JP2010286597A - 位相差板 - Google Patents

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章伸 牛山
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Abstract

【課題】LCDの液晶セルと偏光板の間に設けられ、透明性、及び硬度に優れた位相差板を提供する。
【解決手段】少なくとも透明基材、及び位相差層を含む位相差板であって、当該位相差層は、平均粒径が5〜100nmであり、少なくとも表面の一部を有機成分で被覆された無機微粒子、及び、硬化反応性を有する反応性官能基bを有する液晶化合物を含む位相差層形成用組成物の硬化物からなり、当該位相差層の透明基材とは反対側の界面及びその近傍の表層領域の前記無機微粒子の粒子数が、当該位相差層の透明基材側界面及びその近傍の領域の前記無機微粒子の粒子数に比べて多く、且つ、前記無機微粒子の含有量が、液晶化合物の重量に対して、0.5〜15重量%であることを特徴とする、位相差板。
【選択図】図5

Description

本発明は、液晶表示装置(LCD)に組み込まれて用いられる位相差板に関する。
液晶表示装置は、光学異方性(複屈折)を有する液晶化合物の向き(配向)を制御することによって、光の透過、及び遮蔽を制御し、表示を行っている。しかし、当該光学異方性により、表示面を見る方向によってコントラスト、又は色調等の表示品質が異なる問題がある。
上記の様な問題を解消するために、液晶化合物(液晶層)を透過した後の楕円偏光を直線偏光に戻す方法がある。具体的には、一軸延伸フイルムを用いる方法、液晶化合物(位相差層)を含む位相差板を用いる方法などが挙げられる。
位相差板による方法では、一軸延伸フイルムに比べて複屈折率が大きいため、使用できる液晶表示装置の種類が多く、適用範囲が広いという利点がある。
特開2006−276697号公報
従来の位相差板は、位相差層の硬度(耐擦傷性)を向上させるために、重合反応等が可能な反応性液晶化合物に紫外線(UV)を照射し、当該反応性液晶化合物同士に架橋結合を形成させ、位相差層の硬度を高めていた(特許文献1)。しかし、十分な硬度が得られるまでのUV照射時間が長く、UVによって当該反応性液晶化合物の分解、変質等による劣化が起こる問題があった。
また、位相差層に、硬度に優れた無機微粒子を添加する方法もあるが、有機化合物である液晶化合物の層に無機微粒子を添加すると相分離が起こり、透明性が低下してしまう問題があった。
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、透明性、及び硬度に優れた位相差板を提供することを目的とする。
本発明に係る位相差板は、少なくとも透明基材、及び位相差層を含む位相差板であって、
当該位相差層は、平均粒径が5〜100nmであり、少なくとも表面の一部を有機成分で被覆された無機微粒子、及び、
硬化反応性を有する反応性官能基bを有する液晶化合物を含む位相差層形成用組成物の硬化物からなり、
当該位相差層の透明基材とは反対側の界面及びその近傍の表層領域の前記無機微粒子の粒子数が、当該位相差層の透明基材側界面及びその近傍の領域の前記無機微粒子の粒子数に比べて多く、且つ、
前記無機微粒子の含有量が、前記液晶化合物の重量に対して、0.5〜15重量%であることを特徴とする。
有機成分で被覆された無機微粒子は、位相差層に硬度(耐擦傷性)を付与する機能を有する。無機微粒子の表面を有機成分で被覆することにより、位相差層に含まれる有機化合物である液晶化合物との親和性を高め、相分離の発生を防ぐ効果を奏する。有機成分で被覆された無機微粒子の平均粒径を、5nm以上、且つ、有機成分で被覆された無機微粒子の含有量を、液晶化合物の重量に対して、0.5重量%以上とすることにより、十分な硬度を発揮できる。また、平均粒径を100nm以下、且つ、当該含有量を、液晶化合物の重量に対して、15重量%以下とすることにより、位相差層に含まれる液晶化合物の配向が阻害されない。
なお、本発明において、微粒子の平均粒径とは、溶液中の粒子を動的光散乱方法で測定し、粒径分布を累積分布で表したときの50%粒径(d50 メジアン径)を意味する。当該平均粒径は、日機装(株)製のMicrotrac粒度分析計又はNanotrac粒度分析計を用いて測定することができる。
また、無機微粒子の平均粒径を5nm以上とすることにより、位相差層の透明基材とは反対側の界面及びその近傍の表層領域の無機微粒子の粒子数が、位相差層の透明基材側界面及びその近傍の領域の無機微粒子の粒子数に比べて多くなる。このような無機微粒子の分布を有することにより、同量の無機微粒子を位相差層全体に分散させた場合と比べて、位相差層の硬度を効率良く向上することができる。
液晶化合物は、位相差層に光学補償性を付与し、液晶表示装置の液晶層を透過した光を補償するはたらきがある。また、液晶化合物は、反応性官能基bを有することにより、当該液晶化合物同士で架橋結合を形成することが可能となり、位相差層の硬度を向上することができる。
本発明に係る位相差板においては、位相差層の透明基材とは反対側の界面及びその近傍の表層領域に、当該表層領域よりも透明基材側の領域に比べて、位相差層の厚み方向断面における単位面積当りの無機微粒子の平均粒子数が多いスキン層を有しており、当該スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの無機微粒子の平均粒子数が、当該位相差層の厚み方向断面における単位面積当りの無機微粒子の平均粒子数の2倍以上であることが、位相差層の硬度を効率的に向上できる点から好ましい。
本発明に係る位相差板においては、スキン層の厚さは、位相差層の透明基材とは反対側の界面から無機微粒子の平均粒径の等倍から2倍までの厚さであることが、液晶化合物の配向を阻害しない点から好ましい。
本発明に係る位相差板においては、無機微粒子は、有機成分により導入され、反応性官能基bとの硬化反応性を有する反応性官能基aを表面に有する反応性無機微粒子であることが、位相差層の硬度を更に向上できる点から好ましい。
本発明に係る位相差板においては、無機微粒子は、光学異方性を有しないことが、位相差板の光学補償性が低下しない点から好ましい。
本発明に係る位相差板においては、無機微粒子は、真球状、又は略球状であることが、位相差板の光学補償性が低下しない点から好ましい。
本発明に係る位相差板においては、位相差層は更にバインダー成分を含むことが、位相差層の硬度を向上させる点から好ましい。
本発明に係る位相差板を用いることで、前記位相差層のJIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(4.9N荷重)の硬度をB以上とすることも可能である。
本発明に係る位相差板は、位相差層に表面が有機成分で被覆された無機微粒子を含むため、当該無機微粒子と液晶化合物の相分離を防ぐことができる。さらに、無機微粒子の平均粒径、及び含有量を制御することにより、位相差層の透明基材とは反対側界面に無機微粒子の粒子数が多い領域が形成され、位相差層の耐擦傷性が向上する。これにより、透明性、且つ、耐擦傷性に優れた位相差層が得られ、位相差層の傷による歩留まり低下を防ぎ、生産性の高い位相差板が得られる効果を奏する。
