JP2010537656A - エナンチオマー濃縮したアミンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
ケトンをアンモニア又はアンモニウム塩及び還元剤と、以下の成分:
a)アミノ酸トランスアミナーゼ、
b)アミノ酸トランスアミナーゼの基質であるα−アミノ酸、
c)α−アミノ酸の製造に適したアミノ酸デヒドロゲナーゼ、
d)NAD(P)+及び
e)NAD(P)+を還元剤によりNAD(P)Hに反応させるNAD(P)+還元酵素
を含有する触媒系の存在下で反応させることによる、エナンチオマー濃縮したアミンを製造するための方法。この方法は、触媒量のα−アミノ酸及びNAD(P)+を用いて実施されることができ、ケトンのエナンチオ選択的な還元によるアミン化を可能にする。
a)アミノ酸トランスアミナーゼ、
b)アミノ酸トランスアミナーゼの基質であるα−アミノ酸、
c)α−アミノ酸の製造に適したアミノ酸デヒドロゲナーゼ、
d)NAD(P)+及び
e)NAD(P)+を還元剤によりNAD(P)Hに反応させるNAD(P)+還元酵素
を含有する触媒系の存在下で反応させることによる、エナンチオマー濃縮したアミンを製造するための方法。この方法は、触媒量のα−アミノ酸及びNAD(P)+を用いて実施されることができ、ケトンのエナンチオ選択的な還元によるアミン化を可能にする。
Description
エナンチオマーリッチなアミンは、キラル構成成分、いわゆる「Chiral Building Blocks」として薬学的及び農学的作用物質の製造の際に使用される。
このための有望な例はリバスチグミン、ケファロスポリン及びキラルな1−アミノ−1−アリールアルカンである。この化合物の個々の代表物は、1000トンを超える量で既に産生されている。薬学的及び農学的作用物質の製造のためには光学的に純粋なアミンが必要であり、というのは(R)−又は(S)−エナンチオマーのいずれかのみが所望の作用を達するからである。いくつかの場合においては、所望されないエナンチオマーにより有害作用までも生じる可能性がある。したがって、エナンチオマー濃縮したアミンの製造方法に関する要求が存在する。
これまで最も普通に利用されているエナンチオマー濃縮したか又はエナンチオマー純粋なアミンを生じるための経路は、ラセミの形のアミンから出発するラセミ体分割である。典型的にはジアステレオマー塩を介したラセミ体分割が行われる。このためには化学量論量のキラルなカルボン酸をラセミの形のアミンに付与し、次いでこの生じるジアステレオマー塩を分別晶出により分離する。この後でキラルのカルボン酸を再度分離し、通常はコストの理由から再利用する。不所望なエナンチオマーは廃棄されるか又はラセミ体に移行させ、製造プロセス中に再送されなくてはならない。これらの工程は著しい手間及びコストと関連している。
ジアステレオマー塩を介したラセミ体分割のための選択肢の1つは、生体触媒によるラセミ体分割であり、この場合には酵素を用いてラセミのアミンからエナンチオ選択的にアミン誘導体が生じるか又はラセミのアミン誘導体からエナンチオ選択的にアミンが放出される。このためにリパーゼ、アシラーゼ、プロテアーゼ及びその他多くのヒドロラーゼが使用されることができ、この内前記ヒドロラーゼがラセミ体を立体特異的に分割できることが公知である。このような方法はBornscheuer及びKazlauskas, Hydrolases in Organic Synthesis (2005), Wiley-VCH Weinheim並びにEnzyme Catalysis in Organic Synthesis, 2nd Edition (2002 ),ed. Drauz及びWaldmann, Wiley-VCH Weinheimから公知である。
この方法では化学量論量のキラルな助剤の使用は省略される。しかしながらラセミ体として存在する出発材料に対して50%の理論収率の制限及び場合により関連したコストを有する不所望なエナンチオマーのリサイクルのための更なる処理工程の欠点が残る。
この欠点は、原則的に全てのラセミ体分割戦略に当てはまり、プロキラルな出発化合物を使用した非対称合成によって回避される。ただし、遷移金属含有触媒を使用した公知の非対称合成は、しばしば必要とされるエナンチオ選択率を達成しない。さらに、遷移金属含有触媒の使用からはまた医薬的用途にとって不所望な遷移金属の含有量が、生じる生成物中に生じることができる。
公知のトランスアミナーゼは使用されるアミノ基ドナーに関してもまた同様に形成されるアミンに関してもエナンチオ選択的である。したがってプロキラルなケトンから出発してこの反応の場合にはエナンチオマー濃縮したアミンが形成される。ただし、この欠点は、この反応が平衡反応であり、したがって通常は使用されるプロキラルなケトンの一部しか所望されるエナンチオマー濃縮したアミンに反応しないことである。
Matcham et al . , Chimica Oggi 14 (1996) 20-24; Matcham et al., Chimia 53 (1999) 584-589; 並びにWO99/46398からは、イソプロピルアミンがアミン基質として使用され(R3、R4=CH3)、この反応の際に形成されるアセトンが蒸留により反応混合物から除去される場合には、反応の平衡が所望される生成物の側にずれることが知られている。ただしこの方法は、イソプロピルアミンをアミン基ドナーとして許容するトランスアミナーゼを用いてのみ実施できる。ただしアセトンの除去のために必要である方法条件下では、ほとんどのトランスアミナーゼは十分安定でない。
