以下、添付図面を参照して、電圧検出装置および線間電圧検出装置の実施の形態について説明する。
最初に、電圧検出装置1について、図面を参照して説明する。
電圧検出装置1は、非接触型の電圧検出装置であって、図1に示すように、フローティング回路部2および本体回路部3を備え、グランド電位Vgを基準として検出対象体4に生じている交流電圧V1(検出対象交流電圧)を非接触で検出可能に構成されている。
フローティング回路部2は、図1に示すように、ガード電極11、検出電極12、電源部13、検出部14および絶縁部15を備えている。ガード電極11は、導電性材料(例えば金属材料)を用いて、フローティング回路部2における基準電圧部として構成されて、その内部に検出電極12、検出部14および絶縁部15が収容されている。なお、後述するように、絶縁部15は、その一次側回路で入力した信号をその二次側回路から一次側回路と電気的に絶縁した状態で出力する機能を備えたものであるため、ガード電極11で覆われるべき部位は、少なくとも一次側回路まででよいが、二次側回路についてもガード電極11で覆われる構成を採用することもできる。また、本例では、一例として、ガード電極11に開口部(孔)11aが形成されている。検出電極12は、一例として平板状に形成されて、ガード電極11内における開口部11aを臨む位置に、ガード電極11と非接触な状態で配設されている。また、検出電極12は、交流電圧V1の検出に際しては、図1に示すように検出対象体4と容量結合(静電容量C0を介して結合)する。
電源部13は、ガード電極11の電圧Vrを基準(ゼロボルト)とした種々のフローティング電圧を生成するフローティング電源として構成されている。また、電源部13は、生成したフローティング電圧をガード電極11内に配設された各構成要素に対して作動用電圧として供給する。本例では、一例として、電源部13は、バッテリとDC/DCコンバータ(いずれも図示せず)とを備えて構成されて、DC/DCコンバータがバッテリから出力される直流電圧に基づいて種々のフローティング電圧(例えば、電圧Vrをゼロボルトとしたときに、電圧Vrに対して正電圧である第1フローティング電圧Vf+、および電圧Vrに対して第1フローティング電圧Vf+と絶対値が等しい負電圧である第2フローティング電圧Vf−。以下、単にフローティング電圧Vf+、フローティング電圧Vf−ともいう)を作動用電圧として生成する。なお、図示はしないが、バッテリに代えて、ガード電極11の外部からトランスを介して電気的に絶縁された状態でガード電極11内に交流電圧を供給し、この交流電圧をガード電極11内に設けた整流平滑部で直流電圧に変換してDC/DCコンバータに供給する構成を採用することもできる。
検出部14は、検出電極12に接続されると共に、参照信号出力部31から参照信号Ssを入力して(参照信号Ssが印加されて)、交流電圧V1に基づいて流れる検出対象電流(交流電圧V1に起因した電流信号成分)Iv1、および参照信号Ssに基づいて流れる参照電流(参照信号Ssに起因した電流信号成分)Is1の両電流値に応じて振幅が変化する検出信号S1を出力する。具体的には、検出部14は、ガード電極11の電圧Vrに対して正電圧であるフローティング電圧Vf+および負電圧であるフローティング電圧Vf−の供給を受けて作動して、交流電圧V1とガード電極11の電圧Vrとの間の交流の電位差(V1−Vr)に応じた電流値で流れる電流信号I(検出電流)に基づいて、交流の電位差(V1−Vr)に応じて振幅が変化する検出信号S1を生成して出力する。この場合、ガード電極11には、後述する参照信号出力部31から参照信号Ssが出力(印加)される。この構成により、電圧Vrは、参照信号Ssの電圧Vsと一致する。これにより、上記の電流信号Iは、参照信号Ssに起因した参照電流Is1と、交流電圧V1に起因した検出対象電流Iv1とで構成され、この電流信号Iに基づく検出信号S1も、参照電流Is1に基づく電圧信号成分(以下、「参照電圧成分」)Vs1と、検出対象電流Iv1に基づく電圧信号成分(以下、「検出対象電圧成分」)Vv1とで構成されている。また、検出部14は参照信号Ssの電圧Vsで変動するガード電極11の電圧を基準として作動して検出信号S1を生成するため、検出信号S1に含まれる参照電圧成分Vs1は参照信号Ssの電圧Vsに対して逆位相の信号となる。
本例では、一例として、検出部14は、図2に示すように、積分回路21および増幅回路22を含んで構成されている。積分回路21は、非反転入力端子がガード電極11に接続され、反転入力端子が検出電極12に接続された演算増幅器21a、演算増幅器21aの反転入力端子と出力端子との間に接続されたコンデンサ21b、およびコンデンサ21bに並列に接続された抵抗21cを備えている。この場合、コンデンサ21bは、一例として0.01μF程度のコンデンサで構成され、抵抗21cは、例えば1MΩ程度の高い抵抗値の抵抗で構成されている。このため、この積分回路21では、主としてコンデンサ21bに電流信号Iが流れることにより、電流電圧変換動作と同時に積分動作が行われて、検出対象体4の交流電圧V1とガード電極11の電圧Vrとの交流の電位差(V1−Vr)に比例して電圧値が変化する電圧信号S0が生成される。なお、この積分回路21では、コンデンサ21bのみでは直流付近での帰還量が著しく低下してゲインが極端に大きくなり、バイアス電流によるオフセットで演算増幅器21aが飽和する虞があり、この飽和によるダイナミックレンジの低下を抑制するため、抵抗21cを配設している。増幅回路22は、電圧信号S0を所定の増幅率で電圧増幅して検出信号S1として出力する。なお、図示はしないが、積分回路21を、例えば電流信号Iを電圧信号に変換する電流電圧変換回路、およびこの電圧信号を積分して検出信号S1として出力する積分回路の2つの回路で構成することもできる。
絶縁部15は、検出信号S1を入力すると共に電気的に絶縁して絶縁検出信号S2として出力する。具体的には、絶縁部15は、一例として光絶縁素子(本例では、一例としてフォトカプラ)を用いて構成されて、その一次側回路としての発光ダイオード(不図示)に入力された検出信号S1を、その二次側回路としてのフォトトランジスタから絶縁検出信号S2として出力する。つまり、絶縁部15は、検出信号S1と同位相で、かつ検出信号S1の振幅に比例して振幅が変化する信号を絶縁検出信号S2として出力する。なお、フォトカプラに代えて、一次側回路が発光ダイオードで構成され、かつ二次側回路がFET対で構成された光MOS−FETを使用して絶縁部15を構成することもできる。この場合、絶縁部15では、その一次側回路は、フローティング電圧Vf+,Vf−の供給を受けて作動する。また、検出信号S1が周波数の高い交流の場合には、トランスを使用して絶縁部15を構成することもできる。
