以下、添付図面を参照して、電圧検出装置の実施の形態について説明する。
最初に、電圧検出装置1について、図面を参照して説明する。
電圧検出装置1は、非接触型の電圧検出装置であって、図1に示すように、フローティング回路部2および本体回路部3を備え、グランド電位Vgを基準として検出対象体4に生じている交流電圧V1(検出対象交流電圧)を非接触で検出可能に構成されている。
フローティング回路部2は、図1に示すように、ガード電極11、検出電極12、電源部13、検出部14および絶縁部15を備えている。ガード電極11は、導電性材料(例えば金属材料)を用いて、フローティング回路部2における基準電圧部として構成されて、その内部に検出電極12、検出部14および絶縁部15が収容されている。なお、後述するように、絶縁部15は、その一次側回路で入力した信号をその二次側回路から一次側回路と電気的に絶縁した状態で出力する機能を備えたものであるため、ガード電極11で覆われるべき部位は、少なくとも一次側回路まででよいが、二次側回路についてもガード電極11で覆われる構成を採用することもできる。また、本例では、一例として、ガード電極11に開口部(孔)11aが形成されている。検出電極12は、一例として平板状に形成されて、ガード電極11内における開口部11aを臨む位置に、ガード電極11と非接触な状態で配設されている。また、検出電極12は、交流電圧V1の検出に際しては、図1に示すように検出対象体4と容量結合(静電容量C0を介して結合)する。
電源部13は、ガード電極11の電圧Vrを基準(ゼロボルト)とした種々のフローティング電圧を生成するフローティング電源として構成されている。また、電源部13は、生成したフローティング電圧をガード電極11内に配設された各構成要素に対して作動用電圧として供給する。本例では、一例として、電源部13は、バッテリとDC/DCコンバータ(いずれも図示せず)とを備えて構成されて、DC/DCコンバータがバッテリから出力される直流電圧に基づいて種々のフローティング電圧(例えば、電圧Vrをゼロボルトとしたときに、電圧Vrに対して正電圧である第1フローティング電圧Vf+、および電圧Vrに対して第1フローティング電圧Vf+と絶対値が等しい負電圧である第2フローティング電圧Vf−。以下、単にフローティング電圧Vf+、フローティング電圧Vf−ともいう)を作動用電圧として生成する。なお、図示はしないが、バッテリに代えて、ガード電極11の外部からトランスを介して電気的に絶縁された状態でガード電極11内に交流電圧を供給し、この交流電圧をガード電極11内に設けた整流平滑部で直流電圧に変換してDC/DCコンバータに供給する構成を採用することもできる。
検出部14は、検出電極12に接続されると共に、参照信号出力部31から参照信号Ssを入力して(参照信号Ssが印加されて)、交流電圧V1に基づいて流れる検出対象電流(交流電圧V1に起因した電流信号成分)Iv1、および参照信号Ssに基づいて流れる参照電流(参照信号Ssに起因した電流信号成分)Is1の両電流値に応じて振幅が変化する検出信号S1を出力する。具体的には、検出部14は、ガード電極11の電圧Vrに対して正電圧であるフローティング電圧Vf+および負電圧であるフローティング電圧Vf−の供給を受けて作動して、交流電圧V1とガード電極11の電圧Vrとの間の交流の電位差(V1−Vr)に応じた電流値で流れる電流信号I(検出電流)に基づいて、交流の電位差(V1−Vr)に応じて振幅が変化する検出信号S1を生成して出力する。この場合、ガード電極11には、後述する参照信号出力部31から参照信号Ssが出力(印加)される。この構成により、電圧Vrは、参照信号Ssの電圧Vsと一致する。これにより、上記の電流信号Iは、参照信号Ssに起因した参照電流Is1と、交流電圧V1に起因した検出対象電流Iv1とで構成され、この電流信号Iに基づく検出信号S1も、参照電流Is1に基づく電圧信号成分(以下、「参照電圧成分」)Vs1と、検出対象電流Iv1に基づく電圧信号成分(以下、「検出対象電圧成分」)Vv1とで構成されている。また、検出部14は参照信号Ssの電圧Vsで変動するガード電極11の電圧を基準として作動して検出信号S1を生成するため、検出信号S1に含まれる参照電圧成分Vs1は参照信号Ssの電圧Vsに対して逆位相の信号となる。
本例では、一例として、検出部14は、図2に示すように、積分回路21および増幅回路22を含んで構成されている。積分回路21は、非反転入力端子がガード電極11に接続され、反転入力端子が検出電極12に接続された演算増幅器21a、演算増幅器21aの反転入力端子と出力端子との間に接続されたコンデンサ21b、およびコンデンサ21bに並列に接続された抵抗21cを備えている。この場合、コンデンサ21bは、一例として0.01μF程度のコンデンサで構成され、抵抗21cは、例えば1MΩ程度の高い抵抗値の抵抗で構成されている。このため、この積分回路21では、主としてコンデンサ21bに電流信号Iが流れることにより、電流電圧変換動作と同時に積分動作が行われて、検出対象体4の交流電圧V1とガード電極11の電圧Vrとの交流の電位差(V1−Vr)に比例して電圧値が変化する電圧信号S0が生成される。なお、この積分回路21では、コンデンサ21bのみでは直流付近での帰還量が著しく低下してゲインが極端に大きくなり、バイアス電流によるオフセットで演算増幅器21aが飽和する虞があり、この飽和によるダイナミックレンジの低下を抑制するため、抵抗21cを配設している。増幅回路22は、電圧信号S0を所定の増幅率で電圧増幅して検出信号S1として出力する。なお、図示はしないが、積分回路21を、例えば電流信号Iを電圧信号に変換する電流電圧変換回路、およびこの電圧信号を積分して検出信号S1として出力する積分回路の2つの回路で構成することもできる。
絶縁部15は、検出信号S1を入力すると共に電気的に絶縁して絶縁検出信号S2として出力する。具体的には、絶縁部15は、一例として光絶縁素子(本例では、一例としてフォトカプラ)を用いて構成されて、その一次側回路としての発光ダイオード(不図示)に入力された検出信号S1を、その二次側回路としてのフォトトランジスタから絶縁検出信号S2として出力する。つまり、絶縁部15は、検出信号S1と同位相で、かつ検出信号S1の振幅に比例して振幅が変化する信号を絶縁検出信号S2として出力する。なお、フォトカプラに代えて、一次側回路が発光ダイオードで構成され、かつ二次側回路がFET対で構成された光MOS−FETを使用して絶縁部15を構成することもできる。この場合、絶縁部15では、その一次側回路は、フローティング電圧Vf+,Vf−の供給を受けて作動する。また、検出信号S1が周波数の高い交流の場合には、トランスを使用して絶縁部15を構成することもできる。
本体回路部3は、図1に示すように、参照信号出力部31、信号抽出部32、フィルタ38、処理部33、記憶部34および出力部35を備えている。この場合、参照信号出力部31は、グランド電位Vgを基準として電圧Vsが所定の周期で変化する振幅が一定の参照信号Ss(周波数および振幅が一定の交流信号。一例として正弦波信号)を生成して、ガード電極11に出力する。これにより、ガード電極11は、その電圧Vrが参照信号Ssの電圧Vsに規定される。つまり、ガード電極11の電圧Vrは、参照信号Ssの電圧Vsと一致した状態で所定の周期で変化する。本例では、参照信号出力部31が参照信号Ssをガード電極11に直接出力する構成を採用しているが、参照信号Ssは交流信号であるため、図示はしないが、参照信号出力部31がコンデンサを介して参照信号Ssをガード電極11に出力する構成とすることもできる。また、参照信号出力部31は、参照信号Ssを信号抽出部32にも出力する。なお、同図において破線で示されている振幅変更部36は、本例では本体回路部3には含まれていない。このため、参照信号出力部31から出力された参照信号Ssは直接、信号抽出部32に入力される。また、本例では、一例として、参照信号Ssは、その周波数が検出対象体4の交流電圧V1の周波数よりも高い周波数に規定されている。この場合、参照信号Ssの周波数を検出対象体4の交流電圧V1の周波数よりも低い周波数に規定することもできる。
信号抽出部32は、一例として、増幅回路41、加算回路42、同期検波回路43および制御回路44を備え、絶縁検出信号S2を所定の利得で増幅して増幅検出信号S3を生成し、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分および参照信号Ssを、増幅検出信号S3と参照信号Ssとの加算または減算(本例では加算)によって相殺可能に絶縁検出信号S2の増幅の際の利得を制御すると共に、交流電圧V1の信号成分を増幅検出信号S3から抽出(生成)して出力信号Soとして出力する。この場合、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分とは、参照信号Ssのガード電極11への出力(印加)に基づいて検出信号S1に含まれる参照電圧成分Vs1に起因する信号成分(つまり、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssと同一周波数の信号成分)である。
