JP2010506564A - 耐熱性酵素組成物 - Google Patents

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Abstract

酵素の耐熱性は、酵素を非還元糖、例えばトレハロースのマトリックス中に包含することにより向上する。酵素および糖の耐熱性組成物は、酵素を糖シロップに添加して混合物を担体上に散布するかまたは噴霧乾燥するかのいずれかにより乾燥させることで作られる。酵素組成物は製品形成過程、例えば酵素組成物を補った動物飼料の蒸気ペレット化において熱にさらされた後でも、より高いレベルの活性を保持している。
【選択図】 図1

Description

[0001] 本発明は概して耐熱性(heat−stable,thermo−stable)酵素および、より明確には、飼料加工中のそれらの耐熱性を向上させるためにトレハロースなどの非還元糖によって保護された酵素に関する。その酵素組成物は糖の存在により蒸気処理の間の増大した安定性を有し、蒸気処理される動物飼料または食品組成物に用いることができる。
[0002] 栄養素の消化の向上を通して動物の性能を最大化するための酵素の商業的利用の可能性は重要である。残念ながら、この市場の完全な発展に関する主な障害は、様々な酵素は本質的に不安定であるという観察結果である。この不安定性は2つの主な領域において明らかになった。第1に、酵素は使用前の貯蔵の間に活性を失う可能性がある。この問題は部分的には貯蔵条件の厳しい管理により処理することができる。より重要なのは、動物飼料の生産における様々な加工条件の間の活性の喪失である。特にペレット化する条件の下では多くの酵素が失活する。飼料のペレット化はエネルギーの点でコストがかかるが、いくつかの利点をもたらす。ペレット化はデンプン画分の消化性を高めることは周知である。いくつかの栄養素の生物学的利用能がより高められる他、粉塵が減少するため飼料の無駄もより少なくなり、栄養摂取がより均一になり、飼料の取り扱いも向上する。ペレット化はまた、食物の安全性という状況でより重要になる。ほとんどの微生物は、水分が多い条件の下で熱の影響を受けやすい。従って、飼料産業は飼料の微生物学的負荷を減らすためにますます蒸気ペレット化を用いる。
[0003] ペレット化はまた、食物の安全性という状況でより重要になる。近年の飼料危機は、飼料産業に対する消費者の信用の低下を引き起こす重大な結果となった。今日、消費者は安全な食物製品のみを求めている。現代の飼料産業は今、彼らの活動と結びつく危険性を処理するための方法および習慣を確立しなければならない。飼料における主な危険要因は、決定的かつ基本的な食料安全性管理システムとしてのHACCPおよびGMPの厳密な適用によってのみ管理することができる。
[0004] 近年サルモネラ菌の管理が非常に重視されており、生の原料および飼料は容易にサルモネラ菌に汚染され得るということが今はよく認識されている。今日のサルモネラ菌に関する別の懸念は、多くの抗生物質に対して耐性を持つ株の流行である。近年、欧州および米国の両方において、サルモネラチフィムリウム(Salmonella typhimurium)DT104の存在が報告され、最初はウシにおいてであったが現在では他の種に広がっており、この血清型は多くの抗生物質に対して多重耐性を持っている。ブタの死体におけるサルモネラ菌の汚染を減らすための、ブタの生産におけるサルモネラ菌の管理もまた、重要な食料安全性の関心事である。
[0005] 生の原料および飼料におけるサルモネラ菌および他の病原菌の管理のための計画は、通常は、熱加工または細菌の阻害剤による化学処理のいずれかを必要とする。熱および化学処理の組み合わせも時々、特に高価値家禽の種畜のための飼料のような重要な飼料の製造において用いられる。
[0006] サルモネラ菌は水分が多い条件の下で熱の影響を受けやすく、1つの例は牛乳の低温殺菌で、70℃以上で15秒間加熱すればサルモネラ菌を殺すのに十分である。しかし、動物生産業においては、生の原料および動物飼料は水分の含有量が通常は14〜15%未満である基本的に乾燥した物質であることを認識するのが重要である。サルモネラ菌は乾燥に耐性があり、それらは脱水されるとより熱に耐性になる。サルモネラ菌は表面上でおよび粉塵中で何年も生存する可能性がある。DavieおよびWray(家禽集団および家禽飼料における腸炎菌(Salmonella Enteritidis)の残存, British Poultry Science 37, 589-596 (1996))は、腸炎菌および他の血清型が家禽飼料の中で最低でも10ヶ月間残存することを示した。従って、飼料生産業は飼料の微生物学的負荷を減らすためにますます蒸気ペレット化を用いる。
