本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の、車両のブレーキクルーズコントロールシステム用の機構および方法に関する。本発明は、さらに、プログラムがコンピュータ上で実行される場合に、ブレーキクルーズコントロールシステムにおいてこのような方法を実行するように適合されたコンピュータプログラム、および、コンピュータ可読媒体上に記憶されるこのようなプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品に関する。本機構は、補助ブレーキを有する、様々な種類の大型車両に適用可能である。
運転手の快適性を向上するため、現代の車両の多くに、クルーズコントロールシステムが設けられている。システムの中には、設定したブレーキクルーズ速度を超過した場合に、車両にブレーキもかけるブレーキクルーズコントロール機能を併有するものがある。クルーズコントロールシステムはさらに、アクセルのみを使って、または、車両のブレーキも併用して、設定クルーズ速度を維持するように適合することもできる。これは、エンジンブレーキやリターダ等の補助ブレーキを搭載した大型車両で、特に一般的である。車両のクルーズコントロールシステムは、さらなる機能として、クルーズコントロールシステムの調整パラメータが経済性によって決定された、エコノミードライブ設定を有してよい。
クルーズコントロールシステムは、実速度値が維持される範囲である調整範囲を有する。アクセルのみを利用して速度を維持する、通常のクルーズコントロールシステムにおいては、数パーセントの速度超過が許容されてよい。一般的に、この場合、設定速度が70km/hの場合、速度は例えば69km/hから71km/hの間を変動することができる。このようなクルーズコントロールシステムにおいては、車両にとっての最大許容速度超過値を、設定速度とすることはできない。当該システムは、設定速度を維持するためにブレーキを使うことはしないため、車両が下り坂を走行すれば、車両が超過速度に達するのである。
クルーズコントロールシステムが、車両の設定速度を維持するためにブレーキシステムを併用する場合、すなわち、ブレーキクルーズシステムと呼ばれるシステムである場合もまた、非常に勾配の急な下り坂を下る車両には、一定の速度超過が許容され得る。速度超過を許容することは、車両の惰性を利用してエネルギーを保存するのに役立つ。当然のことながら、許容される速度超過の限界値は、他の車両を危険にさらしたり、制限速度を超過したりすることのない値に設定しなければならない。速度超過の限界値が設定されると、この値が設定ブレーキクルーズ速度として用いられる。運転手は、ブレーキクルーズ速度を、車両の補助ブレーキが下り道の間維持できると自身が推定する値に設定する。この設定ブレーキクルーズ速度を、補助ブレーキで保つことができない場合、運転手は、車両を手動で操作したり、ブレーキをかけたりしなければならない。
車両が下り坂を走行中に、設定ブレーキクルーズ速度を超過しないことは重要である。システムは、実車速とクルーズコントロール速度を比較し、実車速が設定ブレーキクルーズ速度に達すると、補助ブレーキをかける。車両において利用可能な補助ブレーキの種類によって、補助ブレーキの応答時間は変化しうる。補助ブレーキの応答時間は、補助ブレーキの起動時点から、補助ブレーキがフルに効いて、設定ブレーキ力を発揮するまでの時間である。例えば、油圧リターダの応答時間は、比較的迅速であり、例えば1〜2秒の間であるが、排気ブレーキの応答時間は、最大5秒以上であることがある。
したがって、車両が下り坂を走行中には、車両の速度は、設定ブレーキクルーズ速度を上回る速度に達する可能性がある。例えば、坂の勾配、車両の重量、補助ブレーキの種類によるが、場合によっては、到達速度が許容値を上回る場合がある。このような場合、補助ブレーキのブレーキ力が、速度を設定ブレーキクルーズ速度にまで低下させるほど強力ではないかもしれない。このような状況は、運転手にとって快適なものではない。
運転手が、このような車速オーバーシュートを経験すると、それ以降、このような経験をするのを避けるため、設定ブレーキクルーズ速度を下げる可能性がある。しかし、設定ブレーキクルーズ速度が低い状態では、設定クルーズコントロール速度とブレーキクルーズ速度の速度差が小さくなり、これが一方で、燃料消費量の増加や車両の平均速度の減少につながる。