具体的には、増幅回路41は、絶縁検出信号S2を入力すると共に、制御回路44から出力される制御信号(具体的には制御電圧)Scのレベル(直流電圧レベル)によって規定される増幅率(利得は1以上でも1未満でもよい)で絶縁検出信号S2を増幅して、増幅検出信号S3を生成して出力する。一例として、増幅回路41は、図3に示すように、演算増幅器41a、演算増幅器41aの反転入力端子とグランド電位との間に配設された可変抵抗素子(本例では、一例として、J−FET(Junction Field Effect Transistor:接合型電界効果トランジスタ))41b、および演算増幅器41aの反転入力端子と出力端子との間に配設された抵抗41cを備えて構成されて、全体として非反転増幅回路として構成されている。この場合、可変抵抗素子41bは、入力される制御信号Scのレベルに応じてその抵抗値が変化する。このため、増幅回路41は、入力される制御信号Scのレベルに応じてその増幅率を変化させると共に、絶縁検出信号S2をこの増幅率で増幅して増幅検出信号S3として出力する。なお、可変抵抗素子としては、外部から入力される電圧に応じて抵抗値が変化する素子であればよく、J−FET以外の素子や回路を使用して構成することもできる。本例では、一例として、可変抵抗素子41bは、入力される制御信号Scのレベルが増加したときにはその抵抗値が減少し、制御信号Scのレベルが減少したときにはその抵抗値が増加するように構成されている。この構成により、増幅回路41の増幅率は、制御信号Scのレベルが増加したときには増加し、制御信号Scのレベルが減少したときには減少する。
加算回路42は、ガード電極11に発生する電圧Vrを基準信号Srとして入力する(本例ではガード電極11には参照信号Ssのみが印加されているため、基準信号Srは参照信号Ssとなる)と共に増幅検出信号S3を入力して、両信号S3,Srを加算し、加算によって得られた加算信号を出力信号Soとして出力する。この場合、上記したように、検出信号S1は、参照信号Ssに対して逆位相の参照電圧成分Vs1と、交流電圧V1と同位相の検出対象電圧成分Vv1とで構成されている。このため、検出信号S1に基づいて生成される絶縁検出信号S2、および絶縁検出信号S2を増幅して生成される増幅検出信号S3も、参照信号Ssに対して逆位相の信号成分、および交流電圧V1と同位相の信号成分で構成される。したがって、加算回路42は、両信号S3,Srの加算処理を実行することにより、増幅検出信号S3を構成する参照信号Ssに対する逆位相の信号成分(以下、「逆相信号成分」ともいう)を基準信号Sr(本例では参照信号Ss)で相殺(キャンセル)する処理を実行する。つまり、加算回路42は、相殺回路として機能する。この場合、出力信号Soに含まれる参照信号Ssと同一周波数の信号成分は、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分の振幅と基準信号Srの振幅とが同一のときには完全にキャンセルされて(打ち消されて)除去される。一方、この参照信号Ssと同一周波数の信号成分は、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分の振幅と基準信号Srの振幅とが相違するときには出力信号Soに残存して、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分の振幅が基準信号Srの振幅よりも大きいときには参照信号Ssと逆位相となり、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分の振幅が基準信号Srの振幅以下のときには参照信号Ssと同位相となる。
同期検波回路43は、出力信号Soおよび参照信号Ssを入力すると共に、参照信号Ssで出力信号Soを同期検波することにより、検波信号Vdを生成して出力する。具体的には、同期検波回路43は、同期検波により、出力信号Soに含まれる参照信号Ssの信号成分(具体的には、参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅の増減に応じて電圧の絶対値が増減し、かつ出力信号Soに含まれる参照信号Ssの信号成分の位相が参照信号Ssの位相と一致しているとき(同位相のとき)と180°ずれているとき(逆位相のとき)とで極性の異なる検波信号Vdを生成して出力する。本例では、一例として、同期検波回路43は、出力信号Soに含まれている所定の信号成分と参照信号Ssとが同位相のときには正極性(正電圧)となり、逆位相のときには負極性(負電圧)となる検波信号Vdを生成して出力する。
制御回路44は、入力した検波信号Vdの極性に基づいて電圧が増減する制御信号Scを生成して、増幅回路41に出力する。本例では、一例として、制御回路44は、入力した検波信号Vdが正極性のときには、制御信号Scの電圧レベルを増加させ、一方、入力した検波信号Vdが負極性のときには、制御信号Scの電圧レベルを減少させる。以上の構成により、信号抽出部32では、増幅回路41の利得(増幅率)に対するフィードバック制御が同期検波回路43および制御回路44によって行われて、制御回路44が、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅が一定となるように(本例では加算回路42に基準信号Srとして入力される参照信号Ssの振幅と同じ振幅となるように)増幅回路41の増幅率を検波信号Vdに基づいて制御する。これにより、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分の振幅が、加算回路42に入力される基準信号Sr(本例では参照信号Ss)の振幅に一致させられる。したがって、加算回路42は、増幅検出信号S3および基準信号Srの加算処理を実行して、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分を参照信号Ssで相殺(キャンセル)させて、検出対象体4の交流電圧V1に起因した検出対象電流Iv1に基づく電圧成分(交流電圧V1と同一周波数の信号成分)で構成される出力信号Soを生成して出力する。
この場合、検出対象体4と検出電極12との間に形成される静電容量C0の大きさに応じて、電流信号Iに含まれる参照電流Is1および検出対象電流Iv1が同じ割合で変動し、検出信号S1に含まれる参照電圧成分Vs1および検出対象電圧成分Vv1も同じ割合で変動する。したがって、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)および交流電圧V1と同一周波数の信号成分についても、両成分は同じ割合で変動するが、信号抽出部32では、上記したフィードバック制御により、増幅検出信号S3は、この信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅が基準信号Sr(本例では参照信号Ss)の振幅と一致するように増幅回路41によって生成される。このため、本例の構成の電圧検出装置1では、出力信号Soに含まれている検出対象電流Iv1に基づく電圧成分は、静電容量C0の大きさに拘わらず、その振幅が検出対象体4に発生している交流電圧V1の振幅に対応した大きさに、理論的には、その振幅が検出対象体4に発生している交流電圧V1の振幅と一致した状態となる。
フィルタ38は、参照信号Ssと同一周波数の信号成分を選択的に通過させるフィルタ(一例としてバンドパスフィルタ)であって、図1において破線で示すように、A点において検出された絶縁検出信号S2を入力すると共に、絶縁検出信号S2に含まれる参照信号Ssの信号成分Ss2を抽出して処理部33に出力する。
処理部33は、A/D変換器およびCPU(いずれも図示せず)を備えて構成されて、出力信号Soの電圧波形(レベル)を所定周波数のサンプリングクロックでサンプリングしてデジタルデータD1に変換して記憶部34に記憶させる記憶処理、このデジタルデータD1に基づいて交流電圧V1を算出する電圧算出処理、および算出した交流電圧V1を出力する出力処理を実行する。また、処理部33は、判別部として機能して、フィルタ38から出力された信号成分Ss2の電圧波形をデジタルデータに変換して、そのレベル(この信号成分Ss2の振幅レベルまたはこの信号成分Ss2についての整流後の直流電圧レベル(直流電圧の絶対値))を検出し、この検出したレベルVa(一例として振幅レベル)と予め規定された規定レベルVreとを比較することにより、電圧検出装置1における交流電圧V1の検出動作に対する診断処理を実行する。
この場合、電圧検出装置1では、装置が正常に動作している状態において検出電極12と検出対象体4とが容量結合したときには、参照信号出力部31から出力される参照信号Ssに起因した電流信号I(具体的には、参照電流Is1)が検出対象体4とフローティング回路部2との間に流れ、この参照電流Is1に起因した信号成分が絶縁検出信号S2および増幅検出信号S3に常に含まれた状態となっている。したがって、一例としてこの正常動作時において絶縁検出信号S2に含まれている参照信号Ssの上記レベルVaの下限値を規定レベルVreとして理論的にまたは実験的に予め算出して記憶部34に記憶しておくことにより、処理部33は、検出した参照信号Ssの信号成分Ss2についてのレベルVaが規定レベルVre以上のときには装置の動作が正常である(動作正常)と判別する判別処理、および検出した信号成分Ss2についてのレベルVaが規定レベルVre未満のときには装置の動作に異常の発生している虞がある(動作異常)と判別する判別処理のうちの少なくとも1つの処理(本例では一例として両判別処理)を上記の診断処理として実行することで、電圧検出装置1の動作が正常である(交流電圧V1の検出動作が正常に行われている)か、または異常である(交流電圧V1の検出動作に正常に行われていない)かを診断可能となる。
