以下、図面に基づき本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の冷凍サイクル装置1を採用した実施例の業務用冷凍庫Rの斜視図、図2は図1の業務用冷凍庫Rの概略縦断側面図、図3は蒸発器の拡大斜視図、図4は冷却ユニットの概略斜視図をそれぞれ示している。
本実施例における冷凍庫Rは、前面に開口する本体としての断熱箱体2により構成されており、この内部には、被冷却空間としての貯蔵室3が構成されている。この貯蔵室3内上部には、本発明の冷凍サイクル装置1を構成する蒸発器5及び蒸発器5の近傍に冷気循環用送風機6が取り付けられている。
図3に示すように、一端が詳細は後述する膨張弁4の出口側に接続され、他端が蒸発器5の入口側に接続された冷媒配管5Aには、蒸発器5の入口側温度Tinを検出する入口側温度センサ8が設けられている。そしてこの蒸発器5の出口側に接続された冷媒配管5Bには、係る蒸発器5の出口側温度Toutを検出する出口側温度センサ9が設けられている。
蒸発器5及び送風機6の下方に取り付けられる7は、蒸発器5が取り付けられる冷却室11と貯蔵室3内との区画を兼ねたドレンパンであり、このドレンパン7には、送風機6に対応して図示しない冷気吸込口が形成され、後方は開放されている。これにより、送風機6より貯蔵室3から冷却室11に吸い込まれた冷気は、蒸発器5と熱交換された後、冷却室11後方から吐出される。また、ドレンパン7の冷気吸込口の近傍には、被冷却空間としての貯蔵室3内の温度を検出するための庫内温度センサ10が設けられている。
一方、断熱箱体2の天面には四方を囲繞するパネル12又はアングル(図1では前面パネルを取り外した状態を示している)によって機械室13が画成されており、この機械室13内には、冷凍サイクル装置1を構成する圧縮機15や放熱器16などが断熱仕切板14上に設置され、当該断熱仕切板14の下方に位置する冷却室11内に設けられる蒸発器5と共に冷凍サイクル装置1の冷媒回路を構成している。尚、蒸発器5と機械室13内の機器とを接続する冷媒配管5A、5Bは、断熱仕切板14に形成される結合穴14Aを介して配設される。また、当該機械室13内には、放熱器用送風機17及び内部に制御装置(制御手段)20を備えた電装箱18が設けられている。
ここで、本発明の冷凍サイクル装置1の詳細について図5の冷媒回路図を参照して説明する。本発明の一実施例として採用される本実施例の冷凍サイクル装置1は、冷媒として二酸化炭素を使用し、高圧側の冷媒圧力(高圧圧力)がその臨界圧力以上(超臨界)となるスプリットサイクル(二段圧縮一段膨張中間冷却サイクル)の冷凍サイクル装置である。
本実施例の冷凍サイクル装置1は、圧縮手段を構成する低段側の圧縮要素(低段側圧縮手段)15Aと、同じく圧縮手段を構成する高段側の圧縮要素(高段側圧縮手段)15Bと、放熱器16と、分流器23と、合流器24と、副減圧装置としての補助膨張弁25と、中間熱交換器27と、内部熱交換器28と、膨張弁4と、蒸発器5とから冷凍サイクルが構成されている。
上記放熱器16は空気、又は、水、又は、その他の第2の熱媒体に高段側の圧縮要素15Bから出た高温高圧の冷媒を放熱させることによって、当該高段側の圧縮要素15Bから出た冷媒を冷却するための熱交換器である。本実施例の放熱器16は、空気に放熱するガスクーラ熱交換器を用いるものとする。また、分流器23は放熱器16から出た冷媒を二つの流れに分岐させる分流装置である。即ち、本実施例の分流器23は、放熱器16から出た冷媒を第1の冷媒流と第2の冷媒流とに分流し、第1の冷媒流を副回路31に流し、第2の冷媒流を主回路30に流すように構成されている。
図5における主回路30は、分流器23にて分流された冷媒が、中間熱交換器27の内管27B、内部熱交換器28の内管28B、ストレーナ32、膨張弁4、蒸発器5、逆流防止弁33、内部熱交換器28の外管28A及びストレーナ34を順次通り、低段側圧縮手段を構成する圧縮要素15Aの吸込側へ供給されるように接続されている。副回路31は、分流器23にて分流された冷媒が、ストレーナ35、補助膨張弁25及び中間熱交換器27の外管27Aを順次通り、高段側圧縮手段を構成する圧縮要素15Bの吸込側へ供給されるように接続されている。