本体回路部3は、図1に示すように、参照信号出力部31、信号抽出部32、処理部33、記憶部34および出力部35を備えている。この場合、参照信号出力部31は、グランド電位Vgを基準として電圧Vsが所定の周期で変化する振幅が一定の参照信号Ss(周波数および振幅が一定の交流信号。一例として正弦波信号)を生成して、ガード電極11に出力する。これにより、ガード電極11は、その電圧Vrが参照信号Ssの電圧Vsに規定される。つまり、ガード電極11の電圧Vrは、参照信号Ssの電圧Vsと一致した状態で所定の周期で変化する。本例では、参照信号出力部31が参照信号Ssをガード電極11に直接出力する構成を採用しているが、参照信号Ssは交流信号であるため、図示はしないが、参照信号出力部31がコンデンサを介して参照信号Ssをガード電極11に出力する構成とすることもできる。また、参照信号出力部31は、参照信号Ssを信号抽出部32にも出力する。なお、本例では、一例として、参照信号Ssは、その周波数が検出対象体4の交流電圧V1の周波数よりも高い周波数に規定されている。この場合、参照信号Ssの周波数を検出対象体4の交流電圧V1の周波数よりも低い周波数に規定することもできる。
信号抽出部32は、一例として、増幅回路41、同期検波回路43、制御回路44およびフィルタ45を備え、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssと同一周波数の信号成分の振幅が一定の振幅(予め規定された振幅)となるように絶縁検出信号S2を増幅して増幅検出信号S3を生成すると共に、この増幅検出信号S3から参照信号Ssと同一の信号成分を除去して出力信号Soとして出力する。この場合、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分とは、参照信号Ssのガード電極11への出力(印加)に基づいて検出信号S1に含まれる参照電圧成分Vs1に起因する信号成分(つまり、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssと同一周波数の信号成分)である。
具体的には、増幅回路41は、絶縁検出信号S2を入力すると共に、制御回路44から出力される制御信号(具体的には制御電圧)Scのレベル(直流電圧レベル)によって規定される増幅率(利得は1以上でも1未満でもよい)で絶縁検出信号S2を増幅して、増幅検出信号S3を生成して出力する。一例として、増幅回路41は、図3に示すように、演算増幅器41a、演算増幅器41aの反転入力端子とグランド電位との間に配設された可変抵抗素子(本例では、一例として、J−FET(Junction Field Effect Transistor:接合型電界効果トランジスタ))41b、および演算増幅器41aの反転入力端子と出力端子との間に配設された抵抗41cを備えて構成されて、全体として非反転増幅回路として構成されている。この場合、可変抵抗素子41bは、入力される制御信号Scのレベルに応じてその抵抗値が変化する。このため、増幅回路41は、入力される制御信号Scのレベルに応じてその増幅率を変化させると共に、絶縁検出信号S2をこの増幅率で増幅して増幅検出信号S3として出力する。なお、可変抵抗素子としては、外部から入力される電圧に応じて抵抗値が変化する素子であればよく、J−FET以外の素子や回路を使用して構成することもできる。本例では、一例として、可変抵抗素子41bは、入力される制御信号Scのレベルが増加したときにはその抵抗値が減少し、制御信号Scのレベルが減少したときにはその抵抗値が増加するように構成されている。この構成により、増幅回路41の増幅率は、制御信号Scのレベルが増加したときには増加し、制御信号Scのレベルが減少したときには減少する。
同期検波回路43は、増幅回路41から増幅検出信号S3を入力すると共に、参照信号出力部31から参照信号Ssを入力して、この参照信号Ssでこの増幅検出信号S3を同期検波することにより、検波信号Vdを生成して出力する。具体的には、同期検波回路43は、同期検波により、増幅検出信号S3に含まれる参照信号Ssの信号成分(具体的には、参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅の増減に応じて電圧の絶対値が増減し、かつ増幅検出信号S3に含まれる参照信号Ssの信号成分の位相が参照信号Ssの位相と一致しているとき(同位相のとき)と180°ずれているとき(逆位相のとき)とで極性の異なる検波信号Vdを生成して出力する。本例では、増幅検出信号S3に含まれる参照信号Ssの信号成分は、参照信号出力部31による参照信号Ssのガード電極11(つまり、検出部14)への出力(印加)に起因して生じたものであるため、参照信号Ssと、増幅検出信号S3に含まれる参照信号Ssの信号成分との位相関係は常に一定の関係(同位相か逆位相のいずれか。本例では一例として逆位相)となっている。したがって、本例の同期検波回路43は、増幅検出信号S3に含まれる参照信号Ssの信号成分についての振幅の増減に応じて電圧の絶対値が増減する一の極性(本例では一例として正極性)の検波信号Vdを生成して出力する。
制御回路44は、入力した検波信号Vdの電圧および目標電圧Ve(内部で生成している電圧、または外部から入力している電圧。本例では一例として制御回路44の外部から入力している電圧)に基づいて制御信号Scを生成して出力する。具体的には、制御回路44は、検波信号Vdの電圧が目標電圧Veよりも低いときには電圧レベルを増加させ、検波信号Vdの電圧が目標電圧Veよりも高いときには電圧レベルを減少させて、制御信号Scを出力する。以上の構成により、信号抽出部32では、増幅回路41の利得(増幅率)に対するフィードバック制御が同期検波回路43および制御回路44によって行われて、制御回路44が、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅が一定となるように増幅回路41の増幅率を検波信号Vdに基づいて制御する。この場合、この予め規定された振幅として、任意の値を採用することができる。また、処理部33での電圧算出処理において使用される後述の電圧算出用テーブルTBの作成に際しては、この採用した値を予め規定された振幅として、同期検波回路43および制御回路44が増幅回路41の増幅率をフィードバック制御している状態において処理部33によって取得されたデジタルデータD1に基づいて作成する。
フィルタ45は、増幅回路41から出力された増幅検出信号S3を入力すると共に、この増幅検出信号S3から交流電圧V1の信号成分を抽出して出力信号Soとして出力する。例えば、フィルタ45は、バンドパスフィルタやローパスフィルタに構成されたパッシブフィルタ回路やアクティブフィルタ回路で構成されて、参照信号Ssと同一周波数の信号成分の通過を阻止し、かつ検出対象体4の交流電圧V1に起因した検出対象電流Iv1に基づく電圧成分(交流電圧V1と同一周波数の信号成分)を通過させる。この構成により、信号抽出部32は、検出対象体4の交流電圧V1に起因した検出対象電流Iv1に基づく電圧成分で構成される出力信号Soを生成して出力する。