[0007] 動物飼料の消化性を向上させるために食餌へ酵素を追加することは10年よりも前から確立された習慣である。不幸なことに、微生物を殺す厳しい条件は酵素にとっても有害である。飼料の熱処理の適用が増えつつあることは、飼料へ追加する酵素の開発および使用に重要な課題を持ちかけている。酵素は、それらのアミノ酸組成およびそれらの三次元構造からそれらの典型的な活性を得る複雑なタンパク質構造物である。ほとんどの酵素は熱処理過程に影響されやすいことが一般に知られている。ペレット化の過程において、飼料はまず飼料を押しつぶしてペレットにするための準備をする調節器段階におかれる。調節器の中で、直接的な蒸気の添加が行われ、飼料の平均水分含有量が増大する。蒸気の添加は60〜95℃までの温度の上昇ももたらす。一定期間の高い周囲温度および水の存在の組み合わせが酵素の変性を引き起こす。酵素はしばしばそれらの立体構造が不可逆的に解けてしまい、その結果それらの酵素活性も失うであろう。長年適用されてきたこの問題の解決策は、ペレット化の過程の後で酵素を液体溶液の形でペレットの表面にそれらが冷えた後に噴霧することにより酵素を塗布することである。
[0008] 耐熱性の向上は、動物飼料産業のための酵素の開発という状況における重要な課題である。酵素は保護マトリックスに封入することにより安定化できることが知られている。酵素活性の喪失は、酵素の”固定”または”封入”により克服される可能性がある(Faber, K. Biotransformations in Organic Chemistry, 4th ed.; Springer, Berlin (2000))。これらの技法は、酵素の固体支持体への結合(担体への連結)または酵素分子の互いへの結合(架橋)のいずれかを含む。あるいは、生体触媒はそれがそこから離れられないが触媒的に活性なままである限られた領域に閉じ込められてもよい(固体マトリックス中または膜で限られた区画の中への捕縛)。結果として、天然の酵素を用いた均質な触媒作用は、固定された酵素を用いた場合しばしば不均質な触媒作用となる。
[0010] 動物飼料における固定された酵素の使用は、この主題に別のレベルの複雑さを加える。厳密に不均質な触媒作用は、酵素がもはや溶けず、単純な抽出技法では飼料試料から分離できないことを意味するであろう。この現象は、飼料中での酵素活性の回復に重大な難題を引き起こす。酵素活性を測定するのは不可能であろうが、これは登録に絶対に必要である。水溶性のマトリックスを用いることによりこの問題を迂回することが可能である。最も望ましくは、このマトリックスはペレット化の間変化しないままであるが、酵素を解放するために消化管において容易に溶解するべきである(Gray, C. J. Thermostability of Enzymes, ed: M. N. Gupta, Springer, Berlin (1993))。
家禽集団および家禽飼料における腸炎菌の残存, British Poultry Science 37, 589-596 (1996) Faber, K. Biotransformations in Organic Chemistry, 4th ed.; Springer, Berlin (2000) Gray, C. J. Thermostability of Enzymes, ed: M. N. Gupta, Springer, Berlin (1993)
[0011] 本発明は1種類以上の酵素および非還元糖、好ましくはトレハロースの組成物からなり、これは酵素を糖マトリックスに封入することにより酵素に高められた耐熱性を与え、その結果、酵素組成物を熱にさらす加工作業を通して酵素の活性が高いレベルで維持される。
[0012] 保護された酵素製品を生産するのには2種類の異なる方法を用いることができる。1つめの方法は糖のシロップから始まり、これを酵素溶液と混合し、次いで乾燥した製品を得るために混合物を不活性な担体の上に吸着させる。2つめの方法は、混合された糖および酵素のより希釈された溶液から始まり、これを噴霧乾燥して乾燥した製品を得る。両方の方法は、新製品においてプロテアーゼおよびキシラナーゼの2種類の異なる酵素の活性の非常に優れた回復をもたらす。特に、噴霧乾燥法を用いて保護されたキシラナーゼの活性の強い増大が観察された。希釈比を考慮しても、保護されていない出発物質における最初の活性のレベルと比較して、噴霧乾燥製品ではより多くの活性単位が回復していた。飼料の実験室スケールでの蒸気処理の間の封入された酵素の安定性も研究された。プロテアーゼに関して、シロップ法により得られた新製品について蒸気処理の後に80%という非常に強い残存活性が観察され、噴霧乾燥製品については67%であった。キシラナーゼに関しては、シロップ法のみが十分な耐熱性を持つ製品を生じた。