本実施例において圧縮装置を構成する圧縮機15は、冷媒を低段側圧縮手段としての圧縮要素15Aと、高段側圧縮手段としての圧縮要素15Bが単一の密閉容器40内に収納される内部中間圧二段圧縮式ロータリ圧縮機を採用している。図6の圧縮機15の概略構成図に示すように、密閉容器40内に低段側圧縮要素15Aと、高段側圧縮要素15Bと、これらの電動要素41が収納される。
低段側圧縮要素15Aの吸込側には、ストレーナ34を出た冷媒が導入される冷媒導入管42が接続され、当該低段側圧縮要素15Aに取り込まれた冷媒は、ここで中間圧まで昇圧される。この低段側圧縮要素15Aにて圧縮された冷媒は、連通管43より密閉容器40内に吐出される。密閉容器40には、合流器24介して副回路31からの冷媒を密閉容器40内に流入させるための冷媒配管44が接続されている。
高段側圧縮要素15Bの吸込側には、一端が密閉容器40内にて開放した冷媒導入管45が設けられており、低段圧縮要素15Aにて中間圧まで昇圧された冷媒と、副回路31空の中間圧冷媒とが混合された冷媒が、当該冷媒導入管45より高段側圧縮要素15B内に流入され、ここで更に所定の高圧まで昇圧される。このとき、この高段側圧縮要素15Bにて圧縮された冷媒は、超臨界状態とされ、冷媒吐出管46を介して、放熱器16に流入される。
尚、本実施例では、前記圧縮装置を構成する各圧縮要素15A、15Bは単一のモータで一体に結合された構成としているが、これに限定されるものではなく、それぞれモータを備えた2つの圧縮機から構成しても良い。或いは、中間吸込ポートを設けた1つの圧縮要素を備える構成としてもかまわない。1つの圧縮要素の場合、圧縮機を吸込ポートと吐出ポートの間に中間吸込ポートを持ち、中間熱交換器27から流れ出た冷媒は、当該中間吸込ポートより圧縮要素内に吸入される。
放熱器16を出た冷媒は通過する過程で冷却された後、分流器23に入り、第1の冷媒流が流れる副回路31と、第2の冷媒流が流れる主回路30とに分流される。分流器23で分流された一方の冷媒流(第1の冷媒流)は、副回路31に入り、補助膨張弁25で中間圧(即ち、低段側圧縮要素15Aの吐出圧力であり、高段側圧縮要素15Bの吸込圧力と略同圧)まで減圧される。そして、中間熱交換器27の外管27A内を通過し、当該外管27A内を通過する過程で、内管27Bを通過する分流器23で分流された後の他方の冷媒流である第2の冷媒流と熱交換して蒸発する。その後、合流器24にて、低段側の圧縮要素15Aで圧縮された後の第2の冷媒流と合流して、高段側圧縮要素15Bに吸い込まれる。
一方、分流器23で分流された他方の冷媒流(第2の冷媒流)は、主回路30に入り、中間熱交換器27の内管27B内を通過する過程で、補助膨張弁25によって減圧された第1の冷媒流と熱交換することで、冷却された後、内部熱交換器28の内管28B内を通過する。当該内管28B内を通過する過程で、外管28A内を流れる蒸発器5から流出された冷媒と熱交換することで冷却される。
そして、内部熱交換器28から流出された第1の冷媒流は、詳細は後述する如く開度制御が行われる膨張弁4にて蒸発圧力まで減圧された後、蒸発器5内に流入し被冷却空間を熱源として蒸発し、内部熱交換器28の外管28Aを経て低段側の圧縮要素15に帰還する。尚、内部熱交換器28は、膨張弁4に流入する冷媒を、蒸発器5から流出した低温冷媒と熱交換させることによって、冷却性能の向上を図るものである。
このように、本実施例の冷凍装置は、冷媒として自然冷媒であり、臨界圧力が低く、冷媒サイクルの高圧が超臨界状態となる二酸化炭素を使用するものである。係る超臨界冷媒サイクルにおいて、従来の単段の冷凍装置を使用すると放熱器の熱源温度(例えば外気温度)が高いなどの原因により、放熱器16の出口の冷媒温度が高くなる条件下では、蒸発器5の入口冷媒の比エンタルピが大きくなり、冷凍効果が著しく低下する問題が生じていた。それにより、冷凍能力が低下するため、当該冷凍能力を確保するために高圧圧力を上昇させる必要があり、圧縮動力が増大して、成績係数(COP)も悪化する不都合が生じていた。