記憶部34は、ROMやRAMなどで構成されている。この場合、記憶部34には、処理部33での電圧算出処理において使用される電圧算出用テーブルTBが予め記憶されている。この電圧算出用テーブルTBの作成手順についてのその概要を説明する。一例として、既知の電圧Vs(一定)の参照信号Ssをガード電極11に出力して同期検波回路43および制御回路44によるフィードバック制御を行っている状態において、検出対象体4に発生させる交流電圧V1の振幅を所定の電圧ステップで変化させつつデジタルデータD1を取得して、その電圧ステップで変化させた交流電圧V1に対応付けてデジタルデータD1を交流電圧V1の電圧値と共に記憶させることで、電圧算出用テーブルTBを作成する。この構成により、処理部33は、取得したデジタルデータD1に対応する交流電圧V1の電圧値を電圧算出用テーブルTBを参照して取得することで、検出対象体4の交流電圧V1を算出することが可能となっている。また、記憶部34には、上記した規定レベルVreが予め記憶されている。出力部35は、本例では、一例としてディスプレイ装置で構成されて、処理部33での出力処理において、交流電圧V1の波形や算出した電圧パラメータ(振幅や実効値)を表示させる。
次いで、電圧検出装置1による検出対象体4の交流電圧V1に対する検出動作について説明する。
まず、検出電極12が非接触の状態で検出対象体4に対向するように、フローティング回路部2(または電圧検出装置1全体)を検出対象体4の近傍に位置させる。これにより、図1に示すように、検出電極12と検出対象体4との間に静電容量C0が形成された状態となる。この場合、静電容量C0の容量値は、検出電極12と検出対象体4の距離に反比例して変化するが、フローティング回路部2を一旦配設した後は、温度などの環境が一定の条件下においては一定の(変動しない)値となる。また、静電容量C0の容量値が一般的に極めて小さい(例えば数pF〜数十pF程度)ため、交流電圧V1の周波数が数百Hz程度であったとしても、検出対象体4と検出電極12との間のインピーダンスが十分に大きな値(数MΩ)となる。このため、この電圧検出装置1では、検出対象体4の交流電圧V1とガード電極11の電圧Vrとが大きく異なる場合(電位差Vdiが大きい場合)においても、検出部14を構成する演算増幅器21aに入力耐圧の低い安価な製品を使用することができ、この構成においても、電位差Vdiによる演算増幅器21aの破壊が回避されている。
また、検出電極12と検出対象体4とが静電容量C0を介して交流的に接続されることにより、グランド電位Vgから、検出対象体4、検出電極12、検出部14、ガード電極11および参照信号出力部31を介してグランド電位Vgに至る電流経路A(図1中において一点鎖線で示す経路)が形成される。このため、この電流経路Aには、参照信号Ssの電圧Vsに起因した参照電流Is1と、検出対象体4の交流電圧V1に起因した検出対象電流Iv1とで構成される電流信号Iが流れている。
これにより、フローティング回路部2では、図1,2に示すように、検出部14の積分回路21が電流信号Iを積分して電圧信号S0を生成し、増幅回路22がこの電圧信号S0を増幅して検出信号S1として出力する。また、絶縁部15は、この検出信号S1を入力して、検出信号S1と電気的に絶縁された絶縁検出信号S2として出力する。
また、本体回路部3の信号抽出部32では、図1に示すように、増幅回路41が、絶縁検出信号S2を入力すると共に、制御回路44から出力される制御信号Scの電圧レベルで規定される増幅率で絶縁検出信号S2を増幅して、増幅検出信号S3として出力する。次いで、加算回路42が、増幅検出信号S3および基準信号Srを入力すると共に、両信号S3,Srを互いに加算する加算処理を実行して、出力信号Soとして出力する。この場合、上記したように、増幅回路41の利得(増幅率)に対するフィードバック制御が同期検波回路43および制御回路44によって行われて、増幅回路41からの増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅が基準信号Sr(本例では参照信号Ss)の振幅に一致させられる。このため、加算回路42での加算処理により、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分が基準信号Srで相殺(キャンセル)されて、つまり、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分が除去されて、検出対象体4の交流電圧V1に起因した検出対象電流Iv1に基づく電圧成分(交流電圧V1と同一周波数の信号成分)で構成される出力信号Soが出力される。
次いで、処理部33が、記憶処理を実行して、出力信号Soを入力すると共にデジタルデータD1に変換して記憶部34に記憶させる。続いて、処理部33が、電圧算出処理を実行する。この電圧算出処理では、処理部33は、記憶部34に記憶されているデジタルデータD1を読み出すと共に、電圧算出用テーブルTBを参照して、読み出したデジタルデータD1に対応する交流電圧V1を取得する。また、処理部33は、この取得した交流電圧V1に基づいて、例えば交流電圧V1の実効値や振幅などを算出して記憶部34に記憶させる。
また、フィルタ38は、絶縁検出信号S2を入力すると共に絶縁検出信号S2に含まれる参照信号Ssの信号成分Ss2を抽出して処理部33に出力する動作を連続して実行しており、処理部33は、上記の記憶処理および電圧算出処理と並行して、フィルタ38から出力される信号成分Ss2を用いた診断処理を実行している。この診断処理では、処理部33は、まず、入力した信号成分Ss2の電圧波形をデジタルデータに変換して、信号成分Ss2のレベルVa(本例では信号成分Ss2の振幅レベル)を検出し、この検出したレベルVaと記憶部34から読み出した規定レベルVreとを比較する。次いで、処理部33は、この比較の結果、レベルVaが規定レベルVre以上のときには装置の動作が正常である(動作正常)と判別し、レベルVaが規定レベルVre未満のときには装置の動作に異常がある(動作異常)と判別して、この判別結果を記憶部34に記憶させる。これにより、診断処理が完了する。
最後に、処理部33は、出力処理を実行して、記憶部34に記憶されている交流電圧V1の実効値や振幅などを診断処理での判別結果と共に、ディスプレイ装置で構成された出力部35に表示させる。これにより、電圧検出装置1による検出対象体4の交流電圧V1の検出が完了する。なお、出力処理において、処理部33が診断処理での判別結果が動作正常と判別したときには交流電圧V1の実効値や振幅などを出力部35に表示させ、診断処理での判別結果が動作異常と判別したときには、診断処理での判別結果のみを出力部35に表示させて、交流電圧V1の実効値や振幅などについては出力部35に表示させない構成を採用することもできる。
この電圧検出装置1では、参照信号出力部31がガード電極11に参照信号Ssを出力し、フローティング電圧Vf+,Vf−の供給を受けて作動する検出部14が、検出電極12を介して検出対象体4とガード電極11との間に交流電圧V1とガード電極11の電圧Vrとの間の交流の電位差(V1−Vr)に応じた電流値で流れる電流信号Iに基づいて、交流の電位差(V1−Vr)に応じて振幅が変化する検出信号S1を出力し、絶縁部15が検出信号S1を入力して絶縁検出信号S2として出力し、信号抽出部32が絶縁検出信号S2に含まれている参照信号Ssと同一の信号成分の振幅が予め規定された振幅(参照信号Ssとの加算または減算によって増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssと同一の信号成分を相殺可能な振幅)となるように、つまり一定となるように絶縁検出信号S2の振幅を制御して増幅検出信号S3として出力すると共に、このように振幅が制御された増幅検出信号S3と参照信号出力部31から出力される参照信号Ssとの加算または減算によって増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssと同一の信号成分を除去して出力信号Soとして出力し、処理部33が検出対象電流Iv1(検出対象体4の交流電圧V1に起因して発生する電流成分)に基づいて発生する電圧成分で構成される出力信号Soのレベルに基づいて交流電圧V1を算出する。
したがって、この電圧検出装置1によれば、信号抽出部32が参照信号Ssと同一周波数の信号成分の振幅が一定となるように増幅検出信号S3の振幅を制御し、この増幅検出信号S3と参照信号Ssとの加算または減算によって増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssと同一の信号成分を除去して出力信号Soとして出力することにより、検出対象体4と検出電極12との間の結合容量(静電容量C0)が未知の場合であっても(静電容量C0の値に拘わらず)、交流電圧V1についての感度が一定の感度になるように制御されるため、つまり、出力信号Soに含まれている検出対象電流Iv1に基づく電圧成分の振幅が交流電圧V1の振幅に対応した大きさとなるように制御されるため、出力信号Soに含まれているこの電圧成分を検出することで、静電容量C0の算出を行うことなく、交流電圧V1を非接触で検出することができる。
また、この電圧検出装置1によれば、処理部33が、絶縁検出信号S2に含まれている参照信号Ssの信号成分Ss2についてのレベルVa(信号成分Ss2の振幅レベル)を検出すると共に規定レベルVreと比較して、電圧検出装置1の動作が正常であるか、または異常であるかを判別する判別処理を実行するため、オペレータは、この判別処理の結果に基づいて、電圧検出装置1において電圧の検出動作が正常に行われているか否かの診断(判別)を行うことができる。したがって、この電圧検出装置1によれば、検出された交流電圧V1が動作正常時のものであるか、動作異常時のものであるかをオペレータに認識させることができるため、検出された交流電圧V1に対する信頼性を高めることができる。