この電圧検出装置1では、検出対象体4と検出電極12との間に形成される静電容量C0の大きさに応じて、電流信号Iに含まれる参照電流Is1および検出対象電流Iv1が同じ割合で変動し、検出信号S1に含まれる参照電圧成分Vs1および検出対象電圧成分Vv1も同じ割合で変動する。したがって、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)および交流電圧V1と同一周波数の信号成分についても、両成分は同じ割合で変動するが、信号抽出部32では、上記したフィードバック制御により、増幅検出信号S3は、この信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅が一定となるように増幅回路41によって生成される。このため、本例の構成の電圧検出装置1では、出力信号Soに含まれている検出対象電流Iv1に基づく電圧成分は、静電容量C0の大きさに拘わらず、その振幅が検出対象体4に発生している交流電圧V1の振幅に対応した大きさ(比例した大きさ)となる。したがって、信号抽出部32から出力される出力信号Soは、その振幅が検出対象体4の交流電圧V1の振幅に比例して変化する信号となる。
処理部33は、A/D変換器およびCPU(いずれも図示せず)を備えて構成されて、出力信号Soの電圧波形(レベル)を所定周波数のサンプリングクロックでサンプリングしてデジタルデータD1に変換して記憶部34に記憶させる記憶処理、このデジタルデータD1に基づいて交流電圧V1を算出する電圧算出処理、および算出した交流電圧V1を出力する出力処理を実行する。記憶部34は、ROMやRAMなどで構成されて、処理部33での電圧算出処理において使用される電圧算出用テーブルTBが予め記憶されている。この電圧算出用テーブルTBの作成手順についてのその概要を説明する。一例として、増幅回路41の利得(増幅率)に対するフィードバック制御が同期検波回路43および制御回路44によって行われて、制御回路44が、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅が一定(予め規定された振幅)となるように増幅回路41の増幅率を検波信号Vdに基づいて制御している状態において、検出対象体4に発生させる交流電圧V1の振幅を所定の電圧ステップで変化させつつデジタルデータD1を取得して、その電圧ステップで変化させた交流電圧V1に対応付けてデジタルデータD1を交流電圧V1の電圧値と共に記憶させることで、電圧算出用テーブルTBを作成する。この構成により、処理部33は、取得したデジタルデータD1に対応する交流電圧V1の電圧値を電圧算出用テーブルTBを参照して取得することにより、検出対象体4の交流電圧V1を算出することが可能となっている。出力部35は、本例では、一例としてディスプレイ装置で構成されて、処理部33での出力処理において、交流電圧V1の波形や算出した電圧パラメータ(振幅や実効値)を表示させる。
次いで、電圧検出装置1による検出対象体4の交流電圧V1に対する検出動作について説明する。
まず、検出電極12が非接触の状態で検出対象体4に対向するように、フローティング回路部2(または電圧検出装置1全体)を検出対象体4の近傍に位置させる。これにより、図1に示すように、検出電極12と検出対象体4との間に静電容量C0が形成された状態となる。この場合、静電容量C0の容量値は、検出電極12と検出対象体4の距離に反比例して変化するが、フローティング回路部2を一旦配設した後は、温度などの環境が一定の条件下においては一定の(変動しない)値となる。また、静電容量C0の容量値が一般的に極めて小さい(例えば数pF〜数十pF程度)ため、交流電圧V1の周波数が数百Hz程度であったとしても、検出対象体4と検出電極12との間のインピーダンスが十分に大きな値(数MΩ)となる。このため、この電圧検出装置1では、検出対象体4の交流電圧V1とガード電極11の電圧Vrとが大きく異なる場合(電位差Vdiが大きい場合)においても、検出部14を構成する演算増幅器21aに入力耐圧の低い安価な製品を使用することができ、この構成においても、電位差Vdiによる演算増幅器21aの破壊が回避されている。
また、検出電極12と検出対象体4とが静電容量C0を介して交流的に接続されることにより、グランド電位Vgから、検出対象体4、検出電極12、検出部14、ガード電極11および参照信号出力部31を介してグランド電位Vgに至る電流経路A(図1中において一点鎖線で示す経路)が形成される。このため、この電流経路Aには、参照信号Ssの電圧Vsに起因した参照電流Is1と、検出対象体4の交流電圧V1に起因した検出対象電流Iv1とで構成される電流信号Iが流れている。
これにより、フローティング回路部2では、図1,2に示すように、検出部14の積分回路21が電流信号Iを積分して電圧信号S0を生成し、増幅回路22がこの電圧信号S0を増幅して検出信号S1として出力する。また、絶縁部15は、この検出信号S1を入力して、検出信号S1と電気的に絶縁された絶縁検出信号S2として出力する。
また、本体回路部3の信号抽出部32では、図1に示すように、増幅回路41が、絶縁検出信号S2を入力すると共に、制御回路44から出力される制御信号Scの電圧レベルによって規定される増幅率で絶縁検出信号S2を増幅して、参照信号Ssと同一周波数の信号成分の振幅が一定となる増幅検出信号S3を生成して出力する。
一例として、まず、同期検波回路43が、増幅検出信号S3および参照信号Ssを入力すると共に、参照信号Ssで増幅検出信号S3を同期検波することにより、増幅検出信号S3に含まれる参照信号Ssの信号成分についての振幅の増減に応じて電圧が増減する検波信号Vdを生成して出力する。
次いで、制御回路44が、入力した検波信号Vdの電圧および目標電圧Veに基づいて制御信号Scを生成して出力する。具体的には、制御回路44は、検波信号Vdの電圧が目標電圧Veよりも低いときには電圧レベルを増加させ、検波信号Vdの電圧が目標電圧Veよりも高いときには電圧レベルを減少させて、制御信号Scを出力する。以上の構成により、信号抽出部32では、増幅回路41の利得(増幅率)に対するフィードバック制御が同期検波回路43および制御回路44によって行われて、制御回路44が、増幅検出信号S3を構成する逆相信号成分(参照信号Ssと同一周波数の信号成分)の振幅が一定(予め規定された振幅。電圧算出用テーブルTBの作成の際の振幅)となるように増幅回路41の増幅率を検波信号Vdに基づいて制御する。これにより、増幅回路41が、入力した絶縁検出信号S2を増幅して、参照信号Ssと同一周波数の信号成分の振幅が一定(上記の予め規定された振幅)となる増幅検出信号S3を生成して出力する。続いて、フィルタ45が、増幅回路41から出力された増幅検出信号S3を入力すると共に、この増幅検出信号S3から交流電圧V1の信号成分を抽出して出力信号Soとして出力する。
