JP2010522807A - 微多孔膜の形成方法 - Google Patents

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Abstract

ミクロ構造を有する微多孔膜の形成方法が記載される。ドープ配合物と凝固剤配合物とが同時キャストされ、凝固剤配合物が、境界面を通してドープ配合物に拡散し、転相が起こり、ミクロ構造が形成される。

Description

本発明は、微多孔膜の形成方法に関する。
様々な特性を有する微多孔膜が、フィルター、通気性物品、吸収性物品、及び医薬用物品などとして多くの近代製品に使用されている。微多孔膜を製造するには、ドープ層における転相の誘発を含む、多くの方法が知られている。転相を引き起こす条件を操作することで、異なる形態で微多孔膜を生じさせ、それをエンドユーザーの特定の要求に適応させることが可能である。
転相が誘発され得る方法の1つは、ドープ配合物と凝固剤とを接触させることである。微多孔膜の作製方法は、更に、米国特許第6,736,971号(セール(Sale)ら)、同第5,869,174号(ワング(Wang))、同第6,632,850号(ヒューズ(Hughes)ら)、同第4,992,221号(マロン(Malon)ら)、同第6,596,167号(ジ(Ji)ら)、同第5,510,421号(デニス(Dennis)ら)、同第5,476,665号(デニソン(Dennison)ら);及び米国特許出願公開第2003/0209485号、同第2004/0084364号(クールス(Kools))に記載されている。
凝固剤をドープ層に誘導する既知の方法の1つは、蒸気の形態である。これはドープ層を凝固する方法としても既知であり、凝固剤浴槽にドープ層を通過させるものである。浴槽は、通常、ドープ層の内外に拡散する物質に応じて、濃度及び純度が絶えず変化している。
ミクロ構造を有する微多孔膜が記載されている。本開示は、微多孔膜シートの形成方法を記載する。微多孔膜は、ドープ配合物及び第1の凝固剤配合物から形成される。ドープ配合物は、ポリマー材料及び溶媒を含む。第1の凝固剤配合物は、凝固剤及びコーティング補助剤を含む。ドープ配合物及び第1の凝固剤配合物は、多層押出金型を介して同時キャストされる。ドープ配合物層は、凝固剤配合物上にキャストされ、境界面を形成する。ドープ配合物層の第1表面は、境界面と対向して配置される。境界面において、第1の凝固剤配合物の一部がドープ配合物層に拡散し、第1の転相が起こる。第1の転相は、第1の凝固剤配合物における第1の凝固剤がドープ配合物のポリマー材料と接触し、溶媒中のポリマー材料の熱力学的安定性が減少することによって起こる。第1の転相によって、微多孔膜の第1のミクロ構造が形成される。
1つの実施形態では、微多孔膜の第1表面は、蒸気である第2凝固剤と接触する。第2の凝固剤の一部が、ドープ配合物層の第1表面を通して拡散し、第2の転相が起こる。第2の転相によって、微多孔膜の第2のミクロ構造が形成される。
1つの態様では、少なくとも2つのミクロ構造を有する微多孔膜シートの形成方法が記載されている。微多孔膜は、第1の凝固剤配合物及び第2の凝固剤配合物と同時キャストされるドープ配合物から形成される。第2の凝固剤配合物は、第3の凝固剤と第2のコーティング補助剤を含む。ドープ配合物は、第1の凝固剤配合物と第2の凝固剤配合物との間で、多層押出金型によって同時キャストされ得る。第1の境界面は、ドープ配合物と第1の凝固剤配合物との間に形成され、第2の境界面は、ドープ配合物と第2の凝固剤配合物との間に形成される。第1の境界面は、第2の境界面と向かい合っている。第1の凝固剤配合物の一部が、第1の境界面を通してドープ配合物に拡散して第1の転相が起こり、第2の境界面の一部が、第2の境界面を通してドープ配合物に拡散し、第2の転相が起こる。第1の転相及び第2の転相によって、それぞれ微多孔膜の第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造が形成される。第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造は、異なっていても同じであってもよい。
1つの実施形態では、第3の凝固剤及び第2のコーティング補助剤を含む第2の凝固剤配合物は、ドープ配合物及び第1の凝固剤配合物を同時キャストした後、続けてドープ配合物層の第1表面上にキャストされる。
微多孔膜は、一般的に、転相を引き起こす凝固浴にドープ層をさらすことで形成される。本開示では、ドープ配合物並びに凝固剤配合物及び/又は凝固剤は、層として互いに接触し、ミクロ構造をもたらす転相が起こる。配合物を多層押出金型で同時キャストして多層シートを形成することで、ドープ層を凝固剤浴にさらす工程が省かれる。多層押出金型によって、層が個別にコーティングされる複数の工程のコーティング方法におけるコスト及び複雑性が取り除かれる。更に、多層押出金型によって、ウェットオンウェットコーティング法を行うのが難しい可能性がある複数の薄層をコーティングするのが可能となる。薄層を有する多層シートは、多層膜として特定の仕様に合った特定の厚さの層を有するように形成され得る。本開示のコーティング補助剤を有する凝固剤配合物によって、転相の速度を選択し、膜厚内で転相の深さを制御し、膜におけるミクロ構造を選択すること可能となる。
多層押出金型の略図。 図1の細部2を展開した略図。 凝固剤配合物層上にドープ配合物層を有する多層シートの略図。 第1の凝固剤配合物層と第2の凝固剤配合物層との間にドープ層を有する、多層シートの略図。 実施例1のミクロ構造を有する微多孔膜の走査型電子顕微鏡写真。 実施例2の第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造を有する微多孔膜断面図の走査型電子顕微鏡写真。 図6の微多孔膜の走査型電子顕微鏡写真(平面図)。 実施例3の第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造を有する微多孔膜断面図の走査型電子顕微鏡写真。
以下の定義された用語に関して、別の定義が特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において示されない限り、これらの定義が適用される。
用語「ドープ配合物」は、熱力学的に安定なドープ配合物を形成するために、選択された濃度で溶媒中に溶解されたポリマー材料を指す。この溶媒は、ポリマー材料に対して「良溶媒」又は相溶性溶媒と呼ばれる。ドープ配合物は、少なくとも1つの凝固剤配合物と同時キャストするのに好適な粘度を有する。ドープ配合物は、任意でポロゲン(孔形成剤)及び/又は非溶媒を更に含んでよい。
用語「凝固剤配合物」は、液体ポリマー誘起相分離に有用な凝固剤及びコーティング補助剤を指す。凝固剤(つまり、液体)は、ドープ配合物におけるポリマー材料の「非溶媒」であることができる。凝固剤は、一般的にポリマー材料に相溶性が無いものとしてみなしてよい。凝固剤は、ドープ配合物の溶媒中のポリマー材料の熱力学的安定性を低下させる。凝固剤配合物は、ドープ配合物と同時キャストするのに好適な粘度を有する。凝固剤配合物は、任意で2つ以上のコーティング補助剤、及び/又は2つ以上の凝固剤を更に含んでよい。