なお、A点において検出された絶縁検出信号S2に基づいて処理部33が電圧検出装置1の診断を実行する構成を採用した例を挙げて説明したが、上記したように参照電流Is1に起因した信号成分は、絶縁検出信号S2だけではなく、増幅検出信号S3にも含まれている。このため、B点において検出された増幅検出信号S3に基づいて処理部33が診断処理を実行する構成を採用することもできる。この構成では、フィルタ38は、図1において破線で示すように、B点から増幅検出信号S3を入力すると共に増幅検出信号S3に含まれる参照信号Ssの信号成分を抽出して、信号成分Ss2として処理部33に出力する。処理部33は、A点において検出された絶縁検出信号S2に基づいて電圧検出装置1の診断を実行する場合と同様にして、フィルタ38から出力される信号成分Ss2を用いた診断処理を実行して、信号成分Ss2のレベルVaが規定レベルVre以上のときには装置の動作が正常である(動作正常)と判別し、レベルVaが規定レベルVre未満のときには装置の動作に異常がある(動作異常)と判別して、この判別結果を記憶部34に記憶させる。この場合の規定レベルVreとしては、電圧検出装置1の正常動作時において増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの上記レベルVaの下限値を予め算出して使用する。
また、電圧検出装置1では、正常動作時には、増幅回路41の利得(増幅率)に対するフィードバック制御が同期検波回路43および制御回路44によって行われて、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅が、加算回路42に基準信号Srとして入力される参照信号Ssの振幅と同じ振幅に制御され、これにより、加算回路42において増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分が参照信号Ssで相殺(キャンセル)される。つまり、出力信号Soに含まれる基準信号Sr(本例では参照信号Ss)の信号成分についてのレベル(例えば振幅レベル)、ひいては同期検波回路43から出力される検波信号Vdのレベル(直流電圧レベル)が低レベルとなっている。一方、例えば、フローティング回路部2や、増幅回路41の利得(増幅率)に対するフィードバック制御動作に異常が発生しているとき(電圧検出装置1の動作が異常のとき)には、出力信号Soに含まれる基準信号Srの信号成分についてのレベルが高レベルとなり、ひいては同期検波回路43から出力される検波信号Vdのレベル(直流電圧レベル)が高レベルとなる。
したがって、C点において検出された出力信号SoおよびD点において検出された検波信号Vdの少なくとも一方の信号に基づいて、処理部33が電圧検出装置1の診断を実行する構成を採用することもできる。この場合、出力信号Soに基づいて診断を実行する構成では、フィルタ38は、図1において破線で示すように、C点から出力信号Soを入力すると共に出力信号Soに含まれる参照信号Ssの信号成分を抽出して、信号成分Ss2として処理部33に出力する。処理部33は、C点において検出された出力信号Soに基づく診断処理では、A点において検出された絶縁検出信号S2に基づく診断処理のときとは逆に、信号成分Ss2のレベルVaが規定レベルVre以下のときには装置の動作が正常である(動作正常)と判別し、レベルVaが規定レベルVreを超えるときには装置の動作に異常がある(動作異常)と判別して、この判別結果を記憶部34に記憶させる。この場合の規定レベルVreとしては、電圧検出装置1の正常動作時において出力信号Soに含まれている参照信号Ssの上記レベルVaの上限値を予め算出して使用する。
また、検波信号Vdに基づいて診断を実行する構成では、処理部33は、図1において破線で示すように、D点から検波信号Vdを入力すると共に、C点において検出された出力信号Soに基づく診断処理と同様にして、検波信号Vdのレベル(このレベルについてもレベルVaとして説明する)Vaが規定レベルVre以下のときには装置の動作が正常である(動作正常)と判別し、レベルVaが規定レベルVreを超えるときには装置の動作に異常がある(動作異常)と判別して、この判別結果を記憶部34に記憶させる。この場合の規定レベルVreとしては、電圧検出装置1の正常動作時における検波信号Vdの上記レベルVaの上限値を予め算出して使用する。
また、上記の例では、相殺回路(上記例では加算回路42)に基準信号Srとして参照信号Ssを直接入力する構成を採用しているが、図1において破線で示すように、参照信号出力部31と加算回路42との間に振幅変更部36を配設して、参照信号出力部31から出力される参照信号Ssの振幅を振幅変更部36において、k倍(kは正の実数)に変更して加算回路42に基準信号Sr1として出力する構成を採用することもできる。この振幅変更部36は、例えば、分圧抵抗などで構成されるアッテネータで簡易に構成することができる。また、振幅変更部36を所定の利得(k倍)で信号を増幅する増幅器で構成して、電圧信号Srの振幅よりも基準信号Sr1の振幅を増大させることもできる。これらの構成においては、信号抽出部32では、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分についての振幅が、k倍された参照信号Ssの振幅(基準信号Sr1の振幅)と一致するようにフィードバック制御される。この場合、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分とk倍された基準信号Sr1とが加算回路42において相殺された状態において、出力信号Soに含まれている交流電圧V1に起因した検出対象電流Iv1に基づく電圧成分の振幅についてもk倍された状態で検出される。このため、この検出された検出対象電流Iv1に基づく電圧成分を1/k倍することによって、交流電圧V1を検出することができる。
したがって、この構成によれば、振幅変更部36での倍率kを変更することにより、検出(測定)できる交流電圧V1の範囲を拡大することができる。例えば、処理部33での出力信号Soの入力レベルに規定がある場合(上記のようにA/D変換器を備えた構成では、A/D変換器の入力定格によって出力信号Soの入力レベルが制限される)においても、倍率kを数値1/10とすることにより、数値1としたとき(基準信号Srとして参照信号Ssを加算回路42に直接入力する構成)と比較して、規定された出力信号Soの入力レベルを満足させつつ、より高電圧の交流電圧V1まで検出(測定)することができる。
また、上記の電圧検出装置1では、制御回路44が増幅回路41の増幅率を制御することにより、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssと同一周波数の信号成分の振幅を基準信号Sr(本例では参照信号Ss)の振幅と一致させ、増幅検出信号S3と基準信号Sr(Sr1)とを加算回路42において加算して、出力信号Soに含まれる参照信号Ssと同一周波数の信号成分を除去しているが、図4に示す電圧検出装置1Aのように、フィルタ45を使用して、出力信号Soに含まれる参照信号Ssと同一周波数の信号成分を除去する構成を採用することもできる。以下、電圧検出装置1Aについて説明する。なお、電圧検出装置1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
電圧検出装置1Aは、図4に示すように、フローティング回路部2および本体回路部3Aを備え、検出対象体4に生じている交流電圧V1を非接触で検出可能に構成されている。
フローティング回路部2は、図4に示すように、電圧検出装置1と同一に構成されて、検出電極12が検出対象体4と容量結合された状態において、絶縁検出信号S2を出力する。
本体回路部3Aは、図4に示すように、参照信号出力部31、信号抽出部32A、フィルタ38、処理部33、記憶部34および出力部35を備えている。本例の信号抽出部32Aは、一例として、増幅回路41、同期検波回路43A、制御回路44Aおよびフィルタ45を備え、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssと同一周波数の信号成分の振幅が一定の振幅(予め規定された振幅)となるように絶縁検出信号S2を増幅して増幅検出信号S3を生成すると共に、この増幅検出信号S3から参照信号Ssと同一の信号成分を除去して出力信号Soとして出力する。この場合、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分とは、参照信号Ssのガード電極11への出力(印加)に基づいて検出信号S1に含まれる参照電圧成分Vs1に起因する信号成分(つまり、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssと同一周波数の信号成分)である。
具体的には、増幅回路41は、絶縁検出信号S2を入力すると共に、制御回路44から入力される制御信号(具体的には制御電圧)Scのレベル(直流電圧レベル)によって規定される増幅率(利得は1以上でも1未満でもよい)で絶縁検出信号S2を増幅して、増幅検出信号S3を生成して出力する。
一例として、まず、同期検波回路43Aが、増幅回路41から増幅検出信号S3を入力すると共に、参照信号出力部31から参照信号Ssを入力して、この参照信号Ssでこの増幅検出信号S3を同期検波することにより、検波信号Vdを生成して出力する。具体的には、同期検波回路43Aは、同期検波により、増幅検出信号S3に含まれる参照信号Ssの信号成分(具体的には、参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅の増減に応じて電圧の絶対値が増減し、かつ増幅検出信号S3に含まれる参照信号Ssの信号成分の位相が参照信号Ssの位相と一致しているとき(同位相のとき)と180°ずれているとき(逆位相のとき)とで極性の異なる検波信号Vdを生成して出力する。本例では、増幅検出信号S3に含まれる参照信号Ssの信号成分は、参照信号出力部31による参照信号Ssのガード電極11(つまり、検出部14)への出力(印加)に起因して生じたものであるため、参照信号Ssと、増幅検出信号S3に含まれる参照信号Ssの信号成分との位相関係は常に一定の関係(同位相か逆位相のいずれか。本例では一例として逆位相)となっている。したがって、本例の同期検波回路43Aは、増幅検出信号S3に含まれる参照信号Ssの信号成分についての振幅の増減に応じて電圧の絶対値が増減する一の極性(本例では一例として正極性)の検波信号Vdを生成して出力する。
