JP2011006559A - 色素化合物、これを用いた光電変換素子及び色素増感型電池 - Google Patents

色素化合物、これを用いた光電変換素子及び色素増感型電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高い光電度換反率を達成し、しかも入手に係る大きな制約のない廉価な色素化合物の提供を目的とし、またこれを用いた光電変換素子及び太陽電池の提供を目的とする。
【解決手段】下記一般式(I)で表される色素化合物。
【化1】
Figure 2011006559

[一般式(I)中、D1は窒素原子で結合する基又は塩基性核を有する基を表す。L1は単結合又は少なくとも一つのアリーレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基からなる二価の基を表す。D1とL1は互いに結合して環を形成していてもよい。A1は酸性基を表す。R1は水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる原子からなる、脂肪族基、芳香族性基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。Rは水素原子、脂肪族基、芳香族性基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。]
【選択図】なし

Description

本発明は色素化合物、色素によって増感された光電変換素子、及びそれを用いた色素増感型太陽電池に関する。
光電変換素子は各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。この光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどの様々な方式が実用化されている。非枯渇性の太陽エネルギーを利用した太陽電池は燃料が不要であり、無尽蔵なクリーンエネルギーとして、その本格的な実用化が大いに期待されている。この点、シリコン系太陽電池は古くから研究開発が進められており、各国の政策的な配慮もあって普及が進んではいるが、シリコンは無機材料であり、スループット及び分子修飾による機能向上には自ずと限界があった。
上記のような課題を解決する次世代の技術として色素増感型太陽電池の研究が精力的に行われている。とくに、スイスのローザンヌ工科大学のGreatzel等がポーラス酸化チタン薄膜の表面に色素を固定した色素増感型太陽電池を開発し、アモルファスシリコン並の変換効率を実現したことにより、一躍世界の研究者から注目を集めるようになった。
特許文献1〜3には、この技術を応用した、色素によって増感された半導体微粒子を用いた色素増感光電変換素子が開示されている。これにより比較的簡単な工程で素子を製造することができるという利点を有する。しかしながら、増感色素に用いられるルテニウム錯体色素は極めて高価である。またルテニウムは供給性に懸念があり、次世代のクリーンエネルギーを支える技術として本格的に対応するにはまだ十分といえず、むしろ実用化に向けた研究開発はその緒に就いたばかりである。このような理由から、廉価でかつ資源的制約の小さい有機材料によって増感され、かつ十分な変換効率を有する光電変換素子の開発が望まれており、有機色素を用いたものが報告され始めている(特許文献4参照)。
米国特許第5463057号明細書 米国特許第5525440号明細書 特開平7−249790号公報 特開2004−220974号公報
有機色素の設計の観点の一つとして、吸着基の付近にカルボニル基を導入することで、カルボニル基の酸素原子が酸化チタンと相互作用することによる色素の吸着力の向上及び変換効率の向上が挙げられる。例えば前記特許文献4の有機色素でトリフルオロメチル基がカルボニル基に結合した色素があるが、そのものは本発明者らの追試では、実用の観点からは変換効率が不十分であった(後掲比較例I−2等、増感色素B参照)。更なる変換効率の向上が望まれる。
上記の点に鑑み本発明は、上記従来のものを超える光電度換反率を達成し、しかも入手に係る大きな制約のない廉価な色素化合物の提供を目的とし、またこれを用いた光電変換素子及び太陽電池の提供を目的とする。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定の色素化合物を増感色素として用いることで、上記従来のものを凌ぐ変換効率の高い光電気化学電池を提供することができることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされるに至ったものである。
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
<1>下記一般式(I)で表される色素化合物。
Figure 2011006559
[一般式(I)中、D1は窒素原子で結合する基又は塩基性核を有する基を表す。L1は単結合又は少なくとも一つのアリーレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基からなる二価の基を表す。D1とL1は互いに結合して環を形成していてもよい。A1は酸性基を表す。R1は水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる原子からなる、脂肪族基、芳香族性基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。Rは水素原子、脂肪族基、芳香族性基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。]
<2><1>において一般式(I)で表される色素化合物のR1が、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる原子からなる、脂肪族基又は芳香族性基であることを特徴とする<1>に記載の色素化合物。
<3>前記色素化合物が下記一般式(II)で表されることを特徴とする<1>又は<2>項に記載の色素化合物。
Figure 2011006559
[一般式(II)中のAr1はアリール基を表す。L及びAは、それぞれ一般式(II)のL1及びA1と同義である。RおよびRはそれぞれ独自に、水素原子、アルキル基、又は下記一般式(III)で表される基を表す。R〜Rはそれぞれ独自に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ヘテロ環基、又はハロゲン原子を表す。RとR、RとR、RとR、RとR、及びRとRはそれぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。Rは一般式(I)のRと同義である。]
[化3]
一般式(III)
―Ar―X―R11
[一般式(III)中、Ar2は芳香族性連結基を表す。R11は水素原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表す。Xは酸素原子、硫黄原子、又はNR12を表す。R12はR11と同義である。]
<4><1>、<2>、又は<3>項において、一般式(I)又は(2)で表される色素化合物が、一般式(V)で表されることを特徴とする<1>、<2>又は<3>項に記載の色素化合物。
Figure 2011006559
[一般式(IV)中、R16及びR17はそれぞれ独立して一般式(II)のR2と同義である。R13〜R15はそれぞれ独立して一般式(II)のR5と同義である。B1は含窒素複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、更に縮環していてもよい。L3及びA3は、それぞれ一般式(I)のL1及びA1と同義である。]
<5>前記色素化合物が下記一般式(V)で表されることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の色素化合物。
Figure 2011006559
[一般式(V)中、R19は一般式(II)のR3と同義である。R20及びR21はそれぞれ独立して一般式(II)のR5と同義である。R18は一般式(I)のR1と同義である。B2は5〜7員環のいずれかを形成するのに必要な非金属原子群を表し、更に縮環していてもよい。L4及びA4は、それぞれ一般式(I)のL1及びA1と同義である。R23は一般式(I)のR2と同義である。]
<6><1>〜<5>のいずれかに記載の色素化合物を増感色素として有する光電変換素子。
<7><6>記載の光電変換素子を備えて構成された色素増感型太陽電池。
本発明の色素化合物は、光電変換素子ないし色素増感型太陽電池の増感色素として用いたときの光電変換効率が高く、良好な特性を有し、しかもルテニウムのようなレアメタルに頼ることなく低コストでありクリーンエネルギーの本格的な実現に資する。
本発明の色素増感型太陽電池の一実施態様について模式的に示した断面図である。
本発明の色素化合物は前記一般式(I)で表される。このうち好ましくは一般式(II)、(V)、又は(VI)で表されるものであり、さらに好ましくは一般式(V)又は(VI)で表されるものであり、特に好ましくは一般式(V)で表されるものである。当該色素化合物は、光電変換素子ないし色素増感型太陽電池において増感色素として作用されるものとして特に適する。
本発明においては、前記一般式(I)中、酸性基を表すAとともにメチン基に置換する基(R−CO―)にフッ素原子を含まないことを特徴とし、R1は水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる原子からなる脂肪族基、芳香族性基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。R1として好ましくは、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる原子からなる脂肪族基又は芳香族性基、特に好ましくはその芳香族性基である。好ましい芳香族性基としては、ベンゼン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリミジン環、ピラジン環もしくはこれらが縮環した環からなる一価の基であり、これらは置換されていてもよい。さらに好ましくはベンゼン環、ピロール環、ピリジン環、特に好ましくはベンゼン環である。これら芳香族性基に結合する置換基として好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又はスルホ基であり、さらに好ましくはハロゲン原子又はニトロ基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。好ましい水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる原子からなる脂肪族基として、炭素数1(2,3)〜30の、更に好ましくは炭素数1(2,3)〜25の、特に好ましくは炭素数1(2,3)〜20のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基であり、置換基を有していてもよい(カッコ内の2はアルケニル基のときの下限を表し、3のときはシクロアルキル基の下限を表す。)。炭素原子で結合する複素環基として、3〜6員の置換もしくは無置換の複素環基、更に好ましくは5もしくは6員の無置換の複素環基、特に好ましくは6員環の複素環基である。これらは置換基を有していてもよい。太陽電池用増感色素の設計において、アクセプター構造部(例えばアシル基)は通常色素性能に大きく影響を及ぼす。本発明においては、アクセプター構造部(例えばアシル基)を有し、そのアクセプター構造部に結合する基が飽和フッ素置換アルキル以外のものであることで変換効率の大幅な向上が見られた。
前記一般式(I)中、D1は窒素原子で結合する基又は塩基性核を有する基を表す。窒素原子で結合する基として、例えば置換あるいは無置換のアミノ基、窒素原子で結合する含窒素ヘテロ環基(例えば、ピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、ピロール、ピロリジン。好ましくはピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、さらに好ましくはピペリジン、ピロリジン、特に好ましくはピペリジン)があげられ、好ましくは置換アミノ基、窒素原子で結合する含窒素ヘテロ環基、さらに好ましくは置換アミノ基である。置換アミノ基の置換基で好ましくはアルキル基(好ましくは炭素数1〜40、さらに好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜25である。)、芳香族性基(好ましくは下記置換基Wに記載のもの、さらに好ましくはベンゼン環、チオフェン環、特に好ましくはベンゼン環である。これらは置換基を有していてもよく、好ましくはアルキル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、さらに好ましくは、アルコキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、特に好ましくはアルコキシ基である。)、さらに好ましくはアルキル基が挙げられる。
塩基性核として、例えばT.H.James著「The Theory of the photografic process. forth edition.」Macmillan publishing社,1977年刊の199ページに記載のものが挙げられる。好ましくはチアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピロール、インドール、インドリン、インドレニンが挙げられる。さらに好ましくは、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾール、インドール、ピロール、更に好ましくはベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、特に好ましくはベンゾチアゾールである。
前記一般式(I)中、L1は単結合又は少なくとも一つのアリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基からなる二価の基を表す。またこれらの組み合わせでもよく、置換基を有していてもよい。好ましくはアルキル基、アリール基、さらに好ましくはアルキル基である。アリーレン基は、例えばベンゼン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリミジン環、ピラジン環もしくはこれらが縮環した二価の基である。アルケニレン基は、例えばエテニレン基が挙げられる。アルキニレン基は、エチニレン基のことである。好ましいL1の例として下記式であげたものが挙げられる。
Figure 2011006559
中でも、好ましくはL―a、L―b、L―c、又はL―eであり、さらに好ましくはL―b又はL―eであり、特に好ましくはL―bである。
前記一般式(I)中、D1とL1は互いに結合して環を形成していてもよく、さらに縮環していてもよい。中でもこの部分に5〜7員環のいずれかを有する基が形成されていることが好ましく、5又は7員環を有する基が形成されていることがより好ましく、7員環を有する基が形成されていることが特に好ましい。環の例として、例えばピロリジン、ピペリジン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、ピロール、ピリジン、アゼピンが挙げられる。好ましくはピロリジン、ピペリジン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、ピロール、アゼピン、さらに好ましくはピロリジン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、特に好ましくはテトラヒドロアゼピンである。これらは置換基を有していてもよい。
本発明において前記一般式(I)中、A1で表される酸性基とは、基を構成する水素原子の中で最も酸性の強い水素原子のpKaが13以下の基である。酸性基の例として例えばカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、アルキルスルフォニルカルバモイル基、リン酸基が挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、さらに好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、特に好ましくはカルボン酸基である。
〔任意の置換基〕
上記置換基(以下、置換基Wとする。)としては例えば下記に示すものが挙げられる。
・ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、
・アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。上記で説明した置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、
・アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、
・アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、
・芳香族性基(例えば、ベンゼン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリミジン環、ピラジン環もしくはこれらが縮環した環)
・ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、
・シアノ基、・ヒドロキシル基、・ニトロ基、・カルボキシル基、
・アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、
・アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、
・シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、
・ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、
・アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
・カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、
・アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、
・アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
・アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、
・アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、
・アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、
・アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、
・アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、
・スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、
・アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、
・メルカプト基、
・アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、
・アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、
・ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
・スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、
・スルホ基、
・アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、
・アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
・アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、
・アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、
・アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、
・カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
・アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、
・イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、
・ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、
・ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、
・ホスフィニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、
・ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、
・シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)。
また、置換基は更に置換されていてもよい。その際、置換基の例としては、上述の置換基Wを挙げることができる。
次に、前記一般式(II)について説明する。
前記一般式(II)中、Arはアリール基を表す。Arはベンゼン環であることが好ましい。前記一般式(II)中、L及びAは、それぞれ一般式(II)のL及びAと同義である。
前記一般式(II)中、R及びRは水素原子、アルキル基、または一般式(III)を表し、これらは置換基を有していてもよい。R及びRとして好ましくはアルキル基(好ましくは炭素数1〜40、さらに好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜25である。)、芳香族性基(好ましくは前記置換基Wに記載のもの、さらに好ましくはベンゼン環、チオフェン環、特に好ましくはベンゼン環である。これらは置換基を有していてもよく、好ましくはアルキル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、さらに好ましくは、アルコキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、特に好ましくはアルコキシ基である。)、さらに好ましくはアルキル基が挙げられる。
前記一般式(II)中、R〜Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ヘテロ環基、又はハロゲン原子を表し、置換基を有していてもよい。RとR、RとR、RとR、RとR、及びRとRはそれぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。R〜Rのうち環を形成していないものは、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、特に好ましくは水素原子である。Rは一般式(I)のRと同義である。
次に、前記一般式(III)について説明する。
前記一般式(III)中、Arは芳香族性連結基を表し、置換基を有していてもよい。芳香族性連結基は、例えばベンゼン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環もしくはこれらが縮環した二価の基であり、置換基が結合していてもよい。Arとして好ましくはベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、さらに好ましくはベンゼン環、チオフェン環、特に好ましくはベンゼン環である。Xは酸素原子、硫黄原子、又はNR12を表す。R12は下記R11と同義である。
11は水素原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表し、これらは置換基を有していても良い。R11の例としては好ましくは水素原子、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−ブチル、n-ヘキシル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−デシル、n−ドデシル、シクロヘキシル、n−オクタデシル、好ましくは炭素数1〜40、さらに好ましくは、炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜25である。)、アリール基(例えばフェニル、トリル、ナフチル等)、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、特に好ましくはアルキル基である。
次に、前記一般式(IV)について説明する。
前記一般式(IV)中、R13〜R15は一般式(II)のRと同義である。Bは含窒素複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、5〜7員環のいずれかが好ましく、さらに5員環又は7員環が好ましく、特に好ましくは7員環である。Bは縮環していてもよく置換基を有していてもよい。L及びAは、それぞれ一般式(I)のL及びAと同義である。Arは一般式(II)のArと同義である。R16及びR17は一般式(II)のRと同義である。
次に、前記一般式(V)について説明する。
前記一般式(V)中、R20〜R22は一般式(II)のRと同義である。R18は一般式(I)のRと同義である。R19は一般式(V)のR16と同義である。Bは5〜7員環の含窒素複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、好ましくは5員環及び7員環、さらに好ましくは7員環である。Bは縮環していても良く置換されていても良い。縮環の例として、好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、さらに好ましくはベンゼン環、チオフェン環、特に好ましくは、ベンゼン環である。L及びAは、それぞれ一般式(II)のL及びAと同義である。R23は一般式(I)のRと同義である。
本発明の色素化合物は、溶液における最大吸収波長が、好ましくは350〜1200nmの範囲であり、より好ましくは360〜1000nmの範囲であり、特に好ましくは400〜1000nmの範囲である。
以下に一般式(I)、(II)、(IV)、(V)で表される色素化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2011006559
Figure 2011006559
Figure 2011006559
Me:メチル基
[光電変換素子及び色素増感型太陽電池]
本発明の一実施形態に係る光電変換素子10(図1参照)は、導電性支持体1、導電性支持体1上に設置される上記本発明の色素化合物21により増感した半導体膜(感光層)2、正孔輸送層3、及び対極4からなる。半導体膜を設置した導電性支持体は光電変換素子において作用電極として機能する。本実施形態においては、この光電変換素子10を外部回路6で仕事をさせる電池用途に使用できるようにした太陽電池として示している。
本実施形態において受光電極5は、導電性支持体1、および導電性支持体1上に塗設される色素化合物21の吸着した半導体微粒子22の層(感光層)2よりなる。本実施形態においては受光電極5に電解質23を含むものとして示しているが、これを含まないものとしてみてもよい。感光層2は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。一層の感光層中の色素化合物21は一種類でも多種の混合でもよいが、そのうちの少なくとも1種は、上述した本発明の色素化合物を用いる。感光層2に入射した光は色素を励起する。励起色素はエネルギーの高い電子を有しており、この電子が色素化合物21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体に到達する。このとき色素分子は酸化体となっているが、電極上の電子が外部回路で仕事をしながら色素酸化体に電解質23に戻るのが色素増感型太陽電池であり、色素増感光電変換素子はこの電池の負極として働く。本発明において光電変換素子及び色素増感型太陽電池に用いられる材料及び各部材の作成方法については、この種のものにおける通常のものを採用すればよく、例えば米国特許第4927721号明細書、米国特許第4684537号明細書、米国特許第5084365号明細書、米国特許第5350644号明細書、米国特許第5463057号明細書、米国特許第5525440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。以下、主たる部材について概略を説明する。
導電性支持体は、金属のように支持体そのものに導電性があるものか、または表面に導電膜層を有するガラスもしくはプラスチックの支持体である。支持体としては、ガラス及びプラスティックの他、セラミック(特開2005―135902)、導電性樹脂(特開2001―160425)を用いてもよい。支持体上には、表面に光マネージメント機能を施してもよく、例えば、特開2003―123859記載の高屈折膜及び低屈性率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜、特開2002―260746記載のライトガイド機能が上げられる。
導電膜層の厚さは0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることが更に好ましく、特に好ましくは0.05〜20μmである。
導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上が特に好ましい。透明導電性支持体としては、ガラスもしくはプラスチックに導電性の金属酸化物を塗設したものが好ましい。このときの導電性の金属酸化物の塗布量は、ガラスもしくはプラスチックの支持体1m2当たりの0.1〜100gが好ましい。透明導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。
半導体微粒子は、好ましくは金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)またはペロブスカイトの微粒子である。金属のカルコゲニドとしては、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。ペロブスカイトとしては、好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが特に好ましい。
チタニアの結晶構造としては、アナターゼ型、ブルッカイト型、または、ルチル型があげられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。チタニアナノチューブ・ナノワイヤー・ナノロッドをチタニア微粒子に混合するか、または半導体電極として用いてもよい。
半導体微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で1次粒子として0.001〜1μm、分散物の平均粒径として0.01〜100μmであることが好ましい。半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法として、湿式法の他、乾式法、その他の方法が挙げられる。
透明導電膜と酸化物半導体層の間には、電解液と電極が直接接触することによる逆電流を防止する為、短絡防止層を形成することが好ましい。光電極と対極の接触を防ぐ為に、スペーサーやセパレータを用いることが好ましい。半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。例えば半導体微粒子を支持体上に塗設した状態で、その表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。一般に、半導体微粒子の層の厚みが大きいほど単位面積当たりに担持できる色素の量が増えるため光の吸収効率が高くなるが、発生した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。半導体微粒子層の好ましい厚みは素子の用途によって異なるが、典型的には0.1〜100μmである。光電気化学電池として用いる場合は1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましい。半導体微粒子は、支持体に塗布した後に粒子同士を密着させるために、100〜800℃の温度で10分〜10時間焼成してもよい。支持体としてガラスを用いる場合、製膜温度は400〜60℃が好ましい。
なお、半導体微粒子の支持体1m2当たりの塗布量は0.5〜500g、さらには5〜100gが好ましい。色素の使用量は、全体で、支持体1m2当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。この場合、本発明の色素の使用量は5モル%以上とすることが好ましい。また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。また、会合など色素同士の相互作用を低減する目的で無色の化合物を共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばコール酸、ピバロイル酸)等が挙げられる。なお、本発明において色素化合物とは前記一般式(I)〜(III)で表される化合物及びその塩、ないしそれを配位子として有する金属錯体を含む意味である。前記色素化合物が塩である場合前記一般式(I)〜(III)で表される化合物の対イオンは特に限定されず、例えばアルカリ金属イオン又は4級アンモニウムイオン等が挙げられる。
色素を吸着した後に、アミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としては4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらは液体の場合はそのまま用いてもよいし有機溶媒に溶解して用いてもよい。電荷移動層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層であり、受光電極と対極との間に設けられる。代表的な例としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸したいわゆるゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩などが挙げられる。
以上の液体電解質及び擬固体電解質の代わりにp型半導体あるいはホール輸送材料などの固体電荷輸送系を用いても良い。固体電荷輸送層として有機ホール輸送材料を用いても良い。
酸化還元対は、電子のキャリアになるので、ある程度の濃度が必要である。好ましい濃度としては合計で0.01モル/1以上であり、より好ましくは0.1モル/1であり、特に好ましくは0.3モル/1以上である。この場合の上限には特に制限はないが、通常5モル/1程度である。
対向電極は、光電気化学電池の正極として働くものである。対向電極は、通常前述の導電性支持体と同義であるが、強度が十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要でない。対極の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光層に光が到達するためには、前述の導電性支持体と対向電極との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の光電気化学電池においては、導電性支持体が透明であって太陽光を支持体側から入射させるのが好ましい。この場合、対向電極は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。光電気化学電池の対向電極としては、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラス、またはプラスチックが好ましく、白金を蒸着したガラスが特に好ましい。光電気化学電池では、構成物の蒸散を防止するために、電池の側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。このようにして得られる本発明の光電気化学電池の特性は、一般的にはAM1.5Gで100mW/cm2のとき、開放電圧0.01〜1.5V、短絡電流密度0.001〜20mA/cm2、形状因子0.1〜0.9、変換効率0.001〜25%である。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例・比較例I]
(例示化合物D−1の調製)
下記のスキーム1の方法に従って例示化合物D−1を調製した。
Figure 2011006559
DMF:ジメチルホルムアミド
Et:エチル基
Ph:フェニル基
tBu:t−ブチル基
dba:ジベンジリデンアセトン
Ac:アセチル基
(i)化合物D−1−aの調製
4−ヨードフェノール9.9gと1−ヨードヘキサン11.7gとをDMAc(ジメチルアセトアミド)50mlに室温で攪拌溶解し、これに炭酸カリウム9.3gを添加し室温で3.5時間攪拌した。水とヘキサンを加えて分液し、有機層を濃縮、カラムクロマトグラフィーで精製することで化合物D−1−a13.1gを得た。
(ii)D−1−bの調製
インドリン10.4g、化合物D−1−a25.5g、tert−ブトキシナトリウム24.2g、トリ−tert−ブチルホスフィン814mgおよびトリスジベンジリデンジパラジウム(0)1.22gをトルエン300ml中で溶解し、内温90℃で1時間攪拌し、放冷後、水及び酢酸エチルを加え、分液した。有機層を濃縮し、濃縮物をカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物D−1−b23.8gを得た。
(iii)化合物D−1−cの調製
DMF6mlに氷冷下オキシ塩化リン2mlを加え15分攪拌し、化合物D−1−b1.0gをこれに加え室温で3時間攪拌した。反応液に水を加え攪拌し、さらに10%水酸化ナトリウム水溶液を加え、1時間撹拌した。酢酸エチルで抽出、濃縮後、MeOHから再結晶することで化合物D−1−c1.03gを得た。
(iv)化合物D−1−dの調製
化合物D−1−c0.5g、ベンゾイル酢酸エチル312mg及びピペリジン0.1mlをアセトニトリル10mlに攪拌溶解し、外設80℃で3時間攪拌した。室温で攪拌し、沈殿物をろ過し、メタノールで再結晶することで化合物D−1−d730mgを得た。
(v)例示色素D−1の調製
化合物D−1−d400mgを、1規定の水酸化カリウムのエタノール溶液20ml中、室温で3時間攪拌した。反応液に水を20ml加え攪拌後、酢酸エチルで抽出、濃縮後、酢酸で処理し、ろ過することで化合物D−1 351mgを得た。得られた化合物D−1の構造はNMR測定により確認した。以下で調製した例示化合物についても同様であり、化合物D−1及びD−2のみスペクトルデータを記載した。
1H−NMR(CDCl3、400MHz):δ(ppm):0.87(3H,t),1.27−1.34(4H,m),1.36−1.44(2H,m)、1.68(2H,dt),2.94(2H,t),3.88(2H,t),3.92(2H,t),6.67(1H,d),6.91(2H,d),7.06(1H,s),7.08(1H,s),7.15(2H,d),7.53(2H,t),7.62−7.70(2H,m),7.89(2H,d).