用語「コーティング補助剤」は、凝固剤配合物中に溶解又は分散される添加剤を指す。ドープ配合物上にキャストするのに十分であるように、凝固剤配合物の粘度を調節するためにコーティング補助剤を加えることが可能である。転相の速度を制御するか、転相の深さを制御するか、又は膜において特定のミクロ構造を形成するために、コーティング補助剤の濃度を選択してよい。
用語「同時キャスト」は、多層シートを形成するために、少なくとも2つ以上の層を互いの層上で形成することを指す。ドープ配合物層及び凝固剤配合物層は、多層押出金型を通してキャストされてよく、ここで配合物層は、金型の出口において直ちに互いに接触する。金型は、配合物の供給速度を制御することで層の厚さを実質的に制御できるように、十分な粘度を有するドープ配合物及び凝固剤配合物を計量するのに使用され得る。
用語「転相」は、均質な系(例えば、ドープ配合物)が2つ以上の相に転換することを指す。例えば、均質なポリマー溶液を、固体ポリマー−濃厚相及び液体ポリマー−希薄相の2相に沈殿させることが可能である。本開示では、例えば、転相はドープ配合物を凝固剤配合物にさらす方法によって起こり、それぞれの配合物は、例えば、シートを形成するために多層押出金型を介して層として同時キャストされるのに十分な粘度を有する。他の転相機構としては、熱誘起転相及び液−液転相が挙げられる。
用語「ミクロ構造」は、多孔質構造を指す。多孔質構造は、非対称又は対称であり得る開口部を含んでよい。例えば、膜は1つを超える多孔質構造を有してよい。多孔質構造は、ポリマー材料の転相によって起こり、ここでポリマー濃厚領域は構造を形成し、ポリマー希薄領域は構造内に開口部を形成し得る。1つを超える多孔質構造を有する膜において、多孔質構造は異なっていても同じであってもよい。多孔質構造の孔は、0.05〜25マイクロメートルの平均直径を有してよい。
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包括される全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5を含む)。
本明細書及び添付の特許請求の範囲に含まれるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について他に明確な指示が無い限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「化合物」を含有する組成物への言及には、2つ以上の化合物の混合物が含まれる。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、用語「又は」は、その内容について他に明確な指示が無い限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
特に指示が無い限り、明細書及び特許請求の範囲に使用されている成分の量、性質の測定値等を表す全ての数は、全ての例において、用語「約」により修飾されていることを理解されたい。したがって、特に指示が無い限り、先行の本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値的パラメータは、本開示の教示を利用して当業者により得ることが求められる所望の性質に応じて変化し得る近似値である。最低でも、特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、少なくとも各数値的パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、通常の四捨五入の適用によって解釈されなければならない。本開示の広範囲で示す数値的範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体例に記載の数値は可能な限り正確に報告する。しかしながら、いずれの数値もそれらの試験測定値のそれぞれにおいて見られる標準偏差から必然的に生じる誤差を本来含有する。
本開示は、微多孔膜シートの形成方法を記載する。
ドープ配合物は、シートを形成するために層としてキャストされ得る。ドープ配合物は、実質的に均質で安定した配合物を形成するために、任意の添加剤(例えば、ポロゲン)を有する溶媒及び/又は非溶媒中に溶解することができるポリマー材料を含む。ドープ配合物は、室温において、目に見える相分離がなく、熱力学的に安定している。
ドープ配合物は、好適な濃度の溶媒及び/又は非溶媒を有する1つ以上の配合物から形成され得る。特定のミクロ構造に対応し、また、膜の一体性を維持するために、ドープ配合物の濃度を変更することができる。ドープ配合物におけるポリマー材料の濃度が低すぎる場合、膜が形成されない恐れがある。濃度が高すぎる場合、望ましくない不規則なミクロ構造が生じる恐れがある。
ドープ配合物におけるポリマー材料の濃度は、膜を作成するのに使用される溶媒、添加剤及び非溶媒に応じて変化し得る。ドープ配合物の溶媒中に溶解するポリマー材料の濃度又は固体パーセントは、多層シートにおける層としてキャストするのに十分な粘度及び/又は表面張力が得られるように選択され得る。濃度は、共押出層の境界面を介して、凝固剤配合物が分散するのに十分であるように選択される。ドープ配合物の溶媒中のポリマー材料の濃度は、10〜25重量パーセントの範囲内であってよい。好ましくは、ポリマー材料の濃度は、10〜20重量パーセントの範囲内である。
ドープ配合物の粘度は、ドープ配合物層として、多層シートにおいて凝固剤配合物層の上にキャストするように選択され得る。粘度は、例えば、基材の移動のようなライン速度において安定した層が形成されるように選択される。同様に、コーティングが確実に均一になるように、配合物の表面張力、一般的なビーズ安定性、他の流体特性が選択されてよい。安定な層を形成することで、ドープ配合物層及び凝固剤配合物層の第1表面において、凝固剤配合物の一部が予測可能に拡散することが促進される。ドープ配合物の粘度を適切に選択することで、均一な厚さのドープ配合物層が作成され、最終的には形成される微多孔シートの厚さが均一となることも促進される。ドープ配合物の粘度は、0.02Pa・s〜4Pa・s(20〜4,000センチポアズ)の範囲内であってよい。好ましくは、ドープ配合物の粘度は、0.025Pa・s〜2Pa・s(25〜2,000センチポアズ)の範囲内であって、より好ましくは、0.025Pa・s〜1Pa・s(25〜1,000センチポアズ)の範囲内である。
