JP2010505403A - 醗酵によるシアル酸(Neu5Ac)の高収率生産 - Google Patents

醗酵によるシアル酸(Neu5Ac)の高収率生産 Download PDF

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Abstract

本発明は、Dシアル酸の製造方法であって、微生物を培地で培養することを含んでなり、上記微生物がシアル酸シンターゼ(NeuB)、UDP-GlcNAcエピメラーゼ(NeuC)をコードする非ホモロジー遺伝子を含んでなり、上記微生物がCMP-Neu5Acシンターゼ(NeuA)をコードする遺伝子を欠いており、またはCMP-Neu5Acシンターゼ(NeuA)をコードする遺伝子が不活性化または欠失しており、かつシアル酸アルドラーゼ(NanA)、ManNacキナーゼ(NanK)およびシアル酸輸送体(NanT)をコードする内因性遺伝子が欠失または不活性化していることを特徴とする方法に関する。本発明はまた、上記微生物に関する。

Description

本発明は、シアル酸(Neu5Ac)の製造方法であって、微生物を培地で培養することを含んでなり、微生物がシアル酸シンターゼ(NeuB)、UDP-GlcNAcエピメラーゼ(NeuC)をコードする非相同性遺伝子を含んでなり、微生物がCMP-Neu5Acシンターゼ(NeuA)をコードする遺伝子を欠いており(devoid)、またはCMP-Neu5Acシンターゼ(NeuA)をコードする遺伝子が不活性化または欠失(delete)しており、かつシアル酸アルドラーゼ(NanA)、ManNacキナーゼ(NanK)およびシアル酸輸送体(NanT)をコードする内因性遺伝子が欠失または不活性化していることを特徴とする方法に関する。本発明はまた、上記微生物に関する。
N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)は、細胞表面の複合炭水化物の末端糖として見出されることが多くかつ細胞接着や毒素およびウイルスの結合のような生物学的認識の多くの過程で主要な役割を果たすことが知られているシアル酸ファミリーのうち、とりわけ一般的な糖である(Varki, 1993)。総てのシアル酸は、メチル化、アセチル化または硫酸化のような様々な修飾の導入によってNeu5Acから生合成的に誘導される。Neu5Acのアセチル基をヒドロキシル化すると、N-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)と呼ばれるシアル酸の別個のブランチが形成される。
Neu5Acのシアル酸代謝の中心的役割、および生物学的活性シアリル化オリゴ糖の合成におけるその潜在的用途から、経済的かつ効率的なNeu5Ac調製の方法の開発に長い間強い関心が持たれてきた。Neu5Acは、燕巣(Martin et al., 1977)または卵黄(Koketsu et al., 1992)のような動物性供給源から従来精製されてきた。しかしながら、これらの材料のシアル酸含量が低いため、総生産収率は低くなり経済的に実際的な工業的方法の開発を阻んでいた。Neu5Acは、Escherichia coli K1の株によって分泌されるNeu5Acのホモポリマーであるコロミン酸の酵素加水分解によっても生産されている(Uchida et al, 1973)。
代替法は、N-アセチルノイラミン酸アルドラーゼを用いるN-アセチルマンノースアミン(ManNAc)とピルベートからのNeu5Acの酵素合成である。この酵素は様々な微生物で確認されており、アルドラーゼとして生理学的に作用してNeu5Acの異化作用を可能にする。この反応は可逆的であり、過剰のピルベートの存在下で平衡をNeu5Acの合成へと移行させることができる。ManNAcは高価な化合物であり、通常はアルカリ性条件下でN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)のエピマー化によって調製される(Blayer et al, 1999; Mahmoudian et al, 1997)。このエピマー化はGlcNAc-2エピメラーゼによって触媒することもでき、これを好ましくはNeu5Acアルドラーゼとカップリングさせておき、GlcNAcとピルベートから一工程でNeu5Acを生成させる(Kragl et al., 1991)。GlcNAc-2エピメラーゼは、クローニングされて、ブタ腎由来のレニン結合タンパク質として確認されている(Maru et al., 1996)。その遺伝子をE. coliで発現させ、酵素および別のNeu5Acの製造方法の開発を、一層良好に可能としうる(Lee et al, 2004; Maru et al, 1998)。
これらの継続的改良にもかかわらず、Neu5Acの製造費用は未だに割高であるため、本発明者らは細菌醗酵によりNeu5Acを生産することによってこの経費を低減する可能性について検討してきた。
本発明に関して、本発明者らは、数種類の非相同性遺伝子を導入し内因性遺伝子を不活性化して、内因性シアル酸を蓄積するように調整した酵素的経路を得ることによって、遺伝子工学処理を行った微生物、特に非病原性細菌を産生することができることを見出した。さらに、シアル酸輸送体を欠いている株を用いてまたは内因性シアル酸輸送体遺伝子を不活性化することによって、本発明者らは、我々の生体工場が細胞リーシスの必要なしに培地で高濃度のシアル酸を産生することができることを明らかにした。さらに、このような遺伝子工学処理を行った微生物は生存可能であるだけでなく、標準的条件で増殖することができる。
本発明は、微生物の醗酵増殖によってシアル酸を産生する方法を提供する。
Neu5Acの異化および同化作用経路の関係を示す。点線は、細菌醗酵によりNeu5Acの産生を可能にするための廃止された酵素反応を表す。 グリセロール供給速度が3.15 g.h−1L−1 (A)および4.2 g.h−1L−1 (B)での株SI2の長時間高細胞密度培養によるNeu5Acの産生を示す。 (黒四角) 細胞外Neu5Ac;(白四角) 細胞内Neu5Ac; (-)細菌増殖。
遺伝子材料の起源の開示
Figure 2010505403
発明の具体的説明
動物および細菌のいずれでも、Neu5Acの生合成はUDP-GlcNAc 2-エピメラーゼによって開始され、これはUDP-GlcNAcからManNAcを形成する。動物では、ManNAcは次に特異的ManNAcキナーゼによってC-6がリン酸化され、ManNAc-6-PはさらにNeu5Ac-9-ホスフェートシンターゼによって代謝されてNeu5Ac-9-ホスフェートとなり、これは次に脱リン酸化されてNeu5Acとなる。