Shin et al . , Biotechnology and Bioengineering 65 (1999) 206-211及びEP 1 818 411においては、アラニンをアミン基質として使用し、ここから形成されるピルベートを酵素により同時に使用されるピルビン酸デカルボキシラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ又はアセト乳酸合成酵素を用いて更に反応させて、形成されるケトンを除去することにより、この平衡をずらすことが提案されている。ただしアミン基質としてアラニンに限定すると、トランスアミナーゼの選択は顕著に限定される。(R)配置を有するエナンチオマー濃縮したアミンを製造するためには、(R)−選択的なトランスアミナーゼが必要であり、このアミン基質は同様に(R)形態になくてはならない。これはこの方法の際には、更なる手間をかけてのみ入手可能であるD−アラニンの使用を前提とする。この代替策は、DL−アラニンの使用であり、しかしながらこの場合にL−アラニンが反応混合物中に残存し、そして分離及び処理されなくてはならない。
US 3,183,170は、L−グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、ヒドロゲナーゼ、トランスアミナーゼ、水素受容体染料、電子輸送系、窒素供給源及びガス状水素の存在下でのα−ケトカルボン酸とL−グルタミン酸との反応によるL−アミノ酸の製造方法を記載する。この方法は、使用される水素受容体染料が強力に細胞毒である点に欠点を有する。更に、この方法は、アミノ酸特異的L−グルタミン酸デヒドロゲナーゼに限定されていて、基質として様々なアミノ酸を許容するアミノ酸デヒドロゲナーゼを用いて適用されることができない。
したがって、ケトンからエナンチオマー濃縮したアミンを製造し、技術水準から公知の方法の欠点を示さない方法に関する要求が存在する。
この課題は、ケトンをアンモニア又はアンモニウム塩及び還元剤と、以下の成分:
a)アミノ酸トランスアミナーゼ、
b)アミノ酸トランスアミナーゼの基質であるα−アミノ酸、
c)α−アミノ酸の製造に適したアミノ酸デヒドロゲナーゼ、
d)NAD(P)+及び
e)NAD(P)+を還元剤によりNAD(P)Hに反応させるNAD(P)+還元酵素
を含有する触媒系の存在下で反応させるエナンチオマー濃縮したアミンの本発明による製造方法により解決される。
a)アミノ酸トランスアミナーゼ、
b)アミノ酸トランスアミナーゼの基質であるα−アミノ酸、
c)α−アミノ酸の製造に適したアミノ酸デヒドロゲナーゼ、
d)NAD(P)+及び
e)NAD(P)+を還元剤によりNAD(P)Hに反応させるNAD(P)+還元酵素
を含有する触媒系の存在下で反応させるエナンチオマー濃縮したアミンの本発明による製造方法により解決される。
アミノ酸トランスアミナーゼは本発明の意味合いにおいて、α−アミノ酸を基質として許容する酵素クラスE. C. 2.6.1.Xのアミン基転移酵素である。
本発明の意味合いにおいてアミノ酸デヒドロゲナーゼは、α−ケトカルボン酸をアンモニアとα−アミノ酸に反応させ、同時にNAD(P)HをNAD(P)+に酸化する酵素である。
NAD(P)+は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)及びその塩もまた同様にニコチンアミドアデニンジヌクレオチドフォスファート(NADP+)及びその塩も示す。同様に、NAD(P)Hは、ジヒドロニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)及びその塩もまた同様にジヒドロニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスファート(NADPH)及びその塩も示す。
本発明による方法は、3つの酵素により触媒作用される反応を1の全体的な方法に連結する。第1の、アミノ酸トランスアミナーゼにより触媒作用される反応において、ケトンはα−アミノ酸とエナンチオマー濃縮したアミン及びこのα−アミノ酸に相当するα−ケトカルボン酸へと反応される。第2の、アミノ酸デヒドロゲナーゼにより触媒作用される反応においてα−ケトカルボン酸はアンモニア又はアンモニウム塩並びにNAD(P)Hと反応し、α−アミノ酸を再形成しかつNAD(P)+を形成する。第3の、NAD(P)+還元酵素により触媒作用される反応においてはNAD(P)+が還元剤と反応し、NAD(P)Hが再形成される。全体的な反応として、エナンチオ選択的な還元によるケトンのアミン化が生じ、この場合にα−アミノ酸及びNAD(P)+は触媒的な量においてのみ必要であり、エナンチオマー濃縮したアミンの製造のためには消費されない。
以下の図式は、還元剤としてギ酸アンモニウム及びアンモニウム塩、NAD+還元酵素としてギ酸デヒドロゲナーゼを例として、本発明の方法のための3つの酵素反応の連結を示す。この場合にASTAはアミノ酸トランスアミナーゼ、ASDHはアミノ酸デヒドロゲナーゼ、そしてFDHはギ酸デヒドロゲナーゼを指す。
したがって、本発明の主題は、ケトンからエナンチオマー濃縮したアミンを製造するための、以下の成分:
a)アミノ酸トランスアミナーゼ、
b)アミノ酸トランスアミナーゼの基質であるα−アミノ酸、
c)α−アミノ酸の製造に適したアミノ酸デヒドロゲナーゼ、
d)NAD(P)+及び
e)NAD(P)+を還元剤によりNAD(P)Hに反応させるNAD(P)+還元酵素
を含有する触媒系の使用でもある。
a)アミノ酸トランスアミナーゼ、
b)アミノ酸トランスアミナーゼの基質であるα−アミノ酸、
c)α−アミノ酸の製造に適したアミノ酸デヒドロゲナーゼ、
d)NAD(P)+及び
e)NAD(P)+を還元剤によりNAD(P)Hに反応させるNAD(P)+還元酵素
を含有する触媒系の使用でもある。
