JP2010266769A - 偏光フィルム、コーティング液、及び画像表示装置 - Google Patents

偏光フィルム、コーティング液、及び画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、高い二色比を示す偏光フィルムを提供する。
【解決手段】 本発明の偏光フィルムは、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含んでいる。
【化1】
Figure 2010266769

一般式(I)において、Qは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Xは、カチオン性基、ニトロ基、シアノ基、又は水酸基を表し、Mは、対イオンを表す。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高い二色比を示す偏光フィルム、及びこの偏光フィルムを形成するためのコーティング液に関する。
偏光フィルムは、偏光又は自然光から特定の直線偏光を透過させる機能を有する光学部材である。
汎用的な偏光フィルムは、例えば、ヨウ素で染色したポリビニルアルコールフィルムを延伸することにより得られる。
また、リオトロピック液晶性化合物を含むコーティング液を基材上に塗工する方法(溶液流延法)により得られる偏光フィルムも知られている。
例えば、特許文献1の実施例16には、7−スルホ−1,4−ナフチレン基を有するアゾ化合物を含むコーティング液を、基材上に塗工することにより得られた偏光フィルムが開示されている。
特開2006−323377号公報
上記特許文献1の偏光フィルムは、コーティング液の塗工によって得られるため、その厚みを薄くできる。しかしながら、上記特許文献1の偏光フィルムは、二色比が低く、十分な偏光特性を有しない。
本発明の第1の目的は、高い二色比を示す偏光フィルムを提供することである。
本発明の第2の目的は、高い二色比を示し、且つ比較的薄い偏光フィルムを形成するためのコーティング液を提供することである。
一般に、溶媒に溶解させたアゾ化合物は、溶液中において超分子会合体を形成することによって、液晶相を発現する。この超分子会合体が安定な状態であるほど、アゾ化合物の配向性が向上する。本発明者らは、溶液中において配向性に優れるアゾ化合物を見出すことによって本発明を完成させた。
本発明の偏光フィルムは、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含む。
Figure 2010266769
一般式(I)において、Qは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Xは、カチオン性基、ニトロ基、シアノ基、又は水酸基を表し、Mは、対イオンを表す。
本発明の好ましい偏光フィルムは、前記Xが、カチオン性基又はニトロ基である。
本発明の好ましい偏光フィルムは、前記カチオン性基が、−NHR基、又は−CONHR基である。ただし、前記Rは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基又はエトキシ基を表す。
本発明の別の局面によれば、コーティング液が提供される。
このコーティング液は、上記一般式(I)で表されるアゾ化合物と、溶媒と、を含む。
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。
この画像表示装置は、その構成部材として、前記いずれかの偏光フィルムを有する。
本発明の偏光フィルムは、一般式(I)で表されるアゾ化合物を含んでいるので、高い二色比を示す。また、本発明の偏光フィルムは、前記アゾ化合物を含むコーティング液を用いた溶液流延法で作製することができる。このため、比較的薄い偏光フィルムを提供できる。
本発明のコーティング液は、一般式(I)で表されるアゾ化合物を含んでいる。このコーティング液を適当な基材上に塗工することにより、比較的薄く、且つ高い二色比を示す偏光フィルムを容易に得ることができる。
アゾ化合物の結合状態を示す参考模式図。 1つの実施形態に係る偏光フィルムを示す部分断面図。 1つの実施形態に係る偏光板を示す部分断面図。
(偏光フィルム)
本発明の偏光フィルムは、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含む。
Figure 2010266769
一般式(I)において、Qは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Xは、カチオン性基、ニトロ基、シアノ基、又は水酸基を表し、Mは、対イオンを表す。
なお、本明細書において、「置換若しくは無置換」は、「置換基を有する、又は、置換基を有しない」ことを意味する。
また、本明細書において、「Y〜Z」という記載は、「Y以上Z以下」を意味する。
前記Qで表されるアリール基は、フェニル基の他、ナフチル基などのようなベンゼン環が2以上縮合した縮合環基が挙げられる。前記Qのアリール基は、置換基を有していてもよいし、又は、置換基を有していなくてもよい。前記アリール基が、置換若しくは無置換のいずれの場合でも、−SOM基を有する式(I)のアゾ化合物は溶媒溶解性を有する。
前記Qは、好ましくは置換若しくは無置換のフェニル基、又は置換若しくは無置換のナフチル基であり、より好ましくは置換若しくは無置換のナフチル基であり、特に好ましくは置換基を有する2−ナフチル基である。