前方の状態を知るために、例えば、道路地図と関連付けられたGPSシステムを用いて、前もって道路状態をモニタすることが知られている。このようなシステムでは、補助ブレーキの応答時間を埋め合わせるために、設定クルーズ速度に達する前に補助ブレーキをかける判断を、前もって行うことができる。しかしながら、すべての車両がこのようなシステムを搭載しているわけではない。
米国特許出願公開第2006/279137号明細書には、補助ブレーキを主ブレーキとして用い、かつ、補助ブレーキのブレーキ力が十分ではない場合にサービスブレーキを補完的に用いてもよいブレーキシステムが記載されている。このシステムは、適切な車両パラメータが選択され得るよう、車両がどのように運転されるかを前もって算出する。
米国特許出願公開第2006/100768号明細書には、所定の速度設定値を超過した場合に、車両のサービスブレーキを、補助ブレーキを補完するものとして用いることができるシステムが記載されている。
米国特許出願公開第2006/113833号明細書には、車両の速度低下によって補助ブレーキのブレーキ力が減少した場合に、サービスブレーキを、補助ブレーキの補完ブレーキとして用いることができるシステムが記載されている。
米国特許出願公開第2012/283928号明細書には、補助ブレーキの作動の遅れ、および/または快適性の理由による遅れを考慮に入れるために、設定ブレーキクルーズ速度が、制御ユニットによって、様々な車両パラメータに応じて調整される車両制御システムが記載されている。
これらのシステムは、状況によってはうまく機能するかもしれないが、クルーズコントロールシステムを改良し、燃料効率と運転手の快適性を向上する余地は残っている。
米国特許出願公開第2006/279137号明細書
米国特許出願公開第2006/100768号明細書
米国特許出願公開第2006/113833号明細書
米国特許出願公開第2012/283928号明細書
したがって、本発明の目的は、補助ブレーキの作動を改良した、車両の改良されたクルーズコントロール機構を提供することである。本発明のさらに別の目的は、車両のクルーズコントロールシステムにおける、補助ブレーキを作動させる改良された方法を提供することにある。
本発明に係る課題の解決法は、機構については、請求項1の特徴部分に記載され、方法については、請求項9に記載される。その他の請求項は、本発明の機構および方法の、さらなる有利な発展を含む。
ブレーキクルーズ速度に設定されるクルーズコントロールブレーキ機能を備える、車両用のクルーズコントロール機構において、クルーズコントロール機構が、車速が設定ブレーキクルーズ速度に達した場合に、少なくとも1つの補助ブレーキを作動させるように適合され、それと同時に、車両の速度を設定ブレーキクルーズ速度に保つように、車両のサービスブレーキをかけるように適合され、さらに、車両の速度が設定ブレーキクルーズ速度に保たれるように、少なくとも1つの補助ブレーキのブレーキ力の増大と共に、サービスブレーキのブレーキ力を減少させるように適合されることによって、課題が解決される。
このクルーズコントロール機構の第1の態様によって、本機構は、補助ブレーキの起動時間をサービスブレーキで埋め合わせることにより、ブレーキクルーズコントロールにおける補助ブレーキの応答を向上させる。ブレーキクルーズコントロール機能が設定ブレーキクルーズ速度に達して、補助ブレーキを作動させるときに、同時にサービスブレーキを作動させる。サービスブレーキの応答は即時的であるため、ブレーキ応答に遅れは生じない。補助ブレーキは、補助ブレーキの種類によって異なるが、数秒の応答時間を有することがある。通常、油圧リターダは、2〜3秒の範囲内の比較的短い応答時間を有する。必要なブレーキ力によって異なるが、排気ブレーキの応答時間は、通常、最大5秒以上である。応答時間は、補助ブレーキの起動時から、補助ブレーキがフルに効いて、要求されるブレーキ力を発揮するまでの実測である。
補助ブレーキと同時にサービスブレーキをかけることにより、車両の加速を即時的に抑制することができ、従って、当該車両が車速オーバーシュートを起こすことはない。これにより、補助ブレーキがフルに効くまでの間、車両の速度を設定ブレーキクルーズ速度に保つことができる。
本発明の機構の有利な発展においては、補助ブレーキがフルに効くと、サービスブレーキを切る。これにより、サービスブレーキの摩耗が最小限に抑えられる。さらに、サービスブレーキが非常に高温になることがないため、サービスブレーキに余力があり、例えば、下り坂の途中で制限速度が変わる場合など、条件が変化した場合に、さらに車両の速度を落とすために利用できる。
