JP2010275348A - 難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品 - Google Patents

難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】高度な難燃性、および良好な物性を有する難燃性ポリ乳酸樹脂組成物およびそれからの成形品を提供する。
【解決手段】(A)ポリ乳酸および/または乳酸共重合体(A成分)100重量部に対して、(B)特定のホスホナート系有機リン化合物(B成分)10〜50重量部、(C)水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(C成分)5〜20重量部、および(D)タルク(D成分)1〜10重量部を含有する難燃性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、高度な難燃性、および良好な物性を有する難燃性ポリ乳酸樹脂組成物およびそれからの成形品に関する。さらに詳しくは特定の有機リン化合物を含有しかつ実質的にハロゲンフリーの難燃性ポリ乳酸樹脂組成物およびそれからの成形品に関する。
樹脂製の成形品を得るための原料として、一般的にポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル―ブタジエン―スチレン(ABS)、ポリアミド(PA6、PA66)、ポリエステル(PET、PBT)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂が使用されている。しかしながら、これらの樹脂は石油資源から得られる原料を用いて製造されており、近年、石油資源の枯渇や地球環境等の問題が懸念されており、植物などの生物起源物質から得られる原料を用いた樹脂の製造が求められている。特に地球環境の問題を考えるとき、植物由来原料を用いた樹脂は、使用後に焼却されても植物の生育時に吸収した二酸化炭素量を考慮すると、炭素の収支として中立であるというカーボンニュートラルという考えから、地球環境への負荷の低い樹脂であると考えられる。
一方、これらの植物由来原料を用いた樹脂を工業材料、特に電気/電子関係用部品、OA関連用部品または自動車部品に利用する場合、安全上の問題から難燃性の付与が必要である。
これまでにも、植物由来原料を用いた樹脂、特にポリ乳酸樹脂の難燃化に関しては種々の試みがなされており、ある程度の難燃化は達成されている(特許文献1〜6)。しかしながら、これらの難燃化処方は多量の難燃剤を用いたものであり、樹脂本来の物性を損なうものであった。
特開2001−164014号公報 特開2004−277552号公報 特開2005−023260号公報 特開2005−139441号公報 特開2007−246730号公報 特開2008−019294号公報
本発明の第1の目的は、高度な難燃性、および良好な物性を有する難燃性ポリ乳酸樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
本発明の第2の目的は、特定の有機リン化合物を含有しかつ実質的にハロゲンフリーの難燃性ポリ乳酸樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
本発明者らの研究によれば、前記本発明の目的は、
(A)ポリ乳酸および/または乳酸共重合体(A成分)100重量部に対して、
(B)下記式(1)で表される有機リン化合物(B成分)10〜50重量部、
(C)水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(C成分)5〜20重量部、および
(D)タルク(D成分)1〜10重量部
を含有する難燃性ポリ乳酸樹脂組成物およびそれからの成形品により達成される。
Figure 2010275348
(式中、フェニル基は置換基を有してもよい。)
本発明によれば、樹脂本来の特性を損なうことなく、高い難燃性を達成する難燃性ポリ乳酸樹脂組成物が得られる。
本発明の難燃性ポリ乳酸樹脂組成物およびそれから形成された成形品は、従来のポリ乳酸樹脂組成物に比べて下記の利点が得られる。
(i)実質的にハロゲン含有難燃剤を使用することなく高度な難燃性を有するポリ乳酸樹脂組成物が得られる。
(ii)難燃剤としての有機リン化合物は、ポリ乳酸樹脂に対して優れた難燃効果を有するので、比較的少ない使用量でもV−2レベルが、好適条件下ではV−0レベルが達成される。
(iii)難燃剤として使用する有機リン化合物の構造並びに特性に起因して、ポリ乳酸樹脂の成形時または成形品の使用時に、ポリ乳酸樹脂の熱劣化をほとんど起さず、熱安定性に優れた樹脂組成物が得られる。従って難燃性、機械的強度および熱安定性がいずれもバランスよく優れた組成物が得られる。
以下本発明の難燃性ポリ乳酸樹脂組成物についてさらに詳細に説明する。
本発明において樹脂成分であるポリ乳酸および/または乳酸共重合体(A成分)の中で、ポリ乳酸はL−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸またはそれらの混合物、またはL−乳酸の環状2量体であるL−ラクタイド、D−乳酸の環状2量体であるD−ラクタイド、L−乳酸とD−乳酸からの環状2量体であるメソ−ラクタイドまたはそれらの混合物を用いた重合体を挙げることができる。
