JP2010269300A - 複層塗膜形成方法及び塗装物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】中塗りレス方式による複層塗膜形成方法において、優れた平滑性及び耐チッピング性を有する塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】鋼板上に電着塗膜を形成後、水性第1ベースコート塗料(X)が、水性第1ベースコート塗料(X)中の樹脂固形分100質量部を基準として、扁平顔料(a)を1〜20質量部含有し、且つ水性第2ベースコート塗料(Y)が、水性第2ベースコート塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、体積基準の粒度分布による粒径が1〜10μmの粒子の含有率が70〜100%の範囲内にある扁平顔料(a1)を10〜20質量部含有し、且つ、クリヤーコート塗料(Z)が、水酸基含有アクリル樹脂(z−1)及びポリイソシアネート化合物(z−2)を含有することを特徴とする複層塗膜形成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、中塗り塗装を省略しても、優れた平滑性及び耐チッピング性を有する複層塗膜を形成せしめることができる方法及び該方法により形成された塗装物品に関する。
自動車車体における塗膜形成方法としては、被塗物上に電着塗膜を形成した後、「中塗り塗料の塗装→焼き付け硬化→ベースコート塗料の塗装→クリヤーコート塗料の塗装→焼き付け硬化」の3コート2ベーク方式により複層塗膜を形成せしめる方法が広く採用されている。
一般に、電着塗膜は防錆性に優れ、中塗り塗膜は平滑性及び耐チッピング性に優れ、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜は外観に優れており、これらの塗膜が積層された複層塗膜は、被塗物に優れた防錆性、平滑性、耐チッピング性及び外観を付与することができる。
一方、最近、省資源及び省エネルギーの観点から、中塗り塗料の塗装を省略し、被塗物上に電着塗膜を形成せしめた後、「ベースコート塗料の塗装→クリヤーコート塗料の塗装→焼き付け硬化」を行なう中塗りレス方式が検討されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、上記中塗りレス方式は、平滑性及び耐チッピング性に優れた中塗り塗膜が形成されないため、得られる複層塗膜は平滑性及び耐チッピング性が低下するという課題を有している。
特開2004−169182公報
本発明の目的は、中塗りレス方式による複層塗膜形成方法において、優れた平滑性及び耐チッピング性を有する複層塗膜を形成せしめることができる方法及び該方法により形成された塗装物品を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、今回、中塗りレス方式による複層塗膜形成方法において、水性ベースコート塗料として、特定の粒度分布を有する扁平顔料を含有する塗料を使用し、且つ、クリヤーコート塗料として、特定の樹脂及び化合物を含有する塗料を使用する場合に、平滑性及び耐チッピング性に優れた複層塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明は、下記の工程(1)〜(5):
(1) 鋼板上に電着塗料を塗装し、加熱硬化させて硬化電着塗膜を形成せしめる工程;(2) 工程(1)で得られた硬化電着塗膜上に、水性第1ベースコート塗料(X)を塗装して、硬化膜厚が2〜15μmの範囲内の第1ベースコート塗膜を形成せしめる工程;(3) 工程(2)で得られた第1ベースコート塗膜上に、水性第2ベースコート塗料(Y)を塗装して、硬化膜厚が2〜15μmの範囲内の第2ベースコート塗膜を形成せしめる工程;
(4) 工程(3)で得られた第2ベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料(Z)を塗装してクリヤーコート塗膜を形成せしめる工程;及び
(5) 工程(2)〜(4)で形成された第1ベースコート塗膜、第2ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程
を順次行うことからなり、
水性第1ベースコート塗料(X)が、水性第1ベースコート塗料(X)中の樹脂固形分100質量部を基準として、扁平顔料(a)を1〜20質量部含有し、水性第2ベースコート塗料(Y)が、水性第2ベースコート塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、体積基準の粒度分布による粒径が1〜10μmの範囲内の粒子の含有率が70〜100%の範囲内である扁平顔料(a1)を10〜20質量部含有し、且つクリヤーコート塗料(Z)が、水酸基含有アクリル樹脂(z−1)及びポリイソシアネート化合物(z−2)を含有することを特徴とする複層塗膜形成方法を提供するものである。
本発明の複層塗膜形成方法によれば、中塗りレス方式において、平滑性及び耐チッピング性に優れた複層塗膜を形成せしめることができる。
以下、本発明の複層塗膜形成方法についてさらに詳細に説明する。
工程(1)
本発明の複層塗膜形成方法によれば、まず、被塗物である鋼板上に、電着塗料を塗装し、加熱硬化させることにより、硬化電着塗膜が形成せしめられる。
上記鋼板としては、例えば、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、冷延鋼板等を使用することができる。また、該鋼板は、表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
上記鋼板上には、それ自体既知の電着塗料(例えば、特開2003−306796号公報等に記載のもの)を塗装し、さらに加熱硬化することによって、硬化電着塗膜が形成せしめられる。該電着塗料としては、カチオン電着塗料を好適に使用することができる。
工程(2)
以上に述べた工程(1)で形成される硬化電着塗膜上には、次いで、水性第1ベースコート塗料(X)が塗装され、硬化膜厚が2〜15μmの範囲内の第1ベースコート塗膜が形成せしめられる。
水性第1ベースコート塗料(X)
水性第1ベースコート塗料(X)は、被膜形成性水性樹脂及び扁平顔料(a)を含んでなり、該塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、扁平顔料(a)を1〜20質量部含有する水性塗料である。
被膜形成性水性樹脂