対照的に細菌では、ホスホエノールピルベートを用いる縮合にManNAc-6-Pの代わりにManNAcが用いられ、1工程のみでNeu5Acが形成される。それぞれUDP-GlcNAc 2-エピメラーゼ(Vann et al., 2004)およびNeu5Acシンターゼ(Annunziato et al., 1995; Vann et al., 1997)をコードする遺伝子neuCおよびneuBはE. coli K1で確認されており、これらの遺伝子のオルソログ(orthologs)はナイセリアおよびカンピロバクター種のような様々な微生物で見出されている。したがって、neuCおよびneuCという用語は、本明細書ではE. coli遺伝子、ナイセリアおよびカンピロバクター種におけるオルソログ、並びに他の細菌種、哺乳類および真菌、例えば酵母を表すのに用いられる。
シアリルトランスフェラーゼの基質として用いるため、Neu5AcをCMP-Neu5Acシンターゼによって活性化してCMP-Neu5Acとする。動物では、CMP-Neu5Ac生合成フラックスはUDP-GlcNAc 2-エピメラーゼの活性によって調節されており、これはCMP-Neu5Acによってフィードバック阻害されることが示されている(Kornfeld et al., 1964)。シアル酸貯蔵疾患であるシアルリア(sialuria)では、遊離シアル酸がCMP-Neu5AcによるUDP-GlcNAc 2-エピメラーゼの調節欠損により蓄積する。細菌におけるCMP-Neu5Ac生合成の調節機構は、決定されていない。しかしながら、細菌性UDP-GlcNAc 2-エピメラーゼは動物性のものと高い配列類似性を示し、本発明者らは、細菌でもCMP-Neu5Acによるフィードバック阻害の類似機構が存在することを見出した。したがって、細菌がCMP-Neu5Acシンターゼ活性を欠いているときには、細菌におけるneuBおよびneuC遺伝子の発現によりNeu5Acが蓄積する。本発明者らは非病原性株の遺伝子工学処理を行って、CMP-Neu5Acシンターゼに対する遺伝子を発現させることなくneuBおよびneuC遺伝子を発現させることによって内因性 UDP-GlcNAcからNeu5Acを産生させた(図1)。
さらに、E. coli K12などの多くの細菌はNeu5Acを異化し、これを炭素エネルギー源として用いることができる。Neu5Acの異化経路はE. coliで確認されており、nanTによってコードされた特異的透過酵素がNeu5Acを細胞質に輸送し、そこでNeu5AcはnanAによってコードされたアルドラーゼによってManNAcとピルベートに開裂される(Vimr & Troy, 1985)。ManNAcはNanKキナーゼによってリン酸化されてNanNAc-6-Pとなり、続いてNanEタンパク質によってGlcNAc-6-Pに転換される(Plumbridge & Vimr, 1999)。次いで、GlcNAc-6-PはNagAによって脱アセチル化されてGlcN-6-Pとなり、解糖経路に加わるかまたはUDP-GlcNAc生合成の前駆体として用いられることになる。nanT、nanA、nanKおよびnanE遺伝子は同じオペロンの部分であり、DNA結合タンパク質NanRによって調節され、Neu5Acによって誘導される(Kalivoda et al., 2003)。したがって、NeuBおよびNeuCタンパク質によるNeu5Acの産生はNeu5Ac異化作用の経路を誘導し、細菌のCMP-Neu5Ac生合成の能力を減少させる2つの無益回路を生じることができる。第一の無益回路は、シアル酸シンターゼNeuBとシアル酸アルドラーゼ NanAの複合活性に由来する可能性がある。第二の無益回路は、UDP-GlcNAc 2エピメラーゼNeuCとManNAcからUDP-GlcNAcの形成を触媒する4種類の酵素NanK、NanE、NagA、GlmMおよびGlmUの複合作用に由来する可能性がある。本発明者らは、NeuCおよびNeuBの活性によって形成したNeu5AcおよびManNAcの分解を防止した。本発明者らは、Neu5Acの産生に用いられる菌株でnanAとnanK遺伝子を崩壊させることによって好適に行うことができることを見出した。
Neu5Acは比較的小さな分子であり、細胞質で生成した後に細胞外媒質に拡散すると思われる。したがって、機能的Neu5Ac透過酵素を発現する菌株は、細胞外媒質に拡散するNeu5Acを連続的に再インターナリゼーションし、細胞に有害である可能性がある無益回路を生じることが予想される。これは、E. coliでNeu5Ac透過酵素をコードすることが示されているnanT遺伝子を崩壊させることによって回避することができる(Martinez et al., 1995)。
総ての上記修飾を有するこのような最終的菌株を用いて、本発明者らは、最適化培養条件下で約40 g/lに達するシアル酸の大規模生産を達成した。このような結果から、初めてシアル酸を低商業価格で生産することができる。
第一の態様によれば、本発明は、微生物を培地で培養することからなることを含んでなるシアル酸およびその類似体を生産する方法であって、微生物がシアル酸シンターゼ(NeuB)、UDP-GlcNAcエピメラーゼ(NeuC)をコードする非相同性遺伝子を含んでなり、微生物がCMP-Neu5Acシンターゼ(NeuA)をコードする遺伝子を欠いているか、またはCMP-Neu5Acシンターゼ(NeuA)をコードする遺伝子が不活性化または欠失しており、かつシアル酸アルドラーゼ (NanA)、シアル酸輸送体(nanT)および所望によりManNacキナーゼ(nanK)をコードする内因性遺伝子が欠失または不活性化していることを特徴とする、方法に関する。
本発明において提案した方法によれば、Neu5AcおよびManNAcの分解は防止される。これは、nanAとnanK遺伝子を崩壊させることによって好適に行うことができる。nanTの欠失または不活性化も必要であるので、この方法は、例えば総てのオペロンを除去することによって行うことができる。実際に、nanT、nanA、nanKおよびnanE遺伝子は同一オペロンの部分であり、これはDNA結合タンパク質NanRによって調節されかつNeu5Acによって誘導される(Kalivoda et al., 2003)。したがって、本発明の微生物はnanKEAT-であってもよい。