本発明に使用する乳酸系樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではないが、一般に公知の溶融重合法、或いは、更に固相重合法を併用して製造される。具体例としては、米国特許第1,995,970号、米国特許第2,362,511号、米国特許第2,683,136号に開示されており、通常ラクタイドと呼ばれる乳酸の環状二量体から開環重合により合成される。米国特許第2,758,987号では、乳酸の環状2量体(ラクタイド)を溶融重合する開環重合法が開示されている。
また、本発明において樹脂成分であるポリ乳酸および/または乳酸類とその他のヒドロキシカルボン酸との共重合体(A成分)の中で、乳酸共重合体は、乳酸類を主原料とする共重合体であり、例えば、乳酸―ヒドロキシカルボン酸共重合体や乳酸―脂肪族多価アルコール―脂肪族多塩基酸共重合体などを挙げることができる。
本発明で使用される乳酸共重合体に用いられるヒドロキシカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ青草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられ、単独或いは2種以上の混合物として使用することができる。さらにヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えばグリコール酸の二量体であるグリコライドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンを使用することもできる。
脂肪族多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、
ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオールが挙げられ、単独或いは2種以上の混合物として使用することができる。
脂肪族多塩基酸の具体例としては、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族二塩基酸が挙げられ、単独或いは2種以上の混合物として使用することができる。
ヒドロキシカルボン酸の共重合体は通常ラクタイドとヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体から開環重合により合成され、その製造法に関しては米国特許第3,635,956号、米国特許第3,797,499号に開示されている。米国特許第5,310,865号には、乳酸または乳酸とヒドロキシカルボン酸の混合物を原料として、直接脱水重縮合を行う方法が開示されている。また、米国特許第4,057,537号には、乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状2量体、例えばラクタイドやグリコライドとε−カプロラクトンを触媒の存在下、溶融重合する開環重合法が開示されている。開環重合によらず直接脱水重縮合により乳酸系樹脂を製造する場合には、乳酸類と必要に応じて他のヒドロキシカルボン酸を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより、本発明に適した重合度の乳酸系樹脂が得られる。
また、米国特許第5,428,126号には、乳酸、脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸の混合物を直接脱水縮合する方法が開示されている。また、欧州特許公報第0712880A2号には、ポリ乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸とのポリマーを有機溶媒存在下で縮合する方法が開示されている。
本発明において、乳酸系樹脂の製造に際し、適当な分子量調節剤、分岐剤、その他の改質剤などの添加は差し支えない。
本発明においては乳酸類のみの重合体であるポリ乳酸が好適に用いられ、とりわけL−乳酸を主原料とするポリL−乳酸樹脂が好ましい。また、通常L−乳酸は光学異性体であるD−乳酸を含有しており、その含有量は15重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。光学異性体を多く含む場合はポリ乳酸の結晶性が低減され、結果として得られるポリ乳酸樹脂組成物はより柔軟になる。柔軟性を得たい成形体に対しては好適に利用されるが、耐熱性を要求される組成物に対しては好ましくない。
本発明において、B成分として使用する有機リン化合物は、下記式(1)で表される。
Figure 2010275348
(式中、フェニル基は置換基を有してもよい。)
上記式(1)中のフェニル基は、芳香族環上の炭素原子を介してメチレン基に結合している部分以外のどの部分に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
前記式(1)で表される有機リン化合物(B成分)は、当該樹脂に対して極めて優れた難燃効果を発現する。本発明者らが知る限り、従来当該樹脂のハロゲンフリーによる難燃化において、少量の難燃剤での難燃化は困難であり、実用上多くの問題点があった。
ところが本発明によれば、前記有機リン化合物(B成分)は驚くべきことにそれ自体単独の少量使用により当該樹脂の難燃化が容易に達成され、樹脂本来の特性を損なうことが無い。
しかし本発明ではB成分の他に、B成分以外のリン化合物、フッ素含有樹脂または他の添加剤を、B成分の使用割合の低減、成形品の難燃性の改善、成形品の物理的性質の改良、成形品の化学的性質の向上またはその他の目的のために当然配合することができる。
