JP2012127525A - 空気調和機、膨張弁の開度制御方法およびプログラム - Google Patents

空気調和機、膨張弁の開度制御方法およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】従来より温度センサの個数を増やすことなく、適切に膨張弁の開度を制御する。
【解決手段】空気調和機は、圧縮機5の出口での冷媒の温度を吐出温度として検出する第1の温度センサ7と、凝縮器(1または3)の温度を検出する第2の温度センサ(6または8)とを備える。制御部は、現在までの複数の時点で検出された圧縮機5の吐出温度を外挿することによって未来の予測吐出温度を算出し、算出した予測吐出温度と凝縮器(1または3)の現在の温度との温度差を過熱度として算出し、算出した過熱度に基づいて膨張弁2の開度を設定する。
【選択図】図1

Description

この発明は、ヒートポンプサイクルを利用した空気調和機、およびその空気調和機の膨張弁の開度を制御する方法およびプログラムに関する。
一般に、空気調和機は、圧縮機、四方(切換)弁、室外熱交換器、減圧を行なう際に冷媒流量を調節する膨張弁、室内熱交換器などの部品を備えている。このような空気調和機では、四方弁を切り換えることで、冷房運転および暖房運転の両方が可能である。冷房運転時には、圧縮機、四方弁、室外熱交換器(凝縮器)、膨張弁、室内熱交換器(蒸発器)、四方弁、圧縮機の順に冷媒が巡回する冷媒流路が構成されるように四方弁が切り換えられる。これにより、室内熱交換器で吸収した熱が室外熱交換器で室外に放出される。また、暖房運転時には、圧縮機、四方弁、室内熱交換器(凝縮器)、膨張弁、室外熱交換器(蒸発器)、四方弁、圧縮機の順に冷媒が巡回する冷媒流路が構成されるように四方弁が切り換えられる。これにより、室外熱交換器で吸収した室外の熱が室内熱交換器で室内に放出される。
上記のようなヒートポンプサイクルを形成する際に、蒸発器の入口温度(すなわち、冷媒の蒸発温度)と蒸発器の出口温度とを検出することによって過熱度を計算し、その過熱度を用いて膨張弁の開度を制御することが一般的である。膨張弁の他の制御方法が、たとえば、以下の特許文献に記載されている。
特開平7−98160号公報(特許文献1)は、正確な蒸発温度を得ることが困難な非共沸冷媒を使用したヒートポンプサイクルにおいて良好な過熱度の制御を行なう方法について開示する。具体的には、膨張弁の入口温度と膨張弁の出口温度(または蒸発器の入口温度)とを検出することで蒸発飽和温度を推測し、推測した蒸発飽和温度と設定過熱度量とから圧縮機の目標吸い込み温度を決定し、検出した圧縮機の吸い込み温度がこの目標吸い込み温度に一致するように膨張弁の開度を制御することが記載されている。
特開2003−156244号公報(特許文献2)には、圧縮機出口の冷媒の吐出温度を検出し、検出した吐出温度が、蒸発温度および凝縮温度に基づいて演算された目標吐出温度に近づくように、膨張弁の開度を制御することが記載されている。
特開2001−12808号公報(特許文献3)には、圧縮機の運転周波数が低い(冷媒流量が少ない)場合には膨張弁開度の制御時間間隔を長く設定することによって、吐出温度のハンチングを抑制することが記載されている。
特開平7−98160号公報 特開2003−156244号公報 特開2001−12808号公報
蒸発器の入口温度と蒸発器の出口温度とを用いて過熱度を算出する従来の一般的な方法の場合には、蒸発器の入口と出口とにそれぞれサーミスタなどの温度センサを設ける必要がある。特開平7−98160号公報(特許文献1)に記載の空気調和機の場合には、蒸発飽和温度を推測して膨張弁の開度を制御するために、膨張弁の入口温度および膨張弁の出口温度(または蒸発器の入口温度)を検出するサーミスタや、圧縮機の吸い込み温度を検出するためのサーミスタなどが必要になる。このように、従来は、圧縮機入口の冷媒蒸気の過熱度に基づく膨張弁の制御を行なうために余分にサーミスタなどの温度センサを設ける必要があった。
これに対して、特開2003−156244号公報(特許文献2)に記載の方法では、蒸発温度および凝縮温度に基づいて演算された目標吐出温度と実際に検出された圧縮機の吐出温度とに基づく制御を行なうので、従来よりもサーミスタの設置数を削減することができる。しかしながら、この文献の方法では、膨張弁の開度を変化させた結果、実際に圧縮機の吐出温度が変化するまでのタイムラグが考慮されていないので膨張弁を安定に制御できない。
特開2001−12808号公報(特許文献3)に開示された方法では、吐出温度変化のタイムラグについて考慮はされている。しかし、この文献に記載された方法では膨張弁の開度制御の安定性は十分とは言えず、膨張弁が完全に閉じられた閉塞状態を防止することができない。
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたものである。この発明の目的は、従来よりも温度センサの個数を増やすことなく、適切に膨張弁の開度を制御することができる空気調和機、膨張弁の開度制御方法およびプログラムを提供することである。
この発明の第1の局面による空気調和機は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮器を通過した冷媒を膨張させる膨張弁と、膨張弁を通過した冷媒を蒸発させ、蒸発した冷媒を圧縮機の入口に供給する蒸発器と、圧縮機の出口での冷媒の温度を吐出温度として検出する第1の温度センサと、凝縮器の温度を検出する第2の温度センサと、制御部とを備える。制御部は、現在までの複数の時点で検出された圧縮機の吐出温度を外挿することによって未来の予測吐出温度を算出し、算出した予測吐出温度と凝縮器の現在の温度との温度差を過熱度として算出し、算出した過熱度に基づいて膨張弁の開度を設定する。
好ましくは、制御部は、所定の制御周期ごとに検出された圧縮機の吐出温度および凝縮器の温度に基づいて膨張弁の開度を制御する。そして、制御部は、圧縮機の現在の吐出温度と現在よりも制御周期だけ前の吐出温度との差、または算出した予測吐出温度と圧縮機の現在の吐出温度との差を吐出温度変化量として算出する。制御部は、算出した吐出温度変化量の絶対値が所定の基準値以下の場合に算出した過熱度が目標の過熱度に等しくなるように膨張弁の開度を現在の設定値から変更し、算出した吐出温度変化量の絶対値が所定の基準値を超える場合に膨張弁の開度を現在の設定値のまま変更しない。
好ましくは、制御部は、目標の過熱度を、圧縮機の現在の回転数に基づいて算出する。
好ましくは、制御部は、圧縮機の現在の吐出温度と現在よりも制御周期だけ前の吐出温度とを用いた直線外挿によって未来の予測吐出温度を算出する。
好ましくは、第1の局面による空気調和機は、蒸発器の入口温度を検出する第3の温度センサをさらに備える。制御部は、蒸発器の周囲の空気温度と、第3の温度センサによって検出された蒸発器の現在の入口温度との温度差を、周囲温度差として算出する。さらに、制御部は、算出した過熱度が目標の過熱度に等しくなるように膨張弁の開度をフィードバック制御するために、膨張弁の開度を現在の設定値から変化させる変化量を算出する。制御部は、算出した変化量が正の場合、または、算出した変化量が負の場合でありかつ算出した周囲温度差が所定の周囲温度差より小さい場合に、膨張弁の開度を現在の設定値から算出した変化量だけ変化させた新たな設定値に変更する。
好ましくは、第1の局面による空気調和機は、蒸発器の入口温度を検出する第3の温度センサをさらに備える。制御部は、所定の判定周期ごとに膨張弁の現在の開度が所定の開度よりも小さいか否かを判定する。制御部は、膨張弁の現在の開度が所定の開度より小さい場合には、膨張弁の開度を現在の設定値から所定の増加量だけ試験的に増加させる。制御部は、試験的に増加させた前後において第3の温度センサによって検出された蒸発器の入口温度が所定温度以上に変化した場合には、膨張弁の開度を現在の設定値よりも増加させた新たな設定値に変更する。
好ましくは、凝縮器は、冷媒と室内の空気との熱交換を行なう室内熱交換器として用いられる。蒸発器は、冷媒と室外の空気との熱交換を行なう室外熱交換器として用いられる。
