JP2010285312A - 水素発生装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面を陽極酸化により多孔質酸化膜にし、それに金属触媒を担持した触媒担体により、化学的に水素貯蔵・供給を繰り返す媒体を用いて、水素を取り出す脱水素の水素触媒部材において、設計自由度が高く、高温対応可能な水素触媒部材及び熱交換効率が高く、軽量、小型、安価な水素発生装置を提供する。
【解決手段】水素触媒部材を分散して第1のパイプ内に設け、その第1のパイプの長さ方向の外側または内側に燃焼廃ガスを通す第2のパイプを設け、少なくとも内側になったパイプを蛇行させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、水素発生装置に関し、特に、金属触媒を酸化膜に担持した触媒担体による水素触媒部材を使用した水素発生装置に関する。
近年、安全性、運搬性及び貯蔵能力に優れた水素貯蔵方法として、シクロヘキサンやデカリンのような炭化水素を用いた有機ハイドライドシステムが注目されている。これらの炭化水素は、常温で液体であるため、運搬性、貯蔵性に優れている。
例えば、ベンゼンとシクロヘキサンは、同じ炭素数を有する環状炭化水素であるが、ベンゼンは、炭素同士の結合が二重結合である不飽和炭化水素であるのに対し、シクロヘキサンは、二重結合を持たない飽和炭化水素である。ベンゼンの水素付加反応によりシクロヘキサンが得られ、シクロヘキサンの脱水素反応によりベンゼンが得られる。すなわち、これらの炭化水素の水素付加と脱水素反応を利用することにより、水素の貯蔵とその供給が可能となる。
ところで、特許文献1には、アルミニウム平板表面を陽極酸化して、多孔質酸化膜を設け、その多孔質酸化膜に金属触媒を担持して触媒担体とし、化学的に水素貯蔵・供給を繰り返す媒体を用いて水素を取り出す水素触媒部材を得ることが提案されている。また、このアルミニウム平板の水素触媒部材を、スペーサを介して積み上げることにより、水素分離の効率を向上させることが提案されている。
特開2007−326000公報
水素を取り出す水素反応システムに合わせて水素反応容器もそれにあった形状にし、その水素反応容器中に入れる水素触媒部材もまたそれに合わせて設計する必要がある。
アルミニウム平板に多孔質酸化皮膜を設けている特許文献1では、熱交換器からの熱拡散をアルミニウム平板の熱伝導性に頼っている。ここで触媒担体の体積率を上げるには多孔質酸化皮膜を厚くする必要があるが、多孔質酸化皮膜は熱伝導率が悪い為、多孔質酸化皮膜を厚くし過ぎると逆に水素転化率は低下する。
即ち高熱伝導であるアルミニウム金属部と低熱伝導である多孔質酸化皮膜部は、それぞれ薄肉にて緻密に構成される必要があり、かつガス流路など隙間部も構成する必要があるが、平板の積層構造では強度を保つためには薄肉化には限界がある。
水素を取り出す脱水素反応は吸熱反応なので水素反応容器は加熱される必要があるが、自動車用途などではエンジン廃熱が利用できる。しかしアルミニウム平板による熱伝導長さが長く熱抵抗が大きい為、熱交換は、不充分であり大型の熱交換器が必要であった。以上の通り従来技術では、小形、軽量の水素発生装置を得ることが困難であった。
本発明は、上記の課題を解決する為に、水素発生装置として最適な構造を得やすい、軽量、小型、安価な水素発生装置を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するために、下記の水素発生装置を提供するものである。
(1)金属触媒を担持した水素触媒部材により、水素供給する媒体を用いて化学反応で水素を取り出す水素発生装置において、前記水素触媒部材を分散して第1のパイプ内に設け、その第1のパイプの長さ方向の外側または内側に燃焼廃ガスを通す第2のパイプを設け、少なくとも内側になったパイプが蛇行している水素発生装置。