このように、放熱器16で冷却された後の冷媒を分流し、減圧膨張させた一方の副回路31を流れる第1の冷媒流により、分流された他方の主回路30を流れる第2の冷媒流を冷却する、所謂、スプリットサイクル冷却装置を用いることで、蒸発器5の入口の比エンタルピを小さくし、冷凍効果を大きくすることが可能となった。また、この場合、分流された副回路31の第1の冷媒流を圧縮手段の中間圧部、即ち本実施例では高段側の圧縮要素15Bに吸い込ませることで、低段側の圧縮要素15Aで圧縮する冷媒の量を減少させることができ、その結果圧縮動力が低下し、成績係数が向上する。
しかしながら、主回路30に設けられた膨張弁4が蒸発器5の入口温度と出口温度から算出される過熱度を一定とするように制御を行うと、低外気温時や低負荷時において、過熱度がとれなくなり、膨張弁4の開度を閉める方向に繰り返し制御されることで、弁閉塞が生じる場合がある。当該弁閉塞によって主回路30の低圧側の圧力が急激に低下し、所定の下限値以下となる低圧異常を招来する。
しかし、この際、本実施例の如きスプリットサイクル冷却装置の場合、主回路30の他に冷媒が循環する副回路31が存在するため、主回路30の膨張弁4が閉塞した後も、副回路31を冷媒が循環し、主回路30に冷媒が流れなくなって、副回路31の中間熱交換器27の入口側温度Sp1が急激に低下し(図17中(3))、その後、当該中間熱交換器27の出口側温度Sp2が急激に低下する(図17中(4))。
そのため、主回路30に低圧センサが設けられていない場合には、中間熱交換器27の入口側温度Sp1や出口側温度Sp2が急激に低下するまで、当該低圧側の低圧異常が発生しているにもかかわらず、主回路の膨張弁が閉塞していることの判定ができないという問題が生じる。当該弁閉塞を判定するまでは、低圧側の圧力(蒸発圧力)異常を把握できずこの状態が放置される問題が生じる。
以下、本発明の冷凍装置1の制御について説明する。
図7は冷凍サイクル装置1に配設される制御装置(制御手段)20の電気ブロックを示している。制御装置20は、汎用のマイクロコンピュータにより構成されており、タイマ、PID演算処理部、プログラムやデータを格納するメモリ等を備えており、図示しない庫内設定スイッチによって設定される庫内設定温度となるような制御動作や、後述する如き膨張弁4の制御動作等を所定のプログラムに従って実行する。
この入力側には、貯蔵室(被冷却空間)3内の温度を検出する庫内温度センサ10と、蒸発器5の冷媒入口側温度を検出する入口側温度センサ8と、蒸発器5の冷媒出口側温度を検出する出口側温度センサ9と、前記機械室13内に配設される外気温度センサ50と、放熱器16の出口温度センサ51が接続されている。
そして、制御装置20の出力側には、各圧縮要素15A、15Bを駆動させる電動要素41と、蒸発器5と熱交換した冷気を貯蔵室3内に吐出して循環させるための冷気循環用送風機6、放熱器16を空冷するための放熱器用送風機17、膨張弁4、補助膨張弁25が接続されている。
本実施例において、主回路30に設けられる膨張弁4及び副回路31に設けられる補助膨張弁25は、例えば、制御装置20により発生する駆動パルスに基づき、ステッピングモータによって駆動制御される所謂電子膨張弁である。当該制御、特に膨張弁4の弁開度制御についての詳細は後述する。尚、本実施例では、副回路31の補助膨張弁25を電子膨張弁により構成しているが、これに限定されるものではなく、キャピラリチューブなど他の減圧手段を用いても良い。
以上の構成で、先ず、圧縮装置15の運転制御について説明する。本実施例において、制御装置20は、庫内温度センサ10により検出される庫内温度Trに基づいて圧縮装置15の電動要素41の周波数制御を実行する。
具体的には、電動要素41の運転周波数は、制御装置20の内部に設けられるPID演算処理部によって、庫内温度センサ10が検出する庫内温度Trと、庫内目標温度との偏差から、比例(P)、と、積分(I)と、微分(D)の演算の実行に基づくPID制御を実行する。この場合、前記PID演算処理部は、庫内温度センサ10が検出する庫内温度Trと、庫内目標温度との差(偏差)に比例して、制御量を算出する比例動作と、偏差の積分値(偏差を時間軸方向に積分した値)より制御量を算出する積分動作と、偏差の変化の傾き(微分値)より制御量を算出する微分動作を行って、これらの制御量を加算した制御量から電動要素41の運転周波数を決定する。