この発明の第2の局面による空気調和機は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮器を通過した冷媒を膨張させる膨張弁と、膨張弁を通過した冷媒を蒸発させ、蒸発した冷媒を圧縮機の入口に供給する蒸発器と、圧縮機の出口での冷媒の温度を吐出温度として検出する第1の温度センサと、凝縮器の温度を検出する第2の温度センサと、所定の制御周期ごとに検出された圧縮機の吐出温度および凝縮器の温度に基づいて膨張弁の開度を制御する制御部とを備える。制御部は、圧縮機の現在の吐出温度と凝縮器の現在の温度との温度差を過熱度として算出する。さらに、制御部は、圧縮機の現在の吐出温度と現在よりも制御周期だけ前の吐出温度との差を吐出温度変化量として算出する。制御部は、算出した吐出温度変化量の絶対値が所定の基準値以下の場合に算出した過熱度が目標の過熱度に等しくなるように膨張弁の開度を現在の設定値から変更し、算出した吐出温度変化量が所定の基準値を超える場合に膨張弁の開度を現在の設定値のまま変更しない。
この発明の第3の局面による空気調和機は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮器を通過した冷媒を膨張させる膨張弁と、膨張弁を通過した冷媒を蒸発させ、蒸発した冷媒を圧縮機の入口に供給する蒸発器と、圧縮機の出口での冷媒の温度を吐出温度として検出する第1の温度センサと、凝縮器の温度を検出する第2の温度センサと、蒸発器の入口温度を検出する第3の温度センサと、膨張弁の開度を制御する制御部とを備える。制御部は、圧縮機の吐出温度と凝縮器の温度との温度差を過熱度として算出する。さらに、制御部は、蒸発器の周囲の空気温度と蒸発器の入口温度との温度差を、周囲温度差として算出する。そして、制御部は、算出した過熱度が目標の過熱度に等しくなるように膨張弁の開度をフィードバック制御するために、膨張弁の開度を現在の設定値から変化させる変化量を算出する。制御部は、算出した変化量が正の場合、または、算出した変化量が負の場合でありかつ算出した周囲温度差が所定の周囲温度差より小さい場合に、膨張弁の開度を現在の設定値から算出した変化量だけ変化させた新たな設定値に変更する。
この発明の第4の局面による空気調和機は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮器を通過した冷媒を膨張させる膨張弁と、膨張弁を通過した冷媒を蒸発させ、蒸発した冷媒を圧縮機の入口に供給する蒸発器と、圧縮機の出口での冷媒の温度を吐出温度として検出する第1の温度センサと、凝縮器の温度を検出する第2の温度センサと、蒸発器の入口温度を検出する第3の温度センサと、膨張弁の開度を制御する制御部とを備える。制御部は、圧縮機の吐出温度と凝縮器の温度との温度差を過熱度として算出し、算出した過熱度に基づいて膨張弁の開度を設定する。さらに、制御部は、所定の判定周期ごとに膨張弁の現在の開度が所定の開度よりも小さいか否かを判定する。制御部は、膨張弁の現在の開度が所定の開度より小さい場合には、膨張弁の開度を現在の設定値から所定の増加量だけ試験的に増加させる。そして、制御部は、試験的に増加させた前後において第3の温度センサによって検出された蒸発器の入口温度が所定温度以上に変化した場合には、膨張弁の開度を現在の設定値よりも増加させた新たな設定値に変更する。
この発明は第5の局面において、圧縮機の吐出温度を検出する第1の温度センサと、凝縮器の温度を検出する第2の温度センサとを有する空気調和機において、膨張弁の開度を制御する方法である。この発明による膨張弁の開度制御方法は、現在までの複数の時点で検出された圧縮機の吐出温度を外挿することによって未来の予測吐出温度を算出するステップと、算出した予測吐出温度と検出された凝縮器の現在の温度との温度差を過熱度として算出するステップと、算出した過熱度に基づいて膨張弁の開度を設定するステップとを備える。
この発明は第6の局面において、圧縮機の吐出温度を検出する第1の温度センサと、凝縮器の温度を検出する第2の温度センサとを有する空気調和機において、膨張弁の開度を制御するプログラムである。この発明による膨張弁の開度制御プログラムは、現在までの複数の時点で検出された圧縮機の吐出温度を外挿することによって未来の予測吐出温度を算出するステップと、算出した予測吐出温度と検出された凝縮器の現在の温度との温度差を過熱度として算出するステップと、算出した過熱度に基づいて膨張弁の開度を設定するステップとをコンピュータに実行させる。
この発明によれば、従来よりも温度センサの個数を増やすことなく、適切に膨張弁の開度を制御することができる。
この発明の実施の形態1に従う空気調和機での冷媒回路を模式的に示す図である。 実施の形態1による空気調和機の室内機100の外観図である。 図2の室内機100の内部構成を概略的に示す断面図である。 本発明の実施の形態における空気調和機の室外機200の外観図である。 図4の室外機200の内部構成を概略的に示す図である。 実施の形態1による空気調和機の機能構成を示す機能ブロック図である。 モリエル線図(P−h線図)の一例を示す図である。 実施の形態1による空気調和機において膨張弁の開度を制御する手順を示すフローチャートである。 実施の形態2による空気調和機において室外熱交換器1用の温度センサ6Aの配置を説明するための図である。 実施の形態2による空気調和機において膨張弁の開度を制御する手順を示すフローチャートである。 実施の形態3による空気調和機において膨張弁の開度を制御する手順を示すフローチャートである。
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
<実施の形態1>
[冷媒回路について]
図1は、この発明の実施の形態1に従う空気調和機での冷媒回路を模式的に示す図である。
図1を参照して、空気調和機は、室外機側の熱交換器(以下「室外熱交換器」という)1と、膨張弁2と、室内機側の熱交換器(以下「室内熱交換器」という)3と、四方弁4と、圧縮機5とを含み、それらが順に閉ループ状に接続されている。圧縮機5は、冷媒を圧縮する。室外熱交換器1は、室外の空気および冷媒の間で熱交換する。膨張弁2は、冷媒の流量を調整するために制御される。室内熱交換器3は、室内の空気および冷媒の間で熱交換する。四方弁4は、冷房運転および暖房運転において冷媒の巡回方向を切替える。
冷房運転時には、図1の実線の矢印で示されるように、圧縮機5、四方弁4、室外熱交換器1、膨張弁2、室内熱交換器3、四方弁4、圧縮機5の順に冷媒が巡回する。この場合、室外熱交換器1が、圧縮された高温の冷媒を凝縮して液化させるための凝縮器として機能し、室内熱交換器3が、液化された冷媒を蒸発させることで冷媒を低温の気体に変化させるための蒸発器として機能する。暖房運転時には、図1の破線の矢印で示されるように、圧縮機5、四方弁4、室内熱交換器3、膨張弁2、室外熱交換器1、四方弁4、圧縮機5の順に冷媒が巡回する。この場合、室外熱交換器1が蒸発器、室内熱交換器3が凝縮器として機能する。
空気調和機は、さらに、室外熱交換器1の温度を測定するための温度センサ6と、圧縮機5の出口での冷媒温度である吐出温度(TMP_to)を測定するための温度センサ7と、室内熱交換器3の温度を測定するための温度センサ8とを含む。これらの温度センサ6,7,8は、たとえばサーミスタである。室外熱交換器1用の温度センサ6および室内熱交換器3用の温度センサ8はいずれも、熱交換器の入口と出口の中間に配置される。したがって、通常の場合には、これらの熱交換器が凝縮器として機能するときに検出される温度(「凝縮器温度(TMP_con)」と記載する)は冷媒の凝縮温度であり、蒸発器として機能するときに検出される温度(「蒸発器温度(TMP_eva)」と記載する)は冷媒の蒸発温度である。
なお、本実施の形態では、暖房運転および冷房運転を切替え可能として説明するが、空気調和機は、暖房運転および冷房運転の一方のみ可能であってもよい。その場合、室外熱交換器1および室内熱交換器3の機能は、凝縮器または蒸発器として固定される。