被膜形成性水性樹脂としては、水溶性又は水分散性を有するものであれば、それ自体既知の樹脂を特に制限なく使用することができる。該被膜形成性水性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち、特にアクリル樹脂及びポリエステル樹脂が好適である。
上記アクリル樹脂としては、例えば、アクリルエマルション、水溶性アクリル樹脂等を使用することができる。
上記アクリルエマルションとしては、例えば、重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の重合法、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等によって(共)重合することにより製造されたものを使用することができる。上記乳化重合法は、通常、水及び乳化剤の存在下に重合開始剤を用いて重合性不飽和モノマ−混合物を共重合させるものであり、該乳化重合は多段階で行ってもよい。
上記重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物や、該多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合させた化合物等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテル等の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体;2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド等の第4級アンモニウム塩基含有モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド−アルカンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホアルキル(メタ)アクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン;アリルメタクリレート等の多ビニル化合物;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等の紫外線吸収性もしくは紫外線安定性重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド」又は「メタクリルアミド」を意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」又は「メタクリロイル」を意味する。
乳化重合時に用いられる乳化剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアニオン性乳化剤;ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル及び
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性乳化剤が挙げられ、さらに、ラジカル重合性二重結合を有するアニオン性又はカチオン性の反応性乳化剤を使用することもできる。
上記乳化重合時には、通常、水及び上記乳化剤の存在下で重合開始剤を用いて乳化重合を行うことが好ましく、必要に応じてメルカプタン類等の連鎖移動剤を用いてもよい。使用可能な重合開始剤としては、例えば、ペルオキソ硫酸カリウム、ペルオキソ硫酸ナトリウム、ペルオキソ硫酸アンモニウム、アゾビスシアノ吉草酸、2、2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等の有機アゾ系化合物類;過酸化ベンゾイル、ジt−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類等が挙げられる。
前記水溶性アクリル樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び/又はポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマーならびにその他の重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマーの混合物を、有機溶剤中で、ラジカル重合開始剤の存在下に共重合させることにより得られるカルボキシル基及び/又はポリオキシアルキレン鎖を有するアクリル共重合体を、さらに必要に応じて、塩基性中和剤で中和し水溶化ないしは水分散化することにより製造されたものを使用することができる。
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーやこれと共重合せしめられるその他の重合性不飽和モノマーとしては、上述のアクリルエマルションの説明で列記した重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して使用することができる。
ポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち、特にポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが好適である。
塩基性中和剤としては、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基や、アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパノール、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノール、アミノメチルプロパノール等のアミン類を挙げることができる。
前記ポリエステル樹脂としては、通常、カルボキシル基を含有するものが使用され、該カルボキシル基を上記のような塩基性中和剤によって中和することにより水溶性又は水分散性を付与することができる。
上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、例えば、(1)多塩基酸成分と多価アルコール成分とをカルボキシル基が水酸基に対して過剰となる条件下でエステル化反応させる方法;(2)多塩基酸成分と多価アルコール成分とをカルボキシル基に対して水酸基が過剰となる条件下で反応させてなるポリエステルポリオールに、酸無水物を反応させる方法等によって製造することができる。
上記ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分としては、例えば、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、4−メチルヘキサヒドロ(無水)フタル酸、3−メチルテトラヒドロ(無水)フタル
