以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本発明は、導電性支持体上に、色素を半導体に担持してなる半導体層、電荷輸送層および対向電極を有する光電変換素子において、前記色素として下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
本発明においては、特に、色素を半導体に担持してなる半導体層の前記色素として耐光性が高く、変換効率が高い前記一般式(1)で表される化合物を含有させることで、高効率・高耐久の光電変換素子、及びそれを用いた太陽電池が得られる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の光電変換素子は、導電性支持体上の半導体に色素を含ませてなる半導体層と対向電極を電荷輸送層を介して対向配置してなる。
本発明の光電変換素子について、図をもって説明する。
図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す構成断面図である。
図1に示すように、導電性支持体を構成する基板1及び透明導電膜2、半導体層を構成する酸化物半導体3及び色素4、電荷輸送層である電解質5、対向電極6を構成する白金8、透明導電膜7、基板1’、及び隔壁9等から構成されている。
透明導電膜2を付けた基板1(導電性支持体とも言う。)上に、酸化物半導体3の粒子を焼結して形成した空孔を有する半導体層を有し、その空孔表面に色素4を吸着させたものが用いられる。
本発明は、新規化合物(色素)、及びそれを用いた光電変換素子及び太陽電池に関するものである。
《一般式(1)で表される化合物》
以下に、前記一般式(1)で表される化合物について説明する。
前記一般式(1)において、Arは各々独立に、置換もしくは未置換の、芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表す。R1、R2は各々独立に、置換もしくは未置換の、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、R2、Arは互いに連結して環状構造を形成しても良い。また、R3、R4は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。Zは硫黄原子、酸素原子、セレン原子、置換もしくは未置換の、アルキリデン基、芳香族炭化水素環または複素環を表す。Yは置換もしくは未置換の、アルキレン基、アルケニレン基、芳香族炭化水素環または複素環を表し、Xはカルボン酸基、スルホン酸基、硝酸基またはリン酸基の酸性基を表す。一般式(1)の炭素−炭素二重結合はシス体、トランス体の何れであってもよいことを表す。
前記一般式(1)において、
Arは各々独立に、置換もしくは未置換の、芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表す。
Arで表される、芳香族炭化水素環としては、アリール環ともいい、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、アズレン環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナンスレン環、インデン環、ピレン環、ビフェニル環、等が、挙げられる。これらの基は置換基により更に置換されていても良い。
Arで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、等が好ましい。
Arで表される、芳香族複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミヂン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、キナゾリン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルボリン環(前記カルボリン環のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、1,10−フェナントロリン環、フタラジン環、インドール環、クマリン環、等が挙げられる。これらの基は置換基により更に置換されていても良い。
Arで表される芳香族複素環としては、クマリン環等が好ましい。
前記一般式(1)において、R1、R2は各々独立に、置換もしくは未置換の、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表し、R1、R2、Arは互いに連結して環状構造を形成しても良い。
R1、R2で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、等が挙げられる。これらの基は置換基により更に置換されていても良い。
R1、R2で表されるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、等が挙げられる。これらの基は置換基により更に置換されていても良い。
R1、R2で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アンスリル基、ヘナンスリル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、インデニル基、ピレニル基、等が挙げられる。これらの基は置換基により更に置換されていても良い。
R1、R2で表される複素環基としては、芳香族複素環基としては、例えば、フリル基、チエニル基、インドリル基、クマリニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、ジベンゾフラニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基、インドリル基、クマリニル基、等が挙げられ、飽和の複素環基としては、例えば、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、モルホリニル基、オキサゾリジニル基、等が挙げられる。これらの基は置換基により更に置換されていても良い。
前記一般式(1)において、R3、R4は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基または複素環基を表す。
R3、R4で表されるアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、としては、R1、R2におけるアルキル基、アルケニル基、アリール基と同義のものが挙げられる。
R3、R4で表されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、等が挙げられる。これらの基は置換基により更に置換されていても良い。