(2)上記(1)において、水素触媒部材が、多孔質酸化皮膜を設けた、アルミニウム繊維、アルミニウム粉若しくはアルミニウム箔の粉砕体、又は多孔質酸化皮膜の粉砕体、又はアルミナナノチューブの何れかである水素発生装置。
(3)上記(1)において、パイプが、螺旋状に蛇行している水素発生装置。
(4)上記(1)において、パイプの長さ方向において、化学反応部分の温度が250℃以下となる領域には水素触媒部材を設けない水素発生装置。
(5)上記(1)において、媒体導入側を、内燃機関の燃焼廃ガス導入口の反対側とした水素発生装置。
(6)上記(1)において、触媒金属は、二種以上とし、化学反応部分の温度が、250℃から700℃では白金、700℃以上、水素発生装置の上限温度以下ではニッケルとし、水素触媒部材の配置される温度により使い分けることを特徴とした水素発生装置。
本発明によれば、水素触媒部材を分散して第1のパイプ内に設け、その第1のパイプの長さ方向の外側または内側に燃焼廃ガスを通す第2のパイプを設けており、パイプ形状は板形状よりも圧力応力に対する強度が高いので、薄くでき、そのため熱抵抗が低くできる。
又、本発明の水素触媒部材は収納容器に合わせ変形可能なので、パイプは自由に蛇行でき、燃焼廃ガスとの接触面積を大きくできるので熱交換効率が高く水素発生装置としての反応効率や熱交換効率などを向上できる最適な構造を得やすい。そのため、小型、軽量、安価な水素発生装置を提供することができる。
本発明の形態の水素触媒部材とそれを使用した水素反応ユニットの概略図の一例を示している。 本発明の形態の水素発生装置を概念的に示している。 本発明の形態の別の水素発生装置を概念的に示している。 本発明の形態の外側のパイプと内側のパイプとの二重構造を示している。 本発明の形態の水素発生装置を示している。 本発明の形態の別の水素発生装置を示している。
本発明に述べる金属触媒は、水素触媒用の金属で、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、モリブデン、タングステン、バナジウム、オスミウム、クロム、コバルト、鉄などの金属及びこれらの合金触媒を用いることができる。
金属触媒として白金は脱水素触媒反応の下限温度が約300℃と低く、高効率が得られるものの希少であり高価である。白金より安価な金属触媒として例えばニッケルは脱水素触媒反応の下限温度が約700℃と高い。そのため希少高価である白金使用量を削減ために、水素発生装置内で、例えば250℃以下では金属触媒なし、250〜700℃の部分は白金、700℃以上、水素発生装置の上限温度以下ではニッケルとする使い方がある。
本発明に述べる水素触媒部材は、金属触媒を担持した水素発生用の触媒部材で、多孔質酸化皮膜を設けた、アルミニウム繊維、アルミニウム粉、アルミニウム箔の粉砕体、又は多孔質酸化皮膜の粉砕体又はアルミナナノチューブなどの小形状体で集合して用いられる。ひとつの小形状体の大きさが10nmから10mm程度のものからなる。
また、水素触媒部材としては、これらの触媒部材と金属繊維、金属粉体とを焼結した小形状体とするか、または混合体とするか、してもよい。
これらの触媒部材と混合または混合して焼結する金属繊維、金属粉体としては、適用温度に対応したものが選択され、660℃より十分低い場合はアルミニウムが好適であり、高温の場合では高融点金属が選定される。選ばれた金属繊維又は金属粉は、多孔質酸化皮膜を設けた、アルミニウム繊維、アルミニウム粉、アルミニウム箔の粉砕体、又は多孔質酸化皮膜の粉砕体又はアルミナナノチューブの何れかと混合され、好ましくは焼結とし、金属繊維間、又は金属粉間が結合され、支持体を構成する。