[外観および全体構成]
図2は、実施の形態1による空気調和機の室内機100の外観図である。図3は、図2の室内機100の内部構成を概略的に示す断面図である。図3は、図2のY軸方向から見た室内機100の断面図を示す。
図3を参照して、室内機100は、図1で示した室内熱交換器3および温度センサ8に加えて、室温を測定するための温度センサ11と、室内ファン14と、ルーバー15と、ルーバーモータ16とをさらに含む。ルーバー15は、室内機100の吹出し口に設けられた風向案内部材である。ルーバーモータ16は、ルーバー15を回転駆動する。複数のルーバー15は同方向を向くように駆動される。
図4は、本発明の実施の形態における空気調和機の室外機200の外観図である。図5は、図4の室外機200の内部構成を概略的に示す図である。
図5を参照して、室外機200は、図1で示した室外熱交換器1、四方弁4、圧縮機5、および温度センサ6に加えて、外気温を測定するための温度センサ21と、室外ファン24とを含む。
図6は、実施の形態1による空気調和機の機能構成を示す機能ブロック図である。
図6を参照して、空気調和機は、図1、図3および図5で示した構成に加えて、膨張弁2の開度を調整するために駆動されるステッピングモータ12と、空気調和機全体の制御を行なうための制御部30と、ユーザからの指示を受付けるための操作部36とをさらに含む。本実施の形態では、膨張弁2の開度の変化量は、ステッピングモータ12におけるステップ数(すなわち、ステータの各相巻線を励磁するパルス信号の数)によって表わされる。膨張弁の絶対開度(全閉または全開などの基準開度からの差)は、開度を変化させるごとに変化量(ステップ数)を累積加算することによって算出される。
なお、膨張弁2は、ステッピングモータ12により開度が調整されるものに限定されず、たとえば、温度式膨張弁であってもよい。温度式膨張弁では、ヒートポンプサイクルに用いられる冷媒と同じ種類の冷媒を封入した感温筒が、膨張弁内部のダイヤフラムとキャピラリーチューブによって接続されている。感温筒は、冷媒温度を測定する配管に取り付けられる。感温筒が冷媒の温度を感知してダイヤフラムに圧力をかけることで膨張弁の開度が制御される。
制御部30は、室内機100に内蔵され、各種演算処理を行なうためのプロセッサ32と、各種プログラムやデータを記憶するためのメモリ34とを含む。プロセッサ32は、たとえばCPU(Central Processing Unit)により構成される。プロセッサ32は、メモリ34内に格納されたプログラムを実行することで、後述するような膨張弁2の開度の制御を行なう。メモリ34は、たとえば、フラッシュメモリなどの不揮発性のメモリであってよい。
操作部36は、たとえば、電源スイッチ、温度調節キー、風量調節キー、タイマ設定キーなどを含む。
空気調和機は、さらに、コンピュータが読取可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体38aからデータやプログラムの読出しや書き込みを行なうためのインターフェイス部38を備えていてもよい。プロセッサ32は、インターフェイス部38が記録媒体38aから読出したプログラムをメモリ34に格納(または既存のプログラムをアップデート)することで、後述するような膨張弁2の開度の制御(開度算出処理)を行なってもよい。記録媒体38aは、たとえば、CD−ROM(Compact Disc-ROM)などの光学媒体や、メモリカードなどの磁気記録媒体などを含む。
[膨張弁の制御の特徴A−吐出温度差に応じた制御]
以下、図1、図7を参照して、図6の制御部30(プロセッサ32)が実行する、膨張弁2の制御(開度の制御)の特徴について説明する。
一般的に、ヒートポンプサイクルが効率よく熱交換を行なうために、蒸発器の出口温度より換算された過熱度により膨張弁の開度の制御を行なうことが多い。実際には、蒸発器温度(TMP_eva)と蒸発器出口温度とを検出してその温度差が目標の過熱度となるようにフィードバック制御が行われる。「過熱度」とは、ある圧力のもとにある過熱蒸気温度と、同じ圧力にある乾き飽和蒸気温度との間の温度差を表わす。
本実施の形態でも従来と同様に、蒸発器出口での冷媒蒸気の過熱度が目標の過熱度となるように膨張弁2の制御を行なうが、蒸発器出口での冷媒蒸気の過熱度そのものを制御には用いない。目標の過熱度は吐出温度(TMP_to)と凝縮器温度(TMP_con)との温度差(TMP_diff)に換算され、圧縮機出口での冷媒蒸気の過熱度が目標の過熱度に等しくなるように膨張弁2が制御される。以下では、圧縮機出口での冷媒蒸気の過熱度、すなわち、圧縮機の吐出温度(TMP_to)と蒸発器温度(TMP_eva)との差を「吐出温度差」と称する。
上述のように、従来、膨張弁の制御は、蒸発器温度と蒸発器の出口温度とから算出される過熱度が用いられることが多い。圧縮機5の吸込圧力と吐出圧力との圧力差(この圧力差が圧縮機5の回転数に対応する)によってモリエル線図上での圧縮ラインが決定されるので、従来と同様の制御が、吐出温度と凝縮器温度との差(吐出温度差)を用いても可能である。このことについて、図7を用いてより詳細に説明する。
図7は、モリエル線図(P−h線図)の一例を示す図である。モリエル線図においては、圧力(kg/dm2)とエンタルピ(kcal/kg)との関係が表わされている。図7では、破線によって等温線が併せて示されている。飽和液線76よりも左側(エンタルピが小さい側)の領域にある等温線71は、過冷却液の等温線を示しており、飽和液線76と飽和蒸気線77とで囲まれた領域にある等温線72は、湿り蒸気の等温線を示している。飽和蒸気線77よりも右側(エンタルピが大きい側)の領域にある等温線73は、過熱蒸気の等温線を示している。飽和液線76と飽和蒸気線77とは、臨界点75にて区分される。
図7において、ラインL1〜L4で示された閉ループは、ヒートポンプサイクルを表わしている。ラインL1は圧縮ラインと呼ばれる。圧縮ラインL1は、理想的には等エントロピー線74と平行となる。実際の圧縮機5では、摩擦損失などの諸損失の分だけ冷媒蒸気のエンタルピが増加する。ラインL2は凝縮ラインと呼ばれ、ラインL3は膨張ラインと呼ばれ、ラインL4は蒸発ラインと呼ばれる。
凝縮ラインL2および蒸発ラインL4は、それぞれ、凝縮器に設けられたサーミスタおよび蒸発器に設けられたサーミスタ(それぞれ本実施の形態における温度センサ6または8に相当)が検出する凝縮器温度(TMP_con)および蒸発器温度(TMP_eva)により定まる。圧縮ラインL1は圧縮機5固有のものであり、圧縮機5の運転状態に応じて決定される。凝縮器に設けられたサーミスタによって検出される凝縮器温度(TMP_con)と、蒸発器に設けられたサーミスタとによって検出される蒸発器温度(TMP_eva)とから、凝縮圧力P2と蒸発圧力P1とが分かる。この凝縮圧力P2と蒸発圧力P1との圧力差ΔPは、膨張弁2がある開度で安定している場合には、圧縮機5の回転数によって決まる。したがって、従来の膨張弁の制御において用いられた、蒸発器温度(TMP_eva)と蒸発器出口温度(図7のC点の温度)とにより算出される過熱度(エンタルピ差Δh1に対応する)は、圧縮機の回転数に応じて、吐出温度(TMP_to)と凝縮器温度(TMP_con)とにより算出される過熱度(エンタルピ差Δh2に対応する)に換算することができる。
以上の理由により、本実施の形態の空気調和機では、圧縮機出口での冷媒蒸気の過熱度(吐出温度差)の目標値である目標吐出温度差(TMP_aim)は、圧縮機5の吐出圧力と吸込圧力との圧力差に対応する圧縮機5の回転数(F)により算出される。このことを関数記号f0を用いて次式(1)のように表わす。
TMP_aim = f0(F) …(1)
なお、圧縮機5の回転数は、公知のアルゴリズムに基づいて決定されるものであってよい。たとえば、操作部36にて設定された室内温度と、現在の室内温度(温度センサ11によって検出される)との差に基づいて決定される。つまり、設定温度と室内温度との差が大きい程、圧縮機5の回転数は大きくなる。
