JP2010274359A - 倣い機構 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】摺動保持部2と可動部3との間に、摺動保持部2と摺動部31の磁力による吸着力と、可動部3の自重及び加圧エアによる静圧とを均衡させることにより静圧空気軸受けを形成する倣い機構1において、可動部3の倣い部32を、摺動部31より密度の大きな物質によって構成することにより、可動部3の回転中心Cと可動部3の重心Gを近づける構成とする。
【選択図】図2
Description
光学式ロータリ・エンコーダは駆動部の回転部に接続される回転軸(中実、中空のいずれでも良い)と、その回転軸と一体で回転するパルス円板と、パルス円板を挟み込む一対の発光・受光素子、そして、この光学素子の駆動・処理回路などから構成される。ここで、パルス円板には、スリット状の穴加工や、マスキング処理、あるいは、所望の透過率が得られるような厚みや表面処理が施されている。これらの処理により発光ダイオード(LED)などの発光素子からの光が、パルス円板を通過して、フォトダイオード(PD)などの受光素子へ入力されることにより回転数(位置)が符号化されることになる。具体的な構成としては、回転軸と回転円板を樹脂で一体成形したものもあるが、金属製或いは樹脂製の回転軸にガラス製の回転円板を接着固定したものが一般的である。
例えば、パルス円板が回転軸に対しずれた姿勢で接着固定された場合、光学素子であるLEDやPDなどにパルス円板が接触し、破壊する可能性がある。また、これらが接触しない場合でも、発光素子のLEDから、パルス円板を通過して受光素子のPDまで十分な光が届かず、所望の精度が得られず、回転位置センサとして利用できないこともある。
通常この工程はパルス円板を保持する倣い機構を、回転軸に押付けることで実現されている。以後、この押付け力を倣い力と呼ぶこととする。
一般的には倣い力が大きい方が、回転軸とパルス円板との接触点での回転モーメントが大きくなるため、倣い精度は向上する。
一方、エンコーダの小型化に伴い、パルス円板の厚みはより薄く、回転軸の直径はより小さく構成されるため、構成部品の剛性は低下する。したがって、小さな倣い力で十分な倣い精度を実現する必要がある。
特許文献2では、構成は非常に簡単に実現できる。弾性変形を利用するため、十分小さな倣い力での倣い動作を実現するためには、構成部材は樹脂・ゴム材となる。ここで、これらの物性は環境によって大きく経年変化するため、十分な信頼性を確保することが困難である。特にゴム材では物性バラツキが大きく、高精度な倣いを実現するためには、構成部材の物性特性を高精度に把握するとともに、物性の差異を寸法などにより吸収する必要がある。また、樹脂・ゴム材の場合には、繰返し荷重により、クリープや疲労強度などに対する経年変化特性に対しても把握する必要がある。しかし、これらの経年変化を定期的に計測することは現実的でなく、定期的な交換にて信頼性を確保する必要があり、コスト増となってしまう。
特許文献3では、球面空気軸受により受動的な倣い動作をする。構成部材を金属製としても実現可能であるため、構成部材の経年変化は十分小さく、高い信頼性が確保可能である。
しかしながらこの装置では、倣い機構の回転部の重心とその回転中心に大きな位置ずれがある。また回転部が傾くと偏荷重も発生する。
重心と回転中心が離れていると動作に大きな倣い力が必要であり、偏荷重が発生するとこれを補正するためのスプリングが必要となって装置が複雑になる。
球面状曲面を有する摺動保持部と、
この摺動保持部の球面状曲面に相対する球面状曲面を有する可動部との間に、磁力による吸着力と、加圧エアの静圧及び可動部の自重との均衡による静圧空気軸受を形成する倣い機構において、
可動部は、球面状曲面を有する摺動部と、倣い基準物に自身の下面を倣わせる倣い部を有し、
球面状曲面の曲率中心は下面上に存在し、
倣い部を構成する物質より比重の軽い物質で摺動部を構成することによって、可動部の重心を曲率中心側に近づけることを特徴とするものである。
