JP2010273580A - 1−ケストースの結晶化母液の調製方法 - Google Patents

1−ケストースの結晶化母液の調製方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2010273580A
JP2010273580A JP2009127780A JP2009127780A JP2010273580A JP 2010273580 A JP2010273580 A JP 2010273580A JP 2009127780 A JP2009127780 A JP 2009127780A JP 2009127780 A JP2009127780 A JP 2009127780A JP 2010273580 A JP2010273580 A JP 2010273580A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
kestose
amino acid
fructofuranosidase
solution
substitution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2009127780A
Other languages
English (en)
Inventor
Koichiro Murashima
弘一郎 村島
Masato Tani
匡人 谷
Kimitaka Nakane
公隆 中根
Koji Yanai
耕二 矢内
Kazuyuki Sakamoto
和幸 坂本
Takayoshi Tamura
隆由 田村
Toshibumi Hasegawa
俊文 長谷川
Hiromasa Takahashi
洋匡 高橋
Takeshi Murakami
健 村上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Meiji Seika Kaisha Ltd
Original Assignee
Meiji Seika Kaisha Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Meiji Seika Kaisha Ltd filed Critical Meiji Seika Kaisha Ltd
Priority to JP2009127780A priority Critical patent/JP2010273580A/ja
Publication of JP2010273580A publication Critical patent/JP2010273580A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/52Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts

Landscapes

  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】製造上のコストが掛かる擬似移動層方式クロマト分離を行うことなく、簡便かつ安価に1−ケストースの結晶化母液を調製することができる新規方法を提供することにある。
【解決手段】本発明による1−ケストースの結晶化母液の調製方法は、(1)β−フラクトフラノシダーゼとグルコースオキシターゼとを含む酵素溶液中において、β−フラクトフラノシダーゼをスクロースと接触させて、1−ケストースを生成させ;(2)前記工程(1)の反応により副生するグルコースを、該溶液中でグルコースオキシターゼによりグルコン酸に変換し;(3)生じたグルコン酸を溶液から除去することによって、溶液中の中性糖における1−ケストース純度を70%以上に増大させることを含んでなる方法であって、β−フラクトフラノシダーゼとして、特定のβ−フラクトフラノシダーゼ変異体を使用するものである。
【選択図】なし