本発明の機構の有利な発展においては、機構は、補助ブレーキの作動前に、トランスミッションをシフトダウンするように適合される。これにより、エンジン速度は上昇するものの、一方で、補助ブレーキの利用可能なブレーキ力が増大する。しかしながら、シフトダウンすることにより、補助ブレーキがフルに効くまでの時間が増加する。これは、シフトダウンするための時間が、補助ブレーキの応答時間に加算されるためである。サービスブレーキを使って速度を設定ブレーキクルーズ速度に保つことにより、シフトダウンする時間の間、確実に、車速オーバーシュートが起こらないようにすることができる。
本発明の機構の有利な発展においては、機構は、所定の車両条件が成立した場合にのみ、補助ブレーキと同時にサービスブレーキをかける。好ましくは、このような所定の車両条件は、下り坂の勾配、車両重量、車速、または、車両加速度、のうちの1つである。これにより、サービスブレーキの利用が抑えられるため、サービスブレーキの摩耗はさらに最小限に抑えられる。例えば、水平な道路上で補助ブレーキをかける場合には、車速オーバーシュートのおそれがないため、補助ブレーキと同時にサービスブレーキをかける必要はない。例えば、50km/h未満など、車両の速度が非常に低い場合でも同様である。車両の加速度が低い場合、または、例えば、車両が荷物を積載していない場合など、車両の重量が小さい場合も、サービスブレーキをかける必要がない。これらの場合、最大でも非常に小さな車速オーバーシュートしか起こらない。
車両が下り坂を走行中でかつ、車両のクルーズコントロール機能が作動中である場合に、クルーズコントロール機能を支援する方法であって、クルーズコントロール機能が、ブレーキクルーズ速度に設定されるクルーズコントロールブレーキ機能を備える方法においては、車速が設定ブレーキクルーズ速度に達した場合に、少なくとも1つの補助ブレーキを作動させるステップと、それと同時に、車両の速度を設定ブレーキクルーズ速度に保つように、車両のサービスブレーキをかけるステップと、車両の速度が設定ブレーキクルーズ速度に保たれるように、少なくとも1つの補助ブレーキのブレーキ力の増大と共に、サービスブレーキのブレーキ力を減少させるステップ、が開示される。
本発明の方法によって、車両のクルーズコントロールシステムの挙動が最適化され、車速オーバーシュートが回避される。これにより、車両の燃料効率が向上し、安全性も向上する。
以下、添付図面を参照し、本発明をさらに詳細に説明する。
車両のクルーズコントロール機構の概略図である。
車両のクルーズコントロール機能の支援方法の概略的フローチャートである。
以下に述べる、更なる展開を有する本発明の実施形態は、単なる例示とみなされるべきであり、特許請求の範囲によって規定される保護の範囲を、何ら限定するものではない。本機構は、すべての種類の車両に適用可能であるが、特に、補助ブレーキを用いたブレーキクルーズコントロール機能を有する、トラックやバス等の大型車両に適している。
図1は、車両のクルーズコントロール機構の概略図である。機構1は、クルーズコントロール電子制御ユニット4を備える。クルーズコントロール電子制御ユニット4は、クルーズコントロールシステムを備えた独立型の制御ユニットであってもよく、また、例えばソフトウェアモジュールとして、車両内の他の電子制御ユニットに一体化されていてもよい。クルーズコントロール機構は、ユーザインタフェース2をさらに備える。ユーザインタフェースは、運転手がクルーズコントロールパラメータを入力するために用いるボタン、およびクルーズコントロールシステムの連結および切り離しのために用いるボタンを備える。ユーザインタフェースは、選択されたクルーズコントロールパラメータの一部またはすべてを示す表示手段をさらに備えてもよい。
本実施例では、車両10は、ギアボックス6、好ましくは、自動変速マニュアルトランスミッションまたはオートマチック・トランスミッション、を有するエンジン7を動力源とする。エンジンには、排気ブレーキ9が設けられ、トランスミッションには、油圧リターダ8が設けられる。車両には、ブレーキ制御ユニット3によって制御されるサービスブレーキ5がさらに設けられる。
本機構では、クルーズ速度を設定または選択することができる。クルーズ速度は、クルーズコントロールが作動し、かつ、車両が水平な道路を走行する場合に、車両が維持する基準速度である。クルーズコントロールシステムには、設定クルーズ速度の上下に、予め設定された速度区間が設けられる。予め設定された速度区間は、例えば±1km/hであり、クルーズコントロール規制の間、クルーズ速度はこの予め設定された速度区間内に保たれる。車両がほぼ平坦な道路上を走行し、かつ、クルーズ速度が70km/hに設定されている場合、速度は69km/hから71km/hの間を変動することができる。