R3、R4で表されるアミノ基としては、例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、等が挙げられる。
R1、R2で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
R1、R2、Arは互いに連結して環状構造を形成しても良く、例えば、カルバゾール環、インドリン環、ジュロリジン環、フェノチアジン環、等が挙げられる。
前記一般式(1)において、Zは硫黄原子、酸素原子、セレン原子、置換もしくは未置換の、アルキリデン基、芳香族炭化水素環または複素環を表す。
Zで表されるアルキリデン基としては、例えば、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ペンチリデン基、ヘキシリデン基、オクチリデン基、ドデシリデン基、トリデシリデン基、テトラデシリデン基、ペンタデシリデン基等)、等が挙げられる。これらの基は置換基により更に置換されていても良い。
Zで表される芳香族炭化水素環または芳香族複素環としては、Arにおける芳香族炭化水素環または芳香族複素環と同義のものが挙げられる。飽和の複素環基としては、例えば、ローダニン環、ピロール環、イミダゾール環、モルホリン環、オキサゾゾール環、等が挙げられる。
前記一般式(1)において、Yは置換もしくは未置換の、アルキレン基、アルケニレン基、芳香族炭化水素環または複素環を表す。
Yで表されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、等が挙げられる。これらの基は置換基により更に置換されていても良い。
Yで表されるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、アリレン基、ブテニレン基、等が挙げられる。これらの基は置換基により更に置換されていても良い。
Yで表される芳香族炭化水素環または芳香族複素環としては、例えば、Arにおける芳香族炭化水素環または芳香族複素環と同義のものが挙げられる。飽和の複素環基としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、モルホリン環、オキサゾゾール環、等が挙げられる。
前記一般式(1)において、Xはカルボン酸基、スルホン酸基、硝酸基またはリン酸基の酸性基を表す。酸性基としては、それらの塩等も挙げられる。
Xはカルボン酸基の場合、特に酸化物半導体に吸着能が高く酸化物半導体への電荷の流れがスムーズとなり、良好な特性を示し、好ましい。また、Yの置換基として電子求引性基が好ましい。
上記の基、上記の本発明の化合物は、更に置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、インドリル基、クマリニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等)、飽和の複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。尚、これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
一般式(1)で表される化合物(化合物、色素)の具体例を下記に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。この表で波線は各基の結合部を表す。
一般式(1)で表される化合物(以下、本発明の色素ともいう)は、一般的な合成法により合成することができる。
以下に、本発明に係る一般式(1)で表される化合物の合成例を示す。
《合成例》
合成例1(化合物1の合成)
チオ尿素のDMF溶液に二炭酸ジ−tert−ブチル0.95当量、トリエチルアミン2当量を加え、0℃にて1時間攪拌。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物A(収率85%)を得た。
化合物AのDMF溶液にブロモ酢酸エチル1.1当量、炭酸ナトリウム1.2当量、テトラブチルアンモニウムヨージド1.5当量を加え、室温にて1時間攪拌。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物B(収率92%)を得た。
化合物Bに1NのHCl水溶液を加え、室温にて10分間攪拌した後に、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物C(収率98%)を得た。
化合物CのDMF溶液に、ブロモ酢酸エチル1.1当量、炭酸ナトリウム1.2当量、テトラブチルアンモニウムヨージド1.3当量を加え、0℃にて2時間攪拌。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物D(収率86%)を得た。
化合物EのDMF溶液に、2.5当量のdiethyl benzhydrylphosphonate、3当量のK−OtBuを加え、120℃で1.5時間攪拌した。反応液に水を加えた後に、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物F(収率95%)を得た。
化合物Fのトルエン溶液に、1.5当量のオキシ塩化リン、3当量のDMFを加え、60℃で1時間攪拌した。反応液に冷水を加え、室温にて1時間攪拌した後に、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物G(収率79%)を得た。
化合物Gの酢酸溶液に、1.2当量の化合物D、酢酸アンモニウム3当量を加え120℃で1時間攪拌した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物H(収率90%)を得た。
化合物Hに1.1当量のトリフルオロ酢酸、溶媒量のベンズチオールを加え、室温にて1時間攪拌した。反応液に3当量の1N−水酸化カリウム水溶液、酢酸エチルを加え分液ロートにて有機層を除去した。水層に酢酸エチル、過剰量の1N−塩酸水溶液を加え5分間攪拌した後、酢酸エチルにて抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物1(収率81%)を得た。
合成例2(化合物157の合成)
チオ尿素のDMF溶液に、n−ブロモヘキサン0.95当量、炭酸ナトリウム1.2当量、テトラブチルアンモニウムヨージド1.5当量を加え、0℃にて1時間攪拌。ブロモ酢酸エチル1.1当量のDMF溶液を加え、0℃にて1時間攪拌。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物I(収率80%)を得た。
