JP2010269229A - 金属イオンを導入した中空糸炭素膜及びそれを用いたアルコール水溶液の脱水方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリフェニレンオキシド誘導体から得られる、金属イオンを導入した中空糸炭素膜1であって、ポリフェニレンオキシド誘導体を有機溶剤に溶解し、ノズルを用いて凝固液に押し出して中空糸状に形成した後に焼成して中空糸炭素膜1を製造するに際し、上記有機溶剤に金属イオンを添加し、あるいは、中空糸形成後、中空糸を金属イオンを含む溶液に含浸させることにより、上記焼成前に中空糸に金属イオンを導入して、当該金属イオンを導入した中空糸炭素膜1を得る。
【選択図】図1
Description
本発明は、アルコール水溶液の脱水において分離性能及び耐酸性に優れた炭素膜を用いて、アルコール水溶液から水の分離を、任意の濃度範囲に対して、高効率かつ高選択的に行うことができる分離方法を提供する。
本発明は、該知見に基づき検討した結果、金属イオンを膜中に高分散させることにより、炭素膜の表面を親水化し、なおかつアルコールの吸着を抑制させることで、優れたアルコール水溶液の脱水性能を得ることが可能であることを見出したものである。
さらに、本発明の炭素膜を得るためには、前記焼成を、10−4気圧以下の減圧下又は不活性ガス雰囲気中、450〜850℃で行うことが好ましく、前記不活性ガスを、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスから選ばれるひとつとすることができる。
さらにまた、本発明の炭素膜を得る際には、焼成に先だって、150〜300℃程度で30分〜4時間の予備加熱をおこなうことが好ましい。
さらに、本発明の中空糸炭素膜はモジュール加工性に優れているので、中空糸炭素膜を容器内にコンパクトに充填した膜モジュールを作製することができ、小型でしかも効率よいアルコール脱水装置を製造することが可能となる。
ついで、上記製膜原液を、二重管環状構造の中空糸紡糸ノズルの外管から凝固浴中に押し出し、紡糸ノズルの内管からは、製膜原液の溶媒と混合するがポリフェニレンオキシド誘導体ポリマーに対しては非溶解性の芯液を同時に押し出すことにより、中空糸膜を紡糸する。製膜原液の溶媒に金属イオン塩を添加せず、紡糸後の中空糸膜を金属イオンを含む水溶液に一定時間含浸させても良い。
(水/アルコール分離性能の評価法)
本実施例における炭素膜の水/アルコール分離性能は、図1に示す浸透気化装置により評価した。中空糸炭素膜1の一端を接着剤で封止し、反対側の端部をステンレスチューブと気密状態が保たれるように接着した。中空糸炭素膜1を恒温槽4により一定温度に保たれた水/アルコール混合液からなる供給液2を入れた容器3に浸漬した。冷却トラップ6を液体窒素7(−196℃)に浸し、分離液の供給側圧力を大気圧、透過側圧力を真空ポンプ13にて1Paとした。評価開始から所定時間が経過した後、冷却トラップ6に析出した透過液の重量から透過流束(g・m−2・h−1)を求めた。また、透過液をTCDガスクロマトグラフにより分析し、透過液の濃度を求め、分離係数αを算出した。
(分離性能の計算)
炭素膜の分離性能の指標として、下記式(I)で求められる透過流束(g・m−2・h−1)及び、下記数式(II)で表される分離係数αを用いた。
透過流束=(透過液重量[g])÷{膜面積(m2)×時間(h)} -(I)
分離係数α(水/アルコール)={透過液の水濃度[重量%]/透過液のアルコール濃度[重量%]}÷{供給液の水濃度[重量%]/供給液のアルコール濃度[重量%]}-(II)
結果を表1に示す。
(中空糸炭素膜の製造)
A=45%のスルホン化PPO5.0gと酢酸ナトリウム0.9gをDMAc7.1gとメタノール7.1gに溶解させて製膜原液を作成した。これを二重管環状構造の中空糸紡糸ノズルの外管から凝固浴中に押し出し、紡糸ノズルの内管からは15重量%硝酸アンモニウム水溶液を同時に押し出して紡糸し、これを室温で風乾して前駆体高分子膜を得た。次に、得られた前駆体高分子膜を空気雰囲気中、8℃/分の速度で270℃まで昇温させ、この温度で1時間加熱した後放冷し、前駆体高分子膜の不融化処理を行った。続いて、真空電気炉を用い、上で得られた中空糸炭素膜中間体の炭化を行った。この際の操作は、まず真空電気炉内を10-5 torr以下に減圧し、10℃/分の速度で600℃まで昇温させ、この温度で2時間加熱した後放冷し、中空糸炭素膜を得た。
(得られた中空糸炭素膜の評価)
実施例1で得られた中空糸炭素膜のナトリウム導入量を熱分析(TG)により測定し、75℃における浸透気化分離法による90重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた脱水性能を示している。
実施例1で得られた中空糸炭素膜を用いて130℃における蒸気透過法による90重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた耐熱性と脱水性能を示している。