多孔質酸化皮膜を設ける方法は、陽極酸化工程、酸性水溶液処理、ベーマイト処理、焼成の順で施され、その後金属触媒が担持される。
陽極酸化工程は、アルミニウム表面に酸化皮膜を形成させる工程であり、酸化皮膜はバリア型皮膜と多孔質酸化皮膜に分類される。このうち、多孔質酸化皮膜は表面に細孔を有した形状で表面積が大きく金属触媒の担持表面積を大きく出来ることから水素触媒担持体としては、多孔質酸化皮膜の陽極酸化工法が最適である。本陽極酸化の化成液は、例えば燐酸,クロム酸,蓚酸,硫酸水溶液等を使用することができ、細孔の間隔、膜厚、細孔径は、印加電圧,処理温度,処理時間などの条件により、適宜設定することができる。
但し化成条件だけで、細孔径を拡大しようとすると、細孔間隔が広がり最適な触媒担持密度が得られない場合があるので、陽極酸化での細孔径は小さいままとし、後の酸性溶液処理で細孔径を整えるのが良い。膜厚は、適用するアルミニウム粉末径や焼結密度により最適値が異なる。粉末径に対して膜厚が厚いと、粉末同士の焼結結合部が消失したり、空隙が皮膜で満たされたり、皮膜成長での応力によりクラックを生じる。陽極酸化の処理液温度は、0℃から50℃、特に30℃から40℃とすることが好ましい。また、この陽極酸化の処理時間は処理条件や形成したい膜厚によって異なるが、例えば20℃、4質量%の蓚酸水溶液で15V、40分とした場合には約1.5μmの陽極酸化層を形成できる。本工程後、水洗し次に酸性水溶液処理を行う。
酸性水溶液処理は、上記陽極酸化で得られた皮膜の細孔を、触媒担持に適した径に拡大することを目的としており、上記陽極酸化での細孔が細い場合に適用する。 酸性水溶液として例えば、燐酸の場合には5〜20質量%であることが好ましく、10℃から30℃で10分から2時間、細孔径が適度に拡大されるまで処理する。本工程後、水洗し次にベーマイト処理を行う。
ベーマイト処理は皮膜表面にナノスケール構造体である羽毛状水酸化アルミニウムを形成させる工程である。表面が羽毛状となることで更に表面積が拡大する。この羽毛状形状は皮膜の外表面、細孔内壁に形成されるが、先の多孔質酸化皮膜を設けたアルミニウム箔の粉砕体では粉砕面にも形成する。ベーマイト処理は、pH6からpH8、好ましくはpH7からpH8の水中50℃〜200℃で処理し、乾燥した後次に焼成処理を行う。
ベーマイト処理の処理時間はpHや処理温度によっても異なるが、1時間以上とすることが好ましい。例えばpH7、100℃程度の水中で処理する場合、約5時間処理する。
焼成は皮膜を触媒反応に最適な含水量とさせるもので、水酸化アルミニウムをγ―アルミナに転化させることを目的としている。通常は300℃から550℃で0.1時間から5時間行う。
金属触媒の担持は、酸性水溶液処理後、ベーマイト処理後、又は焼成後に行う。金属触媒を多孔質酸化膜に担持する方法は、触媒金属をコロイド状に分散した液に浸漬したり、触媒金属を無電解めっきしたりして行う。
アルミニウム繊維としては、アルミニウムを繊維状にしたもので、寸法及び断面形状は製法により異なるが、その径は、20μmから1500μm程度、長さは0.5mm程度から数100mのものを使用する。純度は特に限定しないが、少なくとも99%、好ましくは99.9%以上が好適である。また、その製造方法は、従来からの方法である、線引き加工法、切削法、溶融紡糸法または粉末延伸法など限定なく使用できる。