次に、膨張弁4の開度制御について説明する。先ず、プルダウン時における膨張弁の開度制御(第1の膨張弁制御)について図8乃至図10を参照して説明する。図8は第1の膨張弁制御のフローチャート、図9は膨張弁4の操作量の制御テーブルの一例を示す図、図10は同じく膨張弁4の操作量の制御テーブルの一例を示す図、図11は冷却運転時における庫内温度Tr及び入口側温度Tinの変化を示す図である。
制御装置20には、予め膨張弁4の最低開度が設定されている。通常、膨張弁4は、個体毎に開度のバラツキがある。そのため、本実施例では、当該バラツキがあっても問題ない最小限開度を最低開度として設定すると共に、同様にバラツキがあっても問題ない最大限開度を最大開度として設定する。
先ず、プルダウン運転時において実行させる第1の膨張弁制御では、制御装置20は、ステップS1において蒸発器入口温度Tinを検出する入口側温度センサ8が検出する温度を読み込み、予め制御装置20に設定した庫内目標温度Tcよりも所定温度低い冷却到達温度Taと比較する。ここでは、冷却到達温度Taは、庫内目標温度Tcよりも4℃低い温度(Ta=Tc−4℃)とする。尚、当該冷却到達温度Taは、一例であり、これに限定されるものではない。
蒸発器5の入口温度Tinが冷却到達温度Ta以下である場合には、ステップS2に進み、後述する安定時における第2の膨張弁制御を実行する。一方、蒸発器5の入口温度Tinが冷却到達温度Taより高い場合には、プルダウン運転であると判断して、ステップS3に進み、制御装置20は、庫内温度センサ10が検出する庫内温度(被冷却空間温度)Trと、入口側温度センサ8が検出する蒸発器5の入口側温度Tinを読み込み、これらの差が所定の温度差(第1の制御温度差Ts1)、例えば7degとなるように膨張弁4の開度の操作量を取得する。尚、当該第1の制御温度差Ts1は、これに限定されるものではなく、任意に設定可能とする。
即ち、本実施例では、現在の庫内温度Trと、蒸発器5の入口側温度Tinとの差が一定(第1の制御温度差Ts1)となるように膨張弁4の弁開度を制御する。当該制御の詳細について、図9、図10の制御テーブルを参照して以下に説明する。
ここで、一例として、制御装置20に設定されている庫内目標温度Tcが−21℃、冷却到達温度Taがこれよりも4℃低い−25℃と、第1の制御温度差Ts1を7degとする。
図10に示すように、当該庫内温度Trと入口側温度Tinとの温度差が第1の制御温度差Ts1と比較して5deg以上大きい場合、庫内温度と蒸発器5の入口側温度との温度差が、庫内温度Trを低下させるに十分以上であるため、蒸発器5への冷媒流量を増大させて、圧縮装置の冷媒吐出量に対する蒸発器5における冷却効率を確保すべく、膨張弁4を5ステップ拡張する(開ける)。
当該庫内温度Trと入口側温度Tinとの温度差が第1の制御温度差Ts1と比較して2〜5deg大きい場合、庫内温度と蒸発器5の入口側温度との温度差が、庫内温度Trを低下させるに十分以上であるため、蒸発器5への冷媒流量を増大させて、圧縮装置の冷媒吐出量に対する蒸発器5における冷却効率を確保すべく、膨張弁4を3ステップ拡張する(開ける)。
当該庫内温度Trと入口側温度Tinとの温度差が第1の制御温度差Ts1と比べて−2〜2degの範囲である場合、目標とする温度差の範囲内にあるため、圧縮装置の冷媒吐出量に対する蒸発器5における冷却効率が適切に確保されている状態と想定される。そのため、膨張弁4の開度を維持する。
当該庫内温度Trと入口側温度Tinとの温度差が第1の制御温度差Ts1と比べて−7〜−2degの範囲である場合、庫内温度と蒸発器5の入口側温度との差が、庫内温度Trを低下させるには不十分又は非効率であるため、蒸発器5の入口側温度を低下させるべく、膨張弁4を3ステップ縮小する(閉める)。
また、当該庫内温度Trと入口側温度Tinとの温度差が第1の制御温度差Ts1と比べて−7degより小さい場合、庫内温度と蒸発器5の入口側温度との差が、庫内温度Trを低下させるには不十分又は非効率であるため、蒸発器5の入口側温度を低下させるべく、膨張弁4を5ステップ縮小する(閉める)。