酸、(無水)コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、(無水)マレイン酸等から選ばれる1種又はそれ以上の二塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸、他各種脂肪酸等の一塩基酸;(無水)トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、(無水)ピロメリット酸、ブタントリカルボン酸等の3価以上の多塩基酸等を併用することができる。
また、多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオ−ル、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族グリコール;1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノ−ル、1、4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、スピログリコール等の脂環式グリコール;ビスフェノール化合物のエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラブチレングリコール等のポリエーテルポリオール;グリコール類とポリイソシアネート化合物を反応させてなるポリウレタンポリオール等の二価アルコールが主として用いられ、さらに必要に応じて、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の三価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、分子内にエステル基を含むグリコール、例えばビスヒドロキシエチルテレフタレート等も用いることができる。
上記両成分のエステル化又はエステル交換反応は、それ自体既知の方法によって行うことができる。
前記(1)の方法においては、上記多塩基酸成分と多価アルコール成分とをカルボキシル基が水酸基に対して過剰となる条件下で、常法により直接エステル化又はエステル交換することによりカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を得ることができる。
前記(2)の方法においては、上記多塩基酸成分と多価アルコール成分とをカルボキシル基に対して水酸基が過剰となる条件下で、常法により直接エステル化又はエステル交換することによってポリエステルポリオールを得、得られるポリエステルポリオールに酸無水物を反応させることによってカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を得ることができる。ポリエステルポリオールに反応させ得る酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸等を挙げることができる。
上記(1)及び(2)の方法において、直接エステル化又はエステル交換反応は、加圧又は減圧下で操作しあるいは不活性ガスを流入させて反応を促進させることもできる。さらに、反応の際にジ−n−ブチル錫オキサイド等の有機金属触媒等をエステル化触媒として使用することができる。工業的には、通常、直接エステル化法が有利に使用される。
扁平顔料(a)
扁平顔料(a)としては、例えば、マイカ、アルミナ、タルク、シリカ等が挙げられ、
これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、得られる塗膜の耐チッピング性の観点からタルクを使用することが好ましい。
水性第1ベースコート塗料(X)は、上述の被膜形成性水性樹脂及び扁平顔料(a)を通常の塗料化手段により、水性溶媒中で均一に混合することにより調製することができる。
上記水性溶媒としては、脱イオン水又は脱イオン水と親水性有機溶媒との混合物を使用することができる。該親水性有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
水性第1ベースコート塗料(X)には、さらに必要に応じて、架橋剤、扁平顔料(a)以外の顔料、硬化触媒、増粘剤、有機溶剤、塩基性中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、酸化防止剤、シランカップリング剤等の塗料用添加剤等を配合することができる。
上記架橋剤は、前記被膜形成性水性樹脂中の水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基と反応して硬化塗膜を形成し得る化合物であり、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。上記架橋剤の使用量は、該架橋剤中に含まれる架橋性官能基が、前記被膜形成性水性樹脂中の架橋性官能基に対して、前者の官能基/後者の官能基の当量比で、通常0.2〜2.0、特に0.5〜1.5となる範囲内となるように選択することが好ましい。
なお、本発明において、塗料中の樹脂固形分は、前記被膜形成性水性樹脂と、該被膜形成性水性樹脂と反応し硬化塗膜を形成し得る上記架橋剤との合計量である。
また、水性第1ベースコート塗料(X)として、後述する水性第2ベースコート塗料(Y)と同じものを使用してもよい。
水性第1ベースコート塗料(X)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等により被塗物上に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。これらのうち、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。
水性第1ベースコート塗料(X)の塗布量は、硬化膜厚として、2〜15μm、好ましくは3〜12μm、さらに好ましくは4〜10μmの範囲内となる量であるのが好ましい。
工程(3)
以上に述べた工程(2)で形成される水性第1ベースコート塗料(X)の塗膜上には、次いで、水性第2ベースコート塗料(Y)が塗装される。
水性第2ベースコート塗料(Y)
水性第2ベースコート塗料(Y)は、被膜形成性水性樹脂及び体積基準の粒度分布による粒径が1〜10μmの範囲内の粒子の含有率が70〜100%の範囲内にある扁平顔料(a1)を含んでなり、該塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、扁平顔料(a1)を10〜20質量部含有する水性塗料である。
被膜形成性水性樹脂
被膜形成性水性樹脂としては、前述の水性第1ベースコート塗料(X)の説明において記載したものの中から適宜選択して使用することができる。