次いで、制御回路44Aは、入力した検波信号Vdの電圧および目標電圧Ve(内部で生成している電圧、または外部から入力している電圧。本例では一例として制御回路44Aの外部から入力している電圧)に基づいて制御信号Scを生成して出力する。具体的には、制御回路44Aは、検波信号Vdの電圧が目標電圧Veよりも低いときには電圧レベルを増加させ、検波信号Vdの電圧が目標電圧Veよりも高いときには電圧レベルを減少させて、制御信号Scを出力する。以上の構成により、信号抽出部32Aでは、増幅回路41の利得(増幅率)に対するフィードバック制御が同期検波回路43Aおよび制御回路44Aによって行われて、制御回路44Aが、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅が一定となるように増幅回路41の増幅率を検波信号Vdに基づいて制御する。この場合、この予め規定された振幅として、任意の値を採用することができる。また、処理部33での電圧算出処理において使用される後述の電圧算出用テーブルTBの作成に際しては、この採用した値を予め規定された振幅として、同期検波回路43Aおよび制御回路44Aが増幅回路41の増幅率をフィードバック制御している状態において処理部33によって取得されたデジタルデータD1に基づいて作成する。
続いて、フィルタ45が、増幅回路41から出力された増幅検出信号S3を入力すると共に、この増幅検出信号S3から交流電圧V1の信号成分を抽出して出力信号Soとして出力する。例えば、フィルタ45は、バンドパスフィルタやローパスフィルタに構成されたパッシブフィルタ回路やアクティブフィルタ回路で構成されて、参照信号Ssと同一周波数の信号成分の通過を阻止し、かつ検出対象体4の交流電圧V1に起因した検出対象電流Iv1に基づく電圧成分(交流電圧V1と同一周波数の信号成分)を通過させる。この構成により、信号抽出部32Aは、検出対象体4の交流電圧V1に起因した検出対象電流Iv1に基づく電圧成分で構成される出力信号Soを生成して出力する。
この電圧検出装置1Aでは、検出対象体4と検出電極12との間に形成される静電容量C0の大きさに応じて、電流信号Iに含まれる参照電流Is1および検出対象電流Iv1が同じ割合で変動し、検出信号S1に含まれる参照電圧成分Vs1および検出対象電圧成分Vv1も同じ割合で変動する。したがって、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)および交流電圧V1と同一周波数の信号成分についても、両成分は同じ割合で変動するが、信号抽出部32Aでは、上記したフィードバック制御により、増幅検出信号S3は、この信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅が一定となるように増幅回路41によって生成される。このため、本例の構成の電圧検出装置1Aでは、出力信号Soに含まれている検出対象電流Iv1に基づく電圧成分は、静電容量C0の大きさに拘わらず、その振幅が検出対象体4に発生している交流電圧V1の振幅に対応した大きさ(比例した大きさ)となる。この結果、信号抽出部32から出力される出力信号Soは、その振幅が検出対象体4の交流電圧V1の振幅に比例して変化する信号となる。
したがって、この電圧検出装置1Aにおいても、電圧検出装置1と同様にして、信号抽出部32Aが参照信号Ssと同一周波数の信号成分の振幅が一定となるように増幅検出信号S3の振幅を制御することにより、検出対象体4と検出電極12との間の結合容量(静電容量C0)が未知の場合であっても、処理部33が、検出対象電流Iv1に基づいて発生する電圧成分、つまり交流電圧V1の周波数と同一周波数の電圧成分で構成される出力信号Soを入力して、そのデジタルデータD1を取得することができる。このため、例えば、増幅回路41の利得(増幅率)に対するフィードバック制御が同期検波回路43Aおよび制御回路44Aによって行われて、制御回路44Aが、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅が一定(予め規定された振幅)となるように増幅回路41の増幅率を検波信号Vdに基づいて制御している状態において、検出対象体4に発生させる交流電圧V1の振幅を所定の電圧ステップで変化させつつデジタルデータD1を取得して、その電圧ステップで変化させた交流電圧V1に対応付けてデジタルデータD1を交流電圧V1の電圧値と共に記憶させることで、電圧算出用テーブルTBを予め作成しておくことにより、処理部33が、取得したデジタルデータD1に対応する交流電圧V1の電圧値を電圧算出用テーブルTBを参照して取得することで、検出対象体4の交流電圧V1を算出することができる。これにより、この電圧検出装置1Aによれば、検出対象体4と検出電極12との間の結合容量(静電容量C0)を算出する手間を省いて、検出対象体4の交流電圧V1を非接触で正確に検出することができるなどの電圧検出装置1と同様の効果を奏することができる。
また、電圧検出装置1の場合と同様にして、フィルタ38は、絶縁検出信号S2を入力すると共に絶縁検出信号S2に含まれる参照信号Ssの信号成分Ss2を抽出して処理部33に出力する動作を連続して実行し、処理部33はフィルタ38から出力される信号成分Ss2を用いた診断処理を実行している。このため、この電圧検出装置1Aにおいても、オペレータは、診断処理において行われる判別処理の結果に基づいて、電圧検出装置1Aにおいて電圧の検出動作が正常に行われているか否かの診断(判別)を行うことができる。したがって、この電圧検出装置1Aによっても、検出された交流電圧V1が動作正常時のものであるか、動作異常時のものであるかをオペレータに認識させることができるため、検出された交流電圧V1に対する信頼性を高めることができる。
また、電圧検出装置1Aにおいても、上記した電圧検出装置1の場合と同様にして、図4中において破線で示すように、処理部33が、A点において検出される絶縁検出信号S2に含まれている参照信号Ssの信号成分Ss2についてのレベルVaに代えて、B点において検出される増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分についてのレベルVaや、C点において検出される出力信号Soに含まれている参照信号Ssの信号成分についてのレベルVaや、D点において検出される検波信号VdについてのレベルVaを使用して、診断処理を実行する構成を採用してもよいのは勿論であり、いずれのレベルVaに基づいても、電圧検出装置1Aにおいて電圧の検出動作が正常に行われているか否かの診断(判別)を行うことができる。
また、増幅検出信号S3から交流電圧V1の信号成分を抽出して出力信号Soを生成する手法として、処理部33において、増幅検出信号S3をデジタル信号処理する手法も採用できるが、この電圧検出装置1Aによれば、上記した特性を有する既知のフィルタ回路で構成し得るフィルタ45を使用して、交流電圧V1を抽出する構成としたことにより、簡易な構成でありながら、検出対象電流Iv1に基づいて発生する電圧成分で構成される出力信号Soを低コストで生成することができる。また、この電圧検出装置1Aによれば、目標電圧Veを変更することにより、検出し得る交流電圧V1の範囲を変更することができる。
また、上記の電圧検出装置1(1A)では、例えば、絶縁部15と増幅回路41との間、参照信号出力部31と加算回路42との間、および参照信号出力部31と同期検波回路43(43A)との間をそれぞれ直接接続する構成を採用したが、図示はしないが、必要に応じてバッファを介装する構成を採用することもできる。また、参照信号出力部31から出力される参照信号Ssをそのままのレベルで同期検波回路43(43A)に供給する構成を採用した例について上記したが、図示はしないが、一例として分圧抵抗などで構成されるアッテネータを使用して、参照信号Ssを必要なレベルに低減させて、同期検波回路43(43A)に供給する構成を採用することもできる。
また、図示はしないが、アナログ信号である絶縁検出信号S2をデジタルデータに変換するA/D変換部、および参照信号出力部31から信号抽出部32(または32A)に供給されるアナログ信号である参照信号Ssをデジタルデータに変換するA/D変換部を本体回路部3(または3A)内に設けることにより、信号抽出部32(または32A)での処理のすべて若しくは一部をデジタル処理で行う構成を採用することもできる。この場合、処理部33に信号抽出部32(または32A)の機能を持たせる構成を採用することもでき、この構成によれば、回路部品点数を大幅に低減することができる。また、処理部33の機能と、信号抽出部32(または32A)の機能とをソフトウェアで実現してもよいし、ハードウェア(DSP(Digital Signal Processor)やロジックアレイ)で実現することもできる。
また、図5に示す電圧検出装置1Bのように、絶縁検出信号S2に基づいて電圧信号S4を生成すると共にガード電極11に出力(印加)し、かつこの電圧信号S4の電圧V4が交流電圧V1に近づくようにフィードバック制御する構成を電圧検出装置1の基本構成と併用する構成を採用しても、検出対象体4の交流電圧V1を非接触で検出することができ、この電圧検出装置1Bにおいても、電圧検出装置1と同様にして、A,B,C,D点において検出される各信号のいずれかに基づいて、処理部33が電圧検出装置1Bに対する診断処理を実行することができる。