本発明による方法のためには原則的にはケトンの反応に適した全てのトランスアミナーゼが使用されることができる。適したアミノ酸トランスアミナーゼは、Yun et al . , Applied and Environmental Microbiology 70 (2004) 2529-2534; Shin et al . , Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 65 (2001) 1782-1788; Kaulmann et al . , Enzyme and Microbial Technology 41 (2007) 628-637; Shin et al . , Applied Microbiology and Biotechnology 61 (2003) 463-471; Shin et al . , Biotechnology and Bioengineering 65 (1999) 206-211; Matcham et al . , Chimia 53 (1999) 584-589;並びにWO 99/46398から公知である。
有利にはEP 0 404 146から公知であるω−トランスアミナーゼが使用される。特に適しているのは、ビブリオ・フルビアーリス(Vibrio fluvialis)、特にビブリオ・フルビアーリスJS17株;アルカリゲネス・デリトニフィカンス(Alcaligenes denitrificans)、特にアルカリゲネス・デリトニフィカンス株Y2K−2;クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、特にクレブシエラ・ニューモニエ株YS2F;並びにバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、特にバチルス・チューリンゲンシス株JS64由来のω−トランスアミナーゼである。
α−アミノ酸としては、アミノ酸トランスアミナーゼの基質である全てのα−アミノ酸が使用できる。有利には、α−アミノ酸としてタンパク質性アミノ酸が使用され、その際天然のL−アミノ酸もまた同様にそのD−エナンチオマー又はこのエナンチオマーの任意の混合物、例えばラセミ混合物が使用されることができる。特に有利なアミノ酸は、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン及びグルタミン酸である。
α−アミノ酸は本発明による方法では触媒量で使用できる。有利にはα−アミノ酸及びα−アミノ酸に相当するα−ケト酸の全量は、ケトンの全量に対して、1〜50モル%、有利には2〜10モル%の範囲内にある。
本発明による方法の一実施態様において、反応の開始時には、α−アミノ酸は装入されず、アミノ基の位置にケト基を有するα−アミノ酸に相当するα−ケトカルボン酸が装入される。この実施態様は、D−アミノ酸又は非タンパク質性L−アミノ酸の使用下で製造しなくてはならないエナンチオマー濃縮したアミンの製造のために特に有利であり、というのも入手しにくいアミノ酸の代わりに、このアミノ酸に相当するより容易に入手できるα−ケトカルボン酸がこの方法のために使用できるからである。
アミノ酸デヒドロゲナーゼとしては、全てのNAD(P)H−補因子−依存性デヒドロゲナーゼを使用でき、これによりα−アミノ酸がα−アミノ酸に相当するα−ケトカルボン酸から製造される。適したアミノ酸デヒドロゲナーゼは、Oshima et al, International Industrial Biotechnology 9 (1989) 5-11; Ohsima et al . , European Journal of Biochemistry 191 (1990) 715-720; Khan et al . , Bioscience, Biotechnology and Biochemistry 69 (2005) 1861-1870; Hummel et al . , Applied Microbiology and Biotechnology 26 (1987) 409-416及びBommarius in Enzyme Catalysis in Organic Synthesis, 2nd Edition (2002) , ed. Drauz及びWaldmann, Wiley-VCH Weinheimから公知である。
有利には、アミノ酸デヒドロゲナーゼ、ロイシンデヒドロゲナーゼ、アラニンデヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ又はグルタミン酸デヒドロゲナーゼである。特に適しているのは、バチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)、特にバチルス・スファエリカス株DSM642からのアラニンデヒドロゲナーゼ;バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、特にバチルス・スブチリス株ISW1214からのグルタミン酸デヒドロゲナーゼ;ロドコッカス種、特にロドコッカス種M4株からのフェニルアラニンデヒドロゲナーゼ、バチルス・スファエリカス及びサーモアクチノマイセス・インテルメジウス(Thermoactinomyces intermedius)である。特に有利にはバチルス・セレウス(Bacillus cereus)からのロイシンデヒドロゲナーゼが使用される。D−アミノ酸の製造のためには有利には、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)のメソ−ジアミノピメリン酸−D−デヒドロゲナーゼの突然変異体としてVedha-Peters et al . , Journal of the American Chemical Society 128 (2006) 10923-10929に記載されているD−アミノ酸デヒドロゲナーゼが使用される。