あるいは、本方法は、nanK遺伝子以外のnanT、nanA、nanE遺伝子(nanEAT-)を包含するオペロンを除去することを含んでいてもよい。したがって、本発明の微生物はまた、nanEAT-であってもよい。
導入することができる非相同性遺伝子は、大腸菌、ナイセリア、カンピロバクター種並びに哺乳類または酵母のような様々な供給源に由来することがあることを理解されるであろう。好ましくは、NeuBおよびNeuCは、C. jejuni株ATCC受託番号43438のような細胞エンベロープにシアリル化構造を含む菌株から単離される。実質的に同一の配列および/または下記で定義される上記配列の保存的に修飾した変種を用いることも本発明の範囲内にある。
上記方法によれば、微生物は、醗酵槽の接種から始まり、炭素基質(例えば、17.5g.L-1のグルコース)が消耗するまで継続する指数増殖期を含んでなる条件で培養することができる。好ましくは、この第一工程後に、微生物を4g.L−1h−1 - 6g.L−1h−1の高グリセロール供給速度で40時間〜少なくとも75、100または150時間で供給されたバッチで培養することにより、培地に産生されるシアル酸のレベルを最大にすることができる。さらに、この方法は、遠心分離と、それに後続する結晶化および濾過による細胞の除去のような精製工程を含んでなることができる。
本発明はまた、上記微生物およびそこから産生されるシアル酸を含んでなる細胞培地であって、シアル酸の濃度が上記培地中で10 - 50 g/lの範囲である、細胞培地に関する。
定義
「シアル酸」という用語は、カルボキシル化9炭糖のファミリーのあらゆる成員を表す。シアル酸ファミリーの最もありふれた成員は、N-アセチル-ノイラミン酸(2-ケト-5-アセタミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセ-D-ガラクトノヌロピラノース-l-オン酸(Neu5Ac、Neu5AcまたはNANAと略記されることが多い)である。このファミリーの第二の成員は、N-グリコリル-ノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)であって、Neu5AcのN-アセチル基がヒドロキシル化されている。第三のシアル酸ファミリーの成員は、2-ケト-3-デオキシ-ノヌロソン酸(KDN)である(Nadano et al. (1986) J. Biol. Chem. 261: 11550-11557; Kanamori et al, J. Biol. Chem. 265: 21811-21819 (1990))。また、9-置換シアル酸、例えば9-O-ラクチル-Neu5Acまたは9-O-アセチル-Neu5Acのような9-O-C1-C6アシル-Neu5Ac、9-デオキシ-9-フルオロ-Neu5Acおよび9-アジド-9-デオキシ-Neu5Acも包含される。シアル酸ファミリーの総説については、例えばVarki, Glycobiology 2: 25-40 (1992); 「シアル酸: 化学、代謝および機能」, R. Schauer監修(Springer-Verlag, ニューヨーク(1992))を参照されたい。シアリル化手続きにおけるシアル酸化合物の合成および使用は、1992年10月1日に公表された国際出願WO 92/16640号明細書に開示されている。
「培地」とは、本発明の方法で用いられる微生物の増殖を支持するのに用いることができる任意の液体、半固体または固体媒質を表す。ある態様によれば、微生物は細菌、例えば大腸菌である。微生物増殖用の培地は周知であり、例えばSambrook et al.および「分子生物学の最新の方法(Current Protocols in Melecular Biology)」, F.M. Ausubel et al.監修, 「最新の方法(Current Protocols)」, Greene Publishing Associates, Inc.とJohn Wiley & Sons, Inc.との共同出版事業, (1998増刊)(Ausubel)を参照されたい。培地は富栄養培地、例えばルリアブロスまたはテリフィックブロス、または合成または半合成培地、例えばM9培地であることができる。幾つかの好ましい態様では、増殖培地はラクトースとシアル酸を含んでなる。
「商業的規模」とは、単一反応におけるシアル酸のグラム規模での生産を表す。好ましい態様によれば、商業的規模は約50、75、80、90または100、125、150、175または200 gを上回る生産を表す。
「操作可能に連結した」という用語は、核酸発現制御配列(例えばプロモーター、シグナル配列、または転写因子結合部位の配列)と第二の核酸配列との機能的連結であって、発現制御配列は第二の配列に対応する核酸の転写および/または翻訳に影響を及ぼすものを表す。
本明細書で用いられる「非相同ポリヌクレオチド」または「非相同遺伝子」とは、特定の宿主細胞とは異質の供給源に由来するものまたは同一供給源に由来する場合には元の形態から修飾されているものである。したがって、ある細胞における非相同性シアリルトランスフェラーゼ遺伝子は、特定の宿主細胞に対して内因的であるが修飾されている遺伝子を包含する。非相同性配列の修飾は、例えばDNAを制限酵素で処理し、プロモーターに操作可能に連結することができるDNA断片を生成することによって起こることがある。位置指定突然変異誘発のような手法も、非相同性配列の修飾に有用である。
「組換え発現カセット」または単に「発現カセット」とは、このような配列と適合性の宿主における構造遺伝子の発現に影響を及ぼすことができる核酸要素で組換えによりまたは合成的に生成した核酸構築物である。発現カセットは、少なくともプロモーターおよび場合によっては転写終結シグナルを包含する。典型的には、組換え発現カセットは転写される核酸(例えば、所望なポリペプチドをコードする核酸)とプロモーターを包含する。発現を行うのに必要なまたは役に立つ追加因子を用いることもできる。転写終結シグナル、エンハンサー、および遺伝子発現に影響する他の核酸配列を発現カセットに包含させることもできる。2種類以上の非相同性タンパク質を微生物で発現させるときには、タンパク質をコードする遺伝子を、単一発現カセットまたは適合性でありかつ同一細胞に保持することができる多数の発現カセット上で発現させることができる。本明細書で用いられるように、発現カセットは、宿主微生物の染色体に挿入されている核酸構築物も包含する。当業者であれば、染色体への核酸の挿入が、例えば相同組換えによって起こる可能性があることを理解するといえる。発現カセットを構築して、2種類以上のタンパク質を産生することができる。タンパク質は、例えばオペロンのような単一プロモーター配列によって調節することができる。または、多数のタンパク質を、個々のプロモーターおよびリボソーム結合部位を有する核酸によってコードすることができる。