図1は、本発明に係る位相差層における有機成分により表面を被覆された無機微粒子の分布状態を説明する模式図である。 図2は、本発明に係る位相差板の層構成の一例を示した模式図である。 図3は、本発明に係る位相差板の層構成の他の一例を示した模式図である。 図4は、本発明に係る位相差板の層構成の他の一例を示した模式図である。 図5は、本発明に係る位相差板の層構成の他の一例を示した模式図である。
(位相差板)
本発明に係る位相差板は、少なくとも透明基材、及び位相差層を含む位相差板であって、
当該位相差層は、平均粒径が5〜100nmであり、少なくとも表面の一部を有機成分で被覆された無機微粒子、及び、
硬化反応性を有する反応性官能基bを有する液晶化合物を含む位相差層形成用組成物の硬化物からなり、
当該位相差層の透明基材とは反対側の界面及びその近傍の表層領域の前記無機微粒子の粒子数が、当該位相差層の透明基材側界面及びその近傍の領域の前記無機微粒子の粒子数に比べて多く、且つ、
前記無機微粒子の含有量が、前記液晶化合物の重量に対して、0.5〜15重量%であることを特徴とする。
有機成分で被覆された無機微粒子は、位相差層に硬度(耐擦傷性)を付与する機能を有する。無機微粒子の表面を有機成分で被覆することにより、位相差層に含まれる有機化合物である液晶化合物との親和性を高め、相分離の発生を防ぐ効果を奏する。有機成分で被覆された無機微粒子の平均粒径を、5nm以上、且つ、有機成分で被覆された無機微粒子の含有量を、液晶化合物の重量に対して、0.5重量%以上とすることにより、十分な硬度を発揮できる。また、平均粒径を100nm以下、且つ、当該含有量を、液晶化合物の重量に対して、15重量%以下とすることにより、位相差層に含まれる液晶化合物の配向が阻害されない。
また、無機微粒子の平均粒径を5nm以上とすることにより、位相差層の透明基材とは反対側の界面及びその近傍の表層領域の無機微粒子の粒子数が、位相差層の透明基材側界面及びその近傍の領域の無機微粒子の粒子数に比べて多くなる。このような無機微粒子の分布を有することにより、同量の無機微粒子を位相差層全体に分散させた場合と比べて、位相差層の硬度を効率良く向上することができる。
液晶化合物は、位相差層に光学補償性を付与し、液晶表示装置の液晶層を透過した光を補償する機能を有する。また、液晶化合物は、反応性官能基bを有することにより、液晶化合物同士で架橋結合を形成することが可能となり、位相差層の硬度を向上することができる。
ここで、本発明に係る位相差板の位相差層における、表面が有機成分で被覆された無機微粒子の分布状態について、図1を用いて説明する。
まず、位相差層20の厚さ方向断面において、透明基材側界面、該透明基材とは反対側の界面(空気側界面)、及び、位相差層の厚さ方向に平行な2辺に囲まれた領域Sを切り取り、当該領域S全体における単位面積当りの無機微粒子の平均粒子数Aを、位相差層20全体の厚さ方向断面における単位面積当りの無機微粒子の平均粒子数とする。
領域Sにおいて、空気側界面から一定の深さDまでの領域Sにおける単位面積当りの平均粒子数Aを測定すると、A>A×2である。空気側界面からの深さDをDよりも深くし、空気側界面から深さDまでの領域Sにおける単位面積当りの平均粒子数を測定していくと、単位面積当りの平均粒子数Aが、A=A×2となる深さDがある。そして、空気側界面からの深さがDよりも深い、深さDm+1までの領域Sm+1では、単位面積当りの平均粒子数Am+1は、Am+1<A×2となる。このとき、空気界面側から深さDまでの領域Sをスキン層と考えることができる。
尚、位相差層における無機微粒子の分布状態は、位相差層の走査型電子顕微鏡(SEM)写真、透過型電子顕微鏡(TEM)写真などにより確認することができ、無機微粒子が偏在してなるスキン層は、その領域の境界を目視で明瞭に判別することができる。
また、位相差層の厚み方向断面における単位面積当りの無機微粒子の平均粒子数は、以下のようにして求めることができる。すなわち、位相差層の深さ方向断面のSEM写真等により、無機微粒子の数を計測し、計測した粒子が存在する面積で除することによって単位面積あたりの密度を算出することができる。
本発明に係る位相差板の層構成について説明する。
図2は、本発明に係る位相差板の層構成の一例を示した模式図である。透明基材10上に位相差層20が設けられた位相差板1を示している。
図3は、本発明に係る位相差板の層構成の他の一例を示した模式図である。透明基材10上に、透明基材側から順に、配向層30、及び位相差層20が設けられている。
図4は、本発明に係る位相差板の層構成の他の一例の断面を示した模式図である。透明基材10上に、透明基材側から順に、屈折率調節層40、及び位相差層20が設けられている。
図5は、本発明に係る位相差板の層構成の他の一例を示した模式図である。透明基材10上に、透明基材側から順に、屈折率調節層40、配向層30、及び位相差層20が設けられている。
本発明に係る位相差板は、透明基材、及び位相差層を必須構成要素とし、光学特性の向上や位相差中の液晶の配向制御を目的として、屈折率調整層や配向層を適宜設けても良い。
以下、本発明に係る位相差板の必須要素である透明基材、及び位相差層、並びに、必要に応じて適宜設けることができる屈折率調節層等、及び配向層等のその他の機能層について順に説明する。尚、本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
(透明基材)
透明基材は、透明性に優れ、複屈折率を有しないものであれば、位相差板に用いられる従来公知のものを用いることができ、例えば、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、アクリレート系ポリマー、又はポリエステルを主体とするものが好ましい。ここで、「主体とする」とは、基材構成成分の中で最も含有割合が高い成分を示すものである。また、透明であるとは、可視光域380nm〜780nmにおける平均光透過率が80%以上である場合を意味する。尚、光透過率の測定は、紫外可視分光光度計(例えば、(株)島津製作所製 UV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定した値を用いる。
上記透明基材の光学的等方性については、本発明の光学素子の用途や上記屈折率調整層、上記配向膜、及び上記位相差層を構成する材料の種類等に応じて、所望の光学的性質を達成できるものを任意に採用できるが、中でも、レターデーション値(Re)が0nm〜100nmの範囲内が好ましく、0nm〜50nmの範囲がより好ましく、0nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。このような透明基材を用いることにより、本発明の位相差板の用途や上記屈折率調節層、上記配向膜、及び上記位相差層の構成材料の選択の幅を広げることができる。ここで、レターデーション値(Re)とは、透明基材の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、透明基材の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率ny、透明基材の厚みをd(nm)とした場合に、Re=(nx−ny)×dで表される値をいい、王子計測機器(株)製:KOBRA−WRで測定することができる。
