JP2010516543A - 補助ブレーキの冷却制御方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、車両の補助ブレーキの冷却制御方法に関し、前記補助ブレーキは冷却要素により冷却される。本方法は、車両が坂を下り走行しているか、あるいは下り坂に差し掛かる直前なのかを判定するステップと、少なくとも1つの所定の下り坂状態が判定された場合、前記補助ブレーキを冷却するために前記冷却要素を自動的に作動させるステップとを含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、流体式リターダなどの補助ブレーキの冷却を制御する方法に関する。
車両の常用ブレーキを補完するものとして、車両に複数の補助ブレーキを搭載することは既知である。補助ブレーキは、特に、長い下り坂の運転時など、一定の適正速度の維持にブレーキが必要となる場合に、車両の常用ブレーキの消耗を抑えることを主な目的として、重車両に主に用いられている。補助ブレーキを用いると、常用ブレーキを新しい状態に保つことができるので、実際に車両を急遽減速しなければならないとき、常用ブレーキは最大の制動力を発揮することができる。通常、常用ブレーキは、車両の全車輪に搭載されているということも一要因として、補助ブレーキよりもはるかに強力な制動作用を発揮する。一方、補助ブレーキは通常、駆動輪にのみ作用する。
重車両に用いられる補助ブレーキには、主に2種類がある。メインギヤボックス前方に設置されている補助ブレーキは、一次補助ブレーキと称される。この一次補助ブレーキによりもたらされる制動力は、エンジン速度に依存するので、一次補助ブレーキを用いるときはいつでも、エンジン速度を比較的高速に維持することが有利である。
もう一方の種類である二次補助ブレーキは、車両のメインギヤボックスの若干後方に設置されている。二次補助ブレーキによりもたらされる制動力は、この補助ブレーキがギヤボックスの出力軸上に搭載されるため、車両の速度に依存し、よって駆動輪の回転速度に比例する。二次補助ブレーキの効率を高めるためには、補助ブレーキの回転速度が上昇するギヤ比を有するギヤであると良い。
重車両に一般的に用いられる補助ブレーキは、リターダである。リターダは通常、流体式リターダ、あるいは電磁式リターダである。かかるリターダは、一次補助ブレーキにも、二次補助ブレーキにもなり得る。
リターダを用いる場合には、ブレーキエネルギーを熱に変換し、ここで発生した熱を何らかの方法で放散させる必要がある。現代の車両において、リターダは流体冷却型の流体式リターダであることが多い。このリターダの作動油は、車両のラジエータ装置に接続された熱交換器を通して導かれる。リターダにはこのように、エンジンと同じラジエータ及び冷却システムを用いる。これは、車両の部品の節約や軽量化に有利である。また、リターダ専用のラジエータを用いても良い。
リターダ及びエンジン用に複合冷却システムを用いる利点の1つとして、エンジンが大量の熱を生じていない場合、例えば、車両が下り坂を進む場合などに、冷却システムの全容量をリターダの冷却に用いることができることが挙げられる。これにより、リターダの性能が高まる。加えて、冷却ファンは通常、冷却システム内に搭載されており、冷却流体サーモスタットの管轄下にある。このため、冷却ファンは、冷却流体が所定の温度に達すると始動し、それによってより多くの空気をラジエータに通すことで冷却能力を向上させる。
しかしながら、リターダを広範囲に用いるとき、従来技術による冷却システムでは対処できない、より大きな冷却能力が必要となる場合及び/又は迅速に冷却能力を向上させることが必要となる場合もある。このような状況は、例えば、ある一定の勾配の坂を長時間下り走行し、リターダをより長時間使用する場合などに生じ得る。
そこで、本発明の目的は、車両に搭載される補助ブレーキの冷却制御を改良する方法を提供することである。
本目的は、請求項1に係る方法により実現される。
本発明に係る方法は、
a)車両が下り坂走行中であるか、あるいは下り坂に差し掛かる直前なのかを判定するステップと、