当該図10の制御テーブルを図9のケースに適用した場合について述べる。業務用冷凍庫Rの設置直後の運転開始時や、長期間運転していなかった場合に運転を再開した場合、若しくは、除霜運転終了後は、冷やし込み制御となるプルダウン運転となる。図9に示すように庫内温度Trよりも蒸発器5の入口側温度Tinが高い場合(特に除霜運転終了特後など)には、Tr−Tinは、負の値なり、当該値と、第1の制御温度差Ts1との差(Tr−Tin−7℃)は、−7degより小さい値となる。この場合、膨張弁4の開度操作量を閉める方向に5ステップとする。
徐々に蒸発器5の入口側温度Tinが降下していき、例えば庫内温度Trが30℃、当該入口側温度Tinが30℃となり、これらの温度差が0となった場合、Ts1との差(Tr−Tin−7℃)は、−7degとなる。この場合、庫内温度Trと蒸発器5の入口側温度Tinとの差とTs1との差が負の値であって、上記同様に大幅であることから、膨張弁4の開度操作量を縮小する(閉める)方向に5ステップとする。
更に、蒸発器5の入口側温度Tinが降下していき、例えば庫内温度Trが30℃、当該入口側温度Tinが23℃となり、これらの温度差が7℃となった場合、第1の制御温度差Ts1との差(Tr−Tin−7℃)は、0となる。この場合、庫内温度Trと蒸発器5の入口側温度Tinとの差が、目標とする第1の制御温度差Ts1に制御されており、膨張弁4の開度操作量を0とする。
更に、蒸発器5の入口側温度Tinが降下していき、例えば庫内温度Trが20℃、当該入口側温度Tinが15℃となり、これらの温度差が5℃となった場合、第1の制御温度差Ts1との差(Tr−Tin−7℃)は、−2degとなる。この場合、庫内温度Trと蒸発器5の入口側温度Tinとの差は、第1の制御温度差Ts1付近に制御されており、膨張弁4の開度操作量を0とする。
そして、更に、蒸発器5の入口側温度Tinが降下していき、例えば庫内温度Trが3℃、当該入口側温度Tinが−5℃となり、これらの温度差が8℃となった場合、第1の制御温度差Ts1との差(Tr−Tin−7℃)は、1degとなる。この場合、徐々に庫内温度Trと蒸発器5の入口側温度Tinとの差は広がっているものの、制御の指標となるTs1付近に制御されており、膨張弁4の開度操作量を0とする。
例えば庫内温度Trが−5℃、当該入口側温度Tinが−15℃となり、これらの温度差が10℃となった場合、第1の制御温度差Ts1との差(Tr−Tin−7℃)は、3degとなる。この場合、庫内温度Trに対して、蒸発器5の入口側温度Tinが低すぎるため、膨張弁4の開度操作量を拡張する(開ける)方向に3ステップとする。
また、庫内温度Trが10℃、当該入口側温度Tinが−10℃となり、これらの温度差が20℃となった場合、第1の制御温度差Ts1との差(Tr−Tin−7℃)は、13degとなる。この場合、庫内温度Trに対して、蒸発器5の入口側温度Tinが低すぎるため、膨張弁4の開度操作量を拡張する(開ける)方向に5ステップとする。
例えば庫内温度Trが−15℃、当該入口側温度Tinが−19℃となり、これらの温度差が4℃となった場合、第1の制御温度差Ts1との差(Tr−Tin−7℃)は、−3degとなる。この場合、庫内温度Trに対して、蒸発器5の入口側温度Tinが高いと判断でき、膨張弁4の開度操作量を縮小する(閉める)方向に3ステップとする。
ステップS4において、上記ステップS3において取得された膨張弁4の開度操作量と現在の膨張弁4の開度の和から得られる指示開度が制御装置20に予め設定されている最大開度より低く最低開度より高い場合には、ステップS5に進み、取得された膨張弁4の開度操作量と現在の膨張弁4の開度の和から得られる開度を指示開度として膨張弁4の開度を拡張又は縮小制御する。尚、当該指示開度が最大開度又は最低開度である場合には、ステップS6に進み、当該最大開度又は最低開度を指示開度として膨張弁4の開度を制御する。その後、制御装置20は、ステップS1に戻り、所定時間毎に蒸発器5の入口側温度Tin及び庫内温度Trのサンプリングを実行し、そのたび毎に膨張弁4の開度操作量を取得し、開度制御が行われることとなる。
このように、庫内温度Trに対して、蒸発器5の入口側温度Tinが低すぎる場合、即ち、庫内温度Trと入口側温度Tinとの温度差が目標とする第1の制御温度差Ts1よりも大きい場合、庫内温度と蒸発器5の入口側温度との温度差が、庫内温度Trを低下させるに十分以上であるため、膨張弁4の開度を拡張させることで、蒸発器5への冷媒流量を増加させて蒸発器5全体としての冷却能力の確保を図ることができる。そのため、蒸発器5の入口温度が指標となる低圧側圧力(蒸発圧力)を徐々に低下させていくことができる。