[0013] 本発明の目的は、加熱条件下での加工の間の活性の喪失に対して向上した耐性を持つ酵素製品を提供することである。
[0014] 本発明の別の目的は、蒸気ペレット化を含むペレット化の後も高レベルの活性を保持する、動物飼料への添加のための酵素製品を提供することである。
[0015] 本発明のさらなる目的は、標的生物内で高レベルの活性を保持する、熱処理の間の活性の喪失に対して保護された酵素を提供することである。
[0016] 本発明の別の目的は、様々な倉庫温度における貯蔵の間の活性の喪失に対して保護された酵素を提供することである。
[0017] 本発明のこれらのおよび他の目的は、当業者にはこの明細書、関係する図および添付した特許請求の範囲の再吟味により明らかになるであろう。
図1はトレハロースの構造式および三次元表現である。
[0019] 本発明は酵素を含む出発物質を含む酵素組成物を提供し、これは動物飼料における使用に適しており、これは蒸気を用いて、追加の熱処理もしくは他の種類の熱加工を用いて、または用いずに微生物汚染を除去されるであろう。本発明の方法により安定化された酵素を含む出発物質は、熱処理または熱加工の後の最終酵素組成物においても安定なままであろう。もし熱処理または熱加工の後に、安定化された酵素組成物の活性の減少が、本発明の方法の下で安定化されていない同じ酵素を含む出発物質のその減少よりも小さいなら、酵素組成物は安定であり、安定なままであり、または増強された耐熱性を有する。好ましくは、安定化された酵素組成物の活性の喪失は、本発明の方法の下で安定化されていない同じ酵素を含む出発物質のそれよりも10%少ない。より好ましくは、安定化された酵素組成物の活性の喪失は、本発明の方法の下で安定化されていない同じ酵素を含む出発物質のそれよりも25%少ない。さらに好ましくは、安定化された酵素組成物の活性の喪失は、本発明の方法の下で安定化されていない同じ酵素を含む出発物質のそれよりも50%少ない。活性は、保温の後に水相の中に放出される窒素の測定、ネルソン試薬、または商業的に入手可能なアッセイ物質およびキットの使用を含め、当分野で知られているいずれかの手段により測定することができる。酵素を含む出発物質は精製したタンパク質画分に限らず、発酵製品、例えば発酵液体画分、追加の溶媒または安定化剤を含む液体の市販酵素製品、および例えば噴霧乾燥または担体上への吸着により水を除去した乾燥酵素製品を含む。
[0020] 酵素粉末は、最低でも非還元糖および最低でも1種類の単独発酵酵素製品を含む液体プレミックスから生産される。プレミックス中の他の成分は通常、水、ポリオール類、塩類、界面活性剤、担体物質および酵素安定化化合物であることができるが、それらに限られない。非還元糖は2糖またはオリゴ糖であることができる。糖は非還元2糖およびオリゴ糖のグループから選択される。非還元糖はヘミアセタールを含まない糖である。非還元糖はスクロース、トレハロース、ソルボース(sorbose)、メレチトース(melezitose)、ベルバスコース(verbascose)、メリビオース(melibiose)、スクラロース(sucralose)およびラフィノース(raffinose)を含む。最も好ましくは、非還元2糖はスクロースおよびトレハロースである。
[0021] 好ましい態様において、糖をまず水に溶解する。第2工程において、混合物を加熱し、水の含有率の低いシロップが得られるまで水を蒸発させる。熱いシロップに液体の酵素を添加し、その後混合物を担体に載せる。
[0022] 別の手順において、糖を水に溶解し、酵素を添加する。担体物質を添加することもできる。好ましい担体は石灰石、バーミキュライト(vermiculite)、シリカ、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ゼラチン、コーンスターチ、セピオライト(sepiolite)、ベントナイト(bentonite)、ゼオライト(zeolite)およびセルロースを含む。乾燥粉末は乾燥、例えば噴霧乾燥により、または製品の担体との混合のいずれかにより得ることができる。
[0023] この方法で用いられる酵素成分は、液体もしくは固体のいずれかまたは両方であることができる。固体の酵素は、それらを糖プレミックスと混合する前にまず最小限の量の水またはポリアルコール(例えばモノプロピレングリコール、グリセロール)に溶解する。
[0024] 糖プレミックスを用意するのに市販の酵素配合物を用いることができる。配合物中に存在する他の成分の起こりうる不安定化作用を避けるため、最も高い活性を持つ酵素配合物が好ましい。液体の酵素はしばしばより希釈されており、モノプロピレングリコールのような沸点のより高いポリアルコールを含み、これは方法の間に完全には除去されず、従って自由に流動する粉末を得るためにはより多い量の担体が必要である。