b)少なくとも1つの所定の下り坂状態が判定された場合、補助ブレーキを冷却するために冷却要素を自動的に作動させるステップとを含む。上述の下り坂状態としては、坂の勾配が所定の範囲内にあると判定されていることが含まれており、補助ブレーキの長時間使用が予想されると、冷却ファンなどの冷却要素を直ちに作動させることができる。これは、冷却システムの遅延時間を無くすか、又は少なくとも減少させること、すなわち、ブレーキが不都合に高温に達する前に、冷却システムによって補助ブレーキを冷却できることを意味している。冷却ファンが冷却材の温度に基づいて作動する従来技術の冷却システムでは、補助ブレーキの効果的な動作を促すための、冷却ファンによる追加的な冷却が遅延してしまうことが多かった。一方、本発明による有利な成果の1つとして、補助ブレーキが過熱により劣化するまで、車両の補助ブレーキをより長時間にわたり、高いブレーキトルクを発揮できる状態で使用できることが挙げられる。
本発明によれば、補助ブレーキを予冷したり、冷却システムを予め搭載し、補助ブレーキの冷却が必要となったとき、冷却システムにより補助ブレーキを冷却したりすることができる。例えば、冷却要素が、補助ブレーキ冷却用の冷却材を冷却するように搭載された冷却ファンである場合、補助ブレーキの使用前に、冷却材の温度を低下させておくことができる。車両が下り坂に差し掛かる直前に、又は車両が下り坂走行を開始すると直ちに、冷却材の温度を低下させることによって、過熱によりブレーキトルクが低下するまで、より長時間にわたりリターダがブレーキトルクを最大限に発揮できるようになる。冷却材の温度は、冷却システムの冷却に必要な気流や冷却材の通常動作時の温度によって、90℃未満、好ましくは、80、75、又は70℃未満に低下させられることが多い。また、5℃超、好ましくは、10、15、又は20℃超まで冷却材温度を低下させることは、冷却システムの冷却能力が向上し、補助ブレーキから発生する熱を、冷却システムによってより多く吸収できることに繋がる。
「車両が下り坂走行中であるか、あるいは下り坂に差し掛かる直前なのかを判定する」という表現は、好ましくは、車両に搭載された技術的手段を用いて、道路の特定の下り坂状態を示すパラメータを作成することを意味している。勾配や坂の長さなど、坂に直接関連するパラメータ値、及び/又は、坂又は坂の特徴を示す車両パラメータなど、坂に間接的に関連するパラメータ値により、下り坂状態を表すことができる。このような間接的な車両パラメータ値として、例えば、補助ブレーキの使用を示す表示や、車両の速度又は(加速度)/減速度や、車両の傾斜などが挙げられる。さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、GPS及び/又は電子マップを用いて、車両が下り坂に差し掛かる直前かどうかや、車両が下り走行中の坂の勾配を判定することができる。
本発明の好ましい実施形態によれば、補助ブレーキを用いた場合の車両の減速度を測定することによって、車両が下り坂走行中であるか否かを判定する。減速度が所定値を下回っており、なおかつ補助ブレーキが作動すると、車両が下り坂を走行中であり、多くの熱が補助ブレーキにから発生することが想定される。また、減速値や、更には制動力、質量などの車両パラメータに基づいて、坂の勾配を算出することもできる。補助ブレーキの性能は、冷却要素を作動させて冷却能力を増大させることで高まる。同時に、冷却ファンなどの冷却要素を、必要なときだけ作動させることができるので、騒音、磨耗、及び燃料消費を、なべて低減することになる。減速状態の判定に加えて、車両の速度に基づいて、冷却ファンを作動するべきか否かを判定することができる。車両速度はほぼ一定(すなわち、減速状態が満たされている)、かつ非常に低速で走行する場合、冷却ファンを始動する必要はないことがある。このため、本発明による本実施形態では、減速状態にあること、及び車両の速度が所定値を上回ることの両方を満足する場合に限り、冷却要素を作動させる。
