて含有させると靱性が劣化するため、その上限は0.0030%とするのが望ましい。
Cu:必須元素ではないが、鋼の強度を高める作用があるので、その目的で含有させても構わない。その効果を得るには0.3 %以上含有させるのが望ましい。しかしながらその含有量が0.7 %以上になると鋼の靱性が劣化するので、含有させる場合でもその上限は0.7 %未満とする。望ましくは0.5 %未満である。
Ni:必須元素ではないが、鋼の強度を高める作用があり、また、疲労き裂進展抑制にも有効である。従ってこれらの効果を得るために含有させても構わない。その効果を得るには0.2 %以上含有させるのが望ましい。しかしながらその含有量が3.0 %を超えるとコスト上昇に見合う高強度化と疲労き裂進展抑制効果が見られないので、含有させる場合でもその上限は3.0 %とする。
Cr:必須元素ではないが、鋼の強度を高める作用があり、また、疲労き裂進展抑制にも有効である。従ってこれらの効果を得るために含有させても構わない。その場合には0.3 %以上含有させるのが望ましい。しかしながら過剰に含有させると靱性が劣化するので、含有させる場合でも1.0 %未満とするのが望ましい。
Mo:必須元素ではないが、鋼の強度を高める作用があり、また、疲労き裂進展抑制にも有効である。従ってこれらの効果を得るためにMoを含有させても構わない。その場合には0.15%以上含有させるのが望ましい。しかしながら過剰に含有させると靱性が劣化するので、含有させる場合でもその上限は0.8 %とするのが望ましい。
Nb:必須元素ではないが、細粒化作用を通じて靱性を向上させる作用がある。また、焼入性を増すので強度向上と疲労き裂進展抑制に有効である。従ってこれらの効果を得るために含有させても構わない。その場合、Nbは0.005 %以上含有させるのが望ましい。他方その含有量が0.08%を超えると靱性が劣化するので、その上限は0.08%とする。より好ましくは0.06%以下である。
Ti:必須元素ではないが、強度向上と疲労き裂進展抑制に有効であるので、これらの効果を得るために含有させても構わない。上記効果を得るには0.005 %以上含有させるのが望ましい。他方、0.03%を超えると靱性が劣化するので、その上限は0.03%とするのが望ましい。
V:必須元素ではないが、強度向上に有効であるので、これらの効果を得るために含有させても構わない。含有させる場合には、上記効果を得るために0.005 %以上含有させるのが望ましい。他方、0.08%を超えると靱性が劣化するので、その上限は0.08%とするのが望ましい。
Ft値:Mn、Cu、Cr、NiおよびMoは、いずれもベイナイトまたはマルテンサイト変態の変態温度に影響して変態温度を低下させて、転位密度を上昇させる作用を有しており、これらの元素を含有させることで鋼の疲労き裂進展抵抗性を改善する効果が得られる。この効果は元素の種類により差異があり、Mn、Ni、Cr、Moが大きい。この関係はこれらの元素の含有量(質量%)から、下記式で計算されるFt値で表すことができ、Ft値が大きいほど疲労き裂進展抵抗性が向上する。
Ft=3Mn(%)+Cu (%)+1.5Cr(%)+1.8Ni(%)+1.5Mo(%)
ただし、上記式において対象とする鋼の化学組成に含まれない元素については「ゼロ」としてFt値を計算する。
しかしながらFt値が過度に大きい場合は鋼の強度が過剰となり靱性が劣化するうえ、溶接割れも生じやすくなる。従って、強度と靱性のバランスを良好に保ちつつ疲労き裂進展速度を小さくするには、Ft値が特定範囲に収まるように、これらの合金元素の含有量を調整するのが有効である。
Ft値は、鋼の焼入性に大きく影響するBを含有するか否かにより変化させる必要がある。すなわち、鋼がBを含有しないものである場合のFt値は、4.0 %以上、7.5 %以下とする。望ましくは4.5 %以上、6.0 %以下である。鋼がBを含有するものである場合のFt値は、3.0 %以上、7.0 %以下である。望ましくは3.5 %以上、5.5 %以下である。
残部は、Feおよび不可避的不純物である。
製造方法:本発明に係る疲労き裂進展抵抗性に優れた鋼材を製造する手段は特に限定するものではなく、公知の熱間圧延設備、または公知の熱間圧延設備と公知の熱処理設備を使用して、容易に製造することができる。その製造条件は以下に述べる方法が好適である。
本発明にかかる化学組成を有する鋳造スラブを1000℃〜1250℃に加熱した後に熱間圧延を施す。ついでこれを冷却するに際し、その冷却工程において、650 ℃〜500 ℃の間の平均冷却速度を5℃/s以上、好ましくは5〜25℃/sとする加速冷却を施し、500 ℃以下、好ましくは500 〜350 ℃の温度で前記加速冷却を停止し、その後、復熱温度幅が70℃以下となるようにして冷却を終了する。ここで復熱温度幅とは冷却を停止した時の到達温度と、冷却停止後鋼板内部の熱で表面の温度が上昇し、安定した時の温度の差を意味する。