化合物Iに1NのHCl水溶液を加え、室温にて10分間攪拌した後に、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物J(収率97%)を得た。
化合物JのDMF溶液に、ブロモ酢酸エチル1.1当量、炭酸ナトリウム1.2当量、テトラブチルアンモニウムヨージド1.3当量を加え、0℃にて2時間攪拌。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物K(収率86%)を得た。
化合物Gの酢酸溶液に、1.2当量の化合物K、酢酸アンモニウム3当量を加え120℃で1時間攪拌した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物L(収率92%)を得た。
化合物Lに1.5当量の水酸化カリウムのエタノール:水=19:1の溶液を加え室温にて30分攪拌。ロータリーエバポレータにて濃縮乾固した後に、水、酢酸エチルを加え分液ロートにて有機層を除去した。水層に1mol/l塩酸を過剰量加え5分間攪拌した後、酢酸エチルにて抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物157(収率81%)を得た。
他の化合物も同様にして合成することができる。
このようにして得られた本発明の色素を半導体、好ましくは酸化物半導体(以下、単に半導体ともいう)に担持させることにより増感し、本発明に記載の効果を奏することが可能となる。ここで、半導体に色素を担持させるとは、半導体表面への吸着、半導体が多孔質等のポーラスな構造を有する場合には、半導体の多孔質構造に前記色素を充填する等の種々の態様が挙げられる。
また、半導体層(半導体でもよい)1m2当たりの本発明の色素の総担持量は0.01〜100ミリモルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜50ミリモルであり、特に好ましくは0.5〜20ミリモルである。
本発明の色素を用いて増感処理を行う場合、色素を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよく、また他の化合物(例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物)と混合して用いることもできる。
特に、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように吸収波長の異なる二種類以上の色素を混合して用いることが好ましい。
半導体に本発明の色素を担持させるには、適切な溶媒(エタノール等)に溶解し、その溶液中によく乾燥した半導体を長時間浸漬する方法が一般的である。
本発明の色素を複数種併用したり、その他の色素とを併用して増感処理する際には、各々の色素の混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの色素について別々の溶液を用意して、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。各色素について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体に色素等を含ませる順序がどのようであっても本発明に記載の効果を得ることができる。また、前記色素を単独で吸着させた半導体の微粒子を混合する等することにより作製してもよい。
また、本発明に係る半導体の増感処理の詳細については、後述する光電変換素子のところで具体的に説明する。
また、空隙率の高い半導体の場合には、空隙に水分、水蒸気等により水が半導体薄膜上、並びに半導体薄膜内部の空隙に吸着する前に、色素等の吸着処理を完了することが好ましい。
次に本発明の光電変換素子について説明する。
〔光電変換素子〕
本発明の光電変換素子は、導電性支持体上の半導体に色素を含ませてなる半導体層と対向電極を、電荷輸送層を介して対向配置してなる。以下、半導体、半導体層、電荷輸送層、対向電極について順次説明する。
《半導体》
半導体層に用いられる半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族系の元素を有する化合物、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等を使用することができる。
好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。
具体例としては、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、Ti3N4等が挙げられるが、好ましく用いられるのは、TiO2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、CdS、PbSであり、好ましく用いられるのは、TiO2またはNb2O5であるが、中でも特に好ましく用いられるのはTiO2(酸化チタン)である。
半導体層に用いる半導体は、上述した複数の半導体を併用して用いてもよい。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもできるし、また酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti3N4)を混合して使用してもよい。また、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)記載の酸化亜鉛/酸化錫複合としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
また、本発明に係る半導体は、有機塩基を用いて表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられるが、中でもピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。
上記の有機塩基が液体の場合は、そのまま固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液を準備し、本発明に係る半導体を液体アミンまたはアミン溶液に浸漬することで、表面処理を実施できる。
(導電性支持体)
本発明の光電変換素子や本発明の太陽電池に用いられる導電性支持体には、金属板のような導電性材料や、ガラス板やプラスチックフイルムのような非導電性材料に導電性物質を設けた構造のものを用いることができる。導電性支持体に用いられる材料の例としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム)あるいは導電性金属酸化物(例えばインジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの)や炭素を挙げることができる。導電性支持体の厚さは特に制約されないが、0.3〜5mmが好ましい。