透明基材の厚さは、1〜300μmであることが好ましく、1〜150μmであることがより好ましい。透明基材と当該透明基材に隣接して設けられる層との密着性を改善するため、透明基材に表面処理(例、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。
(位相差層)
本発明に係る位相差層は、必須成分として、有機成分により表面を被覆された無機微粒子、及び反応性官能基bを有する液晶化合物(反応性液晶化合物)を含む位相差層形成用組成物の硬化物からなる。位相差層形成用組成物はその他、求められる位相差板の機能に応じて、適宜、重合開始剤、カイラル剤、溶剤、バインダー成分等のその他の成分を含んでも良い。
位相差層は、1層で形成されていても、2層以上から形成されていても良く、また、当該2層以上の複数層が同一種類の液晶性化合物を含む層であっても、ネマチック液晶、スメクチック液晶、ディスコチック液晶、又はコレステリック液晶から選ばれる異なる種類の液晶性化合物を含む層であっても良い。
(有機成分により表面を被覆された無機微粒子)
本発明に係る無機微粒子は、当該粒子表面を有機成分により被覆されており、これにより、有機化合物である液晶化合物を含む位相差層に、当該無機微粒子を含有させても、当該無機微粒子と液晶化合物の相分離が発生し難くなり、位相差層の透明性、光学補償性を保ちながら、当該位相差層に耐擦傷性を付与することができる。
また、本発明に係る無機微粒子は、当該粒子表面を被覆している有機成分により導入された反応性官能基aを表面に有する反応性無機微粒子であることが好ましい。当該反応性官能基は硬化反応性を有するため、反応性無機微粒子同士、又は反応性無機微粒子と後述する反応性液晶化合物が架橋構造を形成することが可能である。このような架橋構造を形成することにより、位相差層の耐擦傷性を更に向上させることができる。反応性無機微粒子には、1粒子あたりコアとなる無機微粒子の数が2つ以上のものも含まれる。また、反応性無機微粒子は、粒径を小さくすることにより含有量に対して、位相差層内での架橋点を高めることができる。
本発明に係る無機微粒子は、位相差層の光学補償性を阻害しない様に、光学異方性を有しないことが好ましく、斯かる形状としては、例えば、真球状、又は略球状が挙げられる。
本発明に係る有機成分により被覆された無機微粒子の平均粒径は、5〜100nmであり、好ましくは10〜80nmであり、さらに好ましくは20〜60nmである。無機微粒子の平均粒径を20〜60nmとすることにより、位相差層に耐擦傷性を付与できるだけでなく、無機微粒子の拡散係数が増大し、位相差層の透明基材とは反対側の界面とその近傍において、有機成分により被覆された無機微粒子の粒子数が多いスキン層を形成することができる。
無機微粒子は、透明性を損なうことなく、硬度を著しく向上させる点から、粒径分布が狭く、単分散であることが好ましい。無機微粒子は、凝集粒子であっても良く、凝集粒子である場合は、二次粒径が記載範囲内であれば良い。
本発明の好適な実施形態によれば、無機微粒子の平均粒径を5〜100nmとすることにより、スキン層の単位面積当たりの平均粒子数を、位相差層全体の単位面積当たりの平均粒子数の2倍以上、且つ、スキン層の厚さを、位相差層の透明基材とは反対側の界面から無機微粒子の平均粒径の等倍から2倍とすることが可能である。
有機成分により表面を被覆された無機微粒子の含有量は、液晶化合物の重量に対して、0.5〜15重量%である。1.0〜10重量%であることが好ましく、更に1.0〜5重量%であることが好ましい。0.5重量%未満の場合、位相差層表面の硬度が不十分となる恐れがあり、15重量%超過の場合、充填率が上がり過ぎ、かえって膜強度が下がってしまうおそれがある。
無機微粒子としては、例えば、シリカ(SiO)、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物微粒子などが挙げられる。金属微粒子、金属硫化物微粒子、金属窒化物微粒子等を用いても良い。
硬度が高い点からは、シリカ、酸化アルミニウムが好ましい。また、位相差層に隣接する層に対して相対的に高屈折率層とするためには、膜形成時に屈折率が高くなるジルコニア、チタニア、酸化アンチモン等の微粒子を適宜選択して用いることができる。同様に、相対的に低屈折率層とするためには、膜形成時に屈折率が低くなるフッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等のフッ化物微粒子などの微粒子を適宜選択して用いることができる。更に、帯電防止性、導電性を付与したい場合には、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ等を適宜選択して用いることができる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明に係る位相差板においては、無機微粒子は、有機成分により導入され、反応性官能基bとの硬化反応性を有する反応性官能基aを表面に有する反応性無機微粒子であることが、位相差層の硬度を更に向上できる点から好ましい。
反応性官能基aとしては、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合及びエポキシ基等が挙げられる。
反応性無機微粒子としては従来公知の反応性無機微粒子を用いることができる。例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤により無機微粒子を表面処理したものを用いることができる。その他、表面処理に用いる表面処理剤及び表面処理方法は、例えば、特開2008−165040号公報に記載の表面処理剤、表面処理方法を用いることができる。
反応性無機微粒子の含有量は、上記有機成分により表面を被覆された無機微粒子の含有量と同様である。
(反応性液晶化合物)
本発明に係る液晶化合物は、ネマチック液晶、スメクチック液晶、ディスコチック液晶、又はコレステリック液晶を用いることができ、反応性官能基bを有する。反応性官能基bとしては、上記反応性官能基aと同様の官能基が挙げられる。反応性官能基aと反応性官能基bは同じであっても良く、異なっていても良い。反応性官能基bは硬化反応性を有するため、液晶化合物同士、又は、液晶化合物と前記反応性無機微粒子が架橋結合を形成することが可能であり、耐熱性の良い位相差板を得ることができる。
位相差層の液晶性(規則性)が、ネマチック液晶性、又はスメクチック液晶性である場合には、例えば、偏光板起因の視野角依存性に対する補償用や、円偏光モード液晶ディスプレイに適用可能なλ/4、又はλ/2のAプレートの機能を果たすことができる。