上記の説明では目標の吐出温度差(TMP_aim)を圧縮機5の回転数(F)を用いた計算により決定した。これに代えて、予め図6のメモリ34内に格納されたデータテーブルを用いて目標の吐出温度差を決定してもよい。すなわち、事前に蒸発器と蒸発器出口とにサーミスタ(温度センサ)を設置して過熱度制御を行い、目標過熱度となるような際の吐出温度と凝縮器温度とを測定することによって、実験的に目標の吐出温度差(TMP_aim)を決定しておいてもよい。
[膨張弁の制御の特徴B−回転数に応じた制御]
膨張弁2の制御では、圧縮機5の起動直後はサイクル安定化のため、通常、膨張弁2の開度は初期開度に設定され、所定のマスク時間のあいだ、吐出温度差に基づく開度のフィードバック制御は行なわれない。この初期開度は、冷房運転時と暖房運転時とで異ならせたり、外気温が高温のときと低温のときとで異ならせたりすることによって、熱サイクルを安定化させる時間を短縮させるのが一般的である。
膨張弁2の開度が初期開度に設定される所定のマスク時間の経過後は、膨張弁2の開度は、圧縮機5の回転数に応じて予め決められた開度に設定される。通常、この開度の設定値は、圧縮機の回転数にほぼ比例した値である。
膨張弁2の開度の設定値は、さらに、吐出温度差が圧縮機5の回転数に応じて予め決められた目標の吐出温度差となるように、PID制御(比例制御(Proportional Control)、積分制御(Integral Control)、微分制御(Derivative Control))によって調整される。空気調和機の運転状態が定常状態になると圧縮機5の回転数は一定になるので、その一定の回転数に対応した開度のベース値に対して、吐出温度差に応じた調整量がさらに加算される。ただし、次の特徴Cで説明するように、吐出温度は膨張弁の開度の変化よりもかなり遅れて変化するので、現時刻の吐出温度ではなく、未来の予測された吐出温度を用いて吐出温度差が算出され、算出した吐出温度差に応じてPID制御による開度の調整量が算出される。
PID制御に代えて、比例制御のみでもよいし、積分制御のみでもよいし、PI制御でもよい。オーバーシュートをできるだけ減らして目標値に近づけるようなものであれば、どのようなフィードバック調節計を用いても構わない。
[膨張弁の制御の特徴C−予測吐出温度の算出]
吐出温度差に基づいた膨張弁の制御を行なう際、膨張弁2の開度による影響が非常に遅れて吐出温度変化に現れる点に注意しなければならない。そこで、吐出温度の変化のタイムラグを取り入れた膨張弁の開度制御を行なうために、未来の吐出温度の予測値が制御に用いられる。
具体的に、図6の制御部30(マイクロコンピュータ)は、たとえば10秒など所定の制御インターバル時間(制御周期とも称する)ごとに吐出温度を温度センサ7から取得し、現時刻までの複数の時点で検出された吐出温度に基づいて、2分後など現時刻から所定の予測時間の経過後の吐出温度を予測する。たとえば、制御部30は、現時刻の吐出温度のデータと現時刻よりも制御周期だけ前の吐出温度のデータとを用いた直線外挿によって予測吐出温度を求める。そして、制御部30は、予測吐出温度と凝縮器温度との差を吐出温度差として算出し、算出した吐出温度差を用いることによって素早く安定した膨張弁の開度制御を行なうことができる。
ここでは、制御インターバル時間および予測時間として10秒や2分といった時間を記述したが、これらの時間は空気調和機や圧縮機の能力により異なるため、装置に応じて適切な時間を設定するのが望ましい。これらの制御インターバル時間および予測時間はマイクロコンピュータ内のメモリに予め記憶され、制御部30(マイクロコンピュータ)によって膨張弁の開度制御プログラムが実行されるときに読み出される。
一般に圧縮機回転数が小さく冷媒の循環量が小さい場合、膨張弁変化から吐出温度変化の応答速度が遅くなる。したがって、吐出温度が所定の基準温度以下の場合もしくは圧縮機回転数が所定の基準回転数以下の場合は、上記の予想吐出温度の予測時間を通常の予測時間(上記では2分)よりも長くする(たとえば4分)のが望ましい。予測時間を長くする方法以外でも、積分制御の積分時間を長くして、膨張弁の開度を制御する速度を遅くするなどの方法でもかまわない。
上記の開度の制御方法において、吐出温度差を算出するのに必要な凝縮器温度(TMP_con)と、目標の吐出温度差(TMP_aim)を決定するのに必要な圧縮機5の回転数とには、通常、現時刻のデータが用いられる。凝縮器温度(TMP_con)は、吐出温度(TMP_to)に比べると膨張弁2の開度の変化により早く追随するからであり、圧縮機5の回転数の大部分は室内機側で決定されるものなので予測できないからである。
[膨張弁の制御の特徴D−吐出温度の変化勾配に応じた制御]
制御周期ごとの吐出温度の変化量(すなわち、吐出温度の変化勾配もしくは変化度合)が大きい場合には、予測吐出温度を用いた制御を行なっても吐出温度の変化に膨張弁の開度が追随できないもしくは必要以上に開度を変化させてしまうことが多い。この結果、吐出温度がハンチングしてしまい、膨張弁の開度制御の安定性が悪くなったり、最適な開度に安定するまでに時間がかかったりするなどの問題が発生する。
吐出温度の安定性を高めるため、本実施の形態の空気調和機では、吐出温度の変化勾配が所定の基準値より大きい場合には、吐出温度差に基づく膨張弁の開度のフィードバック制御が一時的に停止される。
たとえば、10秒の制御インターバル時間毎に温度センサ7から吐出温度のデータを取得する場合、現時刻の吐出温度と10秒前の吐出温度との温度差を変化勾配とし、この変化勾配の絶対値が所定の基準値以上の場合に、吐出温度差に基づくフィードバック制御が停止される。この場合、前回設定された開度の設定値はそのまま変更されずに用いられる。ただし、圧縮機の回転数に比例した膨張弁開度の設定は吐出温度の変化勾配の絶対値の大小によらず実行されるので、圧縮機の回転数が変化した場合にはその回転数の変化に応じて開度の設定値は変更される。吐出温度の変化勾配の絶対値が上記の所定の基準値未満になったとき、吐出温度差に基づくフィードバック制御による膨張弁の開度の調整が再開される。
吐出温度の変化勾配が所定の基準値より大きい場合でも、吐出温度が高温になりすぎる場合には、吐出温度差に基づくフィードバック制御を停止しないほうが望ましい。たとえば、ハイドロカーボン系の冷媒であるR−410Aは120℃以上になると炭化しやすくなるので、炭化した冷媒で配管内が詰まるおそれがある。本実施の形態の空気調和機では、105℃〜115℃程度の温度を上限吐出温度として予め設定し、予測吐出温度が上限吐出温度を超える場合には、吐出温度差に基づくフィードバック制御は停止させない。これによって膨張弁を開く方向に素早く制御できるので、冷媒の炭化を防止することができる。
上記の説明では、現時刻の吐出温度と現時刻よりも制御周期だけ前の吐出温度との温度差を吐出温度の変化勾配としたが、これに代えて、予測吐出温度と現時刻の吐出温度との温度差を吐出温度の変化勾配としてもよい。
[膨張弁の制御の具体的手順]
図8は、実施の形態1による空気調和機において膨張弁の開度を制御する手順を示すフローチャートである。図8の制御手順は、上記特徴Bで説明した初期開度によるマスク時間が終了した時点から開始される。以下の説明では、膨張弁の開度をSで表わし、開度が増加するほどSが増加するものとする。現在の設定値から開度が増加する方向の変化量をS+で表わし、開度が減少する方向の変化量をS−で表わす。S+,S−が負の場合は、それぞれ開度が減少および増加する方向の変化量を表わすものとする。
図1、図8を参照して、ステップS101で、図6の制御部30は、膨張弁の開度を圧縮機回転数に比例した値に設定する。すなわち、初期開度からの変化量S+が、圧縮機5の回転数Fを用いて算出される。このことを、関数記号f1を用いて、
S+=f1(F) …(2)
と表わす。膨張弁2に設けられたステッピングモータは、算出されたステップ数S+だけ回転する。
次のステップS102で、制御部30は制御インターバル時間(たとえば、10秒)が経過したか否かを判定する。制御インターバル時間が経過していない場合(ステップS102でFALSE)、処理はステップS101に戻る。再度ステップS101が実行される場合に、前回と比べて圧縮機5の回転数Fに変化がない場合、膨張弁2の開度の変化量(式(2)のS+)は0である。