また、導電性支持体は実質的に透明であることが好ましく、実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが最も好ましい。透明な導電性支持体を得るためには、ガラス板またはプラスチックフイルムの表面に、導電性金属酸化物からなる導電性層を設けることが好ましい。透明な導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。
導電性支持体の表面抵抗は、50Ω/cm2以下であることが好ましく、10Ω/cm2以下であることがさらに好ましい。
《半導体層の作製》
本発明に係る半導体層の作製方法について説明する。
本発明に係る半導体層の半導体が粒子状の場合には、半導体を導電性支持体に塗布あるいは吹き付けて、半導体層を作製するのがよい。また、本発明に係る半導体が膜状であって、導電性支持体上に保持されていない場合には、半導体を導電性支持体上に貼合して半導体層を作製することが好ましい。
本発明に係る半導体層の好ましい態様としては、上記導電性支持体上に半導体の微粒子を用いて焼成により形成する方法が挙げられる。
本発明に係る半導体が焼成により作製される場合には、色素を用いての該半導体の増感(吸着、多孔質層への充填等)処理は、焼成後に実施することが好ましい。焼成後、半導体に水が吸着する前に素早く化合物の吸着処理を実施することが特に好ましい。
以下、本発明に好ましく用いられる、半導体層を半導体微粉末を用いて焼成により形成する方法について詳細に説明する。
(半導体微粉末含有塗布液の調製)
まず、半導体の微粉末を含む塗布液を調製する。この半導体微粉末はその1次粒子径が微細な程好ましく、その1次粒子径は1〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは2〜50nmである。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができる。溶媒中に分散された半導体微粉末は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては半導体微粉末を分散し得るものであればよく、特に制約されない。
前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤や粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)を加えることができる。溶媒中の半導体微粉末濃度の範囲は0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
(半導体微粉末含有塗布液の塗布と形成された半導体層の焼成処理)
上記のようにして得られた半導体微粉末含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹きつけ、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性支持体上に半導体層(半導体膜とも言う)が形成される。
導電性支持体上に半導体微粉末含有塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応するものである。
このようにして導電性支持体等の導電層上に形成された半導体微粒子層は、導電性支持体との結合力や微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度の弱いものであることから、機械的強度を高め、基板に強く固着した半導体層とするため前記半導体微粒子層の焼成処理が行われる。
本発明においては、この半導体層はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。
ここで、本発明に係る半導体層の空隙率は10体積%以下が好ましく、さらに好ましくは8体積%以下であり、特に好ましくは0.01〜5体積%である。なお、半導体層の空隙率は誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアライザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。
多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、少なくとも10nm以上が好ましく、さらに好ましくは500〜30000nmである。
焼成処理時、焼成膜の実表面積を適切に調製し、上記の空隙率を有する焼成膜を得る観点から、焼成温度は1000℃より低いことが好ましく、さらに好ましくは200〜800℃の範囲であり、特に好ましくは300〜800℃の範囲である。
また、見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径及び比表面積や焼成温度等によりコントロールすることができる。また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高め、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
(半導体の増感処理)
半導体の増感処理は、前述のように本発明の色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行われる。その際には半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、予め減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去しおくことが好ましい。このような処理により、本発明の色素が半導体層(半導体膜)内部深くに進入できるようになり、半導体層(半導体膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
本発明の色素を溶解するのに用いる溶媒は、前記化合物を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分及び気体が半導体膜に進入して、前記化合物の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、予め脱気及び蒸留精製しておくことが好ましい。
前記化合物の溶解において、好ましく用いられる溶媒はアセトニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒であり、複数の溶媒を混合してもよい。特に好ましくはアセトニトリル、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンである。
