JP2010279971A - 靭性に優れた高強度溶接金属 - Google Patents

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Abstract

【課題】大入熱量・高パス間温度で溶接した場合であっても、強度と靭性を確保できる溶接金属を提供する。
【解決手段】溶接金属全質量に対する割合で、C:0.02〜0.12%(質量%の意味。以下、同じ。)、Si:0.3〜1.0%、Mn:1.0〜2.0%、Ti:0.01〜0.30%、Cu:0.2〜2.5%および/またはNi:0.5〜3.5%を含有する他、Cr:1.0%以下(0%を含まない)および/またはMo:0.5〜1.5% を含有し、更に、Mg:0.0001〜0.02%、Ca:0.005%以下(0%を含まない)、およびAl:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するとともに、下記(1)式で表されるXD値が0.85<XD<1.25を満たすことを特徴とする溶接金属である。

【選択図】なし

Description

本発明は780MPa以上の高強度溶接金属に関するものであり、特にガスシールドアーク溶接により得られる高強度溶接金属に関するものである。
建築、造船、自動車等の製造過程における鋼板の溶接現場では、ガスシールドアーク溶接が広く採用されている。特に、建築鉄骨分野においては、経済性の観点からシールドガスとしてCO2100%のガスや、CO2分率の高いAr−CO2混合ガス(CO2の比率は80体積%以上)(以下では、これらのガスを用いる溶接をまとめて「炭酸ガスシールドアーク溶接」と呼ぶ)が多く用いられている。一方、近年では耐震性向上等の観点から、高張力鋼の適用が拡大しつつあり、高張力鋼を炭酸ガスシールドアーク溶接で接合する要求が高まっている。
非特許文献1には、建築構造用の780MPa級高張力鋼を炭酸ガスシールドアーク溶接した例が開示されている。非特許文献1によれば、780MPa級の高張力鋼を溶接するにあたって、溶接金属の引張強度を一定以上確保するためには、入熱量やパス間温度を小入熱・低パス間温度(例えば、入熱量:20kJ/cm程度、パス間温度:150℃程度)に厳格に管理する必要がある旨が記載されている。しかし、小入熱量や低パス間温度で現場溶接を行う場合、パス数が過多となって融合不良が発生したり、施工能率が低下したりするなどの不具合が生じるためあまり好ましくない。そこで、入熱量やパス間温度を厳密に下げなくとも、すなわち大入熱量・高パス間温度で溶接した場合であっても溶接金属の引張強度を確保できる技術が望まれている。
一方、溶接金属の引張強度と靭性は一般にトレードオフの関係にあることから、溶接金属の引張強度を高めると靭性が低下してしまう。
すなわち、大入熱量・高パス間温度で溶接した場合であっても溶接金属の引張強度を確保し、さらに靭性も確保できる技術の開発が望まれている。
例えば特許文献1には、引張強さが900MPa以上で安定した靭性を有する溶接金属が得られるソリッドワイヤが開示されている。しかし、特許文献1では溶接金属中の酸素量を低減して靭性を向上させることとしているため、シールドガスとしてはAr−CO2(CO2の混合量は5〜10体積%)を用いることを条件としている。このようなシールドガスによる溶接は炭酸ガスシールドアーク溶接と比較して経済性を損なうため、特に建築鉄骨分野においては適用し難い。
一方、特許文献2、3には、大入熱量および高パス間温度で施工した場合でも溶接金属の強度と靭性が確保できるソリッドワイヤが開示されている。このうち、特許文献2は溶接金属の強度と靭性を確保するために、ソリッドワイヤの各種成分組成の含有量のバランスを制御しているが、590MPa級の高張力鋼に関するものである。また、特許文献3は、溶接金属組織の粗大化による靭性の低下を抑制するため、ソリッドワイヤ中のTiおよびMgの含有量、Si及びMnの総含有量、並びにMn含有量とSi含有量との比を調整しており、780MPa級の高張力鋼にも適用できる旨が記載されている。しかし、特許文献2、3はいずれもB(ボロン)を添加しており、B添加鋼を780MPa級の高張力鋼に適用した場合、高温割れの危険性がかなり高くなる。
特開2007−260697号公報 特開2004−237333号公報 特開2007−253163号公報
「第二吉本ビルディング」、鉄構技術、2004年6月、p.56−65
本発明の目的は、780MPa以上の高張力鋼を炭酸ガスシールドアーク溶接するに際し、大入熱量・高パス間温度で施工した場合であっても、強度と靭性を確保できる溶接金属を提供することにある。