線引き加工法は、線材をダイスに通して引延するものである。切削法は、アルミニウムブロックを刃物で削り、短繊維を作るものである。溶融紡糸法は、アルミニウム冶金を溶解し溶融状態から一挙に細線化するものである。粉末延伸法は、アルミニウム粉末と塩類との混合物を押し出しや圧延などで延伸するものである。切削法のうち、アルミニウム箔を切削し繊維状にする方法は、たとえば、コイル状に巻いて回転させ、端面に切削工具をあてて切削していくコイル切削法が使用できる。このアルミニウム繊維は、そのまままたは必要な長さに切断したもの、また繊維の長さ方向に複数束ねるか、またはフェルト状にからみ合わせてから焼結したものなどが使用できる。このアルミニウム繊維には、陽極酸化、酸性水溶液処理、ベーマイト処理、焼成、触媒担持が施される。
アルミニウム粉としては、公知の方法により製造されたものを使用することができる。たとえば、粒径が50μmから200μm程度では、ガスアトマイズ法など使用することができ、それより小さい場合には、遠心力アトマイズ法など、それより大きい場合には、機械的プロセスのスタンプミル、ボールミルなどの粉砕法などが使用できる。
このアルミニウム粉には、陽極酸化、酸性水溶液処理、ベーマイト処理、焼成、触媒担持が施される。但しアルミニウム粉に通電することは困難なので、アルミニウム粉は、一旦ポーラスな焼結体にし、陽極酸化工程以後に、再び必要な大きさに分割する方法がとられる。
アルミナナノチューブは、中心に細孔を有する柱状であり、柱の断面形状は不定であるが、六角柱が代表形状である。例えば高濃度硫酸による多孔質酸化皮膜をアルミニウム地金側から溶解することにより、セルを分解して形成したアルミナナノチューブが使用できる。また、その他の方法として二段化成処理としホウ酸アンモニウム水溶液での化成後、硫酸水溶液で化成することによりアルミナナノチューブが得られることが知られている。このアルミナナノチューブには、酸性水溶液処理、ベーマイト処理、焼成、触媒担持が施される。
アルミニウム箔の粉砕体としては、アルミニウム箔の表面に陽極酸化により多孔質酸化皮膜を設け、粉砕したもので、この陽極酸化を皮膜と地金の厚さ比(皮膜厚/地金厚)が1以上、好ましくは5以上となるまで行い、酸性水溶液処理で細孔径拡大後、粉砕したものが特に使用できる。
多孔質酸化皮膜の粉砕体としては、アルミニウム基材の表面に陽極酸化により多孔質酸化皮膜を形成させ、酸水溶液処理で細孔径拡大後に、酸水溶液中で逆電圧を印加すること、又は酸若しくはアルカリ水溶液に浸漬することで多孔質酸化皮膜を剥離させ、粉砕したものである。
上記ふたつの粉砕体は、粉砕することで粉砕面も金属触媒の担持表面積として活用出来る。金属触媒の担持密度を最も高くできるのは、前述のアルミナナノチューブであるが、アルミナナノチューブに比べ低コストにて高担持密度を達成出来る。表面積を増すには、なるべく細かく破砕した方が良い。この陽極酸化及び酸性水溶液処理の方法は後述の通りであり、粉砕後、後述のベーマイト処理、焼成、触媒担持が施される。
このように本願発明に使用する水素触媒部材は、板の場合と異なり表面積の大きな小形状体である。構造体の(表面積/体積)は構造体が小さい程、大きく出来るので平板の場合より触媒担体の収納効率が高い。
また、触媒部材にはシクロヘキサンなどの媒体を流通させると、平坦な流路では層流を生じ、反応に寄与しない領域ができるが、本発明では、媒体が小形状体の空隙を流通し媒体の流れを乱すため、未反応領域を生じ難い。
また、本水素触媒部材は特許文献のような一体形状ではなく、微小構造体であり金属繊維や金属粉と混合して使用したり、その混合比を調整したり、調整後金属繊維や金属粉同士を焼結することも可能である。
脱水素反応は吸熱反応なので、反応容器内で温度分布を生じるが脱水素反応には温度依存性がある。金属繊維又は金属粉の体積率を増すと熱伝導は良好となるが、多孔質アルミナ量が減る。逆に金属繊維又は金属粉焼結体の体積率を減らすと、多孔質アルミナ量を増すことが出来るが、熱伝導が不足する。容器形状、大きさ、熱交換器の配置、性能などに応じ、金属繊維、金属粉と多孔質アルミナ群の比率を容器内で調整することで、反応容器内が反応下限温度以下とならないようにすることができ、高効率が得られる。