[0025] 飼料において用いるのに好まれる酵素は、中性pHに近い最適pHおよび動物の体温に近い最適温度を有する。可能性のある酵素には、加水分解酵素および、より具体的には、プロテアーゼ、例えばNeutrase0.8Lまたは1.5MG(Novozymes)、これは45〜55℃(113〜131°F)およびpH5.5〜7.5の最適作動条件を有する、アルファ−アミラーゼ(例えば、Termamyl 120L、Novozymes)、セルラーゼ(例えば、Celluclast 1.5L、Novozymes)、キシラナーゼ(例えば、Ronozyme WX、DSM))、ベータ−グルカナーゼ(例えば、Econase BG300、AB Enzymes)、アルファ−ガラクトシダーゼ(例えば、Galactomax液、Kemin Consumer Care)、およびベータ−グルカナーゼと混合したアルファ−アミラーゼ(例えば、BAN480L、Novozymes)が含まれる。
[0026] 糖シロップは100℃において糖を1対1から1対10までの比で水と混合することにより調製される。糖が完全に溶解したら、さらに加熱することにより最低でも一部の水を蒸発させる。このやり方で、室温においてそれらの飽和点の上である溶液を調製することができる。残った水の残存量は、20%および0.01%の間、最も好ましくは3%および0.05%の間である。
[0027] 糖は非還元2糖およびオリゴ糖のグループから選択される。非還元糖は、ヘミアセタールを含まない糖である。非還元糖はスクロース、トレハロース、ソルボース、メレチトース、ベルバスコース、メリビオース、スクラロースおよびラフィノースを含む。最も好ましくは、非還元2糖はスクロースおよびトレハロースである。
[0028] 糖シロップの調製の直後に酵素を添加する。シロップは最初に冷却せず、これはこれが濃縮シロップ中での炭水化物の結晶化を引き起こす可能性があるからである。液体の酵素はそのまま用いることができるが、固体の酵素製品は最初に水または別の極性溶媒、例えばポリアルコールに溶解される。溶媒の量は、全ての酵素を溶解するように選択される。酵素を溶解することができ、一方では許容し得る粘性を維持するように最小限の量の溶媒が用いられる。好ましくは、可溶化された酵素または商業的な液体の酵素配合物1グラムに5,000および10,000,000単位の間の酵素活性が存在する。最も好ましくは、酵素活性は10,000および5,000,000単位の間である。
[0029] 1%および75%の間の液体酵素配合物および99%〜10%の間の糖を含む混合物を得るため、可溶化された酵素または市販の酵素配合物を糖シロップと混合する。好ましくは酵素濃度は10%および60%の間であり、糖濃度は90%および40%の間である。
[0030] 液体の酵素と混合する前の2糖シロップの温度は50℃および130℃の間、最も好ましくは80℃および110℃の間である。
[0031] 酵素−糖シロップの製造の直後、全混合物を担体上に吸着させてよい。長い待ち時間の結果、糖が部分的に再結晶する可能性がある。適切な担体は、例えばシリカゲル、粘土物質、炭酸カルシウム、アーモンド穀粕、チコリ繊維画分および米ぬかであるが、それらに限られない。
[0032] 酵素−糖シロップおよび担体の好ましい比率は担体の型に依存する。比率は担体の吸着特性により決定される。担体の量は、乾燥粉末が得られるように選択される。一般に、最終製品は5および65%の間の酵素−糖シロップおよび35〜95%の担体を含む。好ましい態様において、最終製品は20,000および2,400,000単位の間の酵素活性を含む。
[0033] トレハロース(図1)はα,α(1←→1)結合した2個のD−グルコピラノース単位からなる天然の非還元2糖であり、特に興味深い物理化学的および生物学的特性を持っている。これらの特徴には、2つの融点、高度に安定なα−結合、異常に高い旋光度、および他の2糖と比べた場合に非常に大きな水和体積が含まれる。トレハロースはいくつかの生物におけるストレス保護剤としてよく知られている。それはいくつかの条件、例えば熱ショック、乾燥、浸透圧ショック、および凍結への生理反応として蓄積する(Higashiyama, T. トレハロースの新しい機能および応用, Pure. Appl. Chem. 74: 1263-1269 (2002))。
[0034] トレハロースはペレット化に用いられる温度では固体のままだが、好都合なことに比較的容易に水に溶解する。
[0035] トレハロース二水和物は97℃の融点を有する。約100℃においてトレハロース溶液中の遊離の水が蒸発すると、トレハロース二水和物はその温度において液体の、溶融した状態で存在するであろう。次いで加熱を継続すると、トレハロースは約130℃でその結晶水を失い始めるであろう。トレハロース無水物は203℃においてのみ溶けるため、産物は脱水されると即座に凝固するであろう。
