JP2010272791A - 電界発光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属やガラスなどによる厳密な封止をすることなしに大気中で優れた発光特性および保存安定性を示す電界発光素子。
【解決手段】
陽極及び陰極と、前記電極間に発光性有機化合物を少なくとも1種類以上含有した発光層を1層以上備えた電界発光素子において、前記発光層の少なくとも1層が金属酸化物ナノクラスターを含有することを特徴とする電界発光素子である。
【選択図】なし
【解決手段】
陽極及び陰極と、前記電極間に発光性有機化合物を少なくとも1種類以上含有した発光層を1層以上備えた電界発光素子において、前記発光層の少なくとも1層が金属酸化物ナノクラスターを含有することを特徴とする電界発光素子である。
【選択図】なし
Description
本発明は、電界発光素子に関する。詳しくは、特定の組成の発光層を備えた電界発光素子に関する。
表示用デバイスや照明に適用できる新しい発光素子として有機電界発光素子(以下、有機EL素子)が期待されている。
有機EL素子は陽極と陰極との間に発光性有機化合物を含む1種または複数種の有機化合物を挟んだ構造を持ち、陽極から注入されたホールと陰極から注入された電子が、再結合する時のエネルギーを利用して発光性有機化合物を励起させ、発光を得るものである。有機EL素子は電流駆動型の素子であり、発光強度は注入された電流に比例する。流れる電流をより効率的に活用するため、素子構造が種々改良されている。
最も基本的で数多く検討されている有機EL素子の構造は、安達らによって提案された3層構造のものであり(非特許文献1)、陽極と陰極との間に正孔輸送層、発光層、電子輸送層をこの順で挟んだ構造をとっている。この提案以降、有機EL素子は3層構造を基本とし、効率、寿命等の性能向上を目指して数多くの研究がなされている。
有機EL素子は陽極と陰極との間に発光性有機化合物を含む1種または複数種の有機化合物を挟んだ構造を持ち、陽極から注入されたホールと陰極から注入された電子が、再結合する時のエネルギーを利用して発光性有機化合物を励起させ、発光を得るものである。有機EL素子は電流駆動型の素子であり、発光強度は注入された電流に比例する。流れる電流をより効率的に活用するため、素子構造が種々改良されている。
最も基本的で数多く検討されている有機EL素子の構造は、安達らによって提案された3層構造のものであり(非特許文献1)、陽極と陰極との間に正孔輸送層、発光層、電子輸送層をこの順で挟んだ構造をとっている。この提案以降、有機EL素子は3層構造を基本とし、効率、寿命等の性能向上を目指して数多くの研究がなされている。
しかし、有機EL素子は、酸素や水によって劣化しやすく、これらの侵入を防ぐために封止が不可欠であった。劣化の原因としては、有機化合物への電子注入の容易さから、陰極として用いることができる材料がアルカリ金属やアルカリ金属化合物等、仕事関数の小さなものに限られていることや、使われる有機化合物自体が酸素・水と反応しやすいことが主なものとして挙げられる。
本発明者らは封止することなしに用いることができる発光素子を提案している(特許文献1)。この素子では正孔輸送層、電子輸送層を無機酸化物に変えることで、陰極として導電性酸化物電極であるFTO、陽極として金を使用することが可能になった。アルカリ金属やアルカリ金属化合物等、仕事関数の小さな金属を用いる必要がないため、封止なしで発光することが可能になった。すなわち、従来の有機EL素子とは全く異なる、有機無機ハイブリッド型の電界発光素子であった。
しかしながら、上記の素子においても保存安定性は不十分であった。
Japanese Journal of Applied Physics,27 (1988) L269.