次に本発明における前記有機リン化合物(B成分)の合成法について説明する。B成分は、以下に説明する方法以外の方法によって製造されたものであってもよい。
B成分は例えばペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、続いて酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属化合物により処理し、次いでアラルキルハライドを反応させることにより得られる。
また、ペンタエリスリトールにアラルキルホスホン酸ジクロリドを反応させる方法や、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させることによって得られた化合物にアラルキルアルコールを反応させ、次いで高温でArbuzov転移を行う方法により得ることもできる。後者の反応は、例えば米国特許第3,141,032号明細書、特開昭54−157156号公報、特開昭53−39698号公報に開示されている。
本発明において使用されるB成分は、これら合成法のみならず、その改変およびその他の合成法で合成されたものであってもよい。より具体的な合成法は後述する調製例に説明される。
前述したB成分は、その酸価が0.7mgKOH/g以下、好ましくは0.5mgKOH/g以下であるものが使用される。酸価がこの範囲のB成分を使用することにより、難燃性および色相に優れた成形品が得られ、かつ熱安定性の良好な成形品が得られる。B成分は、その酸価が0.4mgKOH/g以下のものが最も好ましい。ここで酸価とは、サンプル(B成分)1g中の酸成分を中和するのに必要なKOHの量(mg)を意味する。
さらに、B成分は、そのHPLC純度が、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%であるものが使用される。かかる高純度のものは成形品の難燃性、色相、および熱安定性に優れ好ましい。ここでB成分のHPLC純度の測定は、以下の方法を用いることにより効果的に測定が可能となる。
カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。溶媒としてはアセトニトリルと水の6:4(容量比)の混合溶液を用い、5μlを注入した。検出器はUV−260nmを用いた。
B成分中の不純物を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、水、メタノール等の溶剤でリパルプ洗浄(溶剤で洗浄、ろ過を数回繰り返す)を行う方法が最も効果的で、且つコスト的にも有利である。
前記B成分は、樹脂成分(A成分)100重量部に対して10〜50重量部、好ましくは10〜40重量部、より好ましくは15〜35重量部の範囲で配合される。B成分の配合割合は、所望する難燃性レベル、樹脂成分(A成分)の種類などによりその好適範囲が決定される。これら組成物を構成するA成分およびB成分以外であっても必要に応じて他の成分を本発明の目的を損なわない限り使用することができ、他の難燃剤、難燃助剤、フッ素含有樹脂の使用によってもB成分の配合量を変えることができ、多くの場合、これらの使用によりB成分の配合割合を低減することができる。
本発明においてC成分として使用する水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーは、共役ジエンを繰り返し単位に含む重合体を水素化し三元共重合体である。本発明の水素化される共役ジエンを繰り返し単位に含む重合体の重合方法としては特に限定されることはなく、アニオン重合法、カチオン重合法、遊離基重合法、配位重合法、溶液重合法、乳化重合法等の従来技術を用いて製造したものを用いることができる。
本発明で好適に使用でされる共役ジエンを繰り返し単位に含む重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソペンタジエン共重合体等を挙げることができ、好ましくは、スチレン−ブタジエン共重合体である。
本発明で使用される水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの水素添加方法としては、特に限定されることはなく、具体例としては、特開2007−301449号公報に開示されるような先行技術に基づいて実施することができる。
本発明においてC成分として使用する水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体を水素化したスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン三元共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン共重合体を水素化したスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン三元共重合体(SEPS)、スチレン−イソペンタジエン共重合体を水素化したスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン三元共重合体(SEEPS)等が挙げられ、好ましくはスチレン−ブタジエン共重合体を水素化したスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン三元共重合体(SEBS)である。
本発明におけるC成分の水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーは、A成分100重量部に対して、5〜20重量部であり、好ましくは5〜15重量部である。