扁平顔料(a1)
水性第2ベースコート塗料(Y)において使用される扁平顔料(a1)は、前述の水性第1ベースコート塗料(X)の説明において記載した扁平顔料(a)のうち、体積基準の粒度分布による粒径が1〜10μmの範囲内の粒子の含有率が70〜100%、特に75〜100%の範囲内にある扁平顔料である。なお、上記扁平顔料(a)の体積基準の粒度分布は、レーザー回折/散乱法によって測定される値である。
上記扁平顔料(a)の体積基準の粒度分布は、例えば、扁平顔料(a)を粉砕する際の粉砕時間を調整したり、タルクを塗料溶媒中に分散する際の分散時間を調整したりすることによって調整することができる。
水性第2ベースコート塗料(Y)は、上述の被膜形成性水性樹脂及び扁平顔料(a1)を通常の塗料化手段により、前記のような水性溶媒中で均一に混合することにより調製することができる。
水性第2ベースコート塗料(Y)には、さらに必要に応じて、架橋剤、扁平顔料(a1)以外の顔料、硬化触媒、増粘剤、有機溶剤、塩基性中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、酸化防止剤、シランカップリング剤等の塗料用添加剤等を配合することができる。
上記架橋剤としては、前述の水性第1ベースコート塗料(X)の説明において記載したものの中から適宜選択して使用することができる。
水性第2ベースコート塗料(Y)において使用する上記扁平顔料(a1)以外の顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等が挙げられる。
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、体質顔料としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、得られる塗膜の平滑性の観点から、硫酸バリウムを使用することが好ましい。
水性第2ベースコート塗料(Y)が、硫酸バリウムを含有する場合、硫酸バリウムの配合量は、水性第2ベースコート塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜20質量部、特に5〜15質量部の範囲内であることが好適である。なかでも、扁平顔料(a1)及び硫酸バリウムの配合比率が、扁平顔料(a1)/硫酸バリウムの質量比で、一般に4/1〜1/2、特に3.5/1〜1/1.5の範囲内にあることが好ましい。
水性第2ベースコート塗料(Y)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等により被塗物上に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。これらのうち、エアスプレー塗装、
回転霧化塗装等の方法が好ましい。
水性第2ベースコート塗料(Y)の塗布量は、硬化膜厚として、2〜15μm、特に3〜12μm、さらに特に4〜10μmの範囲内となる量であるのが好ましい。
また、水性第2ベースコート塗料(Y)の塗装後は、必要に応じて、約40〜約100℃の温度で1〜15分間程度プレヒートすることができる。
工程(4)
以上に述べた工程(3)で形成される水性第2ベースコート塗料(Y)の塗膜上には、さらに、クリヤーコート塗料(Z)が塗装される。
クリヤーコート塗料(Z)
本発明の複層塗膜形成方法において使用するクリヤーコート塗料(Z)は、基体樹脂として水酸基含有アクリル樹脂(z−1)及び架橋剤としてポリイソシアネート化合物(z−2)を含有する塗料である。
上記水酸基含有アクリル樹脂(z−1)は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合することによって得ることができる。
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物や、該多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテル等の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体;2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド等の第4級アンモニウム塩基含有モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド−アルカンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホアルキル(メタ)アクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン;アリルメタクリレート等の多ビニル化合物;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロ
イルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等の紫外線吸収性もしくは紫外線安定性重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーの共重合は、溶液重合等のそれ自体既知の重合方法によって行なうことができる。
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(z−1)は、得られる塗膜の平滑性及び耐チッピング性の観点から、一般に5,000〜10,000、特に6,000〜9,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。
上記水酸基含有アクリル樹脂(z−1)は、一般に100〜200mgKOH/g、特に120〜180mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。また、得られる塗膜の平滑性及び耐チッピング性の観点から、2級水酸基に由来する水酸基価が10〜50mgKOH/g、特に15〜40mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
ポリイソシアネート化合物(z−2)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類;トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート化合物の如き有機ポリイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記ポリイソシアネート化合物(z−2)の使用量は、この中に含まれるイソシアネート基(NCO)が、前記水酸基含有アクリル樹脂(z−1)中の水酸基(OH)に対して、NCO/OHの当量比で、通常0.2〜2.0、特に0.5〜1.5となる範囲内となるように選択することが好ましい。