本発明の目的は金属やガラスなどによる厳密な封止をすることなしに、発光特性および保存安定性に優れた電界発光素子を提供することである。
本発明者らは、種々検討の結果、発光層に金属酸化物ナノクラスターを含有させることで上述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、陽極及び陰極と、前記電極間に発光性有機化合物を少なくとも1種類以上含有した発光層を1層以上備えた電界発光素子において、前記発光層の少なくとも1層が金属酸化物ナノクラスターを含有することを特徴とする電界発光素子である。
また、本発明の電界発光素子で用いられる前記発光層中に高分子材料を含有することが好ましい。そのような高分子材料としては、重量平均分子量1000以上のものが好ましい。
本発明の電界発光素子で用いられる前記高分子材料が、発光性有機化合物であることがさらに好ましい。
本発明の電界発光素子は、前記発光層と前記陽極の間にホール輸送性金属酸化物薄膜を含むことが好ましい。そのようなホール輸送性金属酸化物薄膜としては、酸化モリブデンからなるものが好ましい。
さらには、前記発光層と前記陰極との間に電子輸送性金属酸化物薄膜を含むことが好ましい。そのような金属酸化物薄膜としては、酸化チタンからなるものが好ましい。
本発明によれば、ガラスなどによる厳密な封止をすることなしに、保存安定性に優れた電界発光素子を提供することができる。
以下、本発明の電界発光素子について詳細に説明する。
本発明は、陽極及び陰極と、前記電極間に発光性有機化合物を少なくとも1種類以上含有した発光層を1層以上備えた電界発光素子において、前記発光層の少なくとも1層が金属酸化物ナノクラスターを含有することを特徴とする電界発光素子である。
本発明の電界発光素子における発光層の少なくとも1層は、発光性有機化合物と、金属酸化物ナノクラスターを含有する。
上記発光性有機化合物は、蛍光を利用するものでも燐光を利用するものでも良く、低分子化合物でも高分子化合物でも良い。また、これらの蛍光または燐光物質は単独で発光層中に含有されても良いし、ホスト化合物中、あるいはバインダー中に分散した状態で発光層中に含有されても良い。
本発明に使用できる発光性有機化合物で、蛍光を利用した蛍光発光性低分子化合物の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリジン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体等が挙げられる。
本発明に使用できる発光性有機化合物で、蛍光を利用した蛍光発光性高分子化合物の例としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物、ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2'−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン) トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N'−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル− オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物、ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物等が挙げられる。
本発明に使用できる発光性有機化合物で、燐光を利用した燐光発光性低分子化合物の例としては、例えば、遷移金属原子またはランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金などが挙げられる。より好ましくは、レニウム、イリジウム、白金である。
ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムが挙げられる。より好ましくは、ネオジム、ユウロピウム、ガドリニウムである。
錯体の配位子としては、例えば、ハロゲン配位子(例えば塩素配位子など)、含窒素ヘテロ環配位子(例えばフェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えばアセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子などが挙げられる。
上記錯体は、遷移金属原子またはランタノイド原子を1つ有していてもよいし、2つ以上有する複核錯体であってもよい。また、この錯体は上述の配位子を複数有していても良く、その場合の配位子は1種であっても複数の配位子を組み合わせたものであっても良い。
本発明に使用できる発光性有機化合物で、燐光を利用した燐光発光性高分子化合物の例としては、例えば、上記燐光発光性低分子化合物を繰り返し単位の一部に含む高分子化合物が挙げられる。
本発明に使用できるホスト化合物の例としては、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香族テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、カルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第3級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリジン系化合物、ポルフィリン誘導体、有機シラン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体などが挙げられる。