多くのポリマー材料が入手可能であり、本開示の膜の形成に使用することが可能である。ポリマー材料又はポリマー材料のブレンドは、ドープ配合物に使用されてもよい。ポリマー材料の例としては、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、酢酸セルロース又は硝酸セルロースなどのセルロースエステル、ポリスチレン、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、アクリルポリマー又はメタクリルポリマーのコポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ドープ配合物は、非晶質、結晶性、非結晶性又は部分的に結晶性であることが可能な溶媒及びポリマーの溶液であることができる。1つの実施形態では、ドープ配合物のポリマー材料は、ポリエーテルイミド(I)である。
Figure 2010522807
更なる実施形態では、ドープ配合物のポリマー材料は、ポリエーテルスルホン(II)である。
Figure 2010522807
ドープ配合物の溶媒は、ポリマー材料を溶解して均質な溶液を提供する。ドープ溶液の溶媒は、任意の非溶媒、つまり、ポリマー材料の溶媒であってよく、任意の添加剤がドープ配合物に存在している。存在する場合、0.05〜5重量パーセントの範囲内の濃度で、非溶媒が配合物に加えられてよい。膜における溶媒の選択は、ドープ配合物が凝固剤配合物に接触する際の、転相速度又はミクロ構造の種類などの特性に影響を及ぼす可能性がある。ドープ配合物における溶媒のいくつかの例としては、水、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、テトラメチル尿素、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル及び他の酢酸アルキル、ジメチルスルホキシド及びこれらの組み合わせが挙げられる。溶媒は、本来オリゴマー又はポリマーであってよく、ポリマー材料とポリマーブレンドを形成する。ドープ配合物の溶媒は、転相のために、2つ以上の溶媒、溶媒のブレンド、又は非溶媒を含んでよい。非溶媒は、ドープ配合物の溶媒とは混和できるが、それ自体はポリマーに不溶性であり、ポリマーの凝固を引き起こし得る材料である。転相速度に影響を及ぼすか、ミクロ構造の作成を助けるために、非溶媒を溶媒に加えてよい。
膜の形成において、キャストのために安定で均質な溶液を提供するために、ドープ配合物における溶媒を選択するのには、ポリマー溶解度の基本原理が関係している。ポリマー溶媒は、良溶媒、非溶媒、及び貧溶媒に分類され得る。良溶媒は、ポリマー分子と溶媒分子との間の相互作用(力)が、1つのポリマー分子とその他のポリマー分子との間の引力よりも強いものである。非溶媒においては、その逆である。貧溶媒は、ポリマーと溶媒との間の相互作用が、1つのポリマーとその他のポリマー分子との間の引力と同じであるものである。
良溶媒は、かなりの量のポリマーを溶解し、少なくとも5重量パーセントの濃度でポリマーに混和し得る一方、貧溶媒は、ポリマーの分子量及び溶媒の型に応じて、混和してもしなくてもよい。
1つの実施形態では、安定で均質なドープ配合物は、最初に、ポリマーを良溶媒(例えば、ポリエーテルスルホンがポリマーである場合、溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノンが使用される)中に溶解することで得ることができる。ポリエーテルスルホンの良溶媒の他の例としては、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、テトラメチル尿素、及びテトラクロロエタンが挙げられる。
ポリマー溶解度に関して溶媒を評価するその他の方法には、ヒルデブランド溶解度パラメータが含まれる。これらのパラメータは、材料の凝集エネルギー密度の平方根により表される溶解度パラメータを指し、(圧力)1/2の単位を有し、(ΔH−RT)1/21/2に等しい。ここで、ΔHは、材料のモル蒸発エンタルピーであり、Rは、普遍気体定数であり、Tは絶対温度であり、Vは溶媒のモル体積である。ヒルデブランド溶解度パラメータは、溶媒に関して、A.F.M.バートン(Barton)著、「溶解度パラメータ及び他の凝集パラメータハンドブック(Handbook of Solubility and Other Cohesion Parameters)第2版」(フロリダ州ボカラトン(Boca Raton)のCRCプレス(CRC Press)編、1991)、モノマー及び代表的なポリマーに関して、J・ブランドラップ及びE.H.インメルグト(J. Brandrup & E. H. Immergut)著、「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)、第4版、VII 675〜714頁」、ニューヨーク州のジョン・ウィリー社(John Wiley)編、1999、)、多くの市販のポリマーに関しては、A.F.M.バートン(Barton)著、「ポリマー−液体相互作用パラメータ及び溶解度パラメータ(Handbook of Polymer -Liquid Interaction Parameters and Solubility Parameters)」(フロリダ州ボカラトン(Boca Raton)のCRCプレス(CRC Press)、1990)に示されている。
凝固剤配合物は、微多孔膜を形成するための多層シートの層としてキャストされ得る。凝固剤配合物は、凝固剤及びコーティング補助剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、凝固剤はコーティング補助剤を含まない。凝固剤は、ドープ配合物のポリマー材料の非溶媒であることができる。
膜は、ドープ配合物と同時キャストされる凝固剤配合物から形成されてよく、転相及びミクロ構造の形成がもたらされる。凝固剤配合物の凝固剤は、配合物が層としてキャストされる際に、ドープ配合物の熱力学的安定性を減少させるように選択される濃度を有する。
凝固剤は、ドープ配合物のポリマー材料の非溶媒であると見なされ、ここでポリマー材料は凝固剤に不溶性である。非溶媒として、凝固剤分子とポリマー材料のポリマー鎖との間の引力は、ポリマー材料の1つのポリマー鎖と同じポリマー材料の別のポリマー鎖との間の引力より少ない。凝固剤は、ドープ配合物の溶媒中で溶解度が限られていてよい。膜形成中、ドープ配合物の溶媒は、凝固剤と混和されるのが好ましい。
凝固剤配合物の凝固剤の例としては、水、アルコール、エーテル、オリゴアルキレンオキシド、ポリアルキレンオキシド及びこれらのエーテルが挙げられる。凝固剤配合物の凝固剤として好適な特に有用な化合物群は、一般式(III)のオリゴアルキレンオキシドである。
−(OR−OR (III)
式中、xは1〜25であって;R、Rは、H又はC2n+1であり、ここでn=1〜5であって、RはC2nである(n=1〜8)。R及びRは同じであっても異なっていてもよい。