また、位相差層の液晶性が、プレーナー配向されたコレステリック液晶性である場合には、液晶のプレーナー配向のヘリカル(らせん)軸に沿って入射した自然光の右旋及び左旋の2つの円偏光のうち、一方を選択的に反射する性質を有する。また、このような場合には、負のCプレートとして機能する。すなわち、ヘリカル軸に対して斜めに入射する光には位相差が生じるため、ヘリカル軸から傾斜した方向の楕円偏光を直線偏光にすることが可能である。一方、ヘリカル軸の方向に透過する直線偏光は位相差を生じることなく直線偏光としてそのまま透過する。これにより、液晶表示装置の視野角依存性の改善等が可能な光学補償の機能を有することになる。
また、本発明の位相差板においては、上記位相差層が少なくともネマチック液晶性、又はスメクチック液晶性である層とコレステリック液晶性を有する層が積層されてなるものであっても良い。この場合には、1つの位相差板で、上記のようなAプレートと負のCプレートを兼ね備えた機能を果たすことができる。
位相差層を形成するための材料としては、ネマチック液晶性、スメクチック液晶性、ディスコチック液晶性、又はコレステリック液晶性を有し、且つ、反応性官能基bを有する液晶材料であれば特に限定されるものではなく、ポリマー液晶化合物、及び重合性液晶化合物のどちらでもよい。中でも、位相差層は、重合性液晶化合物を含んでなることが好ましい。重合性液晶化合物を用いることにより、耐熱性の良い位相差板を得ることができる。また重合性液晶化合物としては、分子の両末端に重合性官能基がある重合性液晶化合物が含まれることが、耐熱性のよい位相差板を得る上で好ましい。
重合性液晶化合物としては、例えば、シアノビフェニル系、シアノフェニルシクロヘキサン系、シアノフェニルエステル系、安息香酸フェニルエステル系、フェニルピリミジン系等、及びそれらの混合物などが挙げられる。重合性液晶化合物としては、中でも、光重合開始剤の存在下で紫外線により重合が可能であるエチレン性不飽和結合を有する液晶化合物が好ましく、分子の両末端に重合性官能基である(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基を有することが耐熱性のよい光学素子を得る上で更に好ましい。このような重合性液晶化合物は、1種でも使用可能であるが、液晶性を示す温度領域を拡大するためや、複屈折性を制御するために、2種以上の混合物で用いることができる。
このような重合性液晶化合物の一例としては、例えば、下記の化学式(1)で表わされる化合物を挙げることができ、化学式(1)に包含される化合物の2種以上を混合して使用することも可能である。
Figure 2010286597
化学式(1)において、R、及びRはそれぞれ、水素、又はメチル基を示し、液晶性を示す湿度範囲の広さからR、及びRは共に水素であることが好ましい。Xは、水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、又はニトロ基よりなる群から選ばれる置換基であり、塩素、又はメチル基であることが好ましい。また、化学式(1)で表わされる化合物の分子鎖両端の(メタ)アクリロイルオキシ基と、芳香環とのスペーサーであるアルキレン基の鎖長を示すp、及びqは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数を取り得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜10の範囲であることがより好ましい。
p=q=0の範囲である場合は、安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物自体の結晶性が高い。また、p、及びqがそれぞれ13以上である場合は、アイソトロピック(等方性液体)転移温度(TI)が低い。このため、p=q=0、又はp>13、及びq>13である場合は、液晶性を示す温度範囲が狭く好ましくない。
重合性液晶化合物の他の一例としては、例えば、化学式(2)、及び下記化合物(L−1)乃至(L−22)で表わされる化合物を挙げることができる。また、重合性液晶化合物としては、化学式(1)に包含される化合物、下記の化学式(2)、及び化合物(L−1)乃至(L−22)よりなる群から選択される2種以上の化合物を混合して使用することもできる。
Figure 2010286597
化学式(2)において、rは2以上5以下の整数。
Figure 2010286597
Figure 2010286597
Figure 2010286597
上述した例では、重合性液晶モノマーの例を挙げたが、本発明においては、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマー等を用いることも可能である。このような重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーとしては、従来提案されているものを適宜選択して用いることが可能である。
尚、液晶性化合物が重合性ネマチック液晶化合物を主成分とする場合には、偏光板起因の視野角依存性に対する補償用や、円偏光モード液晶ディスプレイに適用可能なλ/4やλ/2のAプレートの作製が可能となり、更に、耐熱性が良好な位相差板を得ることができる点から好ましい。
本発明においては、ネマチック液晶にカイラル剤を加えた、コレステリック液晶性を有するカイラルネマチック液晶を、好適に使用することができる。ネマチック液晶とカイラル剤を主成分とする場合には、VAモード液晶ディスプレイに適用可能な負の一軸性を持った負のCプレートが作製可能となる。カイラル剤としては、光学活性な部位を有する低分子化合物であり、分子量1500以下の化合物を意味する。カイラル剤は主として化学式(1)で表わされる化合物のような液晶化合物が発現する正の一軸ネマチック液晶性に螺旋ピッチを誘起させる目的で用いられる。この目的が達成される限り、化学式(1)で表わされる化合物や上記の化合物と、溶液状態、又は溶融状態において相溶し、上記ネマチック液晶性をとりうる重合性液晶化合物の液晶性を損なうことなく、これに所望の螺旋ピッチを誘起できるものであれば、カイラル剤としての低分子化合物の種類は特に限定されないが、分子の両末端に重合性官能基があることが耐熱性のよい位相差板を得る上で好ましい。液晶に螺旋ピッチを誘起させるために使用するカイラル剤は、少なくとも分子中に何らかのキラリティー(カイラリティーともいう)を有していることが必須である。従って、本発明で使用可能なカイラル剤としては、例えば、1つ、若しくは2つ以上の不斉炭素を有する化合物、キラルなアミン、キラルなスルフォキシド等のようにヘテロ原子上に不斉点がある化合物、又はクムレン、ビナフトール等の軸不斉を持つ化合物が例示できる。さらに具体的には、市販のカイラルネマチック液晶、例えば、Merck社製S−811(商品名)等が挙げられる。
しかし、選択したカイラル剤の性質によっては、化学式(1)で表わされる化合物が形成するネマチック液晶性の破壊、配向性の低下、あるいは当該化合物が非重合性の場合には、液晶組成物の硬化性の低下、硬化フィルムの信頼性の低下を招く恐れがある。さらに、光学活性な部位を有するカイラル剤の多量使用は、組成物のコスト上昇を招く。従って、短ピッチのコレステリック液晶性を有する位相差板を製造する場合には、液晶組成物に含有させる光学活性な部位を有するカイラル剤には、螺旋ピッチを誘発する効果の大きなカイラル剤を選択することが好ましく、具体的には化学式(3)、(4)又は(5)で表されるような分子内に軸不斉を有する化合物の使用が好ましい。