クリヤーコート塗料(Z)は、通常、好ましくは有機溶剤型塗料であり、該有機溶剤としては、例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系;「スワゾール310」、「スワゾール1000」、「スワゾール1500」(以上、いずれも丸善石油化学(株)製)、「SHELLSOL A(シェルゾールA)」(シェル化学(株)製)等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤はそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
上記クリヤーコート塗料(Z)には、さらに必要に応じて、顔料類、非水分散樹脂、ポリマー微粒子、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、塗面調整剤、酸化防止剤、流動性調整剤、ワックス等を適宜配合することができる。
上記硬化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート等の有機錫化合物、トリエチルアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリシレート系、蓚酸アニリド系等の化合物を挙げることができる。紫外線安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物を挙げることができる。
クリヤーコート塗料(Z)は、水性第2ベースコート塗料(Y)の塗膜面に、それ自体既知の方法、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機等により塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。
クリヤーコート塗料(Z)は、硬化膜厚で、通常10〜80μm、好ましくは15〜60μm、より好ましくは20〜50μmの範囲内になるように塗装することができる。
また、クリヤー塗料(Z)の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、約40〜約80℃の温度で1〜60分間程度プレヒートしたりすることができる。
工程(5)
本発明の複層塗膜形成方法においては、上記工程(2)〜(4)で形成される未硬化の第1ベースコート塗膜、未硬化の第2ベースコート塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜が同時に加熱硬化せしめられる。
上記第1ベースコート塗膜、第2ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜の硬化は、通常の塗膜の焼付け手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。加熱温度は、通常80〜160℃、特に100〜140℃の範囲内が好ましい。また、加熱時間は、通常10〜60分間、特に15〜40分間が好ましい。この加熱により、第1ベースコート塗膜、第2ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜の3層からなる複層塗膜を同時に硬化させることできる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。また、実施例中の「部」および「%」は、それぞれ、「質量部」及び「質量%」を示す。
被膜形成性水性樹脂の製造
アクリルエマルションの製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水100部及び「アクアロンKH−10」(注1)0.5部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで、下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%及び3%過硫酸アンモニウム水溶液10.3部を反応容器内に導入し、80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を
2時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5% 2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液42部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した)、酸価33mgKOH/g、水酸基価48mgKOH/g及び固形分30%のアクリルエマルションを得た。
(注1)「アクアロンKH−10」: ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩:第一工業製薬株式会社製、商品名、有効成分:97%。
モノマー乳化物(1): 脱イオン水42部、「アクアロンKH−10」0.7部、メチレンビスアクリルアミド3部、スチレン4部、メチルメタクリレート13部、エチルアクリレート30部及びn−ブチルアクリレート20部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
モノマー乳化物(2): 脱イオン水18部、「アクアロンKH−10」0.3部、過硫酸アンモニウム0.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート2部、n−ブチルアクリレート4部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部及びメタクリル酸5部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
ポリエステル樹脂溶液の製造
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール142部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃〜230℃の間を3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸46部を加え、180℃で1時間反応させた後、オクタノールで希釈し、酸価49mgKOH/g、水酸基価140mgKOH/g、固形分70%、重量平均分子量6,400のポリエステル樹脂溶液を得た。
扁平顔料分散液の製造
製造例3