本発明に述べる媒体は、水素を放出し貯蔵する水素媒体で、水素を放出する水素媒体である水素供給体は、それ自体が安定であると共に脱水素されて安定な芳香族類となるものであれば特に制限されるものではないが、好ましくはシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の単環式水素化芳香族類や、テトラリン、デカリン、メチルデカリン等の2環式水素化芳香族類や、テトラデカヒドロアントラセン等の3環式水素化芳香族類等を挙げることができ、より好ましくはシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の単環式水素化芳香族類や、テトラリン、デカリン、メチルデカリン等の2環式水素化芳香族類である。
水素を貯蔵する水素媒体は、上記の水素を放出した水素貯蔵体で、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセンなどである。
以下、これら水素媒体全体のことを指して有機ハイドライドと呼ぶ。これら有機ハイドライドは、炭素同士の二重結合に水素が付加することにより、水素を貯蔵する。水素付加後の水素供給体は、水素を放出して元の水素貯蔵体に戻る。すなわち、上述の燃料は、水素のリサイクルに適したキャリアとなる。一方、上述の燃料の水素付加反応及び脱水素反応に際して利用される触媒は、既に研究開発されて熟知されているものも適用可能であり、実用的なものである。本発明は、より低温で水素貯蔵,供給が可能な触媒を用いることが好ましく、システム全体の効率を向上することができる。
本発明に述べるパイプは、入口と出口を持つ、筒状体であり、少なくとも内側のパイプは蛇行している。本発明に述べる水素発生装置はパイプ内に、もう一つのパイプを収納した構造であり、外側のパイプの内壁と内側のパイプの外壁で挟まれる空間又は、内側のパイプ内のどちらか一方の空間に水素触媒部材が分散して保持される。水素触媒部材がない側の空間には、燃焼廃ガスが通過することで、もう一方の水素触媒部材がある方の空間が加熱される。水素触媒部材がある方の空間には水素媒体が通過し、脱水素の反応下限温度を越える部位では触媒による化学反応により水素が発生する。
また、何れの場合でも内側のパイプは、蛇行させて、外側のパイプと内側のパイプとの間の空間を巡回させる。また、外側のパイプと内側のパイプとの空間を狭め、一体的に、蛇行させてもよい。また、蛇行の方法は、螺旋状、波状、U形状、など特に限定はないが、水素発生装置の形状制約や圧力損失、熱交換効率に合わせて選択される。ここで特に螺旋状とした場合、加工ストレス及び運転での圧力ストレスが全体に分散され薄肉化できることに加え、内側のパイプのみを螺旋状とした場合でも、外側のパイプ内壁と内側のパイプで挟まれる空間が螺旋状となり、この空間を流れる流体(燃焼廃ガス又は水素媒体)の流路長が長くなることで熱交換効率を高められ好適である。
パイプの材質は、耐熱性で加工性が良好なものがよく、耐熱性の金属、たとえば銅、ニッケル、鉄、ステンレスが好ましい。特に、燃焼廃ガスを通すパイプは、特に燃焼廃ガス温度以上の融点と高い熱伝導率が必要で、内燃機関の燃焼排ガスを使用する場合、800℃温度以上の融点と高い熱伝導率が必要であり銅製などが好ましい。
パイプの断面形状は、特に限定しないが、汎用性及び蛇行加工の容易性より丸パイプが好適である。大きさは流量、及び必要とする熱交換効率などから決定されるが、例えば内側のパイプの外径はΦ5mmから20mm、肉厚は0.4mmから2mm程度である。