酢酸ナトリウムの添加量を1.8gに変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸炭素膜を得た。75℃における浸透気化分離法による90重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた脱水性能を示している。
実施例3で得られた中空糸炭素膜を用いて130℃における蒸気透過法による90重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた耐熱性と脱水性能を示している。
A=45%のスルホン化PPO5.0gをDMAc7.1gとメタノール7.1gに溶解させて製膜原液を作成した。これを二重管環状構造の中空糸紡糸ノズルの外管から凝固浴中に押し出し、紡糸ノズルの内管からは15重量%硝酸アンモニウム水溶液を同時に押し出して紡糸し、これを20重量%塩化ナトリウム水溶液に2時間浸漬し、イオン交換水で洗浄したのち、室温で風乾して前駆体高分子膜を得た。次に、得られた前駆体高分子膜を空気雰囲気中、8℃/分の速度で270℃まで昇温させ、この温度で1時間加熱した後放冷し、前駆体高分子膜の不融化処理を行った。続いて、真空電気炉を用い、上で得られた中空糸炭素膜中間体の炭化を行った。この際の操作は、まず真空電気炉内を10-5 torr以下に減圧し、10℃/分の速度で600℃まで昇温させ、この温度で2時間加熱した後放冷し、中空糸炭素膜を得た。
(得られた中空糸炭素膜の評価)
実施例5で得られた中空糸炭素膜のナトリウム導入量を熱分析(TG)により測定し、75℃における浸透気化分離法による90重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた脱水性能を示している。
実施例5で得られた中空糸炭素膜を用いて75℃における浸透気化分離法による50重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた脱水性能を示している。
実施例5で得られた中空糸炭素膜を用いて75℃における浸透気化分離法による10重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた脱水性能を示している。
実施例5で得られた中空糸炭素膜を用いて130℃における蒸気透過法による90重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた耐熱性と脱水性能を示している。
実施例5で得られた中空糸炭素膜を用いて75℃における浸透気化分離法による90重量%2−プロパノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた脱水性能を示している。
実施例5で得られた中空糸炭素膜を用いて75℃における浸透気化分離法による90重量%1−ブタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた脱水性能を示している。
紡糸後の浸漬液を20重量%塩化カリウム水溶液に変更した以外は、実施例5と同様にして中空糸炭素膜を得た。75℃における浸透気化分離法による90重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた脱水性能を示している。
実施例11で得られた中空糸炭素膜を用いて130℃における蒸気透過法による90重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた耐熱性と脱水性能を示している。
紡糸後の浸漬液を20重量%硝酸マグネシウム水溶液に変更した以外は、実施例5と同様にして中空糸炭素膜を得た。75℃における浸透気化分離法による90重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた脱水性能を示している。
紡糸後の浸漬液を20重量%硝酸アルミニウム水溶液に変更した以外は、実施例5と同様にして中空糸炭素膜を得た。75℃における浸透気化分離法による90重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、得られた中空糸炭素膜は高選択的に水だけを分離しており、優れた脱水性能を示している。
A=45%のスルホン化PPO5.0gをDMAc7.1gとメタノール7.1gに溶解させて製膜原液を作成した。これを二重管環状構造の中空糸紡糸ノズルの外管から凝固浴中に押し出し、紡糸ノズルの内管からは15重量%硝酸アンモニウム水溶液を同時に押し出して紡糸し、これを室温で風乾して前駆体高分子膜を得た。次に、得られた前駆体高分子膜を空気雰囲気中、8℃/分の速度で270℃まで昇温させ、この温度で1時間加熱した後放冷し、前駆体高分子膜の不融化処理を行った。続いて、真空電気炉を用い、上で得られた中空糸炭素膜中間体の炭化を行った。この際の操作は、まず真空電気炉内を10-5 torr以下に減圧し、10℃/分の速度で600℃まで昇温させ、この温度で2時間加熱した後放冷し、中空糸炭素膜を得た。
(得られた中空糸炭素膜の評価)