(増感処理の温度、時間)
半導体を焼成した基板を本発明の色素を含む溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を充分に進行させ、半導体を十分に増感させることが好ましい。また、溶液中での色素の分解等により生成して分解物が色素の吸着を妨害することを抑制する観点から、25℃条件下では3〜48時間が好ましく、さらに好ましくは4〜24時間である。この効果は、特に半導体膜が多孔質構造膜である場合において顕著である。ただし、浸漬時間については25℃条件での値であり、温度条件を変化させた場合には、上記の限りではない。
浸漬しておくに当たり本発明の色素を含む溶液は、前記色素が分解しないかぎりにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は5〜100℃であり、さらに好ましくは25〜80℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
(電荷輸送層)
電荷輸送層は色素の酸化体を迅速に還元し、色素との界面で注入された正孔を対極に輸送する機能を担う層である。
本発明に係る電荷輸送層は、レドックス電解質の分散物或いは正孔輸送材料としてのp型化合物半導体(電荷輸送剤)を主機能成分とし、必要に応じてバインダー等の製膜部材との混合にて構成されている。
レドックス電解質としては、I−/I3 −系や、Br−/Br3 −系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。このようなレドックス電解質は従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I−/I3 −系の電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素を混合することによって得ることができる。これらの分散物は溶液である場合に液体電解質、常温において固体である高分子中に分散させた場合に固体高分子電解質、ゲル状物質に分散された場合にゲル電解質と呼ばれる。電荷輸送層として液体電解質が用いられる場合、その溶媒としては電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質の例としては特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質の例としては「表面科学」21巻、第5号288〜293頁に記載の電解質が挙げられる。
電荷輸送剤としては、色素吸収を妨げないために大きいバンドギャップを持つことが好ましい。本発明で使用する電荷輸送剤のバンドギャップは、2eV以上であることが好ましく、さらに2.5eV以上であることが好ましい。また、電荷輸送剤のイオン化ポテンシャルは色素ホールを還元するためには、色素吸着電極イオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によって電荷輸送層に使用する電荷輸送剤のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下が好ましい。
電荷輸送剤としては、正孔の輸送能力が優れている芳香族アミン誘導体が好ましい。このため、電荷輸送層を主として芳香族アミン誘導体で構成することにより、光電変換効率をより向上させることができる。芳香族アミン誘導体としては、特に、トリフェニルジアミン誘導体を用いるのが好ましい。トリフェニルジアミン誘導体は、芳香族アミン誘導体の中でも、特に正孔の輸送能力が優れている。また、このような芳香族アミン誘導体は、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、ポリマーのいずれを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。また、モノマー、オリゴマーやプレポリマーは、比較的低分子量であることから、有機溶媒等の溶媒への溶解性が高い。このため、電荷輸送層を塗布法により形成する場合に、電荷輸送層材料の調製をより容易に行うことができるという利点がある。このうち、オリゴマーとしては、ダイマーまたはトリマーを用いるのが好ましい。
具体的な芳香族第3級アミン化合物としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
芳香族アミン誘導体以外の電荷輸送剤としては、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、スチルベン誘導体等が挙げられる。
以下に、電荷輸送剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
電荷輸送層は上記電荷輸送剤または前述のp型半導体高分子化合物を塗布して形成される。または、上記レドックス電解質の分散物を塗布または充填して形成される。
《対向電極》
本発明に用いられる対向電極について説明する。
対向電極は導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられるが、I3 −イオン等の酸化や他のレドックスイオンの還元反応を充分な速さで行わせる触媒能を持ったものの使用が好ましい。このようなものとしては、白金電極、導電材料表面に白金めっきや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン等が挙げられる。
〔太陽電池〕
本発明の太陽電池について説明する。
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子の一態様として、太陽光に最適の設計並びに回路設計が行われ、太陽光を光源として用いたときに最適な光電変換が行われるような構造を有する。即ち、色素増感された半導体に太陽光が照射されうる構造となっている。本発明の太陽電池を構成する際には、前記半導体層、電解質層及び対向電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された本発明に係る色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体を経由して対向電極に移動して、電荷移動層のレドックス電解質を還元する。一方、半導体に電子を移動させた本発明に係る色素は酸化体となっているが、対向電極から電解質層のレドックス電解質を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷移動層のレドックス電解質は酸化されて、再び対向電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