本発明に係る方法の有利な更なる発展形態においては、冷却要素は冷却ファンであり、この冷却要素は、冷却ファンの回転速度が所定値まで上がることにより機能する。ここでの速度上昇が意味するところには、冷却ファンが始動するとき、即ち、速度がゼロから所定値まで増加する場合も含まれる。冷却ファンの最大回転速度をちょうど下回る回転速度、好ましくは、最大回転速度の50〜95%の範囲内の回転速度、より好ましくは、最大回転速度の70〜90%の範囲内の回転速度で、冷却ファンを動かすと、補助ブレーキを効果的に冷却できることが多く、同時に、冷却ファンが最大速度で回転することが回避されているので、ファンによる騒音を低減することができる。最大回転速度を常時適用するのではなく、冷却の必要に応じて回転速度を選択することにより、車両の燃料消費を低減することができる。これは、ブレーキ動作が終了してエンジンが車両を再び駆動させる遷移期間に関連する。冷却ファンの回転速度が遅いほど、この遷移期間におけるエネルギー損失が少なくなる。
また、勾配を、傾斜センサにより測定し、及び/又は傾斜アルゴリズムに基づいて算出し、あるいは、上述のように、GPS及び/又は電子マップ、好ましくは、地形図を用いて判定することができる。
車両に搭載された傾斜センサを用いることは、坂の判定又は判定において、費用効果的かつ信頼性の高い方法である。坂の判定後直ちに、上述の方法で冷却要素を作動させることにより、補助ブレーキを予冷することができる。かかる傾斜センサを、他の情報と組み合わせて用いることも、単独で、すなわち、車両の減速度に関する情報がなくても、冷却要素の作動の決定に用いることもできる。
本発明の更なる実施形態では、傾斜判定アルゴリズムに基づいて、車両が下り走行中の坂の勾配を推定する。この傾斜判定アルゴリズムでは、車両の速度、車両の負荷、又は車両に関するこれら要素を組み合わせたもの、及び印加されたブレーキトルクを用いて、坂の推定傾斜値を算出しても良い。次いで、この値を用いて、冷却システムに求められる冷却能力を予測すること、例えば、冷却ファンを作動させるべきか否かを判定し、冷却ファンに適した回転速度値を選択することができる。この傾斜値を推定することにより、冷却ファンの回転速度をより適切に設定することができる。
本発明に係る方法の一実施形態を示す流れ図である。 補助ブレーキによりもたらされるブレーキトルク対時間を示す図である。 本発明に係る方法を実施可能な装置の概略図である。
以下、添付図面に示す実施形態を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
以下の本発明の実施形態、更にその発展形態は、単なる実施例としてみなされるべきであり、決して特許請求の範囲の保護範囲を限定するものではない。以下の実施形態では、流体式リターダを補助ブレーキの一例として用いる。ただし、本発明は、冷却要素により冷却される全ての補助ブレーキに適用可能であり、好ましくは、流体、すなわち補助ブレーキの冷却に用いる冷却材の温度を低下させる冷却要素が搭載されている場合に適用可能であることは、理解されたい。以下の実施例では、この冷却要素を冷却ファンとする。
車両が下り坂を走行するとき、車両速度を一定に維持するためには、制動力を用いる必要がある。このときの速度を、車両のブレーキ装置の安全域内において十分に低くするべきである。つまり、かくして車両を安全に制御し、ブレーキをかけることで停止させることができる。運転者は通常、特に、長い下り勾配中に、補助ブレーキをできるだけ多く用いる。一般的な運転の手順は、補助ブレーキを用いて通常の車両速度を維持し、この速度に到達するまでは常用ブレーキのみを使う、というものである。このため運転者は、定常の安全速度維持に有効な補助ブレーキを用いる。流体式リターダの形態で補助ブレーキが搭載された車両は、ブレーキ容量が大きいので、比較的高速で下り坂走行が可能である。