有利にはアミノ酸トランスアミナーゼ及びアミノ酸デヒドロゲナーゼが組み合わせて使用され、これはα−アミノ酸に関するその立体選択性において相互に調節されていて、すなわち、アミノ酸デヒドロゲナーゼはα−アミノ酸に相当するα−ケト酸を選択的にα−アミノ酸のS−エナンチオマーに反応させ、このアミノ酸トランスアミナーゼは選択的にα−アミノ酸のS−エナンチオマーをケトンと一緒に反応させるか、又は、アミノ酸デヒドロゲナーゼはα−アミノ酸に相当するα−ケト酸を選択的にα−アミノ酸のR−エナンチオマーに反応させ、アミノ酸トランスアミナーゼは選択的にα−アミノ酸のR−エナンチオマーをケトンと一緒に反応させる。
本発明による方法では、更に、還元剤が、NAD(P)+を還元剤によりNAD(P)Hへと反応させるNAD(P)+還元酵素と組み合わせて使用される。適したNAD(P)+還元酵素は、Enzyme Catalysis in Organic Synthesis, 2nd Edition (2002) , ed. Drauz及びWaldmann, Wiley-VCH Weinheimから公知である。
有利な一実施態様において、還元剤としてはギ酸の塩が、そしてNAD(P)+還元酵素としてギ酸デヒドロゲナーゼが使用される。特に有利には還元剤がギ酸アンモニウムであり、これはinsituにおいてもギ酸及びアンモニアから製造することができる。有利にはカンジダ・ボイジニ(Candida boidinii)からのギ酸デヒドオロゲナーゼ又はここから誘導される突然変異体が使用される。同様に適しているのは、Tishkov et al.によりBiomolecular Engineering 23 (2006) 89-11において記載されるギ酸デヒドオロゲナーゼである。この実施態様は、還元剤の反応生成物として二酸化炭素のみが生じる利点を有し、これは反応混合物の後処理を容易にする。
更なる有利な一実施態様において、還元剤としてはグルコースが、そしてNAD(P)+還元酵素としてグルコースデヒドロゲナーゼが使用される。特に適しているのはバシラス・スブチリス(Bacillus subtilis)、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)及びテルモプラズマ・アキドピルム(Thermoplasma acidophilum)からのグルコースデヒドロゲナーゼである。
代替的には還元剤としてリン酸の塩が、そしてNAD(P)+還元酵素としてホスフィットデヒドロゲナーゼが使用されることができる。適したホスフィットデヒドロゲナーゼは、Relyea et al . , Bioorganic Chemistry 33 (2005) 171-189から公知である。
同様に適しているのは、還元剤としてのグルコース−6−ホスファートと組み合わせたNAD(P)+還元酵素としてのグルコース−6−ホスファートデヒドロゲナーゼである。
本発明による方法では、NAD(P)+又はNAD(P)Hは触媒量で使用できる。
有利には、NAD(P)+及びNAD(P)Hの全量は、ケトンの全量に対して、0.001〜5モル%、有利には0.01〜1モル%の範囲内にある。反応開始時には、選択的にNAD(P)+もまた同様にNAD(P)Hも装入されることができる。
本発明による方法において使用される酵素、すなわちアミノ酸トランスアミナーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼ及びNAD(P)+還元酵素は、方法において溶解されて使用されることもまた同様に担体に固定化されて使用されることもできる。有利な一実施態様において、酵素は全細胞触媒(Ganzzellkatalysator)の形で使用され、すなわち、全ての3つの酵素を発現する細胞の形で使用される。有利には、組み換えされた全細胞触媒が使用され、すなわち、天然でない遺伝子配列から前記の3つの酵素の少なくとも1を発現するように遺伝子工学的に変更されている細胞が使用される。特に有利には組み換え全細胞触媒としては、細菌、特に大腸菌の細菌が使用され、これはアミノ酸トランスアミナーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼ及びNAD(P)+還元酵素を過剰発現する。
本発明による方法では、反応は有利には水性反応媒体中で行われる。この水相は、更に水と混合可能な溶媒を含有することができ、これは有利には、この全体の反応混合物に対して1〜20質量%の量にある。適した溶媒は、アルコール、特にメタノール、エタノール及びイソプロパノール、グリコール、特にエチレングリコール及びプロピレングリコール、並びにテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドである。
この水性反応媒体は有利には、6〜9、特に有利には7〜8の範囲内のpH値を有する。有利には、この範囲内のpH値は、適した無機の又は有機の酸及びそのアンモニウム塩からの緩衝液により調節される。例えば、リン酸及びリン酸アンモニウムからの緩衝液、又は、カルボン酸及びそのアンモニウムカルボキシラートからの緩衝液によるpH値の調節が行われることができる。選択的に、pH値は、アンモニア又は無機の又は有機の酸の反応混合物へのpHにより制御された計量供給により調節されることもできる。
本発明による方法の有利な一実施態様において、水相及び有機相からの二相系中で反応は行われる。この有機相は、この場合に、使用されるケトン及び/又は形成されるアミンからなることができる。しかしながら有利には有機相の形成のためには水と混合可能でない溶媒が添加される。適した溶媒は、脂肪族炭化水素、特にヘキサン及びヘプタン、芳香族炭化水素、特にトルエン及びキシレン、ジアルキルエーテル、特にメチル−tert−ブチルエーテル及びエチル−tert−ブチルエーテル、並びにカルボン酸エステル、特に酢酸エチルエステルである。二相系中での反応は、劣悪に水溶性のケトンの使用又は劣悪に水溶性のアミンの製造の場合でも高い体積収率を可能にし、これはケトン又はアミンの溶解性により制限されない。さらに、二相系中での反応では、使用されるケトン又は形成されるアミンによる、使用される酵素の阻害も回避される。さらに、二相系中での反応は、アミン生成物の、使用される酵素からの容易な分離及び相分離を介した回収を可能にし、これは場合により9〜11の範囲内にpH値を事前に調節した後である。