ドープ配合物のポリマー材料(例えば、ポリエーテルスルホン)の非溶媒としての凝固剤の更なる例としては、2−メトキシエタノール、プロピオン酸、t−アミルアルコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、へキサノール、ヘプタノール、オクタノール、酢酸、メチエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸アミル、グリセロール、ジエチレングリコールジブチルエーテル、及び水が挙げられる。凝固剤の濃度は、ドープ配合物のポリマー材料及び溶媒によって、及び膜の調製における加工条件によって決定され得る。1つの実施形態では、ポリエーテルスルホンにおける凝固剤配合物の凝固剤は水である。
凝固剤配合物は、ドープ配合物層と共に形成される第1表面を介して凝固剤配合物の一部が拡散するのに十分な粘度を有することができる。凝固剤配合物の粘度は、ドープ配合物層上にキャストされる際、凝固剤配合物層として均一な厚さを提供するために、コーティング補助剤を添加することで調節され得る。考えられる他のコーティング配合物特性としては、表面張力、一般的なビーズ安定性及び層のコーティングの均一性に影響を及ぼすように選択され得る他の配合物特性などが挙げられる。表面張力、界面安定性、湿潤性、及び寸法安定性に影響を及ぼし得る界面活性剤などのコーティング補助剤以外の材料を加えてよい。コーティング補助剤を有する凝固剤配合物の粘度は、0.02Pa・s〜4Pa・s(20〜4,000センチポアズ)の範囲内であってよい。好ましくは、凝固剤配合物の粘度は、0.025Pa・s〜2Pa・s(25〜2,000センチポアズ)の範囲内であって、より好ましくは、0.025Pa・s〜1Pa・s(25〜1,000センチポアズ)の範囲内である。コーティング補助剤のいくつかの例としては、ポリ(エチレングリコール)、多価化合物、ポリエーテル及びこれらの組み合わせが挙げられる。凝固剤配合物のコーティング補助剤の濃度は、20〜95重量パーセントの範囲である。好ましくは、コーティング補助剤の濃度は、25〜90重量パーセントの範囲内である。1つの実施形態では、凝固剤配合物における凝固剤補助剤は、ポリ(エチレングリコール)である。
コーティング補助剤は、ドープ配合物層のポリマー材料及び/又は溶媒と相溶性があってよい。層としてキャストするために、コーティング補助剤を凝固剤配合物に加え、凝固剤の粘度を調節してもよい。凝固剤配合物の一部がドープ配合物層と凝固剤配合物層のキャスト表面を介して拡散するのに十分な濃度で、凝固剤配合物のコーティング補助剤を加えてよい。1つの実施形態では、凝固剤配合物は、水及びポリ(エチレングリコール)を含む。
1つの実施形態では、凝固剤はコーティング補助剤と共に均質な溶液を形成し得る。ドープ配合物と接触する際、凝固剤配合物はドープ配合物層中に拡散してポリマー材料を凝固して転相を引き起こし、それによってドープ配合物の溶媒におけるポリマー材料の熱力学的安定性を変化させる。溶媒中のポリマー材料が熱力学的に変化している間に、ポリマー濃厚領域及びポリマー希薄領域が形成され得る。ポリマー濃厚領域は連続構造を形成し、ポリマー材料希薄領域は孔を形成し、ミクロ構造がもたらされる。
1つの実施形態では、コーティング補助剤は、転相の速度(動力学)を制御して膜を形成するために、選択された濃度で凝固剤配合物に加えられてよい。転相の動力学は、ドープ配合物及び凝固剤配合物の加工条件及び構成成分によって変化し得る。
1つの実施形態では、所定の深さの膜の厚さでドープ配合物と接触する際に、転相を起こすために選択された濃度でコーティング補助剤を凝固剤配合物に加えてよい。膜の厚さは、z−方向に伸びている。転相の深さは、ドープ配合物及び凝固剤配合物の加工条件及び型によって変化し得る。ミクロ構造をもたらす転相の深さは、膜の厚さの5〜100パーセントの範囲内であってよい。より好ましくは、転相の深さは、5〜75パーセントの範囲内であって、最も好ましくは10〜60パーセントの範囲内であってよい。
1つの実施形態では、凝固剤配合物のコーティング補助剤の濃度は、ドープ配合物層との接触の際に、転相が起こり、ミクロ構造が画定されるように選択される。凝固剤配合物層及びドープ配合物層を好適に選択することで、特定の孔径分布及び孔隙率がもたらされ得る。例えば、向かい合う2つの異なる凝固剤配合物と接触するポリエーテルスルホンドープ配合物の転相によって形成される膜によって、第1表面上に連続気泡性の多孔質ミクロ構造を有する第1のミクロ構造、及び第2表面上にz−方向に延伸する相互に連結した平行に伸びた孔を有する第2のミクロ構造がもたらされる。膜内の複数のミクロ構造は、マルチゾーン膜と呼ばれ、濾過に適用される際に高処理量及び高流量を提供することができる。
他の実施形態では、ポロゲンがドープ配合物の添加剤であってよい。膜内に選択されたミクロ構造を提供するか、又は、膜内での転相速度を制御するために、ポロゲンを加えてよい。ポロゲンのいくつかの例としては、ポリ(エチレングリコール)、多価化合物、ポリエーテル及びこれらの組み合わせが挙げられる。
微多孔膜を形成するための同時キャスト層において、ドープ配合物及び凝固剤配合物の構成成分の選択が上述されている。本開示において、転相を誘起するために凝固剤浴を用いないことで、従来の加工による膜の形成のための高価な後続加工が省かれる。転相の速度を制御するか、多層シートの転相の深さを制御するか、又は膜において特定のミクロ構造を導くために、ドープ配合物及び凝固剤配合物中の溶媒、非溶媒、ポリマー材料、及び添加剤の濃度を調整してよい。
コーティング厚さに対応が可能である、例えば、多層押出金型からのドープ配合物及び凝固剤配合物の流速を測定することで、ドープ配合物層における転相の深さが制御され得る。バックアップロール又は仮支持体上の多層シートとしてドープ配合物及び凝固剤配合物を沈積させる前に、凝固剤配合物にキャストするドープ配合物層の特定表面を選択することができる。当該技術分野に記載の他の方法では、ドープ層を凝固させるのに使用される凝固剤浴槽は、連続的に濾過されるか、連続的な溶媒交換方法の見地から、新たな凝固剤が補給されるべきである。
ドープ配合物のポリマー材料の濃度及び凝固剤配合物のコーティング補助剤の濃度は、バックアップロール又は仮支持体を有さないか、又は有する配合物をキャストするのに好適な配合物粘度を提供するために選択され得る。ドープ配合物及び凝固剤配合物の濃度又は固体レベルは、ドープ配合物及び凝固剤配合物をキャストするのに十分な粘度を維持し、層間の境界面において転相が続くように選択され得る。同時キャスト及び転相に必要な適切な範囲を超える粘度は、孔隙率が非常に小さい膜を形成する恐れがあり、また、固体量が少な過ぎると配合物の粘度が低くなり、膜構造が実現不可能となる恐れがある。
多層シートを形成することができる多層押出金型200の略断面図を図1に示す。多層押出金型200は、バックアップロール240と隣接して配置される押出ヘッド220を備えている。バックアップロール240は、押出ヘッド220から押し出された層を受け入れる回転可能なロールである。いくつかの実施形態では、バックアップロール240によって、微多孔膜の形成が進むにつれて、共押出層(つまり、シート)を支持するためのライナー260が任意で支持されてよい。