次いで、処理部33が、記憶処理を実行して、出力信号Soを入力すると共にデジタルデータD1に変換して記憶部34に記憶させる。続いて、処理部33が、電圧算出処理を実行する。この電圧算出処理では、処理部33は、記憶部34に記憶されているデジタルデータD1を読み出すと共に、電圧算出用テーブルTBを参照して、読み出したデジタルデータD1に対応する交流電圧V1を取得する。また、処理部33は、この取得した交流電圧V1に基づいて、例えば交流電圧V1の実効値や振幅などを算出して記憶部34に記憶させる。最後に、処理部33は、出力処理を実行して、記憶部34に記憶されている交流電圧V1の実効値や振幅などを、ディスプレイ装置で構成された出力部35に表示させる。これにより、電圧検出装置1による検出対象体4の交流電圧V1の検出が完了する。なお、出力処理において、処理部33が、取得した交流電圧V1に基づいて、交流電圧V1の電圧波形を出力部35に表示させる構成を採用することもできる。
この電圧検出装置1では、参照信号出力部31がガード電極11に参照信号Ssを出力し、フローティング電圧Vf+,Vf−の供給を受けて作動する検出部14が、検出電極12を介して検出対象体4とガード電極11との間に交流電圧V1とガード電極11の電圧Vrとの間の交流の電位差(V1−Vr)に応じた電流値で流れる電流信号Iに基づいて、交流の電位差(V1−Vr)に応じて振幅が変化する検出信号S1を出力し、絶縁部15が検出信号S1を入力して絶縁検出信号S2として出力し、信号抽出部32が絶縁検出信号S2に含まれている参照信号Ssと同一の信号成分の振幅が予め規定された振幅となるように、つまり一定となるように絶縁検出信号S2の振幅を制御して増幅検出信号S3として出力すると共に、このように振幅が制御された増幅検出信号S3と参照信号出力部31から出力される参照信号Ssとの加算または減算によって増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssと同一の信号成分を除去して出力信号Soとして出力する。
したがって、この電圧検出装置1によれば、信号抽出部32が参照信号Ssと同一周波数の信号成分の振幅が一定となるように増幅検出信号S3の振幅を制御することにより、検出対象体4と検出電極12との間の結合容量(静電容量C0)が未知の場合であっても(静電容量C0の値に拘わらず)、交流電圧V1についての感度が一定の感度になるように制御されるため、つまり、出力信号Soに含まれている検出対象電流Iv1に基づく電圧成分の振幅が交流電圧V1の振幅に対応した大きさとなるように制御されるため、出力信号Soに含まれているこの電圧成分を検出することにより、静電容量C0の算出を行うことなく、交流電圧V1を非接触で検出することができる。
また、この電圧検出装置1では、信号抽出部32において、同期検波回路43が、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssについての信号成分の振幅を示す検波信号Vdを参照信号Ssを用いた同期検波によって検出し、制御回路44が、この検波信号Vdに基づいて増幅回路41の利得を制御する。したがって、この電圧検出装置1によれば、同期検波によって参照信号Ssの信号成分を正確に検出することができ、この結果、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分の振幅を高い精度で一定に制御することができるため、交流電圧V1の検出精度を一層向上させることができる。
また、増幅検出信号S3から交流電圧V1の信号成分を抽出して出力信号Soを生成する手法として、処理部33において、増幅検出信号S3をデジタル信号処理する手法も採用できるが、この電圧検出装置1によれば、上記した特性を有する既知のフィルタ回路で構成し得るフィルタ45を使用して、交流電圧V1を抽出する構成としたことにより、簡易な構成でありながら、検出対象電流Iv1に基づいて発生する電圧成分で構成される出力信号Soを低コストで生成することができる。また、この電圧検出装置1によれば、目標電圧Veを変更することにより、検出し得る交流電圧V1の範囲を変更することができる。
また、この電圧検出装置1によれば、出力信号Soに基づいて交流電圧V1を検出する処理部33を備えたことにより、処理部33に対して、交流電圧V1を一定間隔で検出させたり、また、検出した交流電圧V1を記憶部34に記憶させて保存したり、記憶部34に記憶されている交流電圧V1に基づいて、交流電圧V1の電圧波形を出力部35に表示させることができる。
また、この電圧検出装置1では、処理部33が、出力信号Soに基づいて交流電圧V1の電圧値を算出する。一例として、処理部33は、検出対象電流Iv1に基づいて発生する電圧成分(つまり交流電圧V1の周波数と同一周波数の電圧成分)で構成される出力信号Soを入力して、そのデジタルデータD1を取得し、取得したデジタルデータD1に対応する交流電圧V1の電圧値を電圧算出用テーブルTBを参照して取得することにより、検出対象体4の交流電圧V1を算出する。したがって、この電圧検出装置1によれば、交流電圧V1の電圧値自体を検出することができる。
なお、上記の電圧検出装置1では、検出電極12、電源部13、検出部14および絶縁部15をガード電極11内に収容することにより、本体回路部3とは別体に、フローティング回路部2を構成して、CMRR(Common Mode Rejection Ratio )を高めると共に、高圧な交流電圧V1の検出を可能とする構成を採用しているが、検出部14をフローティング状態で作動させる必要のない場合(例えば、交流電圧V1が比較的低圧であったり、高いCMRRが要求されない場合)には、図4に示す電圧検出装置1Aのように、ガード電極11、電源部13および絶縁部15を使用しない構成を採用することもできる。以下、電圧検出装置1Aについて説明する。
電圧検出装置1Aは、図4に示すように、電圧検出装置1でのフローティング回路部2に代えて、検出電極12および検出部14Aを備えている。したがって、電圧検出装置1Aは、検出電極12、検出部14Aおよび本体回路部3を備え、検出対象体4に生じている交流電圧V1を非接触で検出可能に構成されている。なお、検出電極12および本体回路部3については、電圧検出装置1と同一に構成されているため、同一の符号を付して重複する説明を省略し、電圧検出装置1と相違する検出部14Aについて主として説明する。