比較例1で得られた中空糸炭素膜の75℃における浸透気化分離法による90重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、金属イオンが導入されていない中空糸炭素膜は、分離係数が小さく、脱水性能は不十分であった。
比較例1で得られた中空糸炭素膜を用いて130℃における蒸気透過法による90重量%エタノール水溶液の脱水性能の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、金属イオンが導入されていない中空糸炭素膜は、分離係数が小さく、脱水性能は不十分であった。
実施例5の試料と比較例1の試料について、25℃における水およびエタノールの吸着等温線(図2、図3)をそれぞれ作成し、本発明の中空糸炭素膜の優れたアルコール水溶液の脱水性能について考察した。
図2から明らかなように、ナトリウムイオンを導入した実施例5の試料は、ナトリウムイオンを導入していない比較例1の試料に比べて炭素膜の親水性が増加したため、水の吸着量が大きく増加していることが分かる。一方、図3に示したように、実施例5の試料のエタノールの吸着量は、比較例1の試料に比べて小さくなっていた。つまり、ナトリウムイオンの導入によって、水とエタノールの吸着量の差が大きくなったことにより優れた透過流束と分離係数が発揮される。
2…供給液
3…容器
4…恒温槽
5…撹拌子
6…冷却トラップ
7…液体窒素
8…温度計
9…保温テープ
10…ストップバルブ
11…圧力計
12…ストップバルブ
13…真空ポンプ
14…スターラー
Claims (11)
- 金属イオンを導入した中空糸炭素膜。
- 金属イオンがポリフェニレンオキシド誘導体を前駆体とする炭素膜に導入されていることを特徴とする、請求項1記載の中空糸炭素膜。
- 実質的に下記の
及び
(式中、R11〜R12は各々独立して、水素原子、スルホン基を示す。ただし、R11〜R12が共に水素原子であることはない。)で表される繰り返し単位からなり、その繰り返し単位(b)の(a+b)に対する割合A(%)は15%<A<60%であるポリフェニレンオキシド誘導体を有機溶剤に溶解し、ノズルを用いて凝固液に押し出して中空糸状に形成した後に焼成して中空糸炭素膜を製造するに際し、上記有機溶剤に金属イオンを添加し、あるいは、中空糸形成後、中空糸を金属イオンを含む溶液に含浸させることにより、上記焼成前に中空糸に金属イオンを導入したことを特徴とする、請求項1または2記載の金属イオンを導入した中空糸炭素膜。 - 金属イオンがナトリウムイオンまたはカリウムイオンであることを特徴とする、請求項1〜3記載の金属イオンを導入した中空糸炭素膜。
- 金属イオンを導入した中空糸炭素膜の製造方法であって、
実質的に下記の
及び
(式中、R11〜R12は各々独立して、水素原子、スルホン基を示す。ただし、R11〜R12が共に水素原子であることはない。)で表される繰り返し単位からなり、その繰り返し単位(b)の(a+b)に対する割合A(%)は15%<A<60%であるポリフェニレンオキシド誘導体を有機溶剤に溶解し、ノズルを用いて凝固液に押し出して中空糸状に形成した後に焼成して中空糸炭素膜を製造するに際し、上記有機溶剤に金属イオンを添加し、あるいは、中空糸形成後、中空糸を金属イオンを含む溶液に含浸させることにより、上記焼成前に中空糸に金属イオンを導入させることを特徴とする、金属イオンを導入した中空糸炭素膜の製造方法。 - 高選択的かつ親水性の膜として金属イオンを導入した中空糸炭素膜を用いてアルコール水溶液から水を分離することを特徴とする、アルコール水溶液の脱水方法。
- 金属イオンがポリフェニレンオキシド誘導体を前駆体とする炭素膜に導入されている中空糸炭素膜を用いることを特徴とする、請求項6記載の方法。
- 金属イオンを導入した中空糸炭素膜として、
実質的に下記の
及び
(式中、R11〜R12は各々独立して、水素原子、スルホン基を示す。ただし、R11〜R12が共に水素原子であることはない。)で表される繰り返し単位からなり、その繰り返し単位(b)の(a+b)に対する割合A(%)は15%<A<60%であるポリフェニレンオキシド誘導体を有機溶剤に溶解し、ノズルを用いて凝固液に押し出して中空糸状に形成した後に焼成して中空糸炭素膜を製造するに際し、上記有機溶剤に金属イオンを添加し、あるいは、中空糸形成後、中空糸を金属イオンを含む溶液に含浸させることにより、上記焼成前に中空糸に金属イオンを導入させた中空糸炭素膜を用いることを特徴とする、請求項6または7記載の方法。 - 金属イオンがナトリウムイオンまたはカリウムイオンであることを特徴とする、請求項6〜8記載の金属イオンを導入した中空糸炭素膜を用いたアルコール水溶液の脱水方法。
- アルコール水溶液のアルコールは、エタノール、2−プロパノール、または1−ブタノールである、請求項6〜9記載の方法。
- 全濃度範囲のアルコール水溶液を脱水処理対象とする、請求項6〜10項記載の方法。
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