〔光電変換素子1の作製〕
酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)18nm、エチルセルロース分散)を、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板へスクリーン印刷法(塗布面積5×5mm2)により塗布した。塗布ならびに乾燥(120℃で3分間)を3回繰り返し、200℃で10分間ならびに500℃で15分間焼成を行い、厚さ15μmの酸化チタン薄膜を得た。尚、この酸化チタン薄膜には下記のようにして色素の吸着処理を行う前に、該薄膜上には重ねて、市販の酸化チタンペースト(粒径400nm)を同様の方法で塗布し厚さ5μmの酸化チタン薄膜を重ね塗りした。
本発明の一般式(1)で表される化合物(本発明の色素)の化合物1をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解させ、5×10−4モル/lの溶液を作製した。酸化チタンを塗布焼結させたFTOガラス基板をこの溶液に室温で3時間浸漬させて、色素の吸着処理を行い、酸化物半導体電極とした。
電荷移動層(電解液)にはヨウ化1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム0.6モル/l、ヨウ化リチウム0.1モル/l、ヨウ素0.05モル/l、4−(t−ブチル)ピリジン0.5モル/lを含むアセトニトリル溶液を用いた。対極に白金ならびにクロムを蒸着したガラス板を用い、先に作製した酸化物半導電極並びに電解液とクランプセルで組み立てることにより光電変換素子1を作製した。
〔光電変換素子2〜32の作製〕
上記、光電変換素子1の作製において、化合物1の代わりに、本発明の一般式(1)でされる化合物(本発明の色素)等、を表1に記載の種類、同モル量、用いた以外は光電変換素子1の作製と同様にして、光電変換素子2〜32を作製した。
〔光電変換素子33の作製〕
光電変換素子1の作製において、化合物1を色素501(比較の色素)に変更し、電荷移動層(電解液)にはヨウ化−1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム0.6mol/l、ヨウ化リチウム0.1mol/l、ヨウ素0.05mol/l、4−(t−ブチル)ピリジン0.5mol/lを含む3−メトキシプロピオニトリルの溶液を用いた以外は同様にして、光電変換素子33を作製した。
〔光電変換素子34の作製〕
光電変換素子31の作製において、色素501(比較の色素)を色素502(比較の色素)に変更した以外は同様にして、光電変換素子34を作製した。
〔光電変換素子35の作製〕
酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)18nm、エチルセルロース分散)を、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板へスクリーン印刷法(塗布面積5×5mm2)により塗布し、200℃で10分間ならびに450℃で15分間焼成を行い、厚さ1.5μmの酸化チタン薄膜を得た。
本発明の一般式(1)で表される化合物(本発明の色素)の化合物5をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解させ、5×10−4モル/lの溶液を作製した。酸化チタンを塗布焼結させたFTOガラス基板をこの溶液に室温で3時間浸漬させて、色素の吸着処理を行い、酸化物半導体電極とした。
クロロベンゼン:アセトニトリル=19:1混合溶媒に、ホール輸送材料である芳香族アミン誘導体2,2′,7,7′−テトラキス(N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)アミン)−9,9′−スピロビフルオレン(OMeTAD)を0.17mol/l、ホールドーピング剤としてN(PhBr)3SbCl6を0.33mmol/l、Li[(CF3SO2)2N]を15mmol/l、t−Butylpyridineを50mmol/lとなるように溶解したホール層形成用塗布液を調製した。そして、当該ホール層形成用塗布液を、前記光増感色素を吸着、結合させた半導体層の上面にスピンコート法により塗布し、電荷輸送層を形成した。さらに真空蒸着法により金を90nm蒸着し、対極電極を作製し、光電変換素子35を作製した。前述したスピンコート法による塗布ではスピンコートの回転数を1000rpmに設定して行った。
〔光電変換素子36の作製〕
光電変換素子の色素(本発明の化合物5)を色素501(比較の色素)に変更した以外は、光電変換素子35と同様にして光電変換素子36を作製した。
〔発電特性の評価〕
評価試験は、ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用い、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cm2の擬似太陽光を照射することにより行った。各光電変換素子について、I−Vテスターを用いて、室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流(ISC)、開放電圧(VOC)を求めた。
次いで、セルを短絡させた上で120mW/cm2の擬似太陽光を720時間照射した後に同様に電流−電圧特性を測定し短絡電流(ISC1)、開放電圧(VOC1)を求めた。
変換効率ηとは、光電変換効率ηと同意であり、太陽電池により光エネルギー(W)が電気エネルギー(W)に変換される効率を意味する。光電変換効率(η(%))は、下記式(A)に基づいて算出した。
式(A) η=100×(Voc×Jsc×F.F.)/P
ここで、Pは入射光強度[mW/cm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、F.F.は形状因子を示す。
変換効率の耐久率は、(η1/η)から得られる値として求めた。
評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、チオヒダントイン骨格を有する色素を用いた本発明の光電変換素子17と、ローダニン骨格を有する色素を用いた比較の光電変換素子31は、同一の電子ドナー構造を有する。それぞれ初期変換効率はほぼ同等であったが、光劣化後の変換効率において本発明の光電変換素子17が91%変換効率を維持したのに対し、比較の光電変換素子31は76%まで劣化しており、本発明の光電変換素子は光耐久性が優れているという結果が得られた。また、本発明の光電変換素子の場合には、いずれの場合においても初期に比べ90%以上の変換効率を維持しており、これにより本発明により、光耐久性を有し変換効率を長期において維持しうる増感色素を提供したことを示している。