Figure 2010286597
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化学式(5)において、uは2以上5以下の整数。
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カイラル剤を表す化学式(3)、又は(4)において、Rは、水素、又はメチル基を示す。Yは、上記に示す式(Y−1)乃至(Y−22)の任意の一つであるが、なかでも、式(Y−1)、(Y−3)、及び(Y−5)の何れか一つであることが好ましい。また、アルキレン基の鎖長を示すs及びtは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜10の範囲であることがさらに好ましい。
s又はtの値が0又は1である化学式(3)又は(4)で表される化合物は、安定性に欠け、加水分解を受けやすく、結晶性も高い。一方、s又はtの値が13以上である化合物は融点(Tm)が低い。これらの化合物は、化学式(1)で表わされる化合物との相溶性が低く、濃度によっては相分離等が起こるおそれがあるため好ましくない。
本発明における重合性液晶化合物に配合されるカイラル剤の量は、螺旋ピッチ誘起能力や最終的に得られる光学素子のコレステリック性を考慮して最適値が決められる。具体的には、用いる重合性液晶化合物により大きく異なるものではあるが、重合性液晶化合物の合計量100重量部当り、0.01〜60重量部、最も好ましくは1〜20重量部の範囲で選ばれる。この配合量が上記範囲を超える場合は、分子の配向が阻害され、活性放射線によって硬化させる際に悪影響を及ぼす危惧がある。少ない場合は、十分なコレステリック液晶性を付与できない場合がある。
本発明において、このようなカイラル剤としては、特に重合性を有することが必須ではない。しかしながら、得られる位相差層の熱安定性等を考慮すると、上述した重合性液晶化合物と重合し、コレステリック液晶性を固定化することが可能な重合性のカイラル剤を用いることが好ましい。特に、分子の両末端に重合性官能基があることが、耐熱性のよい位相差板を得る上で好ましい。
(その他の成分)
本発明に係る位相差層を形成するための位相差層形成用組成物は、必須成分である上記表面を有機成分により被覆された無機微粒子、及び反応積官能基bを有する液晶化合物の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、必要に応じて、カイラル剤、バインダー成分、重合開始剤、溶剤、界面活性剤、非液晶性の重合性モノマー(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)、及び非液晶性の重合性ポリマー等のその他の成分を含有しても良い。これらの界面活性剤、非液晶性の重合性モノマー及び非液晶性のポリマーを選択することにより表面側(空気側)の液晶の傾斜角を調整することができる。
(バインダー成分)
本発明に係る位相差層形成用組成物において、バインダー成分は、位相差層に製膜性や硬度を付与する機能を有する。
バインダー成分としては、硬化性有機樹脂が好ましく、塗膜とした時に光が透過する透光性のものが好ましい。その具体例としては、紫外線若しくは電子線で代表される電離放射線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂など、塗工時に固形分を調整するための溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、又は熱硬化型樹脂の三種類が挙げられ、好ましくは電離放射線硬化型樹脂が挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂の具体例としては、(メタ)アクリレート基等のラジカル重合性官能基を有する化合物、例えば、(メタ)アクリレート系のオリゴマー、プレポリマー、又は単量体(モノマー)が挙げられる。電離放射線硬化型樹脂としては、光学フィルム等のバインダー成分として従来公知のものを用いることができる。
電離放射線硬化型樹脂を紫外線硬化型樹脂として使用する場合には、光重合開始剤又は光重合促進剤として増感剤を添加することができる。
光重合開始剤としては、従来公知のものを用いることができる。
光重合開始剤を用いる場合、その添加量は、電離放射線硬化性組成物100重量部に対し、0.1〜10重量部である。
電離放射線硬化型樹脂に混合して使用される溶剤乾燥型樹脂としては、主として熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は一般的に例示されるものが利用される。溶剤乾燥型樹脂の添加により、塗布面の塗膜欠陥を有効に防止することができる。好ましい熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、スチレン系樹脂等の従来公知のものを用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂等の従来公知の樹脂を用いることができる。
(溶剤)
また、位相差層形成用組成物に用いられる溶剤としては、上記液晶性化合物、カイラル剤が溶解し、且つ、配向膜の配向性を阻害しなければ特に限定されるものではない。具体的には炭化水素系溶剤(例、ベンゼン、ヘキサン)、ケトン溶剤(例、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)等を用いることができる。
(配向膜)
配向膜は、配向膜に隣接して形成される位相差層中の液晶性化合物を所定の方向に配向させる機能を有する。本発明において用いられる配向膜は、配向機能を有し、且つ、配向膜の屈折率が、透明基材の屈折率や位相差層の屈折率に比べて大きな差を有しないものを適宜選択すれば、特に限定されずに用いることができる。配向膜の屈折率と位相差層の屈折率との波長420nm〜480nmの光に対する屈折率差が0.04未満であるように、配向膜は選択されることが好ましい。
配向膜としては、例えば、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の形成、さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能を生じさせるものが挙げられる。
配向膜形成用材料としては、特に制限されず、例えば、PI(ポリイミド)、PVA(ポリビニルアルコール)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PE(ポリエステル)、PVCi(ポリビニルシンナメート)、PVK(ポリビニルカルバゾール)、シンナモイルを含むポリシラン、クマリン、カルコン等の既知の配向膜として用いられている樹脂を含有するものを用いることができる。