前記アリール基が置換基を有する場合、その置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、炭素数1〜6のアシルアミノ基、ジヒドロキシプロピル基等の炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、−SOM基などのスルホン酸基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基などのNHR基、ハロゲン基などが挙げられる。好ましくは、前記置換基は、スルホン酸基、水酸基、シアノ基、ニトロ基又はNHR基から選ばれる少なくとも1つである。前記NHR基のRは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアシル基を表す。前記Rは、好ましくは水素原子、メチル基又はアセチル基(−COCH)であり、より好ましくは水素原子である。前記アリール基は、前記置換基を複数有していてもよい。このような置換基を有するアリール基を有するアゾ化合物は、特に水溶性に優れている。
前記Qの具体例としては、例えば、下記式(a)乃至式(l)などが挙げられる。
Figure 2010266769
一般式(I)で表されるアゾ化合物の中で、本発明においては、下記一般式(II)で表されるアゾ化合物が好ましく、さらに、式(III)で表されるアゾ化合物がより好ましい。
Figure 2010266769
式(II)において、Yは、水酸基又は−NHR基(Rは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアシル基を表し、好ましくは、水素原子である)を表し、k及びmは、Yの置換数を表し、l及びnは、−SOMの置換数を表す。k及びlは、それぞれ0〜4の整数であり、m及びnは、それぞれ0〜2の整数である。ただし、k+l=1〜4であり、m+n=0〜2である。kは、好ましくは0〜2であり、より好ましくは1〜2である。lは、好ましくは0〜4であり、より好ましくは1〜3である。m及びnは、好ましくはそれぞれ0〜1である。なお、式(II)及び式(III)のM及びXは、式(I)と同様である。
上記式(I)、式(II)及び式(III)のXは、カチオン性基、ニトロ基、シアノ基、又は水酸基を表す。前記カチオン性基としては、アミノ基などの−NHR基、−CONHR基、アンモニウム塩基、及びそれらの塩などが挙げられる。前記塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。ただし、前記−NHR基及び−CONHR基のRは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアシル基を表す。前記Rは、好ましくは水素原子、メチル基又はアセチル基(−COCH)であり、より好ましくは水素原子である。
前記Xは、好ましくはカチオン性基、又はニトロ基であり、より好ましくはカチオン性基である。このカチオン性基は、好ましくは−NHR基、−CONHR基又はその塩であり、より好ましくは−NH基(アミノ基)、−CONH基、−NHCOCH基又はその塩であり、特に好ましくは−NH基である。このようなXを有する式(I)のアゾ化合物は、水溶性に優れている上、溶液状態において、安定な超分子会合体を形成し得る。特に、Xがアミノ基などのカチオン性基であるアゾ化合物は、そのXが隣接するアゾ化合物の−SOM基に対して強いイオン結合を形成し得る。このため、Xがカチオン性基であるアゾ化合物は、より安定性に優れた超分子会合体を形成する。このため、前記アゾ化合物を含む偏光フィルムは、より高い二色比を示すので好ましい。
上記式(I)、式(II)及び式(III)のM(対イオン)は、好ましくは水素原子;Li、Na、K、Csなどのアルカリ金属原子;Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属原子;金属イオンなどが挙げられる。前記金属イオンとしては、例えば、Ni2+、Fe3+、Cu2+、Ag、Zn2+、Al3+、Pd2+、Cd2+、Sn2+、Co2+、Mn2+、Ce3+などが挙げられる。
上記式(I)で表されるアゾ化合物は、例えば、次のような方法で得ることができる。メタ位置換アニリン誘導体と、1,6−クレーブ酸(5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸とも言う)とを、常法により、ジアゾ化及びカップリング反応させてモノアゾ化合物を得る。このモノアゾ化合物を更にジアゾ化し、アリール誘導体とカップリング反応させることによって、式(I)のアゾ化合物が得られる。前記アニリン誘導体としては、例えば、3’−アセトアニリド、3−ニトロアニリン、3−ヒドロキシアニリンなどが挙げられる。
前記アゾ化合物は、波長380nm〜780nmの間の少なくとも一部の波長において吸収二色性を示す。また、前記アゾ化合物は、溶媒に溶解させた溶液状態で液晶性(リオトロピック液晶性)を示す。
本発明の偏光フィルムは、前記アゾ化合物を少なくとも含んでいればよい。もっとも、本発明の効果を損なわない範囲で、偏光フィルムは、他の色素、ポリマー、添加剤などを含んでいてもよい。添加剤としては、下記の例示を参照されたい。
(本発明のコーティング液及びこれを用いた偏光フィルムの製造方法)
本発明の偏光フィルムは、例えば、前記式(I)で表されるアゾ化合物とこれを溶解させる溶媒とを含むコーティング液を適当な基材上に薄膜状に塗工し、乾燥することによって得られる。
本発明の偏光フィルムは、好ましくは下記工程A及び工程Bを経て製造でき、必要に応じて、工程Bの後、下記工程Cを行ってもよい。