検出部14Aは、本体回路部3を構成する各構成要素(参照信号出力部31、信号抽出部32および処理部33など)と同じ不図示の電源から作動用電圧(グランド電位Vgを基準として生成される正電圧Vcc+および負電圧Vcc−)の供給を受けて作動する。また、検出部14Aは、図4に示すように、検出電極12に接続されると共に参照信号Ssを入力して(参照信号Ssが印加されて)、交流電圧V1の存在に起因して検出電極12と検出対象体4との間に流れる検出対象電流Iv1、および参照信号Ssの電圧Vsの入力に起因して検出電極12と検出対象体4との間に流れる参照電流Is1で構成される電流信号I(=Iv1+Is1)を検出すると共に、電流信号Iの電流値に応じて振幅が変化する検出信号S1を出力する。なお、この電流信号Iは、交流電圧V1とガード電極11の電圧Vr(=電圧Vs)との間の交流の電位差(V1−Vr)に応じてその振幅が変化する、つまりこの電位差(V1−Vr)に応じた電流値で流れる電流信号であるともいえる。
検出部14Aは、本例では一例として図5に示すように、検出抵抗61および差動増幅部62を備えている。検出抵抗61は、一端側が検出電極12に接続されると共に、他端側が参照信号出力部31に接続されている。差動増幅部62は、3つの演算増幅器AP1〜AP3、および7つの抵抗R1〜R7を備えた公知のインスツルメンテーションアンプで構成されている。また、この差動増幅部62では、各抵抗R6,R7にコンデンサC1,C2がそれぞれ並列に接続されて、演算増幅器AP3を含む出力段が積分機能を有するように構成されている。また、この差動増幅部62では、各抵抗R1〜R7のうちの対称の位置にある抵抗同士はバランスが取られており(つまり、R2とR3、R4とR5、およびR6とR7が、それぞれ同一の抵抗値に規定され)、かつコンデンサC1,C2についてもバランスが取られている(C1,C2が同一の容量値に規定されている)ものとする。また、差動増幅部62では、差動増幅部62における1つの入力端子として機能する演算増幅器AP1の非反転入力端子が検出抵抗61の一端に接続され、差動増幅部62における他の1つの入力端子として機能する演算増幅器AP2の非反転入力端子が参照信号出力部31に接続されている。この差動増幅部62では、各入力端子に入力される電圧をVin1,Vin2としたときに、検出信号S1は以下の式で表される。
S1=(Vin2−Vin1)×(1+2×R2/R1)×R6/R4
この場合、上記のS1の式における(Vin2−Vin1)は、電流信号I(=Iv1+Is1)が流れることによって検出抵抗61の両端間に発生する電圧を表している。したがって、検出部14Aは、上記したように、電流信号I(=Iv1+Is1)の電流値に応じて振幅が変化する検出信号S1を出力する。
本体回路部3では、信号抽出部32が、検出信号S1を増幅して増幅検出信号S3を生成しつつ、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分が一定となるように検出信号S1の増幅の際の利得を制御すると共に、交流電圧V1の信号成分を増幅検出信号S3から抽出(生成)して出力信号Soとして出力する。この場合、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分とは、検出信号S1に含まれる参照電圧成分Vs1(つまり、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssと同一周波数の信号成分)である。
次いで、処理部33が、電圧検出装置1と同様にして、記憶処理、電圧算出処理および出力処理を実行することにより、交流電圧V1の実効値や振幅などを算出して、ディスプレイ装置で構成された出力部35に表示させる。これにより、電圧検出装置1による検出対象体4の交流電圧V1の検出が完了する
したがって、この電圧検出装置1Aにおいても、電圧検出装置1と同様にして、信号抽出部32が参照信号Ssと同一周波数の信号成分の振幅が一定となるように増幅検出信号S3の振幅を制御することにより、検出対象体4と検出電極12との間の結合容量(静電容量C0)が未知の場合であっても(静電容量C0の値に拘わらず)、交流電圧V1についての感度が一定の感度になるように制御されるため、つまり、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分の振幅が一定の大きさとなるように制御されるため、この増幅検出信号S3から検出対象電流Iv1に基づく電圧成分を抽出して得られる出力信号Soを検出することにより、静電容量C0の算出を行うことなく、交流電圧V1を非接触で検出することができる。
また、この電圧検出装置1Aにおいても、電圧検出装置1と同様にして、信号抽出部32において、同期検波回路43が、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssについての信号成分の振幅を示す検波信号Vdを参照信号Ssを用いた同期検波によって検出し、制御回路44が、この検波信号Vdに基づいて増幅回路41の利得を制御する。したがって、この電圧検出装置1によれば、同期検波によって参照信号Ssの信号成分を正確に検出することができ、この結果、増幅検出信号S3に含まれている参照信号Ssの信号成分の振幅を高い精度で一定に制御することができるため、交流電圧V1の検出精度を一層向上させることができる。
また、この電圧検出装置1Aにおいても、増幅検出信号S3から交流電圧V1の信号成分を抽出して出力信号Soを生成する手法としてフィルタ45を使用したことにより、簡易な構成でありながら、検出対象電流Iv1に基づいて発生する電圧成分で構成される出力信号Soを低コストで生成することができる。
また、この電圧検出装置1Aにおいても、出力信号Soに基づいて交流電圧V1を検出する処理部33を備えたことにより、処理部33に対して、交流電圧V1を一定間隔で検出させたり、また、検出した交流電圧V1を記憶部34に記憶させて保存したり、記憶部34に記憶されている交流電圧V1に基づいて、交流電圧V1の電圧波形を出力部35に表示させることができる。また、処理部33が、出力信号Soに基づいて交流電圧V1の電圧値を算出する(一例として、検出対象電流Iv1に基づいて発生する電圧成分で構成される出力信号Soを入力して、そのデジタルデータD1を取得し、電圧算出用テーブルTBを参照することで、このデジタルデータD1に対応する検出対象体4の交流電圧V1を(電圧算出用テーブルTBを参照することで、検出対象体4の交流電圧V1を)算出する。したがって、この電圧検出装置1Aにおいても、交流電圧V1の電圧値自体を検出することができる。