Description

発明の背景
発明の分野
本発明は、1−ケストースの結晶化母液の調製方法に関する。詳しくは本発明は、結晶1−ケストースを析出させる結晶化母液を、簡便かつ安価に調製することができる方法に関する。
背景技術
フラクトオリゴ糖(FOS)は、スクロース(GF)に1個以上のフラクトース残基がβ2−1結合により結合されたオリゴ糖類である。例えば、スクロースに1個のフラクトース残基が結合したものが1−ケストース(GF2)、2個結合したものがニストース(GF3)、3個結合したものがフラクトシルニストース(GF4)である。フラクトオリゴ糖は、難う蝕性や、ビフィズス菌増殖促進作用、コレステロールなどの脂質の代謝改善作用、免疫調節作用など様々な生理機能を有することが明らかになっており、機能性の食品素材として産業上極めて有用である。
フラクトオリゴ糖は通常、重合度2〜5のオリゴ糖の混合物として得られる。この混合物は固体化すると非結晶性の粉末となってしまうため、吸湿性が高く、加工適性が悪い。一方、フラクトオリゴ糖から分画して得られる1−ケストースは結晶化できる。結晶1−ケストースは、吸湿性がほとんど無いため、フラクトオリゴ糖の生理機能を保持しつつ優れた加工適性を有するものである。このため、結晶1−ケストースは、キャンディ、錠菓、チョコレート等の機能性甘味料として利用可能であり、フラクトオリゴ糖の混合物よりも産業上有用であると言える。
結晶1−ケストースは、高純度な1−ケストース溶液である結晶化母液から結晶化することによって得ることができる。結晶1−ケストースを得るためには、結晶化母液中の1−ケストースの純度が70%以上であることが好ましいとされている(特公平6−070075号公報(特許文献1))。
1−ケストースは、β−フラクトフラノシダーゼによってスクロースから変換し生成することができる。しかしながら、β−フラクトフラノシダーゼをスクロースと接触させて得られる酵素反応液は、1−ケストース以外に糖類として、通常、未反応のスクロース、副生物としてのグルコース、フラクトース、ニストースを含む。例えば、特公昭63−62184号公報(特許文献2)および特開昭61−268190号公報(特許文献3)に記載の方法によれば、スクロースから1−ケストースへの変換率は最大36〜41%に留まり、このとき、ニストースが11〜23%、フラクトースやグルコースなどの単糖が13〜32%副生し、また未反応のスクロースが11〜23%残存するとされている。
このため、通常、酵素反応液中における糖類中の1−ケストース純度は70%よりも低くくなる。従って、酵素反応液から1−ケストースの結晶化母液を得るためには、スクロース、グルコース、フラクトース、ニストースの全てもしくは一部を除去し、溶液中の1−ケストースの純度を向上させる必要がある。
酵素反応液中の1−ケストース純度を向上させる方法としては、酵素反応液を擬似移動層方式クロマト分離に供して、1−ケストースの純度が向上した画分(すなわち、1−ケストース以外の成分が除去された画分)を集める方法が知られている(特開2000−232878号公報(特許文献4))。しかしながら、擬似移動層方式クロマト分離により1−ケストース以外の糖類を除去する場合、1−ケストースの一部も同時に除去されるため、1−ケストースの純度は向上できるものの、1−ケストースの回収率が低下してしまう。また、1−ケストースの分画液がクロマト分離に用いる溶離液により希釈されてしまうため、濃縮画分より1−ケストースを結晶化するためには、大量の水を蒸発させる必要が生ずる。さらに、擬似移動層方式クロマト分離のための設備は通常、非常に高価である。以上の点から、擬似移動層方式クロマト分離を用いる場合には、結晶化母液の調製にコストがかかり、その結果、結晶1−ケストース自体が高価になってしまう。
このため、擬似移動層方式クロマト分離以外の方法によって、酵素反応液中の1−ケストース純度を向上させる方法が望まれていた。
WO97/21718(特許文献5)は、結晶1−ケストースおよびその製造方法に関するものであり、ここには、1−ケストース純度が80%以上の高純度溶液を使用して、真空晶析または冷却晶析によって高回収率で高晶粒の結晶1−ケストースを得る方法が開示されている。スクロースから1−ケストースを生成するために、アスペルギルス属の微生物から得られるフラクトース転移活性を有する酵素を使用することが開示されており、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ATCC20611株由来の酵素が、1−ケストースの製造に適していることが示唆されている。しかしながら、ここでは、酵素反応液中の1−ケストースの純度を向上させる手段として、擬似移動相クロマト分離が好ましいとされており、他の有効な手段については何ら開示されていない。
擬似移動層方式クロマト分離以外の方法としては、例えば、D. C. Sheuらの文献(Biotechnology Letters 23:2001,p1499-1503(非特許文献1))、および、J. W. Yunらの文献(Journal of Fermentation and Bioengineering 77(2):1994,p159-163(非特許文献2))には、β−フラクトフラノシダーゼとグルコースオキシターゼの酵素の混合系を用いて、フラクトオリゴ糖を高収率で生産する方法が開示されている。これらでは、β−フラクトフラノシダーゼによりスクロースを、1−ケストースを含むフラクトオリゴ糖へ変換させると同時に、その際に副生するグルコースをグルコースオキシターゼによりグルコン酸に変換し、酵素反応後にグルコン酸を選択的に除去している。この内、D. C. Sheuらの文献(非特許文献1)では、β−フラクトフラノシダーゼとして、アルペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)CCRC93007株、またはアスペルギルス・ニガーATCC20611株由来のβ−フラクトフラノシダーゼが使用されており、J. W. Yunらの文献(非特許文献2)では、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)KFCC由来のβ−フラクトフラノシダーゼが使用されている。
しかしながら、これら文献は、1−ケストースを含むフラクトオリゴ糖の高収率での生成に関するものであり、1−ケストースのみを選択的に生成することについては検討されていない。実際、溶液中に生成される1−ケストース純度についてこれら文献中のデータに基づいて算出すると、D. C. Sheuらの文献(非特許文献1)では、アスペルギルス・ジャポニカスCCRC93007株およびアスペルギルス・ニガーATCC20611株由来のβ−フラクトフラノシダーゼを使用した場合には、1−ケストース純度はそれぞれ約65%、約22%に留まる。また、J. W. Yunらの文献(非特許文献2)では、計算すると、1−ケストース純度は約44%に過ぎない。
このため、これら文献の方法に基づいて、1−ケストースの純度が70%以上となる結晶化母液を得ることは困難であると言える。
一方、WO97/34004(特許文献6)およびWO2005/085447(特許文献7)には、1−ケストースを選択的に産生しうる活性を有する、β−フラクトフラノシダーゼ変異体が開示されている。また、ここには、アスペルギルス・ニガー由来のβ−フラクトフラノシダーゼをコードする遺伝子およびそのアミノ酸配列が開示されている。またこれらで開示されているβ−フラクトフラノシダーゼ変異体は、アスペルギルス・ニガーATCC20611株由来のβ−フラクトフラノシダーゼの遺伝子を鋳型として得られたものであることが開示されている。
特公平6−070075号公報 特公昭63−62184号公報 特開昭61−268190号公報 特開2000−232878号公報 国際公開WO97/21718 国際公開WO97/34004 国際公開WO2005/085447
Biotechnology Letters 23:2001,p1499-1503 Journal of Fermentation and Bioengineering 77(2):1994,p159-163
本発明者等は今般、β−フラクトフラノシダーゼとグルコースオキシターゼの酵素の混合系を用いて、スクロースから酵素反応による変換によって1−ケストースを得る一方、副生物であるグルコースをグルコン酸に酵素反応により変換し除去する方法(グルコン酸除去法)に、使用するβ−フラクトフラノシダーゼとして、特定のβ−フラクトフラノシダーゼ変異体を使用することによって、得られる酵素反応液中における1−ケストースの純度を選択的に70%以上(具体的には76%)に高めることに成功した。得られた溶液は、1−ケストースを70%以上の純度で含むため、1−ケストースの結晶化母液として有利に利用できるものである。
前記したように、D. C. Sheuらの文献(非特許文献1)などに開示された従来のグルコン酸除去法では、微生物が産生する天然のβ−フラクトフラノシダーゼを用いて酵素反応を行っており、その結果、得られる反応液の1−ケストースの純度は最大でも65%程度に留まっていた。このため、従来のグルコン酸除去法によっては、1−ケストースの結晶化母液を得ること自体、困難であった。
また前記したように、WO97/21718(特許文献5)には、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ATCC20611株由来の酵素が、1−ケストースの産生に適していることが示唆されていた一方で、β−フラクトフラノシダーゼとグルコースオキシターゼの酵素の混合系を用いる、D. C. Sheuらの文献(非特許文献1)に記載の方法では、アスペルギルス・ニガーATCC20611株由来のβ−フラクトフラノシダーゼを使用した場合には、1−ケストース純度は約22%に留まったことが示されていた。このため、単体のβ−フラクトフラノシダーゼ酵素としては、1−ケストースの産生に適しているものであっても、β−フラクトフラノシダーゼとグルコースオキシターゼの酵素の混合系を用いる方法で、そのようなβ−フラクトフラノシダーゼ酵素を使用した場合には、必ずしも、期待通りに1−ケストースの純度を高めることはできず、むしろ純度が低下する可能性も示唆されていたといえる。
このような状況にあって、β−フラクトフラノシダーゼとして、特定のβ−フラクトフラノシダーゼ変異体を使用することによって、β−フラクトフラノシダーゼとグルコースオキシターゼの酵素の混合系を用いる方法で、1−ケストースの純度を選択的に大幅に高めることができたことは、予想外であり驚くべきことであった。また、かかる方法は、従来の擬似移動層方式クロマト分離を伴う方法に比べて、製造上のコストが安価に済み、また作業もより簡便である。すなわち、1−ケストースの高純度溶液を、安価かつ簡便に得ることができる。
本発明はこれら知見に基づくものである。