本発明においてD成分として使用するタルクは、特に限定されるものではなく、通常市販のタルクを用いることができる。上記タルクの好適例としては500〜1000メッシュの粒径を有するタルクが挙げられ、特に好ましくは600〜900メッシュの粒径を有するタルクである。
前記タルク(D成分)の配合割合は、前記樹脂成分(A成分)100重量部に対して、1〜10重量部であり、好ましくは2〜8重量部である。
本発明の難燃性樹脂組成物の調製は、ポリ乳酸および/または乳酸共重合体(A成分)、有機リン化合物(B成分)、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(C成分)、タルク(D成分)および必要に応じてその他成分を、V型ブレンダー、スーパーミキサー、スーパーフローター、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて予備混合し、かかる予備混合物は混練機に供給し、溶融混合する方法が好ましく採用される。混練機としては、種々の溶融混合機、例えばニーダー、単軸または二軸押出機などが使用でき、なかでも二軸押出機を用いて樹脂組成物を180〜220℃、好ましくは180〜200℃の温度で溶融して、サイドフィーダーにより液体成分を注入し、押出し、ペレタイザーによりペレット化する方法が好ましく使用される。
本発明の難燃性樹脂組成物は、実質的にハロゲンを含有せず、非常に高い難燃性能を有し、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品、機械・機構部品、化粧品容器などの種々の成形品を成形する材料として有用である。具体的には、ブレーカー部品、スイッチ部品、モーター部品、イグニッションコイルケース、電源プラグ、電源コンセント、コイルボビン、コネクター、リレーケース、ヒューズケース、フライバクトランス部品、フォーカスブロック部品、ディストリビューターキャップ、ハーネスコネクターなどに好適に用いることができる。さらに、薄肉化の進むハウジング、ケーシングまたはシャーシ、例えば、電子・電気製品(例えば電話機、パソコン、プリンター、ファックス、コピー機、テレビ、ビデオデッキ、オーディオ機器などの家電・OA機器またはそれらの部品など)のハウジング、ケーシングまたはシャーシに有用である。特に優れた耐熱性、難燃性が要求されるプリンターの筐体、定着ユニット部品、ファックスなど家電・OA製品の機械・機構部品などとしても有用である。
成形方法としては射出成形、ブロー成形、プレス成形等、特に限定されるものではないが、好ましくはペレット状の樹脂組成物を射出成形機を用いて、射出成形することにより製造される。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、評価は下記の方法で行った。
(1)難燃性(UL−94評価)
難燃性は厚さ1/16インチ(1.6mm)のテストピースを用い、難燃性の評価尺度として、米国UL規格のUL−94に規定されている垂直燃焼試験に準じて評価を行った。
UL−94垂直燃焼試験は、試験片5本を一組の試験として行い、どの試験片も10秒間の着炎を2回繰り返す。但し、一度目の着炎で全焼する試験片に関しては、その限りではない。1回目の着炎後、炎を取り去った後の燃焼時間を測定し、消炎後、2回目の着炎を行う。2回目の着炎後、炎を取り去った後の燃焼時間を測定する。5本一組の試験で、計10回の燃焼時間が測定でき、いずれの燃焼時間も10秒以内で消火し、10回の燃焼時間の合計が50秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこさないものがV−0、いずれの燃焼時間も30秒以内で消火し、10回の燃焼時間の合計が250秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこさないものがV−1、いずれの燃焼時間も30秒以内で消火し、10回の燃焼時間の合計が250秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこすものがV−2、この評価基準以下のものをnotVとした。
(2)衝撃強度
ASTM D256に準拠して測定を実施した。
(3)荷重たわみ温度(HDT)
ASTM D648に準拠して測定を実施した。
(4)有機リン化合物の酸価
JIS−K−3504に準拠して測定を実施した。
(5)有機リン化合物のHPLC純度
試料をアセトニトリルと水の6:4(容量比)の混合溶液に溶解し、その5μlをカラムに注入した。カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。検出器はUV−260nmを用いた。
(6)有機リン化合物の31PNMR純度
核磁気共鳴測定装置(JEOL製、JNM−AL400)により、リン原子の核磁気共鳴を測定し(DMSO−d、162MHz、積算回数3072回)、積分面積比をリン化合物の31PNMR純度とした。