更に、配向膜に使用される材料としては、製膜時の透明性が高く、且つ、製膜後、位相差層を作製する際に使用する有機溶媒に対し不溶、又は難溶であることが好ましい。この点から、非イオン性の水溶性エーテル化多糖類或いは水溶性多糖類を用いることが好ましい。中でも、非イオン性の水溶性エーテル化多糖類を少なくとも含む配向膜形成用材料(1)、或いは、水溶性多糖類、及びエチレン性不飽和結合を有するモノマー若しくはオリゴマーを少なくとも含む配向膜形成用材料(2)は、上に形成される位相差層との密着性に優れた配向膜を形成でき、ラビング処理により配向膜の配向規制力で容易に液晶性化合物を配向させることができ、且つ、下層に樹脂製の屈折率調節層を設ける場合に密着性に優れ、更に耐久性に優れた配向膜が形成できる点から好ましい。
上記配向膜形成用材料(1)に使用される非イオン性の水溶性エーテル化多糖類には、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプンが挙げられる。
上記配向膜形成用材料(2)に使用される水溶性多糖類には、水溶性のセルロース(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースアンモニウム塩等)、デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、プルラン、キトサン、シクロデキストリンが挙げられる。
上記配向膜形成用材料に使用される多糖類、特にヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは変性されていない場合でも、該多糖類を用いて形成した配向膜は、液晶性化合物からなる位相差層と密着性が良いので好ましい。
また、配向膜形成用材料に使用される前記の非イオン性の水溶性エーテル化多糖類、或いは水溶性多糖類は、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合が導入されることが好ましい。エチレン性不飽和結合により変性された多糖類を用いて形成した配向膜は、液晶性化合物からなる位相差層と密着性がさらに向上する。また、エチレン性不飽和結合により変性された非イオン性の水溶性エーテル化多糖類或いは水溶性多糖類を用いて形成した配向膜は、耐溶剤性、耐熱性等の耐久性が向上する。
水溶性エーテル化多糖類、或いは水溶性多糖類へのエチレン性不飽和結合の導入は、多糖類の少なくとも1個のヒドロキシル基またはカルボキシル基に、ヒドロキシル基またはカルボキシル基と反応する官能基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物を反応させることによって行なうことができる。ヒドロキシル基またはカルボキシル基と反応する官能基を有する化合物としては、イソシアナート化合物、酸ハロゲン化物、混合酸無水物、またはエポキシ化合物が挙げられる。ヒドロキシル基またはカルボキシル基と反応する官能基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物の具体的な化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、上記配向膜形成用材料(2)に添加して使用されるエチレン性不飽和結合を有するモノマー若しくはオリゴマーとしては、特に制限されず用いることができる。多糖類に対しエチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーの1種または2種以上を添加して配向膜形成用材料とすることにより、該配向膜形成用材料を用いて形成した塗膜は、紫外線または電子線の照射により硬化が可能となる。このように硬化された配向膜は、多糖類に不足している性質、即ち、位相差層に対して密着性を高める性質、耐熱・耐溶剤性向上を必要な分だけ付与することができる。中でも、エチレン性不飽和結合が分子内に複数ある多官能モノマーあるいはオリゴマーは配向膜の紫外線照射または電子線照射による硬化過程において十分に架橋し、耐熱性および耐溶剤性が向上するので有利である。また、下層である屈折率調節層が光重合性化合物を用いて形成されている場合には特に屈折率調節層との密着性も高くなるので好ましい。添加して使用されるエチレン性不飽和結合を有するモノマー若しくはオリゴマーとしては、具体的には、上述の屈折率調節層で述べたような化合物を用いることができる。
また、配向膜形成用材料がエチレン性不飽和結合を有する場合には、適宜、光重合開始剤が添加される。
配向膜の形成方法は、用いられる配向膜形成用材料が配向能を発揮できるように適宜選択されれば、特に限定されない。配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。10μmを超えると配向膜の着色により位相差板の透明性が低くなる場合があるからである。
(屈折率調節層)
屈折率調節層は、透明基材と配向膜との間に設けることにより、位相差板において屈折率差が比較的大きくなる透明基材と配向膜の間において屈折率差が段階的に変化し、屈折率差を小さくする機能を有する。通常は透明基材に対して配向膜の方が、屈折率がより大きくなる場合が多い為、通常は当該屈折率調節層の屈折率Nが、上記透明基材の屈折率Nと後述する配向膜の屈折率Nと比較して、N<N<Nを満たすものであって、隣接する各層の波長420〜480nmの光に対する屈折率差が0.04未満、好ましくは0.03未満、更に好ましくは0.02未満となるものを選択すれば、特に限定されるものではない。尚、本発明に用いられる屈折率調節層は、1層だけでなく、2層以上用いられても良い。例えば、透明基材と配向膜との屈折率差が大きすぎて、1つの屈折率調節層で隣接する各層の屈折率の差を0.04未満とすることができない場合には、適宜、2つ以上の屈折率調節層を用いて、隣接する各層の屈折率の差を0.04未満とするようにしても良い。また、屈折率調節層としては、透明性を阻害せず、更に透明基材や配向膜との密着性を高める機能を有するものであることが更に好ましい。
屈折率調節層を形成する材料としては、特に限定されないが、例えば、光重合性化合物を用いることができる。光重合性化合物は、重合性官能基として、光照射により重合可能なエチレン性不飽和結合を有することが好ましい。エチレン性不飽和結合としては、例えばビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、イソプロペニル基等を挙げることができる。これらのうち(メタ)アクリロイル基が重合速度、反応性の面から好ましい。また、重合性官能基を分子内に複数有する多官能モノマー及び/又はオリゴマーは、光照射による硬化過程において十分に架橋し、網目状のマトリックスを形成するために、耐熱性及び耐溶剤性が向上するので有利であり好適に用いられる。光重合性化合物は、1種又は2種類以上を混合して用いても良い。
光重合性化合物は、例として紫外線硬化型のポリオール(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類が挙げられる。