球面状曲面を有する摺動保持部と、
この摺動保持部の球面状曲面に相対する球面状曲面を有する可動部との間に、磁力による吸着力と、加圧エアの静圧及び可動部の自重との均衡による静圧空気軸受を形成する倣い機構において、
可動部は、曲面を有する摺動部と、倣い基準物に自身の下面を倣わせる倣い部を有し、
球面状曲面の曲率中心は下面上に存在し、
下面端部にカウンターウェイトを取り付けることにより、曲率中心と可動部の重心を一致させることを特徴とするものである。
可動部は、球面状曲面を有する摺動部と、倣い基準物に自身の下面を倣わせる倣い部を有し、
球面状曲面の曲率中心は下面上に存在し、
倣い部を構成する物質より比重の軽い物質で摺動部を構成することによって、可動部の重心を曲率中心側に近づけることを特徴とするものなので、
偏荷重による影響を極力減らして、小さな倣い力で精度良く倣い基準物に倣うことができる。
可動部は、曲面を有する摺動部と、倣い基準物に自身の下面を倣わせる倣い部を有し、
球面状曲面の曲率中心は下面上に存在し、
下面端部にカウンターウェイトを取り付けることにより、曲率中心と可動部の重心を一致させることを特徴とするものなので、
偏荷重による影響を全く受けずに小さな倣い力で精度良く倣い基準物に倣うことができる。
以下、本発明の実施の形態1による係る倣い機構1を使用してロータリ・エンコーダ(以下単にエンコーダという)の回転軸(倣い基準物)端部にエンコーダのパルス円板(倣い対象物)を倣わせて、これらを精度良く組み立てる手順について図を用いて説明する。
まず、この発明の実施の形態1に係る倣い機構が実現しようとする「倣い」について説明する。
図1(a)に示す倣い機構1は、倣い基準物であるエンコーダの回転軸10に倣い機構1の下面を倣わせるための装置である。回転軸10は回転軸10を含む図示しない筐体を把持具によって把持されているのであるが、把持部の成形精度・加工精度などにより対象ワーク毎に、毎回微妙にずれが生じる。この回転軸10の上面11に図示しないエンコーダのパルス円板を精度良く接着固定するためには、回転軸10が把持固定されている状態で、毎回、回転軸10の上面11の向く方向を精度良く計測する必要がある。
具体的には、図1(a)の状態から倣い機構1を回転軸10に押し当てて、倣い機構1の可動部3を摺動させて、その下面を回転軸10の上面11に倣わせ、図1(b)の状態にする動作が「倣い」である。この状態で回転軸10の上面11の向く方向が計測される。
なお、この「倣い」の過程で動作するのは倣い機構1側であって、回転軸10は常に固定されているものである。
図2は本発明の実施の形態1による倣い機構1の断面を示す図である。実際にはこの倣い機構1がロボット手先などに搭載されるのであるが、説明を簡単にするためその他の部分は省略してある。
第2の構成部分は、摺動保持部2の球面形状部に対応する球面形状部を上部に有する可動部3である。可動部3は、先述の球面形状部を有する摺動部31とその下側に接続した円筒状の倣い部32で構成されている。
可動部3はその摺動部31と摺動保持部2の間に形成する静圧空気軸受(後述)を介して摺動保持部2の球面形状をした下面に沿って回転、摺動し、その姿勢を変化できる。
ここでは回転、摺動というが、実際には殆ど接触しない状態で回転自在に保持できると考えて良い。次に、その構成について説明する。
可動部3の中央穴は十分な太さがあるため、可動部3が姿勢を変化させても摺動保持部2との間の流路が確保されるようになっている。この穴はワークであるエンコーダのパルス円板7を真空引きして吸着するために使用するものである。
一方、摺動保持部2には図示しない磁石を埋め込み、摺動部31の上面近傍には磁性体を埋め込んである。加圧エア供給ポート21に加圧エアが供給されていない時は、磁石の吸引力によって摺動保持部2と可動部3は互いに吸着している。