「単離された」という用語は、生物学的分子の活性を妨げる成分が実質的または本質的にない材料を表す。本発明の細胞、糖類、核酸およびポリペプチドにとって、「単離された」という用語は、本来の状態で見出される材料に通常伴う成分を実質的にまたは本質的に持たない材料を表す。典型的には、本発明の単離された糖類、オリゴ糖、タンパク質または核酸は、銀染色ゲルまたは他の純度測定法でのバンド強度によって測定したとき、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%または85%の純度であり、通常は少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の純度である。純度または均質性は、タンパク質または核酸試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動後に染色による可視化のような当該技術分野で周知の多数の手段によって表すことができる。ある目的には、高分解能が必要になり、HPLCまたは同様な精製手段が用いられる。オリゴ糖、例えばシアリル化生成物については、純度は例えば薄層クロマトグラフィー、HPLCまたは質量分析法を用いて決定することができる。
2種類以上の核酸またはポリペプチド配列に関する「同一」または「一致」度という用語は、同一であるかまたは最大一致について比較し整列したとき、下記の配列比較アルゴリズムの1つを用いてまたは視覚観察によって測定したときに同一である具体的な比率のアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する2種類以上の配列または部分配列を表す。
2種類の核酸またはポリペプチドに関して「実質的に同一」という用語は、最大一致について比較し整列したとき、下記の配列比較アルゴリズムの1つを用いてまたは視覚観察によって測定したときに少なくとも60%、好ましくは80%または85%、最も好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有する2種類以上の配列または部分配列を表す。好ましくは、実質的同一性は長さが少なくとも約50残基である配列の領域、さらに好ましくは少なくとも約100残基の領域にわたって存在し、さらに好ましくは配列は少なくとも約150残基にわたって実質的に同一である。さらに好ましい態様によれば、配列はコード領域の全長にわたって実質的に同一である。
配列比較については、典型的には1つの配列が参照配列として働き、これに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いるときには、試験および参照配列をコンピューターに入力し、必要ならば、部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムにより、指定したプログラムパラメーターに基づいて参照配列に対する(複数の)試験配列についての配列同一性の百分率を計算する。
比較目的での配列の最適アライメントは、例えば局所ホモロジーアルゴリズムSmith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)、ホモロジーアライメントアルゴリズムNeedleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)、類似性の方法の探索Pearson & Lipman, Proc. Nat 'I. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)、これらのアルゴリズムのコンピューター処理による実施(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., マジソン, ウィスコンシン中のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または視覚観察(通常は、「分子生物学の最新の方法(Current Protocols in Melecular Biology)」, F.M. Ausubel et al.監修, 「最新の方法(Current Protocols)」, Greene Publishing Associates, Inc.とJohn Wiley & Sons, Inc.との共同出版事業, (1998増刊)(Ausubel)を参照されたい)によって行うことができる。
配列同一性および配列類似性の割合を決定するのに適当なアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410およびAltschuel et al. (1977) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載されている。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して公的に利用可能である。このアルゴリズムは、最初にクエリ配列における長さWの短いワードを同定することによる高スコア配列対(HSP)の同定を含み、これは、データーベース配列中の同じ長さのワードと整列したときにどれかの正のスコア閾値Tとマッチしまたは満足する。Tは隣接ワードスコア閾値と呼ばれている(Altschul et al, 上記引用)。これらの初期隣接ワードヒットは、検索を開始して、これらを含むより長いHSPを見出すためのシードとして機能を果たす。次いで、これらのワードヒットは、累積アライメントスコアを増加することができる限り、各配列に沿って両方の方向に拡張される。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関しては、パラメータM(一致する残基対に対する報酬スコア;常に>0)およびパラメータN(ミスマッチ残基に対するペナルティースコア;常に<0)を用いて算出される。アミノ酸配列に関しては、スコアリング行列を用いて累積スコアを算出する。