吸収極大波長は364nm(測定方法:トリエチルアミンを0.1質量%含有したエタノール溶媒で色素の濃度が17μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行った。
(例示化合物D−2の調製)
例示化合物D−1の調製と同様の方法でD−2も調製した。
1H−NMR(CDCl3、400MHz):δ(ppm):0.87(3H,t),1.27−1.44(6H,m)、1.68(2H,dt),2.94(2H,t),3.82(3H,s),3.88(2H,t),3.92(2H,t),6.67(1H,d),6.91(2H,d),7.04(2H,d),7.07(1H,s),7.09(1H,s),7.15(2H,d),7.66(1H,s),7.85(2H,d).
吸収極大波長は368nm(測定方法:トリエチルアミンを0.1質量%含有したエタノール溶媒で色素の濃度が17μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行った。
(例示化合物D−3の調製)
下記のスキーム2の方法に従って例示化合物D−3を調製した。
Figure 2011006559
(i)化合物D−3−aの調製
10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ[b,f]アゼピン15.0gと1−ヨードヘキサン21.0gとをDMF60mlに室温で攪拌溶解した後に氷冷する。50〜70%水素化ナトリウム7.5gを分割添加し内温10℃以下で1.5時間攪拌した。反応終了後、反応液に水を滴下し残存している水素化ナトリウムを失活させ、ヘキサンを加えて分液し、有機層を濃縮、カラムクロマトグラフィーで精製することで化合物D−3−a20.4gを得た。
(ii)化合物D−3−bの調製
DMF 60mlに氷冷下オキシ塩化リン20mlを加え30分攪拌し、化合D−3−a 9.5gをこれに加え60℃に加温し3時間攪拌した。放冷し室温にした後に反応液に水を加え攪拌し、さらに10%水酸化ナトリウム水溶液を加え、1時間撹拌した。酢酸エチルで抽出、濃縮後、カラム精製を行い化合物D−3−b 9.9gを得た。
(iii)例示色素D−3−cの調製
化合物D−3−b1.0g、ベンゾイル酢酸エチル680mg及びピペリジン0.2mlをアセトニトリル20mlに攪拌溶解し、外設80℃で3時間攪拌した。室温で攪拌し、沈殿物をろ過し、メタノールで再結晶することで化合物D−3−cを1.3g得た。
(iv)例示色素D−3の調製
化合物D−3−c400mgを、1規定の水酸化カリウムのエタノール溶液20ml中、室温で2時間攪拌した。反応液に水を20ml加え攪拌後、酢酸エチルで抽出、濃縮後、酢酸で処理し、ろ過することで化合物D−3 342mgを得た。
(例示化合物D−4の調製)
例示化合物D−2の調製と同様の方法でD−4も調製した。
(例示化合物D−7の調製)
Figure 2011006559
(i)化合物D−7−aの調製
例示化合物D−2で調製した化合物D−3−b 15.0g、メチルトリフェニルホスホニウムヨージド23.7gをDMF150mlに室温で攪拌した後、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液11.8gを滴下した。反応液は外設60℃に加温し2時間攪拌した。その後、放冷し室温にした後、水を滴下し、ヘキサンで抽出し、有機層を濃縮、カラムクロマトグラフィーで精製することで化合物D−7−a 14.2gを得た。
(ii)化合物D−7−bの調製
DMF70mlに氷冷下オキシ塩化リン20mlを加え30分攪拌し、化合D−7−a13.5gをこれに加え50℃に加温し1時間攪拌した。放冷し室温にした後に反応液に水を加え攪拌し、さらに20%水酸化ナトリウム水溶液を加え、1時間撹拌した。酢酸エチルで抽出、濃縮後、カラム精製を行い化合物D−7−b 14.7gを得た。
(iii)化合物D−7−cの調製
化合物D−7−b1.0g、ベンゾイル酢酸エチル680mg及びピペリジン0.2mlをアセトニトリル20mlに攪拌溶解し、外設80℃で2時間攪拌した。室温で攪拌し、沈殿物をろ過し、メタノールで再結晶することで化合物D−7−cを0.90g得た。
(iv)化合物D−7の調製
化合物D−7−c450mgを、1規定の水酸化カリウムのエタノール溶液20ml中、室温で2時間攪拌した。反応液に水を20ml加え攪拌後、酢酸エチルで抽出、濃縮後、酢酸で処理し、ろ過することで化合物D−7 391mgを得た。
(例示化合物D−5、D−6の調製)
例示化合物D−7の調製と同様の方法でD−5、D−6も調製した。
(光電変換素子の作製)
ガラス基板上に、透明導電膜としてフッ素をドープした酸化スズをスパッタリングにより形成し、これをレーザーでスクライブして、透明導電膜を2つの部分に分割した。このうち一方の導電膜上にアナターゼ型酸化チタン粒子(平均粒径:50nm)を焼結して受光電極を作製した。その後、受光電極上にシリカ粒子とルチルとを40:60(質量比)で含有する分散液を塗布及び焼結して絶縁性多孔体を形成した。次いで対極として炭素電極を形成させた。
次に、下記表1に記載された増感色素(化合物D−8〜D―14については上記化合物D―1〜D―7の合成方法と同様の手順に基づき合成した。)のエタノール溶液(3×10-4モル/1)に48時間浸漬した。増感色素の染着したガラスを4−tert−ブチルピリジンの10%エタノール溶液に30分間浸漬した後、エタノールで洗浄し自然乾燥させた。このようにして得られる感光層の厚さは10μmであり、半導体微粒子の塗布量は20g/m2とした。増感色素の塗布量は、増感色素の種類に応じ、適宜0.1〜10ミリモル/m2の範囲から選択した。
電解液は、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム(0.5モル/1)、ヨウ素(0.1モル/1)のメトキシプロピオニトリル溶液を用いた。
(光電変換効率の測定)
500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光をAM1.5Gフィルター(Oriel社製)およびシャープカットフィルター(KenkoL−42、商品名)を通すことにより紫外線を含まない模擬太陽光を発生させた。この光の強度は89mW/cm2であった。作製した光電変換素子にこの光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレー238型、商品名)にて測定した。これにより求められた光電気化学電池の変換効率を測定した結果を下記表1に示した。結果は、変換効率が5%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として評価した。
[表1]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例 増感色素 波長(nm)*1 変換効率
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1 D−1 364nm ◎
2 D−2 368nm ◎
3 D−3 345nm ◎
4 D−4 358nm ◎
5 D−5 359nm ◎
6 D−6 381nm ◎
7 D−7 360nm ◎
8 D−8 375nm ◎
9 D−9 385nm ◎
10 D−10 370nm ◎
11 D−11 375nm ◎
12 D−12 391nm ◎
13 D−13 366nm ○
14 D−14 368nm ○
比較例1 増感色素A 636nm △
比較例2 増感色素B − △
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
*1:吸収極大波長(測定方法:エタノール溶媒に色素を溶解し、分光光度計(U−4100,商品名、日立ハイテク製)を用いて分光吸収を測定した。)
下記は特開平11−214730号に記載の増感色素の構造である。
Figure 2011006559
下記は特開平特開2004−220974号に記載の発明に係る増感色素の構造である。
Figure 2011006559
表1の結果から明らかなように、本発明の光電気化学電池は、いずれも効率よく光電変換することがわかった。
(実施例・比較例II)
1.ITO膜用原料化合物溶液の調製
塩化インジウム(III)四水和物5.58gと塩化スズ(II)二水和物0.23gとをエタノール100mlに溶解して、ITO膜用原料化合物溶液とした。
2.FTO膜用原料化合物溶液の調製
塩化スズ(IV)五水和物0.701gをエタノール10mlに溶解し、これにフッ化アンモニウム0.592gの飽和水溶液を加え、この混合物を超音波洗浄機に約20分間かけ、完全に溶解して、FTO膜用原料化合物溶液とした。
ついで、厚さ2mmの耐熱ガラス板の表面を化学洗浄し、乾燥した後、このガラス板を反応器内に置き、ヒータで加熱した。ヒータの加熱温度が450℃になったところで、ITO膜用原料化合物溶液を、口径0.3mmのノズルから圧力0.06MPaで、ガラス板までの距離を400mmとして、25分間噴霧した。
このITO膜用原料化合物溶液の噴霧後、2分(この間ガラス基板表面にエタノールを噴霧し続け、基板表面温度の上昇を抑えるようにした。)経過し、ヒータの加熱温度が530℃になった時に、FTO膜用原料化合物溶液を同様の条件で2分30秒間噴霧した。これにより、耐熱ガラス板上に厚さ530nmのITO膜と厚さ170nmのFTO膜とが形成され、透明電極板が得られた。
比較のために、同様の耐熱ガラス板を使用して、これの上に同様の操作により厚さ530nmのITO膜のみを成膜した透明電極板と、同じく厚さ180nmのFTO膜のみを成膜した透明電極板とをそれぞれ作製した。
これら3種の透明電極板を加熱炉にて、450℃で2時間加熱した。
次に、上記具体例で得られた3種の透明電極板を用いて、特許第4260494号中の図2に示した構造の色素増感太陽電池を作製した。酸化物半導体多孔質膜15の形成は、平均粒径約230nmの酸化チタン微粒子をアセトニトリルに分散してペーストとし、これを透明電極11上にバーコート法により厚さ15μmに塗布し、乾燥後450℃で1時間焼成して行い、この酸化物半導体多孔質膜15に表にて示した色素化合物を担持した。
さらに、対極16には、ガラス板上にITO膜とFTO膜とを積層した導電性基板を使用し、電解質層17には、ヨウ素/ヨウ化物の非水溶液からなる電解液を用いた。得られた色素増感太陽電池の平面寸法は25mm×25mmとした。
[表2]
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試料No. TCO 用いた色素 変換効率 備考
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1 ITOのみ 例示色素D−1 ○ 本発明
2 FTOのみ 例示色素D−1 ○ 本発明
3 ITO+FTO 例示色素D−1 ◎ 本発明
4 ITOのみ 例示色素D−3 ○ 本発明
5 FTOのみ 例示色素D−3 ○ 本発明
6 ITO+FTO 例示色素D−3 ◎ 本発明
7 ITOのみ 例示色素D−7 ○ 本発明
8 FTOのみ 例示色素D−7 ◎ 本発明
9 ITO+FTO 例示色素D−7 ◎ 本発明
10 ITOのみ 増感色素A × 比較例
11 FTOのみ 増感色素A × 比較例
12 ITO+FTO 増感色素A △ 比較例
13 ITOのみ 増感色素B × 比較例
14 FTOのみ 増感色素B △ 比較例
15 ITO+FTO 増感色素B △ 比較例
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(実施例・比較例III)
(試験セル(i))
100×100mmのFTO膜付きガラスの表面に、エッチング法により深さ5μmの溝を格子回路パターン状に形成した。エッチングは、フォトリソにてパターン形成した後に、フッ酸を用いて行った。これに、めっき形成を可能とするためにスパッタ法により金属導電層(シード層)を形成し、更にアディティブめっきにより金属配線層3を形成した。金属配線層3は、透明基板2表面から凸レンズ状に3μm高さまで形成した。回路巾は60μmとした。この上から、遮蔽層5としてFTO膜を400nmの厚さでSPD法により形成して、電極基板(i)とした。なお、電極基板(i)の断面形状は、特開2004−146425中の図2に準ずるものとなっている。
電極基板(i)上に平均粒径25nmの酸化チタン分散液を塗布・乾燥し、450℃で1時間加熱・焼結した。これを本発明の色素のエタノール溶液中に40分間浸漬して色素担持した。50μm厚の熱可塑性ポリオレフィン樹脂シートを介して白金スパッタFTO基板と対向して配置し、樹脂シート部を熱溶融させて両極板を固定した。予め、白金スパッタ極側に電解液の注液口を開けておき、電極間に0.5Mのヨウ化塩と0.05Mのヨウ素とを主成分に含むメトキシアセトニトリル溶液を注液した。更に、周辺部及び電解液注液口をエポキシ系封止樹脂を用いて本封止し、集電端子部に銀ペーストを塗布して試験セル(i)とした。AM1.5の疑似太陽光により、試験セル(i)の光電変換特性を評価した。結果を表3に示した。
(試験セル(iv))
100mm角のFTOガラス基板上に、アディティブめっき法により金属配線層3(金回路)を形成した。金属配線層3(金回路)は基板表面に格子状に形成し、回路巾50μm、回路厚5μmとした。この表面に厚さ300nmのFTO膜を遮蔽層5としてSPD法により形成して電極基板(iv)とした。電極基板(iv)の断面をSEM、EDXを用いて確認したところ、配線底部でめっきレジストの裾引きに起因すると思われる潜り込みがあり、影部分にはFTOが被覆されていなかった。