図1の押出ヘッド220は、ドープ配合物と凝固剤配合物とを共押出する経路として提供される押出スロットで終わるドープ配合物空隙320及び凝固剤配合物空隙300、340を備えている。押出スロットの寸法は、金型バー間に必要な厚さの精密な金型シムを配置することで都合良く達成され得る。本開示の方法を実行する際に、ドープ配合物は空隙320に誘導され、続けてドープ配合物層を形成する。同様に、凝固剤配合物は空隙300及び/又は340に誘導され、続けて、ドープ配合物層の1つ以上の表面上に凝固剤配合物層を形成する。
図2において、図1の細部2の拡大図が示されている。詳細部2では、ドープ配合物及び/又は凝固剤配合物は図1の押出ヘッド220から押し出され、特に、ドープ配合物321及び第1の凝固剤配合物301及び第2の凝固剤配合物341を作製する空隙300、320、340から伸びる押出スロットから押し出される。図2では、ドープ配合物321並びに第1の凝固剤配合物301及び第2の凝固剤配合物341は、回転するバックアップロール240と接触することで、離れていく。
多層押出金型200は、シートに流入する円筒パイプを成形する物品の形態を制御する。配合物の測定は、例えば、圧力ポット、ヘッドボックス又は遠心ポンプのいずれかを備えるスロット金型を供給する定圧溶液処理システムのような自己測定式、若しくは、例えば、多層シートのキャスト幅及びキャスト速度に関して、金型空隙への配合物の流量を測定する容積流量シリンジポンプのような前測定式のいずれかを用いることが可能であり、それによって、所望の所定値で非圧縮性液体シートの秤量を安定化することができる。
2層シート5の形成方法には、図3に示される層のように、ドープ配合物と凝固剤配合物とを同時キャストする工程が含まれる。ドープ配合物30と凝固剤配合物40とを互いに接触させることで、境界面20が形成される。ドープ配合物の第1表面10は、2層シート5のキャストドープ30と凝固剤配合物層40との間に形成される境界面20の反対側に配置される。ドープ配合物と凝固剤配合物とを同時キャストすることで、凝固剤配合物の一部が境界面20を通してドープ配合物に拡散し、転相が起こる。配合物におけるポリマー材料の転相によって、第1のミクロ構造がもたらされる。
層厚は、多層押出金型の形状だけではなく、ドープ配合物及び凝固剤配合物の流量及び粘度によって変化する。凝固剤として蒸気を導入することで、2層シート5の第1表面10で連続して転相が起こり得る。
転相で誘起される蒸気相(つまり、真空キャスト)は、一般的に、転相を誘起するための凝固剤(例えば、水蒸気)を含んでいる。蒸気として、凝固剤をドープ配合物のポリマー材料に誘導することが可能である。蒸気が高濃度であると、液化して、溶媒中に溶解されるポリマー材料の熱力学的安定性が削減される恐れがある。液体誘起相分離と同様に、ポリマー濃厚領域及びポリマー希薄領域は、ミクロ構造の形成をもたらす蒸気誘起転相から形成される。蒸気誘起相分離における凝固剤の例としては、水、アルコール、アミド及びこれらの組み合わせが挙げられる。
1つの実施形態では、ドープ配合物及び凝固剤配合物の多層は、図4に示されるように、3層シート100を形成するシートとしてキャストされてよい。図4は、ドープ配合物層30、並びに第1の凝固剤配合物層40及び第2の凝固剤配合物層50を有する3層シート100を示している。第1の凝固剤配合物及び第2の凝固剤配合物の凝固剤は、液体であってよい。ドープ層及び凝固剤層の厚さは、ドープ配合物及び凝固剤配合物の粘度及び流量、並びに多層押出金型の形状に依存し得る。境界面70は、ドープ配合物層30が第1の凝固剤配合物層40上にキャストされる際に形成され得る。3層シート100の第1表面60は、ドープ配合物層30が第2の凝固剤配合物層50上にキャストされる際に形成され得る。境界面70において、第1の凝固剤配合物層40及びドープ配合物層30によって、第1の凝固剤配合物層40の一部がドープ配合物層30に流入し、拡散することで、第1の転相が起こる。第1表面60において、第2の凝固剤配合物50及びドープ配合物30によって、第2の凝固剤配合物層50の一部がドープ配合物層30に流入し、拡散することで、第2の転相が起こる。
ドープ配合物層の第1表面及び第2表面における転相は、第1の凝固剤層及び第2の凝固剤層が、それぞれドープ配合物層の向かい合う表面に配置される際に起こり得る。その結果起こる第1表面及び第2表面における転相によって、第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造が形成される。ミクロ構造の形態及び深さは、1つを超えるミクロ構造を有する膜と異なっていても同じであってもよい。膜のミクロ構造を選択することで、ドープ配合物及び凝固剤配合物の構成成分の濃度及び選択、並びに加工条件によって更に選択され得る。1つの実施形態では、ドープ配合物及び凝固剤配合物は、室温において同時キャストされてよい。
1つの実施形態では、ドープ配合物及び凝固剤配合物は、図1の多層押出金型200によって、同時キャストされてよい。多層押出金型200は、シートを形成するための層としてドープ配合物及び凝固剤配合物をキャストすることが可能であり、ここで層は、長手方向又はx方向に実質的に直線である。
転相方法は、図1及び図2に示されるように、凝固剤配合物及びドープ配合物が押出ヘッド220から出た後で、凝固剤配合物層の一部がドープ配合物層に拡散することで開始し得る。方法には、図1の多層押出金型200を使用して、多層シートを成形するために、選択された粘度を有するドープ配合物及び凝固剤配合物を測定する工程が含まれ、ここで、ドープ配合物層及び凝固剤配合物層は、部分的又は完全に凝固して微多孔膜を形成する。
表面においてドープ配合物と凝固剤配合物が接触し、凝固剤配合物の一部がドープ配合物に拡散することで、ドープ配合物のポリマー材料が熱力学的に不安定になる恐れがある。ポリマー材料は、ドープ配合物の溶媒から沈殿してミクロ構造を形成することが可能である。転相中、ドープ配合物層領域はポリマー材料が濃厚であり、構造を形成し、いくつかの領域はポリマー材料が希薄であり、孔を形成する。膜は更に、ミクロ構造の形成後、溶媒が除去され、続けて乾燥される。膜において効果的な孔径は、0.05〜50マイクロメートルの範囲内であってよい。孔径は、転相中に形成されるミクロ構造内の開口部の直径を指す。孔径は、実施例の項で記載される沸点圧法によって測定され得る。他の孔径及び孔径分布測定方法には、溶質保持、及び流量/圧力法が挙げられる。溶媒転相法は、キーティング(Keating)著、「合成ポリマー膜における構造的展望(Synthetic Polymeric Membranes, A Structural Perspective)第2版」(ジョン・ウィリー・アンド・ソンズ(John Wiley and Sons)編、(1995)で開示されている。