各方向におけるワードヒットの拡張は、累積アライメントスコアがその最大到達値から量Xだけ低下するとき、1つ以上の負のスコアリング残基アライメントの累積により累積スコアが0以下になるとき、またはいずれかの配列の末端に到達するときには、停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXがアライメントの感受性およびスピードを決定する。BLASTプログラム(ヌクレオチド配列に対して)は、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=4、および両方の鎖の比較をデフォルトとして用いる。アミノ酸配列に対して、BLASTPプログラムは、ワード長(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスをデフォルトとして用いる(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照されたい)。
配列同一性パーセントの計算に加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的分析も行う(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの測定は、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する、最小和確率(smallest sum probability)(P(N))である。例えば、参照核酸に対する試験核酸の比較における最小和確率が、約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、そしてさらに好ましくは約0.001未満である場合、核酸は、参照配列に類似であると考えられる。
特定のポリヌクレオチド配列の「保存的に修飾された変異体」とは、同一または本質的に同一なアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを表すか、またはポリヌクレオチドがアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一な配列を表す。遺伝子コードが縮重しているため、多くの機能的に同一の核酸が、任意の所定のポリペプチドをコードする。例えば、コドンCGU、CGC、CGA、CGG、AGA、およびAGGは、いずれもアミノ酸アルギニンをコードする。したがって、アルギニンがあるコドンによって特定されている総ての位置で、このコドンは、コードされるポリペプチドを変更することなしに、記載された対応するコドンのいずれかに変更することができる。このような核酸の変異体は「サイレント置換」または「サイレント変異体」であり、これは「保存的に修飾された変異体」の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書に記載の総てのポリヌクレオチド配列は、特に断らない限り、総ての可能性のあるサイレント変異体を記載する。したがって、サイレント置換は、アミノ酸をコードする総ての核酸配列の暗示される特徴である。当業者であれば、核酸中のそれぞれのコドン(通常、メチオニンに対する唯一のコドンであるAUGを除く)が、標準的な技術によって修飾されて、機能的に同一の分子を産生することができることが分かるであろう。いくつかの態様では、酵素をコードするヌクレオチド配列は、特定の宿主細胞での発現のために好ましくは最適化されている。
同様に、高度の類似特性を有する異なるアミノ酸で置換されたアミノ酸配列における1または数個のアミノ酸における「保存的アミノ酸置換」も、特定のアミノ酸配列またはアミノ酸をコードする特定の核酸配列に極めて類似しているので、容易に確認される。任意の特定配列の上記の保存的置換変異体は、本発明の1つの特徴である。コードされた配列における単一アミノ酸または小パーセンテージのアミノ酸(典型的には5%未満、さらに典型的には1%未満)を変更、添加または欠失する個々の置換、欠失または添加は「保存的に修飾された変異」であり、これらの変更は1つのアミノ酸の化学的に類似のアミノ酸による置換を生じる。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当業者に周知である。例えば、Creighton (1984)「タンパク質(Proteins)」, W.H. Freeman and Companyを参照されたい。
宿主細胞
本発明の組換え細胞は、一般的には関心のある特定の(複数の)酵素をコードするポリヌクレオチドを作製あるいは得て、プロモーターおよび他の適当な制御シグナルの制御下で発現カセット中にポリヌクレオチドを置き、発現カセットを細胞に導入することによって作製される。様々な方法を用いて、同一宿主細胞で2種類以上の酵素を発現させることができる。例えば、単一の染色体外ベクターは多数の発現カセットを包含することができ、または2個以上の適合性の染色体外ベクターを用いて宿主細胞の発現カセットを保持することができる。発現カセットは、当業者に知られている方法を用いて宿主細胞染色体に挿入することもできる。当業者であれば、染色体外ベクターの発現カセットと宿主細胞染色体に挿入された発現カセットとの組合せを用いることもできることが分かるであろう。以下に詳細に説明される宿主細胞の他の修飾を行って、所望なオリゴ糖の産生を高めることができる。例えば、微生物は、ラクトースの能動輸送を可能にするLacY+であることがある。宿主細胞は、活性化シアル酸は本発明による方法で内部に産生されるので、NanT+である必要はない。
本発明の組換え細胞は、通常は例えば、酵母細胞、細菌細胞または真菌細胞のような微生物である。適当な細胞の例としては、とりわけ、例えばアゾトバクター種(例えば、A. vinelandii)、シュードモナス種、リゾビウム種、アーウィニア種、バシラス種、ストレプトミセス種、エシェリキア種(例えば、大腸菌)、およびクレブシエラ種が挙げられる。これらの細胞は、サッカロミセス(例えば、S. cerevisiae)、カンジダ(例えば、C. utilis、C. parapsilosis、C. krusei、C. versatilis、C. lipolytica、C. zeylanoides、C. guilliermondii、C. albicans、およびC. humicola)、ピヒア(例えば、P. farinosaおよびP. ohmeri)、トルロプシス(例えば、T. Candida、T. sphaerica、T. xylinus、T.famata、およびT. versatilis)、デバリオミセス(例えば、D. subglobosus、D. cantarellii、D. globosus、D. hansenii、およびD. japonicus)、チゴサッカロミセス(例えば、Z. rouxiiおよびZ. bailii)、クルイベロミセス(例えば、K. marxianus)、ハンセヌラ(例えば、H. anomalaおよびH.jadinii)、およびブレタノミセス(例えば、B. lambicusおよびB. anomalus)など数個の属のいずれかであることができる。