本発明の溶接金属は、溶接金属全質量に対する割合で、C:0.02〜0.12%(質量%の意味。以下、同じ。)、Si:0.3〜1.0%、Mn:1.0〜2.0%、Ti:0.01〜0.30%、Cu:0.2〜2.5%および/またはNi:0.5〜3.5%を含有する他、Cr:1.0%以下(0%を含まない)および/またはMo:0.5〜1.5% を含有し、更に、Mg:0.0001〜0.02%、Ca:0.005%以下(0%を含まない)、およびAl:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するとともに、下記(1)式で表されるXD値が0.85<XD<1.25を満たす。
・・・(1)
本発明の溶接金属は、必要に応じて更にNb:0.01%以下(0%を含まない)および/またはV:0.01%以下(0%を含まない)を含有していても良い。
本発明の溶接金属は、各種成分組成を調整するとともに、酸化物界面の剥離の発生に影響するTi、Ca、Mg、Alの含有量と、発生した剥離の進展に影響するC、Mn、Cu、Ni、Cr、Moの含有量のバランスを適切に制御しているため、大入熱量・高パス間温度で溶接した場合であっても、強度と靭性に優れた溶接金属を提供することができる。また本発明の溶接金属はB(ボロン)を含んでいないため、高温割れの可能性も極めて低い。
図1(a)は発生した剥離を進展(連結)させるためのエネルギーに相当する「計算値」と、溶接金属の靭性の関係を示したグラフであり、図1(b)は各種酸化物と母材の付着仕事を示したものである。 図2(a)は鋼板の開先形状を表した概略図であり、図2(b)は溶接の積層要領を示した概略図である。 図3(a)は溶着金属の引張試験片の採取位置を示した概略図であり、図3(b)は溶着金属のシャルピー衝撃試験片の採取位置を表した概略図である。
本発明者らは、780MPa以上の高張力鋼を炭酸ガスシールドアーク溶接するにあたって、大入熱量・高パス間温度で施工しても強度・靭性に優れた溶接金属を得るべく鋭意研究を重ねた。その結果、溶接金属の靭性は、溶接金属中に生成する酸化物系介在物と母材(すなわち溶接金属)の界面(以下では、単に「界面」と呼ぶ場合がある。)における剥離の発生および進展挙動に大きく影響を受けていることを見出した。さらに、界面の剥離の発生については酸化物の種類に影響を受け、界面の剥離の進展については溶接金属の引張強度に影響を受けていることが判明した。
まず、界面の剥離の発生については酸化物系介在物(以下、「酸化物」と呼ぶ。)の種類の影響を受けているものと考えられる。つまり、酸化物界面での付着仕事が大きい酸化物ほど界面の剥離が発生しにくいものと考えられる。ここで付着仕事とは、液相の母材(溶接金属)中に、固相の酸化物が存在している状態において、母材と酸化物を付着させるのに必要なエネルギーのことであり、この付着仕事が大きいと、溶接金属が固まった後の、酸化物界面の接着力も大きくなる。
次に、発生した剥離の進展については、溶接金属の強度が影響していると考えられる。一旦剥離が発生した後は、剥離先端に応力が集中し、剥離が広がって最終破断に至るのであり、この応力集中が小さいほど剥離は広がりにくく、靭性が向上する。また剥離先端の応力分布については、母材の強度が高いと塑性域は広がりにくくなるため局部的に応力が集中しやすくなり、一方、母材の強度が低いと塑性域が広がりやすく局部的な応力集中が生じにくい。すなわち、強度が低いほど剥離は進展しにくく、靭性が向上すると考えられる。
上記した界面の剥離(発生と進展)と溶接金属の靭性について、図1(a)、(b)を示す。図1(a)は、発生した剥離を進展(連結)させるためのエネルギーに相当する「計算値」と、溶接金属の靭性との関係を示し、図1(b)は各種元素の酸化物と母材の付着仕事を示すグラフである。図1(a)では、BASEワイヤとしてMG80((株)神戸製鋼所製、成分組成は、C:0.08%、Si:0.38%、Mn:1.25%、P:0.009%、S:0.011%、Ni:2.22%、Mo:0.63%)を用意し、さらにBASEワイヤにTi、Ca、Mg、Alを添加したワイヤをそれぞれ用意し、これらを溶接した場合の溶接金属の靭性を測定した。図1(b)は、付着仕事=γLV(1+cosθ)の式に基づき、θ:濡れ性(接触角)と付着仕事の関係をグラフ化したものである。なお、前記γLVは液相−気相の界面張力を示すものであり、「B.J.Keene, Reviews of data for the surface tension of pure metals, International Materials Reviews, vol.38, No.4(1993), pp.157−192」に示される値を用いた。また各種元素の酸化物と母材の間の接触角θは、「サムソノフ監修、最新酸化物便覧、物理化学性質、日ソ通信社(1978)」に示される値を用いた。