ケトンとしては有利にはジアルキルケトン、アルキルアリールケトン、アルキルヘテロアリールケトン及びアルキルアラルキルケトンが使用され、その際このアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は酵素阻害しない基で置換されていることができる。ケトンは本発明による方法において反応開始時に装入されることができる。しかしながら有利には反応開始時には、反応させるべきケトンの一部のみが装入され、反応させるべきケトンの残りの量はケトンの反応に相応して計量供給される。このようなケトンの計量供給により、ケトンによる使用される酵素の阻害が回避される。30℃より高い融点を有するケトンは有利には溶媒中で溶液として使用され、その際に前述の水と混合可能な溶媒もまた同様に前述の水と混合可能でない溶媒も使用されることができる。有利には、反応体積に対するケトンの全量は、10g/lより多く、特に有利には50g/lより多く、特にとりわけ100g/lより多い。反応体積に対するケトンの全量のための上限は、使用されるケトン及び形成されるアミンの溶解性から、特にアミンに相応するアンモニウム塩の溶解性から生じ、これは反応がこのアンモニウム塩のpKa値を下回るpH値で実施される場合である。有利には反応体積に対するケトンの全量は500g/lより少ない。
本発明による方法において必要とされるアンモニア又はアンモニウム塩は、開始時に装入されることもまた同様にケトンの反応に相応して反応の間に計量供給されることもできる。有利には、アンモニア又はアンモニウム塩は装入され、反応の間にアンモニア及びアンモニウム塩の全量が常にケトンに対して化学量論的過剰量にあるように、場合により計量供給される。
本発明による方法はバッチ式にもまた同様に連続的にも実施されることができる。バッチ中での反応の実施の際には、反応は有利には撹拌槽反応器中で又は膜反応器中で行われる。連続的な反応の実施の際にはこの反応は有利には膜反応器中で又は固体の担体に固定化された酵素を用いて固体層反応器中で行われる。膜反応器中でのこの反応は、本発明による方法において使用される酵素の反応器中の容易な維持(Rueckhaltuneg)を可能にする。組み換え全細胞触媒の使用では、酵素は濾過又は遠心分離を用いた細胞の分離によっても回収されることができる。
比較例が示すとおり、Shin及びKim et al . Biotechnology and Bioengineering 65 (1999), 206-211頁による還元条件を用いて、すなわち、トランスアミナーゼ及びアミノ酸(アラニン)を用いて基質アセトフェノンから最終収率として理論値の4.3%の1−フェニルエチルアミンしか得られない。
アミノ酸(アラニン)、トランスアミナーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼ、NADH、ギ酸デヒドロゲナーゼ及びギ酸アンモニウムからの本発明による還元系の適用により、これに対して、アセトフェノンから1−フェニルエチルアミンに関して3.5倍より高い最終収率が得られる(実施例9による理論値の15.1%)。これは意外でありかつ予期できず、そして技術水準に対して大きな利点を意味する。
したがって、本発明による方法はケトンからのエナンチオマー濃縮したアミンの製造をこのために化学量論量のキラルな助剤を必要とすることなく可能にし、そして公知の方法に対してα−アミノ酸又はα−ケト酸及びアミノ酸デヒドロゲナーゼの適した組み合わせによりケトンの反応のために実質的に全てのアミノ酸トランスアミナーゼを使用できる利点を有し、この結果、全てのケトンについてそのつど最良のエナンチオ選択率が達成されるアミノ酸トランスアミナーゼが使用できる。
以下の実施例は、実施態様に限定することなく本発明を詳説するものである。
方法:
実施例1
発現株の構築
ラムノースプロモーター(配列番号1)下のプラスミドpGR15、ビブリオ・フルビアーリスからのトランスアミナーゼの発現のための大腸菌発現プラスミド、及び、ラムノースプロモーター(配列番号2)下のpCR4、バチラス・スブチリスからのアラニンデヒドロゲナーゼの発現のための大腸菌発現プラスミドを合成コンストラクトとしてGeneart (Regensburg, Deutschland)から購入した。
実施例1
発現株の構築
ラムノースプロモーター(配列番号1)下のプラスミドpGR15、ビブリオ・フルビアーリスからのトランスアミナーゼの発現のための大腸菌発現プラスミド、及び、ラムノースプロモーター(配列番号2)下のpCR4、バチラス・スブチリスからのアラニンデヒドロゲナーゼの発現のための大腸菌発現プラスミドを合成コンストラクトとしてGeneart (Regensburg, Deutschland)から購入した。
プラスミドを慣用の分子生物学的方法(例えばSambrook, J., E. F. Fritsch and T. Maniatis (1989) . Molecular cloning : a laboratory manual . CoId Spring Harbor, N. Y., CoId Spring Harbor Laboratory)により大腸菌中にトランスフォーメーションし、選択のために100μg/mLのアンピシリンを有するLB寒天プレート上で培養した。
実施例2
大腸菌DSM14459中でのビブリオ・フルビアーリスからのトランスアミナーゼの組み換え発現:
ビブリオ・フルビアーリスからのトランスアミナーゼの発現のために100μg/mLのアンピシリンを含有するLB培地50ml中でプラスミド選択のために大腸菌DSM14459 (pGR15)を培養した。発現をすぐさま2g/LのLラムノースの添加により開始した。振盪下での37℃での24時間のインキュベーション後細胞を遠心分離により除去し、10mlのリン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.5)中に再懸濁し、超音波で溶解(aufschliessen)した。この上清を細胞破片塊の遠心分離後に更なる実験のために使用した(細胞粗エキス)。タンパク質含有量をブラッドフォードにより、そして酵素活性をトランスアミナーゼ活性試験により決定した。
大腸菌DSM14459中でのビブリオ・フルビアーリスからのトランスアミナーゼの組み換え発現:
ビブリオ・フルビアーリスからのトランスアミナーゼの発現のために100μg/mLのアンピシリンを含有するLB培地50ml中でプラスミド選択のために大腸菌DSM14459 (pGR15)を培養した。発現をすぐさま2g/LのLラムノースの添加により開始した。振盪下での37℃での24時間のインキュベーション後細胞を遠心分離により除去し、10mlのリン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.5)中に再懸濁し、超音波で溶解(aufschliessen)した。この上清を細胞破片塊の遠心分離後に更なる実験のために使用した(細胞粗エキス)。タンパク質含有量をブラッドフォードにより、そして酵素活性をトランスアミナーゼ活性試験により決定した。
実施例3
大腸菌DSM14459中でのバシラス・スブチリスからのアラニンデヒドロゲナーゼの組み換え発現:
バシラス・スブチリスからのアラニンデヒドロゲナーゼの発現のために100μg/mLのアンピシリンを含有するLB培地50ml中でプラスミド選択のために大腸菌DSM14459(pGR15)を培養した。発現をすぐさま2g/LのLラムノースの添加により開始した。振盪下での30℃での24時間のインキュベーション後細胞を遠心分離により除去し、10mlのリン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.5)中に再懸濁し、超音波で溶解した。この上清を細胞破片塊の遠心分離後に更なる実験のために使用した(細胞粗エキス)。タンパク質含有量をブラッドフォードにより、そして酵素活性をアミノ酸デヒドロゲナーゼ活性試験により決定した。
大腸菌DSM14459中でのバシラス・スブチリスからのアラニンデヒドロゲナーゼの組み換え発現:
バシラス・スブチリスからのアラニンデヒドロゲナーゼの発現のために100μg/mLのアンピシリンを含有するLB培地50ml中でプラスミド選択のために大腸菌DSM14459(pGR15)を培養した。発現をすぐさま2g/LのLラムノースの添加により開始した。振盪下での30℃での24時間のインキュベーション後細胞を遠心分離により除去し、10mlのリン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.5)中に再懸濁し、超音波で溶解した。この上清を細胞破片塊の遠心分離後に更なる実験のために使用した(細胞粗エキス)。タンパク質含有量をブラッドフォードにより、そして酵素活性をアミノ酸デヒドロゲナーゼ活性試験により決定した。
実施例4:
1−フェニルエチルアミン濃度及びアセトフェノン濃度のガスクロマトグラフィによる測定
1−フェニルエチルアミン及びアセトフェノンの分離をWCOT Chrompack 7422カラム(長さ25m、CP-WAX相を用いて実施した。キャリアガスとしてヘリウムを1mL/分の流で使用した。この分離を2工程の温度勾配を用いて、50℃で加熱速度0.5℃/分で開始し60℃までにし、次いで加熱速度100℃/分で220℃までにし、次いで6分間維持した。この検出を火炎イオン化検出器を用いて行った。1−フェニルエチルアミンの維持時間は24.4分であり、アセトフェノンの維持時間は24.9分である。
1−フェニルエチルアミン濃度及びアセトフェノン濃度のガスクロマトグラフィによる測定
1−フェニルエチルアミン及びアセトフェノンの分離をWCOT Chrompack 7422カラム(長さ25m、CP-WAX相を用いて実施した。キャリアガスとしてヘリウムを1mL/分の流で使用した。この分離を2工程の温度勾配を用いて、50℃で加熱速度0.5℃/分で開始し60℃までにし、次いで加熱速度100℃/分で220℃までにし、次いで6分間維持した。この検出を火炎イオン化検出器を用いて行った。1−フェニルエチルアミンの維持時間は24.4分であり、アセトフェノンの維持時間は24.9分である。
実施例5
アミノ酸デヒドロゲナーゼ活性
アミノ酸デヒドロゲナーゼ活性を分光光度により測定した。このためにNADP濃度の減少を340nmの波長での吸収の減少にもとづき観察した。0.1cmの水晶ガラスキュベット中に1mmol/LのNADH、2.5mmol/Lのピルビン酸ナトリウム又はナトリウムケトロイシン、400mmol/Lの塩化アンモニウムをリン酸カリウム緩衝液(50mmol/L、pH8.2)中に含有する基質溶液1mLを酵素試料10μlと混合し、この吸収を340nmの波長で10分間30℃で測定した。減光定数ε=6300l/(mol cm)、層密度及び時間にわたる吸収の変化を用いてこの活性を算出した。
アミノ酸デヒドロゲナーゼ活性
アミノ酸デヒドロゲナーゼ活性を分光光度により測定した。このためにNADP濃度の減少を340nmの波長での吸収の減少にもとづき観察した。0.1cmの水晶ガラスキュベット中に1mmol/LのNADH、2.5mmol/Lのピルビン酸ナトリウム又はナトリウムケトロイシン、400mmol/Lの塩化アンモニウムをリン酸カリウム緩衝液(50mmol/L、pH8.2)中に含有する基質溶液1mLを酵素試料10μlと混合し、この吸収を340nmの波長で10分間30℃で測定した。減光定数ε=6300l/(mol cm)、層密度及び時間にわたる吸収の変化を用いてこの活性を算出した。