電極基板(iv)を用い、実施例5の上述の要領で試験セル(iv)を作製した。AM1.5の疑似太陽光により試験セル(iv)の光電変換特性を評価し、結果を表3に示した。結果は、変換効率が5%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
[表3]
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試料No. 試料セル 用いた色素 変換効率 備考
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1 (i) 例示色素D−1 ◎ 本発明
2 (iv) 例示色素D−1 ○ 本発明
3 (i) 例示色素D−3 ◎ 本発明
4 (iv) 例示色素D−3 ○ 本発明
5 (i) 例示色素D−7 ◎ 本発明
6 (iv) 例示色素D−7 ○ 本発明
7 (i) 例示色素D−9 ◎ 本発明
8 (iv) 例示色素D−9 ○ 本発明
9 (i) 例示色素D−14 ○ 本発明
10 (iv) 例示色素D−14 ○ 本発明
11 (i) 増感色素A △ 比較例
12 (iv) 増感色素A × 比較例
13 (i) 増感色素B △ 比較例
14 (iv) 増感色素B × 比較例
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表3より、本発明の色素はこの場合でも変換効率が高いことがわかった。
(実施例・比較例IV)
(光電池セル(A)の作成)
5gの水素化チタンを1リットルの純水に懸濁し、濃度5質量%の過酸化水素液400gを30分かけて添加し、ついで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液の全量から90容積%を分取し、濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、オートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子(A)を調製した。得られたチタニアコロイド粒子は、X線回折により結晶性の高いアナターゼ型酸化チタンであった。
次に、上記で得られたチタニアコロイド粒子(A)を濃度10%まで濃縮し、前記ペルオキソチタン酸溶液を混合し、この混合液中のチタンをTiO換算し、TiO質量の30質量%となるように膜形成助剤としてヒドロキシプロピルセルロースを添加して半導体膜形成用塗布液を調製した。
次いで、フッ素ドープした酸化スズが電極層として形成された透明ガラス基板上に前記塗布液を塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cmの紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、塗膜を硬化させた。塗膜を300℃で30分間加熱してヒドロキシプロピルセルロースの分解およびアニーリングを行って金属酸化物半導体膜(A)を形成した。
分光増感色素の吸着
次に、分光増感色素として本発明の色素の濃度3×10−4モル/リットルのエタノール溶液を調製した。この分光増感色素溶液をrpm100スピナーを用いて、金属酸化物半導体膜(A)上へ塗布して乾燥した。この塗布および乾燥工程を5回行った。
光電気セルの作成
アセトニトリルと炭酸エチレンとを体積比(アセトニトリル:炭酸エチレン)が1:5となるように混合した溶媒に、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドを0.46モル/リットル、ヨウ素を0.07モル/リットルの濃度となるように溶解して電解質溶液を調製した。
前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(A)を作成した。
光電気セル(A)は、ソーラーシュミレーターで100W/mの強度の光を照射して、Voc(開回路状態の電圧)、Joc(回路を短絡したときに流れる電流の密度)、FF(曲線因子)およびη(変換効率)を測定し結果を表4に示した。
(光電池セル(B)の作成)
紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、膜を硬化させた後、Arガスのイオン照射(日新電気製:イオン注入装置、200eVで10時間照射)を行った以外は金属酸化物半導体膜(A)と同様にして金属酸化物半導体膜(B)を形成した。
分光増感色素の吸着
酸化チタン膜(A)と同様にして酸化チタン膜(B)に分光増感色素の吸着を行った。
光電気セルの作成。実施例1と同様にして光電気セル(B)を作成し、Voc、Joc、FFおよびηを測定した。結果を表4に示す。
(光電池セル(C)の作成)
18.3gの4塩化チタンを純水で希釈して、TiO換算で1.0質量%含有する水溶液を得た。この水溶液を撹拌しながら、濃度15質量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄し、TiO換算で、10.2質量%の水和酸化チタンゲルのケーキを得た。このケーキと濃度5%過酸化水素液400gを混合し、ついで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液全量から90体積%を分取し、これに濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、オートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子(C)を調製した。
次に、上記で得られたペルオキソチタン酸溶液とチタニアコロイド粒子(C)を使用して金属酸化物半導体膜(A)と同様にして金属酸化物半導体膜(C)を形成した。
分光増感色素の吸着
金属酸化物半導体膜(A)と同様にして分光増感色素の吸着を行った。
光電気セルの作成
光電気セル(A)と同様にして光電気セル(C)を作成し、Voc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表に示した。
(光電池セル(D)の作成)
18.3gの4塩化チタンを純水で希釈してTiO換算で1.0質量%含有する水溶液を得た。これを撹拌しながら、濃度15質量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄した後、純水に懸濁してTiOとして濃度0.6質量%の水和酸化チタンゲルのスラリーとし、これに塩酸を加えてpH2とした後、オートクレーブに入れ、180℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子(D)を調製した。
次に、上記で得られたチタニアコロイド粒子(D)を濃度10%まで濃縮し、これに、TiOに換算した質量の30質量%となるように膜形成助剤としてヒドロキシプロピルセルロースを添加して半導体膜形成用塗布液を調製した。次いで、フッ素ドープした酸化スズが電極層として形成された透明ガラス基板上に、前記塗布液を塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cmの紫外線を照射し、膜を硬化させた。さらに、300℃で30分間加熱してヒドロキシプロピルセルロースの分解およびアニーリングを行い、金属酸化物半導体膜(D)を形成した。
分光増感色素の吸着
金属酸化物半導体膜(A)と同様にして分光増感色素の吸着を行った。得られた金属酸化物半導体膜(D)の分光増感色素の吸着量を表1に示す。
光電気セルの作成
光電気セル(A)と同様にして光電気セル(D)を作成し、ηを測定した。結果を表4に示す。結果は、変換効率が5%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
[表4]
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試料No. 試料セル 用いた色素 変換効率 備考
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1 (A) 例示色素D−3 ◎ 本発明
2 (B) 例示色素D−3 ◎ 本発明
3 (C) 例示色素D−3 ◎ 本発明
4 (D) 例示色素D−3 ○ 本発明
5 (A) 例示色素D−7 ◎ 本発明
6 (B) 例示色素D−7 ◎ 本発明
7 (C) 例示色素D−7 ◎ 本発明
8 (D) 例示色素D−7 ○ 本発明
9 (A) 増感色素A △ 比較例
10 (B) 増感色素A △ 比較例
11 (C) 増感色素A △ 比較例
12 (D) 増感色素A × 比較例
13 (A) 増感色素B △ 比較例
14 (B) 増感色素B △ 比較例
15 (C) 増感色素B △ 比較例
16 (D) 増感色素B × 比較例
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表4より、本発明の色素はこの場合でも変換効率が高いことがわかった。
(実施例・比較例V)
(1)熱処理法による酸化チタンの調製
酸化チタン1(ブルーカイト型)、比較酸化チタン1(アナターゼ型)、比較酸化チタン2(ルチル型)
市販のアナターゼ型酸化チタン(石原産業(株)製、商品名ST−01)を用い、これを約900℃に加熱してブルーカイト型の酸化チタンに変換し、さらに約1,200℃に加熱してルチル型の酸化チタンとした。
(2)湿式合成法による酸化チタンの合成
酸化チタン2(ブルーカイト型)
蒸留水954mlを還流冷却器付きの反応槽に装入し、95℃に加温する。撹拌速度を約200rpmに保ちながら、この蒸留水に四塩化チタン(Ti含有量:16.3質量%、比重1.59、純度99.9%)水溶液46mlを約5.0ml/minの速度で反応槽に滴下した。このとき、反応液の温度が下がらないように注意した。その結果、四塩化チタン濃度が0.25mol/リットル(酸化チタン換算2質量%)であった。反応槽中では反応液が滴下直後から、白濁し始めたがそのままの温度で保持を続け、滴下終了後さらに昇温し沸点付近(104℃)まで加熱し、この状態で60分間保持して完全に反応を終了した。
反応により、得られたゾルを濾過し、次いで60℃の真空乾燥器を用いて粉末とした。この粉末をX線回折法により定量分析した結果、(ブルーカイト型121面のピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0.38、(ルチル型のメインピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0.05であった。これらから求めると酸化チタンは、ブルーカイト型が約70.0質量%、ルチル型が約1.2質量%、アナターゼ型が約28.8質量%の結晶性であった。また、透過型電子顕微鏡でこの微粒子を観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.015μmであった。
酸化チタン3(ブルーカイト型)
三塩化チタン水溶液(Ti含有量:28質量%、比重1.5、純度99.9%)を蒸留水で希釈し、チタン濃度換算で0.25モル/Lの溶液とした。このとき、液温が上昇しないよう氷冷して、50℃以下に保った。次に、この溶液を還流冷却器付きの反応槽に500ml投入し、85℃に加温しながらオゾンガス発生装置から純度80%のオゾンガスを1L/minでバブリングし、酸化反応を行なった。この状態で2時間保持し、完全に反応を終了した。得られたゾルをろ過、真空乾燥し、粉末とした。この粉末をX線回折法により定量分析した結果、(ブルーカイト型121面のピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0.85、(ルチル型のメインピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0であった。これらから求めると二酸化チタンは、ブルーカイト型が約98質量%、ルチル型が0質量%、アナターゼ型が0質量%であり、約2質量%は無定形であった。また、透過型電子顕微鏡でこの微粒子を観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.05μmであった。
比較酸化チタン3(アナターゼ型)
硫酸チタン溶液(Ti:30質量%、比重1.65)145mlを蒸留水855mlに加えた。この時の硫酸チタン濃度は1.5モル/lであった。これを100℃に加熱して加水分解させ白色沈殿を得た。この沈殿をろ過洗浄し、次いで60℃の真空乾燥器を用いて乾燥し粉末とした。X線回折により解析した結果、アナターゼ型であった。また、透過電子顕微鏡での1次粒子の平均粒子径は0.025μmであった。
比較例4(ルチル型)
常法により硫酸チタニル溶液を加熱分解し、濾過洗浄した含水酸化チタンスラリー950g(TiO換算100gに相当)に、48体積%NaOH溶液80gを撹拌しながら投入し、95℃で4時間加熱した。次いで、この処理物を十分洗浄して得たスラリー2kgに、30質量%塩酸600gを撹拌しながら投入し、98℃で5時間加熱し、チタニアゾルを作成した。このチタニアゾルは、X線回折でルチル型の結晶構造を示した。このようにして得られたルチル型の結晶構造をもった微粒子酸化チタンの平均粒子径は0.012μmであった。
色素増感型光電変換素子の作製および評価
上記の酸化チタン1、2および3、ならびに比較酸化チタン1〜4で調製した酸化チタンを半導体として特開2000−340269の図1に示す構成を有する光電変換素子を次のように作製した。ガラス基板上にフッ素ドープの酸化錫をコートし、導電性透明電極とした。電極面上にそれぞれの酸化チタン粒子を原料としたペーストを作成し、バーコート法で厚さ50μmに塗布した後、500℃で焼成して膜厚約20μmの薄層を形成した。次にルテニウム錯体であるRuL(SCN)(L=2,2'−ビピリジル−4,4'−ジカルボキシレート)の3×10−4モル濃度のエタノール溶液を調製し、これに上記の酸化チタンの薄層を形成したガラス基板を浸漬し、12時間室温で保持した。その結果、酸化チタンの薄層上に上記錯体が付着された。