本開示における転相には、ドープ配合物層及び凝固剤配合物層を液−液ポリマー表面を介して拡散させる工程を含んでよい。凝固剤配合物層の一部が、ドープ配合物層内に拡散する。凝固剤配合物における凝固剤は、ドープ配合物の溶媒及び/又はドープ配合物層内に凝固剤が移動及び拡散するのを促進するために、他の添加剤と熱力学的に相溶性があってよい。凝固剤は、一般的にはドープ層のポリマー材料とは相溶性がなく、溶媒中のポリマー材料の溶解力又は相溶性を減少させる可能性がある。不安定であることで、ポリマー材料の転相がもたらされ、ミクロ構造の形成が引き起こされる。
膜のミクロ構造は、膜の厚さ又はz方向に非対称又は対称である孔を有することができる。ミクロ構造の数は、使用されるドープ配合物及び凝固剤配合物、並びに加工パラメータによって決まり得る。第1のミクロ構造は、第2のミクロ構造と同じであっても異なっていてもよい。第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造は、膜への連続的又は非連続的な経路を提供し得る。ミクロ構造の形成は、ドープ配合物及び凝固剤配合物におけるいくつかの構成成分(例えば、ポリマー材料、凝固剤、コーティング補助剤)の濃度によって決まり得る。ミクロ構造の形態は、更に、ドープ配合物及び凝固剤配合物の測定(例えば、層厚)及び/又は転相速度によって決まり得る。ミクロ構造の形態は、転相機構、並びに関連する圧力及び温度加工条件によっても決まり得る。
広くは、ミクロ構造の孔は、連続気泡及び/又は独立気泡であってよい。膜の第1面は、比較的に小さな直径の孔であってもよく、第2面又は第1面と向かい合う面は、比較的に大きな直径の孔であってもよい。膜における第1面に対する第2面の孔径は、10:1〜100:1の範囲内であってもよい。
対称性及び膜の孔径を評価する簡単な方法は、走査電子顕微鏡(SEM)の使用である。実施例1の図5は、一般的に対称な孔構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。孔は、0.05〜25マイクロメートルの平均直径を有してもよい。好ましくは、孔径は、0.5〜10マイクロメートルの範囲であってもよい。1つの実施形態では、ミクロ構造の孔は、一般的に対称な形態を有している。
実施例2の図6は、第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造を有する膜を示す走査型電子顕微鏡写真である。膜は、x方向に伸びる第1面及び第2面を含む孔構造を有する。第1面は、多層液体誘起相分離によって形成されるz方向に伸びる平行に伸びた円筒形の孔を有する。第2面は、蒸気誘起相分離から形成される楕円形の孔を有する第2のミクロ構造を有する。実施例2の図7は、膜の第1面の表面走査図(平面図)を示している。ドープ配合物は、ドープ配合物の異なる面上に異なる凝固剤配合物を有してよく、転相が起こり、面上に同じか又は異なるミクロ構造が形成され得る。
1つの実施形態では、物品は、x方向に伸びる第1面及び第2面を含む孔構造を有している。第1面は第1のミクロ構造を有し、第2面は第2のミクロ構造を有する。第1面及び第2面は、第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造よって相互に連結されている。
実施例3の図8は、第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造を有する膜を示す走査型電子顕微鏡写真である。実施例3のドープ配合物層は、ポロゲンを含有し、第1の凝固剤配合物層は、コーティング補助剤を含んでいた。多層液体誘起相分離によってz方向に形成される第1のミクロ構造の深さは、膜厚の5〜95パーセントの範囲内である。蒸気誘起相分離によってz方向に形成される第2のミクロ構造の深さは、膜厚の5〜95パーセントの範囲内である。
膜の厚さは、キャストの際のドープ配合物層及び凝固剤配合物層の厚さによって決まり、続いて溶媒が除去され、その後に乾燥される。膜の厚さは、20〜200マイクロメートルの範囲内であってもよく、より好ましくは40〜150マイクロメートルの範囲内であってもよい。最も好ましくは、膜の厚さは、50〜100マイクロメートルの範囲内である。
1つの実施形態では、微多孔膜は、第1の凝固剤配合物と及び第2の凝固剤配合物との間でドープ配合物を同時キャストすることで形成され得る。多層誘起相分離によって形成される第1のミクロ構造の深さは、膜厚の5〜95パーセントの範囲内である。多層誘起相分離によって形成される第2のミクロ構造の深さは、膜厚の5〜95パーセントの範囲内である。
1つの実施形態では、多層誘起相分離及び蒸気誘起相分離によってそれぞれが形成される第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造を有する微多孔膜は、異なる第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造を有する。
1つの実施形態では、多層誘起相分離によって形成される第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造を有する微多孔膜は、異なる第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造を有する。
1つの実施形態では、少なくとも2つのドープ配合物及び少なくとも2つの凝固剤配合物が同時にキャストされ、更に任意で蒸気の凝固剤を含み、マルチゾーン微多孔膜を形成する。
これは、複数の領域又はミクロ構造を含む複数のドープ層及び凝固剤層を有するマルチゾーン微多孔膜を形成することが可能なものであると認識されるであろう。
濾過における使用、強化接着剤、及び薬物送達における手段などでの用途が想定され得る。方法の有用性は、精密濾過及び限外濾過における用途に有用な多孔性膜を形成する能力にある。
以下の実施例によって、本発明は更に明確にされるが、これらの実施例は代表的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
本発明は、本発明の範囲内の多数の修正例及び変更例が当業者にとって明らかであるために、例証のみを意図する以下の実施例に更に詳しく記載されている。特に言及されない限り、次の実施例で報告される全ての部、百分率、及び比率は、重量を基準としており、実施例で使用される全ての試薬は、下記の化学薬品供給元から得られたか又は入手でき、あるいは従来の技術により合成されてよい。
沸点圧(BPP)−ASTM規格E−128−99(2005)直径47mmの事前に湿潤された微多孔膜におけるBPP測定値を記録した。
水の流速(WFR)−微多孔膜におけるWFR測定値を記録した。イソプロパノール及び脱イオン水で膜を事前に湿潤した。減圧下(59cm(Hg))で、脱イオン水が微多孔膜を通過するのに必要とした時間を測定し、記録した。WFR法は、米国特許第7,125,603号及び同第6,878,419号(メカラ(Mekala)ら)に更に記載されている。