本発明に使用できるバインダーとしては、電荷輸送や発光を阻害しにくいものが好ましく、同時に可視光の透過率が比較的高いものが好ましい。例えば、そのようなものとして、ポリアクリレート系、ポリメチルアクリレート系、ポリメチルメタクリレート系、ポリカーボネート系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリシロキサン系等の樹脂が挙げられる。
上記金属酸化物ナノクラスターは、5個以上のバナジウム、ニオブ等の4族金属元素、またはクロム、モリブデン、タングステン等の5族金属元素と、5個以上の酸素が結合した化合物であり、粒子の大きさが1から100ナノメートルの範囲のものを意味する。具体的には、ポリオキソメタレート類や、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化タングステンの微粒子などが挙げられる。
ポリオキソメタレート類の例としては、((C10H21)4N)4[Mo8O26]、((C10H21)4N)2[Mo6O19]、((C10H21)4N)6[V10O28]、((C10H21)4N)3[VW5O19]、((C10H21)4N)4[V2W4O19]等のイソポリ酸や、((C10H21)4N)3[PMo12O40]等のヘテロポリ酸が挙げられる。
これらの金属酸化物ナノクラスターは、多様な原子価状態や構造をとることができるため、電界発光素子の発光層に含有させた場合、外界から来る酸素や水と反応して劣化を抑えることができる。本発明においては、発光は発光性有機化合物から得られ、金属酸化物ナノクラスターからは直接に発光しない。酸化亜鉛ナノ粒子等を発光体として用いた発光素子が知られているが、本発明とは異なる。
含有する金属酸化物ナノクラスターの量は、含有する発光性有機化合物の量よりも少なく、発光性有機化合物100重量部に対して1〜50重量部の範囲であることが好ましい。
発光層に金属酸化物ナノクラスターを含有させる方法としては、用いる発光性有機化合物や金属酸化物ナノクラスターの性状に応じて共蒸着法や塗布法などが選択できるが、低コストで実施できる塗布法がより好ましい。
塗布法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、スプレーコート法スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種方法を用いることができる。塗布においては、発光性有機化合物と金属酸化物ナノクラスターを別々の溶液として作成し成膜工程で混合する方法をとることもできるし、発光性有機化合物と金属酸化物ナノクラスターを事前に混合した溶液を塗布することもできる。
塗布法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、スプレーコート法スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種方法を用いることができる。塗布においては、発光性有機化合物と金属酸化物ナノクラスターを別々の溶液として作成し成膜工程で混合する方法をとることもできるし、発光性有機化合物と金属酸化物ナノクラスターを事前に混合した溶液を塗布することもできる。
また、発光層に金属酸化物ナノクラスターを含有させる時には均一に分散していることが好ましい。偏析等を避けるために、発光層に金属酸化物ナノクラスターを均一に分散させる媒体として、バインダーとなりうる高分子材料を含有することが好ましい。そのような高分子材料の分子量としては、通常重量平均分子量で1000以上のものが好ましい。また、構成を単純にできること、さらに発光効率がよくなることから、前記高分子材料が発光性有機化合物の役割を兼ねることがさらに好ましい。すなわち、発光層は金属酸化物ナノクラスターが蛍光発光性高分子化合物、または燐光発光性高分子化合物のいずれかに均一に分散している状態が好ましい。この場合の含有方法としては塗布法を用いることが好ましい。
本発明の電界発光素子は、前記陽極から前記発光層へのホール注入とホール輸送をスムーズに行うため、前記発光層と前記陽極の間にホール輸送性金属酸化物薄膜を含むことがより望ましい。前記ホール輸送性金属酸化物薄膜は、ホールをキャリアとして輸送できる半導体から選ばれる。特に、真空蒸着法で容易に成膜できることから酸化モリブデンからなるものが好ましい。
さらには、前記陰極から前記発光層への電子注入と電子輸送をスムーズに行うため、前記発光層と前記陰極との間に電子輸送性金属酸化物薄膜を含むことが好ましい。前記電子輸送性金属酸化物薄膜は、電子をキャリアとして輸送できる半導体から選ばれる。特に、スパッタ法やスプレー分解法で容易に成膜できることから酸化チタンからなるものが好ましい。
本発明で用いられる陽極と陰極は、導電性があれば特に限定されないが、光取り出しのためにいずれか一方は透明であることが求められる。透明導電性電極の例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)などが挙げられる
前記透明導電性電極を陰極として用い、さらに陰極と発光層との間に酸化チタンを配置する場合で、酸化チタンをスプレー分解法で成膜する場合は透明導電性電極の耐熱温度に注意が必要である。ITOは400〜500℃程度の加熱によってその導電性が低下し、電界発光素子として十分な性能が得られない可能性がある。この場合は、ATOやFTOを使用すると、400〜500℃程度の加熱によっても導電性は保たれるので好ましい。また、ITO等の導電性基板の表面にATOやFTOをコートして表面を保護した電極においても、400〜500℃程度の加熱によっても導電性は保たれるので好適に使用できる。酸化チタンをスパッタ法で成膜する場合は比較的低温でも成膜できるため、ITOも好適に使用できる。