以下、この電圧検出装置1Bについて、図5〜図10を参照して説明する。なお、電圧検出装置1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
電圧検出装置1Bは、非接触型の電圧検出装置であって、図5に示すように、フローティング回路部2および本体回路部3Bを備え、グランド電位Vgを基準として検出対象体4に生じている交流電圧V1(検出対象交流電圧)を非接触で検出可能に構成されている。
フローティング回路部2は、図5に示すように、ガード電極11、検出電極12、電源部13、検出部14および絶縁部15を備え、電圧検出装置1,1Aと同様に構成されている。このフローティング回路部2では、検出部14は、交流の電位差(V1−Vr)に応じた電流値で流れる電流信号I(検出電流)に基づいて、交流の電位差(V1−Vr)に応じて振幅が変化する検出信号S1を生成して出力する。この場合、ガード電極11には、後述する参照信号出力部31からコンデンサC31aを介して参照信号Ssが出力(印加)されると共に、後述するフィードバック制御部37から電圧信号S4が出力(印加)される。この構成により、電圧Vrは、電圧信号S4の電圧(フィードバック電圧)V4と参照信号Ssの電圧Vsとの合成電圧となる。これにより、上記の電流信号Iは、参照信号Ssに起因した参照電流Is1と、電圧信号S4に起因した電流信号成分(以下、「FB電流成分」ともいう)Ib1と、検出対象体4の交流電圧V1に起因した検出対象電流Iv1とで構成され、この電流信号Iに基づく検出信号S1も、参照電流Is1に基づく参照電圧成分Vs1と、FB電流成分Ib1に基づく電圧信号成分(以下、「FB電圧成分」)Vb1と、検出対象電流Iv1に基づく検出対象電圧成分Vv1とで構成されている。また、検出部14は参照信号Ssの電圧Vsおよび電圧信号S4の電圧V4で変動するガード電極11の電圧を基準として作動して検出信号S1を生成するため、検出信号S1に含まれる参照電圧成分Vs1は参照信号Ssに対して逆位相の信号となり、検出信号S1に含まれるFB電圧成分Vb1も電圧信号S4に対して逆位相の信号となる。
絶縁部15は、検出信号S1を入力すると共に電気的に絶縁して絶縁検出信号S2として出力する。以上のように構成されたフローティング回路部2は、低い周波数(数Hz)から高い周波数(数百Hz)に亘る広い周波数帯域でフラットな周波数特性を有しており、上記したように、電位差(V1−Vr)に応じた電流値で流れる電流信号I(検出電流)を検出して、この交流の電位差(V1−Vr)に応じて振幅が変化する絶縁検出信号S2を生成して出力する。
本体回路部3Bは、図5に示すように、参照信号出力部31、信号抽出部32、処理部33、記憶部34、出力部35、振幅変更部36、およびフィードバック制御部37を備えている。この場合、参照信号出力部31は、参照信号Ss(周波数および振幅が一定の交流信号)を生成して、コンデンサ31aを介してガード電極11に出力する。本例では一例として、参照信号Ssの周波数fsは、後述するように、フィードバック制御部37の応答可能な周波数帯域W1,2を超える周波数帯域W3内に規定されている(図6参照)。振幅変更部36は、アッテネータ(一例として直列に接続された2本の抵抗36a,36b)で構成されて、ガード電極11の電圧Vrを電圧信号Srとして入力すると共に、その振幅を変更(k倍:kは正の実数)して基準信号Sr1として出力する。
信号抽出部32は、一例として、増幅回路41、加算回路42、同期検波回路43および制御回路44を備え、絶縁検出信号S2を所定の利得で増幅して増幅検出信号S3を生成し、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分(以下、第1信号成分ともいう)、および基準信号Sr1に含まれている参照信号Ssの信号成分(以下、第2信号成分ともいう)を、増幅検出信号S3と基準信号Sr1との加算または減算(本例では一例として加算)によって相殺可能に絶縁検出信号S2の増幅の際の利得を制御することにより、後述するように交流電圧V1の信号成分で構成される出力信号Soを生成して出力する。この場合、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの第1信号成分とは、参照信号Ssのガード電極11への出力(印加)に基づいて検出信号S1に含まれる参照電圧成分Vs1に起因する信号成分(つまり、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssと同一周波数の信号成分)である。また、基準信号Sr1に含まれている参照信号Ssの第2信号成分とは、参照信号Ssのガード電極11への出力(印加)に基づいて、基準信号Sr1に含まれる参照信号Ssと同一周波数の信号成分である。
加算回路42は、増幅検出信号S3および基準信号Sr1を入力すると共に両信号S3,Sr1を加算し、加算によって得られた加算信号を出力信号Soとして出力する。この場合、上記したように、検出信号S1は、参照信号Ssに対して逆位相の参照電圧成分Vs1と、電圧信号S4に対して逆位相のFB電圧成分Vb1と、交流電圧V1と同位相の検出対象電圧成分Vv1とで構成されている。このため、検出信号S1に基づいて生成される絶縁検出信号S2、および絶縁検出信号S2を増幅して生成される増幅検出信号S3もまた、参照信号Ssに対して逆位相の信号成分、電圧信号S4に対して逆位相の信号成分、および交流電圧V1と同位相の信号成分で構成される。この場合、増幅検出信号S3は、自らに含まれている参照信号Ssに対して逆位相となる第1信号成分(以下、「逆相信号成分」ともいう)の振幅が、後述するようにして最終的には、振幅変更部36から出力される基準信号Sr1に含まれている参照信号Ssの第2信号成分の振幅(参照信号Ssの振幅をk倍した振幅:k×Ss)と同じ振幅となるように制御される。
一方、電圧信号Srの電圧Vrは上記したように電圧信号S4の電圧V4と参照信号Ssの電圧Vsとの合成電圧であるため、この電圧信号Srの振幅をk倍して生成された基準信号Sr1は、参照信号Ssに対して同位相の信号成分(参照信号Ssの振幅をk倍した信号)、および電圧信号S4に対して同位相の信号成分(電圧信号S4の振幅をk倍した信号)で構成される。
したがって、加算回路42による両信号S3,Sr1の加算処理により、増幅検出信号S3を構成する参照信号Ssの逆相信号成分(第1信号成分)と、基準信号Sr1を構成する参照信号Ssに対して同位相の第2信号成分(以下、「同相信号成分」ともいう)とが相殺(キャンセル)される。このため、出力信号Soは、電圧信号S4に対して逆位相の信号成分および交流電圧V1に対して同位相の信号成分であって増幅検出信号S3を構成する信号成分と、電圧信号S4に対して同位相の信号成分であって基準信号Sr1を構成する信号成分(電圧信号S4の振幅をk倍した信号)とを含んで構成される。
同期検波回路43は、出力信号Soおよび参照信号Ssを入力すると共に、参照信号Ssで出力信号Soを同期検波することにより、検波信号Vdを生成して出力する。制御回路44は、入力した検波信号Vdの極性に基づいて電圧が増減する制御信号Scを生成して、増幅回路41に出力する。
以上の構成により、信号抽出部32では、増幅回路41の利得(増幅率)に対するフィードバック制御が同期検波回路43および制御回路44によって行われて、制御回路44が、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数で逆位相の第1信号成分)の振幅が一定となるように(本例では加算回路42に入力される基準信号Sr1を構成する同相信号成分(参照信号Ssと同一周波数で同位相の第2信号成分)の振幅と同じ振幅となるように)増幅回路41の増幅率を検波信号Vdに基づいて制御する。これにより、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分の振幅が、加算回路42に入力される基準信号Sr1の同相信号成分の振幅に一致させられる。したがって、加算回路42は、上記したように、電圧信号S4に対して逆位相の信号成分、交流電圧V1に対して同位相の信号成分(以上、増幅検出信号S3を構成する信号成分)、および電圧信号S4に対して同位相の信号成分(基準信号Sr1を構成する信号成分)で構成される出力信号Soを生成して出力する。
この場合、検出対象体4と検出電極12との間に形成される静電容量C0の大きさに応じて、電流信号Iに含まれる参照電流Is1および検出対象電流Iv1が同じ割合で変動し、検出信号S1に含まれる参照電圧成分Vs1および検出対象電圧成分Vv1も同じ割合で変動する。したがって、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)および交流電圧V1と同一周波数の信号成分についても、両成分は同じ割合で変動するが、信号抽出部32では、上記したフィードバック制御により、増幅検出信号S3は、この信号S3を構成する逆相信号成分(第1信号成分)の振幅が基準信号Sr1を構成する同相信号成分(第2信号成分)の振幅と一致するように増幅回路41によって生成される。このため、本例の構成では、出力信号Soに含まれている検出対象電流Iv1に基づく電圧成分、つまり増幅検出信号S3を構成する信号成分(電圧信号S4に対して逆位相の信号成分および交流電圧V1と同位相の信号成分)は、静電容量C0の大きさに拘わらず、その振幅が検出対象体4に発生している交流電圧V1と電圧信号S4との差分に対応した大きさとなる。また、出力信号Soに含まれている基準信号Sr1を構成する電圧信号S4に対して同位相の信号成分は、そもそも静電容量C0の大きさとは無関係に発生する信号成分である。したがって、出力信号Soは、静電容量C0の大きさに影響を受けない信号となる。