よって本発明は、製造上のコストが掛かる擬似移動層方式クロマト分離を行うことなく、簡便かつ安価に1−ケストースの結晶化母液を調製することをその目的とする。
本発明による1−ケストースの結晶化母液の調製方法は、
(1) β−フラクトフラノシダーゼとグルコースオキシターゼとを含む酵素溶液中において、β−フラクトフラノシダーゼをスクロースと接触させて、1−ケストースを生成させ、
(2) 前記工程(1)の反応により副生するグルコースを、該溶液中でグルコースオキシターゼによりグルコン酸に変換し、
(3) 生じたグルコン酸を溶液から除去することによって、溶液中の1−ケストース純度を70%以上に増大させる
ことを含んでなる、1−ケストースの結晶化母液の調製方法であって、
β−フラクトフラノシダーゼとして、フルクトース転移活性を有し、かつ、配列番号2のアミノ酸配列中の1〜11個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列からなる、β−フラクトフラノシダーゼ変異体を使用することを特徴とするものである。
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明による調製方法において、使用するβ−フラクトフラノシダーゼのフルクトース転移活性は、スクロースからの1−ケストースへの変換率が45%以上であり、ニストースへの変換率が10%以下であるものである。
本発明の一つのより好ましい態様によれば、本発明による調製方法において、使用するβ−フラクトフラノシダーゼのフルクトース転移活性が、スクロースからの1−ケストースへの変換率が50%以上であり、ニストースへの変換率が6%以下であるものである。
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、本発明による調製方法において、β−フラクトフラノシダーゼ変異体は、アルペルギルス・ニガーATCC20611株由来のものである。
本発明の別の一つのより好ましい態様によれば、本発明による調製方法において、β−フラクトフラノシダーゼ変異体は、配列番号2のアミノ酸配列中、62、122、128、165、170、221、300、313、386、395、および550番目からなる群より選択されるいずれか1以上のアミノ酸残基において置換が行われたものである。
本発明の別の一つのさらに好ましい態様によれば、本発明による調製方法において、β−フラクトフラノシダーゼ変異体は、配列番号2のアミノ酸配列中、170、300、313、および386番目からなる群より選択されるいずれか1以上のアミノ酸残基において置換が行われたものである。
本発明の別の一つのさらにより好ましい態様によれば、前記置換は、
170番のアミノ酸残基の、トリプトファン、フェニルアラニン、およびチロシンからなる群から選択される芳香族アミノ酸への置換、
300番のアミノ酸残基の、トリプトファン、バリン、グルタミン酸、およびアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸への置換、
313番のアミノ酸残基の、リジン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸への置換、および
386番のアミノ酸残基の、リジン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸への置換
である。
本発明の別の一つの特に好ましい態様によれば、本発明による調製方法において、β−フラクトフラノシダーゼ変異体は、配列番号2のアミノ酸配列において、F170W、G300V、およびH313Kの三重置換が行われたものである。
本発明の一つのさらに好ましい態様によれば、本発明による調製方法は、グルコン酸の溶液からの除去を、電気透析により行うことをさらに含んでなる。
本発明の一つのさらにより好ましい態様によれば、本発明による調製方法において、グルコースオキシターゼは、アスペルギルス・ニガーまたはペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)由来のものである。
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、本発明による調製方法は、グルコースをグルコースオキシターゼによりグルコン酸に変換する反応において、副生される過酸化水素をカタラーゼにより除去することをさらに含んでなる。ここでより好ましくは、カタラーゼは、アスペルギルス・ニガーまたはミクロコッカス・リソデキティカス(Micrococcus lysodeikticus)由来のものである。
本発明による1−ケストースの結晶化母液は、前記した本発明による調製方法により得られるものである。
本発明による結晶1−ケストースは、前記した本発明による結晶化母液から調製されるものである。
本発明によれば、擬似移動層方式クロマト分離を用いることなく、従来技術と比較して安価かつ簡便に1−ケストースの結晶化母液を調製することができる。このため、結晶1−ケストースをより安価に得ることができる。結晶1−ケストースを安価に生産できるとことは、キャンディ、錠菓、チョコレート等の機能性甘味料としてのコスト削減につながることが期待できる。
発明の具体的説明
1−ケストースの結晶化母液の調製方法
本発明による1−ケストースの結晶化母液の調製方法は、前記したように、
(1) β−フラクトフラノシダーゼとグルコースオキシターゼとを含む酵素溶液中において、β−フラクトフラノシダーゼをスクロースと接触させて、1−ケストースを生成させ、
(2) 前記工程(1)の反応により副生するグルコースを、該溶液中でグルコースオキシターゼによりグルコン酸に変換し、
(3) 生じたグルコン酸を溶液から除去することによって、溶液中の1−ケストース純度を70%以上に増大させる
ことを含んでなる、1−ケストースの結晶化母液の調製方法であって、
β−フラクトフラノシダーゼとして、フルクトース転移活性を有し、かつ、配列番号2のアミノ酸配列中の1〜11個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列からなる、β−フラクトフラノシダーゼ変異体を使用することを特徴とするものである。
本発明においては、β−フラクトフラノシダーゼによりスクロースを1−ケストースへ変換させる反応と同時に、副生するグルコースをグルコースオキシターゼによりグルコン酸に変換させながら反応を実施する。そして酵素反応液からグルコン酸を選択的に除去することにより、高純度な(1−ケストース純度70%以上の)1−ケストース結晶化母液を調製することができる。結晶1−ケストースを得るためには、結晶化母液中の1−ケストースの純度は70%以上であることが好ましいことが知られているため、得られる溶液が1−ケストースの結晶化母液として有用であることは明らかであろう。
なお、本発明において1−ケストースの純度とは、特にことわりのない限り、結晶化母液中のグルコン酸以外の糖(中性糖)の総重量に占める1−ケストースの重量比を意味する。例えば、純度70%以上の1−ケストース結晶化母液とは、溶液中のグルコン酸以外の糖の総重量に占める1−ケストースの割合が70%以上であることを意味する。
ここで使用するβ−フラクトフラノシダーゼは、スクロースに接触させた場合の、スクロースから1−ケストースへの変換率が45%以上および/またはニストースへの変換率が10%以下となるようなフルクトース転移活性を有するものが好ましく、より好ましくは、スクロースから1−ケストースへの変換率が45%以上で、かつ、ニストースへの変換率が10%以下となるようなフルクトース転移活性を有するものである。さらに好ましくは、1−ケストースへの変換率が50%以上および/またはニストースへの変換率が6%以下となるようなフルクトース転移活性を有するものであり、さらにより好ましくは、1−ケストースへの変換率が50%以上で、かつ、ニストースへの変換率が6%以下となるようなフルクトース転移活性を有するものである。1−ケストースへの変換率が45%未満であるか、またはニストースへの変換率が10%を越えると、純度70%以上の結晶化母液を得ることが困難となり、また結晶化の妨げとなることがある。
なお、本発明において変換率とは、特に断りのない限り、反応前のスクロースの総重量に対する反応後における特定の糖の割合を意味する。
β−フラクトフラノシダーゼ変異体
本発明の調製方法においては、使用するβ−フラクトフラノシダーゼとして、フルクトース転移活性を有し、かつ、配列番号2のアミノ酸配列中の1〜11個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列からなる、β−フラクトフラノシダーゼ変異体を使用する。ここでアミノ酸残基の置換の数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜4個、さらにより好ましくは1〜3個であり、さらに1または2個であることができる。
本発明の一つの好ましい態様によれば、β−フラクトフラノシダーゼ変異体は、アルペルギルス属に属する微生物由来のものであり、より好ましくは、アルペルギルス・ニガー由来のものであり、さらに好ましくは、アルペルギルス・ニガーATCC20611株由来のものである。されにより好ましくは、例えばWO97/34004に記載されたアルペルギルス・ニガーATCC20611株のβ−フラクトフラノシダーゼ変異体を用いることができる。
またアミノ酸配列における置換の形式としては、好ましくは保存的置換が挙げられる。ここで、「保存的置換」とは、タンパク質の活性を実質的に改変しないように1若しくは複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置き換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
また必要であれば、配列番号2のアミノ酸配列とβ−フラクトフラノシダーゼ変異体のアミノ酸配列との整列は、配列同一性を調べるための分析用ソフトウエアを用いて行うことができる。このようなソフトウエアは周知であり、当業者であれば適宜選択して使用することができる。例えば、BLAST法(Basic local alignment search tool; Altschul, S.F. et al., J.Mol.Biol.,215,403-410(1990))を使用して配列番号2のアミノ酸配列と当該変異体のアミノ酸配列とを整列させて、対応するアミノ酸残基を決定することができる。
また、β−フラクトフラノシダーゼ変異体が、所定のフルクトース転移活性を有するか否かは、例えば、そのアミノ酸配列からなるタンパク質を基質に作用させ、反応産物を検出することにより評価することができ、例えば、後述する実施例に記載の方法に従って評価することができる。