図1(a)における「計算値」は、発生した界面の剥離を進展(連結)させるためのエネルギーに相当する値である。この「計算値」は溶接金属の強度や破面粗さの値から計算されるものであり、強度が低くなるほど大きな値を示す。すなわち図1(a)からは、溶接金属の強度が低くなるほど靭性が高くなる傾向を読み取ることができる。しかし、同じ「計算値」(すなわち、同じ強度)であっても、添加した成分(Ti、Ca、Mg、Al)によって、靭性値が異なっており、高い方から順にTi、Mg、Ca、Alとなっている。一方、図1(b)では、付着仕事が高い方から順にTi、Mg,Ca、Alとなっており、上記した図1(a)の傾向と一致する。すなわち、図1(a)、(b)より、溶接金属の強度を制御するとともに、Ti、Mg、Ca、Alを調整することで溶接金属の靭性を向上できることがわかる。
そこで、酸化物を形成するTi、Mg、Ca、Alの含有量(界面の剥離の発生の観点)と、溶接金属の強度に影響を与えるC、Mn、Cu、Ni、Cr、Moの含有量(発生した剥離の進展の観点)のバランスを制御すれば、優れた靭性を発揮できることが判明した。これら元素のバランスを数多くの実験から検討した結果、下記(1)式で表されるXD値が0.85<XD<1.25を満たす場合に、溶接金属の靭性が向上することを見出した。
・・・(1)
D値が0.85以下であると、酸化物界面の接着力が低い酸化物の影響が支配的となって剥離が発生しやすくなるか、または母材の強度が高くなりすぎることによって剥離先端の応力集中が高くなり剥離が進展しやすくなるため、靭性が低下する。一方、XD値が1.25以上となると、酸化物の個数密度が大きくなることによって酸化物界面の応力集中が大きくなり剥離が発生しやすくなるか、または剥離先端の強度そのものが低下するため剥離が進展しやすくなる。そこで、XD値は0.85<XD<1.25であり、好ましくは0.90≦XD≦1.20である。
剥離の発生を抑制する観点から、上記(1)式の分子(すなわち、16×[Ti]+800×[Ca]+200×[Mg]+[Al])の値は、0.45超1.0未満が好ましく、より好ましくは0.50以上0.9以下である。また、剥離の進展を抑制する観点から、上記(1)式の分母(すなわち、[C]+[Mn]/6+([Cu]+[Ni])/15+([Cr]+[Mo])/5)の値は、0.4超0.75未満が好ましく、より好ましくは0.45以上0.73以下である。なお、各元素の含有量に乗じる係数は、各元素が靭性に及ぼす影響および各元素の含有量を勘案して、数多くの基礎実験から定められたものである。
次に、本発明に係る溶接金属の各種成分組成について以下に説明する。
C:0.02〜0.12%
Cは、溶接金属の強度を確保するために欠くことができない元素である。一方、C量が過剰になると、硬質組織が増加するため靭性が劣化する。そこでC量は0.02〜0.12%であり、好ましくは0.03〜0.10%、より好ましくは0.04〜0.08%である。
Si:0.3〜1.0%
Siは、脱酸元素であり、溶接金属を清浄にする作用を有する。また溶接金属中に歩留まった場合は、固溶強化により溶接金属を強化する作用を有する。一方、Si量が過剰になると溶接金属の強度が上昇しすぎたり、硬質組織が生成したりすることにより靭性が低下する。また、延性を損なったり、粒界酸化層を過剰に生成したりする。そこでSi量は0.3〜1.0%であり、好ましくは0.35〜0.9%、より好ましくは0.4〜0.8%である。
Mn:1.0〜2.0%
Mnは、脱酸元素であり、溶接金属を清浄にする作用を有する。また溶接金属中に歩留まった場合には、溶接金属の組織を微細化することによって溶接金属の強度および靭性を確保することができる。一方、Mn量が過剰になると焼入性が増大しすぎたり、偏析することによって硬質組織が生成したりすることによって、溶接金属の靭性が劣化する。そこで、Mn量は1.0〜2.0%であり、好ましくは1.2〜1.9%、より好ましくは1.3〜1.8%である。
Ti:0.01〜0.30%