鋳造スラブの加熱温度が1000℃に満たない場合にはフェライト率が高くなり進展速度が大きくなる。1250℃を超える場合には組織が粗大になり、靱性が劣化する。冷却過程の内の650 ℃〜500 ℃の間の平均冷却速度が5℃/sに満たない場合にはフェライト率が高くなり進展速度が大きくなる。好ましくは25℃/s以下である。加速冷却停止後冷却終了までの間の復熱温度幅が70℃を超える場合には転位密度が減少して進展速度が大きくなる。加速冷却停止温度が500 ℃超になる場合にはフェライト率が高くなり、進展速度が大きくなる。好ましくは350 ℃以上である。
本発明では、特許文献1に示されたFCA鋼を合成桁のずれ止めなどに応用することにより、その耐疲労特性が改善され、従来は困難であったずれ止めとしての主桁スタッド本数の削減などが可能となる。
特許文献1記載の発明は鋼材の疲労き裂進展特性を改善する発明であるため、当然、素材としての鋼材が有する疲労強度特性は向上するが、この技術を合成桁のずれ止めなどに応用することで、上述したような設計上のボトルネックを解消することになる。
すなわち、特許文献1の技術の応用によって得られる疲労き裂の進展特性の改善効果のみならず、発明が解決しようとする課題の項で述べた従来の頭付きスタッド並びにねじ式スタッドを用いた合成桁の材料や設計法の範囲では困難であった問題を解決することにより、鋼桁の製作性向上、橋梁構造の合理化、コスト縮減などの大きなメリットを得ることができる。
本発明をずれ止めとしての合成桁の頭付きスタッドに適用した場合の一実施形態を示したもので、(a)は斜視断面図、(b)は鉛直断面図である。 本発明を合成桁のねじ付きスタッドおよび鋼桁上フランジに適用した場合の一実施形態を示す鉛直断面図である。 本発明の適用対象としてのプレキャスト床版に用いられるRCループ継手の例を示す断面図である。 正曲げを受ける合成桁のスタッドに生じる疲労き裂のパターンを示す図である(非特許文献3より引用)。 負曲げを受ける合成桁のスタッドに生じる疲労き裂のパターンを示す図である(非特許文献3より引用)。 本発明の適用対象としてのプレキャスト床版を鋼桁上に設置する施工手順を示す図である(非特許文献4より引用)。 一般的な合成桁の構造を示したもので、(a)は斜視断面図、(b)は鉛直断面図である。 頭付きスタッドの例を示したもので、(a)は立面図、(b)は平面図である。 ブロックジベルの例を示したもので、(a)は立面図、(b)は平面図である。 孔あき鋼板ジベルの例を示したもので、(a)は立面図、(b)は平面図である。 ねじ式スタッドの例を示したもので、(a)は立面図、(b)は1本のねじ式スタッドの部品図である。
図1は本発明を合成桁に適用した場合の一実施形態を示したものであり、コンクリート床版1と鋼桁2からなる合成桁のずれ止めとして、特許文献1(特開2003−342673号公報)記載のFCA鋼から製作した頭付きスタッド3Fを用いている。また、本実施形態では、鋼桁2の上フランジ4FにもFCA鋼を適用している。
すなわち、頭付きスタッド3Fおよび鋼桁2の上フランジ4Fを、鋼の化学組成が、質量%で、C:0.01%以上、0.15%以下、Si:0.03%以上、0.6%以下、Mn:4/3%以上、2.0%以下、sol.Al:0.005%超、0.10%以下、N:0.0005%以上、0.008%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、組織が、主として、ベイナイトおよびマルテンサイト、またはベイナイトもしくはマルテンサイトで構成され、かつ、(200)面からのX線回折強度の半価幅が0.20度以上である疲労き裂進展抵抗性に優れた鋼材(FCA鋼)で製作している。
頭付きスタッド3FにのみFCA鋼を適用しても、発明の効果の項で述べたメリットが得られるが、スタッド溶接の溶着部では、スタッドと上フランジの双方の鋼材が融け合うことから、頭付きスタッド3Fと上フランジ4Fの両方をFCA鋼とするのが望ましい。
合成桁のスタッドの疲労破壊に関する研究(非特許文献3「頭付きスタッドの疲労強度に及ぼすスタッド余盛り形状の影響」参照)では、合成桁が正曲げを受ける場合には、図4のようにスタッドの根元から発生するき裂(クラック1、クラック2)やスタッドの軸部に発生するき裂(クラック3)が生じることが明らかにされている。
また、非特許文献3には、合成桁が負曲げを受け上フランジに引張応力が作用する場合についても疲労き裂の進展状況が示されており、この場合には、図5のように鋼板内までき裂が進展する場合(a)と、溶着金属内をき裂が進展する場合(b)、(c)があることが明らかにされている。
よって、これらの疲労き裂に対処するためには、頭付きスタッド3Fと上フランジ4Fの双方にFCA鋼を適用するのが好ましいと言える。