一方、制御インターバル時間が経過した場合(ステップS102でTRUE)、制御インターバル時間が経過したか否かを判定するために用いるタイマがリセットされ、処理はステップS103に進む。ステップS103以降で、吐出温度差に基づく膨張弁の制御が実行される。なお、制御インターバル時間はマイクロコンピュータ(制御部30)内部のメモリに予め記憶された値を用いてもよいし、サイクル温度(凝縮温度または蒸発温度)などに応じて設定されるようにしてもよい。
ステップS103で、制御部30は、温度センサ7によって検出された現在の吐出温度Tto_nowを取得する。
次のステップS104で、制御部30は、現時刻よりも制御インターバル時間だけ前の吐出温度Tto_buffと現在の吐出温度Tto_nowを用いて、予測吐出温度を算出する。このことを関数記号f2を用いて、
予測吐出温度 = f2(Tto_now,Tto_buff) …(3)
と表わす。
次のステップS105で、制御部30は、予測吐出温度が上記特徴Dで説明した上限吐出温度より大きいか否かを判定する。制御部30は、予測吐出温度が上限吐出温度より大きい場合(ステップS105でTRUE)、処理をステップS107へ進めて吐出温度差に基づく膨張弁の制御を行なう。制御部30は、予測吐出温度が上限吐出温度以下(ステップS105でFALSE)の場合には処理をステップS106へ進める。
ステップS106で、制御部30は、現在の吐出温度Tto_nowと現在よりも制御インターバル時間だけ前の吐出温度Tto_buffとの差(すなわち、吐出温度の変化勾配)の絶対値(abs)が所定の基準値Tto_thより小さいか否かを判定する。吐出温度の変化勾配の絶対値が所定の基準値Tto_thより小さい場合(ステップS106でTRUE)、制御部30は、処理をステップS107へ進めて吐出温度差に基づく膨張弁の制御を行なう。制御部30は、吐出温度の温度勾配の絶対値が所定の基準値Tto_th以上(ステップS106でFALSE)の場合には処理をステップS108へ進める。
ステップS107で、制御部30は、予測吐出温度と凝縮器温度(TMP_con)と差である吐出温度差(TMP_diff)を目標の吐出温度差(TMP_aim)に等しくするのに必要な膨張弁の開度の変化量S+を算出する。具体的には、制御部30は、現在の吐出温度差(TMP_diff)と目標の吐出温度差(TMP_aim)との偏差に対してPID演算を施して操作量(膨張弁の開度)を算出し、現在の開度の設定値との差(すなわち、開度の変化量S+)を算出する。このことを関数記号f3を用いて、
S+ = f3(予測吐出温度,凝縮器温度) …(4)
と表わす。制御部30は、算出した開度の変化量を示すステップ数S+だけ、膨張弁2に設けられたステッピングモータを回転させる。
ステップS107では、PID制御に代えて積分制御を用いてもよい。積分制御では、現在の吐出温度差(TMP_diff)と目標の吐出温度差(TMP_aim)との偏差に応じて予め設定された加算値が、ステップS107が実行される度に累積加算される。ここで、現在の吐出温度差(TMP_diff)が目標の吐出温度差(TMP_aim)より大きい場合の加算値は正であり、現在の吐出温度差(TMP_diff)が目標の吐出温度差(TMP_aim)より小さい場合の加算値は負である。そして、加算値の累積結果が予め設定された正の閾値を超えた場合に、膨張弁の開度を1ステップ分増加させる(S+=+1)。逆に、加算値の累積結果が予め設定された負の閾値未満となった場合に、膨張弁の開度を1ステップ分減少させる(S+=−1)。このような制御方法を用いる理由は、ステップS101において圧縮機回転数に比例して開度を変化させる比例制御を行っているので、現在の吐出温度差(TMP_diff)は目標の吐出温度差(TMP_aim)にある程度近い値になっているからである。したがって、PID制御を用いなくても、上記のような簡単な積分制御によって、オーバーシュートを防ぎつつ、素早く最適な吐出温度差になるように膨張弁の開度を制御することができる。
ステップS108で、制御部30は、直近の過去の吐出温度Tto_buffを表わす変数に現在の吐出温度Tto_nowを代入する。以後、ステップS101〜S108が繰返される。
<実施の形態2>
[膨張弁の制御の特徴E−膨張弁の閉塞防止]
実施の形態2による空気調和機では、暖房運転時に膨張弁が閉塞に近い状態であるか否かが判定され、膨張弁が閉塞状態に近い場合には、完全に閉塞しないようにするために膨張弁の開度がさらに閉方向に変化しないように制御される。これによって、空気調和機が熱交換を続けられるような状態を保つことができ、空気調和機の使用者の快適さを保つことができる。
図9は、実施の形態2による空気調和機において室外熱交換器1用の温度センサ6Aの配置を説明するための図である。
図9を参照して、室外熱交換器1用の温度センサ(サーミスタ)6Aは、暖房運転時の室外熱交換器の冷媒入口(冷房運転時の冷媒出口)に取り付けられる。図9のその他の構成は図1と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
空気調和機では通常、暖房運転時に室外熱交換器1に霜が付き熱交換能力が落ちた場合に、四方弁4を切り換えて冷房運転を行なうことによって除霜する。その際適切に室外熱交換器1の霜が除かれたことを判定するために、室外熱交換器用の温度センサ6Aによって、冷房運転時の室外熱交の冷媒出口(暖房運転時の冷媒入口)の温度が検出される。冷房運転時には、圧縮機5から吐出された高温高圧の冷媒蒸気は室外熱交換器1へ入る。室外熱交換器1において高温高圧の冷媒蒸気は熱交換されることで冷却および凝縮する。この熱交換によって、熱交換器の温度が入口側から上がり、一番最後に室外熱交換器の出口の温度が上がる。したがって、室外熱交換器の出口温度が、霜が確実に除去される温度になれば、室外熱交換器全体は出口温度よりも高いため確実に霜が除去されたことがわかる。
ただし、冷房運転時には室外熱交換器1(凝縮器)の冷媒出口に温度センサ6Aが設けられることになるので、図7に示すモリエル線図では過冷却域(図7の点A)に当たる部分に温度センサ6Aが位置することになる。したがって、凝縮器温度(TMP_con)と吐出温度を用いた計算によって過熱度を求めることは困難になるが、実験によって得られたデータテーブルを利用することで過熱度の推定は可能である。具体的には、室内熱交換器3の出口での冷媒の過熱度が目標の過熱度となるときの、吐出温度と凝縮器出口温度との差が、圧縮機5の各回転数ごとに実測される。実際の制御では、測定された温度差を目標値とする。
暖房運転時には、室外熱交換器1(蒸発器)の冷媒入口(図7の点Bに相当)に設けた温度センサ(サーミスタ)6Aによって膨張弁2が閉塞に近い状態にあるか否かが判定可能である。その理由は次のとおりである。
暖房運転時には、室外熱交換器1で冷媒が蒸発する。膨張弁2の開度が小さくなると、冷媒の循環量が少なくなることと低圧側の圧力が低くなることとが相まって、冷媒が膨張弁2から出てすぐに蒸発しやすい状態となる。この結果、室外熱交換器1(蒸発器)の冷媒入口(サーミスタ6Aの取り付け部分)の温度が急激に下がり易くなる。完全に膨張弁が閉塞してしまうと、室外熱交換器と室外機温度(室外熱交換器の周囲の外気温)との温度差が無くなるので、逆に室外熱交換器1の温度が上がる。
膨張弁2が完全な閉塞状態になると、空気調和機の熱交換能力がなくなってしまい、快適性が損なわれてしまうために閉塞状態は回避しなくてはならない。膨張弁2の開度が極小の状態(閉塞状態に近い状態)も望ましくない。この場合、室外熱交換器1の温度が低くなりすぎるため、実際には霜がついていない場合でも制御部30は室外熱交換器に霜がついていると誤判定して除霜運転に入りやすくなる。除霜中は冷房運転となるため室内温度が下がってしまうので、安易な除霜運転は回避しなくてはならない。