大腸菌で用いられるプロモーターとしては、T7、trp、またはλプロモーターが挙げられる。リボソーム結合部位および好ましくは転写終結シグナルも供給される。大腸菌以外の原核細胞における非相同タンパク質の発現については、特定の原核生物種で機能するプロモーターが必要である。このようなプロモーターは上記種からクローニングされた遺伝子から得ることができ、または非相同性プロモーターを用いることができる。例えば、ハイブリッドtrp-lacプロモーターは、大腸菌の他にバチルスで機能する。大腸菌以外の原核生物を形質転換する方法は、周知である。例えば、バチルス種を形質転換する方法およびタンパク質を発現させるのに用いることができるプロモーターは、米国特許第6,255,076号明細書および米国特許第6,770,475号明細書に教示されている。
酵母では、好適なプロモーターとしては、GAL1-10(Johnson and Davies (1984) Mol. Cell. Biol. 4:1440-1448)、ADH2 (Russell et al. (1983) J. Biol. Chem. 258:2674-2682)、PHO5(EMBO J. (1982) 6:675-680)、およびMFa(Herskowitz and Oshima (1982)「酵母サッカロミセスの分子生物学(The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces)」(Strathern、JonesおよびBroach監修) Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, ニューヨーク, pp. 181-209)が挙げられる。酵母での使用に適するもう一つのプロモーターは、Cousens et al., Gene 61:265-275 (1987)に記載のADH2/GAPDHハイブリッドプロモーターである。例えば、真菌アスペルギルスの菌株のような糸状真菌については(McKnight et al.,米国特許第4,935,349号明細書)、有用なプロモーターの例としては、ADH3プロモーター(McKnight et al., EMBO J. 4:2093 2099 (1985))およびtpiAプロモーターのようなAspergillus nidulans解糖遺伝子由来のものが挙げられる。適当なターミネーターの一例は、ADH3ターミネーターである(McKnight et al)。
ある態様によれば、ポリヌクレオチドは、誘導プロモーターによって制御され、このプロモーターは、例えば、温度、pH、嫌気性および好気性条件、光、転写因子および化合物のような環境または発生上の要因によって発現のレベルを変更することができる遺伝子の発現を指定するプロモーターである。このようなプロモーターは、本明細書では「誘導」プロモーターと呼ばれており、グリコシルトランスフェラーゼまたはヌクレオチド糖合成に関与する酵素の発現のタイミングを制御することができる。大腸菌および他の細菌性宿主細胞については、誘導プロモーターは当業者に知られている。これらには、例えば、lacプロモーターが挙げられる。原核生物での発現に特に好ましい誘導プロモーターは、ガラクトース代謝に関与する酵素をコードする1個の遺伝子または遺伝子群から得られるプロモーター成分(例えば、UDPガラクトース4-エピメラーゼ遺伝子(galE)由来のプロモーター)に連結したtacプロモーター成分を包含するデュアルプロモーターである。
他の生物についての誘導プロモーターも、当業者には周知である。これらには、例えば、アラビノースプロモーター、lacZプロモーター、メタロチオネインプロモーターおよび熱ショックプロモーターなどが挙げられる。
ポリヌクレオチド構築物の構築には、通常は細菌で複製することができるベクターの使用が必要である。細菌由来のプラスミドの精製には、おびただしい数のキットが市販されている。それらを適性に用いるには、製造業者の指示に従うべきである(例えば、EasyPrepJ、FlexiPrepJ、いずれもPharmacia Biotech製; StrataCleanJ、Stratagene製;およびQIAexpress Expression System, Qiagen製を参照されたい)。次いで、単離して精製したプラスミドをさらに処理して、他のプラスミドを産生させ、細胞のトランスフェクションに用いることができる。ストレプトミセスまたはバチルスでのクローニングも可能である。
選択可能マーカーは、本発明の細胞の構築に用いられる発現ベクターに組込まれることが多い。これらの遺伝子は、選択培地で増殖した形質転換宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質などの遺伝子生成物をコードすることができる。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されていない宿主細胞は、この培地では生存しない。典型的な選択遺伝子は、アンピシリン、ネオマイシン、カナマイシン、クロラムフェニコールまたはテトラサイクリンのような抗生物質または他の毒素に対する耐性を付与するタンパク質をコードする。あるいは、選択可能マーカーは、栄養要求性欠乏症(auxotrophic deficiencies)を補完しまたは複合培地からは入手できない重要な栄養素を供給するタンパク質、例えば、バチルスに関してD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子をコードすることができる。多くの場合、ベクターは、例えば大腸菌、またはターゲット細胞に導入される前にベクターが複製される他の細胞で機能する1個の選択可能マーカーを有する。多数の選択可能マーカーは当業者に知られており、例えばSambrook et al.,(上記引用)に記載されている。細菌細胞で用いるのに好ましい選択可能マーカーは、カナマイシン耐性マーカーである(Vieira and Messing, Gene 19:259 (1982))。カナマイシン選択の使用は例えばアンピシリン選択より有利であり、アンピシリンは培地中でβ-ラクタマーゼによって速やかに分解され、選択圧を除去し、ベクターを含まない細胞が培養物に過剰増殖するようになるからである。