フィードバック制御部(電圧生成回路)37は、絶縁検出信号S2を入力して増幅することにより、電圧V4(フィードバック電圧)の電圧信号S4を生成して、ガード電極11に出力(印加)する。この場合、フィードバック制御部37は、フローティング回路部2のガード電極11、検出電極12、検出部14、および絶縁部15と共にフィードバックループを形成して、交流電圧V1とガード電極11の電圧Vrとの電位差Vdiを減少させるように絶縁検出信号S2を増幅する増幅動作を行うことにより、電圧信号S4を生成する。本例では、一例として、フィードバック制御部37は、交流増幅回路37a、位相補償回路37bおよび昇圧回路37cを備えて構成されている。ここで、交流増幅回路37aは、絶縁検出信号S2を入力して増幅することにより、電圧信号V4aを生成する。この場合、交流増幅回路37aは、絶縁検出信号S2の電圧値についての絶対値の増加・減少に対応して、電圧値の絶対値が変化する電圧信号V4aを増幅動作によって生成する。
位相補償回路37bは、フィードバック制御動作の安定化(発振防止)を図るため、電圧信号V4aを入力してその位相を調整して電圧信号V4bとして出力する。昇圧回路37cは、一例として昇圧トランスを用いて構成されて、電圧信号V4bを所定の倍率で昇圧することにより(極性は変えずに絶対を増加させることにより)、電圧信号S4を生成してガード電極11に出力する。また、昇圧回路37cは、その出力インピーダンスが高インピーダンスに規定されている。このように構成されたフィードバック制御部37は、図6に示される周波数特性で振幅が変化する電圧信号S4を生成して出力する。この周波数特性により、フィードバック制御部37は、応答可能な周波数帯域W1,2内における低域側の周波数帯域W1の周波数の信号(交流電圧V1)に対しては、良好に追従して、交流電圧V1と同じ電圧V4の電圧信号S4を生成して出力する。また、フィードバック制御部37は、応答可能な周波数帯域W1,2内における高域側の周波数帯域W2に含まれる周波数の信号(交流電圧V1)に対しては、利得不足に起因して交流電圧V1に達しない電圧V4の電圧信号S4を生成して出力する。また、フィードバック制御部37は、周波数帯域W2を超える周波数帯域W3の信号(参照信号Ssを含む)については、追従し切れずに、電圧V4がほぼゼロボルトとなる電圧信号S4を生成して出力する。
処理部33は、出力信号Soの電圧波形(レベル)を所定周波数のサンプリングクロックでサンプリングしてデジタルデータD1に変換して記憶部34に記憶させる記憶処理、このデジタルデータD1に基づいて交流電圧V1を算出する電圧算出処理、算出した交流電圧V1を出力する出力処理、およびフィルタ38からの信号成分Ss2のレベルVaに基づく診断処理を実行する。記憶部34には、処理部33での電圧算出処理において使用される電圧算出用テーブルTB、および診断処理において使用される規定レベルVreが予め記憶されている。
次いで、電圧検出装置1Bによる検出対象体4の交流電圧V1に対する検出動作について説明する。
まず、検出電極12が非接触の状態で検出対象体4に対向するように、フローティング回路部2(または電圧検出装置1B全体)を検出対象体4の近傍に位置させる。これにより、図5に示すように、検出電極12と検出対象体4との間に静電容量C0が形成された状態となる。この場合、静電容量C0の容量値は、検出電極12と検出対象体4の距離に反比例して変化するが、フローティング回路部2を一旦配設した後は、温度などの環境が一定の条件下においては一定の(変動しない)値となる。また、静電容量C0の容量値が一般的に極めて小さい(例えば数pF〜数十pF程度)ため、交流電圧V1の周波数が数百Hz程度であったとしても、検出対象体4と検出電極12との間のインピーダンスが十分に大きな値(数MΩ)となる。このため、この電圧検出装置1Bでは、検出対象体4の交流電圧V1とガード電極11の電圧Vrとが大きく異なる場合(電位差Vdiが大きい場合)においても、検出部14を構成する演算増幅器21aに入力耐圧の低い安価な製品を使用することができ、この構成においても、電位差Vdiによる演算増幅器21aの破壊が回避されている。
また、検出電極12と検出対象体4とが静電容量C0を介して交流的に接続されることにより、グランド電位Vgから、検出対象体4、検出電極12、検出部14、ガード電極11、コンデンサ31a、参照信号出力部31およびフィードバック制御部37を介してグランド電位Vgに至る電流経路A(図5中において一点鎖線で示す経路)が形成される。このため、フローティング回路部2および本体回路部3の作動状態においては、この電流経路Aには、参照信号Ssの電圧Vsに起因した参照電流Is1と、検出対象体4の交流電圧V1に起因した検出対象電流Iv1と、フィードバック制御部37からガード電極11に出力される電圧信号S4の電圧V4に起因したFB電流成分Ib1で構成される電流信号Iが流れている。
これにより、フローティング回路部2では、図5,2に示すように、検出部14の積分回路21が電流信号Iを積分して電圧信号S0を生成し、増幅回路22がこの電圧信号S0を増幅して検出信号S1として出力する。また、絶縁部15は、この検出信号S1を入力して、検出信号S1と電気的に絶縁された絶縁検出信号S2として出力する。
また、本体回路部3では、フィードバック制御部37が、この絶縁検出信号S2に基づいて電圧信号S4を生成してガード電極11に出力している。この場合、フィードバック制御部37は、図6に示される周波数特性で振幅が変化する電圧信号S4、つまり、低い周波数帯域W1では交流電圧V1と同一の振幅となり、高い周波数帯域W3では振幅がゼロとなり、中間の周波数帯域W2では、周波数の上昇に伴い交流電圧V1と同一の状態からゼロに向けて振幅が次第に減少する電圧信号S4を生成して、ガード電極11に出力している。振幅変更部36は、ガード電極11に発生する電圧Vr(電圧信号S4の電圧V4と参照信号Ssの電圧Vsとの合成電圧)を電圧信号Srとして入力して、その振幅を変更(k倍)することにより、図7に示す周波数特性の基準信号Sr1として出力している。
また、フィードバック制御部37が上記したように作動して、図6に示される周波数特性の電圧信号S4を生成してガード電極11に出力しているため、交流電圧V1とこの電圧信号S4との電位差Vdiに基づいて上記のようにしてフローティング回路部2が生成する絶縁検出信号S2は、交流電圧V1および電圧信号S4についての信号成分(交流電圧V1と同一の周波数成分)に関して、電圧信号S4の周波数特性(図6参照)と逆の周波数特性(図8参照)で振幅が変化する信号となっている。つまり、フローティング回路部2は、図8に示すように、低い周波数帯域W1では、電圧信号S4の電圧V4が交流電圧V1と同一電圧にフィードバック制御されることで、電位差Vdiがゼロになっているため、振幅がゼロとなり、高い周波数帯域W3では、電圧信号S4の電圧V4がほぼゼロになることで、電位差Vdiが交流電圧V1となるため、交流電圧V1に比例した振幅となり、中間の周波数帯域W2では、周波数の上昇に伴いゼロの状態から周波数帯域W3での振幅に向けて次第に増加する絶縁検出信号S2を生成して出力している。
信号抽出部32では、上記したように、増幅回路41の利得(増幅率)に対するフィードバック制御が同期検波回路43および制御回路44によって行われて、制御回路44が、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数で逆位相の第1信号成分)の振幅が一定となるように(本例では加算回路42に入力される基準信号Sr1を構成する同相信号成分(参照信号Ssと同一周波数で同位相の第2信号成分)の振幅と同じ振幅となるように)、増幅回路41の増幅率を検波信号Vdに基づいて制御する。これにより、増幅回路41は、逆相信号成分の振幅が加算回路42に入力される基準信号Sr1の同相信号成分の振幅と一致する信号であって、図9に示す周波数特性を有する増幅検出信号S3を生成して出力する。この場合、同図に示すように、周波数帯域W3での増幅検出信号S3の振幅は、交流電圧V1のk倍となって、図7に示すように、周波数帯域W1での基準信号Sr1の振幅(交流電圧V1のk倍)と一致した状態となっている。
したがって、加算回路42は、図10に示すように、上記した図7に示す周波数特性(図8中において一点鎖線で表された特性)の基準信号Sr1(電圧信号S4に対して同位相の信号成分で構成される信号)に、上記した図9に示す周波数特性(図10中において細い実線で表された特性)の増幅検出信号S3(電圧信号S4に対して逆位相の信号成分および交流電圧V1に対して同位相の信号成分で構成される信号)を加算することにより、交流電圧V1に対して同位相の信号成分だけで構成され、かつ低い周波数帯域W1から高い周波数帯域W3までの広い周波数帯域に亘ってフラットな周波数特性(図10中において太い実線で表された特性)の出力信号So(広帯域に亘って振幅が交流電圧V1の振幅のk倍となる信号。)を生成して出力する。この場合、増幅検出信号S3および基準信号Sr1に含まれている参照信号Ssについての各信号成分は、図10において太い破線で示すように、互いの振幅が一致した状態であるため相殺される。