そこで、実施の形態2の空気調和機では、暖房運転時には、室外機の温度(室外熱交換器1の周囲の外気温)と室外熱交換器1の入口温度とが検出される。図6の制御部30は、外気温と室外熱交換器1の入口温度との差が所定の基準値以上ある場合は、膨張弁2の開度が小さすぎると判定し、それ以上膨張弁の開度を閉方向へ変化させないようにする。制御部30は、外気温と室外熱交換器1の入口温度との差が所定の基準値以上であっても、膨張弁2の開度が開く方向の変化ならば、室外熱交換器1の温度が上がる方向であり、膨張弁が閉塞することは無いので、膨張弁2の開度を開方向に変化させる。
室外気温の検出するために、熱交換器などの場合と同様にサーミスタを用いてもよいし、運転初期の室外熱交換器1の温度や、圧縮機5の停止から所定時間経過後の室外熱交換器1の温度を室外気温として代用してもよい。
本実施の形態の方法に代えて、膨張弁の最小開度を設定し、その最小開度よりも実際の開度を小さくしないように膨張弁2の制御を行なう方法も考えられる。しかしながら、膨張弁2には製造時のばらつきによって固体差があるのが通常であり、膨張弁2に同じ流量を流すにも数ステップから数十ステップの開度ばらつきがある。したがって、実施の形態2の空気調和機のように外気温と室外熱交換器1の温度との差によって膨張弁が閉塞状態にならないように制御したほうが、安定して熱交換を続けることができる。
室内熱交換器3の温度センサ(サーミスタ)8の取付位置は冷媒入口と冷媒出口の中間にある場合が多い。したがって、冷房運転時に、膨張弁開度が極小となった場合、温度センサ8の取付位置では過熱蒸気域となってしまう。この結果、室内熱交換器3は低下するのでなく、ほぼ室内気温と等しくなる。それゆえ、冷房運転時の膨張弁2の閉塞判定に室内熱交換器3の温度センサ(サーミスタ)8を使用することは困難である。したがって、実施の形態2による膨張弁2の開度の制御は、暖房運転の場合のみ行なうこととする。ただし、室内熱交換器3の温度センサが冷房運転時の冷媒入口に設けられていれば、冷房運転時においても本実施の形態の膨張弁の開度制御方法を用いることができる。
[膨張弁の制御の具体的手順]
図10は、実施の形態2による空気調和機において膨張弁の開度を制御する手順を示すフローチャートである。図10の制御手順は、前述の特徴Bで説明した初期開度によるマスク時間が終了した時点から開始される。図10のステップS201〜S204は図8のステップS101〜S104に対応し、各ステップの制御内容は図8の場合と同じであるので、説明を繰返さない。ステップS204で予測吐出温度が算出された後、処理はステップS205に進む。
ステップS205で、図6の制御部30は、空気調和機の運転状態が暖房運転か否かを判定する。暖房運転でない場合(ステップS205でFALSE)、処理はステップS208に進み、暖房運転の場合(ステップS205でTRUE)、処理はステップS206に進む。
ステップS206で、制御部30は、室外温度と室外熱交換器1の温度との差を求め、算出された温度差と基準値Tstop_thとを比較する。制御部30は、算出された温度差が基準Tstop_thよりも小さい場合(ステップS206でFALSE)、処理をステップS208へ進め、算出された温度差がTstop_thよりも大きい場合(ステップS206でTRUE)、処理をステップS207へ進める。
ステップS207で、制御部30は、予測吐出温度と凝縮器温度(TMP_con)と差である吐出温度差(TMP_diff)を、目標の吐出温度差(TMP_aim)に等しくするのに必要な膨張弁の開度の変化量(すなわち、式(4)の右辺)を算出する。具体的には、制御部30は、吐出温度差(TMP_diff)に対してPID演算を施して操作量(膨張弁の開度)を算出し、現在の開度の設定値との差分を算出する。そして、制御部30は、開度の変化量が負であるか否か、すなわち開度の変化方向が閉方向であるか否かを判定する。膨張弁の開度の変化量が負の場合すなわち膨張弁を絞る方向の場合には(ステップS207でTRUE)、処理はステップS209へ進み、開度の変化量が以上の場合すなわち膨張弁を開く方向の場合には(ステップS207でFALSE)、処理はステップS208へ進む。
上記のステップS205〜S207のいずれかで判定結果がFALSEの場合は、ステップS208が実行される。ステップS208で、制御部30は、検出した吐出温度差(TMP_diff)に応じて決まる開度の変化量を算出していない場合には開度の変化量を算出し、算出した開度の変化量に対応するステップ数S+だけ、膨張弁2に設けられたステッピングモータを回転させる。その後、処理はステップS209に進む。
ステップS209で、制御部30は、直近の過去の吐出温度Tto_buffを表わす変数に現在の吐出温度Tto_nowを代入する。以後、ステップS201〜S209が繰返される。
<実施の形態3>
[膨張弁の制御の特徴F−膨張弁の閉塞防止の他の方法]
実施の形態3による空気調和機においても、実施の形態2の場合と同様に、空気調和機が熱交換を続けられるような状態を保ち、空気調和機の使用者の快適さを保つために、膨張弁の閉塞を防止する制御が行われる。実施の形態3による空気調和機での冷媒回路の構成は実施の形態2の図9と同じである。室外熱交換器1用の温度センサ(サーミスタ)6Aは、暖房運転時の室外熱交換器1の冷媒入口(冷房運転時の冷媒出口)に取り付けられる。
実施の形態3による空気調和機において、図6の制御部30は、膨張弁2が閉塞しているか否かを確認するために、膨張弁の開度が所定の基準ステップ数(たとえば45ステップ)以下の状態で暖房運転されていれば、所定の判定周期(たとえば、10〜30分)ごとに膨張弁の開度を試験的に所定ステップ数だけ(例えば5ステップや10ステップ)開方向に変化させる。そして、制御部30は、試験的に膨張弁の開度を増加させる前後での、室外熱交換器1(蒸発器)の入口温度を取得する。膨張弁2の開度を開方向に試験的に変化させる前の室外熱交換器1の入口温度と、開度を試験的に変化させた後の室外熱交換器1の入口温度との温度差が基準の温度差(たとえば15℃)以上の場合には、膨張弁が閉塞されていたと判定される。この場合、制御部30は、膨張弁2の開度を試験的に開方向に変化させたままにする。試験的に開度の増加量よりもさらに膨張弁を開方向に変化させてもよい。
上記で説明した膨張弁の閉塞判定は、室外熱交換器1の温度センサ6Aが暖房運転時の冷媒入口に取り付けられていることを利用するものである。室内熱交換器3の温度センサ8は、通常、冷媒入口と冷媒出口の中間付近に取り付けられているので、冷房運転時に上記の方法による膨張弁の閉塞判定を行なうことは難しい。よって、上記の閉塞判定は、暖房運転の場合のみ行なうこととする。ただし、室内熱交換器3の温度センサが冷房運転時の冷媒入口に設けられていれば、冷房運転時においても上記の膨張弁の開度制御方法を用いることができる。
[膨張弁の制御の具体的手順]
図11は、実施の形態3による空気調和機において膨張弁の開度を制御する手順を示すフローチャートである。図8の制御手順は、上記特徴Bで説明した初期開度によるマスク時間が終了した時点から開始される。
図9、図11を参照して、ステップS301で、図6の制御部30は、膨張弁の開度を圧縮機回転数に比例した値に設定する。すなわち、初期開度からの変化量S+が、圧縮機5の回転数Fを用いて算出される(前述の式(2)参照)。膨張弁2に設けられたステッピングモータは、算出されたステップ数S+だけ回転する。
次のステップS302で、制御部30は制御インターバル時間(たとえば、10秒)が経過したか否かを判定する。制御インターバル時間が経過していない場合(ステップS302でFALSE)、処理はステップS307に進む。この場合、吐出温度差に基づく膨張弁の開度の制御(ステップS303〜S306)は実行されない。
一方、制御インターバル時間が経過した場合(ステップS302でTRUE)、制御インターバル時間が経過したか否かを判定するために用いるタイマがリセットされ、処理はステップS303に進む。
ステップS303で、制御部30は、温度センサ7によって検出された現在の吐出温度Tto_nowを取得する。