[0036] 本発明の安定化された酵素組成物は、熱加工の後に、安定化されていない酵素組成物よりも向上した活性を有するであろう。酵素を含む食料および飼料製品は一般に熱加工を受け、これは製品を上昇した温度に様々な期間の間、方法に依存して一般に50℃および約200℃の間の温度に1秒および数時間までの間さらす。熱加工は缶詰、滅菌、殺菌、およびペレット化を含む。高められた耐熱性を有する本発明の安定化された酵素組成物は、当業者に馴染みの時間および温度条件下の熱加工の後に、安定化されていない酵素組成物よりも高い活性を有する。通常、温度が低いほど、製品はその温度により長い時間さらされることができ、安定なままであることが可能で、温度が高いほど、製品はその温度により短い時間さらされることができ、安定なままであることが可能である。熱の遅延により、通常の変性温度よりもかなり高い温度に短期間耐えることができる。高められた耐熱性を有する本発明の安定化された酵素組成物は、約70℃および約90℃で約25秒間および約10分間の間から100℃までで5分間までの熱加工の後、安定化されていない酵素組成物よりも高い活性を有する。
[0037] 実施例1−酵素/トレハロースシロップの調製の一般的な手順
[0038] 全部で20gのトレハロース二水和物を、Millipore Milli−Q(登録商標)水浄化装置を用いて濾過した水20gが入ったビーカー中で溶解した。水は溶解を促進するため予め50および100℃の間に加熱した。ビーカーの風袋を差し引き、次いで磁気撹拌器を備える加熱プレート上で加熱した。ヒーターを200℃に設定し、水を蒸発させ、一方で混合物を穏やかに撹拌した。蒸発した水の量は計量により確かめた。95〜97.5%の水が蒸発したら加熱を停止し、撹拌しながら20gの市販の酵素Neutrase(登録商標)0.8L(Novozymes,Denmark)をトレハロースシロップにゆっくりと添加した。通常、溶液の温度は約99℃から約65℃へ低下するであろう。混合物を氷水浴中で冷却し、混合物の温度を35℃未満にした。この時点で酵素/トレハロースシロッはさらに先の使用のために用意ができており、すぐに処理するのが好ましい。1時間後、配合物中に存在するトレハロースが結晶化し始める可能性がある。シロップを適切な担体、石灰石、バーミキュライト、シリカ、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ゼラチン、コーンスターチ、セピオライト、ベントナイト、ゼオライトおよびセルロースに添加することにより、固体の製品を容易に得ることができる。
[0039] 実施例2−噴霧乾燥によりトレハロースに封入した酵素を調製するための一般的な手順
[0040] ビーカー中で、Millipore Milli−Q(登録商標)水浄化装置を用いて濾過した水50gを100℃に加熱し、撹拌しながら50gのトレハロースを添加した。それ以上の加熱は必要ではなかった。トレハロースが溶解したら、実施例1で用いた酵素混合物6gを添加した。自由に流動する物質、例えばバーミキュライト、シリカ、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ゼラチン、コーンスターチ、セピオライトおよびセルロースを混合物に添加することもできる。乾燥した自由に流動する粉末を生じるパラメーターを用いて液体を噴霧乾燥した これらのパラメーターには、噴霧乾燥の入り口および出口の温度の調節および/または他の量の自由に流動する物質の添加が含まれる。
[0041] 実施例3−蒸気挑戦実験の一般的な手順
[0042] ケルダール分析に一般的に用いられるBuechi蒸留設備B342を、蒸気挑戦実験のための蒸気発生装置として用いた。蒸気発生管の出口を、ゴム管を用いてダブルネックフラスコの側面の首に接続した。ガラスブフナー濾過器をゴム栓を用いてフラスコの垂直の首に接続した。実験の間過度の圧力が生じるため、全ての要素を締め具を用いてしっかりと締めた。蒸留設備により生み出された蒸気はフラスコに入り、蒸気は部分的に凝縮するであろう。残りの蒸気は、垂直の首を通って対照物質または酵素処理した物質で満たされたブフナー濾過器の中へと登るであろう。物質の継続的な撹拌により、均質な蒸気処理が得られる。
[0043] 1000gの量の一般的なブロイラー飼料に、試験する酵素を1kg/トンの用量比で追加した。飼料をプラスチックコンテナの中に移して振動することにより強く均質化した。50gの分量をブフナー漏斗の中に移し、蒸気を漏斗の底を通して試料を通過させた。蒸気はケルダール装置の蒸留設備(B−324,Buechi,Switserland)に存在する蒸気発生装置により供給した。蒸気処理は30秒間適用し、これにより飼料の温度が約80℃に上昇し、水分の含有率が約5%上昇した。蒸気の通過の間、飼料はスパーテルを用いて手動で撹拌した。処理の後、試料を薄い層としてアルミニウムの盆の上に30分間広げた。