本発明の別の一つのより好ましい態様によれば、β−フラクトフラノシダーゼ変異体は、配列番号2のアミノ酸配列中、62、122、128、165、170、221、300、313、386、395、および550番目からなる群より選択されるいずれか1以上のアミノ酸残基において置換が行われたものである。これらの位置で置換が行われることによって、β−フラクトフラノシダーゼ変異体による1−ケストースの生産が選択的かつより効率的に行うことができる(例えば、WO97/34004およびWO2005/085447を参照)。
これらの置換可能位置における置換は、好ましくは下記の通りである。
62番のアミノ酸残基の、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択される酸性アミノ酸、より好ましくはグルタミン酸、への置換。
122番のアミノ酸残基の、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、およびバリンからなる群から選択されるアミノ酸、より好ましくはメチオニン、への置換。
128番のアミノ酸残基の、アスパラギンおよびグルタミンからなる群から選択されるアミノ酸、より好ましくはアスパラギン、への置換。
165番のアミノ酸残基の、トリプトファン、フェニルアラニン、およびチロシンからなる群から選択される芳香族アミノ酸、より好ましくはフェニルアラニン、への置換。
170番のアミノ酸残基の、トリプトファン、フェニルアラニン、およびチロシンからなる群から選択される芳香族アミノ酸、より好ましくはトリプトファン、への置換。
221番のアミノ酸残基の、トリプトファン、フェニルアラニン、およびチロシンからなる群から選択される芳香族アミノ酸、より好ましくはチロシン、への置換。
300番のアミノ酸残基の、トリプトファン、バリン、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸、より好ましくはバリン、への置換。
313番のアミノ酸残基の、リジン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸、より好ましくはリジンまたはアルギニン、への置換。
386番のアミノ酸残基の、リジン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸、より好ましくはリジン、への置換。
395番のアミノ酸残基の、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、およびバリンからなる群から選択されるアミノ酸、より好ましくはロイシン、への置換。
550番のアミノ酸残基の、セリンおよびスレオニンからなる群から選択されるヒドロキシアミノ酸、より好ましくはセリン、への置換。
本発明の一つのさらに好ましい態様によれば、β−フラクトフラノシダーゼ変異体は、配列番号2のアミノ酸配列中、170、300、313、および386番目からなる群より選択されるいずれか1以上のアミノ酸残基において置換が行われたものである。
本発明の一つのさらにより好ましい態様によれば、前記置換は、
170番のアミノ酸残基の、トリプトファン、フェニルアラニン、およびチロシンからなる群から選択される芳香族アミノ酸への置換、
300番のアミノ酸残基の、トリプトファン、バリン、グルタミン酸、およびアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸への置換、
313番のアミノ酸残基の、リジン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸への置換、および
386番のアミノ酸残基の、リジン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸への置換
である。
本発明の特に好ましい態様によれば、β−フラクトフラノシダーゼ変異体は、配列番号2のアミノ酸配列中、170番目、300番目および313番目のアミノ酸がトリプトファン、トリプトファン、およびリジンに、またはトリプトファン、バリン、およびリジンにそれぞれ置換されたものである。これら変異体は、スクロースより1−ケストースをさらに選択的かつ効率的に生成することができるという有利な性質を有している。
本発明の特に好ましい態様によれば、β−フラクトフラノシダーゼ変異体は、配列番号2のアミノ酸配列において、F170W、G300V、およびH313Kの三重置換(すなわち、F170W+G300V+H313Kの置換)が行われたものである(WO97/34004の実施例D12参照)。
なお、本明細書においては、β−フラクトフラノシダーゼ変異体の記載にあたって、次の命名を用いて参照を容易にする:
原アミノ酸:位置:置換アミノ酸
この命名に従い、例えば170番目のフェニルアラニンをトリプトファンに置換したものは、F170Wとして示される。
また、多数の変異は、+によって分離され、例えば
F170W+G300V+H313K
は、170、300、および313番目のアミノ酸であるフェニルアラニン、グリシン、およびヒスチジンが、それぞれトリプトファン、バリン、およびリジンに置換されていることを示す。
β−フラクトフラノシダーゼ変異体の作製
β−フラクトフラノシダーゼ変異体は、組換えDNA技術、ポリペプチド合成技術などによって作製することができる。組換えDNA技術を用いる場合には、β−フラクトフラノシダーゼをコードするDNA(例えば、配列番号1のDNA配列)を取得し、このDNAに部位特異的変異あるいはランダム変異を発生させてコードするアミノ酸を置換させた後、変異処理を施したDNAを含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、形質転換細胞を培養することによってβ−フラクトフラノシダーゼ変異体を調製することができる。
遺伝子の部位特異的変異を導入するための方法は、Gapped duplex法(Methods in Enzymology, 154, 350 (1987))、Kunkel法(Methods in Enzymology, 154, 367 (1987))など当業者に周知の方法を用いることができる。これらの方法は、β−フラクトフラノシダーゼをコードするDNAの特異的部位に突然変異を発生させることに利用することができる。
また、ランダム変異を導入するためには、エラープローンPCR法など一般的に行われている方法が採用できる。変異処理後のDNAの塩基配列は、マキサム・ギルバートの化学修飾法やジデオキシヌクレオチド鎖終結法などにより確認することができ、β−フラクトフラノシダーゼ変異体のアミノ酸配列は、確認された塩基配列より解読することができる。
β−フラクトフラノシダーゼ変異体の生産
β−フラクトフラノシダーゼ変異体は、それをコードするDNA断片を、宿主細胞内で複製可能でかつ同遺伝子を発現可能な状態で含むDNA分子、特にDNA発現ベクター、に連結してなる組換えベクターを調製し、その組換えベクターを宿主に導入して形質転換体を得て、その形質転換体を適当な培養条件下で培養することにより、調製することができる。
本発明において利用されるベクターは、使用する宿主細胞の種類を勘案して、ウィルス、プラスミド、コスミドベクターなどから適宜選択することができる。例えば、宿主細胞が大腸菌の場合はpUC、pBR系のプラスミド、枯草菌の場合はpUB系のプラスミド、酵母の場合はYEp、YRp、YCp系のプラスミドベクターが挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、組換えベクターとしてプラスミドを使用することができる。プラスミドは形質転換体の選択マーカーを含むのが好ましく、選択マーカーとしては薬剤耐性マーカー、栄養要求マーカーを使用することができる。その好ましい具体例としては、使用する宿主細胞が細菌の場合はアンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子などであり、酵母の場合はトリプトファン合成遺伝子(TRP1)、ウラシル合成遺伝子(URA3)、ロイシン合成遺伝子(LEU2)などがあり、カビの場合はハイグロマイシン耐性遺伝子(Hyg)、ビアラホス耐性遺伝子(Bar)、硝酸還元酵素遺伝子(niaD)などが挙げられる。
本発明による発現ベクターとしてのDNA分子は、変異遺伝子の発現に必要なDNA配列、例えばプロモーター、転写開始信号、リボゾーム結合部位、翻訳停止シグナル、転写終結シグナルなどの転写調節シグナル、翻訳調節シグナルなどを有しているのが好ましい。
プロモーターとしては、挿入断片に含まれる宿主中において機能することができるプロモーターはもちろんのこと、大腸菌においてはラクトースオペロン(lac)、トリプトファンオペロン(trp)などのプロモーター、酵母ではアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(ADH)、酸性フォスファターゼ遺伝子(PHO)、ガラクトース遺伝子(GAL)、グリセロアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(GPD)などのプロモーター、カビではα−アミラーゼ遺伝子(amy)、セロビオハイドロラーゼI遺伝子(CBHI)などのプロモーターを好ましく用いることができる。
宿主としては、宿主−ベクター系が確立されているものであればいずれも利用可能であり、好ましくは、カビ、酵母が挙げられる。宿主細胞の形質転換により得られた形質転換体は、適当な条件で培養し、得られた培養液から一般的な方法によって酵素の分取や精製を行うことによりβ−フラクトフラノシダーゼ変異体を得ることができる。また、宿主が枯草菌、酵母、カビの場合には、分泌型ベクターを使用して、菌体外に組換えβ−フラクトフラノシダーゼを分泌させることも有利である。
形質転換体から生産される本発明による変異体は、次のようにして得ることが出来る。まず前記の宿主細胞を適切な条件下で培養し、得られた培養物から公知の方法、例えば遠心分離により培養上清あるいは菌体を得る。菌体の場合にはこれを適切な緩衝液中に懸濁し、凍結融解、超音波処理、磨砕などにより菌体を破砕し、遠心分離またはろ過により組換え酵素を含有する菌体抽出物を得る。
酵素の精製は、慣用されている分離、精製法を適宜組み合わせて実施することができる。例えば、熱処理のような耐熱性の差を利用する方法、塩沈澱および溶媒沈澱のような溶解性の差を利用する方法、透析、限外ろ過、ゲルろ過およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動のような分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような電荷の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーのような特異的親和性を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーのような疎水性の差を利用する方法、更に等電点電気泳動のような等電点の差を利用する方法などが挙げられる。