電解液としてテトラプロピルアンモニウムのヨウ素塩とヨウ化リチウムのアセトニトリル溶液を用い、白金を対極として特開2000−340269の図1に示す構成を有する光電変換素子を作製した。光電変換は160wの高圧水銀ランプの光(フィルターで赤外線部をカット)を上記の素子に照射し、その際の変換効率を測定した。結果を表5に示す。結果は、変換効率が5%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
[表5]
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試料No. 酸化チタン 用いた色素 変換効率 備考
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1 酸化チタン1 例示色素D−3 ○ 本発明
2 比較酸化チタン1 例示色素D−3 ○ 本発明
3 酸化チタン2 例示色素D−3 ◎ 本発明
4 酸化チタン3 例示色素D−3 ◎ 本発明
5 比較酸化チタン2 例示色素D−3 ○ 本発明
6 比較酸化チタン3 例示色素D−3 ○ 本発明
7 酸化チタン1 例示色素D−7 ◎ 本発明
8 比較酸化チタン1 例示色素D−7 ○ 本発明
9 酸化チタン2 例示色素D−7 ◎ 本発明
10 酸化チタン3 例示色素D−7 ◎ 本発明
11 比較酸化チタン2 例示色素D−7 ○ 本発明
12 比較酸化チタン3 例示色素D−7 ○ 本発明
13 酸化チタン1 増感色素A △ 比較例
14 比較酸化チタン1 増感色素A × 比較例
15 酸化チタン2 増感色素A △ 比較例
16 酸化チタン3 増感色素A △ 比較例
17 比較酸化チタン2 増感色素A × 比較例
18 比較酸化チタン3 増感色素A × 比較例
19 酸化チタン1 増感色素B △ 比較例
20 比較酸化チタン1 増感色素B × 比較例
21 酸化チタン2 増感色素B △ 比較例
22 酸化チタン3 増感色素B △ 比較例
23 比較酸化チタン2 増感色素B × 比較例
24 比較酸化チタン3 増感色素B × 比較例
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表5より、本発明の色素は変換効率が高いことがわかった。
(実施例・比較例VI)
[ペーストの調製]
先ず、光電極を構成する半導体電極の半導体層又は光散乱層形成するためのペーストを以下の手順で調製した。
(ペースト1)球形のTiO粒子(アナターゼ、平均粒径;25nm、以下、球形TiO粒子1という)とを硝酸溶液に入れて撹拌することによりチタニアスラリーを調製した。次に、チタニアスラリーに増粘剤としてセルロース系バインダーを加え、混練してペーストを調製した。
(ペースト2)球形TiO粒子1と、球形のTiO粒子(アナターゼ、平均粒径;200nm、以下、球形TiO粒子2という)とを硝酸溶液に入れて撹拌することによりチタニアスラリーを調製した。次に、チタニアスラリーに増粘剤としてセルロース系バインダーを加え、混練してペースト(TiO粒子1の質量:TiO粒子2の質量=30:70)を調製した。
(ペースト3)ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;100nm、アスペクト比;5、以下、棒状TiO粒子1という)を混合し、棒状TiO粒子1の質量:ペースト1の質量=10:90のペーストを調製した。
(ペースト4)ペースト1に、棒状TiO粒子1を混合し、棒状TiO粒子1の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト5)ペースト1に、棒状TiO粒子1を混合し、棒状TiO粒子1の質量:ペースト1の質量=50:50のペーストを調製した。
(ペースト6)ペースト1に、板状のマイカ粒子(直径;100nm、アスペクト比;6、以下、板状マイカ粒子1という)を混合し、板状マイカ粒子1の質量:ペースト1の質量=20:80のペーストを調製した。
(ペースト7)ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;30nm、アスペクト比;6.3、以下、棒状TiO粒子2という)を混合し、棒状TiO粒子2の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト8)ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;50nm、アスペクト比;6.1、以下、棒状TiO粒子3という)を混合し、棒状TiO粒子3の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト9)ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;75nm、アスペクト比;5.8、以下、棒状TiO粒子4という)を混合し、棒状TiO粒子4の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト10)ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;130nm、アスペクト比;5.2、以下、棒状TiO粒子5という)を混合し、棒状TiO粒子5の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト11)ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;180nm、アスペクト比;5、以下、棒状TiO粒子6という)を混合し、棒状TiO粒子6の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト12)ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;240nm、アスペクト比;5、以下、棒状TiO粒子7という)を混合し、棒状TiO粒子7の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト13)ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;110nm、アスペクト比;4.1、以下、棒状TiO粒子8という)を混合し、棒状TiO粒子8の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(ペースト14)ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;105nm、アスペクト比;3.4、以下、棒状TiO粒子9という)を混合し、棒状TiO粒子9の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
(色素増感太陽電池1)
以下に示す手順により、特開2002−289274記載の図5に示した光電極12と同様の構成を有する光電極を作製し、更に、光電極を用いて、当該光電極以外は色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する10×10mmのスケールの色素増感型太陽電池1を作製した。
ガラス基板上にフッ素ドープされたSnO導電膜(膜厚;500nm)を形成した透明電極を準備した。そして、このSnO導電膜上に、上述のペースト2をスクリーン印刷し、次いで乾燥させた。その後、空気中、450℃の条件のもとで焼成した。更に、ペースト4を用いてこのスクリーン印刷と焼成とを繰り返すことにより、SnO導電膜上に図5に示す半導体電極2と同様の構成の半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;6μm、光散乱層の層厚;4μm、光散乱層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;30質量%)を形成し、増感色素を含有していない光電極を作製した。
次に、半導体電極に色素を以下のようにして吸着させた。先ず、マグネシウムエトキシドで脱水した無水エタノールを溶媒として、これに本発明の色素化合物を、その濃度が3×10−4mol/Lとなるように溶解し、色素溶液を調製した。次に、この溶液に半導体電極を浸漬し、これにより、半導体電極に色素が約1.5×10−7mol/cm吸着し、光電極10を完成させた。
次に、対極として上記の光電極と同様の形状と大きさを有する白金電極(Pt薄膜の厚さ;100nm)、電解質Eとして、ヨウ素及びヨウ化リチウムを含むヨウ素系レドックス溶液を調製した。更に、半導体電極の大きさに合わせた形状を有するデュポン社製のスペーサーS(商品名:「サーリン」)を準備し、特開2002−289274記載の図3に示すように、光電極10と対極CEとスペーサーSを介して対向させ、内部に上記の電解質を充填して色素増感型太陽電池を完成させた。
(色素増感太陽電池2)
半導体電極の製造を以下のようにして行ったこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により特開2002−289274記載の図1に示した光電極10及び特開2002−289274記載の図3に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する光電極及び色素増感型太陽電池2を作製した。
ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用した。そして、SnO導電膜上に、ペースト2をスクリーン印刷し、次いで乾燥させた。その後、空気中、450℃の条件のもとで焼成し、半導体層を形成した。
ペースト3を光散乱層の最内部の層形成用ペーストとして使用した。また、ペースト5を光散乱層の最外部の層形成用ペーストとして使用した。そして、色素増感太陽電池1と同様にして半導体層上に光散乱層を形成した。
そして、SnO導電膜上に図1に示す半導体電極2と同様の構成の半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;3μm、最内部の層の層厚;4μm、最内部の層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;10質量%、最外部の層の層厚;3μm、最内部の層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;50質量%)を形成し、増感色素を含有していない光電極を作製した。色素増感太陽電池1と同様に、光電極と対極CEとスペーサーSを介して対向させ、内部に上記の電解質を充填して色素増感型太陽電池2を完成させた。
(色素増感太陽電池3)
半導体電極の製造に際して、ペースト1を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト4を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により図5に示した光電極10及び特開2002−289274記載の図3に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する光電極及び色素増感型太陽電池3を作製した。なお、半導体電極は、受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;5μm、光散乱層の層厚;5μm、光散乱層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;30質量%であった。
(色素増感太陽電池実施例4)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト6を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により図5に示した光電極10及び特開2002−289274記載の図3に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する光電極及び色素増感型太陽電池4を作製した。なお、半導体電極は、受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;6.5μm、光散乱層の層厚;3.5μm、光散乱層に含有される板状マイカ粒子1の含有率;20質量%であった。
(色素増感太陽電池5)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト8を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感型太陽電池5を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子3の含有率;30質量%であった。
(色素増感太陽電池実施例6)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト9を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感型太陽電池6を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子4の含有率;30質量%であった。
(色素増感太陽電池7)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト10を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感型太陽電池7を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子5の含有率;30質量%であった。