次のステップS304で、制御部30は、現時刻よりも制御インターバル時間だけ前の吐出温度Tto_buffと現在の吐出温度Tto_nowを用いて、予測吐出温度を算出する(前述の式(3)参照)。
次のステップS305で、制御部30は、予測吐出温度と凝縮器温度(TMP_con)と差である吐出温度差(TMP_diff)を目標の吐出温度差(TMP_aim)に等しくするのに必要な膨張弁の開度の変化量S+を算出する。具体的には、制御部30は、吐出温度差(TMP_diff)に対してPID演算を施して操作量(膨張弁の開度)を算出し、現在の開度の設定値との差分(すなわち、開度の変化量S+)を算出する(前述の式(4)参照)。制御部30は、算出した開度の変化量に対応するステップ数S+だけ、膨張弁2に設けられたステッピングモータを回転させる。
次のステップS306で、制御部30は、直近の過去の吐出温度Tto_buffを表わす変数に現在の吐出温度Tto_nowを代入して、処理をステップS307に進める。
次のステップS307で、制御部30は、空気調和機の運転状態が暖房運転か否かを判定する。暖房運転でない場合(ステップS307でFALSE)、処理はステップS301に戻る。この場合、膨張弁2の閉塞判定は行なわれない。暖房運転の場合(ステップS307でTRUE)、処理はステップS308に進む。
ステップS308で、制御部30は、膨張弁の現在の開度Sが閾値開度Sthより小さいか否かを判定する。膨張弁の現在の開度Sが閾値開度Sth以上である場合(ステップS308でFALSE)、処理はステップS301に戻る。この場合、膨張弁2の閉塞判定は行なわれない。膨張弁の現在の開度Sが閾値開度Sth未満の場合(ステップS308でTRUE)、処理はステップS309に進む。
ステップS309以降は、変数flagの値に応じて処理が異なる。変数flagはCLRおよびSETの2値データを保持する。初期状態では、flag=CLRである。
ステップS309で、制御部30は、変数flagがCLRであるか否か、および、所定の閉塞判定周期(たとえば、10〜30分)が経過したか否かを判断する。両条件とも満たされる場合は(ステップS309でTRUE)、ステップS310へ進む。この場合、閉塞判定周期が経過したか否かの判断に用いるタイマーがリセットされる。いずれか一方の条件が満足されない場合(ステップS309でFALSE)、処理はステップS312に進む。
ステップS310で、制御部30は、温度センサ6Aで検出される現在の室外熱交換器1の入口温度(Tcon_buff)を取得する。
次のステップS311で、制御部30は、膨張弁2の開度を開方向に所定のステップ数Saddだけ変化させる。さらに、制御部30は、変数flagをSETにする。
次のステップS312で、制御部30は、変数flagがSETであるか否か、および、所定の温度変化待ち時間(たとえば、30〜60秒)が経過したか否かを判定する。両条件とも満たされる場合は(ステップS312でTRUE)、ステップS313へ進む。この場合、温度変化待ち時間が経過したか否かの判断に用いるタイマーがリセットされる。いずれか一方の条件が満足されない場合(ステップS312でFALSE)、処理はステップS301に進む。
次のステップS313で、制御部30は、ステップS311で膨張弁2の開度を開方向に所定のステップ数Saddだけ変化させた効果を確認するために再度室外熱交換器1の入口温度(Tcon_now)を取得する。さらに、制御部30は、変数flagにCLRを代入する。
次のステップS314で、制御部30は、膨張弁開度を一時的に増加させた前の室外熱交換器1の入口温度Tcon_buffと一時的に開度を増加させて温度変化待ち時間が経過した後の室外熱交換器1の温度Tcon_nowとの温度差を算出する。そして、制御部30は、算出した温度差(Tcon_buff−Tcon_now)と所定の基準温度差Tcloseとを比較し、算出した温度差が基準温度差Tcloseよりも小さい場合には(ステップS314でTRUE)、膨張弁2が閉塞状態ではないと判定し膨張弁2の開度を一時的に増加させた分Saddだけ減算し元に戻す。制御部30は、算出した温度差が基準温度差Tcloseよりも大きい場合には(ステップS314でFALSE)、膨張弁2は閉塞状態であると判定し、膨張弁2の開度をステップ数Sadd増加させたままにしておく。この後、処理はステップS301に戻り、上記のステップS301〜S315が繰返される。これによって、安定した熱サイクルの状態で空気調和機の運転を続けることが可能となる。
実施の形態3による膨張弁の開度制御方法は、実施の形態1,2と組合わせることができる。具体的には、図11のステップS301〜S306を、図8のステップS101〜S108に置き換えることができる。図11のステップS301〜S306は、図10のステップS201〜S209にも置き換えることもできる。
<まとめ>
上記の各実施の形態による空気調和機では、蒸発器の入口および蒸発器の出口(または圧縮機吸入側)にサーミスタなどの温度センサを設置せずに、空気調和機の保護制御用として圧縮機出口、凝縮器、および蒸発器に通常設置されている温度センサ(サーミスタ)のみを利用して、冷媒温度を検出して過熱度を算出することで膨張弁を制御する。これによって、安価な空気調和機を提供することができる。
実施の形態1の空気調和機では、膨張弁の開度が変化してから圧縮機の吐出温度が変化するまでのタイムラグを考慮して、過熱度を算出するための吐出温度として、数秒から数分先の予測吐出温度が使用される。さらに、吐出温度の変化勾配の絶対値が基準値よりも大きい場合(すなわち、予測吐出温度と現在の吐出温度との差の絶対値が基準値よりも大きい場合)には、吐出温度のハンチングを防ぐために、過熱度を目標値に一致させるフィードバック制御を行わないようにして吐出温度が安定するのを待つ。これによって、吐出温度差(過熱度)と目標値とのずれを抑制して、吐出温度差を安定に目標値に到達させる。
実施の形態2の空気調和機では、膨張弁の閉塞状態を回避する制御が行われる。暖房運転時に、膨張弁が閉塞状態に近い場合には、吐出温度が外気温よりもかなり低下し、吐出温度の変化が遅くなり、膨張弁が閉じる方向に制御し続けてしまうおそれがある。この点を考慮して、膨張弁が閉塞する状態に近いかどうかが蒸発器の入口温度に基づいて判定され、閉塞状態に近い場合には、膨張弁の開度をこれ以上閉じる方向に変化しないように制御する。これによって、安定した熱サイクル状態で空気調和機の運転を続けることができる。
実施の形態3の空気調和機では、暖房運転時に膨張弁の閉塞状態を検出するために、膨張弁の開度が所定の基準開度以下の場合には、所定の判定周期ごとに膨張弁の開度を試験的に所定の増加量だけ増加させる。この開度を増加させる前後の室外熱交換器(蒸発器)の入口温度の変化量を検出することによって、膨張弁の閉塞状態を判定し素早く閉塞状態を回避することができる。実施の形態3による空気調和機の場合には、たとえ膨張弁が閉塞状態となってしまっても、閉塞状態を判定することができる。したがって、より安定した熱サイクル状態で空気調和機の運転を続けることが可能となる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 室外熱交換器、2 膨張弁、3 室内熱交換器、4 四方弁、5 圧縮機、6,6A 温度センサ(室外熱交換器用)、7 温度センサ(圧縮機出口用)、8 温度センサ(室内熱交換器用)、30 制御部。

Claims (12)

  1. 冷媒を圧縮する圧縮機と、
    前記圧縮機から吐出された前記冷媒を凝縮させる凝縮器と、
    前記凝縮器を通過した前記冷媒を膨張させる膨張弁と、
    前記膨張弁を通過した前記冷媒を蒸発させ、蒸発した前記冷媒を前記圧縮機の入口に供給する蒸発器と、
    前記圧縮機の出口での前記冷媒の温度を吐出温度として検出する第1の温度センサと、
    前記凝縮器の温度を検出する第2の温度センサと、
    前記膨張弁の開度を制御する制御部とを備え、