そして、加圧エア供給ポート21に加圧エアが供給されると、磁石の吸引力が、可動部3の自重と多孔質部材22から放出されるエアの圧力と釣り合って、摺動部31と摺動保持部2の多孔質部材22との間に僅かな空隙を有する静圧空気軸受が構成される。
ここで、静圧空気軸受はほぼ摩擦が0とみなせるため、可動部3は摺動保持部2の球面に添って、非常に小さな力で姿勢を容易に変化できる。
加圧エア供給ポート21からの加圧エアの供給を停止すると、磁石の吸引力で可動部3は摺動保持部2に吸着するのであるが、真空引きポート23から真空引きすることにより、より確実に吸着・固定することが可能となる。
この理由を図3を用いて説明する。
図3は倣い力の作用を示す図である。
この実施の形態の説明の最初に述べたように、「倣い」の過程で、可動部3の下面を回転軸10に押し付けるとき、倣い機構1は略鉛直下向きに回転軸10に押し付けられる。この倣い機構を押し付ける力を倣い力と呼ぶ。この時、可動部3には反作用として略鉛直上向きの力が加えられる。倣い力は可動部3を回転させる倣いモーメントに変化するのであるが、回転軸10と下面33の接触点は倣い動作の進行に伴い移動するため、摩擦力が発生する。この摩擦力により、倣いモーメントと反対の向きに反モーメントが発生し、倣い動作を妨げてしまう。この摩擦力による反モーメントは、回転軸10と下面33の接触点と可動部3の回転中心Cとを結ぶ線分が、倣い力の方向と直行する状態にある時に最小となる。つまり、回転中心Cが、下面33の面上にあれば、接触点の移動に伴う反モーメントを最小にできることを意味する。このように、倣い力を効率よく回転モーメントに転換し、必要な倣い力を最小とするために回転中心Cの位置が下面33上に一致するように設計している。
例えば自転車の車輪がスムーズに回転するように、物体の重心と回転中心が一致するとき、物体に外部から回転力が加えられると、物体は重力の影響を受けずにスムーズに回転し始める。しかし、重心が回転中心から離れれば離れるほど、偏荷重による重力の影響が回転に影響を与える。
図4(a)のGは、可動部3の摺動部31と倣い部32の材質が同じ場合の可動部3の重心位置を示している。ここでは、倣い動作時における重心位置の影響を考慮するため、初期姿勢が略水平状態にて接触後の倣い動作について述べる。
この場合、重心Gが回転中心Cから大きく離れているため、倣い動作が進むと、重心が右側に移動する。そのまま回転すると、これを止めるために大きな力が必要となる。特許文献3に記載の発明において、偏荷重防止のためにコイルスプリングを使用して両側から付勢しているのはこの理由による。
摺動部31と倣い部32の部材を密度が異なる材質で構成し、倣い部32を摺動部31より比重の大きな部材としている。
図4(b)はこのように構成した可動部3と重心Gの位置関係を示している。
前者の場合には密度比を1:7以上、後者の場合には密度比を1:3以上確保することが可能となる。
また、重心Gを回転中心に近づけるために、摺動部31と倣い部32との境界をできるだけ下面33側に近づけて、軽量の摺動部31の領域を多く取っている。
以上により、可動部3の重心Gを、より回転中心Cに接近させて、図4(b)に示す位置とすることができる。これにより偏荷重を軽減し、小さな倣い力で精度良く倣い動作を実現することが可能となる。
なお、回転中心Cと可動部3の重心が一致することが理想であるが、この実施の形態1の構成では一致させることはできない。一致させる構成については実施の形態2で説明する。
倣い機構1は、図2に示す摺動部31と摺動保持部2は磁力によって吸着している。倣い動作開始前に、真空引きポート23から真空引きを行い、摺動部31を摺動保持部2側に確実に保持する。
なお、回転軸10は上方径が大きな段付き形状を示しているが、回転軸10はこの形状に限らないことは言うまでも無い。また、ここでは回転軸10の上面11は回転軸10の中心軸に対して完全に垂直面を形成しているものとする。