実施例6
ギ酸デヒドロゲナーゼ活性
ギ酸デヒドロゲナーゼ活性を分光光度により測定した。このためにNADP濃度の増加を340nmの波長での吸収の増加にもとづき観察した。0.1cmの水晶ガラスキュベット中に2mmol/LのNADH、400mmol/Lのギ酸ナトリウムをリン酸カリウム緩衝液(50mmol/L、pH8.2)中に含有する基質溶液1mLを酵素試料10μlと混合し、この吸収を340nmの波長で10分間30℃で測定した。減光定数ε=6300l/(mol cm)、層密度及び時間にわたる吸収の変化を用いてこの活性を算出した。
ギ酸デヒドロゲナーゼ活性
ギ酸デヒドロゲナーゼ活性を分光光度により測定した。このためにNADP濃度の増加を340nmの波長での吸収の増加にもとづき観察した。0.1cmの水晶ガラスキュベット中に2mmol/LのNADH、400mmol/Lのギ酸ナトリウムをリン酸カリウム緩衝液(50mmol/L、pH8.2)中に含有する基質溶液1mLを酵素試料10μlと混合し、この吸収を340nmの波長で10分間30℃で測定した。減光定数ε=6300l/(mol cm)、層密度及び時間にわたる吸収の変化を用いてこの活性を算出した。
実施例7
グルコースデヒドロゲナーゼ活性
グルコースデヒドロゲナーゼ活性を分光光度により測定した。このためにNADP濃度の増加を340nmの波長での吸収の増加にもとづき観察した。1cmの水晶ガラスキュベット中に0.25mmol/LのNADH、100mmol/LのD−グルコースをリン酸カリウム緩衝液(100mmol/L、pH7.0)中に含有する基質溶液1mLを酵素試料10μlと混合し、この吸収を340nmの波長で10分間30℃で測定した。減光定数ε=6300l/(mol cm)、層密度及び時間にわたる吸収の変化を用いてこの活性を算出した。
グルコースデヒドロゲナーゼ活性
グルコースデヒドロゲナーゼ活性を分光光度により測定した。このためにNADP濃度の増加を340nmの波長での吸収の増加にもとづき観察した。1cmの水晶ガラスキュベット中に0.25mmol/LのNADH、100mmol/LのD−グルコースをリン酸カリウム緩衝液(100mmol/L、pH7.0)中に含有する基質溶液1mLを酵素試料10μlと混合し、この吸収を340nmの波長で10分間30℃で測定した。減光定数ε=6300l/(mol cm)、層密度及び時間にわたる吸収の変化を用いてこの活性を算出した。
実施例8
トランスアミナーゼ活性
トランスアミナーゼ活性をガスクロマトグラフィにより測定した。このために10mmol/Lのピルビン酸ナトリウム、50mmol/Lの1−フェニルエチルアミンをリン酸カリウム緩衝液(100mmol/L、pH7)中に含有する基質溶液1mlを酵素試料と混合し、反応溶液を30℃で振盪しながらインキュベーションした。規則的な間隔をおいて、反応溶液100μLを試料として取り出し、1Mの苛性ソーダ液50μLと混合し、500μLのトルエンで抽出した。有機相を取り出し、1−フェニルエチルアミン及びアセトフェノンの含有量をガスクロマトグラフィにより測定した。
トランスアミナーゼ活性
トランスアミナーゼ活性をガスクロマトグラフィにより測定した。このために10mmol/Lのピルビン酸ナトリウム、50mmol/Lの1−フェニルエチルアミンをリン酸カリウム緩衝液(100mmol/L、pH7)中に含有する基質溶液1mlを酵素試料と混合し、反応溶液を30℃で振盪しながらインキュベーションした。規則的な間隔をおいて、反応溶液100μLを試料として取り出し、1Mの苛性ソーダ液50μLと混合し、500μLのトルエンで抽出した。有機相を取り出し、1−フェニルエチルアミン及びアセトフェノンの含有量をガスクロマトグラフィにより測定した。
実施例9
(本出願テキストの第6頁の記載の図に応じた平衡状態の影響を有する)
リン酸カリウム緩衝液(100mmol/L、pH7)1mL中で20mmol/Lのアセトフェノン、200mmol/Lのアラニン、90mmol/Lのギ酸アンモニウム及び0.3mmol/LのNADHを混合し、終濃度20U/mLまでのビブリオ・フルビアーリストランスアミナーゼと、終濃度400U/mLまでのバチラス・スブチリスからのアラニンデヒドロゲナーゼと、そして終濃度24U/mLまでのカンジダ・ボイジニ(Juelich,今はCodexis)からのギ酸デヒドロゲナーゼと混合した。この溶液を振盪しながら30℃でインキュベーションし、1、3、5、24及び48時間後にアセトフェノン含有量及び1−フェニルエチルアミン含有量を測定した。アセトフェノンの最大の変換率を48時間後に達成した。
(本出願テキストの第6頁の記載の図に応じた平衡状態の影響を有する)
リン酸カリウム緩衝液(100mmol/L、pH7)1mL中で20mmol/Lのアセトフェノン、200mmol/Lのアラニン、90mmol/Lのギ酸アンモニウム及び0.3mmol/LのNADHを混合し、終濃度20U/mLまでのビブリオ・フルビアーリストランスアミナーゼと、終濃度400U/mLまでのバチラス・スブチリスからのアラニンデヒドロゲナーゼと、そして終濃度24U/mLまでのカンジダ・ボイジニ(Juelich,今はCodexis)からのギ酸デヒドロゲナーゼと混合した。この溶液を振盪しながら30℃でインキュベーションし、1、3、5、24及び48時間後にアセトフェノン含有量及び1−フェニルエチルアミン含有量を測定した。アセトフェノンの最大の変換率を48時間後に達成した。
1−フェニルエチルアミンに関する収率はこの場合に24時間後に理論値の8.5%であり、48時間後に理論値の15.1%であった(それぞれ100%の選択率)。
比較例1(平衡状態の影響なし):
