JP5551990B2 - Ctod特性に優れた高強度溶接金属 - Google Patents
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Description
0.45≦[C]+[Mn]/6+([Cu]+[Ni])/15+([Cr]+[Mo])/5≦0.75 ・・・(1)
(但し、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。)
(接触角)と付着仕事の関係をグラフ化したものである。なお、前記γLVは液相−気相の界面張力を示すものであり、「B.J.Keene, Reviews of data
for the surface tension of pure metals,
International Materials Reviews, vol.38,
No.4(1993), pp.157−192」に示される値を用いた。また、各種
元素の酸化物とマトリックスとの間の接触角θは、「サムソノフ監修、最新酸化物便覧、物理化学性質、日ソ通信社(1978)」に示される値を用いた。図1によれば、Ti、Mg、CaおよびAlの元素の中で、Al酸化物の付着仕事が最も小さいことが分かる。
Cは、溶接金属の強度を確保するためには欠くことのできない元素である。そこでC量を0.02%以上と定めた。C量は、好ましくは0.03%以上である。一方、C量が過剰になると硬質組織が生成することによって靭性が劣化する。そこでC量は0.12%以下と定めた。C量は、好ましくは0.10%以下である。
Siは、脱酸元素であり、溶接金属を清浄にする作用を有し、また溶接金属中に歩留まった場合は、固溶強化により溶接金属を強化する作用を有する。そこでSi量は0.1%以上と定めた。Si量は、好ましくは0.2%以上であり、より好ましくは0.3%以上である。一方、Si量が過剰になると、酸化物中にSiが含まれるようになり、Al含有酸化物のヤング率が低下して、該酸化物と溶接金属の界面が剥離しにくくなる。その結果、ボイドが発生しにくくなり、CTOD特性が低下する。また、溶接金属の強度が上昇しすぎたり、硬質組織が生成したりすることによって靭性が低下しやすくなる。そこでSi量は0.70%以下と定めた。Si量は、好ましくは0.6%以下であり、より好ましくは0.55%以下である。
Mnは、組織を微細化することによって溶接金属の強度および靭性を確保する作用を有する。そこでMn量は1.0%以上と定めた。Mn量は、好ましくは1.2%以上であり、より好ましくは1.3%以上である。一方、Mn量が過剰になると、焼入れ性が増大しすぎることによって靭性が劣化する。そこでMn量は2.0%以下と定めた。Mn量は、好ましくは1.9%以下であり、より好ましくは1.8%以下である。
CuおよびNiは、いずれも強度および靭性を確保するのに有効な元素である。そこでCu量は0.1%以上、Ni量は0.5%以上と定めた。Cu量は、好ましくは0.3%以上であり、より好ましくは0.5%以上である。Ni量は、好ましくは1.0%以上であり、より好ましくは1.3%以上である。一方、CuおよびNiはいずれも、過剰になると焼入れ性が増大しすぎることによって靭性が劣化する。そこで、Cu量は2.5%以下、Ni量は3.5%以下と定めた。Cu量は、好ましくは2.2%以下であり、より好ましくは2.0%以下である。Ni量は、好ましくは2.5%以下であり、より好ましくは2.2%以下である。CuおよびNiは、それぞれ単独で含有されていても良いし、両方同時に含有されていても良い。
CrおよびMoは、いずれも強度を確保するのに有効な元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Cr量は0.15%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2%以上である。Mo量は0.5%以上であり、好ましくは0.6%以上である。一方、CrおよびMoは、いずれも過剰になると焼入れ性が増大しすぎることによって靭性が劣化する。そこで、Cr量は1.0%以下とし、Mo量は1.5%以下とする。Cr量は、好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.6%以下である。Mo量は、好ましくは1.3%以下であり、より好ましくは1.0%以下である。CrおよびMoは、それぞれ単独で含有されていても良いし、両方同時に含有されていても良い。
Caは、強脱酸元素であり、脱酸作用により溶接金属を清浄にする作用を有する。このような作用を有効に発揮させるためには0.002%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.003%以上である。また、Caは溶接金属との界面の付着仕事が小さい酸化物を形成させるが、Ca量が過剰になってCa系酸化物が多くなると、上記したAl含有酸化物を確保することができない。そこで、Ca量は0.005%以下と定めた。Ca量は、より好ましくは0.004%以下である。