図示しないロボットは倣い機構1を下方に降下させ、可動部3の倣い部32の下面33を回転軸10に押し当て、倣い動作を開始する。図6は倣い機構が倣い基準物である回転軸10に接触した瞬間を示している。この時、図2に示す加圧エア供給ポート21には加圧エアが供給されておらず、かつ、真空引きポート23から真空引きしていることから、可動部3は摺動保持部2に確実に固着されている。
このため、倣い機構1と回転軸10の接触時には倣い機構1は接触位置から更に下方に降下することはできない。最初に述べた通り、回転軸10は固定されていて動かないからである。
可動部3と回転軸10との接触を検出すると、真空引きポート23からの真空引きを停止するとともに、加圧エア供給ポート21に加圧エアを供給する。これにより、摺動部31と摺動保持部2との間に先述の静圧空気軸受が形成され、可動部3がフリー状態となる。これにより、倣い機構1は更に下降を始める。
可動部3は接触点を支点とし、Cを回転中心として、その下面33が回転軸10の上面に近づく方向に非常に小さな倣い力で回転しながら倣っていく。(図7)
倣い動作の開始、完了についてのセンサによる検出方法を、図8を用いて具体的に説明する。簡単に説明するため、倣い機構1を固定した平面に倣わせる状況をモデルとして説明する。
図8(a)は、倣い機構1の姿勢と倣い基準物である平面との関係を、状態Aから状態Dとして定義する図である。
図8(b)は、図8(a)の状態A〜状態Cのそれぞれの状態に対応する倣い部32の下面と倣い基準物である平面で構成される直角三角形の形状を示す図である。
図8(c)は、図示しない位置センサで感知した倣い機構1の押込み量(移動量)の変化を示すグラフであり、図8(a)の各状態における倣い機構1の上に示す上下の矢印間の間隔を縦軸に、倣い機構1の状態の変化(経過時間)を横軸としてグラフ化したものである。
図8(d)は、図示しない圧力センサで感知した倣い機構1の状態Aから状態Dにおける倣い力の大きさを示す図である。
状態Aは接触検出時、すなわち、倣い動作開始時の状態である。
倣い機構1が平面に接触すると、可動部3は未だ固定されており、平面は動かないので位置センサによる検出位置の変化が止まる(図8c左端)。これにより倣い機構が平面に接触したことを判断できる。
加圧エアの供給により可動部3がフリーとなると、更に倣い機構1が降下できる。
倣い機構1が完全に平面に倣うと位置センサが検出する押込み量の変化が止まる(同図右端)。これにより、倣いの完了を検知することができる。
倣い機構1が平面に接触したことは圧力センサの倣い力の変化から検知できる。(図8d左端)。接触を検知すると、それまで0であった倣い力を圧力センサが感知する。ここで、図2に示す真空引きポート23からの真空引きを停止するとともに、加圧エア供給ポート21に加圧エアを供給する。これにより、摺動保持部2と摺動部31との間に静圧空気軸受が形成されて可動部3がフリーとなり倣い機構1が再度降下して倣い動作が進み、可動部3が状態B、遂には状態Cとなり倣いが完了する。
倣い動作が完了しても、倣い機構1は降下しようとするので平面に対する押圧力が増加する。この倣い力の増加を圧力センサで検出する。
以上のことから、接触状態、倣い完了状態を共に圧力センサで検知することが可能である。
なお、使用するセンサはいずれか一方でも良いし併用しても良い。
ここでは、下面33上にあって直交する2本のベクトルを取得することになる。
この時同定するのは、下面33の向きだけで良く、絶対的位置は必要ない。
その理由は、次の工程で取得するパルス円板を毎回正確な絶対位置で吸着できないので、絶対的な位置を取得しても結果的に無意味となるからである。
この点について次に説明する。
次に、倣い機構1を、先ほどの回転軸10の上面11に接着する対象物であるパルス円板の図示しない置場へ移動する。
パルス円板の上に倣い機構1を降下させ、図2に示すワーク吸着ポート24からエアを真空引きすることにより、パルス円板を倣い部32の下面33に設けたワーク吸着口34に吸引固定する。