リン酸カリウム緩衝液(100mmol/L、pH7)1mL中に30mmol/Lのアセトフェノン及び300mmol/Lのアラニンを混合し、ビブリオ・フルビアーリストランスアミナーゼで終濃度20U/mLまで混合した。この溶液を振盪しながら30℃でインキュベーションし、1、3、6及び24時間後にアセトフェノン含有量及び1−フェニルエチルアミン含有量を測定した。アセトフェノンの最大の変換率を24時間後に達成した。
リン酸カリウム緩衝液(100mmol/L、pH7)1mL中に30mmol/Lのアセトフェノン及び300mmol/Lのアラニンを混合し、ビブリオ・フルビアーリストランスアミナーゼで終濃度20U/mLまで混合した。この溶液を振盪しながら30℃でインキュベーションし、1、3、6及び24時間後にアセトフェノン含有量及び1−フェニルエチルアミン含有量を測定した。アセトフェノンの最大の変換率を24時間後に達成した。
この場合に1−フェニルエチルアミンを理論値の4.3%の溶液(100%選択率)において得た。
Claims (16)
- ケトンからエナンチオマー濃縮したアミンを製造するための方法であって、ケトンをアンモニア又はアンモニウム塩及び還元剤と、以下の成分:
a)アミノ酸トランスアミナーゼ、
b)アミノ酸トランスアミナーゼの基質であるα−アミノ酸、
c)α−アミノ酸の製造に適したアミノ酸デヒドロゲナーゼ、
d)NAD(P)+及び
e)NAD(P)+を還元剤によりNAD(P)Hに反応させるNAD(P)+還元酵素
を含有する触媒系の存在下で反応させることを特徴とする方法。 - アミノ酸デヒドロゲナーゼはα−アミノ酸に相当するα−ケト酸を選択的にα−アミノ酸のS−エナンチオマーへと反応させ、そしてアミノ酸トランスアミナーゼはα−アミノ酸のS−エナンチオマーを選択的にケトンと一緒に反応させることを特徴とする請求項1記載の方法。
- アミノ酸デヒドロゲナーゼはα−アミノ酸に相当するα−ケト酸を選択的にα−アミノ酸のR−エナンチオマーへと反応させ、そしてアミノ酸トランスアミナーゼはα−アミノ酸のR−エナンチオマーを選択的にケトンと一緒に反応させることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 還元剤はギ酸の塩であり、NAD(P)+還元酵素はギ酸デヒドロゲナーゼであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
- 還元剤はグルコースであり、NAD(P)+還元酵素はグルコースデヒドロゲナーゼであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
- アミノ酸デヒドロゲナーゼが、ロイシンデヒドロゲナーゼ、アラニンデヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ及びグルタミン酸デヒドロゲナーゼから選択されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
- アミノ酸トランスアミナーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼ及びNAD(P)+還元酵素を組み換えした全細胞触媒の形で使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
- 組み換えした全細胞触媒が細菌、有利には大腸菌細菌であって、アミノ酸トランスアミナーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼ及びNAD(P)還元酵素を過剰発現する細菌であることを特徴とする、請求項7記載の方法。
- ケトンが、ジアルキルケトン、アルキルアリールケトン、アルキルヘテロアリールケトン及びアルキルアラルキルケトンから選択されていて、その際アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基が酵素を阻害しない基で置換されていることができることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
- 反応の開始時にα−アミノ酸の代わりにα−アミノ酸に相当するα−ケトン酸が装入されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
- 反応が6〜9の範囲内にあるpH値で水性反応媒体中で行われることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
- 反応が水相及び有機相からなる二相系中で行われることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
- 反応の開始時に反応させるケトンの一部のみを装入し、反応させるケトンの残りの量をケトンの反応に応じて計量供給することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
- α−アミノ酸及びα−アミノ酸に相当するα−ケト酸の全量が、ケトンの全量に対して1〜50モル%、有利には2〜10モル%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
- NAD(P)+及びNAD(P)Hの全量が、ケトンの全量に対して0.001〜5モル%、有利には0.01〜1モル%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
- 以下の成分:
a)アミノ酸トランスアミナーゼ、
b)アミノ酸トランスアミナーゼの基質であるα−アミノ酸、
c)α−アミノ酸の製造に適したアミノ酸デヒドロゲナーゼ、
d)NAD(P)+及び
e)NAD(P)+を還元剤によりNAD(P)Hに反応させるNAD(P)+還元酵素
を含有する触媒系の、ケトンからエナンチオマー濃縮したアミンを製造するための使用。
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