上記成分を1個以上含む適当なベクターの構築では、上記に引用した文献に記載の標準的連結法が用いられる。単離されたプラスミドまたはDNA断片は、開裂し、調整され、必要なプラスミノーゲンを生成するのに所望な形態で再連結される。構築されたプラスミドにおける精確な配列を確かめるため、プラスミドを、制限エンドヌクレアーゼ消化および/または既知の方法によるシークエンシングのような標準的手法によって分析することができる。これらの目的を達成するための分子クローニングの手法が、当該技術分野で知られている。組換え核酸の構築に適する多種多様なクローニングおよびイン・ビトロ増幅法は、当業者に周知である。
本発明の組換え細胞の構築に適する様々な通常のベクターは、当該技術分野で周知である。細菌でのクローニングには、通常のベクターとしては、pBLUESCRIPT(商標)のようなpBR322由来のベクター、およびλ-ファージ由来のベクターが挙げられる。酵母では、ベクターとしては、Yeast Integratingプラスミド (例えば、YIp5)およびYeast Replicatingプラスミド (YRpシリーズプラスミド)およびpGPD-2が挙げられる。
選択された宿主細胞へ発現ベクターを導入する方法は特に決定的なものではなく、このような方法は当業者に知られている。例えば、発現ベクターは、塩化カルシウム形質転換によって大腸菌などの原核生物に、およびリン酸カルシウム処理または電気穿孔によって真核生物に導入することができる。他の形質転換法も適している。
例1:nanKETA突然変異体の構築
nanA、nanK、nanT突然変異体株ZLKAを、大腸菌 K12株DCから構築した(Dumon et al., 2005)。大腸菌K12では、nanA、nanKおよびnanT遺伝子は、大腸菌染色体の同じ領域にManNacキナーゼ活性をコードするnanE遺伝子と共にクラスター化されている。これらの4個の遺伝子 PCRプライマーを用いてターゲット配列に相同性を提供する上記の1段階法 (Datsenko & Wanner, 2000)を用いて染色体DNAにおける3.339 kbセグメントを除去することによって同時に欠失した。上流のプライマーの配列は、
5'GCAATTATTGATTCGGCGGATGGTTTGCCGATGGTGGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC (配列番号1)
であり、下流プライマーの配列は、
5'CTCGTCACCCTGCCCGGCGCGCGTGAAAATAGTTTTCGCATATGAATATCCTCCTTAG (配列番号2)
であった。
例2:neuBCA伝子のクローニング
遺伝子neuBCAの配列を含む2.995DNA断片を、Campilobacter jejuni株ATCC 43438のゲノムDNAを鋳型として用いてPCRによって増幅した。KpnI部位を左プライマー
(5'GGTACCTAAGGAGGAAAATAAATGAAAGAAATAAAAATACAA)(配列番号3)
に付加し、XhoI部位(5'CTCGAGTTAAGTCTCTAATCGATTGTTTTCCAATG)(配列番号4)を右プライマーに付加した。増幅断片を最初にpCR4Blunt-TOPOベクター(Invitrogen)にクローニングした後、pBBRl-MCS3ベクターのKpnIおよびXhoI部位にサブクローニングしてpBBR3-SSを形成させた。
例3:neuBC遺伝子および不活性neuA遺伝子を発現するプラスミドの構築
プラスミドpBBR3-SSでは、neuA遺伝子はneuC遺伝子の下流に位置している。neuA遺伝子配列に配置された0.4 k DNA断片を、BsaBIおよびSmaIで消化することによってpBBR3-SSから摘出した。連結後、生成するプラスミドは切断された不活性なneuA遺伝子を含み、これはpBBR3-neuBCと呼ばれた。
発現レベルを増加させるため、neuBC遺伝子を低コピー数プラスミドpBBR3-neuBCから高コピー数プラスミドpBluescript IIのKSKpnIおよびXbaI部位にサブクローニングし、pBS-neuBCを生成した。
例4:neuBC遺伝子を発現するnanKETA突然変異体の高細胞密度培養によるNeu5Acの産生
菌株DC0、SI1およびSI2は、実施例1に記載のnanKETA突然変異体宿主株 ZLKAをそれぞれプラスミドpBBR3-SS、pBBR3-neuBCおよびpBS-neuBCで形質転換することによって構築した。培養は、ミネラル培地1.5リットルを含む3リットル反応槽で行った。温度を34℃に保持し、pHを14% NH4OHで6.8に調節した。上記のように(Priem et al, 2002)、高細胞密度培養は、醗酵槽の接種から始まり、炭素基質(グルコース17.5g.L-1)が消耗するまで継続する指数増殖期を含んでなる条件で培養する指数増殖期、5.5 g.L-1h-1の高グリセロール供給速度での5時間の流加培養および3.15 g.L-1h-1の低めのグリセロール供給速度での19時間の流加培養期の3つの期からなっていた。インデューサー(IPTG 50 mg)を、指数増殖期の終わりに添加した。
Neu5Acの比色定量は、3遺伝子neuBCAを発現した株DC0はNeu5Acを産生しないことを示した(表2)。対照的に、切端形態のneuA遺伝子を発現する2つの株SI1およびSI2は、多量のNeu5Acを産生し、これは主として細胞外画分で回収された。Neu5Ac産生は、 was three times higher in株 in reason of a higher expression of the 高コピー数プラスミドpBS-neuBCにおけるneuBC遺伝子の発現が一層高いため、株SI1より株SI2の方が3倍高かった。
Figure 2010505403
例5:Neu5Ac産生の最適化