[調製例1]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−1)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9−ジベンジロキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン22.55g(0.055モル)、ベンジルブロマイド19.01g(0.11モル)およびキシレン33.54g(0.32モル)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、還流温度(約130℃)で4時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン20mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン20mLで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール40mLをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール20mLで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶を得た。生成物は質量スペクトル分析、H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析でビスベンジルペンタエリスリトールジホスホネートであることを確認した。収量は20.60g、収率は91%、31PNMR純度は99%であった。また、HPLC純度は99%であった。酸価は0.05mgKOH/gであった。
H−NMR(DMSO−d,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.1−4.5(m,8H),3.5(d,4H)、31P−NMR(DMSO−d,120MHz):δ23.1(S)、融点:257℃
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いた。
(I)ポリ乳酸樹脂(A成分)
市販のポリ乳酸樹脂(Nature Works社製4032D;ポリL−乳酸樹脂)を用いた(以下PLAと称する)。
(II)有機リン化合物(B成分)
(i)調製例1で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(前記式(1)(フェニル基に置換基なし)の有機リン化合物)を用いた(以下FR−1と称する)。
(B成分以外の有機リン化合物)
(ii)1,3−フェニレンビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)フォスフェート](大八化学工業(株)製PX−200)を用いた(以下PX−200と称する)
(III)水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(C成分)
市販のSEBS共重合体(TSRC社製 TAIPOL SEBS3151)を用いた(以下SEBSと称する)。
(IV)充填剤(D成分)
市販のタルク(粒径800メッシュ)を用いた(以下タルクと称する)。
[実施例1〜2および比較例1〜3]
A成分のPLAは50℃で減圧乾燥を24時間以上実施し、その他の成分に関しては、70℃で減圧乾燥を24時間以上実施したものを使用した。
表1記載の各成分を表1記載の量(重量部)でタンブラーにて配合し、35mmφ二軸押出機(L/D=36、回転数250rpm、185〜195℃)を用いてペレット化した。得られたペレットを80℃の熱風乾燥機にて3時間乾燥を行ったのち、乾燥したペレットを射出成形機(型締め力100t)にて成形した。成形板を用いて評価した結果を表1に示した。
Figure 2010275348
本発明の難燃性樹脂組成物は、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品、機械・機構部品、化粧品容器などの種々の成形品を成形する材料として有用である。

Claims (7)

  1. (A)ポリ乳酸および/または乳酸共重合体(A成分)100重量部に対して、(B)下記式(1)で表される有機リン化合物(B成分)10〜50重量部、(C)水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(C成分)5〜20重量部、および(D)タルク(D成分)1〜10重量部を含有する難燃性樹脂組成物。
    Figure 2010275348
    (式中、フェニル基は置換基を有してもよい。)
  2. A成分のポリ乳酸がポリL−乳酸である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
  3. 有機リン化合物(B成分)の酸価が0.7mgKOH/g以下である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
  4. C成分の水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが、水素添加SEBS三元共重合体である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
  5. D成分のタルクが、500〜1000メッシュの粒径を有するタルクである請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
  6. UL−94規格の難燃レベルにおいて、少なくともV−2を達成する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
  7. 請求項1記載の難燃性樹脂組成物より形成された成形品。
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