水素触媒部材は、パイプの蛇行加工前に挿入しても良いが、特に水素媒体が粉体や短い繊維の場合では蛇行加工後の挿入も可能であり、焼結とする場合でも、パイプ内で焼結することで蛇行加工後の挿入が可能である。パイプの蛇行加工では、加工による屈曲防止として、パイプ内に砂を入れたり、水を入れ凍結させるなどを行う。これらの代替として水素触媒部材を使用しても良いが、曲げ加工に最適な充填量/充填密度と最終的に必要な水素触媒部材の充填量/充填密度が合わない場合では、砂や凍結水による曲げ加工とし、水素触媒部材は加工後の挿入とした方が都合良い。
また、金属触媒として白金を採用した場合、脱水素反応の下限温度は300℃程度なので、水素媒体導入側の250℃に達しない部分には水素触媒部材を配置せず、水素媒体の予熱とする。この領域には、何も挿入しないか、或いは金属粉、金属繊維又はその焼結体を挿入し予熱効率を高める。また700℃を超える部位では、触媒として白金より安価なニッケルが採用でき、更に希少/高価な白金使用量を削減できる。
また、燃焼廃ガスの高温部は脱水素反応として積極利用し、低温部は水素媒体の予熱として利用した方が全体の効率を高められるので、水素媒体の導入側を、燃焼廃ガスの排出側、水素媒体の排出側を燃焼廃ガスの導入側とした方が良い。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、水素発生装置および水素反応システムの概略図の一例であり水素エンジンを示している。
水素発生装置1には、反応容器部分2と、この反応用熱源である燃焼廃ガスの熱交換部分3とを設ける。
反応容器部分2では、白金などの金属触媒を多孔質酸化膜に担持した水素触媒担体を配置し、媒体タンクから配管により送られてくるメチルシクロヘキサンなどの水素を付加した媒体が、水素とトルエンなどの水素を放出した媒体に化学反応し、気液分離容器に送られてそれぞれ分離される。トルエンなどの水素を放出した媒体および未反応のメチルシクロヘキサンなどの水素を付加した媒体の液化物は廃液タンクに貯蔵される。一方、水素はエンジンに送られ燃料となる。
また、燃焼廃ガスの熱交換部分3では、この水素発生の脱水素反応の化学反応が吸熱反応であるため、熱を必要とし、この熱を、エンジンからの排ガスである燃焼廃ガスを利用し、水素発生装置1の燃焼廃ガスの熱交換部分3により得ている。
図2は、本発明の形態の水素発生装置を概念的に示している。
図2(a)は、水素触媒部材4を分散して保持して媒体を通し脱水素の水素発生させるものを第1のパイプ5とし、その第1のパイプ5を取り囲むように外側に、第1のパイプ5より径の大きな第2のパイプ6を設け、第1のパイプ5と第2のパイプ6との間の空間に燃焼廃ガスを通す構造を示している。
図2(b)は、内側の第2のパイプ6内に燃焼廃ガスを通し、外側の第1のパイプ5と内側の第2のパイプ6との間の空間に水素触媒部材4を設ける構造を示している。
水素触媒部材4は、小形状体なので、図2(a)では、蛇行した内側の第1のパイプ5の形状に合わせて、また、図2(b)では、蛇行した内側の第2のパイプと外側の第1のパイプとの間の形状に合わせて、収納されている。
第一のパイプ5は、螺旋状にすると本パイプの外側を流れる流体も、本パイプに沿った螺旋状となり高い熱交換効率が得られる。また、熱交換効率より巻き付けは多重に巻くのが良い。螺旋状にする場合は、巻き付け用の棒にパイプに巻き付けると良い。又第一のパイプ5の外側を流れる流体を螺旋状にするために第二のパイプ6の内径は、第一のパイプの螺旋外径に勘合させる必要があり、螺旋のピッチは必要な熱交換効率、流体の圧力損失から決定される。
また、パイプ内の水素触媒部材4が媒体の通過により移動しないように、収納部と非収納部の境には金属繊維やセラミック繊維の集合体などフィルター7を詰め、これを固定する為に、パイプに凹凸加工8を行っても良い。外側のパイプの外表面は、熱の放散を抑えるために断熱材9で覆われることが望ましい。