[0044] 器具を最初に用いる際、ガラス製品はまず100%蒸気を2分間装置を通して通過させることにより予熱した。その後、蒸気挑戦の再現性を保証するため、下記の順序に従って全ての試料を蒸気処理した:(1)フラスコから凝縮水を除いた;(2)ガラス製品を30%蒸気で50秒間予熱する;(3)残った塵および水分を、ブフナー濾過器からペーパーティッシュを用いて除く;(4)ガラス製品を再び30%蒸気で50秒間予熱する;(5)30%蒸気を用いた3度目の50秒間の順序を開始し、25秒後に50gの飼料試料をブフナー濾過器の中に注ぎ、蒸気が25秒間通過する間スパーテルで絶え間なく撹拌した;(5)濾過器をすぐに外し、アルミニウムの盆の上に空ける。効率的に冷めるように試料を広げた。
[0045] 実施例4−プロテアーゼ活性の評価の一般的な手順
[0046] 蒸気処理の後の酵素の生存は、処理していないがそれらも安定化された酵素を含む標準の一組の飼料試料と比較して決定された。
[0047] アッセイの目的は、異なる酵素配合物の、これらを飼料に投与して蒸気処理で挑戦した後の残存プロテアーゼ活性を評価することである。プロテアーゼ活性は、飼料試料を40℃で3時間保温した後に水相の中へ放出される窒素を測定することにより決定される。後で、試料の窒素含有量を、例えばケルダール分析により決定する。
[0048] 実施例5−キシラナーゼ活性の評価の一般的な手順
[0049] キシラナーゼの回復の測定は、Xylazyme AXタブレット(Megazyme,Wicklow,Ireland)を用いて実施した。抽出効率を向上させるため、抽出の際に界面活性剤(Tween20)を添加した。
[0050] 結果と論考
[0051] シロップ法によるプロテアーゼの安定化
[0052] 実施例1に記載したようにしてトレハロースシロップを調製した。液体の市販の酵素Neutrase0.8Lをプロテアーゼの源として用いた。乾燥した粉末を得るため、全部で10gのプロテアーゼ/トレハロースシロップを10gのシリカ(Sipernat22S)上に吸着させた。
[0053] シロップ法の後の酵素活性を、アゾカゼイン(Cat.No.:S−AZCAS,Megazyme)を用いて調べた。2個の試料を2通りで分析し、99.7%および106.1%の酵素活性が回復し、これはプロテアーゼはシロップ法に容易に耐えられることを示す。
[0054] 次いで4個のグループの試料を蒸気挑戦で試験した:(1)対照グループ:蒸気処理し、酵素を添加しない;(2)陽性対照:蒸気処理した飼料、保護された酵素を加熱の後に添加する;(3)陰性対照:保護されていない酵素を飼料に添加し、混合物を蒸気処理する;および(4)試験グループ:封入した酵素を飼料に添加し、混合物を蒸気処理する。
[0055] グループ1〜3の酵素活性を3通りで分析した(1回の蒸気処理の後に3個の試料を採取した)。グループ4に関して、全部で6回の分析を行った(2回の別個の蒸気処理から、2×3試料)。結果を表1に表す。
[0056] 表1−蒸気処理した試料におけるプロテアーゼの回復
Figure 2010506564
[0057] 噴霧乾燥によるプロテアーゼの安定化
[0058] 全部で3gのNeutrase0.8Lをトレハロース20gおよび水25gからのシロップと混合し、5gの凝結防止剤、例えば表2で指定したものを添加した。この混合物を、それを噴霧乾燥するまで絶え間なく撹拌した。
[0059] 様々な凝結防止剤との幾つかの混合物を噴霧乾燥し、方法後および蒸気処理後のプロテアーゼ活性を表2に示したように測定した。
[0060] 表2−噴霧乾燥した試料におけるプロテアーゼの回復
Figure 2010506564
[0061] 噴霧乾燥した製品は、蒸気挑戦において、シロップ法により得られた製品と比べていくらか不安定である。しかし、用いた噴霧乾燥法は比較的洗練されておらず、最適化されていなかったことを特筆すべきである。より制御された条件の下では蒸気耐性のさらなる向上が期待できる。
[0062] 新しく噴霧乾燥したばかりの製品に関して、観察される回復値が100%を超えたのは意外である。文献から、封入は酵素活性を活性化(再生)する可能性があることが知られている(Zancan, P. and Sola-Penna, M. トレハロースおよびグリセロールは非常に高い温度により不活性化した酵母無機ピロホスファターゼを安定化および再生する, Arch. Biochem. Biophys. 444: 52-60 (2005))。従って、回復した活性の総計は出発物質と比べてより高くてもよい。