1−ケストースの結晶化母液の調製
工程(1):
本発明においては、β−フラクトフラノシダーゼとグルコースオキシターゼとを含む酵素溶液中において、β−フラクトフラノシダーゼをスクロースと接触させて、1−ケストースを生成させる。
すなわち、β−フラクトフラノシダーゼとグルコースオキシターゼの酵素の混合系を含む酵素溶液中にて反応を行う。
ここで、β−フラクトフラノシダーゼと、スクロースとの接触態様は溶液中で行い、その条件は、変異体がスクロースに作用可能な様態である限り特に限定されない。具体例を示せば次の通りである。すなわち、スクロースの使用濃度は、用いる糖が溶解されうる範囲であれば、本酵素の比活性、反応温度などを考慮して適宜選択してよいが、5〜80%の範囲とするのが一般的であり、好ましくは30〜70%の範囲である。糖と酵素との反応における反応温度およびpH条件は、変異体の最適条件下で行うことが好ましく、例えば、30〜80℃程度、pH4〜10程度の条件下で行うのが一般的であり、好ましくは40〜70℃、pH5〜7の範囲である。なお、本発明では、さらにグルコースオキシターゼを使用するため、使用するグルコースオキシターゼに応じて適宜これらの条件をさらに変更することができる。
また、変異体の精製の程度も適宜選択することができ、形質転換体の培養上清あるいは菌体破砕物から粗酵素のまま用いることもでき、また、各種精製工程で得られた精製酵素として利用してもよい。さらには各種精製手段を経て単離精製された酵素として用いてもよい。更に酵素は、常法に準じて担体に固定化された状態でスクロースと接触させてもよい。
β−フラクトフラノシダーゼの添加量は、酵素反応液中のスクロースを十分に利用できる量であれば良い。反応時間は、β−フラクトフラノシダーゼの使用量等により適宜変更することができるが、通常、0.1〜100時間、好ましくは、0.5〜72時間である。
なお、反応終了後は酵素は失活させるのが好ましい。
工程(2):
本発明においては、前記工程(1)の反応により副生するグルコースを、該溶液中でグルコースオキシターゼによりグルコン酸に変換する。すなわち、酵素溶液に共存するグルコースオキシターゼによる酵素反応を同時に進行させる。
グルコースは1−ケストースと同様に中性糖であり、1−ケストースと同様に電荷を持たないため、擬似移動層方式クロマト分離以外の方法で除去することは困難である。グルコン酸は酸性糖で正電荷を持つため、電気透析や陰イオン交換クロマト分離などの擬似移動層方式クロマト分離以外の方法によって、グルコースによる場合と比較して容易に除去可能である。よって、β−フラクトフラノシダーゼとグルコースオキシターゼを同時にスクロースに接触させ、その後、擬似移動層方式クロマト分離以外の方法でグルコン酸を除去する方法は、酵素反応液に含まれる1−ケストースの濃度を簡便かつ安価に向上できる方法であるといえる。
本発明の好ましい態様によれば、副生するグルコースをグルコン酸に変換する際に使用するグルコースオキシターゼとしては、例えば、アスペルギルス・ニガー由来のグルコースオキシターゼやペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)由来のものを用いることができる。
グルコースオキシターゼの添加量は、副生するグルコースを変換するのに十分な量であれば良い。また、グルコースオキシターゼによるグルコースからグルコン酸への変換は酸化反応であるため、反応に酸素が必要である。このため、グルコン酸への変換反応においては、酵素反応液中の溶存酸素量を高めるために、酵素反応液に通気をしながら高速に撹拌することが望ましい。溶存酸素濃度は、原料スクロース濃度や反応温度を調整することによって高めることができる。すなわち、原料スクロース濃度を60%以下、好ましくは40%以下に調整することによって溶存酸素を高めることができる。
また、反応温度については、温度が高くなるにつれて溶存酸素濃度が低下するので、反応温度を20℃〜40℃に設定することが好ましい。また、グルコースをグルコン酸に変換させる際、グルコン酸により酵素反応液のpHが低下し、スクロースから1−ケストースへの変換反応の停止、また、生成した1−ケストースが酸加水分解してしまうことがあるため、酵素反応液に適宜中和剤を投入して、pHを中性付近に調整することが望ましい。使用可能な中和剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などが挙げられる。
グルコースオキシターゼによりグルコースをグルコン酸に変換させる際、過酸化水素が副生し、その酸化作用により酵素を失活させてしまう場合がある。このため、必要により、過酸化水素を分解するカタラーゼを添加することが望ましい。
したがって、本発明の別の好ましい態様によれば、本発明による調製方法は、グルコースをグルコースオキシターゼによりグルコン酸に変換する反応において、副生される過酸化水素をカタラーゼにより除去することをさらに含んでなる。カタラーゼとしては、アスペルギルス・ニガーまたはミクロコッカス・リソデキティカス(Micrococcus lysodeikticus)由来のものが好ましい。
工程(3):
本発明においては、工程(2)において生じたグルコン酸を溶液から除去することによって、溶液(酵素反応液)中の1−ケストース純度を70%以上に増大させ、1−ケストースの純度70%以上の結晶化母液を得る。
ここで、酵素反応液からのグルコン酸の除去は、擬似移動層方式クロマト分離以外の方法である限り特に限定されない。したがって、グルコン酸の除去方法としては、グルコン酸を酵素反応液より選択的に除去できれば、いずれの方法も利用できる。簡便な方法としては、グルコン酸が正電荷を持つ特徴に着目して、グルコン酸を酵素反応液から除去する方法が挙げられる。例えば、電気透析法、陰イオン交換クロマトグラフィー、グルコン酸をカルシウム塩として沈殿除去する方法などが利用できる。特に工程中の1−ケストースの損失が少ないことから、除去方法として電気透析法を用いることが望ましい。
1−ケストースの結晶化母液および結晶1−ケストース
前記したように、本発明による1−ケストースの結晶化母液は、本発明による調製方法により得られるものである。
また本発明による結晶1−ケストースは、本発明による結晶化母液から調製されるものである。結晶化母液からの結晶の調製は、例えば、WO97/21718に記載の方法により得ることができる。
本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
参考例1: β−フラクトフラノシダーゼのF170W変異体の作製と生産
β−フラクトフラノシダーゼのF170W変異体を、WO97/34004の実施例D1の記載に従って作成し生産した。具体的には下記の通りに実施した(なお下記参考例において詳細が必要であればWO97/34004をさらに参照のこと)。
(1)部位特異的変異によるβ−フラクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
アスペルギルス・ニガーACE−2−1(ATCC20611)株のβ−フラクトフラノシダーゼ遺伝子を含むプラスミドpAW20−Hyg(WO97/34004の実施例A4参照)を鋳型DNAとしてPCRを行い、β−フラクトフラノシダーゼ遺伝子の翻訳領域を取り出した。PCRはPerkin Elmer Cetus DNA Thermal Cyclerを使用 して行った。反応液は、プラスミドDNA(pAW20−Hyg)0.5μl(0.1μg相当量)、10倍濃度の反応緩衝液[500mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgCl2、1% TritonX−100]10μl、2.5mM dNTP溶液8μl、0.01mMプライマー#1として配列表の配列番号3の+鎖DNAプライマーおよびプライマー#2として配列表の配列番号4の−鎖DNAプライマー各2μl、TaqDNAポリメラーゼ(和光純薬社製)0.5μl、滅菌水77μlを加えて100μlとした。反応は、94℃、5分間の前処理後、94℃1分間(変性ステップ)、54℃2分間(アニーリングステップ)、72℃3分間(伸長ステップ)のインキュベーションを25サイクル行った。最後に72℃で7分間のインキュベーションを行い反応を終了した。得られた反応液をフェノール・クロロホルム・イソアミルアルコールで抽出し、その後エタノール沈殿を行った。沈殿を20μlのTE緩衝液に溶解した後、アガロースゲル電気泳動を行い、特異的に増幅された約2kbpのバンドを常法に従って切り出してDNA断片を回収した。このDNA断片を制限酵素BamHIで消化した後、プラスミドpUC118(宝酒造社製)のBamHI部位に挿入してプラスミドpAN120を得た(WO97/34004の図6)。
プラスミドを大腸菌CJ236株に導入した後、常法に従い一本鎖DNAを調製し、これを鋳型DNAとして部位特異的変異を行った。部位特異的変異はMuta-Gene in vitroミュータジェネシスキット(日本バイオ・ラッドラボラトリーズ)を用いて行った。部位特異的変異用プライマーとして、配列表の配列番号5のDNAプライマーを用い、キットの説明書に従って実施し、変異処理後プラスミドとしてpAN120(F170W)を得た。
pAN120(F170W)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変異処理後の遺伝子は170番目のアミノ酸だけがフェニルアラニンからトリプトファンに置換されたβ−フラクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)酵母用発現ベクターpY2831の構築
酵母用発現ベクターpY2831は以下のようにして構築した(WO97/34004の図7)。すなわち、プラスミドpYPR2831(H. Horiuchi et al., Agric. Biol. Chem., 54, 1771-1779, 1990)を制限酵素EcoRIおよびSalIで消化した後、末端をT4DNAポリメラーゼを用いて平滑化した。これにBamHIリンカー(5’−CGGATCCG−3’)を連結し、BamHIで消化した後、自己連結してプラスミドpY2831を得た。
(3)酵母によるF170W変異体の生産
pAN120(F170W)をBamHIで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamHI DNA断片を取り出した。これをpY2831のBamHI部位に挿入してプラスミドpYSUC(F170W)を構築した(図8)。この際、pAN120についても同様の処理を行い、野生型酵素を発現させるためのプラスミドpYSUCも構築した。