Neu5Ac産生を、pBS-neuBCプラスミドを有する株SI2を用いてさらに最適化した。Neu5Ac収率を増加させるため、グリセロール供給速度を3.15 g.L-1h-1の一定に保持しながら、醗酵時間コースを最初に84時間まで延長した。これにより、最終細胞外濃度は22 g.L-1となった(図2A)。しかしながら、Neu5Ac産生速度は、培養50時間後には有意に減少した。グリセロール供給速度を4.2 g.L-1h-1まで増加することによって、Neu5Acをさらに長時間産生することができ、39 g.L-1の最終細胞外濃度を得た。
例6:Neu5Acの精製
株SI2の培養の終了時に(図2A)、細胞を遠心分離によって除去してNeu5Acを上記のように直接結晶化によって上清から精製した(Maru et al., 1998)。上清(2リットル)を140 mlの容積まで濃縮し、氷酢酸700 mlを加えて結晶化を開始した。混合物を4℃で一晩インキュベーションし、Neu5Ac結晶を濾過によって回収した。冷イソプロパノール1リットルで洗浄し真空乾燥した後、結晶したNeu5Ac 33.4 gを得た。Neu5Acの同定は負イオンモード(ESI-)での可溶化結晶の質量スペクトル分析によって行い、Neu5Ac由来の擬似分子イオン[M-H]-に対応するm/z 308に単一ピークを示した。
例7:シアル酸産生に対するnanKおよびnanTノックアウトの影響
完全なシアル酸オペロンを含む株JM 107は、ザ・ジャーマン・コレクション・オブ・マイクロオーガニズムから入手した(DSM 3950)。株JM 107のnanA-誘導体であるTA01の構築については、前記されている(Antoine et al, 2003)。nanKETA株SI7は、実施例1に記載の通り株JM 107における全シアル酸遺伝子クラスターを崩壊させることによって構築した。PCRプライマーを用いてターゲット配列に相同性を提供する以前に記載された1段階法を用いて染色体DNA中の1.11 kbセグメントを除去することによってTA01株のnanK遺伝子を欠失することによって、株SI6を構築した(Datsenko & Wanner, 2000)。上流プライマーの配列は、
5'GGCAGAACAGGCGGGCGCGGTTGCCATTCGCATTGAAGGTGTAGGCTGGAGCTG CTTC (配列番号1)であり、下流プライマーの配列は
5'CTCGTCACCCTGCCCGGCGCGCGTGAAAATAGTTTTCGCATATGAATATCCTCCTTAG (配列番号2)であった。
菌株JM107、TA01、SI6およびSI7を、実施例3に記載のpBS-neuBCプラスミドで形質転換した。次いで、シアル酸産生を、炭素およびエネルギー源としてのグリセロール(5 g.l−1)を補足したミネラル培地を用いるシェイクフラスコ培養で生成する形質転換体を用いて検討した。表3に示されるように、nanA突然変異体株TA01は、極めて少量のシアル酸を産生した。対照的に、いずれも追加のnanK突然変異を行った株SI6およびSI7は、かなりの量のシアル酸を産生した。しかしながら、機能的シアル酸透過酵素(NanT)を有する株SI6は、nanKTA突然変異体株SI7の2分の1のシアル酸を産生した。
これらの結果は、シアル酸を効率的に産生させるにはnanKの崩壊が必要であることを示唆している。これに反して、nanTの崩壊が産生率を向上させ、シアル酸を主として細胞外培地で回収することができるにもかかわらず、機能的シアル酸透過酵素を発現する株でもシアル酸をかなり産生させることができる。
Figure 2010505403
シアル酸産生は、培養24時間後にジフェニルアミン法による比色法によって測定した。
参考文献
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Claims (13)

  1. シアル酸の製造方法であって、微生物を培地で培養することを含んでなり、
    ここで、前記微生物がシアル酸シンターゼ(NeuB)、UDP-GlcNAcエピメラーゼ(NeuC)をコードする非相同性遺伝子を含んでなり、前記微生物がCMP-Neu5Acシンターゼ(NeuA)をコードする遺伝子を欠いており、またはCMP-Neu5Acシンターゼ(NeuA)をコードする遺伝子が不活性化または欠失しており、かつ
    シアル酸アルドラーゼ(NanA)、シアル酸輸送体(NanT)および所望によりManNacキナーゼ(NanK)をコードする内因性遺伝子が欠失または不活性化していること
    を特徴とする、方法。
  2. Neu5AcおよびManNAcの分解をnanAおよびnanK遺伝子を崩壊させることによって防止する、請求項1に記載の方法。
  3. nanT遺伝子の欠失または不活性化をさらに含んでなる、請求項2に記載の方法。
  4. nanT、nanA、nanKおよびnanE遺伝子(nanKEAT-)を包含するオペロンを除去することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
  5. nanK遺伝子以外のnanT、nanA、nanE遺伝子(nanEAT-)を包含するオペロンを除去することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
  6. 非相同性遺伝子が大腸菌、ナイセリアまたはカンピロバクター種に由来する、請求項1に記載の方法。
  7. NeuBおよびNeuC遺伝子をC. jejuni株ATCC受託番号43438から単離する、請求項5または6に記載の方法。
  8. 醗酵槽の接種から始まり、炭素基質が消耗するまで継続する指数増殖期を含んでなる条件で、前記微生物を培養する、請求項1に記載の方法。
  9. 前記炭素基質がグルコースである、請求項8に記載の方法。
  10. 前記微生物を、前記指数増殖期後に、4g.L−1h−1〜6g.L−1h−1の高グリセロール供給速度で40時間〜少なくとも75、100または150時間供給されるバッチで培養する、請求項8に記載の方法。
  11. 遠心分離と、それに後続する結晶化および濾過とによる細胞の除去のような精製工程を含んでなる、請求項1に記載の方法。
  12. 請求項1に記載の微生物。
  13. 請求項1に記載の微生物、およびそれから産生されるシアル酸を含んでなる、細胞培地であって、前記シアル酸の濃度が培地中で10 - 50 g/lの範囲である、細胞培地。
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