しかしながら、リターダは多量の熱を発生する。この熱は、リターダで使用する作動油から、車両の冷却システムに熱を伝達する熱変換器に伝播する。しばらくすると、冷却システムの冷却流体は、所定の流体温度に到達し、冷却ファンが作動する。リターダは発熱し続けるが、冷却システムはむしろ徐冷装置であるので、従来技術による冷却システムの熱容量では、必ずしも十分ではない。このため、リターダの冷却システムは、発生した熱を低減するよう、リターダのブレーキトルクを低減させる。所定の時間後には、この冷却システムは、ブレーキトルクを減少させた状態のままで定常状態に達する。リターダの低減したブレーキトルクを補完するためには、車両の常用ブレーキを用いることができる。これらブレーキを、運転者により手動で、あるいは、例えば、ブレーキ走行機能を用いた場合はブレーキ制御システムにより自動的に、連動させることができる。
車両が水平な道路を走行し、運転者が車両の速度を低減したい場合には、運転者はブレーキを用いる。運転者は、手動でブレーキがかかるようにし、車両は減速する。このとき用いるブレーキは、補助ブレーキ及び/又は常用ブレーキで良い。よって、ブレーキをかけると、車両は減速する。この場合、補助ブレーキから発生する熱量は比較的小さい。この場合、発生した熱量への対処には、冷却材内で熱保持容量を有しながらラジエータを通過する通常のラム空気流で十分であるので、冷却システムによってリターダを冷却できることを意味している。この場合、冷却ファンを始動させて冷却システムの冷却容量を増加させる必要はない。また、このことは、緩やかな傾斜の道路においても同様に適用される。
車両が比較的険しい下り坂の道路を走行しており、運転者が一定の速度を維持したい場合には、リターダが用いられる。これを、車両の制御システムによって速度を一定のレベルに維持するブレーキ走行機能を用いて自動的に行っても、あるいは、運転者が一定の速度を維持するよう適当なリターダレベルを手動で選択することによって行っても良い。いずれの場合も、リターダが用いられ、車両が減速しないか、あるいは、減速度が所定値を下回る。このことは、車両が下り坂走行中であり、さらに、リターダにより発生した熱量に対処するため、冷却システムの冷却容量の増加が間もなく必要となることを意味している。この場合、本発明に係る制御システムは、直ちに冷却ファンを始動する。これにより、冷却システムの温度が一時的に低下し、来たる熱量に備えて冷却システムを準備する、すなわち、冷却能力を予め備えた状態で冷却システムを搭載する。
本実施例では、オン/オフファンが用いられる。オン/オフファンは、その作動時にオン、停止時にオフとなる。このファンは、車両のエンジンにより機械的に駆動されるものであっても、既存の方法で作動するものであっても、リレー作動式の電気ファンであっても良い。
冷却ファンは、その回転速度が連続的に調整可能である型式であって良い。この場合、冷却ファンは、車両のエンジンにより機械的に駆動され得るものであり、ファンの回転速度の連続制御用にビスカス式弾性継手を備える。また、この冷却ファンは、連続的に、あるいは複数の個別ステップで、電気制御システムにより制御される、電気ファン又はエンジン駆動のビスカス式電子ファンであっても良い。この種のファンを用いることにより、冷却ファンの回転速度を、より正確に制御することができる。かくして、冷却ファンの回転速度を、最大の回転速度値にではなく、発生した熱への対処に十分であると推定される値に設定することができる。この場合、発生した熱対して必要な冷却能力を、例えば、提示されたブレーキトルク及び外気温度から推定し、その後、冷却ファンに必要な回転速度を設定することができる。これにより、冷却ファンにより生じる騒音を低減し、車両の燃料消費を抑えることができる。
回転速度の値を、様々な方法により選定することができる。1つの方法としては、リターダから生じる熱量を推定することである。これにより、冷却システムが放散しなければならない熱量の値が求められる。次いで、冷却ファンの回転速度を、必要な冷却能力に対応する、推定された値に設定する。発生する熱量は、かなり大きいことが多い。このため、他の可能性としては、冷却ファンの回転を、冷却ファンの最大許容回転速度よりも幾らか低い値に設定することである。最大許容回転速度値の約80%又は若干それより大きめの値が、許容範囲の数値となり得る。これにより、冷却ファンにより生じる騒音を低減しつつ、許容範囲の冷却効率を得られることが多い。また、最大許容回転速度を常に選択することで、リターダの最適性能が確実に発揮されるようにしても良い。本発明の1つの目的は、ブレーキトルクが過熱により低下するまで、より長時間にわたりリターダが最大ブレーキトルクをもたらすことができるようにすることである。