Tiは、脱酸作用を有する元素であり、溶接金属を清浄にするとともに、アシキュラーフェライトと呼ばれる微細組織の生成核としても機能するため、組織の微細化に寄与する。また、界面の接着力に優れた酸化物系介在物を形成し、靭性の向上に寄与する。一方、Ti量が過剰になると、TiCの析出強化により靭性が低下する。そこでTi量は0.01〜0.30%であり、好ましくは0.02〜0.25%、より好ましくは0.03〜0.2%である。
Cu:0.2〜2.5%
Ni:0.5〜3.5%
Cu、Niはいずれも強度および靭性を確保するのに有効な元素である。一方、これらの元素が過剰になると焼入性が増大することによって、靭性が低下する。Cu、Niはそれぞれ単独で添加しても良いし、または併用しても良い。Cu量は0.2〜2.5%、好ましくは0.3〜2.3%、より好ましくは0.7〜2.1%である。Ni量は0.5〜3.5%であり、好ましくは0.8〜3.0%、より好ましくは1.0〜2.5%である。
Cr:1.0%以下(0%を含まない)
Mo:0.5〜1.5%
Cr、Moはいずれも強度を確保するのに有効な元素である。一方、これらの元素が過剰になると焼入性が増大することによって、靭性が低下する。Cr、Moはそれぞれ単独で添加しても良いし、または併用しても良い。Cr量は1.0%以下(0%を含まない)であり、好ましくは0.005〜0.8%、より好ましくは0.007〜0.6%である。Mo量は0.5〜1.5%であり、好ましくは0.6〜1.3%、より好ましくは0.6〜1.0%である。
Mg:0.0001〜0.02%
Ca:0.005%以下(0%を含まない)
Al:0.05%以下(0%を含まない)
Mg、Ca、Alはいずれも強脱酸元素であり、溶接金属を清浄にする作用を有する。また界面の接着力に優れた酸化物系介在物を形成し、靭性の向上に寄与する。一方、Mg、Alが過剰になると粗大な介在物が増加することによって靭性が低下し、またCaが過剰になるとスパッタが増加し作業性が著しく低下する。Mg、Ca、Alはそれぞれ単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても良い。Mg量は0.0001〜0.02%であり、好ましくは0.0002〜0.01%、より好ましくは0.0002〜0.005%である。Ca量は0.005%以下(0%を含まない)であり、好ましくは0.0001〜0.003%、より好ましくは0.0002〜0.001%である。Al量は0.05%以下(0%を含まない)であり、好ましくは0.001〜0.045%、より好ましくは0.002〜0.04%である。
本発明に係る溶接金属の基本成分は上記の通りであり、残部は実質的に鉄である。但し、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる不可避不純物が溶接金属中に含まれることは当然に許容される。さらに本発明に係る溶接金属は必要に応じて以下の任意の元素を含有していても良い。
Nb:0.01%以下(0%を含まない)
V:0.01%以下(0%を含まない)
NbおよびVは組織を微細化することにより、溶接金属の強度を向上させる作用を有するが、NbやVの炭化物が析出すると延性を劣化させ、靭性の向上も妨げるので含有する場合であってもできるだけ制限することが好ましい。Nb、Vはそれぞれ単独で添加しても良いし、または併用しても良い。Nb量は0.01%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.007%(特に0.002〜0.005%)である。V量は0.01%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.008%(特に0.002〜0.006%)である。
上記した本発明の溶接金属を得るにあたり、ソリッドワイヤは以下の成分組成を満たすことが好ましい。すなわち、C:0.02〜0.12%、Si:0.3〜1.0%、Mn:1.2〜2.0%、Ti:0.05〜0.30%、Cu:0.2〜2.5%および/またはNi:0.5〜3.5%を含有する他、Cr:1.0%以下(0%を含まない)および/またはMo:0.5〜1.5%を含有し、更に、Mg:0.0005〜0.02%、Ca:0.005%以下(0%を含まない)、およびAl:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するとともに、下記(2)式で表されるXW値が、0.80<XW<1.25を満たすことが好ましい。
・・・(2)