前記透明導電性電極を陰極として用い、さらに陰極と発光層との間に酸化チタンを配置する場合で、酸化チタンをスプレー分解法で成膜する場合は透明導電性電極の耐熱温度に注意が必要である。ITOは400〜500℃程度の加熱によってその導電性が低下し、電界発光素子として十分な性能が得られない可能性がある。この場合は、ATOやFTOを使用すると、400〜500℃程度の加熱によっても導電性は保たれるので好ましい。また、ITO等の導電性基板の表面にATOやFTOをコートして表面を保護した電極においても、400〜500℃程度の加熱によっても導電性は保たれるので好適に使用できる。酸化チタンをスパッタ法で成膜する場合は比較的低温でも成膜できるため、ITOも好適に使用できる。
前記透明導電性電極の対極としては、導電性があれば特に限定されず公知のものを適宜使用できる。アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、錫、イリジウム、白金、金などの金属が挙げられる。また、これらの金属は単独で使用してもよいし、合金として使用してもよい。酸素や水に対して劣化しにくいという本発明の主旨からして、白金、金などの酸素や水に対して劣化しにくい電極を使用することが望ましい。
本発明の電界発光素子における発光層、ホール輸送性金属酸化物薄膜、電子輸送性金属酸化物薄膜の膜厚は、特に限定されないが、駆動電圧を下げるために薄いことが好ましく、具体的には合計膜厚で300nm以下、より好ましくは200nm以下にするのが良い。有機化合物層が複数存在する場合、各膜厚の比率に制限はないが、陽極と陰極のそれぞれから注入されたホールと電子が、ちょうど発光層で再結合するように調整することが望ましい。
本発明の電界発光素子は、必要であれば封止を施しても良い。封止工程としては、公知の方法を適宜使用できる。例えば、不活性ガス中で封止容器を接着する方法や、有機EL素子の上に直接封止膜を形成する方法などが挙げられる。これらに加えて、水分吸収材を封入する方法を併用してもよい。
本発明の電界発光素子は、陽極と陰極との間に電圧(通常は15ボルト以下)を印加することによって発光させることができる。通常は直流電圧を印加するが、交流成分が含まれていても良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
《合成例》
下記式で示される反応によるポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−ベンゾチアジアゾール)の合成
《合成例》
下記式で示される反応によるポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−ベンゾチアジアゾール)の合成
窒素雰囲気下、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(294mg、1mmol)に10分間窒素バブリングしたテトラヒドロフラン6mlを加え、60℃で加熱攪拌し溶解させた。ここへ、10分間窒素バブリングした20%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液3mlと、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(40.4mg、0.1mmol)を加え、60℃でさらに10分間攪拌した。ここへ、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ビス(トリメチレンボラート)(569mg、1.02mmol)をトルエン6mlに溶解させた溶液を10分間窒素バブリングしたものを加え、60℃で20分間さらに攪拌した。ここへテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(5.8mg、5μmol)を加え、90℃で18時間攪拌した。ここへ、ジヒドロキシフェニルボラン(1g、8.5mmol)を加え90℃で2時間攪拌し、さらにブロモベンゼン2.7mlを加え90℃で2時間攪拌した。反応混合物を、攪拌したメタノール600mlに注ぎ、生成した沈殿を濾過し、黄色の標題化合物0.6gを得た。
その物性値は以下の通りであった。
1H−NMR(CDCl3):δ0.81 (t, 6H), 0.96−1.25 (m, 24H), 2.10−2.18 (m, 4H), 7.95−8.10 (m, 8H).
GPC(ポリスチレン換算分子量):Mw=56000、 Mw/Mn=3.5
《素子作成例》
ガラス基板上にITOと、さらにその上にATOを成膜した基板(ジオマテック株式会社製;シート抵抗15Ω)の導電面に2mm幅のマスキングテープを貼り、亜鉛粉末をふりかけた後4N塩酸に浸漬して不要な導電膜を除去し、電極パターンを作成した。この基板を29mm×25mmに切断した。この基板を中性洗剤中で5分間超音波洗浄した後、超純水で洗浄した。さらにこの基板を超純水、アセトン、イソプロパノール中で、この順にそれぞれ5分間超音波洗浄した。さらにこの基板をエタノールで煮沸洗浄し、乾燥させた。この基板にUV−オゾン処理を施して、透明導電性支持基板として用いた。