また、庫内温度Trに対して、蒸発器5の入口側温度Tinが高すぎる場合、即ち、庫内温度Trと入口側温度Tinとの温度差が目標温度差よりも小さい場合、庫内温度と蒸発器5の入口側温度との温度差が、庫内温度Trを低下させるには不十分又は非効率であるため、膨張弁4の開度を縮小させることで、蒸発器5の入口側温度を低下させ、効率よく庫内温度を低下させることができる。
そのため、例えば、低外気温時や、低負荷時など、不具合が生じた場合、低圧圧力が急激に低下する傾向があるが、本発明によれば、プルダウン運転時において、図11に示すように、庫内温度Trと蒸発器5の入口側温度Tinとの差を一定となるように膨張弁4の開度を制御することで、庫内温度Trに応じて、蒸発器5の入口側温度Tinを徐々に降下させていくことができる。そのため、膨張弁4を閉めすぎてしまう閉塞状態を招来することなく、蒸発圧力を徐々に低下させて行くことが可能となる。従って、被冷却空間の温度Trに基づいて回転数制御が行われる圧縮装置15からの吐出量に対する蒸発器5における冷却効率の低下を防止でき、効率的、かつ、安定した被冷却空間の冷やし込みを実行することができる。
特に、本実施例では、蒸発器5の出口側配管5Bは内部熱交換器28と接続されているため、過熱度を監視しなくとも低圧側圧縮要素15Aに冷媒液が戻る不都合が生じない。
そして、上記ステップS1において蒸発器5の入口側温度Tinが冷却到達温度Taに到達した際には、以下に示す如き、通常の冷却運転時における第2の膨張弁制御を実行する。
以下、通常の冷却運転状態、即ち安定時における第2の膨張弁制御について図12乃至図14を参照して説明する。図12は第2の膨張弁制御のフローチャート、図13は膨張弁4の操作量の制御テーブルの一例を示す図、図14は同じく膨張弁4の操作量の制御テーブルの一例を示す図である。
先ず、制御装置20は、ステップS10において蒸発器入口温度Tinを検出する入口側温度センサ8が検出する温度を読み込み、予め制御装置20に設定した庫内目標温度Tcと比較する。蒸発器5の入口温度Tinが庫内目標温度Tcより高い場合には、ステップS11に進み、前述した如きプルダウン時における第1の膨張弁制御を実行する。一方、蒸発器5の入口温度Tinが庫内目標温度Tc以下の場合には、ステップS12に進み、蒸発器出口温度Toutを検出する出口側温度センサ9が検出する温度を読み込み、今回の検出した出口側温度Toutが前回のサンプリングにおいて検出された出口側温度センサ9が検出した温度より所定温度以上、例えば1deg以上高いか否かを判断する。尚、制御装置20は、所定時間毎に蒸発器5の出口側温度Toutのサンプリングを実行しており、当該制御装置20のメモリ(記憶手段)には、検出の度に新たな前回出口側温度Toutが書き換えられるものとする。
ステップS12において、今回検出された出口側温度Toutが前回の出口側温度より低い場合には、ステップS13に進む。ステップS13では、制御装置20は、蒸発器5の入口側温度Tinが一定となるように膨張弁4の弁開度の操作量を取得し、ステップS14において、現在の膨張弁4の弁開度に当該取得した操作量を加えて得た弁開度を指示弁開度として膨張弁4の開度制御を実行する。
即ち、本実施例では、蒸発器5の入口側温度Tinと予め設定された庫内目標温度Tcとの差が所定の温度差(第2の制御温度差Ts2)となるように蒸発器入口目標温度Ticを設定する。本実施例では、一例として、第2の制御温度差Ts2を9degとし、庫内目標温度Tcと−21℃とした場合、蒸発器入口目標温度Ticは、−30℃となる。制御装置20は、蒸発器の入口側温度Tinが蒸発器入口目標温度Tic(一定値)となるように膨張弁4の弁開度を制御する。
尚、本実施例では、プルダウン運転時の第1の膨張弁制御における第1の制御温度差Ts1を7degとし、通常冷却運転時の第2の膨張弁制御における第2の制御温度差Ts2を9degとしている。これは、プルダウン運転時では、通常の冷却運転時よりも蒸発器入口側温度の変動が大きいため、また、侵入熱が小さいためである。また、本実施例では、第2の制御温度差Ts2を9degとしているがこれに限定されない。当該制御の詳細について、図13、図14の制御テーブルを参照して以下に説明する。