水素発生装置の燃焼廃ガス排気の後ろ側は、通常のエンジンと同様に、フィルター、消音器などが配置されるが、水素発生装置内に連なって同時収納されても良い。
図3は、本発明の形態の別の水素発生装置を概念的に示している。
外側のパイプと内側のパイプとの空間を小さくして、一体的に、蛇行させた二重パイプ構造を示している。
図3(a)は、内側の第1のパイプ5に水素触媒部材4を分散して保持して媒体を通すものとし、その内側の第1のパイプ5を取り囲むように外側に、内側の第1のパイプ5より径の大きな第2のパイプ6を設け、外側の第2のパイプ6と内側の第1のパイプ5との間の空間に燃焼廃ガスを通す構造を示している。
図3(b)は、内側の第2のパイプ6内に燃焼廃ガスを通し、外側の第1のパイプ5と内側の第2のパイプ6との間の空間に水素触媒部材4を設ける構造を示している。
これら二重パイプは巻き付けや曲げ加工を行うことでコンパクト化をはかり、空間部分は断熱材9で覆われることが望ましい。又、図4に示すように二重パイプ10の隙間空間がある程度一定となるように、外側パイプに間欠的なへこみ加工11を行っても良い。
このように、水素触媒部材として、多孔質酸化皮膜を設けた、アルミニウム繊維、アルミニウム粉若しくはアルミニウム箔の粉砕体、又は多孔質酸化皮膜の粉砕体、又はアルミナナノチューブの何れかである場合、小形状体であるため、パイプ内に分散して設けやすい。
また、蛇行を螺旋状とした場合では、通過する流体の圧力損失が少なく又パイプ加工でのストレスを分散出来る。
また、パイプの長さ方向において、化学反応部分の温度が250℃以下となる領域には水素触媒部材を設けないと水素触媒部材の材料ムダが省かれる。
また、媒体導入側を、内燃機関の燃焼廃ガス導入口の反対側にすると、媒体が充分に加熱されやすく反応効率が改善されやすい。
また触媒金属は、二種以上とし、化学反応部分の温度が、700℃以下では白金、700℃以上ではニッケルとし、水素触媒部材の配置される温度により使い分けることにより高価な白金触媒量を節減することができる。
(水素発生装置の作成1)
外径8mm、肉厚0.8mmの銅パイプ20を直径15mm、長さ220mmの棒21に螺旋状に巻き付ける。 巻き付けピッチは13mm程度とし3重(1.5往復)に巻き付けた(図5(a))。
次に、銅パイプ20の中には水素触媒部材を収納する。なお、水素触媒部材の収納は、温度が250℃以上となる部分のみであり水素触媒部材を節約している。
銅パイプ20には媒体入り口20b側から水素を添加した媒体が流れるが、この流れにより水素触媒部材が押し流されないように媒体出口20a側にフィルター7が挿入され、凹凸加工8により固定される。
次に、銅パイプ20を一対の半筒体22ではさんで半筒体22をパイプ状にし、その両端面に端面材23と端面材23から外側に突出して設ける燃焼廃ガス導出入管24を設け、水素発生装置が組み付けられ(図5(b))、溶接される(図5(c))。銅パイプ20の入り口と出口部分は半筒体22に設けた穴25から導出させる。
又図5には示していないが、水素発生装置の全体を断熱材で覆う。燃焼廃ガスは、燃焼廃ガス導出入管24の燃焼廃ガス入り口24a側から挿入され、燃焼廃ガス導出入管24の燃焼廃ガス出口24b側に抜ける。
水素を添加した媒体は銅パイプの媒体入り口20bから注入され、水素触媒部材がない低温部で予熱され、水素触媒部材がある高温部をパイプに沿って、螺旋状に通過し、脱水素反応により、銅パイプの媒体出口20a側から水素、脱水素した媒体及び未反応の媒体が排出される。これらは、図1の通り気液分離容器で分離され、液体は廃液タンク、水素はエンジンに導かれる。