図9は、倣い機構1にてパルス円板7を吸着した状態を示す図である。ここでは、パルス円板7を離れた位置から吸引・吸着するため、倣い機構1の中心軸と、パルス円板7との中心軸は一致しない状態で吸着している。
倣い部32と置場に配置されているパルス円板7とは少々姿勢が異なった状態であっても真空引きによる吸引力により吸着可能である。
低弾性を有する薄い樹脂製パレットにパルス円板7を設置するなどして、この姿勢誤差をできるだけ吸収できるような構造とし、吸着を容易にすることが有効である。
図10に、回転軸10と吸着したパルス円板7の回転中心位置の計測方法を示す。図10(a)は、パルス円板7の中心の計測方法を示す図である。
図10(b)は、回転軸10の上面11の中心位置の計測方法を示す図である。
画像センサ8(視野81)などにより、それぞれを接着するための中心位置を検出する。
パルス円板7については、上方に向けた画像センサ8を用いてパルス円板7の接着面の中心の水平平面上での現在位置を検出する。
回転軸10については、下方に向けた画像センサ8を用いて接着面の中心の水平平面上での現在位置を検出する。
次に、パルス円板7と回転軸10の中心が一致するよう倣い機構を移動してパルス円板7を回転軸10に押し付け固定する。
接着剤として例えばUV硬化型の接着剤を利用すれば、押し付け状態を維持したままUVを照射し姿勢を保持した状態で固着できる。
図11はこのようにして接着したロータリ・エンコーダの最終組立状態を示す図である。
この場合の倣い動作手順を述べる。
まず、一般的な吸着パッドと同様に、ワーク吸着口34からエアを真空引きした状態にてパルス円板7を接触吸着する。次に、摺動保持部2と可動部3の間に加圧エアを供給することにより静圧空気軸受を構成する。
可動部3の姿勢をフリー状態とした後、回転軸10へ倣い機構1を押し付ける。
回転軸10とパルス円板7との接触点回りに倣い動作が進行していき、倣いが実現できる。
真空引きポート23から真空引きをすることにより、可動部の姿勢を固定する。下面33の向きを計測記録して一旦、可動部3を回転軸10から離す。
その後、回転軸10とパルス円板7の中心位置を計測後、上記と同様接着・固定を行う。
また、この実施の形態1では倣い機構1を図示しないロボットなどで動作させる場合について述べたが、倣い基準物である回転軸10側をロボットなどで移動させても、同様の効果が得られる。
また、この実施の形態では、回転軸10の中心と可動部3の回転中心とが近傍に存在する場合を示しているが、接触点が存在する範囲にてこれらを離した方が小さな倣い力にて倣い動作を実現できる。これは、同じ倣い力であれば、距離が離れるほど、距離に比例して発生する倣いモーメントが大きくなる。同様に、ズレによる摩擦力による反モーメントも距離に比例して大きくなり、これらの差分が可動部3に働く倣いモーメントとなる。これより、上記差分は距離の増加に伴い大きくなるため、倣い動作に寄与するモーメントも距離の増加に伴い大きくなる。ここで、倣い動作を実現する倣いモーメントは、接触点の位置に寄らず一定であるため、距離の増加に伴い倣い力を低減することができる。
また、この実施の形態では、回転軸10と可動部3の最初の接触を検出する仕様としたが、初期姿勢がほぼ水平状態となることから、接触前に加圧エアを供給して静圧空気軸受けを実現しても必要となる倣い力の増加は小さいため、最初の接触の検出は必ずしも必要ではない。
ただし、最初の接触を検出できれば、きめ細かな倣い機構1の下降制御ができるという利点がある。
さらに、この実施の形態では、エアーによってパルス円板7を吸引したが、回転軸10が樹脂製でパルス円板7が磁性金属製、あるいは回転軸7と反対側に磁性金属を貼付けた構造であるような場合は、パルス円板7の吸着は磁石でおこなう構成とすれば、より簡単な倣い機構を実現できる。
この発明の実施の形態2における倣い機構は、より小さい倣い力での倣いを実現するために、実施の形態1の倣い機構1に、可動部の重心をさらに下げて、可動部の回転中心と重心を一致させるためのカウンターウェイトを取り付けたものである。