(色素増感太陽電池8)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト11を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感型太陽電池8を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子6の含有率;30質量%であった。
(色素増感太陽電池9)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト13を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感型太陽電池9を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子8の含有率;30質量%であった。
(色素増感太陽電池10)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト14を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感型太陽電池10を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子9の含有率;30質量%であった。
(比較色素増感太陽電池1)
半導体電極の製造に際して、ペースト2のみを用いて半導体層のみからなる半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、)を作製したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び比較色素増感太陽電池1を作製した。
(比較色素増感太陽電池2)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト7を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び比較色素増感太陽電池2を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子2の含有率;30質量%であった。
[電池特性試験]
電池特性試験を行ない、色素増感太陽電池1〜色素増感太陽電池10、比較色素増感太陽電池1〜比較色素増感太陽電池7の色素増感型太陽電池なエネルギー変換効率ηを測定した。電池特性試験は、ソーラーシミュレータ(WACOM製、WXS−85H)を用い、AM1.5フィルターを通したキセノンランプから1000W/mの疑似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、エネルギー変換効率(η/%)を求めた。その結果を表6に示す。結果は、変換効率が5%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
[表6]
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試料No. 色素増感太陽電池 用いた色素 変換効率 備考
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1 色素増感太陽電池1 例示色素D−3 ○ 本発明
2 色素増感太陽電池2 例示色素D−3 ◎ 本発明
3 色素増感太陽電池3 例示色素D−3 ◎ 本発明
4 色素増感太陽電池4 例示色素D−3 ◎ 本発明
5 色素増感太陽電池5 例示色素D−3 ○ 本発明
6 色素増感太陽電池6 例示色素D−3 ○ 本発明
7 色素増感太陽電池7 例示色素D−3 ◎ 本発明
8 色素増感太陽電池8 例示色素D−3 ◎ 本発明
9 色素増感太陽電池9 例示色素D−3 ◎ 本発明
10 色素増感太陽電池10 例示色素D−3 ◎ 本発明
11 色素増感太陽電池1 例示色素D−7 ◎ 本発明
12 色素増感太陽電池2 例示色素D−7 ◎ 本発明
13 色素増感太陽電池3 例示色素D−7 ◎ 本発明
14 色素増感太陽電池4 例示色素D−7 ◎ 本発明
15 色素増感太陽電池5 例示色素D−7 ◎ 本発明
16 色素増感太陽電池6 例示色素D−7 ◎ 本発明
17 色素増感太陽電池7 例示色素D−7 ◎ 本発明
18 色素増感太陽電池8 例示色素D−7 ◎ 本発明
19 色素増感太陽電池9 例示色素D−7 ◎ 本発明
20 色素増感太陽電池10 例示色素D−7 ◎ 本発明
21 色素増感太陽電池1 増感色素A △ 比較例
22 色素増感太陽電池2 増感色素A △ 比較例
23 色素増感太陽電池3 増感色素A △ 比較例
24 色素増感太陽電池4 増感色素A △ 比較例
25 色素増感太陽電池5 増感色素A △ 比較例
26 色素増感太陽電池6 増感色素A △ 比較例
27 色素増感太陽電池7 増感色素A △ 比較例
28 色素増感太陽電池8 増感色素A △ 比較例
29 色素増感太陽電池9 増感色素A △ 比較例
30 色素増感太陽電池10 増感色素A △ 比較例
31 比較色素増感太陽電池1 増感色素A × 比較例
32 比較色素増感太陽電池2 増感色素A × 比較例
33 色素増感太陽電池1 増感色素B △ 比較例
34 色素増感太陽電池2 増感色素B △ 比較例
35 色素増感太陽電池3 増感色素B △ 比較例
36 色素増感太陽電池4 増感色素B △ 比較例
37 色素増感太陽電池5 増感色素B △ 比較例
38 色素増感太陽電池6 増感色素B △ 比較例
39 色素増感太陽電池7 増感色素B △ 比較例
40 色素増感太陽電池8 増感色素B △ 比較例
41 色素増感太陽電池9 増感色素B △ 比較例
42 色素増感太陽電池10 増感色素B △ 比較例
43 比較色素増感太陽電池1 増感色素B × 比較例
44 比較色素増感太陽電池2 増感色素B × 比較例
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
表6の通り、本発明の色素は変換効率が高いことがわかった。
(実施例・比較例VII)
〔多孔質膜形成用の原料〕
金属酸化物微粒子としては、酸化チタンを用いた。
酸化チタンは、30%ルチル、70%アナターゼ、平均粒径25nmのDegussa社製P25(商品名)粉末を用いた。
〔金属酸化物微粒子粉末の前処理〕
金属酸化物微粒子をあらかじめ熱処理することで表面の有機物と水分を除去した。
酸化チタン微粒子の場合450℃のオーブンで大気下、30分間加熱した。
〔金属酸化物微粒子に含まれる水分量の測定〕
上記に関連し、金属酸化物微粒子に含まれる水分量を計測した。熱質量測定における質量減少、及び粉体を300℃に加熱したときに脱着する水分量のカールフィッシャー滴定により定量した。測定には温度26℃、湿度72%の環境に保存されていた酸化チタン(P25)粉末を用いた。
〔ペーストの調製法〕
導電性基板へのペーストの塗布方法は、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法などを用いることが可能であり、適当なペースト粘度は塗布方法によって適宜選択した。ここでは簡便にガラス棒で塗布する方法(ドクターブレード法に類似)を用いた。この場合、適当なペースト粘度を与える金属酸化物微粒子の濃度は概ね5〜30質量%の範囲となった。
金属酸化物微粒子と金属アルコキシドのモル濃度比は、金属アルコキシドの加水分解によって生じるアモルファス層が過度に厚くならず、かつ粒子同士の接着に十分となるよう、用いる金属酸化物微粒子サイズに応じて適宜調節した。例えば酸化チタン(P25、粒径25nm)とTTIPとを混合する場合には、酸化チタン微粒子1gに対し、3.55gの0.1M TTIP溶液を混合した。このとき、P25微粒子のペースト中の濃度は約22質量%となり、塗布に適当な粘度となった。また、このときのP25とTTIPとエタノールの分量比は質量比で1:0.127:3.42、モル比では1:0.0356:5.92となった。
この組成において、ペースト中のTTIPが全て加水分解し、P25微粒子の表面に均一な結晶性酸化チタンの層を形成したとすると、P25微粒子を直径25nmの完全な球体と見立てた場合、その層厚さは約0.14nmとなる。酸化チタン結晶格子サイズは0.3から0.9nm程度(アナターゼ、ルチルで異なる)なので、形成される酸化チタンはモノレイヤ以下となる。
しかし、実際には後に示すように、室温大気中でTTIPの加水分解によって形成される酸化チタンはアモルファスである。また、ペーストを風乾する過程で表面張力によって金属アルコキシドが微粒子界面に濃縮されることが予想されるため、実際には均一分布はしないと考えられる。
酸化チタン微粒子とTTIP以外のアルコキシドの混合ペーストについても微粒子濃度が22質量%となるようにペーストを調製した。酸化亜鉛及び酸化スズ微粒子を用いたペーストでは16質量%とした。この場合、金属酸化物微粒子1gに対して、金属アルコキシド溶液5.25gの比で混合した。
金属アルコキシドの分解によって生成するアモルファス金属酸化物のレイヤー厚さは本実施例では0.1〜0.6nm程度の範囲にある。概ね0.05〜1.3nm程度が本手法による室温製膜に適切な範囲である。
これよりも加える金属アルコキシドの量が少ない場合、金属酸化物微粒子同士の接着及び多孔質膜の基板に対する接着が不十分となって、多孔質膜の機械的強度が不足し、剥離しやすくなる。これよりも加える金属アルコキシドの量が多い場合、製膜は可能であるが、金属酸化物微粒子表面に厚いアモルファス層が形成されて、膜が非ポーラス構造となり、電荷輸送特性も悪化して電極としての機能が低下してしまうため、膜を水熱処理する必要が生じる。
金属微粒子と金属アルコキシド溶液の混合方法としては、密閉容器中においてマグネチックスターラーによって2時間攪拌して均一なペーストを得る方法がある。その他、ボールミルや超音波破砕機を用いて混錬することも可能であるが、ペースト中の金属アルコキシドの加水分解が過度に進行しないよう、高温多湿の外気に長時間さらさないことが肝要である。
〔導電性基板上へのペーストの塗布と風乾処理〕
スズドープ酸化インジウム(ITO)導電膜付きポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基板(20Ω/sq.)又はFドープSnO(FTO)導電膜付きガラス基板(10Ω/sq.)にスペーサーとなるスコッチテープ2枚を一定間隔で平行に貼り付けたものに、上記の方法に従って調製した各ペーストをガラス棒を用いて均一に塗布した。
この方法による場合、ペースト中の金属酸化物微粒子の濃度が15〜25質量%程度で適当な粘度となるが、スプレー塗布やスクリーン印刷による膜形成に際しては、金属酸化物微粒子と金属アルコキシドとのモル濃度比が上記の範囲であれば、ペーストの粘度を適宜調節して良い。
導電性基板へ塗布した後の膜は大気中室温で2分程度で風乾する。この過程でペースト中の金属アルコキシドが大気中の水分によって加水分解を受け、Tiアルコキシド、Zrアルコキシド、Nbアルコキシドからそれぞれアモルファスの酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブが形成される。
生成したアモルファス金属酸化物が金属酸化物微粒子同士及び膜と基板を接着する役割を果たすため、風乾するのみで機械的強度と付着性に優れた多孔質膜が得られた。
〔UVオゾン処理〕
上記のプロセスによって得られた多孔質膜そのままでも太陽電池用光電極として用いることが出来るが、膜中に残留する有機成分をUVオゾンクリーナーによって除去することで一層その性能が向上する。
UVオゾン処理には日本レーザー電子社製のNL−UV253 UVオゾンクリーナーを用いた。UV光源には185nmと254nmに輝線を持つ4.5W水銀ランプ3個を備えており、試料は光源から約6.5センチの距離に水平に置かれる。チャンバー中に酸素気流を導入することでオゾン発生する。本実施例においてはこのUVオゾン処理を2時間行なった。なお、このUVオゾン処理によるITO膜の導電性の低下は全く見られなかった。
〔増感色素吸着〕
増感色素には本発明の色素を用い、0.5mMのエタノール溶液を調製した。本実施例では上記のプロセスで作製した多孔質膜を100℃のオーブンで1時間乾燥した後に増感色素の溶液に浸漬し、そのまま室温で50分間放置して酸化チタン表面に増感色素を吸着した。増感色素吸着後の試料はエタノールで洗浄し、風乾した。なお、増感色素を水溶液から吸着する場合など、用いる増感色素によってはこの乾燥処理は必ずしも必要ではない。
〔太陽電池の試作と電池特性評価〕
増感色素吸着後の多孔質膜が形成された導電性基板を光電極とし、これと白金微粒子をスパッタリングにより修飾したITO/PETフィルムあるいはFTO/ガラス対極を対向させて、サンドイッチ型の太陽電池を試作した。上記光電極の実効面積は約0.2cm2とした。電解質溶液には0.5 MLiI,0.05 MI2,0.5 Mt−buthylpyridineを含む3−メトキシプロピオニトリルを用い、毛管現象によって両電極間のギャップに導入した。
電池性能の評価は、一定フォトン数(1016cm−2)照射下での光電流作用スペクトル測定及びAM1.5擬似太陽光(100 mW cm−2)照射下でのI−V測定により行なった。これらの測定には分光計器社製のCEP−2000型分光感度測定装置を用いた。
電流及び電圧の検出には東方技研の2000型ポテンシオスタット(商品名)を用いた。光強度は最大で2.6mWcm−2でNDフィルターによって種々の強度に調光した。IMPS及びIMVSプロットの第三象限に現れる極小値を与える周波数(fmin)はそれぞれ電子遷移時間(τD)、電子寿命(τn)と、τD=1/2πfmin、及び、τn=1/2πfminの関係にあり、これらの値を決定できる。