Tiは、脱酸作用により溶接金属を清浄にする作用を有する。このような作用を有効に発揮させるためには、Ti量は0.0005%以上が好ましく、より好ましくは0.0010%以上である。一方、Tiの酸化物はマトリックスとの付着仕事が大きく、界面で剥離しにくいため、上記したような亀裂先端の歪みを低減させる効果が少なく、Ti量が多くなると所望のAl含有酸化物を確保することができない。従って、Ti量は0.0050%以下と定めた。Ti量は、好ましくは0.0040%以下であり、より好ましくは0.0030%以下である。
Alは、強脱酸元素であり脱酸作用により溶接金属を清浄にする作用を有する。また、上述した通り、界面剥離しやすい優れた酸化物系介在物を生成するため、CTOD試験時にボイドが発生しやすく、亀裂先端の歪みを該ボイドに分散させることができ、CTOD特性を向上させることができる。そこでAl量は0.005%以上と定めた。Al量は、好ましくは0.010%以上であり、より好ましくは0.020%以上である。一方、Al量が過剰になると、Al含有酸化物の面積率が増加しすぎて却ってCTOD特性が劣化する。そこでAl量は0.050%以下と定めた。Al量は、好ましくは0.040%以下であり、より好ましくは0.030%以下である。
Oは、Al含有酸化物を適量形成させるために必要な元素である。そこでO量は0.010%以上と定めた。O量は、好ましくは0.015%以上であり、より好ましくは0.020%以上である。一方、O量が過剰になると酸化物の量が過剰となってCTOD特性が劣化する。そこで、O量は0.050%以下と定めた。O量は、好ましくは0.045%以下であり、より好ましくは0.040%以下である。
上記(1)式は、各元素の含有量と強度の関係から、実験的に算出された式である。上記(1)式に含有される各元素は、溶接金属の強度に影響する元素であり、[C]+[Mn]/6+([Cu]+[Ni])/15+([Cr]+[Mo])/5の値(以下、X値と呼ぶ。)を0.45以上とすることによって溶接金属の強度を向上(780MPa以上)させることができる。X値は、好ましくは0.50以上であり、より好ましくは0.52以上である。一方、X値が0.75を超えると溶接金属の強度が高くなりすぎることによって靭性が劣化する。X値は、好ましくは0.70以下であり、より好ましくは0.68以下である。なお、上記(1)式を計算するに際して、含有されない元素がある場合は、その含有量を0として計算すれば良い。
0.45≦[C]+[Mn]/6+([Cu]+[Ni])/15+([Cr]+[Mo])/5≦0.75 ・・・(2)
なお、酸素量について、溶接金属中の酸素量は、サブマージアーク溶接する際のフラックスや大気中からの酸素の影響を大きく受ける。ワイヤ中の酸素量は通常の不可避不純物レベルであれば特に問題ない。
r:0.49%、Mo:0.45%、V:0.040%、B:0.0007%を含有し、残部が鉄および不可避不純物である鋼板を用いた。
電流 :500〜550A
電圧 :26〜32V
速度 :30cm/min
入熱量 :26〜36kJ/cm
予熱温度およびパス間温度:140〜160℃
パス数 :15
図3(a)に示す位置から、JIS Z2201号のA1号試験片を採取し、JIS Z2241に従って溶接金属の引張試験を行った。また、図3(b)に示す位置から、JIS Z2242に準じてシャルピー衝撃試験片を採取し、−60℃でのシャルピー吸収エネルギー(vE-60)を測定した。さらに図3(b)に示す位置からWES1108号(日本溶接協会規格)に準拠してCTOD試験片を採取し、−40℃でCTOD値を測定した。本発明では、引張強度(TS)、シャルピー吸収エネルギー(vE-60)、およびCTOD値について、それぞれ780MPa以上、47J以上、0.30mm以上を合格とした。
上記引張試験片の採取位置と同一部位の、100μm×100μmの領域を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて倍率1000倍で観察し、得られたSEM写真を画像解析してAl含有酸化物の面積率を測定した。この際、Al含有酸化物であるか否かは、前記領域にて観察された介在物を、EPMAで分析し、アルミと酸素のピークを有する(すなわちアルミと酸素を含有する)ことが確認されたものをAl含有酸化物と判断した。なお、SEM観察にあたって、長径が0.1μm未満のサイズの介在物はEPMAでの分析が困難であるため測定対象から除外した。
Claims (1)
- サブマージアーク溶接によって得られる溶接金属であって、
C :0.02〜0.12%(質量%の意味。以下、化学組成について同じ。)、
Si:0.1〜0.70%、
Mn:1.0〜2.0%、
Cu:0.1〜2.5%および/またはNi:0.5〜3.5%、
Cr:1.0%以下(0%を含まない)および/またはMo:0.5〜1.5%、
Ca:0.005%以下(0%を含む)、
Ti:0.0050%以下(0%を含む)、
Al:0.005〜0.050%、
O :0.010〜0.050%を含有するとともに、下記(1)式を満足し、残部が鉄および不可避不純物であり、
Al含有酸化物の面積率が0.5%以上、2.0%以下であることを特徴とする高強度溶接金属。
0.45≦[C]+[Mn]/6+([Cu]+[Ni])/15+([Cr]+[Mo])/5≦0.75 ・・・(1)
(但し、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。)
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