運転手はまた、ブレーキクルーズ速度値を設定することができる。ブレーキクルーズ速度値は、車両が下り坂を走行中に、ブレーキクルーズコントロールによって維持される速度値である。通常、ブレーキ速度値は、設定クルーズ速度に加算される、正の速度オフセット値として設定される。ブレーキ速度オフセットが6km/hに設定された場合、その結果得られるこの場合のブレーキクルーズ速度は76km/hとなる。この速度は、車両が下り道を走行し、かつ、車両がクルーズ速度より速い速度で惰行すると考えられる場合に、車両の補助ブレーキによって維持される速度である。下り坂を走行中は、速度超過を許容することにより、走行効率を向上することができる。一方で、車両が停止できなくなったり、車両が長時間に亘って速度制限を超過したりするほど大きな速度超過は許容するべきではない。
本機構は、ブレーキ制御ユニット3をさらに備える。ブレーキ制御ユニット3は、サービスブレーキの制御、および自動ブレーキシステム(ABS)や横滑り防止装置(ESP)などの付加的サービスブレーキ機能の制御に用いられる。
クルーズコントロールシステムは、車両の速度が設定ブレーキクルーズ速度を超過した場合に、補助ブレーキを作動させるように適合される。車両の転がり抵抗および空気抵抗のため、この状況は、車両が下り坂を走行中にのみ発生する。水平な道路を走行中は、クルーズコントロールによって、ブレーキクルーズ速度に達する前にスロットルが絞られる。好ましくは、利用可能なブレーキ力を高めるために、車両のすべての補助ブレーキが同時に連結されるが、必要なブレーキ力が比較的低い場合には、1つの補助ブレーキのみを使用してもよい。
本発明のクルーズコントロール機構において、本機構は、補助ブレーキと同時にサービスブレーキを作動させるように適合される。サービスブレーキの応答時間は、ブレーキ応答に遅れが生じないほど即時的である。補助ブレーキは、補助ブレーキの種類によって異なるが、数秒の応答時間を有することがある。通常、油圧リターダは、2〜3秒の範囲内の比較的短い応答時間を有する。必要なブレーキ力によって異なるが、排気ブレーキの応答時間は、通常、最大5秒以上である。応答時間は、補助ブレーキの起動時から、補助ブレーキがフルに効いて、要求されるブレーキ力を発揮するまでの実測である。
補助ブレーキと同時にサービスブレーキをかけることにより、車両の加速を即時的に抑制することができ、従って、当該車両が車速オーバーシュートを起こすことはない。これにより、車両が下り坂を走行中に、車両の速度が設定ブレーキクルーズ速度に達して、補助ブレーキがフルに効くまでの間、車両の速度を設定ブレーキクルーズ速度に保つことができる。通常の場合であれば、補助ブレーキの応答時間の間、車両は加速を継続するため、車両の速度は、設定ブレーキクルーズ速度に達しても、若干増加し続ける。
このように補助ブレーキの応答時間の間に加速があると、車速が設定ブレーキクルーズ速度を上回ってしまう。坂の勾配、車両の重量、実車速、および、加速度によって異なるが、この速度超過は、多かれ少なかれ深刻なものである。ほとんどの場合は、この速度超過によって車速オーバーシュートが引き起こされるが、補助ブレーキがフルに効くと、速度は設定ブレーキクルーズ速度まで引き戻される。しかしながら、このような速度オーバーシュートによって、運転手は、車両の制御が利かないと感じ、不快感を抱くおそれがある。このような速度オーバーシュートを避けるため、運転手は、より低いブレーキクルーズ速度値を設定し、安全側に立とうとするかもしれないが、これは一方で車両の燃料効率に悪影響を与える。
場合によっては、速度超過が大きすぎるために、補助ブレーキがフルに効いても、超過した車速を設定ブレーキクルーズ速度まで引き戻すことができないこともある。このような場合、運転手はサービスブレーキをマニュアルでかけることによって、車両の速度を落とさなければならない。このような状況は、運転手にとって不快感を与える可能性があり、可能であれば避けるべきである。さらに、このような状況は、サービスブレーキを不必要に摩耗させる。車両が長時間、例えば、1分間、速度超過して走行すれば、超過した速度がタコグラフにも記録され、罰金を科される可能性がある。