多官能モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスβ−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピオネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、2,3−ビス(メタ)アクリロイルオキシルエチルオキシメチル「2,2,1」ヘプタン、ポリ1,2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、3,8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ「5,2,10」デカン、水素添加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
透明基材が未処理のトリアセチルセルロースの場合には、光重合性化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、または1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを少なくとも含むことが透明基材との密着性の点で好ましい。
また、必要に応じて上記多官能モノマーに単官能モノマーを併用して共重合させても良い。単官能モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、エチル(メタ)メタクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等、テトラフルフリル(メタ)アクリレート。及びそのカプロラクトン変性物などの誘導体、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸等及びそれらの混合物が挙げられる。
屈折率調節層を形成する材料としては、光重合性化合物を用いる場合には、光重合開始剤を用いることが必要となる。光重合開始剤としては、上記位相差層で用いたものと同様のものを用いることができる。
また、屈折率を調節するために、必要に応じて屈折率を調節可能な有機化合物や無機化合物、微粒子などを混合しても良い。
本発明において屈折率調節層は、用いられる材料を適宜溶剤に溶解及び/または分散させて塗工液を調製し、当該塗工液を上記透明基材に塗工して形成することができる。塗工方法としては、樹脂基材表面に位相差強化領域形成用塗工液を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、グラビアコーティング法、ロールコーティング法等の従来公知の方法を用いることができる。適切な塗工法を用いて所望の厚みに塗工し、その後溶剤成分を乾燥し、必要に応じて光照射を行なって硬化し、屈折率調節層を形成する。
また、屈折率調節層の膜厚は、特に限定されないが、1〜10μmの範囲にあることが、屈折率調整の点から好ましい。
本発明に用いられる屈折率調節層には、上層との密着性や濡れ性を向上させるために、表面処理をしても良い。表面処理としては、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理、オゾン処理などが挙げられる。
本発明は、上記形態に限定されるものではない。上記形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
(製造例1:反応性無機微粒子の調製)
(1)表面吸着イオン除去
粒径20nmの水分散コロイダルシリカ(商品名:スノーテックス50、日産化学工業(株)製、pH9〜10)を陽イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオンSK1B、三菱化学(株)製)400gを用いて3時間イオン交換を行い、次いで、陰イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオンSA20A、三菱化学(株)製)200gを用いて3時間イオン交換を行った後、洗浄し固形分濃度20重量%のシリカ微粒子の水分散体を得た。
この時、シリカ微粒子の水分散体のNaO含有量は、シリカ微粒子当たり各7ppmであった。
(2)表面処理(単官能モノマーの導入)
上記(1)の処理を行ったシリカ微粒子の水分散液10gに150mLのイソプロパノール、4.0gの3,6,9−トリオキサデカン酸、及び4.0gのメタクリル酸を加え、30分間撹拌し混合した。
得られた混合液を、60℃で5時間加熱しながら撹拌する事で、シリカ微粒子表面にメタクリロイル基が導入されたシリカ微粒子分散液を得た。得られたシリカ微粒子分散液を、ロータリーエバポレーターを用いて蒸留水、及びイソプロパノールを留去させ、乾固させないようにメチルエチルケトンを加えながら、最終的に残留する水やイソプロパノールを0.1重量%とし、固形分50重量%のシリカ分散メチルエチルケトン溶液を得た。
このようにして得られたシリカ微粒子(反応性無機微粒子)は、日機装(株)製、Nanotrac粒度分析計により測定した結果、d50=20nmの平均粒径を有していた。得られた反応性無機微粒子の比重は、2.1だった。
(製造例2:無機微粒子の調製)
製造例1において、表面吸着イオンの除去のみを行い、表面処理を行わず、有機成分により被覆されていない無機微粒子を得た。
この様にして得られた無機微粒子は、上記粒度分析計により測定した結果、d50=20nmの平均粒径を有していた。得られた無機微粒子の比重は、2.1だった。
(実施例1)
透明基材として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム上に、下記の屈折率調節層形成用塗工液を塗布し、乾燥後に光照射して硬化させ、膜厚1μmの屈折率調節層を形成した。次いで、当該屈折率調節層の濡れ性を向上させるために空気中で波長254nmの光を放射するUV殺菌ランプを搭載したUV照射装置(UVクリーナー/4 同潤光機(株)製)により5分間紫外線を照射した。その後、屈折率調節層上に、下記の配向膜形成用途工液を塗布し、乾燥後膜厚1μmの配向膜を形成した。
(屈折率調節層形成用塗工液)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート:40重量部
・光重合開始剤(商品名:イルガキュア184(Irg184)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.8重量部
・メチルエチルケトン:29.6重量部
・トルエン:29.6重量部
(配向膜形成用塗工液)
・ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業社製):1重量部
・メタノール:33重量部
・水:66重量部
次いで、下記の位相差層形成用塗工液を前記工程で作製した配向膜上に塗工し、加熱して液晶を配向させた後、光照射して、膜厚5μmの液晶層を形成し、位相差板を得た。
(位相差層形成用塗工液)
・重合性ネマチック液晶性化合物(負のCプレート配向):100重量部
・反応性無機微粒子:(シリカ、粒径20nm):1重量部(1重量%)