図14に示すように、当該庫内目標温度Tcと入口側温度Tinとの温度差が第2の制御温度差Ts2と比較して5deg以上である場合、庫内目標温度Tcと入口側温度Tinとの温度差が開き過ぎ、即ち、入口側温度Tinが蒸発器入口目標温度Ticよりも大幅に差がある場合、庫内温度と蒸発器5の入口側温度との温度差が、庫内温度Trを低下・維持させるに十分以上であるため、蒸発器5への冷媒流量を増大させて、圧縮装置の冷媒吐出量に対する蒸発器5における冷却効率を確保すべく、膨張弁4を3ステップ拡張する(開ける)。
当該庫内目標温度Tcと入口側温度Tinとの温度差が第2の制御温度差Ts2と比較して2〜5deg大きい場合、即ち、現在の入口側温度Tinが蒸発器入口目標温度Ticと大きく差がある場合、この場合も上記よりは程度が低いが、庫内温度と蒸発器5の入口側温度との温度差が、庫内温度Trを低下・維持させるに十分以上であるため、蒸発器5への冷媒流量を増大させて、圧縮装置の冷媒吐出量に対する蒸発器5における冷却効率を確保すべく、膨張弁4を1ステップ拡張する(開ける)。
当該庫内目標温度Tcと入口側温度Tinとの温度差が第2の制御温度差Ts2と比べて−2〜2degの範囲である場合、目標とする温度差の範囲内にあるため、圧縮装置の冷媒吐出量に対する蒸発器5における冷却効率が適切に確保されている状態と想定される。そのため、膨張弁4の開度を維持する。
当該庫内目標温度Tcと入口側温度Tinとの温度差が第2の制御温度差Ts2と比べて−5〜−2degの範囲である場合、庫内温度と蒸発器5の入口側温度との温度差が、庫内温度Trを低下・維持させるには不十分又は非効率であるため、蒸発器5の入口温度を低下させるべく、膨張弁4を1ステップ縮小する(閉める)。
また、当該庫内目標温度Tcと入口側温度Tinとの温度差が第2の制御温度差Ts2と比べて−5degより小さい場合、庫内温度と蒸発器5の入口側温度との温度差が、庫内温度Trを低下・維持させるには不十分又は非効率であるため、蒸発器5の入口温度を低下させるべく、膨張弁4を2ステップ縮小する(閉める)。
当該図14の制御テーブルを図13のケースに適用した場合について述べる。図13に示すように通常の冷却運転時において、庫内目標温度Tc−21℃に対し蒸発器5の入口側温度Tinが−35℃である場合には、これらの温度差は14degとなり、当該値と、蒸発器入口目標温度(この場合−30℃)との差(即ち、第2の制御温度差Ts2との差(Tc−Tin−9℃))は、5degとなる。この場合、庫内目標温度Tcに対して入口側温度Tinが低すぎ、即ち、蒸発器入口目標温度Ticよりも低いため、蒸発器5への冷媒流量を増大させるべく、膨張弁4の開度操作量を拡張する(開ける)方向に3ステップとする。
上記において、蒸発器5の入口側温度Tinが−32℃の場合、庫内目標温度Tcとの差は11degとなり、当該値と、蒸発器入口目標温度Ticとの差は、2degとなる。この場合、入口側温度Tinが蒸発器入口目標温度Ticより低いため、蒸発器5への冷媒流量を増大させるべく、膨張弁4の開度操作量を拡張する(開ける)方向に1ステップとする。
また、蒸発器5の入口側温度Tinが−30℃の場合、庫内目標温度Tcとの差は9degとなり、当該値と、蒸発器入口目標温度Ticとの差はない。この場合、入口側温度Tinは所定の蒸発器入口目標温度Ticに適切に制御されているため、蒸発器5における冷却能力を維持させるべく、膨張弁4の開度操作量は0とする。
また、蒸発器5の入口側温度Tinが−27℃の場合、庫内目標温度Tcとの差は6degとなり、当該値と、蒸発器入口目標温度Ticとの差は−3degである。この場合、入口側温度Tinが蒸発器入口目標温度Ticより高いため、蒸発器5の入口側温度を低下させるべく、膨張弁4の開度操作量は閉める方向に1ステップとする。
そして、蒸発器5の入口側温度Tinが−25℃の場合、庫内目標温度Tcとの差は4degとなり、当該値と、蒸発器入口目標温度Ticとの差は−5degである。この場合、入口側温度Tinが蒸発器入口目標温度Ticより高いため、蒸発器5の入口側温度を低下させるべく、膨張弁4の開度操作量は閉める方向に1ステップとする。