以下、図12を用いて実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
図12は倣い機構101の断面図である。この倣い機構101には、可動部103の倣い部132の下部に保持されて横に張り出し、下方に懸垂するフライホイル形状をしたカウンターウェイト9が取り付けられている。このカウンターウェイト9を取り付けることにより、実施の形態1では不可能であった可動部103の回転中心Cと重心G2とを完全に一致させることが可能となる。
また、回転中心Cと重心G2を一致させることにより、可動部103の初期姿勢を水平に保つことができる。
図12では、フライホイル形状(断面コ字型)のカウンターウェイト9を示しているが、重心位置の条件さえ満足できれば形状に限定はない。また、実施の形態1と異なり、摺動部131と倣い部132との材質が同じでも、カウンターウェイト9により重心位置の条件を満足できる。
また、この実施の形態では、実施の形態1と同様に、回転軸10の中心と可動部3の回転中心とが近傍に存在する場合を示しているが、接触点が存在する範囲にてこれらを離した方が小さな倣い力にて倣い動作を実現できることは、言うまでもないことである。
次に説明する実施の形態3に係る倣い機構201は、より精度の高い倣いを実現するため、実施の形態1の倣い機構1に、エゼクタ効果を利用する機構を追加したものである。
まず、エゼクタ効果を利用した倣い機構の201の利点を図13、14、15を用いて説明する。
図13(b)は、倣い機構201の倣い終了時の姿勢を示す図である。
図14は、倣い動作時の回転軸と倣い部の接点の関係を示す図である。
図14の下面ライン233C1は図13(a)の状態にある倣い機構201の可動部203の下面233を真横から見たレベルを示している。
そして、下面ライン233C2は倣い終了時の可動部203の下面233を真横から見たレベルを示している。C1は、倣い機構201が回転軸10に接触した時の倣い機構201の可動部203の回転中心の位置、そしてC2が倣い動作終了時の可動部203の回転中心の位置であり、それぞれはその時の下面233上にある。
C1が鉛直方向に降下して、C2の位置まで来て可動部203が回転軸10に倣った時、下面233上の最初の接触点A0は、A0’の位置にきている。この移動距離は、A0,C1,C2を頂点とする三角形の底辺と斜辺の長さの差である。
したがって、倣い開始から、倣い終了までの間に回転軸10の左上端は下面233のA0からA1までを摺り動いたことになる。
接触点に摩擦力が掛かっている場合、図15に示すように、小さな倣い力では完全な倣いを実現できない場合がある。上から押し付ける倣い力の増加により、倣いの精度を向上できるが、摩擦力が存在する限りその限界が存在する。
また、小型化に伴う低い剛性の対象物の場合には、倣い力の制限が必ず存在するため、高精度な倣いを実現することが困難な場合がある。
そこで、この実施の形態3では、実施の形態1の倣い機構1に非接触でワークを吸引できるエゼクタ効果の利用を併用し、摩擦力による影響を受けない倣い機構を実現することとした。
図16は倣い機構201の断面図である。
図では、実施の形態1におけるワーク吸着口34に相当する部分が変更されて、非接触吸引部234となっている。
非接触吸引部234は断面が下方に広がるテーパ形状をしており、このテーパ形状の開口部内で倣い部232の内壁に一点で支持され、下側端部に水平方向に張り出したフランジを有する円柱体を備えている。
そして、この噴射気流によって、エゼクタ効果による負圧が非接触吸引部234の真下に発生し、非接触にて対象を吸引することが可能となる。
図17は非接触吸引部234の下面233と回転軸10の上面との間の距離と両者の間に働く力との関係を示す模式図である。
ある平衡距離dcから両者の距離が離れると吸引力が、近づくと反発力が発生する。