また、上記の電圧検出装置1では、例えば、絶縁部15と増幅回路41との間、および参照信号出力部31と同期検波回路43との間をそれぞれ直接接続する構成を採用し、また、上記の電圧検出装置1Aでは、例えば、検出部14Aと増幅回路41との間、および参照信号出力部31と同期検波回路43との間をそれぞれ直接接続する構成を採用したが、図示はしないが、必要に応じてバッファを介装する構成を採用することもできる。また、参照信号出力部31から出力される参照信号Ssをそのままのレベルで同期検波回路43に供給する構成を採用した例について上記したが、図示はしないが、一例として分圧抵抗などで構成されるアッテネータを使用して、参照信号Ssを必要なレベルに低減させて、同期検波回路43に供給する構成を採用することもできる。
また、図示はしないが、アナログ信号である絶縁検出信号S2をデジタルデータに変換するA/D変換部、および参照信号出力部31から信号抽出部32に供給されるアナログ信号である参照信号Ssをデジタルデータに変換するA/D変換部を本体回路部3内に設けることにより、信号抽出部32での処理のすべて若しくは一部をデジタル処理で行う構成を採用することもできる。この場合、処理部33に信号抽出部32の機能を持たせる構成を採用することもでき、この構成によれば、回路部品点数を大幅に低減することができる。また、処理部33の機能と、信号抽出部32の機能とをソフトウェアで実現してもよいし、ハードウェア(DSP(Digital Signal Processor)やロジックアレイ)で実現することもできる。
また、参照信号出力部31が、周波数および振幅が一定の交流信号(一例として正弦波信号)を参照信号Ssとして出力する例について上記したが、図6に示す参照信号出力部31Aのように、正弦波信号に代えて、方形波信号を参照信号Ssとして出力する構成を採用することもできる。具体的には、参照信号出力部31Aは、方形波(方形波信号)を生成する方形波生成回路31a、および方形波(方形波信号)を積分して積分方形波(積分方形波信号)として出力する積分回路31bを備えている。この参照信号出力部31Aは、方形波生成回路31aによって生成された方形波信号を参照信号Ssとして信号抽出部32の同期検波回路43に出力する。また、参照信号出力部31Aは、積分回路31bから出力される積分方形波信号を検出部14(電圧検出装置1Aでは検出部14A)に対して参照信号Ssとして出力する。この場合、検出部14(14A)は検出電極12を介して静電容量C0と直列に接続されているため、この検出部14(14A)および静電容量C0を含む回路に流れる参照電流Is1は、参照信号Ssを微分した信号となる。
したがって、参照信号出力部31Aから検出部14(14A)に対して出力する参照信号Ssを予め積分回路31bで積分しておくことにより、方形波生成回路31aをロジック回路などを使用して簡易に構成することで、参照信号出力部31A全体の構成を簡易なものとしつつ、検出部14(14A)および静電容量C0を含む回路に流れる参照電流Is1を、参照信号出力部31Aから信号抽出部32に対して出力される方形波信号と同じ方形波信号とすることができる。これにより、装置構成(具体的には、参照信号出力部31A全体の構成)を簡易なものとしつつ、信号抽出部32において、同期検波回路43が、参照信号Ssで増幅検出信号S3を確実に同期検波することができる。
また、図7に示す参照信号出力部31Bのように、擬似ノイズ生成回路31cを備えて構成して、参照信号Ssとして擬似ノイズ信号を出力する構成を採用することもできる。この場合、参照信号出力部31Bは、擬似ノイズ生成回路31cによって生成された擬似ノイズ信号を参照信号Ssとして検出部14(14A)および信号抽出部32の同期検波回路43に出力する。また、擬似ノイズ生成回路31cは、一例としてM系列などの線形帰還シフトレジスタなどの公知の種々のシフトレジスタを用いて構成したり、ソフトウェア処理によって擬似ノイズ信号を生成するマイコンを用いて構成することができる。このように構成された参照信号出力部31Bを使用することにより、外乱(ノイズ)の影響を受けにくい電圧検出装置1(1A)を実現することができる。
次に、上記した電圧検出装置1を複数利用した線間電圧検出装置51について説明する。
最初に、線間電圧検出装置51の構成について、図面を参照して説明する。なお、以下では、三相(R相、S相およびT相)三線式の交流電路(以下、「電路」ともいう)R,S,Tの線間電圧を検出する例について説明する。
線間電圧検出装置51は、一例として、図8に示すように、電路R,S,Tの数と同数(3つ)の電圧検出装置1(以下、各電路R,S,Tに対応させて電圧検出装置1r,1s,1t(以下、特に区別しないときには「電圧検出装置1」ともいう)、算出部52、および表示部53を備え、電路R,S間の線間電圧Vrs、電路S,T間の線間電圧Vst、および電路R,T間の線間電圧Vrtを非接触で検出可能に構成されている。
各電圧検出装置1は、図8に示すように、上記したフローティング回路部2および本体回路部3をそれぞれ備えて同一に構成されて、各電路R,S,Tを検出対象体としてこれらの交流電圧Vrp,Vsp,Vtp(各々が検出対象交流電圧)の実効値を検出して、実効値を示すデータを検出データDva,Dvb,Dvcとして出力する。以下、検出データDva,Dvb,Dvcについては、特に区別しないときには「検出データDv」ともいう。本例では、各電圧検出装置1の出力部35は、データの送信が可能な送信装置で構成されて、処理部33から入力した検出データDva,Dvb,Dvcを算出部52に送信する機能を備えている。なお、電圧検出装置1における出力部35を除く他の構成要素については、前述した構成と同一であるため、詳細な説明を省略する。
算出部52は、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備えて構成されて、各電圧検出装置1から出力された検出データDvに基づいて、線間電圧を算出(検出)する線間電圧算出処理を実行する。また、算出部52は、線間電圧算出処理の結果を表示部53に表示させる。表示部53は、本例では、液晶ディスプレイなどのモニタ装置で構成されている。なお、プリンタなどの印字装置で構成することもできる。また、各本体回路部3は、後述するように互いのグランド電位Vgとなる部位(例えば、本体回路部3の筐体)G1同士が接続される。また、一例として、算出部52および表示部53は、3つの本体回路部3のうちのいずれか1つの本体回路部3に含まれている電源回路(不図示)から電圧の供給を受けて作動する。
次いで、線間電圧検出装置51の検出動作について説明する。