[0063] シロップ法によるキシラナーゼの安定化
[0064] トレハロースシロップは実施例1に記載したようにして調製した。乾燥した市販の酵素Econase(登録商標)HCP4000(AS Enzymes,Germany)をキシラナーゼの源として用いた。全部で12.5gの酵素を12.5gの水に溶解した。この混合物を25gの濃縮温トレハロースシロップに添加し、50gの40/60石灰石/シリカに吸着させた。
[0065] シロップ法の後の酵素活性を、birchwoodのキシラン(Sigma,X−0502)を基質として用いて調べた。1個の試料を2通りで分析したところ93.5%の酵素活性が回復しており、これはキシラナーゼが十分にシロップ法に耐えられることを示すものであった。
[0066] 表3−担体系に40,000u/gを添加した後回復したキシラナーゼ
Figure 2010506564
[0067] 蒸気挑戦の後、Sipernat22/石灰石 30/70を含む担体から56%のキシラナーゼ活性が回復することができた。
蒸気処理したプロテアーゼを含む飼料のタンパク質分解を、タンパク質からの窒素放出の測定により調べた。飼料の保温の後、抽出物の液体および固体画分を遠心分離により分離する。(不溶性の)タンパク質は分解されて(可溶性の)ペプチドおよびアミノ酸になるため、液体画分の窒素の含有量をタンパク質分解の尺度として用いた。液体画分の窒素の含有量はケルダール分析により決定した。
[0068] シロップ法によるキシラナーゼの安定化
[0069] トレハロースシロップは実施例1に記載したようにして調製した。アルファ−アミラーゼをトレハロースシロップおよびシリカゲルと混合した。混合物を噴霧乾燥し、最終製品は5%w/wから45%w/wまでの間のトレハロースを含んだ。得られた製品を蒸気浴上で90℃に加熱した。1および3分間加熱した試料に関して酵素活性を測定し、対照と比較した。25%w/wのトレハロース濃度が、96%を超える3分間までの耐熱性を与えた。5%w/wを含む配合物も、かなりのレベルの耐熱性を与えた。
[0070] 表4−90℃において0,1または3分間加熱した後のアルファ−アミラーゼの回復
Figure 2010506564
[0071] 他の酵素活性
[0072] 80gの試料を、室温においてpH6.0(0.01M)のリン酸緩衝液800ml中で磁気撹拌器上で45分間絶え間なく撹拌して抽出した。標準曲線のための試料から、20gを同じ条件の下でリン酸緩衝液200ml中で抽出した。次いで全ての抽出物を3000rpm(1610×g)で5分間遠心分離した。上清中の酵素活性を、商業的に入手可能な酵素アッセイを用いて決定した。
[0073] 結論
[0074] トレハロースは天然の非還元2糖で、これは酵素と顕著な化学的相互作用を示す。主な特性は酵素の安定化であり、これは酵素−水水素結合の減少および酵素−トレハロース水素結合の増加により説明できるかもしれない。トレハロースは水性環境で容易に溶解し、その結果胃腸管で容易に溶解する。
[0075] 2種類の方法を評価し、最初の選考は、シロップ法がトレハロースに封入したプロテアーゼおよびキシラナーゼ両方に関して蒸気耐性を最も向上させることを明らかにした。製品の温度が約25秒間および約150秒間の間約70℃および約90℃の間になる熱加工は、酵素活性の60%未満の喪失を引き起こし、その結果最低40%の酵素の出発活性が残った。噴霧乾燥製品は蒸気処理の後、より低い回復を示したが、この方法は酵素を活性化することができるようである。元々配合物に添加した単位と比べて、しばしばより高い活性単位が回復した。噴霧乾燥はより乏しい蒸気耐性をもたらしたが、方法自体が洗練されていない噴霧乾燥機で全ての温度パラメーターの制御が制限されて実施されたこと、および噴霧乾燥の将来性はなお重要であると思われることは特筆すべきである。
[0076] 上記の記述および図は本発明の説明的な態様を含む。上記の態様および本明細書に記載した方法は当業者の能力、経験、および好みに基づいて変化してよい。ただ単に特定の順序で方法の工程を列挙したことは、方法の工程の順序にいかなる制限も構成しない。上記の記述および図は単に本発明を説明および図説するものであり、特許請求の範囲がそのように限られている場合を除いて本発明はそれに限られない。それらより前の開示を有する当業者は、本発明の範囲から逸脱することなくそれに修正および変化を加えることができるであろう。

Claims (20)

  1. 酵素組成物であって、酵素単独よりも熱加工に向上した耐性を有する、非還元糖の外部被覆を有する、酵素を含む出発物質の粒子を含む酵素組成物。
  2. 請求項1に定めた酵素組成物であって、糖は2糖およびオリゴ糖からなるグループから選択される酵素組成物。