これらのプラスミドを酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MS−161株(Suc-, ura3, trp1)に酢酸リチウム法(Ito, H. et al., J. Bacteriol., 153, 163-168, 1983)で導入し、形質転換体を得た。この形質転換体をSD−Ura培地(0.67%酵母ニトロゲンベース(ディフコ社)、2%グルコース、50μg/mlウラシル)で、30℃、一晩培養した。この培養液を終濃度が1%となるように生産培地(0.67%酵母ニトロゲンベース(ディフコ社)、2%グルコース、2%カザミノ酸、50μg/mlウラシル)にシードし、30℃、2日間培養し、培養上清を得た。これらの培養上清のβ−フラクトフラノシダーゼ活性をAgric. Biol. Chem., 53, 667-673 (1989)記載の方法で測定した結果、野生型酵素を発現させた場合は12.7単位/ml、F170W変異体を発現させた場合は10.1単位/mlの活性がそれぞれ検出された。
なおF170W変異体の評価の詳細についてはWO97/34004を参照のこと。
参考例2: F170W+G300V+H313K変異体の作製と生産
β−フラクトフラノシダーゼのF170W+G300V+H313K変異体を、WO97/34004の実施例D12の記載に従って作成し生産した。具体的には下記の通りに実施した(なお下記参考例において詳細が必要であればWO97/34004をさらに参照のこと)。
(1)部位特異的変異によるβ−フラクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
部位特異的変異用プライマーとして配列表の配列番号5、配列番号6、および配列番号7のDNAプライマーを使用した以外は前記参考例1(WO97/34004の実施例D1)に記載した方法と同様の方法で行い、プラスミドpAN120(F170W+G300V+H313K)を得た。
pAN120(F170W+G300V+H313K)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変位処理後の遺伝子は170番目、300番目および313番目のアミノ酸だけがフェニルアラニンからトリプトファン、グリシンからバリン、ヒスチジンからリジンにそれぞれ置換されたβ−フラクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)アスペルギルス・ニガーによるF170W+G300V+H313K変異体の生産と評価
pAN120(F170W+G300V+H313K)をBamHIで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamHI DNA断片を取り出した。これをpAN205のBamHI部位に挿入してプラスミドpAN517を構築した。
pAN517をHindIIIで消化して直鎖状にした後、WO97/34004の実施例D11に記載の方法と同様にしてアスペルギルス・ニガーNIA1602株(Suc−、niaD)を形質転換を行い、ベクターDNAが欠落し、宿主の染色体上のβ−フラクトフラノシダーゼ遺伝子の位置にF170W+G300V+H313K変異体をコードする遺伝子が導入されているアスペルギルス・ニガーNIA1717株(Suc+、niaD)を得た。
次に、アスペルギルス・ニガーNIA1717株を酵素生産培地(5%スクロース、0.7%麦芽エキス、1%ポリペプトン、0.5%カルボキシメチルセルロース、0.3%NaCl)で、28℃、3日間培養した後、菌体を超音波で破砕して粗酵素液を調製した。粗酵素液のβ−フラクトフラノシダーゼ活性を測定した結果、培養液1ml当たり45単位の活性が検出された。この粗酵素をスクロース1gあたり2.5単位添加し、Bx45スクロース、pH7.5、40℃、24時間反応させた。反応後の糖組成をHPLCで分析したところ、フルクトース1.8%、グルコース22.3%、スクロース16.1%、GF2 55.7%、GF3 4.1%であった。この結果から、F170W+G300V+H313Kの置換によってGF2が増加し、GF3が減少することが明らかとなった。
(3)F170W+G300V+H313K変異体の精製と酵素化学的諸性質
前記(2)で調製した粗酵素液を20mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝液に対して透析した後、あらかじめ同緩衝液で平衡化しておいたDEAEトヨパール650S(東ソー)カラム(1.6X18cm)に負荷した。次に、Tris−HCl(pH7.5)緩衝液中で、NaClの0から300mMの直線的濃度勾配により溶出し、活性画分を集めた。更に、この活性画分をセファクリルS−300(ファルマシア社)カラム(2.6X60cm)に負荷し、50mMトリメチルアミン−酢酸緩衝液(pH8.0)で溶出し、活性画分を集め、F170W+G300V+H313K変異体精製標品とした。これをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で調べたところ、元の親β−フラクトフラノシダーゼと同じ分子量約10万ダルトンの均一なバンドを示した。
この精製標品を用いて、至適pH、至適温度、pH安定性、温度安定性につき元の親β−フラクトフラノシダーゼと比較したところ、ほとんど同じであった。
参考例3: β−フラクトフラノシダーゼのG300W、H313K、E386K、F170W+G300W、F170W+G300W+H313R、G300W+H313K、G300V+H313K、G300E+H313K、G300D+H313K、およびF170W+G300W+H313K変異体の作製
β−フラクトフラノシダーゼのこれら変異体を、WO97/34004の実施例D2〜11の記載に従って作成し生産した。
参考例4: β−フラクトフラノシダーゼのG62E、L122M、I128N、V165F、H221Y、Q395L、およびT550S変異体の作製
β−フラクトフラノシダーゼのこれら変異体を、WO2005/085447の実施例の記載に従って作成し生産した。
実施例1: アスペルギルス・ニガー由来のグルコースオキシターゼおよびカタラーゼ存在下でのβ−フラクトフラノシダーゼによるスクロースの1−ケストースへの変換反応
3Lジャーファーメンターに脱イオン水で溶解したスクロース40%(w/v)を含む基質液1.9Lを入れ、アスペルギルス・ニガーATCC20611株由来のβ−フラクトフラノシダーゼ三重変異体(F170W、G300V、H313K)(前記参考例2またはWO97/34004の実施例D12)2080U、アスペルギルス・ニガー由来グルコースオキシターゼ2500U、アスペルギルス・ニガー由来カタラーゼ45000Uを添加し、温度30℃、800rpmで31時間、1−ケストースへの変換反応を行った。
グルコースオキシターゼの作用によりグルコースがグルコン酸へと変換されることで、酵素反応液のpHが低下するため、20%炭酸ソーダを添加して、pHを6.3に維持した。また、グルコースオキシターゼによる変換反応では、基質として酸素を消費するため3L/分の通気を行った。途中、一定の間隔で酵素反応液のサンプリングを行い、HPLCにより糖組成の分析を行った。
糖組成の成分分析は、カラムとしてRT250-4.0 LiChrosphor 100 NH2(Cica-Reagenet社)を用い、移動相は71%アセトニトリル、流速1ml/min、カラム温度40℃、検出器として示差屈折計を使用した。
結果は表1に示される通りであった。
表では、反応開始からの経過時間と、各時間における酵素反応液の中性糖(グルコン酸を除いた糖)組成を示した。
Figure 2010273580
結果に示されるように、1−ケストース純度78%の溶液が得られた。
実施例2: Penicillium chrysogenum由来のグルコースオキシターゼ、およびMicrococcus lysodeikticus由来のカタラーゼ存在下でのβ−フラクトフラノシダーゼによるスクロースの1−ケストースへの変換反応
3Lジャーファーメンターに脱イオン水で溶解したスクロース40%(w/v)を含む基質液1.9Lを入れ、アスペルギルス・ニガーATCC20611株由来のβ−フラクトフラノシダーゼ三重変異体(F170W、G300V、H313K)5630U、Penicillium chrysogenum由来のグルコースオキシターゼであるスミチーム(新日本化学工業株式会社製)を2000U、Micrococcus lysodeikticus由来のカタラーゼであるレオネット(ナガセケムテック社製)を250000U添加し、温度30℃、800rpmで26時間、1−ケストースへの変換反応を行った。
グルコースオキシターゼの作用によりグルコースがグルコン酸へと変換されることで、酵素反応液のpHが低下するため、12.5%アンモニア水を添加してpHを7.0に維持した。また、グルコースオキシターゼによる変換反応では、基質として酸素を消費するため3L/分の通気を行った。途中、一定の間隔で酵素反応液のサンプリングを行い、実施例1と同様の方法でHPLCにより糖組成の分析を行った。
結果は表2に示される通りであった。
表では、反応開始からの経過時間と、各時間における酵素反応液の中性糖(グルコン酸を除いた糖)組成を示した。
Figure 2010273580
結果に示されるように、1−ケストース純度76%の溶液が得られた。
実施例3: グルコン酸の電気透析法による選択的除去
実施例1に記載の方法で得られた酵素反応液に含まれるグルコン酸を電気透析法により除去した。
電気透析機は小型電気透析機(ED−1、膜面積0.172m、日本錬水社製)を使用し、膜種はカチオン膜としてCMV(日本錬水株式会社)、またアニオン膜としてAMV(日本錬水株式会社)を用いた。また、極液は4Lの3%硫酸ナトリウムを用い、濃縮液は4Lの2%食塩液とした。
実施例1で得た酵素反応液を脱塩液側に2L入れ、電圧12Vで3時間電気透析を行った。途中、一定の間隔で酵素反応液のサンプリングを行い、実施例1と同様の方法でHPLCにより1−ケストース量の分析を行った。
また、グルコン酸量は、F−キット D−グルコン酸/D−グルコノ−δ−ラクトン(J.K.インターナショナル)を用いて測定した。
結果は表3に示される通りであった。
表では、値を、透析前のグルコン酸量および1−ケストース量を100とした場合の相対量として示した。また表では、電気透析開始から経過時間と、各時間における溶液中のグルコン酸量および1−ケストース量を示した。
Figure 2010273580
結果から、電気透析法により酵素反応液からグルコン酸を選択的に除去できることが示された。また、脱塩液の1−ケストース純度は76%であった。
よって以上の結果から、本発明の方法によって、擬似移動層クロマト分離を用いる事なく、1−ケストースの結晶化に必要な純度70%以上の1−ケストース溶液を調製できることがわかった。