表面処理−膜のプラズマ処理には、OとCとの混合物を5分間プラズマ状態に曝露することで、表面をエッチングする工程を含んでいた。ポリマー表面のエッチングにおける既知の方法は、K.C.クルベ(Khulbe)ら著、「ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス(Journal of Membrane Science)」(第171巻、273〜284頁、(2000)及び、C.J.M.バウアー(Bauer)ら著、「ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス(Journal of Membrane Science)」(第57巻、307〜320頁、(1991)に記載されている。
(実施例1)
シリンジポンプ(PHD 2000モデル;マサチューセッツ州ホリストン(Holliston)のハーバードアパレイタス社(Harvard Apparatus))によって、ドープ配合物及び凝固剤配合物を図1の多層押出金型(米国特許出願公開第2007/0128425号)に供給し、ここでシリンジポンプは、5〜40mL/分の範囲の体積流量で多層押出金型の空隙に供給されるドープ配合物及び凝固剤配合物を計量するのに使用した。
多層押出金型から多層シートを共押出し、周りにコロナ処理されたポリエステル裏打ちフィルム(20〜50マイクロメートルの厚さ)が搬送されるバックアップロールに移送した。150cm/分のライン速度で裏打ちを進行させた。
1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis)のシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社)中に溶解する15重量%のポリエーテルアミド(PEI)(メルトフローインデックス=9g/10分、ミズーリ州セントルイス(St. Louis)のシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社)であるドープ配合物を多層押出金型の中央スロットに16mL/分の速度で供給し;コーティング補助剤として90重量パーセントのポリエチレングリコール(PEG−400)(分子量=400g/モル、ミズーリ州セントルイス(St. Louis)のシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社)を有する凝固剤配合物、及び凝固剤として10重量パーセントの水を多層押出金型の隣接するスロットの1つに供給した。凝固剤配合物の粘度は、0.07Pa・s(70センチポアズ)であった。ドープ配合物及び凝固剤配合物を多層押出金型を通して互いの上で層としてキャストして境界面を形成し、多層押出金型とバックアップロールとの間に約500マイクロメートルのギャップを有して2層コーティングを開始した。
多層誘起転相の結果を図5に示される断面SEMで示す。特に、生じた微多孔膜は、独立気泡と約1〜2マイクロメートルの直径の孔径との混合物によって特徴化することができる。膜の形態は、一般的に、膜の一面から他の面まで対称に伸びている。
(実施例2)
シリンジポンプ(PHD 2000モデル;マサチューセッツ州ホリストン(Holliston)のハーバードアパレイタス社(Harvard Apparatus))によって、ドープ配合物及び第1の凝固剤配合物を図1の多層押出金型(米国特許出願公開第2007/0128425号)に供給し、ここでシリンジポンプは、5〜40mL/分の範囲の体積流量で多層押出金型の空隙に供給されるドープ配合物及び第1の凝固剤配合物を計量するのに使用した。
多層押出金型から多層シートを押出し、周りにコロナ処理されたポリエステル裏打ちフィルム(20〜50マイクロメートルの厚さ)が搬送されるバックアップロールに移送した。150cm/分のライン速度で裏打ちを進行させた。
1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis)のシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社)中に溶解する13重量%のポリエーテルアミド(PEI)(メルトフローインデックス=9g/10分、ミズーリ州セントルイス(St. Louis)のシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社)であるドープ配合物をコーティング金型の中央スロットに16mL/分の速度で供給し;コーティング補助剤として80重量パーセントのポリエチレングリコール(PEG−400)(分子量=400g/モル、ミズーリ州セントルイス(St. Louis)のシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社)を有する第1の凝固剤配合物、及び凝固剤として20重量パーセントの水を多層押出金型の隣接するスロットの1つに供給した。凝固剤配合物の粘度は、0.054Pa・s(54センチポアズ)であった。ドープ配合物及び第1の凝固剤配合物を多層押出金型を通して互いの上で層としてキャストし、境界面を形成した。ドープ配合物層の第1表面は、ドープ配合物層及び凝固剤配合物から形成される境界面と対向していた。多層押出金型とバックアップロールとの間に約500マイクロメートルのギャップを有して2層コーティングを開始した。
第1のミクロ構造を有する多層膜の第1表面で、蒸気として凝固剤を有する第2の凝固剤を誘導し、蒸気誘起相分離を引き起こした。ドープ配合物層及び第1の凝固剤配合物層を上述のようにキャストし、液体ポリマー誘起相分離に続いて、8メートルの長さの乾燥炉内における蒸気の噴射によって生成した水蒸気に膜の第1表面を曝露させた。蒸気の噴射によって、約50〜60%の相対湿度を維持した。使用された炉のパラメータを表1に列挙する。
Figure 2010522807
マルチゾーン微多孔膜からの結果を、図6に示される断面SEM及び図7の平面図で示す。特に、生じた微多孔膜は、独立気泡と約1〜2マイクロメートルの孔径との混合物によって特徴化される。液体誘起転相の第1領域は、約32マイクロメートル(z方向における膜厚の約50パーセント)の厚さを有する、多孔質な細長い空隙に代表される形態を有している。蒸気誘起転相の第2領域は、約35マイクロメートル(z方向における膜厚の約50パーセント)の厚さを有する、スポンジ状の構造を有している。第1領域及び第2領域の孔は、領域にわたって異なる孔構造と内部連結しているように見える。
膜は、約20.8psiの濾過特性(BPP)を有していた。WFR試験の結果、表面処理をしなければ流入はもたらされず、WFRは両面エッチングにおいて数分であった。
(実施例3)
実施例2と同じ装置配列を使用して、多層押出金型にドープ配合物及び第1の凝固剤配合物を供給した。