そして、蒸発器5の入口側温度Tinが−22℃の場合、庫内目標温度Tcとの差は1degとなり、当該値と、蒸発器入口目標温度Ticとの差は−8degである。この場合、入口側温度Tinが蒸発器入口目標温度Ticより高いため、蒸発器5の入口側温度を低下させるべく、膨張弁4の開度操作量は閉める方向に2ステップとする。
他方、上記ステップS12において、今回検出された出口側温度Toutが前回の出口側温度より高い場合には、ステップS18に進む。ステップS18では、制御装置20は、図13の制御テーブルに示すように、出口側温度Toutが上昇傾向であると判断し、蒸発器5への冷媒流入量が不十分とみなし、膨張弁4の開度操作量を拡張する(開ける)方向に5ステップとする。
そして、各ステップS13及びステップS18において膨張弁4の開度操作量が決定されると、制御装置20は、ステップS14に進み、上記ステップS13又はステップS18において取得された膨張弁4の開度操作量と現在の膨張弁4の開度の和から得られる指示開度を算出し、ステップS15において、当該指示開度が制御装置20に予め設定されている最大開度より低く最低開度より高い場合には、ステップS16に進み、取得された膨張弁4の開度操作量と現在の膨張弁4の開度の和から得られる開度を指示開度として膨張弁4の開度を拡張又は縮小する。尚、当該指示開度が最大開度又は最低開度である場合には、ステップS17に進み、当該最大開度又は最低開度を指示開度として膨張弁4の開度を制御する。その後、制御装置20は、ステップS10に戻る。
このように、通常の冷却運転時では、第2の膨張弁制御を実行することにより、庫内目標温度Tcに対して蒸発器3の入口側温度Tinが一定となるような蒸発器入口目標温度Ticを設定し、低圧側圧力の指標となる入口側温度Tinに応じて膨張弁4の開度を制御するので、低圧側圧力センサを用いなくても、低圧側圧力を一定とする安定的な冷凍サイクルの運転を実現することが可能となる。
これにより、例えば、低周囲温度時や低負荷時であっても、所定の異常低圧となる以前に、低圧側圧力の指標となる入口側温度Tinに応じて膨張弁4を閉めすぎること無く開度制御することができるため、膨張弁4を殆ど閉めてしまう閉塞状態を回避することができる。
これにより、庫内温度Trに応じて回転周波数制御が行われる圧縮装置15の冷媒吐出量に対し、膨張弁4を閉めすぎにより、蒸発器5における蒸発効率が低下してしまう不都合を防止することができる。
また、当該第2の膨張弁制御では、制御装置20は、ステップS12において蒸発器5の出口側温度Toutが上昇傾向か否かを判断し、蒸発器5に流入する冷媒量が不足することによる蒸発器5の出口側温度Toutの上昇傾向を検出した場合、膨張弁4の弁開度を大きく(通常の開度制御よりも大きい開度ステップで)拡張させる。これにより、周囲の環境変化や被冷却空間の負荷の影響で膨張弁4の開度が小さくなり、蒸発器5に流入する冷媒量が不足してきたことを出口側温度Toutの上昇傾向で的確に把握して、膨張弁4の弁開度を拡張させることができ、膨張弁4の閉塞による効率の悪化を未然に回避することができる。
また、本実施例では、冷媒として二酸化炭素を使用した所謂スプリットサイクル冷却装置を採用しているため、従来では、主回路30の膨張弁4の閉塞が生じると、副回路31を冷媒が循環することで、主回路30に冷媒が流れなくなって中間熱交換器27の入口側温度や出口側温度が急激に低下するまで主回路30の膨張弁4が閉塞していることが判定できず、膨張弁4の閉塞してから当該判定までに低圧側圧力が著しく低下した低圧異常を生じることとなるが、係る発明によれば、主回路30の膨張弁4の閉塞を未然に回避できるため、低圧側圧力センサを用いることなく、低圧側圧力を一定とする安定的な冷凍サイクルの運転を実現することができる。
また、本願発明によれば、通常弁開度にバラツキが生じやすい膨張弁を採用した場合であっても、個々の最大開度や最小開度を分析して使用することなく、適切な弁開度の制御を実行できるため、上述したような弁閉塞による不都合を効率的に解消することが可能となる。