    前記制御部は、現在までの複数の時点で検出された前記圧縮機の吐出温度を外挿することによって未来の予測吐出温度を算出し、前記算出した予測吐出温度と前記凝縮器の現在の温度との温度差を過熱度として算出し、前記算出した過熱度に基づいて前記膨張弁の開度を設定する、空気調和機。
  2. 前記制御部は、所定の制御周期ごとに検出された前記圧縮機の吐出温度および前記凝縮器の温度に基づいて前記膨張弁の開度を制御し、
    前記制御部は、前記圧縮機の現在の吐出温度と現在よりも前記制御周期だけ前の吐出温度との差、または前記算出した予測吐出温度と前記圧縮機の現在の吐出温度との差を吐出温度変化量として算出し、
    前記制御部は、前記算出した吐出温度変化量の絶対値が所定の基準値以下の場合に前記算出した過熱度が目標の過熱度に等しくなるように前記膨張弁の開度を現在の設定値から変更し、前記算出した吐出温度変化量の絶対値が前記所定の基準値を超える場合に前記膨張弁の開度を現在の設定値のまま変更しない、請求項1に記載の空気調和機。
  3. 前記制御部は、前記目標の過熱度を、前記圧縮機の現在の回転数に基づいて算出する、請求項2に記載の空気調和機。
  4. 前記制御部は、前記圧縮機の現在の吐出温度と現在よりも前記制御周期だけ前の吐出温度とを用いた直線外挿によって未来の予測吐出温度を算出する、請求項1に記載の空気調和機。
  5. 前記蒸発器の入口温度を検出する第3の温度センサをさらに備え、
    前記制御部は、前記蒸発器の周囲の空気温度と、前記第3の温度センサによって検出された前記蒸発器の現在の入口温度との温度差を、周囲温度差として算出し、
    前記制御部は、前記算出した過熱度が目標の過熱度に等しくなるように前記膨張弁の開度をフィードバック制御するために、前記膨張弁の開度を現在の設定値から変化させる変化量を算出し、
    前記制御部は、前記算出した変化量が正の場合、または、前記算出した変化量が負の場合でありかつ前記算出した周囲温度差が所定の周囲温度差より小さい場合に、前記膨張弁の開度を現在の設定値から前記算出した変化量だけ変化させた新たな設定値に変更する、請求項1に記載の空気調和機。
  6. 前記蒸発器の入口温度を検出する第3の温度センサをさらに備え、
    前記制御部は、所定の判定周期ごとに前記膨張弁の現在の開度が所定の開度よりも小さいか否かを判定し、
    前記制御部は、前記膨張弁の現在の開度が前記所定の開度より小さい場合には、前記膨張弁の開度を現在の設定値から所定の増加量だけ試験的に増加させ、
    前記制御部は、前記試験的に増加させた前後において前記第3の温度センサによって検出された前記蒸発器の入口温度が所定温度以上に変化した場合には、前記膨張弁の開度を現在の設定値よりも増加させた新たな設定値に変更する、請求項1に記載の空気調和機。
  7. 前記凝縮器は、前記冷媒と室内の空気との熱交換を行なう室内熱交換器として用いられ、
    前記蒸発器は、前記冷媒と室外の空気との熱交換を行なう室外熱交換器として用いられる、請求項5または6に記載の空気調和機。
  8. 冷媒を圧縮する圧縮機と、
    前記圧縮機から吐出された前記冷媒を凝縮させる凝縮器と、
    前記凝縮器を通過した前記冷媒を膨張させる膨張弁と、
    前記膨張弁を通過した前記冷媒を蒸発させ、蒸発した前記冷媒を前記圧縮機の入口に供給する蒸発器と、
    前記圧縮機の出口での前記冷媒の温度を吐出温度として検出する第1の温度センサと、
    前記凝縮器の温度を検出する第2の温度センサと、
    所定の制御周期ごとに検出された前記圧縮機の吐出温度および前記凝縮器の温度に基づいて前記膨張弁の開度を制御する制御部とを備え、
    前記制御部は、前記圧縮機の現在の吐出温度と前記凝縮器の現在の温度との温度差を過熱度として算出し、
    前記制御部は、前記圧縮機の現在の吐出温度と現在よりも前記制御周期だけ前の吐出温度との差を吐出温度変化量として算出し、
    前記制御部は、前記算出した吐出温度変化量の絶対値が所定の基準値以下の場合に前記算出した過熱度が目標の過熱度に等しくなるように前記膨張弁の開度を現在の設定値から変更し、前記算出した吐出温度変化量が前記所定の基準値を超える場合に前記膨張弁の開度を現在の設定値のまま変更しない、空気調和機。
  9. 冷媒を圧縮する圧縮機と、
    前記圧縮機から吐出された前記冷媒を凝縮させる凝縮器と、
    前記凝縮器を通過した前記冷媒を膨張させる膨張弁と、
    前記膨張弁を通過した前記冷媒を蒸発させ、蒸発した前記冷媒を前記圧縮機の入口に供給する蒸発器と、
    前記圧縮機の出口での前記冷媒の温度を吐出温度として検出する第1の温度センサと、
    前記凝縮器の温度を検出する第2の温度センサと、
    前記蒸発器の入口温度を検出する第3の温度センサと、
    前記膨張弁の開度を制御する制御部とを備え、
    前記制御部は、前記圧縮機の吐出温度と前記凝縮器の温度との温度差を過熱度として算出し、
    前記制御部は、前記蒸発器の周囲の空気温度と前記蒸発器の入口温度との温度差を、周囲温度差として算出し、
    前記制御部は、前記算出した過熱度が目標の過熱度に等しくなるように前記膨張弁の開度をフィードバック制御するために、前記膨張弁の開度を現在の設定値から変化させる変化量を算出し、
    前記制御部は、前記算出した変化量が正の場合、または、前記算出した変化量が負の場合でありかつ前記算出した周囲温度差が所定の周囲温度差より小さい場合に、前記膨張弁の開度を現在の設定値から前記算出した変化量だけ変化させた新たな設定値に変更する、空気調和機。
  10. 冷媒を圧縮する圧縮機と、
    前記圧縮機から吐出された前記冷媒を凝縮させる凝縮器と、
    前記凝縮器を通過した前記冷媒を膨張させる膨張弁と、
    前記膨張弁を通過した前記冷媒を蒸発させ、蒸発した前記冷媒を前記圧縮機の入口に供給する蒸発器と、
    前記圧縮機の出口での前記冷媒の温度を吐出温度として検出する第1の温度センサと、
    前記凝縮器の温度を検出する第2の温度センサと、
    前記蒸発器の入口温度を検出する第3の温度センサと、
    前記膨張弁の開度を制御する制御部とを備え、
    前記制御部は、前記圧縮機の吐出温度と前記凝縮器の温度との温度差を過熱度として算出し、前記算出した過熱度に基づいて前記膨張弁の開度を設定し、
    前記制御部は、所定の判定周期ごとに前記膨張弁の現在の開度が所定の開度よりも小さいか否かを判定し、
    前記制御部は、前記膨張弁の現在の開度が前記所定の開度より小さい場合には、前記膨張弁の開度を現在の設定値から所定の増加量だけ試験的に増加させ、
    前記制御部は、前記試験的に増加させた前後において前記第3の温度センサによって検出された前記蒸発器の入口温度が所定温度以上に変化した場合には、前記膨張弁の開度を現在の設定値よりも増加させた新たな設定値に変更する、空気調和機。
  11. 圧縮機の吐出温度を検出する第1の温度センサと、凝縮器の温度を検出する第2の温度センサとを有する空気調和機において、膨張弁の開度を制御する方法であって、
    現在までの複数の時点で検出された前記圧縮機の吐出温度を外挿することによって未来の予測吐出温度を算出するステップと、
    前記算出した予測吐出温度と検出された前記凝縮器の現在の温度との温度差を過熱度として算出するステップと、
    前記算出した過熱度に基づいて前記膨張弁の開度を設定するステップとを備える、膨張弁の開度制御方法。
  12. 圧縮機の吐出温度を検出する第1の温度センサと、凝縮器の温度を検出する第2の温度センサとを有する空気調和機において、膨張弁の開度を制御するプログラムであって、
    現在までの複数の時点で検出された前記圧縮機の吐出温度を外挿することによって未来の予測吐出温度を算出するステップと、
    前記算出した予測吐出温度と検出された前記凝縮器の現在の温度との温度差を過熱度として算出するステップと、
    前記算出した過熱度に基づいて前記膨張弁の開度を設定するステップとをコンピュータに実行させるための膨張弁の開度制御プログラム。
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