ポロゲン(孔形成剤)として、1−メチル−2−ピロリジノン(30重量パーセント)(NMP)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis)のシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社)/ポリエチレングリコール(70重量パーセント)(PEG−400)(分子量=400g/モル;ミズーリ州セントルイス(St. Louis)のシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社)の混合物中に溶解する13重量%のポリエーテルスルホン(PES)(分子量=60,000g/モル未満、ソルベイ(Solvay)、ジョージア州アルファレッタ(Alpharetta))であるドープ配合物をコーティング金型の中央スロットに供給した。ドープ配合物の粘度は、3.4Pa・s(3,400センチポアズ)であった。ドープ配合物の流速は、20mL/分であった。多層押出金型の隣接するスロットのうちに1つに、10mL/分の流速で凝固剤配合物を供給した。多層押出金型とバックアップロールとの間に約500マイクロメートルのギャップを有して2層コーティングを開始した。
実施例2と同じ方法で、第2の凝固剤を使用した。
マルチゾーン微多孔膜の形成による結果を図8で示す。特に、生じた微多孔膜は、約0.6〜1マイクロメートルの孔径分布を有する連続気泡の形態を有していた。液体誘起転相の第1領域は、多孔質な細長い空隙、及び約75マイクロメートルの厚さを有し、スポンジ状の構造を有する蒸気誘起相分離を引き起こす第2の孔領域は、約25マイクロメートルの厚さを有していた。
表面処理が無い場合、WFRは2分であり、膜の両面のエッチング後のWFRは18秒であった。
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく本発明の様々な修正形態及び変更形態が、当業者には、明らかとなろう。また、本発明は、本明細書に記載した例示的な要素に限定されないことが理解されるべきである。

Claims (22)

  1. ミクロ構造を有する微多孔膜シートの形成方法であって、
    a)ポリマー材料及び溶媒を含むドープ配合物を提供する工程と、
    b)第1の凝固剤及び第1のコーティング補助剤を含む第1の凝固剤配合物を提供する工程、及び
    c)前記第1の凝固剤配合物と前記ドープ配合物との間に境界面を形成する条件下において、第1表面を有するドープ配合物層及び第1の凝固剤配合物層を同時キャストする工程、を含み、
    前記境界面が、前記ドープ配合物層の前記第1表面と向かい合っており、
    前記第1の凝固剤配合物の一部が、前記境界面を通して前記ドープ配合物に拡散して第1の転相が起こり、それによって第1のミクロ構造を有する膜が形成される、方法。
  2. 前記第1表面と蒸気である第2の凝固剤とを接触させる工程を更に含み、前記第2の凝固剤が、前記第1表面を介して前記ドープ配合物に拡散して第2の転相が起こり、それによって第2のミクロ構造が形成される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1のミクロ構造が、前記第2のミクロ構造とは異なる、請求項2に記載の方法。
  4. 前記第1のミクロ構造の深さが、膜厚の5〜95パーセントの範囲内である、請求項2に記載の方法によって形成される微多孔膜シート。
  5. 前記第2のミクロ構造の深さが、膜厚の5〜95パーセントの範囲内である、請求項2に記載の方法によって形成される微多孔膜シート。
  6. 第2の凝固剤配合物を更に含み、前記第2の凝固剤配合物が、第3の凝固剤及び第2のコーティング補助剤を含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記第2の凝固剤配合物が、前記ドープ配合物及び前記第1の凝固剤配合物と同時キャストされ、前記第2の凝固剤配合物が、前記ドープ配合物層の前記第1表面上でキャストされ、前記第2の凝固剤配合物の一部が、前記ドープ配合物に拡散して第2の転相が起こり、それによって第2のミクロ構造が形成される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記第2の凝固剤配合物が、前記ドープ配合物層の前記第1表面上で続けてキャストされる、請求項6に記載の方法。
  9. 溶媒を除去する工程、及び膜を乾燥する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  10. 前記方法が、凝固浴を用いずに行われる、請求項1に記載の方法。
  11. 少なくとも2つのドープ配合物及び少なくとも2つの凝固剤配合物を含む、請求項1に記載の方法。
  12. 前記ポリマー材料が、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ナイロン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  13. 前記溶媒が、水、アミド、アルコール、脂肪族アルコール及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  14. 前記ドープ配合物の前記ポリマー材料の濃度が、10〜25重量パーセントの範囲内である、請求項1に記載の方法。
  15. 前記第1のコーティング補助剤が、ポリ(エチレングリコール)、ポリエーテル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  16. 前記第1のコーティング補助剤の濃度が、20〜95重量パーセントの範囲内である、請求項1に記載の方法。
  17. 前記同時キャストが、多層押出金型によって達成される、請求項1に記載の方法。
  18. 前記ドープ配合物が、0.02Pa・s〜4Pa・s(20〜4,000センチポアズ)の範囲内の粘度を有する、請求項1に記載の方法。
  19. 前記第1の凝固剤配合物が、0.02Pa・s〜4Pa・s(20〜4,000センチポアズ)の範囲内の粘度を有する、請求項1に記載の方法。
  20. 対向する第1表面及び第2表面を有し、2つの多孔性のミクロ構造を有することで特徴化されるポリマー膜であって、第1のミクロ構造が、前記第1表面に最も近く、厚さ方向に伸びる平行に伸びた円筒形の孔を含み、第2のミクロ構造が、前記第2表面に最も近く、楕円形の孔を含み、前記第1のミクロ構造及び第2のミクロ構造の一部が、それぞれ第1表面及び第2表面において開放されている、ポリマー膜シート。
  21. 前記第1のミクロ構造の深さが、厚さ方向の5〜95パーセントの範囲内である、請求項20に記載のポリマー膜シート。
  22. 前記第2のミクロ構造の深さが、厚さ方向の5〜95パーセントの範囲内である、請求項20に記載のポリマー膜シート。
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