製造例2で得たポリエステル樹脂溶液40部(樹脂固形分28部)、「MICRO ACE S−3」(商品名、日本タルク社製、タルク粉末)30部及び脱イオン水70部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで15分間分散して扁平顔料分散液(a−1)を得た。得られたタルク分散液において、粒径が1〜10μmの粒子の含有率は89%であった。
製造例4
製造例2で得たポリエステル樹脂溶液40部(樹脂固形分28部)、「MICRO ACE S−3」(商品名、日本タルク社製、タルク粉末)30部及び脱イオン水70部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで25分間分散して扁平顔料分散液(a−2)を得た。得られたタルク分散液において、粒径が1〜10μmの粒子の含有率は78%であった。
製造例5
製造例2で得たポリエステル樹脂溶液40部(樹脂固形分28部)、「MICRO ACE S−3」(商品名、日本タルク社製、タルク粉末)30部及び脱イオン水70部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで60分間分散して扁平顔料分散液(a−3)を得た。得られたタルク分散液において、粒径が1〜10μmの粒子の含有率は63%であった。
製造例6
製造例2で得たポリエステル樹脂溶液40部(樹脂固形分28部)、「バリエースB−34」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末)30部及び脱イオン水70部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで60分間分散して硫酸バリウム分散液を得た。
着色顔料分散液の製造
製造例7
製造例2で得たポリエステル樹脂溶液20部(樹脂固形分14部)、「カーボンMA−100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)10部及び脱イオン水60部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.2に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して着色顔料分散液を得た。
水性第1ベースコート塗料(X)の製造
製造例8
撹拌混合容器内において、製造例1で得たアクリルエマルション100部、製造例2で得たポリエステル樹脂溶液18部、製造例3で得た扁平顔料分散液(a−1)56部、製造例6で得た硫酸バリウム分散液46部、製造例7で得た着色顔料分散液45部及び「サイメル325」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂)を均一に混合した。得られた混合物に「プライマルASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加して、pH8.0、塗料固形分23%、20℃におけるフォード且つプNo.4による粘度が40秒である水性第1ベースコート塗料(X−1)を得た。
製造例9〜15
製造例8において、配合組成を下記表1に示す通りとする以外は、製造例8と同様にして、pH8.0、固形分23%、20℃におけるフォード且つプNo.4による粘度が40秒である水性第1ベースコート塗料(X−2)〜(X−8)を得た。
Figure 2010269300
水性第2ベースコート塗料(Y)の製造
製造例16
撹拌混合容器内において、製造例1で得たアクリルエマルション100部、製造例2で得たポリエステル樹脂溶液18部、製造例3で得た扁平顔料分散液(a−1)56部、製造例6で得た硫酸バリウム分散液46部、製造例7で得た着色顔料分散液45部及び「サ
イメル325」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂)を均一に混合した。得られた混合物に「プライマルASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加して、pH8.0、塗料固形分23%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が40秒である水性第1ベースコート塗料(Y−1)を得た。
製造例17〜21
製造例16において、配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、製造例16と同様にして、pH8.0、固形分23%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が40秒である水性第2ベースコート塗料(Y−2)〜(Y−6)を得た。
Figure 2010269300
水酸基含有アクリル樹脂溶液(z−1)の製造
製造例22
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、「スワゾール1000」(商品名、丸善石油化学(株)製、芳香族石油系溶剤)22部及び酢酸ブチル10部を仕込み125℃に昇温し、同温度にて、下記表1に示すモノマー、重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)4.5部及び「スワゾール1000」20部からなる組成のモノマー混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、125℃で30分間保持し、次いで、追加触媒として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5部及び「スワゾール1000」8部からなる混合溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、125℃で1時間保持して固形分60%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(z−1−1)を得た。
製造例23〜26
製造例22において、モノマー混合物の組成を、下記表3に示す組成に変更する以外は、製造例22と同様にして、水酸基含有アクリル樹脂溶液(z−1−2)〜(z−1−5)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂溶液(z−1−1)〜(z−1−5)の固形分及び樹脂性状値を表3に示す。
Figure 2010269300
クリヤーコート塗料(Z)の製造