乾燥雰囲気下、アルドリッチ社のTitanium diisopropoxide bis(acetylacetonate) 75wt% in isopropanolを脱水エタノールで約20倍に希釈し、0.18M Titanium diisopropoxide bis(acetylacetonate)溶液を作成した。洗浄した透明導電基板をホットプレートに置き、ガラス板で不要な部分をマスクし、450℃に加熱した。この状態で試薬スプレーを用いて0.18M Titanium diisopropoxide bis(acetylacetonate)溶液を30秒おきに20回噴霧し、ホットプレートを500℃に加熱して5分保持した。その後自然放冷し、酸化チタンの付いた基板を再度クリーンルーム内で純水、アセトンを洗浄液としてそれぞれ5分間超音波洗浄し、乾燥雰囲気で450℃に再度加熱し、乾燥させた。
8mLスクリュー管に、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−ベンゾチアジアゾール)を4.8mg、テトラキス(テトラデシルアンモニウム)オクタモリブデート (((C10H21)4N)4[Mo8O26])を1.6mg、脱水キシレン640mgを秤量し、ホットプレートで100℃に加熱して完全に溶解させて発光層溶液とした。
アルゴングローブボックス中、酸化チタンを成膜した透明導電性支持基板の上に、発光層溶液をスピンコート法により成膜した。スピンコート条件は2000rpm、60秒間とした。
発光層を塗布した透明導電性支持基板をアルゴン雰囲気のグローブボックスに連結された真空蒸着装置(株式会社アルバック製)の基板ホルダーに固定した。正孔輸送層として酸化モリブデンをアルミナルツボに入れて蒸着源にセットした。同時に、陽極として金をタングステンボートに入れて蒸着源にセットした。約1×10−4Paまで減圧し、酸化モリブデンを膜厚10nmになるように蒸着した。次に、金を膜厚40nmになるように蒸着し、電界発光素子を作成した。このとき、基板にはステンレス製の蒸着マスクを用いて、陰極が幅2mmの帯状になるようにした。すなわち、この電界発光素子の発光面積は、4mm2とした。この素子は封止を行わなかった。
《比較素子作成例》
発光層溶液として、8mLスクリュー管に、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−ベンゾチアジアゾール)を4.8mg、脱水キシレン640mgを秤量し、ホットプレートで100℃に加熱して完全に溶解させたものを使用した以外は《素子作成例》と同様にして、発光層に酸化物ナノクラスターを含まない比較用電界発光素子を作成した。
《評価例》
ケースレー社製の「2400型ソースメーター」により、素子への電圧印加を行った。
《素子作成例》、および《比較素子作成例》で作成した有機電界発光素子を、大気雰囲気下で0V〜10Vまでの直流電圧を印加した時の発光の有無を調べた。結果、いずれの素子も8Vまでに発光し、電界発光素子として動くことが確認できた。
《比較素子作成例》
発光層溶液として、8mLスクリュー管に、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−ベンゾチアジアゾール)を4.8mg、脱水キシレン640mgを秤量し、ホットプレートで100℃に加熱して完全に溶解させたものを使用した以外は《素子作成例》と同様にして、発光層に酸化物ナノクラスターを含まない比較用電界発光素子を作成した。
《評価例》
ケースレー社製の「2400型ソースメーター」により、素子への電圧印加を行った。
《素子作成例》、および《比較素子作成例》で作成した有機電界発光素子を、大気雰囲気下で0V〜10Vまでの直流電圧を印加した時の発光の有無を調べた。結果、いずれの素子も8Vまでに発光し、電界発光素子として動くことが確認できた。
次に、大気雰囲気下で3日間暴露した後、大気雰囲気下で0V〜10Vまでの直流電圧を印加した時の発光の有無を調べた。結果、《素子作成例》で作成した素子は8Vまでに発光したが、《比較素子作成例》で作成した素子は発光しなかった。
本発明の電界発光素子と、発光層に酸化物ナノクラスターを含まない比較用電界発光素子とを比較すると、本発明の電界発光素子の方は大気暴露に対する保存安定性が優れていることが明らかになった。
Claims (7)
- 陽極及び陰極と、前記電極間に発光性有機化合物を少なくとも1種類以上含有した発光層を1層以上備えた電界発光素子において、前記発光層の少なくとも1層が金属酸化物ナノクラスターを含有することを特徴とする電界発光素子。
- 前記発光層中に高分子材料を含有することを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
- 前記高分子材料が、前記発光性有機化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の電界発光素子。
- 前記発光層と前記陽極の間にホール輸送性金属酸化物薄膜を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電界発光素子。
- 前記ホール輸送性金属酸化物薄膜が、酸化モリブデンからなることを特徴とする請求項4に記載の電界発光素子。
- 前記発光層と前記陰極との間に電子輸送性金属酸化物薄膜を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電界発光素子。
- 前記電子輸送性金属酸化物薄膜が、酸化チタンからなることを特徴とする請求項6に記載の電界発光素素子。
Priority Applications (1)
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