試料を300℃で加熱したときに脱着する水分量をカールフィッシャー滴定によって定量したところ、0.1033gのP25粉末中に0.253mgの水が含まれていた。すなわち、酸化チタン粉末は約2.5質量%の水分を含んでいる。
吸着水の影響は明らかではないが、金属アルコキシド溶液と混合した際に、ペースト中で金属アルコキシドの加水分解が進行するおそれがある。
そこで、金属酸化物微粒子粉末は金属アルコキシドとの混合前に450℃のオーブンで30分間熱処理し、冷却後デシケーター中に保存して用いた。
また、酸化チタン粉末を熱処理する際に、200℃程度で加熱すると、粉末が茶色く着色し、300℃以上の温度で加熱すると再び白色となることが観察された。これは酸化チタン表面に吸着された有機物質が200℃程度の加熱では炭化して残留するのに対し、300℃以上の温度ではこれが燃焼して除去されることに基づくと考えられる。
(2)太陽電池特性
上記の方法に従って、FTO/ガラス基板及びITO/PETフィルム基板上に作製したポーラス酸化チタン厚膜を光電極とするサンドイッチセル(色素増感型太陽電池)を構成した(試料1〜8)。そして、その諸特性(η(変換効率))を評価した。
作製した色素増感型太陽電池は、多孔質膜の膜厚さが約10μm、有効電極面積が0.2cm2である。光源には分光計器社製CEP−2000型のAM1.5ソーラーシミュレータ(光強度100mWcm−2)を用いた。
得られた出力特性値を表にまとめた。結果は、変換効率が3%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
[表7]
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試料 TCO基板 TiO2 用いた色素 UV UV 乾燥 変換 備考
No. 注 オゾン 効率
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1 FTO/GL あり 例示色素D−3 〇 × 〇 ◎ 本発明
2 FTO/GL あり 例示色素D−3 × 〇 〇 ◎ 本発明
3 FTO/GL あり 例示色素D−3 × × 〇 〇 本発明
4 FTO/GL あり 例示色素D−3 × × × 〇 本発明
5 FTO/GL なし 例示色素D−3 × × 〇 〇 本発明
6 FTO/GL あり 例示色素D−3 〇 × 〇 ○ 本発明
7 ITO/PET あり 例示色素D−3 〇 × 〇 ◎ 本発明
8 ITO/PET あり 例示色素D−3 × × 〇 〇 本発明
9 FTO/GL あり 例示色素D−9 〇 × 〇 ◎ 本発明
10 FTO/GL あり 例示色素D−9 × 〇 〇 〇 本発明
11 FTO/GL あり 例示色素D−9 × × 〇 〇 本発明
12 FTO/GL あり 例示色素D−9 × × × 〇 本発明
13 FTO/GL なし 例示色素D−9 × × 〇 ○ 本発明
14 FTO/GL あり 例示色素D−9 〇 × 〇 △ 本発明
15 ITO/PET あり 例示色素D−9 〇 × 〇 〇 本発明
16 ITO/PET あり 例示色素D−9 × × 〇 〇 本発明
17 FTO/GL あり 増感色素A 〇 × 〇 △ 比較例
18 FTO/GL あり 増感色素A × 〇 〇 △ 比較例
19 FTO/GL あり 増感色素A × × 〇 △ 比較例
20 FTO/GL あり 感色素A × × × △ 比較例
21 FTO/GL なし 増感色素A × × 〇 × 比較例
22 FTO/GL あり 増感色素A 〇 × 〇 × 比較例
23 ITO/PET あり 増感色素A 〇 × 〇 △ 比較例
24 ITO/PET あり 増感色素A × × 〇 × 比較例
25 FTO/GL あり 増感色素B 〇 × 〇 △ 比較例
26 FTO/GL あり 増感色素B × 〇 〇 △ 比較例
27 FTO/GL あり 増感色素B × × 〇 △ 比較例
28 FTO/GL あり 増感色素B × × × △ 比較例
29 FTO/GL なし 増感色素B × × 〇 × 比較例
30 FTO/GL あり 増感色素B 〇 × 〇 × 比較例
31 ITO/PET あり 増感色素B 〇 × 〇 △ 比較例
32 ITO/PET あり 増感色素B × × 〇 △ 比較例
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
注:GL=ガラス
表7において、「UVオゾン」、「UV」、「乾燥」の欄はそれぞれ、多孔質膜の形成後、増感色素吸着前における、UVオゾン処理、UV照射処理、乾燥処理の有無を表す。処理したものが「○」であり、処理なしのものが「×」である。UVオゾン処理は2時間行なった。また、UV照射処理は、同じUV光源を用い、酸素を遮断してUV照射のみ2時間行なった。また、乾燥処理は、色素吸着直前に100℃のオーブンで1時間行った。
また、試料5は、ペースト調製前の酸化チタン微粒子の前処理を行わなかった試料であり、その他の試料(試料1〜4,6〜8)は酸化チタン微粒子を450℃のオーブンで30分間熱処理してから用いている。
また、試料6は、高TTIP濃度(P25:TTIPのモル比が1:0.356)のペーストを用いた試料を表す。他の試料(試料1〜5,7,8)は全てP25:TTIP=1:0.0356のペーストを用いている。
表7に示す結果から、表7の通り、本発明の色素は変換効率が高いことがわかった。
(実施例・比較例VIII)
溶媒がアセトニトリルでヨウ化リチウム0.1mol/l、ヨウ素0.05mol/l、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム0.62mol/lを溶解した電解質溶液を調製した。ここに下記に示すNo.1〜No.8のベンズイミダゾール系化合物をそれぞれ濃度0.5mol/lになるように別々に添加し、溶解した。
Figure 2011006559
No.1〜No.8のベンズイミダゾール系化合物電解液を、本発明の色素で表わされる増感色素を担持した導電性ガラス付き多孔質酸化チタン半導体薄膜(厚さ15μm)に滴下した。ここにポリエチレンフィルム製のフレーム型スペーサー(厚さ25μm)をのせ、白金対電極でこれを覆い、光電変換素子を構成した。
得られた光電変換素子に、Xeランプを光源として強度100mW/cmの光を照射した。表8に得られた開放電圧と光電変換効率を示した。開放電圧は、7.0V以上のものを◎、6.5V以上7.0V未満のものを○、6.0V以上6.5V未満のものを△、6.0V未満のものを×として表示した。変換効率が3%以上のものを◎、2%以上5%未満のものを○、0.5%以上2%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
なお、表中には、比較例として、ベンズイミダゾール系化合物を加えていない電解液を用いた光電変換素子の結果も示した。
[表8]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
試料 ベンダイミ 用いた色素 開放 変換効率 備考
No. ゾール系化合物 電圧/V
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1 No1 例示色素D−3 ◎ ◎ 本発明
2 No2 例示色素D−3 ◎ ◎ 本発明
3 No3 例示色素D−3 ◎ ◎ 本発明
4 No4 例示色素D−3 ◎ ◎ 本発明
5 No5 例示色素D−3 ◎ ◎ 本発明
6 No6 例示色素D−3 ◎ ◎ 本発明
7 No7 例示色素D−3 ○ ◎ 本発明
8 No8 例示色素D−3 ○ ○ 本発明
9 なし 例示色素D−3 ○ ○ 本発明
10 No1 例示色素D−7 ◎ ◎ 本発明
11 No2 例示色素D−7 ◎ ◎ 本発明
12 No3 例示色素D−7 ◎ ◎ 本発明
13 No4 例示色素D−7 ◎ ◎ 本発明
14 No5 例示色素D−7 ◎ ◎ 本発明
15 No6 例示色素D−7 ◎ ◎ 本発明
16 No7 例示色素D−7 ○ ◎ 本発明
17 No8 例示色素D−7 ○ ○ 本発明
18 なし 例示色素D−7 ○ ○ 本発明
19 No1 増感色素A △ △ 比較例
20 No2 増感色素A △ △ 比較例
21 No3 増感色素A △ △ 比較例
22 No4 増感色素A △ △ 比較例
23 No5 増感色素A △ △ 比較例
24 No6 増感色素A △ △ 比較例
25 No7 増感色素A △ △ 比較例
26 No8 増感色素A △ △ 比較例
27 なし 増感色素A × × 比較例
28 No1 増感色素B △ △ 比較例
29 No2 増感色素B △ △ 比較例
30 No3 増感色素B △ △ 比較例
31 No4 増感色素B △ △ 比較例
32 No5 増感色素B △ △ 比較例
33 No6 増感色素B △ △ 比較例
34 No7 増感色素B △ △ 比較例
35 No8 増感色素B × △ 比較例
36 なし 増感色素B × × 比較例
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
表8の結果から、本発明の色素は変換効率が高いことが明らかである。
(実施例・比較例IX)
(色素増感型太陽電池1)
以下に示す手順により、特開2004−152613記載の図1に示した光電極10と同様の構成を有する光電極(ただし、半導体電極2を2層構造とした。)を作製し、更に、この光電極を用いた以外は特開2004−152613記載の図1に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する色素増感型太陽電池(半導体電極2の受光面F2の面積:1cm)を作製した。なお、2層構造を有する半導体電極2の各層について、透明電極1に近い側に配置される層を「第1の層」、多孔体層PSに近い側に配置される層を「第2の層」という。
先ず、市販のアナターゼ型の酸化チタン粒子(平均粒子径:25nm、以下、「P25」という)と、これと粒子径の異なるアナターゼ型の酸化チタン粒子(平均粒子径:200nm、以下、「P200」という)とを用い、P25とP200の合計の含有量が15質量%で、P25とP200との質量比が、P25:P200=30:70となるように、これらにアセチルアセトン、イオン交換水、界面活性剤(東京化成社製、商品名;「Triton−X」)を加え、混練して第2の層形成用のスラリー(P25の含有量;7.5質量%、P200の含有量;7.5質量%、以下、「スラリー1」とする)を調製した。
次に、P200を使用せず、P25のみを使用したこと以外は前述のスラリー1と同様の調製手順により第1の層形成用のスラリー(P1の含有量;15質量%、以下、「スラリー2」とする)を調製した。
一方、ガラス基板(透明導電性ガラス)上にフッ素ドープされたSnO導電膜(膜厚:700nm)を形成した透明電極(厚さ:1.1mm)を準備した。そして、このSnO2導電膜上に、上述のスラリー2をバーコーダを用いて塗布し、次いで乾燥させた。その後、大気中、450℃の条件のもとで30分間焼成した。このようにして、透明電極上に、半導体電極2の第1の層を形成した。
更に、スラリー1を用いて、上述と同様の塗布と焼成とを繰り返すことにより、第1の層上に、第2の層を形成した。このようにして、SnO導電膜上に半導体電極2(受光面の面積;1.0cm、層厚:10μm、第1の層の層厚:3μm、第2の層の層厚:7μm)を形成し、増感色素を含有していない状態の光電極10を作製した。
その後、半導体電極の裏面に色素を以下のようにして吸着させた。先ず、増感色素として本発明の色素を用い、これのエタノール溶液(増感色素の濃度;3×10−4mol/L)を調製した。
次に、この溶液に半導体電極を浸漬し、80℃の温度条件のもとで20時間放置した。これにより、半導体電極の内部に増感色素を約1.0×10−7mol/cm吸着させた。次に、開放電圧Vocを向上させるために、ルテニウム錯体吸着後の半導体電極を4−tert−ブチルピリジンのアセトニトリル溶液に15分浸漬した後、25℃に保持した窒素気流中において乾燥させ、光電極10を完成させた。
次に、上記の光電極と同様の形状と大きさを有する対極CEを作製した。先ず、透明導電性ガラス上に、塩化白金酸六水和物のイソプロパノール溶液を滴下し、大気中で乾燥した後に450℃で30分焼成処理することにより、白金焼結対極CEを得た。なお、この対極CEには予め電解質Eの注入用の孔(直径1mm)を設けておいた。
次に、溶媒となるメトキシアセトニトリルに、ヨウ化亜鉛と、ヨウ化−1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムと、ヨウ素と、4−tert−ブチルピリジンとを溶解させて液状電解質(ヨウ化亜鉛の濃度:10mmol/L、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウムの濃度:0.6mol/L、ヨウ素の濃度:0.05mol/L、4−tert−ブチルピリジン濃度:1mol/L)を調製した。
次に、半導体電極の大きさに合わせた形状を有する三井デュポンポリケミカル社製のスペーサS(商品名:「ハイミラン」,エチレン/メタクリル酸ランダム共重合体アイオノマーフィルム)を準備し、特開2004−152613記載の図1に示すように光電極と対極とをスペーサを介して対向させ、それぞれを熱溶着により張り合わせて電池の筐体(電解質未充填)を得た。
次に、液状電解質を対極の孔から筐体内に注入した後、孔をスペーサと同素材の部材で塞ぎ、更に対極の孔にこの部材を熱溶着させて孔を封止し、色素増感型太陽電池1を完成させた。
(色素増感型太陽電池2)
液状電解質におけるヨウ化亜鉛の濃度を50mmol/Lとしたこと以外は、色素増感型太陽電池1と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