まず、検出に際して、図8に示すように、電圧検出装置1rで電路Rの交流電圧Vrpを検出するため、そのフローティング回路部2を電路Rに近づけると共に、その検出電極12を対応する電路Rに対向させる。同様にして、他の電圧検出装置1s,1tについても、電路S,Tの交流電圧Vsp,Vtpを検出するため、各フローティング回路部2の検出電極12を対応する電路S,Tにそれぞれ対向させる。これにより、各検出電極12と各電路R,S,Tとの間に静電容量C0(図1参照)がそれぞれ形成された状態となり、各電圧検出装置1r,1s,1tにおいて、対応する電路R,S,Tの交流電圧Vrp,Vsp,Vtpの検出が開始される。この場合、上記したように、各電圧検出装置1r,1s,1tでは、静電容量C0の容量値の如何に拘わらず、処理部33によって交流電圧Vrp,Vsp,Vtpが正確に検出される。
また、各電圧検出装置1r,1s,1tでは、出力部35が、処理部33によって算出された各電路R,S,Tの交流電圧Vrp,Vsp,Vtpについての実効値を、それぞれ検出データDva,Dvb,Dvcとして出力する。
算出部52は、各電圧検出装置1から出力された各検出データDva,Dvb,Dvcを入力してメモリに記憶する。次いで、算出部52は、線間電圧算出処理を実行する。具体的には、算出部52は、各検出データDva,Dvbで示される交流電圧Vrp,Vspの各実効値の差分電圧を算出することにより、各電路R,S間の線間電圧Vrsを求める(検出する)。また、算出部52は、同様にして、各検出データDvb,Dvcで示される交流電圧Vsp,Vtpの各実効値の差分電圧を算出することにより、各電路S,T間の線間電圧Vstを求め(検出し)、各検出データDva,Dvcで示される交流電圧Vrp,Vtpの各実効値のの差分電圧を算出することにより、各電路R,T間の線間電圧Vrtを求める(検出する)。また、算出部52は、算出した線間電圧Vrs,Vst,Vrtを表示部53に表示させる。
このように、この線間電圧検出装置51によれば、電圧検出装置1を使用したことにより、各電圧検出装置1における検出電極12と、各電圧検出装置1の検出対象体としての各電路R,S,Tとの間の結合容量(静電容量C0)が未知の状態であっても、これらの結合容量を算出することなく、線間電圧Vrs,Vst,Vrtを非接触で正確に検出することができる。
続いて、上記した電圧検出装置1Aを複数利用した線間電圧検出装置51Aについて説明する。
最初に、線間電圧検出装置51Aの構成について、図面を参照して説明する。なお、線間電圧検出装置51と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、以下では、三相三線式の電路R,S,Tの線間電圧を検出する例について説明する。
線間電圧検出装置51Aは、一例として、図9に示すように、電路R,S,Tの数と同数(3つ)の電圧検出装置1A(以下、各電路R,S,Tに対応させて電圧検出装置1Ar,1As,1At(以下、特に区別しないときには「電圧検出装置1A」ともいう)、算出部52、および表示部53を備え、電路R,S間の線間電圧Vrs、電路S,T間の線間電圧Vst、および電路R,T間の線間電圧Vrtを非接触で検出可能に構成されている。
各電圧検出装置1Aは、図9に示すように、上記した検出電極12、検出部14Aおよび本体回路部3をそれぞれ備えて同一に構成されて、各電路R,S,Tを検出対象体としてこれらの交流電圧Vrp,Vsp,Vtp(各々が検出対象交流電圧)の実効値を検出して、実効値を示すデータを検出データDva,Dvb,Dvcとして出力する。本例では、各電圧検出装置1の出力部35は、データの送信が可能な送信装置で構成されて、処理部33から入力した検出データDva,Dvb,Dvcを算出部52に送信する機能を備えている。なお、電圧検出装置1Aにおける出力部35を除く他の構成要素については、前述した構成と同一であるため、詳細な説明を省略する。また、算出部52および表示部53についても、前述した線間電圧検出装置51と同一であるため、詳細な説明を省略する。
次いで、線間電圧検出装置51Aの検出動作について説明する。
まず、検出に際して、図9に示すように、電圧検出装置1Arで電路Rの交流電圧Vrpを検出するため、その検出電極12を電路Rに近づけて対向させる。同様にして、他の電圧検出装置1As,1Atについても、電路S,Tの交流電圧Vsp,Vtpを検出するため、各検出電極12を対応する電路S,Tにそれぞれ対向させる。これにより、各検出電極12と各電路R,S,Tとの間に静電容量C0(図4参照)がそれぞれ形成された状態となり、各電圧検出装置1Ar,1As,1Atにおいて、対応する電路R,S,Tの交流電圧Vrp,Vsp,Vtpの検出が開始される。この場合、上記したように、各電圧検出装置1Ar,1As,1Atでは、静電容量C0の容量値の如何に拘わらず、処理部33によって交流電圧Vrp,Vsp,Vtpが正確に検出される。
また、各電圧検出装置1Ar,1As,1Atでは、出力部35が、処理部33によって算出された各電路R,S,Tの交流電圧Vrp,Vsp,Vtpについての実効値を、それぞれ検出データDva,Dvb,Dvcとして出力する。
算出部52は、各電圧検出装置1から出力された各検出データDva,Dvb,Dvcを入力してメモリに記憶する。次いで、算出部52は、線間電圧算出処理を実行して、各検出データDva,Dvbで示される交流電圧Vrp,Vspの各実効値の差分電圧を算出することにより、各電路R,S間の線間電圧Vrsを求め、また各検出データDvb,Dvcで示される交流電圧Vsp,Vtpの各実効値の差分電圧を算出することにより、各電路S,T間の線間電圧Vstを求め、また各検出データDva,Dvcで示される交流電圧Vrp,Vtpの各実効値のの差分電圧を算出することにより、各電路R,T間の線間電圧Vrtを求める。また、算出部52は、算出した線間電圧Vrs,Vst,Vrtを表示部53に表示させる。
このように、この線間電圧検出装置51Aによれば、電圧検出装置1Aを使用したことにより、各電圧検出装置1Aにおける検出電極12と、各電圧検出装置1Aの検出対象体としての各電路R,S,Tとの間の結合容量(静電容量C0)が未知の状態であっても、これらの結合容量を算出することなく、線間電圧Vrs,Vst,Vrtを非接触で正確に検出することができる。
なお、電圧検出装置1において使用されるフローティング電圧Vf+,Vf−を生成する電源部13として、バッテリとDC/DCコンバータ(いずれも図示せず)とを備えた構成と、バッテリに代えて、ガード電極11の外部からトランスを介して電気的に絶縁された状態でガード電極11内に交流電圧を供給し、この交流電圧をガード電極11内に設けた整流平滑部で直流電圧に変換してDC/DCコンバータに供給する構成とについて上記したが、図10に示すように、本体回路部3を構成する各構成要素(参照信号出力部31、信号抽出部32および処理部33など)に対して不図示の電源から供給される作動用電圧(グランド電位Vgを基準として生成される正電圧Vcc+および負電圧Vcc−)に基づいて、ガード電極11の電圧Vr、つまり参照信号Ssの電圧Vsを基準(ゼロボルト)とした上記のフローティング電圧Vf+,Vf−を生成する電源部13Aを使用する構成を採用することもできる。