本発明の機構によって、補助ブレーキと同時にサービスブレーキを作動させることにより、これらの状況が回避できる。サービスブレーキは、即時的に応答するため、車両の加速を抑制することができ、補助ブレーキの応答時間の間、速度を設定ブレーキクルーズ速度に保つことができる。応答時間の間に、補助ブレーキのブレーキ力が増大すると、それに対応する量だけサービスブレーキのブレーキ力を減少させる。このようにして、速度は、設定ブレーキクルーズ速度で一定に保たれる。補助ブレーキがフルに効いて、要求されるブレーキ力を発揮するようになると、サービスブレーキは切り離すことができ、補助ブレーキで、車速を設定ブレーキクルーズ速度に保ち続けることができる。
補助ブレーキがフルに効くと、サービスブレーキを切ることには、利点がある。これにより、サービスブレーキの摩耗が最小限に抑えられる。さらに、サービスブレーキが非常に高温になることがないため、サービスブレーキに余力があり、例えば、下り坂の途中で制限速度が変わる場合など、条件が変化した場合に、さらに車両の速度を落とすために利用できる。
車両の実速度および実加速度によって異なるが、本機構は、補助ブレーキの作動前に、トランスミッションをシフトダウンするように適合される。これにより、エンジン回転数は上昇する可能性があるものの、一方で、エンジン補助ブレーキの利用可能なブレーキ力が増大する。シフトダウンすることによって、油圧リターダの利用可能なブレーキ力も増大する。これは、油圧リターダの利用可能なブレーキ力が、リターダが取り付けられるシャフトの速度によって変化するためである。しかしながら、シフトダウンすることにより、補助ブレーキがフルに効くまでの時間は増加する。これは、シフトダウンするための時間が、補助ブレーキの応答時間に加算されるためである。シフトダウンを行う間、サービスブレーキを使って速度を設定ブレーキクルーズ速度に保つことにより、確実に、車速オーバーシュートが起こらないようにすることができる。
本機構は、所定の車両条件が成立した場合にのみ、補助ブレーキと同時にサービスブレーキをかけるよう設定されてもよい。このような所定の車両条件は、車両の加速に影響を与える下り坂の勾配、すなわち車両の勾配であってよい。このような条件は、車両重量、車速、または、車両加速度に依存するものであってもよい。望ましくない車速オーバーシュートに伴う問題は、車両が比較的勾配の急な坂を下っているときにしか発生しないため、サービスブレーキの摩耗をさらに最小限に抑えることができる。水平な道路上、または、わずかな下り坂で補助ブレーキをかける場合には、車速オーバーシュートのおそれがないため、補助ブレーキと同時にサービスブレーキをかける必要はない。例えば、50km/h未満など、車両の速度が非常に低い場合でも同様である。車両の加速度が低い場合、または、例えば、車両が荷物を積載していない場合など、車両の重量が小さい場合も、サービスブレーキをかける必要はない。これらの場合、最大でも非常に小さな車速オーバーシュートしか起こらない。
図2は、本発明に係る、車両のクルーズコントロール機能の支援方法の概略的フローチャートである。本方法は、車両がブレーキクルーズ速度に達した場合に、サービスブレーキが補助ブレーキの応答時間を埋め合わせることができるように、補助ブレーキと同時にサービスブレーキを作動させるように適合される。
ステップ100では、クルーズコントロール機能は、実車速と設定ブレーキクルーズ速度を比較する。実車速が設定ブレーキクルーズ速度に達していれば、ステップ110で、補助ブレーキの制御ユニット、および、サービスブレーキの制御ユニットに、作動信号を送信する。ステップ120では、補助ブレーキを作動させ、ステップ130では、サービスブレーキを作動させる。補助ブレーキは、要求されるブレーキ力に対応する、予め設定された量だけ作動させる。サービスブレーキは、サービスブレーキのブレーキ力が、要求される補助ブレーキのブレーキ力に対応するように作動させる。起動時には、サービスブレーキで、要求される全ブレーキ力を発生させている。
ステップ140において、サービスブレーキのブレーキ力を、補助ブレーキのブレーキ力の増大分に対応する量だけ減少させる。これにより、サービスブレーキおよび補助ブレーキから得られる総ブレーキ力は変化せず、よって車両は一定の速度を保つこと、すなわち、設定クルーズ速度を保つことができる。サービスブレーキのブレーキ力の減少は、様々な方法で制御することができる。その1つが、例えば、車両重量、道路の傾斜角、車速、補助ブレーキの起動時間などを含む所定のマップを利用してサービスブレーキ力を制御する方法である。また、車両の加速度がゼロになるよう、すなわち、車両の速度が増加しないよう、サービスブレーキを制御する方法もある。補助ブレーキがフルに効いている場合には、設定ブレーキクルーズ速度を保つのに、補助ブレーキのブレーキ力で足りる場合には、このような制御によって、補助ブレーキのブレーキ力の増大に伴い、サービスブレーキのブレーキ力を減少させる。