  3. 請求項2に定めた酵素組成物であって、2糖はスクロースおよびトレハロースからなるグループから選択される酵素組成物。
  4. 請求項2に定めた酵素組成物であって、オリゴ糖はメレチトース、ベルバスコース、メリビオース、スクラロースおよびラフィノースからなるグループから選択される酵素組成物。
  5. 請求項1に定めた酵素組成物であって、酵素を含む出発物質はプロテアーゼ、キシラナーゼ、アルファ−アミラーゼ、セルラーゼ、β−グルカナーゼ、α−ガラクトシダーゼ、ベータ−マンナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、フェロイルエステラーゼ(feroyl esterases)およびグルコシダーゼからなるグループから選択される加水分解酵素を含む酵素組成物。
  6. 請求項1に定めた酵素組成物であって、糖は結晶したマトリックスを含み、酵素はマトリックスに包含されている酵素組成物。
  7. 請求項3に定めた酵素組成物であって、2糖はトレハロースであり組成物の約10%および約99%の間を構成し、かつ酵素は組成物の約1%および約75%の間を構成する酵素組成物。
  8. 請求項1に定めた酵素組成物であって、さらに担体を含む酵素組成物。
  9. 高められた耐熱性を有する酵素組成物を調製する方法であって、以下の工程を含む方法:
    (a)トレハロースを水に溶解してシロップを作る;
    (b)トレハロースシロップに酵素を含む出発物質を添加して混合物を作る;ならびに
    (c)混合物の噴霧乾燥および混合物の担体上への散布からなるグループから選択される工程により、混合物からトレハロースの外部被覆を有する乾燥粉末を作る。
  10. 請求項9に定めた方法であって、酵素を含む出発物質はプロテアーゼ、キシラナーゼ、アルファ−アミラーゼ、セルラーゼ、β−グルカナーゼ、α−ガラクトシダーゼ、α−アミラーゼ、ベータ−マンナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、フェロイルエステラーゼおよびグルコシダーゼからなるグループから選択される加水分解酵素を含む方法。
  11. 請求項9に定めた方法であって、噴霧乾燥により乾燥粉末を得る方法。
  12. 請求項9に定めた方法であって、混合物を担体上に散布することにより乾燥粉末を得る方法。
  13. 請求項12に定めた方法であって、担体は石灰石、バーミキュライト、シリカ、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ゼラチン、コーンスターチ、セピオライト、ベントナイト、ゼオライトおよびセルロースからなるグループから選択される方法。
  14. 請求項9に定めた方法であって、組成物を約70℃および約90℃の間で約25秒間および約10分間の間熱処理をした上での酵素組成物の活性が、酵素を含む出発物質の最初の活性の最低でも40%である方法。
  15. 酵素組成物を調製する方法であって、以下の工程を含む方法:
    (a)非還元糖を水に添加する;
    (b)糖および水を加熱して水の一部を蒸発させ、0.01%および20%の間の残留水を有するシロップを作る;
    (c)酵素を含む液体を添加して混合物を作る;ならびに
    (d)混合物の噴霧乾燥および混合物の担体上への散布からなるグループから選択される工程により、混合物から非還元糖の外部被覆を有する乾燥粉末を作る。
  16. 請求項15に定めた酵素組成物であって、糖は2糖およびオリゴ糖からなるグループから選択される酵素組成物。
  17. 請求項16に定めた酵素組成物であって、2糖はスクロースおよびトレハロースからなるグループから選択される酵素組成物。
  18. 請求項16に定めた酵素組成物であって、オリゴ糖はメレチトース、ベルバスコース、メリビオース、スクラロースおよびラフィノースからなるグループから選択される酵素組成物。
  19. 請求項15に定めた酵素組成物であって、酵素を含む液体はプロテアーゼ、キシラナーゼ、アルファ−アミラーゼ、セルラーゼ、β−グルカナーゼ、α−ガラクトシダーゼ、ベータ−マンナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、フェロイルエステラーゼおよびグルコシダーゼからなるグループから選択される加水分解酵素を含む酵素組成物。
  20. 請求項15に定めた方法であって、組成物を約70℃および約90℃の間で約25秒間および約10分間の間熱処理をした上での酵素組成物の活性が、酵素を含む出発物質の最初の活性の最低でも40%である方法。
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