車両の速度もまた、冷却ファンを作動させるべきか否かの判定に用いることができる。速度信号を使うと、使用したリターダの型が適切に考慮される。一次リターダ、すなわち、エンジンとメインギヤボックスとの間に配されたリターダの効率は、エンジンの回転速度に依存している。従って、リターダは、例えば、相当な重車両が非常に険しい坂を下って走行している場合などの低速走行時でさえ、大きなブレーキトルクをもたらし得る。この場合、リターダから大量の熱が発生するので、冷却ファンを作動させる必要がある。
エンジンブレーキが増強され、ボルボエンジンブレーキ(VEB)などの補助ブレーキ、特に、一次補助ブレーキとしても用いる場合も、これと同様である。この補助ブレーキは、エンジンの制動段階中に、より高い圧縮圧力が得られるよう排気弁のタイミングが制御される圧縮ブレーキを構成する。VEBから発生した熱の一部は排気ガスとして放出され、発生した熱の他の部分はエンジンに伝播する。エンジンに伝達された熱によって、冷却流体が加熱される。このため、VEBを補助ブレーキとして用いる場合には、同様の方法で直ちに冷却ファンを始動させることが有利となり得る。VEBは、独自の個別の冷却システムを備えるものではなく、VEBから生じた熱は、車両の冷却システムにより冷却される。
第2のリターダ、即ち、メインギヤボックスの後方に配置されたリターダの効率は、車両の速度に依存する。リターダは、ギヤボックスの後方に配置されるので、後軸を駆動させるプロペラ軸の回転速度によっても、リターダが駆動される。車両が低速で走行しているときは、プロペラ軸は低速で回転する。このとき、リターダから大量の熱は発生しないので、冷却ファンを作動させる必要がない。
図1は、本発明に係る方法の一実施形態を概略的に示す流れ図である。ステップS10では、リターダを作動させる。運転者がブレーキペダルを踏むことによって、または、リターダレバーを作動させることによって、あるいは、ブレーキ走行機能を用いて自動的に冷却システムによって、リターダの作動が指示される。ステップS20では、リターダが要求されたブレーキトルクを得るために、遅延時間を適用する。これは、リターダの反応時間が常用ブレーキと比べて、例えば1〜2秒の範囲で、やや遅いことによる。このため、遅延時間は、リターダの反応時間に対応するように選択されている。
ステップS30では、車両の減速度dを判定する。これは好ましくは、非駆動車輪のセンサからの車輪速度情報に基づいて行われる。というのも、非駆動車輪は、補助ブレーキによる車輪のスリップの影響を受けないからである。このステップでは、減速度を所定値xと比較する。減速度が所定値を下回る、すなわち、d<xの場合、又は、全く減速がない場合には、リターダから発生する熱量が増加するので、冷却ファンを直ちに作動させるよう冷却ファンに作動信号を送ることを、制御システムは決定する。場合によって車両は、補助ブレーキが作動しているにもかかわらず、下り坂を加速しながら走行する。このような場合、これに対応して冷却ファンを作動させる必要がある。
減速度が所定値を上回る場合、すなわち、実質的に減速する場合には、リターダが大量の熱を発生させないため、冷却ファンを作動させる必要がない。その代わりに、ステップS50に進み、冷却システムでは、冷却ファン用の通常の制御システムが継続される。
ステップS40において、冷却ファンが作動される。上述したように、冷却ファンの作動は、オン/オフファンが用いられる場合にはオン/オフ作動となるか、あるいは、回転速度を制御可能なファンを用いる場合には特定の回転速度を指示する設定値を有し得る。この回転速度用の設定値の推定は、既存の方法で行われる。