・光重合開始剤(商品名:イルガキュア907(Irg907)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):3重量部
・シクロヘキサノン:100重量部
・イソプロピルアルコール:10重量部
(実施例2)
実施例1において、反応性シリカ微粒子の添加量を液晶化合物の重量に対して5重量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の位相差板を得た。
(実施例3)
実施例1において、反応性シリカ微粒子の添加量を液晶化合物の重量に対して10重量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の位相差板を得た。
(実施例4)
実施例1において、反応性シリカ微粒子の添加量を液晶化合物の重量に対して15重量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の位相差板を得た。
(実施例5)
実施例1において、反応性シリカ微粒子として平均粒径40nmのものを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の位相差板を得た。
(実施例6)
実施例1において、反応性シリカ微粒子として平均粒径60nmのものを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の位相差板を得た。
(実施例7)
実施例1において、液晶化合物を正のAプレート配向の化合物とした以外は、実施例1と同様にして、実施例7の位相差板を得た。
(実施例8)
実施例1において、液晶化合物を正のCプレート配向の化合物とした以外は、実施例1と同様にして、実施例8の位相差板を得た。
(実施例9)
実施例1において、透明基材を厚さ80μmのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムに代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例9の位相差板を得た。
(実施例10)
実施例1において、透明基材を厚さ80μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例10の位相差板を得た。
(実施例11)
実施例1において、透明基材を厚さ80μmのアクリル樹脂系フィルムに代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例11の位相差板を得た。
(比較例1)
実施例1において、液晶化合物の配向形態が未配向となるようにし、且つ反応性シリカ微粒子の添加量を液晶化合物の重量に対して20重量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の位相差板を得た。
(比較例2)
実施例1において、反応性シリカ微粒子の代わりに、製造例2で得られた有機成分により被覆されていないシリカ微粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の位相差板を得た。
(評価)
上記、各実施例及び各比較例で得られた位相差板について、スキン層平均粒子数、レターデーション値及び鉛筆硬度の評価を行った。その結果を表1に示す。
(評価1:スキン層平均粒子数)
位相差層の深さ方向断面のSEM写真により、スキン層と位相差層の厚み方向においてシリカ微粒子の数を計測し、計測した粒子が存在する面積で除することによって単位面積あたりの密度を算出した。なお、位相差層の厚み方向断面における単位面積あたりの反応性シリカ微粒子の硬化したシリカ微粒子の平均粒子数を100%とした。
(評価2:レターデーション(Re)値)
得られた位相差板を王子計測機器(株)製:KOBRA−WRを用いて測定した。
(評価3:鉛筆硬度試験)
得られた位相差板の位相差層表面の鉛筆硬度をJIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(4.9N荷重)で評価した。
Figure 2010286597
1 位相差板
10 透明基材
20 位相差層
30 配向層
40 屈折率調節層

Claims (8)

  1. 少なくとも透明基材、及び位相差層を含む位相差板であって、
    当該位相差層は、平均粒径が5〜100nmであり、少なくとも表面の一部を有機成分で被覆された無機微粒子、及び、
    硬化反応性を有する反応性官能基bを有する液晶化合物を含む位相差層形成用組成物の硬化物からなり、
    当該位相差層の透明基材とは反対側の界面及びその近傍の表層領域の前記無機微粒子の粒子数が、当該位相差層の透明基材側界面及びその近傍の領域の前記無機微粒子の粒子数に比べて多く、且つ、
    前記無機微粒子の含有量が、前記液晶化合物の重量に対して、0.5〜15重量%であることを特徴とする、位相差板。
  2. 前記位相差層の透明基材とは反対側の界面及びその近傍の表層領域に、当該表層領域よりも透明基材側の領域に比べて、当該位相差層の厚み方向断面における単位面積当りの前記無機微粒子の平均粒子数が多いスキン層を有しており、
    当該スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの前記無機微粒子の平均粒子数が、当該位相差層の厚み方向断面における単位面積当りの前記無機微粒子の平均粒子数の2倍以上であることを特徴とする、請求項1に記載の位相差板。
  3. 前記スキン層の厚さは、前記位相差層の前記透明基材とは反対側の界面から前記無機微粒子の平均粒径の等倍から2倍までの厚さであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の位相差板。
  4. 前記無機微粒子は、前記有機成分により導入され、前記反応性官能基bとの硬化反応性を有する反応性官能基aを表面に有する反応性無機微粒子であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の位相差板。
  5. 前記無機微粒子は、光学異方性を有しないことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の位相差板。
  6. 前記無機微粒子は、真球状、又は略球状であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の位相差板。
  7. 前記位相差層は、更にバインダー成分を含むことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の位相差板。
  8. 前記位相差層のJIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(4.9N荷重)の硬度がB以上であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の位相差板。
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