さらに上記元素のより好ましい範囲はそれぞれ、C:0.03〜0.10%(さらに好ましくは0.04〜0.08%)、Si:0.35〜0.9%(さらに好ましくは0.4〜0.8%)、Mn:1.5〜1.9%(さらに好ましくは1.6〜1.8%)、Ti:0.06〜0.25%(さらに好ましくは0.08〜0.2%)、Cu:0.3〜2.3%(さらに好ましくは0.7〜2.1%)、Ni:0.8〜3.0%(さらに好ましくは1.0〜2.5%)、Cr:0.005〜0.8%(さらに好ましくは0.006〜0.6%)、Mo:0.6〜1.4%(さらに好ましくは0.7〜1.2%)、Mg:0.001〜0.02%、Ca:0.0001〜0.004%、Al:0.001〜0.045%である。
なお、(2)式において、Ti、Ca、Mg、Mnの各元素の含有量に乗ずる係数が、上記(1)式におけるそれら係数と異なっている理由は以下の通りである。すなわち、Ti、Ca、Mg、Mnは溶接施工時にスパッタに含まれて多くが外部へ放出される。つまりこれらの含有量は溶接金属中よりもワイヤ中の方が多いのであり、分子で規定されるTi、Ca、Mgの含有量に乗ずる係数は(1)式の方が小さな値となり、分母で規定されるMnの含有量に乗ずる係数は(1)式の方が大きな値となるのである。
また、本発明の溶接金属を得るための溶接条件は特に限定されないが、上述したように大入熱量・高パス間温度であっても、強度と靭性に優れた溶接金属が得られる。溶接条件は例えば、電流:200〜350A、電圧:25〜40V、入熱量:15〜45kJ/cm、パス間温度:200〜300℃、シールドガス:Ar−CO2混合ガス(Ar:0〜20%、CO2:100〜80%)である。さらに母材鋼板は、780MPa以上の鋼板を用いれば良く、建築構造用高性能鋼材(例えば、大臣認定取得のKBSA630B、KBSA630C)などを用いれば良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1に示す成分組成の溶接ワイヤを用意し(ワイヤ径:1.2mm)、図2に示した開先形状の鋼板を、以下に示す条件で溶接した。
溶接条件
電流 :260A
電圧 :33V
溶接速度 :19cm/min
入熱量 :27kJ/cm
予熱温度およびパス間温度 :250℃
層数/パス数 :5層/10パス
シールドガス :100%CO2
母材鋼板 :JIS SS540に準ずる鋼板
(1)溶接金属の引張試験
図3(a)に示す位置からJIS Z3111に準拠して引張試験片(A1号)を採取し、溶接金属の引張試験を行った。溶接金属の引張強度は780MPa以上を合格とした。
(2)溶接金属のシャルピー衝撃試験
JIS Z3111に準拠して、図3(b)に示す位置からシャルピー衝撃試験片を採取し、0℃におけるシャルピー吸収エネルギー(vE0)を求めた。vE0が70J以上のものを合格とした。
得られた溶接金属の組成と、引張試験およびシャルピー衝撃試験の結果を表2に示す。
実験No.1〜4は、化学成分組成およびXD値が本発明範囲に調整されているため、高強度および高靭性を達成している。
一方、実験No.5は、剥離の発生を抑制する作用を有するTi量が少なかったためXD値が小さくなり靭性が低下した。また、実験No.6〜9は、剥離の進展挙動に影響するC、Cu、Ni、Moのいずれかの含有量が多かったため、XD値が小さくなり靭性が低下した。

Claims (2)

  1. 溶接金属全質量に対する割合で、
    C:0.02〜0.12%(質量%の意味。以下、同じ。)、
    Si:0.3〜1.0%、
    Mn:1.0〜2.0%、
    Ti:0.01〜0.30%、
    Cu:0.2〜2.5%および/またはNi:0.5〜3.5%を含有する他、
    Cr:1.0%以下(0%を含まない)および/またはMo:0.5〜1.5%を含有し、更に、
    Mg:0.0001〜0.02%、Ca:0.005%以下(0%を含まない)、およびAl:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するとともに、
    下記(1)式で表されるXD値が0.85<XD<1.25を満たすことを特徴とする溶接金属。
    ・・・(1)
    (但し、[(元素名)]は各元素の含有量(質量%)を意味する。)
  2. 更に、
    Nb:0.01%以下(0%を含まない)および/またはV:0.01%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載の溶接金属。
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