(水素発生装置の作成2)
外径8mm、肉厚0.8mmの銅製の内側パイプ26と外径12mm、肉厚0.8mmの銅製の外側パイプ27からなる二重パイプ28構造において、外側パイプ27の端部側面にスリット29を設け、そこから内側パイプ26を外側パイプ27とは直角に突き出す(図6(a))。又外側パイプ27には複数の間欠的なへこみ加工が設けられ、内側パイプ26が外側パイプ27のほぼ中央に配置されるようにしている。
次に、内側パイプ26内には水素触媒部材が挿入され、図6(a)、図6(b)、図6(c)の順序通り、二重パイプ28を三重巻きのコイル状に巻き付ける。巻き付けの後の後部分にも始め部分と同様に外側パイプ27の端部側面にスリット29を設け、そこから内側パイプ26を直角に突き出す(図6(c))。
次に、二重パイプ28の両端にはスリット29をふさぐように一対の半筒体状の溶接片30が溶接される(図6(d)、図6(e))。尚、図には示していないが、全体は断熱材で覆われる。
エンジンからの燃焼廃ガスは、二重パイプ28の外側パイプの入り口27a側から挿入され、外側パイプ27と内側パイプ26の空隙を通り二重パイプ28の外側パイプの出口27b側に抜ける。一方水素を添加した媒体は、内側パイプ26の入り口26b側から供給され、内側パイプの出口26a側から水素、脱水素した媒体及び未反応の媒体が排出される。
パイプの温度は、二重パイプ28の外側パイプの入り口27a側が高温、二重パイプ28の外側パイプの出口27b側が低温となる。実施例1の場合と同様、水素触媒部材は高温部にのみ配置され、250℃以下の領域では水素を添加した媒体の予熱として使用される。
1…水素発生装置、2…反応容器部分、3…燃焼廃ガスの熱交換部分、4…水素触媒部材、5…第1のパイプ、6…第2のパイプ、7…フィルター、8…凹凸加工、9…断熱材、10…二重パイプ、11…へこみ加工、20…銅パイプ、20a…銅パイプの媒体出口、20b…銅パイプの媒体入り口、21…棒、22…半筒体、23…端面材、24…燃焼廃ガス導出入管、24a…燃焼廃ガス導出入管の燃焼廃ガス入り口、24b…燃焼廃ガス導出入管の燃焼廃ガス出口、25…穴、26…内側パイプ、26a…内側パイプの出口、26b…内側パイプの入り口、27…外側パイプ、27a…外側パイプの入り口、27b…外側パイプの出口、28…二重パイプ、29…スリット、30…溶接片

Claims (6)

  1. 金属触媒を担持した水素触媒部材により、水素供給する媒体を用いて化学反応で水素を取り出す水素発生装置において、前記水素触媒部材を分散して第1のパイプ内に設け、その第1のパイプの長さ方向の外側または内側に燃焼廃ガスを通す第2のパイプを設け、少なくとも内側になったパイプが蛇行している水素発生装置。
  2. 水素触媒部材が、多孔質酸化皮膜を設けた、アルミニウム繊維、アルミニウム粉若しくはアルミニウム箔の粉砕体、又は多孔質酸化皮膜の粉砕体、又はアルミナナノチューブの何れかである請求項1の水素発生装置。
  3. パイプが、螺旋状に蛇行している請求項1の水素発生装置。
  4. パイプの長さ方向において、化学反応部分の温度が250℃以下となる領域には水素触媒部材を設けない請求項1の水素発生装置。
  5. 第1のパイプの媒体導入側を、内燃機関の燃焼廃ガス導入口の反対側とした請求項1の水素発生装置。
  6. 触媒金属は、二種以上とし、化学反応部分の温度が、250℃から700℃では白金、700℃以上、水素発生装置の上限温度以下ではニッケルとし、水素触媒部材の配置される温度により使い分けることを特徴とした請求項1の水素発生装置。
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