Claims (14)

  1. (1) β−フラクトフラノシダーゼとグルコースオキシターゼとを含む酵素溶液中において、β−フラクトフラノシダーゼをスクロースと接触させて、1−ケストースを生成させ、
    (2) 前記工程(1)の反応により副生するグルコースを、該溶液中でグルコースオキシターゼによりグルコン酸に変換し、
    (3) 生じたグルコン酸を溶液から除去することによって、溶液中の1−ケストース純度を70%以上に増大させる
    ことを含んでなる、1−ケストースの結晶化母液の調製方法であって、
    β−フラクトフラノシダーゼとして、フルクトース転移活性を有し、かつ、配列番号2のアミノ酸配列中の1〜11個のアミノ酸残基が置換されてなるアミノ酸配列からなる、β−フラクトフラノシダーゼ変異体を使用することを特徴とする、1−ケストースの結晶化母液の調製方法。
  2. 使用するβ−フラクトフラノシダーゼのフルクトース転移活性が、スクロースからの1−ケストースへの変換率が45%以上であり、ニストースへの変換率が10%以下であるものである、請求項1に記載の方法。
  3. 使用するβ−フラクトフラノシダーゼのフルクトース転移活性が、スクロースからの1−ケストースへの変換率が50%以上であり、ニストースへの変換率が6%以下であるものである、請求項1または2に記載の方法。
  4. β−フラクトフラノシダーゼ変異体が、アルペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ATCC20611株由来のものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. β−フラクトフラノシダーゼ変異体が、配列番号2のアミノ酸配列中、62、122、128、165、170、221、300、313、386、395、および550番目からなる群より選択されるいずれか1以上のアミノ酸残基において置換が行われたものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. β−フラクトフラノシダーゼ変異体が、配列番号2のアミノ酸配列中、170、300、313、および386番目からなる群より選択されるいずれか1以上のアミノ酸残基において置換が行われたものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 置換が、
    170番のアミノ酸残基の、トリプトファン、フェニルアラニン、およびチロシンからなる群から選択される芳香族アミノ酸への置換、
    300番のアミノ酸残基の、トリプトファン、バリン、グルタミン酸、およびアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸への置換、
    313番のアミノ酸残基の、リジン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸への置換、および
    386番のアミノ酸残基の、リジン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸への置換
    である、請求項6に記載の方法。
  8. β−フラクトフラノシダーゼ変異体が、配列番号2のアミノ酸配列において、F170W、G300V、およびH313Kの三重置換が行われたものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. グルコン酸の溶液からの除去を、電気透析により行うことをさらに含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. グルコースオキシターゼが、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)由来のものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. グルコースをグルコースオキシターゼによりグルコン酸に変換する反応において、副生される過酸化水素をカタラーゼにより除去することをさらに含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. カタラーゼが、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはミクロコッカス・リソデキティカス(Micrococcus lysodeikticus)由来のものである、請求項11に記載の方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により得られる、1−ケストースの結晶化母液。
  14. 請求項13に記載の結晶化母液から調製される、結晶1−ケストース。
JP2009127780A 2009-05-27 2009-05-27 1−ケストースの結晶化母液の調製方法 Withdrawn JP2010273580A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009127780A JP2010273580A (ja) 2009-05-27 2009-05-27 1−ケストースの結晶化母液の調製方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009127780A JP2010273580A (ja) 2009-05-27 2009-05-27 1−ケストースの結晶化母液の調製方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2010273580A true JP2010273580A (ja) 2010-12-09