ステップS50において、本方法は、冷却ファン用の通常の制御システムに進む。通常の制御システムでは、冷却流体が第1の所定温度に達した際にサーモスタットが冷却ファンを作動させる。また、リターダが外された後、冷却流体が十分冷却されると、冷却ファンが停止する。
任意のステップS60において、本方法は、冷却ファンも停止させる。ステップS60では、リターダを外すときに冷却流体の温度を測定する。この温度が、冷却流体の第1の所定温度と同じか又はそれを下回る温度レベルとなり得る、第2の所定レベルを下回る場合には、冷却システムの冷却能力増強は必要ではないので、冷却ファンを直ちに停止することが決定される。これは、リターダを短時間だけ作動させた場合や、あるいは減速値が所定値に近い場合に生じ得る。このステップは、リターダを取り外す場合に挿入される。
リターダを連動させる時間が長くなると、冷却流体の温度は第2の所定レベルを上回り、冷却ファンは、冷却システムのサーモスタットが冷却ファンを停止させるまで連続的に作動する。また、冷却流体の温度が第1の所定レベルを上回ると、冷却システムもまた通常通り動作し続ける。
図2は、本発明に係る方法を使用した場合としない場合における、坂を下り走行する車両用のリターダからもたらされたブレーキトルクBTを示すグラフである。
グラフAに、冷却流体温度が所定値に達し冷却ファンが作動する場合における、従来のリターダシステムのブレーキトルクを示す。ブレーキトルクの大幅な損失は、冷却システムが最大ブレーキトルクをかなり下回るトルクで定常状態に至る前に見られる。ブレーキトルクの損失が生じている間、車両が一定速度を維持できるように常用ブレーキを用いても良い。これらブレーキを、運転者によって、あるいは装置によって自動的に施し、これにより減速することができる。
グラフBに、本発明に係る方法を用いた車両のブレーキトルクを示す。冷却ファンは、リターダの作動前に、あるいは、リターダが作動すると直ちに作動されるので、冷却システムは、リターダから発生した過剰な熱に対処することができる。図示のように、ブレーキトルクは、グラフAの場合と同じく定常状態レベルに向かって若干低減する。
常用ブレーキを用いることなく、より長時間、高いブレーキトルクを実現可能であることが、本発明による利点である。車両を一定速度に維持するために常用ブレーキを用いる必要がないことから、安全域が広がる。
図3に、本発明に係る方法を実現する装置を概略的に示す。この装置は、車両が下り坂走行中であるか、あるいは下り坂に差し掛かる直前なのかを判定する手段1を備える。このような手段は、傾斜センサ、GPS、速度計、又は車両の減速度測定に適した任意の手段などであって良い。傾斜指示手段1において、冷却要素3を制御する制御部2に用いる、特定の坂状態を示すパラメータ値を適宜作成することができる。図示した実施形態においては、この装置は、ラジエータ5及び冷却回路6が設けられたエンジン4を備えるシステムに一体化されている。冷却ファン3により、水などの冷却回路の冷却材を冷却することができる。例えば流体式リターダなどである補助ブレーキ7は、ラジエータ5/冷却回路6に接続される熱交換器8を備える。このため本実施形態における冷却要素は、傾斜指示手段1からの情報に基づいて、制御部2により制御され得る冷却ファン3である。冷却材の温度を低減することにより、流体式リターダ7を冷却することができる。
図2を参照して示した本方法の一実施形態において、結果、傾斜指示手段1が搭載され、これにより補助ブレーキ7が第1の所定時間内に作動されるかどうかを判定し、補助ブレーキ7が第1の所定時間内で作動された場合、車両の減速度を測定する。減速度が所定値を下回る場合、次いで制御部2を用いて、冷却システムの冷却ファン3を作動させる。本装置は好ましくは、このような電子制御部2を有するか、あるいは、車両に予め備え付けられた電子制御部を用いる。実際、傾斜指示手段1を、車両内に予め備え付けられた電子制御部と一体化しても、接続しても良い。電子制御部2は、入力部と出力部とを備える。電子制御部は好ましくは、車両の電子制御システムと接続され通信する。この通信は、アナログ方式であってもデジタル方式であっても良く、好ましくはこれにデータバス通信が含まれる。