次いで、処理部33が、記憶処理を実行して、出力信号Soを入力すると共にデジタルデータD1に変換して記憶部34に記憶させる。続いて、処理部33が、電圧算出処理を実行する。この電圧算出処理では、処理部33は、記憶部34に記憶されているデジタルデータD1を読み出すと共に、電圧算出用テーブルTBを参照して、読み出したデジタルデータD1に対応する交流電圧V1を取得する。また、処理部33は、この取得した交流電圧V1に基づいて、例えば交流電圧V1の実効値や振幅などを算出して記憶部34に記憶させる。また、処理部33は、電圧検出装置1Bにおける交流電圧V1の検出動作に対する診断処理についても実行して、電圧検出装置1Bが正常に動作しているか否かの判別結果を記憶部34に記憶させる。最後に、処理部33は、出力処理を実行して、記憶部34に記憶されている交流電圧V1の実効値や振幅、および診断処理での判別結果などを出力部35に表示させる。これにより、電圧検出装置1Bによる検出対象体4の交流電圧V1の検出が完了する。
したがって、この電圧検出装置1Bにおいても、処理部33が、絶縁検出信号S2に含まれている参照信号Ssの信号成分Ss2についてのレベルVaを検出すると共に規定レベルVreと比較して、電圧検出装置1Bの動作が正常であるか、または異常であるかを判別する判別処理を実行するため、オペレータは、この判別処理の結果に基づいて、電圧検出装置1Bにおいて電圧の検出動作が正常に行われているか否かの診断(判別)を行うことができる。この結果、この電圧検出装置1Bによれば、検出された交流電圧V1が動作正常時のものであるか、動作異常時のものであるかをオペレータに認識させることができるため、検出された交流電圧V1に対する信頼性を高めることができる。
また、この電圧検出装置1Bによれば、フィードバック制御部37による検出動作だけでは検出し得なかった高い周波数帯域の交流電圧V1を、信号抽出部32において生成される増幅検出信号S3に基づいて検出できるため、広い周波数帯域に亘って交流電圧V1を非接触で検出することができる。また、この電圧検出装置1Bによっても、出力信号Soが検出対象体4と検出電極12との間の結合容量(静電容量C0)によって影響を受けない信号として検出できるため、静電容量C0の算出を行うことなく、交流電圧V1を非接触で検出することができる。
また、電圧検出装置1Bにおいても、上記した電圧検出装置1と同様にして、図5中において破線で示すように、処理部33が、A点において検出される絶縁検出信号S2に含まれている参照信号Ssの信号成分Ss2についてのレベルVaに代えて、B点において検出される増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分についてのレベルVa、C点において検出される出力信号Soに含まれている参照信号Ssの信号成分についてのレベルVa、またはD点において検出される検波信号VdについてのレベルVaを使用して、診断処理を実行する構成を採用してもよいのは勿論であり、いずれのレベルVaに基づいても、電圧検出装置1Bにおいて電圧の検出動作が正常に行われているか否かの診断(判別)を行うことができる。
なお、上記の電圧検出装置1,1Aでは、検出電極12、電源部13、検出部14および絶縁部15をガード電極11内に収容することにより、本体回路部3,3Aとは別体に、フローティング回路部2を構成して、CMRR(Common Mode Rejection Ratio )を高めると共に、高圧な交流電圧V1の検出を可能とする構成を採用しているが、検出部14をフローティング状態で作動させる必要のない場合(例えば、交流電圧V1が比較的低圧であったり、高いCMRRが要求されない場合)には、検出部14に代えて、図11に示す検出部14A(ガード電極11、電源部13および絶縁部15を使用しない検出部)を採用することもできる。以下、この検出部14Aについて説明する。なお、上記の電圧検出装置1,1Aでは、検出部14に代えて検出部14Aを使用した場合においても、他の構成要素については同一であるため、この他の構成要素については説明を省略する。
検出部14Aは、本体回路部3を構成する各構成要素(参照信号出力部31、信号抽出部32および処理部33など)と同じ不図示の電源から作動用電圧(グランド電位Vgを基準として生成される正電圧Vcc+および負電圧Vcc−)の供給を受けて作動する。また、検出部14Aは、図11に示すように、検出電極12に接続されると共に参照信号Ssを入力して(参照信号Ssが印加されて)、交流電圧V1の存在に起因して検出電極12と検出対象体4との間に流れる検出対象電流Iv1、および参照信号Ssの電圧Vsの入力に起因して検出電極12と検出対象体4との間に流れる参照電流Is1で構成される電流信号I(=Iv1+Is1)を検出すると共に、電流信号Iの電流値に応じて振幅が変化する検出信号S1を出力する。なお、この電流信号Iは、交流電圧V1とガード電極11の電圧Vr(=電圧Vs)との間の交流の電位差(V1−Vr)に応じてその振幅が変化する、つまりこの電位差(V1−Vr)に応じた電流値で流れる電流信号であるともいえる。
検出部14Aは、本例では、一例として図11に示すように、検出抵抗61および差動増幅部62を備えている。検出抵抗61は、一端側が検出電極12に接続されると共に、他端側が参照信号出力部31に接続されている。差動増幅部62は、3つの演算増幅器AP1〜AP3、および7つの抵抗R1〜R7を備えた公知のインスツルメンテーションアンプで構成されている。また、この差動増幅部62では、各抵抗R6,R7にコンデンサC1,C2がそれぞれ並列に接続されて、演算増幅器AP3を含む出力段が積分機能を有するように構成されている。また、この差動増幅部62では、各抵抗R1〜R7のうちの対称の位置にある抵抗同士はバランスが取られており(つまり、R2とR3、R4とR5、およびR6とR7が、それぞれ同一の抵抗値に規定され)、かつコンデンサC1,C2についてもバランスが取られている(C1,C2が同一の容量値に規定されている)ものとする。また、差動増幅部62では、差動増幅部62における1つの入力端子として機能する演算増幅器AP1の非反転入力端子が検出抵抗61の一端に接続され、差動増幅部62における他の1つの入力端子として機能する演算増幅器AP2の非反転入力端子が参照信号出力部31に接続されている。この差動増幅部62では、各入力端子に入力される電圧をVin1,Vin2としたときに、検出信号S1は以下の式で表される。
S1=(Vin2−Vin1)×(1+2×R2/R1)×R6/R4
この場合、上記のS1の式における(Vin2−Vin1)は、電流信号I(=Iv1+Is1)が流れることによって検出抵抗61の両端間に発生する電圧を表している。したがって、検出部14Aは、上記したように、電流信号I(=Iv1+Is1)の電流値に応じて振幅が変化する検出信号S1を出力する。
本体回路部3,3Aは、上記した絶縁検出信号S2に代えて、この検出信号S1を直接入力して、絶縁検出信号S2と同様に処理する。したがって、この検出部14Aを採用した電圧検出装置1,1Aにおいても、検出部14を有するフローティング回路部2を採用した上記の電圧検出装置1,1Aと同様にして、静電容量C0の算出を行うことなく、交流電圧V1を非接触で検出することができる。
また、この検出部14Aを採用した電圧検出装置1,1Aにおいても、処理部33が、絶縁検出信号S2に代えて入力する検出信号S1に含まれている参照信号Ssの信号成分Ss2についてのレベルVa(信号成分Ss2の振幅レベル)を検出すると共に規定レベルVreと比較して、電圧検出装置1,1Aの動作が正常であるか、または異常であるかを判別する判別処理を実行するため、オペレータは、この判別処理の結果に基づいて、電圧検出装置1,1Aにおいて電圧の検出動作が正常に行われているか否かの診断(判別)を行うことができる。したがって、この検出部14Aを採用した電圧検出装置1,1Aによっても、検出された交流電圧V1が動作正常時のものであるか、動作異常時のものであるかをオペレータに認識させることができるため、検出された交流電圧V1に対する信頼性を高めることができる。
また、この検出部14Aを採用した電圧検出装置1においても、上記した検出部14を採用した電圧検出装置1の場合と同様にして、図1中において破線で示すように、処理部33が、A点において検出される検出信号S1(同図において絶縁部15から出力される絶縁検出信号S2に代えて、図11の検出部14Aから出力される検出信号)に含まれている参照信号Ssの信号成分Ss2についてのレベルVaに代えて、B点において検出される増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分についてのレベルVaや、C点において検出される出力信号Soに含まれている参照信号Ssの信号成分についてのレベルVaや、D点において検出される検波信号VdについてのレベルVaを使用して、診断処理を実行する構成を採用してもよいのは勿論であり、いずれのレベルVaに基づいても、電圧検出装置1において電圧の検出動作が正常に行われているか否かの診断(判別)を行うことができる。
また、この検出部14Aを採用した電圧検出装置1Aにおいても、上記した検出部14を採用した電圧検出装置1Aの場合と同様にして、図4中において破線で示すように、処理部33が、A点において検出される検出信号S1(同図において絶縁部15から出力される絶縁検出信号S2に代えて、図11の検出部14Aから出力される検出信号)に含まれている参照信号Ssの信号成分Ss2についてのレベルVaに代えて、B点において検出される増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分についてのレベルVaや、D点において検出される検波信号VdについてのレベルVaを使用して、診断処理を実行する構成を採用してもよいのは勿論であり、いずれのレベルVaに基づいても、電圧検出装置1Aにおいて電圧の検出動作が正常に行われているか否かの診断(判別)を行うことができる。