ステップ150では、補助ブレーキの実際のブレーキ力と要求されるブレーキ力を比較する。補助ブレーキがフルに効いて、補助ブレーキが要求されるブレーキ力を発揮している場合、ステップ160でサービスブレーキを切る。
さらに、サービスブレーキおよび補助ブレーキの作動前に、トランスミッションをシフトダウンすることも可能である。これは、より大きなブレーキ力が必要であると判断される場合に、有利でありうる。補助ブレーキからの利用可能なブレーキ力は、エンジン速度、または、補助ブレーキが取り付けられたシャフトの速度によって変化するためである。この場合、サービスブレーキは、シフトダウン開始と同時に作動させ、シフトダウンを行う間、サービスブレーキが車両の速度を設定ブレーキクルーズ速度に保つことができるようにする。シフトダウンが完了すると、補助ブレーキを作動し、補助ブレーキのブレーキ力の増大に伴い、サービスブレーキのブレーキ力を減少させる。
所定の車両条件が成立した場合にのみサービスブレーキを作動させることもできる。このような所定の車両条件は、上述の通り、下り坂の勾配、車両重量、車速、または、車両加速度であってよい。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、多くの変形や修正を加えることが、以下の特許請求の範囲内で可能である。
これらのシステムは、状況によってはうまく機能するかもしれないが、クルーズコントロールシステムを改良し、燃料効率と運転手の快適性を向上する余地は残っている。
ドイツ特許出願公開第102008043777号明細書には、下り坂を走行中は、エンジンブレーキで補助しなければ、車輪ブレーキが過熱状態になるという問題点が記載されており、エンジンブレーキをより強く利かせて、車輪ブレーキの過熱を回避するように、自動でギアボックスの設定変更を行うことが示されている。
米国特許出願公開第2006/279137号明細書
米国特許出願公開第2006/100768号明細書
米国特許出願公開第2006/113833号明細書
米国特許出願公開第2012/283928号明細書
ドイツ特許出願公開第102008043777号明細書
本発明に係る課題の解決法は、機構については、請求項1の特徴部分に記載され、方法については、請求項8に記載される。その他の請求項は、本発明の機構および方法の、さらなる有利な発展を含む。
本発明の機構の有利な発展においては、機構は、トランスミッションをシフトダウンするように適合される。これにより、エンジン速度は上昇するものの、一方で、補助ブレーキの利用可能なブレーキ力が増大する。しかしながら、シフトダウンすることにより、補助ブレーキがフルに効くまでの時間が増加する。これは、シフトダウンするための時間が、補助ブレーキの応答時間に加算されるためである。サービスブレーキを使って速度を設定ブレーキクルーズ速度に保つことにより、シフトダウンする時間の間、確実に、車速オーバーシュートが起こらないようにすることができる。
車両の実速度および実加速度によって異なるが、本機構は、トランスミッションをシフトダウンするように適合される。これにより、エンジン速度は上昇する可能性があるものの、一方で、エンジン補助ブレーキの利用可能なブレーキ力が増大する。シフトダウンすることによって、油圧リターダの利用可能なブレーキ力も増大する。これは、油圧リターダの利用可能なブレーキ力が、リターダが取り付けられるシャフトの速度によって変化するためである。しかしながら、シフトダウンすることにより、補助ブレーキがフルに効くまでの時間は増加する。これは、シフトダウンするための時間が、補助ブレーキの応答時間に加算されるためである。シフトダウンを行う間、サービスブレーキを使って速度を設定ブレーキクルーズ速度に保つことにより、確実に、車速オーバーシュートが起こらないようにすることができる。
さらに、トランスミッションをシフトダウンすることも可能である。これは、より大きなブレーキ力が必要であると判断される場合に、有利でありうる。補助ブレーキからの利用可能なブレーキ力は、エンジン速度、または、補助ブレーキが取り付けられたシャフトの速度によって変化するためである。この場合、サービスブレーキは、シフトダウン開始と同時に作動させ、シフトダウンを行う間、サービスブレーキが車両の速度を設定ブレーキクルーズ速度に保つことができるようにする。シフトダウンが完了すると、補助ブレーキのブレーキ力の増大に伴い、サービスブレーキのブレーキ力を減少させる。