電子制御部は、車両の制御システムとの通信を通して、例えば、補助ブレーキ作動時の車両の減速度などの情報を受け取ることができる。さらに、車両の電子制御部と制御システムとの間で、信号を送信することができる。
本発明の実施形態は、上述のものに限定されると考えられるべきではなく、むしろ多くの更なる変更や変形が、添付の特許請求の範囲の範疇において想起可能である。例えば、様々な補助ブレーキが単独で用いられても、組み合わせて用いられても良い。

Claims (21)

  1. 車両の補助ブレーキの冷却制御方法であって、前記補助ブレーキは冷却要素により冷却され、
    a)車両が坂を下り走行しているか、あるいは下り坂に差し掛かる直前なのかを判定するステップと、
    b)少なくとも1つの所定の下り坂状態が判定された場合、前記補助ブレーキを冷却するために前記冷却要素を自動的に作動させるステップとを含み、
    前記下り坂状態には、前記坂の勾配が所定の間隔内にあると判定されていることが含まれる、補助ブレーキの冷却制御方法。
  2. 前記下り坂状態は、前記補助ブレーキの作動を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記下り坂状態は、車両の減速度が所定値を下回ることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記下り坂状態は、車両の速度が所定値を上回ることを含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記坂の勾配を傾斜センサにより測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  6. 前記坂の勾配を傾斜アルゴリズムに基づいて算出するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記坂の勾配をGPS及び電子マップを用いて判定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  8. 前記車両が下り坂走行中であるか、あるいは下り坂に差し掛かる直前なのかを判定するステップを、GPSを用いて実行する、請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記冷却要素は冷却ファンであり、該冷却ファンの回転速度が所定値まで上がることにより機能する、請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
  10. 前記冷却ファンの回転速度を、最大回転速度の50〜95%の値まで上昇させる、請求項9に記載の方法。
  11. 前記冷却ファンの回転速度を、最大回転速度の70〜90%の値まで上昇させる、請求項9に記載の方法。
  12. 前記冷却ファンの回転速度を、最大回転速度の少なくとも80%の値まで上昇させる、請求項9に記載の方法。
  13. 前記冷却要素は、前記補助ブレーキの冷却に用いられる冷却材を冷却するよう搭載され、前記冷却材の温度を低下させてから前記補助ブレーキを使用できるよう機能する、請求項1に記載の方法。
  14. 前記冷却材の温度を、90℃未満まで下降させる、請求項13に記載の方法。
  15. 前記冷却材の温度を、80℃未満まで下降させる、請求項13に記載の方法。
  16. 前記冷却材の温度を、75℃未満まで下降させる、請求項13に記載の方法。
  17. 前記冷却材の温度を、70℃未満まで下降させる、請求項13に記載の方法。
  18. 前記冷却材の温度を、5℃超まで下降させる、請求項13に記載の方法。
  19. 前記冷却材の温度を、10℃超まで下降させる、請求項13に記載の方法。
  20. 前記冷却材の温度を、15℃超まで下降させる、請求項13に記載の方法。
  21. 前記冷却材の温度を、20℃超まで下降させる、請求項13に記載の方法。
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