Family

ID=43421137

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009127780A Withdrawn JP2010273580A (ja) 2009-05-27 2009-05-27 1−ケストースの結晶化母液の調製方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2010273580A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014044230A1 (es) 2012-09-18 2014-03-27 Centro De Ingenieria Genetica Y Biotecnologia Método de obtención de 1-kestosa
WO2014073698A1 (ja) * 2012-11-12 2014-05-15 株式会社明治 ニストース結晶含有粉末
WO2015068764A1 (ja) 2013-11-06 2015-05-14 株式会社明治 フラクトオリゴ糖の製造方法
WO2016017774A1 (ja) * 2014-08-01 2016-02-04 物産フードサイエンス株式会社 改良型β-フルクトフラノシダーゼ
WO2016143873A1 (ja) * 2015-03-11 2016-09-15 物産フードサイエンス株式会社 改良型β-フルクトフラノシダーゼ
WO2018110068A1 (ja) * 2016-12-15 2018-06-21 株式会社明治 フラクトオリゴ糖含有組成物の製造方法
WO2023058637A1 (ja) * 2021-10-04 2023-04-13 京都府公立大学法人 改良型β-フルクトフラノシダーゼ

Cited By (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014044230A1 (es) 2012-09-18 2014-03-27 Centro De Ingenieria Genetica Y Biotecnologia Método de obtención de 1-kestosa
US10982246B2 (en) 2012-09-18 2021-04-20 Centro de Ingenierla Genética y Biotecnologia Method for obtaining 1-kestose
US10131927B2 (en) 2012-09-18 2018-11-20 Centro de Ingenieria Genética y Biotecnologia Method for obtaining 1-kestose
US9955717B2 (en) 2012-11-12 2018-05-01 Meiji Co., Ltd. Nystose crystal-containing powder
WO2014073698A1 (ja) * 2012-11-12 2014-05-15 株式会社明治 ニストース結晶含有粉末
JP5632114B2 (ja) * 2012-11-12 2014-11-26 株式会社明治 ニストース結晶含有粉末
WO2015068764A1 (ja) 2013-11-06 2015-05-14 株式会社明治 フラクトオリゴ糖の製造方法
JPWO2015068764A1 (ja) * 2013-11-06 2017-03-09 株式会社明治 フラクトオリゴ糖の製造方法
WO2016017774A1 (ja) * 2014-08-01 2016-02-04 物産フードサイエンス株式会社 改良型β-フルクトフラノシダーゼ
CN107429243A (zh) * 2015-03-11 2017-12-01 物产食品科技股份有限公司 改良型β‑呋喃果糖苷酶
JPWO2016143873A1 (ja) * 2015-03-11 2017-12-21 物産フードサイエンス株式会社 改良型β−フルクトフラノシダーゼ
WO2016143873A1 (ja) * 2015-03-11 2016-09-15 物産フードサイエンス株式会社 改良型β-フルクトフラノシダーゼ
US10240136B2 (en) 2015-03-11 2019-03-26 B Food Science Co., Ltd. β-fructofuranosidase
WO2018110068A1 (ja) * 2016-12-15 2018-06-21 株式会社明治 フラクトオリゴ糖含有組成物の製造方法
WO2023058637A1 (ja) * 2021-10-04 2023-04-13 京都府公立大学法人 改良型β-フルクトフラノシダーゼ

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5098086B2 (ja) ケトース3−エピメラーゼとその製造方法並びに用途
JP2010273580A (ja) 1−ケストースの結晶化母液の調製方法
CN110914435B (zh) 产依克多因酵母
KR101919713B1 (ko) 신규한 d-사이코스 3-에피머화 효소 및 이를 이용한 d-사이코스의 제조 방법
JP5224572B2 (ja) デキストラン生成酵素遺伝子、デキストラン生成酵素およびその製造方法、デキストランの製造方法
US7655449B2 (en) β-fructofuranosidase variants
CN105899661B (zh) 改良型β-呋喃果糖苷酶
Park et al. Biochemical characterization of thermophilic dextranase from a thermophilic bacterium, Thermoanaerobacter pseudethanolicus
WO2014025235A1 (ko) 사이코스 에피머화 효소 및 이를 이용한 사이코스로 전환용 조성물
EP4190903A1 (en) Enzyme agent for use in epimerization reaction catalyst for sugar, method for producing epimerization reaction product, and epimerization reaction product
US20200208184A1 (en) Methods of Producing 5-Ketofructose
JP6657453B1 (ja) 糖のエピメリ化触媒用の酵素剤、エピメリ化反応生成物の製造方法およびエピメリ化反応生成物
JP5383175B2 (ja) 新規なβ−フルクトフラノシダーゼ、その製造方法及びその利用
US7125704B2 (en) Gluconate dehydratase
WO2005123921A1 (ja) 新規グリセロール脱水素酵素、その遺伝子、及びその利用法
CN114015735B (zh) 一种蔗糖磷酸化酶和葡萄糖异构酶级联催化合成黑曲霉二糖的方法
JP4236949B2 (ja) 結晶1−ケストース製造に用いるβ−フルクトフラノシダーゼの選抜法
WO2019035482A1 (ja) エピメリ化活性を有するタンパク質
JP4317966B2 (ja) α−グルコシダーゼ遺伝子を含有する組換えベクター、形質転換体およびそれを用いたα−グルコシダーゼの製造方法
JP3968918B2 (ja) 酢酸菌のキシリトールデヒドロゲナーゼ及びその遺伝子
KR102141174B1 (ko) 아밀로수크라제의 발현 시스템 및 이를 이용한 투라노스의 생산
JP2022158102A (ja) 糖のエピメリ化反応触媒用の酵素剤、エピメリ化反応生成物の製造方法およびエピメリ化反応生成物
EP4151718A1 (en) Genetically modified microorganism and method for producing organic acid
WO2020260249A1 (en) Enzymatic production of levan-based, prebiotic fructooligosaccharides
CN117957315A (zh) 用于生物催化合成2’-岩藻糖基乳糖的特异性α-1,2-岩藻糖基转移酶

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20110418

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20110511

A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20120807