製造例22〜26で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(z−1−1)〜(z−1−5)を用いて、下記表4に示す配合にて塗装直前に混合して塗料化を行い各クリヤーコート塗料(Z−1)〜(Z−5)を作製した。表4における(注2)及び(注3)は、それぞれ下記の意味を有する。
(注2)「スミジュールN−3300」: 商品名、住友バイエルウレタン(株)製、ヘキサメチレンジイソイシアネートのイソシアヌレート体、NCO含量21.5%。
(注3)「BYK306」: 商品名、ビックケミー(株)製、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、固形分12.5%。
Figure 2010269300
試験用被塗物の作製
合金化溶融亜鉛めっき鋼板に「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、熱硬化型エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を硬化膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
実施例1
上記試験用被塗物に、製造例8で得た水性第1ベースコート塗料(X−1)を、硬化膜厚6μmとなるように静電塗装した。その未硬化のベースコート塗膜上に、製造例16で得た水性第2ベースコート塗料(Y−1)を、硬化膜厚6μmとなるように静電塗装し、次いで、その未硬化のベースコート塗膜上に、製造例27で得たクリヤーコート塗料(Z−1)を硬化膜厚30μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱してこれら3層の塗膜を同時に硬化させることにより試験板を作製した。
実施例2〜9、比較例1〜5
実施例1における水性第1ベースコート塗料(X−1)、水性第2ベースコート塗料(Y−1)及びクリヤーコート塗料(Z−1)を下記表5に示す水性ベースコート塗料及びクリヤーコート塗料に変更する以外は、実施例1と同様に操作して、実施例2〜9及び比較例1〜5の試験板を作製した。なお、表5における(注4)は下記の意味を有する。
(注4)クリヤーコート塗料(Z−6): 「マジクロンKINO−2500」(商品名、関西ペイント社製、カルボキシル基含有樹脂及びエポキシ基含有樹脂を含む溶剤型上塗りクリヤーコート塗料)。
評価試験
上記実施例2〜9及び比較例1〜5で得られた各試験板について、下記の試験方法により評価を行なった。その結果を表4に示す。
(試験方法)
平滑性: 「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWb値を用いて評価した。Wb値は、0.3〜1mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、測定値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。
耐チッピング性: スガ試験機社製の飛石試験機JA−400型(商品名、チッピング試験装置)の試片保持台に試験板を設置し、−20℃において、30cmの距離から0.392MPa(4kgf/cm)の圧縮空気により、粒度7号の花崗岩砕石50gを試験板に45度の角度で衝突させた。その後、得られた試験板を水洗して、乾燥し、塗面に布粘着テープ(ニチバン社製)を貼着して、それを剥離した後、塗膜のキズの発生程度等
を目視で観察し、下記基準により評価した。
◎:キズの大きさが極めて小さく、電着面や素地の鋼板が露出していない
○:キズの大きさが小さく、電着面や素地の鋼板が露出していない
△:キズの大きさは小さいが、電着面や素地の鋼板が露出している
×:キズの大きさはかなり大きく、素地の鋼板も大きく露出している。
Figure 2010269300

Claims (5)

  1. 下記の工程(1)〜(5):
    (1) 鋼板上に電着塗料を塗装し、加熱硬化させて硬化電着塗膜を形成せしめる工程;(2) 工程(1)で得られた硬化電着塗膜上に、水性第1ベースコート塗料(X)を塗装して、硬化膜厚が2〜15μmの範囲内の第1ベースコート塗膜を形成せしめる工程;(3) 工程(2)で得られた第1ベースコート塗膜上に、水性第2ベースコート塗料(Y)を塗装して、硬化膜厚が2〜15μmの範囲内の第2ベースコート塗膜を形成せしめる工程;
    (4) 工程(3)で得られた第2ベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料(Z)を塗装してクリヤーコート塗膜を形成せしめる工程;及び
    (5) 工程(2)〜(4)で形成された第1ベースコート塗膜、第2ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程
    を順次行うことからなり、
    水性第1ベースコート塗料(X)が、水性第1ベースコート塗料(X)中の樹脂固形分100質量部を基準として、扁平顔料(a)を1〜20質量部含有し、水性第2ベースコート塗料(Y)が、水性第2ベースコート塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、体積基準の粒度分布による粒径が1〜10μmの範囲内の粒子の含有率が70〜100%の範囲内である扁平顔料(a1)を10〜20質量部含有し、且つクリヤーコート塗料(Z)が、水酸基含有アクリル樹脂(z−1)及びポリイソシアネート化合物(z−2)を含有することを特徴とする複層塗膜形成方法。
  2. 水性第2ベースコート塗料(Y)が、水性第2ベースコート塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、硫酸バリウムを1〜20質量部含有し、且つ、扁平顔料(a1)と硫酸バリウムとの配合比率が、扁平顔料(a1)/硫酸バリウムの質量比で、4/1〜1/2の範囲内にある請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
  3. 水酸基含有アクリル樹脂(z−1)が、5,000〜10,000の範囲内の重量平均分子量及び10〜50mgKOH/gの範囲内の2級水酸基由来の水酸基価を有する請求項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
  4. 鋼板が、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板及び冷延鋼板のいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法により塗装された物品。
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