この電源部13Aは、図11に示すように、ガード電極11の電圧Vrをゼロボルトとしたときに、正電圧Vcc+に基づいてガード電極11の電圧Vrに対して一定の正電圧であるフローティング電圧Vf+を生成する第1シリーズ電源回路61と、負電圧Vcc−に基づいてガード電極11の電圧Vrに対してフローティング電圧Vf+と絶対値が等しい負電圧であるフローティング電圧Vf−(電圧Vrとの差分の絶対値が、フローティング電圧Vf+と電圧Vrとの差分の絶対値と等しくなる電圧)を生成する第2シリーズ電源回路62とを備えている。具体的には、第1シリーズ電源回路61は、NPN型バイポーラトランジスタ61a(以下、「第1トランジスタ61a」ともいう)、第1抵抗61b、第1ツェナーダイオード61c(ツェナー電圧Vz)および第1コンデンサ61dを備えている。この場合、第1トランジスタ61aは、コレクタ端子が正電圧Vcc+の供給ラインに接続され、エミッタ端子がフローティング電圧Vf+の出力ラインに接続され、ベース端子がツェナーダイオード61cのカソード端子に接続されている。また、第1ツェナーダイオード61cは、アノード端子が電圧Vrの供給ラインに接続されている。第1抵抗61bは、一端が第1トランジスタ61aのコレクタ端子に接続されると共に、他端がベース端子に接続されている。第1コンデンサ61dは、一端が第1トランジスタ61aのエミッタ端子に接続されると共に、他端が電圧Vrの供給ラインに接続されている。
第2シリーズ電源回路62は、PNP型バイポーラトランジスタ62a(以下、「第2トランジスタ62a」ともいう)、第2抵抗62b、第2ツェナーダイオード62c(第1ツェナーダイオード61cと同一のツェナー電圧Vz)および第2コンデンサ62dを備えている。この場合、第2トランジスタ62aは、ベース・エミッタ端子間電圧Vbeが第1トランジスタ61aと同一に規定されると共に、コレクタ端子が負電圧Vcc−の供給ラインに接続され、エミッタ端子がフローティング電圧Vf−の出力ラインに接続され、ベース端子が第2ツェナーダイオード62cのアノード端子に接続されている。また、第2ツェナーダイオード62cは、カソード端子が電圧Vrの供給ラインに接続されている。第2抵抗62bは、一端が第2トランジスタ62aのコレクタ端子に接続されると共に、他端がベース端子に接続されている。第2コンデンサ62dは、一端が第2トランジスタ62aのエミッタ端子に接続されると共に、他端が電圧Vrの供給ラインに接続されている。
以上の構成により、電源部13Aでは、第1シリーズ電源回路61が、正電圧Vcc+からフローティング電圧Vf+(=Vr+Vz−Vbe)を生成して出力すると共に、第2シリーズ電源回路62が、負電圧Vcc−からフローティング電圧Vf−(=Vr−Vz+Vbe)を生成して出力する。具体的には、第1シリーズ電源回路61では、第1ツェナーダイオード61cが第1抵抗61bから電流の供給を受けてカソード端子にツェナー電圧Vzを発生させ、ベース端子がツェナー電圧Vzに規定された第1トランジスタ61aが、エミッタ端子に第1ツェナーダイオード61cのアノード端子を基準として、電圧(Vz−Vbe)を生成する。したがって、第1シリーズ電源回路61は、グランド電位Vgを基準としたときの電圧が(Vr+Vz−Vbe)となるフローティング電圧Vf+を生成して出力する。また、第2シリーズ電源回路62では、第2ツェナーダイオード62cが第2抵抗62bから電流の供給を受けてアノード端子にツェナー電圧Vzを発生させ、ベース端子がツェナー電圧Vzに規定された第2トランジスタ62aが、エミッタ端子に第2ツェナーダイオード62cのアノード端子を基準として、電圧(−Vz+Vbe)を生成する。したがって、第2シリーズ電源回路62は、グランド電位Vgを基準としたときの電圧が(Vr−Vz+Vbe)となるフローティング電圧Vf−を生成して出力する。
つまり、電源部13Aは、電圧(Vr+Vz−Vbe)が正電圧Vcc+に達せず、かつ電圧(Vr−Vz+Vbe)が負電圧Vcc−に達しない状態で電圧Vrが変動している限りにおいて、この電圧Vrの変動に追従しつつ、電圧Vrに対して絶対値|Vz−Vbe|の等しい正電圧であるフローティング電圧Vf+と、負電圧であるフローティング電圧Vf−とを生成して出力する。このため、フローティング回路部2内の各回路はこの各フローティング電圧Vf+,Vf−の供給を受けて正常に作動する結果、フローティング回路部2から絶縁検出信号S2が正常に出力される。したがって、この電源部13Aを使用することにより、バッテリやトランスなどの高価な部品の使用を回避できる結果、電圧検出装置1の製品コストを大幅に低減することができる。なお、図示はしないが、各シリーズ電源回路61,62に公知の過電流保護回路や公知の過電圧保護回路を付加することもできる。
また、フローティング回路部2に絶縁部15を配置して、検出部14で検出した検出信号S1を、この検出信号S1と電気的に絶縁された絶縁検出信号S2に変換して出力する構成について上記したが、図12に示すように、フローティング回路部2に絶縁部15を配置しない構成を採用することもできる。この構成では、フローティング回路部2から検出信号S1と電圧Vrを示す信号とを対にして本体回路部3へ出力し、この検出信号S1および電圧Vrを本体回路部3に配置した差動増幅回路63が入力すると共に、検出信号S1および電圧Vrの差分を示す検出信号S2aを絶縁検出信号S2に代えて増幅回路41に出力する構成を採用することもできる。
この差動増幅回路63は、一例として図12に示すように、演算増幅器63a、演算増幅器63aの反転入力端子とフローティング回路部2の増幅回路22との間に配設された入力抵抗63b、演算増幅器63aの非反転入力端子とフローティング回路部2のガード電極11との間に配設された入力抵抗63c、演算増幅器63a用の帰還抵抗63d、および演算増幅器63aの非反転入力端子とグランド電位Vgとの間に配設された抵抗63eを用いて構成することができる。また、この図12に示す構成においてフローティング回路部2の各構成要素に各フローティング電圧Vf+,Vf−を供給する電源としては、上記した電源部13,13Aのいずれかを使用することができる。
また、参照信号出力部31については、図11に示すように、参照信号出力部13にボルテージフォロア回路に構成された演算増幅器AP4を追加して、全体として新たな参照信号出力部として機能させることにより、参照信号出力部13で生成された参照信号Ssをより低インピーダンスで出力する構成を採用することもできる。