(比較色素増感型太陽電池1)
液状電解質におけるヨウ化亜鉛の代わりにヨウ化リチウムを添加し、液状電解質におけるヨウ化リチウムの濃度を20mmol/Lとしたこと以外は、色素増感型太陽電池1と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
(比較色素増感型太陽電池2)
液状電解質におけるヨウ化亜鉛の代わりにヨウ化リチウムを添加し、液状電解質におけるヨウ化リチウムの濃度を100mmol/Lとしたこと以外は、色素増感型太陽電池1と同様の手順及び条件で色素増感型太陽電池を作製した。
[電池特性評価試験]
以下の手順により電池特性評価試験を行ない、色素増感型太陽電池1、色素増感型太陽電池2、比較色素増感型太陽電池1及び比較色素増感型太陽電池2の色素増感型太陽電池の光電変換効率(η(%))を測定した。
電池特性評価試験は、ソーラーシミュレータ(ワコム製、商品名;「WXS−85−H型」)を用い、AMフィルター(AM1.5)を通したキセノンランプ光源からの疑似太陽光の照射条件を、100mW/cm2とする(いわゆる「1Sun」の照射条件)測定条件の下で行った。
各色素増感型太陽電池について、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、これらから光電変換効率η[%]を求めた。得られた結果を表9(1Sunの照射条件)に示す。また、60℃、1Sun照射で、10Ω負荷での作動条件で色素増感型太陽電池1〜2及び比較色素増感型太陽電池1〜2の光電変換効率η[%]の300時間経時後に調べた耐久性評価試験の結果も表9に示した。
[表9]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
試料 太陽電池注1 用いた色素 変換効率 備考
No. flesh 300h後
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1 1 例示色素D−1 5.8 5.2 本発明
2 2 例示色素D−1 5.9 5.0 本発明
3 比較1 例示色素D−1 5.8 4.6 本発明
4 比較2 例示色素D−1 5.9 4.5 本発明
5 1 例示色素D−3 5.9 5.4 本発明
6 2 例示色素D−3 5.8 5.1 本発明
7 比較1 例示色素D−3 5.7 4.5 本発明
8 比較2 例示色素D−3 5.8 4.2 本発明
9 1 増感色素A 2.9 1.1 比較例
10 2 増感色素A 2.8 0.9 比較例
11 比較1 増感色素A 2.9 0.4 比較例
12 比較2 増感色素A 2.9 0.3 比較例
13 1 増感色素B 3.2 1.4 比較例
14 2 増感色素B 3.1 1.2 比較例
15 比較1 増感色素B 2.9 0.5 比較例
16 比較2 増感色素B 3.0 0.6 比較例
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
注1:色素増感型太陽電池の番号
表9に示した結果から明らかなように、本発明の色素は電解質にヨウ化亜鉛を添加した場合でも優れたものであることが確認された。
(実施例・比較例X)
1.二酸化チタン分散液の調製
内側をテフロン(登録商標)コーティングした内容積200mlのステンレス製容器に二酸化チタン微粒子(日本アエロジル(株)製,DegussAP−25)15g、水45g、分散剤(アルドリッチ社製、TrironX−100)1g、直径0.5mmのジルコニアビーズ(ニッカトー社製)30gを入れ、サンドグラインダーミル(アイメックス社製)を用いて1500rpmで2時間分散処理した。得られた分散液からジルコニアビーズを濾別した。得られた分散液中の二酸化チタン微粒子の平均粒径は2.5μmであった。なお粒径はMALVERN社製のマスターサイザーにより測定した。
2.色素を吸着したTiO微粒子層(電極A)の作製
フッ素をドープした酸化スズを被覆した20mm×20mmの導電性ガラス板(旭ガラス(株)製,TCOガラス−U,表面抵抗:約30Ω/m)を準備し、その導電層側の両端(端から3mmの幅の部分)にスペーサー用粘着テープを張った後で、導電層上にガラス棒を用いて上記分散液を塗布した。分散液の塗布後、粘着テープを剥離し、室温で1日間風乾した。次にこの半導体塗布ガラス板を電気炉(ヤマト科学(株)製マッフル炉FP−32型)に入れ、450℃で30分間焼成した。半導体塗布ガラス板を取り出し冷却した後、表10に示す色素のエタノール溶液(濃度:3×10−4mol/L)に3時間浸漬した。色素が吸着した半導体塗布ガラス板を4−tert−ブチルピリジンに15分間浸漬した後、エタノールで洗浄し、自然乾燥させた。このようにして得られた色素増感TiO微粒子層の厚さは10μmであり、TiO微粒子の塗布量は20g/mであった。また色素の吸着量は、その種類に応じて0.1〜10mmol/mの範囲内であった。
3.光電気化学電池の作製
表1に示す溶媒を使用して、0.5mol/Lの電解質塩および0.05mol/Lのヨウ素を含んだ溶液を調製した。この溶液に表10に記載の質量組成比(溶媒+窒素含有高分子化合物+塩を100質量%とした場合の質量組成比)で窒素含有高分子化合物(1−1)を加え、さらに表10に記載のモル比(窒素含有高分子化合物の反応性窒素原子に対する求電子部位のモル比)で求電子剤(2−6)を混合し、均一な反応溶液とした。
一方、導電性ガラス板上に形成された色素増感TiO微粒子層の上にスペーサーを介して白金を蒸着したガラス板からなる対極の白金薄膜側を載置し、導電性ガラス板と白金蒸着ガラス板とを固定した。得られた組立体の開放端を上記電解質溶液に浸漬し、毛細管現象により色素増感TiO微粒子層中に反応溶液を浸透させた。次いで80℃で30分間加熱して、架橋反応を行った。このようにして、特開2000−323190号記載の図2に示す通り、導電性ガラス板10の導電層12上に、色素増感TiO微粒子層20、電解質層30、および白金薄膜42およびガラス板41からなる対極40が順に積層された本発明の光電気化学電池(サンプルNo.1)を得た。
また色素と電解質組成物の組成の組み合わせを表10に示すように変更した以外上記工程を繰り返すことにより、異なる感光層20および/または電荷移動層30を有する本発明の光電気化学電池を得た。
Figure 2011006559
注:(1) 色素の記号は本文中に記載の通り。
(2)窒素含有高分子1−1は以下の化合物を示す。
Figure 2011006559
(3)電解質塩
MHIm:1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムのヨウ素塩
MBIm:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムのヨウ素塩
(4)溶媒
AN:アセトニトリル。
PC:プロピレンカーボネート。
NMO:3−メチル−2−オキサゾリジノン。
(5)用いた求電子剤は下記である。
Figure 2011006559
4.比較用光電気化学電池A、Bの作製
(1)比較用光電気化学電池A
前述のようにして本発明の色素により色素増感されたTiO微粒子層からなる電極A(20mm×20mm)を同じ大きさの白金蒸着ガラス板にスペーサーを介して重ねあわせた。次に両ガラス板の隙間に毛細管現象を利用して電解液(アセトニトリルと3−メチル−2−オキサゾリジノンとの体積比90/10の混合物を溶媒としたヨウ素0.05mol/L、ヨウ化リチウム0.5mol/Lの溶液)を浸透させて、比較用光電気化学電池Aを作成した。
(2)比較用光電気化学電池B(特開平9−27352号に記載の電解質)
前述のようにして本発明の色素により色素増感されたTiO微粒子層からなる電極A(20mm×20mm)上に、電解液を塗布し、含浸させた。なお電解液は、ヘキサエチレングリコールメタクリル酸エステル(日本油脂化学(株)製,ブレンマーPE−350)1gと、エチレングリコール1gと、重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロバン−1−オン(日本チバガイギー(株)製,ダロキュア1173)20mgを含有した混合液に、ヨウ化リチウム500mgを溶解し10分間真空脱気することにより得た。次に前記混合溶液を含浸させた多孔性TiO層を減圧下に置くことにより、多孔性TiO層中の気泡を除き、モノマーの浸透を促した後、紫外光照射により重合して高分子化合物の均一なゲルを多孔性TiO層の微細空孔内に充填した。このようにして得られたものをヨウ素雰囲気に30分間曝して、高分子化合物中にヨウ素を拡散させた後、白金蒸着ガラス板を重ね合わせ、比較用光電気化学電池Bを得た。
5.光電変換効率の測定
500Wのキセノンランプ(ウシオ電機(株)製)の光をAM1.5フィルター(Oriel社製)およびシャープカットフィルター(KenkoL−42)を通すことにより、紫外線を含まない模擬太陽光とした。光強度は89mW/cmに調整した。
前述の光電気化学電池の導電性ガラス板10と白金蒸着ガラス板40にそれぞれワニ口クリップを接続し、各ワニ口クリップを電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)に接続した。これに導電性ガラス板10側から模擬太陽光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置により測定した。これにより求められた光電気化学電池の変換効率(η)、および300時間連続照射時の変換効率の低下率をまとめて表10に示す。
表9に示した結果から明らかなように、本発明の色素はこの場合でも変換効率が高く、耐久性も高く優れたものであることが確認された。

Claims (7)

  1. 下記一般式(I)で表される色素化合物。
    Figure 2011006559
    [一般式(I)中、D1は窒素原子で結合する基又は塩基性核を有する基を表す。L1は単結合又は少なくとも一つのアリーレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基からなる二価の基を表す。D1とL1は互いに結合して環を形成していてもよい。A1は酸性基を表す。R1は水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる原子からなる、脂肪族基、芳香族性基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。Rは水素原子、脂肪族基、芳香族性基、又は炭素原子で結合する複素環基を表す。]
  2. 請求項1において一般式(I)で表される色素化合物のR1が、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる原子からなる、脂肪族基又は芳香族性基であることを特徴とする請求項1に記載の色素化合物。
  3. 前記色素化合物が下記一般式(II)で表されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の色素化合物。
    Figure 2011006559
    [一般式(II)中のAr1はアリール基を表す。L及びAは、それぞれ一般式(II)のL1及びA1と同義である。RおよびRは水素原子、アルキル基、又は下記一般式(III)で表される基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ヘテロ環基、又はハロゲン原子を表す。RとR、RとR、RとR、RとR、及びRとRはそれぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。Rは一般式(I)のRと同義である。]
    [化3]
    一般式(III)
    ―Ar―X―R11
    [一般式(III)中、Ar2は芳香族性連結基を表す。R11は水素原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表す。Xは酸素原子、硫黄原子、又はNR12を表す。R12はR11と同義である。]
  4. 前記色素化合物が、下記一般式(IV)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の色素化合物。
    Figure 2011006559
    [一般式(IV)中、R16及びR17はそれぞれ独立して一般式(II)のR2と同義である。R13〜R15はそれぞれ独立して一般式(II)のR5と同義である。B1は含窒素複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、更に縮環していてもよい。L3及びA3は、それぞれ一般式(I)のL1及びA1と同義である。]
  5. 前記色素化合物が下記一般式(V)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の色素化合物。
    Figure 2011006559
    [一般式(V)中、R19は一般式(II)のR3と同義である。R20及びR21はそれぞれ独立して一般式(II)のR5と同義である。R18は一般式(I)のR1と同義である。B2は5〜7員環のいずれかを形成するのに必要な非金属原子群を表し、更に縮環していてもよい。L4及びA4は、それぞれ一般式(I)のL1及びA1と同義である。R23は一般式(I)のR2と同義である。]
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の色素化合物を増感色素として有する光電変換素子。
  7. 請求項6記載の光電変換素子を備えて構成された色素増感型太陽電池。
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