図2は本発明を合成桁のねじ付きスタッドおよび鋼桁上フランジに適用した場合の一実施形態を示したものであり、合成桁の床版がプレキャストコンクリート床版である。
プレキャストコンクリート床版21では、プレキャストコンクリート床版21どうしを連結するために、RCループ継手が用いられることが多い。
RCループ継手は、図3に示すように、プレキャストコンクリート床版21などのプレキャストパネルを鋼桁2上に設置した後、継手部に間詰めコンクリート22を打設してパネルを連続化させる継手形式である。
RCループ継手では間詰め部の後打ちコンクリートを打設する際の床版下面の型枠を省略する目的で、プレキャストパネルの両端の下側をアゴ状に突出させておく(以下、アゴ部24と呼ぶ。)。
アゴ部24を有するプレキャストコンクリート床版21を鋼桁2上に順次敷設して行く際、先行して設置したプレキャストパネルのループ鉄筋23と、後から設置するプレキャストパネルのアゴ部24が干渉するため、例えば図6(非特許文献4「道路橋用プレキャスト床版 設計・製造便覧 JIS A 5373-2004」より引用)に示すように、後から設置するプレキャストパネルは、先行設置したプレキャストパネルからやや離れた鋼桁上に一旦置いた後、横方向へスライドさせて所定の位置に設置する。
この際、鋼桁上面にスタッドが突出していると、プレキャストパネルを横方向へスライドさせる施工方法がとれないため、図6に示すように背の低いねじ付きスタッドと高ナットとボルトを組み合わせたねじ式スタッドが採用される。高ナットおよびボルトは、プレキャストパネルを所定の位置に据付けた後、ねじ付きスタッドに組み付けられる。
本発明では、このねじ式スタッドの構成要素の内、図2のねじ付きスタッド11FにFCA鋼を適用する。鋼桁の上フランジ4Fについては通常の鋼材を用いても良いが、FCA鋼を適用するのが望ましいのは図1の実施形態の場合と同様である。
本発明は、例えば道路橋などの橋梁に用いられるスタッドジベルなどのずれ止めおよび合成桁に利用することができる。
1…コンクリート床版、
2…鋼桁、
3…頭付きスタッド、
3F…FCA鋼からなる頭付きスタッド、
4…上フランジ、
4F…FCA鋼からなる上フランジ、
5…ブロックジベル、
6…孔あき鋼板ジベル、
10…ねじ式スタッド、
11…ねじ付きスタッド、
11F…FCA鋼からなるねじ付きスタッド、
12…高ナット、
13…ボルト、
21…プレキャスト床版パネル、
22…間詰めコンクリート、
23…ループ鉄筋、
24…アゴ部

Claims (4)

  1. 鋼の化学組成が、質量%で、C:0.01%以上、0.15%以下、Si:0.03%以上、0.6%以下、Mn:4/3%以上、2.0%以下、sol.Al:0.005%超、0.10%以下、N:0.0005%以上、0.008%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、組織が、主として、ベイナイトおよびマルテンサイト、またはベイナイトもしくはマルテンサイトで構成され、かつ、(200)面からのX線回折強度の半価幅が0.20度以上である疲労き裂進展抵抗性に優れた鋼材を素材として用いたことを特徴とするずれ止め。
  2. ねじ付きスタッドと高ナットとボルトから構成されるずれ止めであって、前記ねじ付きスタッドに、鋼の化学組成が、質量%で、C:0.01%以上、0.15%以下、Si:0.03%以上、0.6%以下、Mn:4/3%以上、2.0%以下、sol.Al:0.005%超、0.10%以下、N:0.0005%以上、0.008%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、組織が、主として、ベイナイトおよびマルテンサイト、またはベイナイトもしくはマルテンサイトで構成され、かつ、(200)面からのX線回折強度の半価幅が0.20度以上である疲労き裂進展抵抗性に優れた鋼材を用いたことを特徴とする請求項1記載のずれ止め。
  3. 鋼桁の上フランジ上にコンクリート床版を一体化してなる合成桁であって、前記鋼桁の上フランジに請求項1または2記載のずれ止めを溶植してあることを特徴とする合成桁。
  4. 前記上フランジに、鋼の化学組成が、質量%で、C:0.01%以上、0.15%以下、Si:0.03%以上、0.6%以下、Mn:4/3%以上、2.0%以下、sol.Al:0.005%超、0.10%以下、N:0.0005%以上、0.008%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、組織が、主として、ベイナイトおよびマルテンサイト、またはベイナイトもしくはマルテンサイトで構成され、かつ、(200)面からのX線回折強度の半価幅が0.20度以上である疲労き裂進展抵抗性に優れた鋼材を用いたことを特徴とする請求項3記載の合成桁。
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