なお、非接触吸引部234は、真空引き時には、これまで説明した他の実施の形態での機能と同様に、真空パッドとして接触状態にて対象物を吸引することができる。
実施の形態1と同様に、倣い機構201が倣い基準物である回転軸10に接触すると、圧力センサ等が接触を感知する。ここで、摺動保持部2と可動部203の間に静圧空気軸受を構成して可動部203をフリーとすると同時に、非接触吸引部234に加圧エアを供給してエゼクタ効果を発揮する。すると、接触していた下面233と回転軸10上面とが非接触状態となり、摩擦がほぼ0になる。これより、接触式の倣い機構で問題であった接触点での摩擦力による必要倣い力の増加、および、倣い精度の制約が根本的に解決できる。
回転軸10は固定されているため、エゼクタ効果により発生した圧力分布により、理想的な平衡距離からお互いが離れれば負圧による吸引力が、逆にお互いが近づきすぎれば正圧による反発力が発生する。
可動部203がこの吸引力と反発力の総合作用によるアシストで発生する倣いモーメントにより、小さな倣い力で回転軸10に倣う。
なお、倣いの終了は実施の形態1で使用した位置センサを利用しその変化量の推移から判断でき、その後の処理は実施の形態1と同様である。
なお、この実施の形態では、先に可動部203の下面233を回転軸10の上面に倣わせる手順について述べたが、パルス円板7を先に非接触吸引部234に吸着しておいて、これが回転軸10に接触した時点で加圧エアを供給し、エゼクタ効果を発揮しても良い。
この場合は、パルス円板7と下面233の間が非接触となり、小さな倣い力で同様の倣いを実現できる。
また、実施の形態2で使用したカウンターウェイトを取り付けることで、回転中心と重心を完全に一致させ、更にスムーズな倣いを実現できる。
さらに、非接触で倣いを実現できるので小さな力で精度良く倣い機構を倣い基準物に倣わせることができる。
22 多孔質部材、23 真空引きポート、24 ワーク吸着ポート、
3,103,203 可動部、31,131,231 摺動部、
32,132,232 倣い部、33,133,233 下面、34 ワーク吸着口、
234 非接触吸引部、235 狭隘部、7 パルス円板、8 画像センサ、
81 視野、9 カウンターウェイト、10 回転軸、11 上面、
C,C1,C2 回転中心、G 重心、233C1,233C2 下面ライン。
Claims (5)
- 球面状曲面を有する摺動保持部と、
この摺動保持部の前記球面状曲面に相対する球面状曲面を有する可動部との間に、磁力による吸着力と、加圧エアの静圧及び前記可動部の自重との均衡による静圧空気軸受を形成する倣い機構において、
前記可動部は、前記球面状曲面を有する摺動部と、倣い基準物に自身の下面を倣わせる倣い部を有し、
前記球面状曲面の曲率中心は前記下面上に存在し、
前記倣い部を構成する物質より比重の軽い物質で前記摺動部を構成することによって、前記可動部の重心を前記曲率中心側に近づけることを特徴とする倣い機構。 - 球面状曲面を有する摺動保持部と、
この摺動保持部の前記球面状曲面に相対する球面状曲面を有する可動部との間に、磁力による吸着力と、加圧エアの静圧及び前記可動部の自重との均衡による静圧空気軸受を形成する倣い機構において、
前記可動部は、前記球面状曲面を有する摺動部と、倣い基準物に自身の下面を倣わせる倣い部を有し、
前記球面状曲面の曲率中心は前記下面上に存在し、
前記下面端部にカウンターウェイトを取り付けることにより、前記曲率中心と前記可動部の重心を一致させることを特徴とする倣い機構。 - 前記カウンターウェイトはリング型であることを特徴とする請求項2に記載の倣い機構。
- 前記倣い部は、倣い対象物を吸引する通気孔を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の倣い機構。
- 前記通気孔は、エゼクタ効果を発揮する狭隘部を介して気体を吸排気することを特徴とする請求項4に記載の倣い機構。
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