工程A:前記アゾ化合物と溶媒とを含むコーティング液を、基材上に塗工し、塗膜を形成する工程。
工程B:前記塗膜を乾燥する工程。
工程C:工程Bで乾燥させた塗膜の表面に、耐水化処理を施す工程。
前記基材の、コーティング液を塗工する面には、配向規制力が付与されていてもよい。
工程Aは、コーティング液を、基材上に塗工し、塗膜を形成する工程である。
本発明のコーティング液は、前記式(I)で表されるアゾ化合物と、前記アゾ化合物を溶解させる溶媒と、を含む。
前記溶媒は、特に限定されず、従来公知の溶媒を用いることができるが、水系溶媒が好ましい。水系溶媒としては、水、親水性溶媒、及び、水と親水性溶媒の混合溶媒などが挙げられる。前記親水性溶媒は、水と略均一に溶解させることができる溶媒である。親水性溶媒としては、例えば、メタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコールなどのグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;などが挙げられる。上記水系溶媒は、好ましくは、水、又は、水と親水性溶媒の混合溶媒が用いられる。
前記アゾ化合物は、−SOM基を有するので、水に可溶であり、特に前記水系溶媒に対する溶解性に優れている。
上記コーティング液は、液温やアゾ化合物の濃度などを変化させることにより、液晶相を示す。
この液晶相は、アゾ化合物が液中で超分子会合体を形成することによって発現する。液晶相は、特に限定されず、ネマチック液晶相、スメクチック液晶相、コレステリック液晶相、又はヘキサゴナル液晶相等が挙げられる。液晶相は、偏光顕微鏡で観察される光学模様によって、確認、識別できる。
コーティング液中におけるアゾ化合物の濃度は、アゾ化合物が液晶相を示すように調製することが好ましい。前記コーティング液中におけるアゾ化合物の濃度は、0.5質量%〜50質量%であり、好ましくは1質量%〜30質量%である。
また、コーティング液は、適切なpHに調整される。コーティング液のpHは、好ましくはpH2〜10程度、より好ましくはpH6〜8程度である。
さらに、コーティング液の温度は、好ましくは10℃〜40℃、より好ましくは15℃〜30℃に調整される。
さらに、上記コーティング液には、添加剤が添加されていてもよい。該添加剤としては、例えば、相溶化剤、界面活性剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。添加剤を添加する場合、その量は、アゾ化合物100質量部に対して、好ましくは0を超え10質量部未満である。
基材は、コーティング液を均一に展開するために用いられる。この目的に適していれば基材の種類は特に限定されない。基材としては、例えば、ポリマーフィルム、ガラス板などのシートを用いることができる。また、基材として、金属ドラムを用いてもよい。シート又は金属ドラムなどの上にコーティング液を塗工することにより、アゾ化合物を含む薄膜状の塗膜を形成できる。
好ましい実施形態においては、前記基材として、配向基材が用いられる。前記配向基材は、少なくとも表面に配向規制力を有する基材である。前記配向基材にコーティング液を塗工することにより、アゾ化合物を容易に配向させることができる。
上記ポリマーフィルムとしては、特に限定されないが、透明性に優れているフィルム(例えば、ヘイズ値3%以下)が好ましい。
上記ポリマーフィルムの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系;トリアセチルセルロース等のセルロース系;ポリカーボネート系;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系;ポリスチレン等のスチレン系;ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン等のオレフィン系;などが挙げられる。前記アゾ化合物を良好に配向させるためには、ノルボルネン系フィルムを用いることが好ましい。
前記配向基材は、基材(例えばポリマーフィルム)の表面に又は前記基材上に形成された表面層に、配向規制力を付与することによって得られる。
前記配向規制力を付与する方法は、特に限定されない。前記方法としては、前記基材の表面にラビング処理を施す方法、前記基材上にポリイミドなどの表面層を形成し、この表面層にラビング処理を施す方法、前記基材上に光反応(光異性化、光二量化又は光分解など)を起こす化合物を含む表面層を形成し、前記表面層に光照射を行うことによって表面層に方向性を付与する方法、などが挙げられる。
シートからなる基材の厚みは、強度等に応じて適宜に設計し得る。薄型軽量化の観点から、前記基材の厚みは、好ましくは300μm以下、より好ましくは5μm〜200μm、特に好ましくは10μm〜100μmである。
シートからなる基材の一面に前記コーティング液を塗工する際には、適切なコータを用いた塗工方法が採用され得る。前記コータとしては、例えば、バーコータ、リバースロールコータ、正回転ロールコータ、グラビアコータ、ロッドコータ、スロットダイコータ、スロットオリフィスコータ、カーテンコータ、ファウンテンコータなどが挙げられる。なお、金属ドラムのような基材上に前記コーティング液を塗工する際には、適切な流延展開法が採用され得る。
液晶相状態のコーティング液を基材上に塗工すると、コーティング液の流動過程でアゾ化合物の超分子会合体に剪断応力が加わる。よって、前記超分子会合体の長軸方向がコーティング液の流動方向と平行となって、前記アゾ化合物の超分子会合体が配向した塗膜を基材上に形成できる。また、基材が配向基材である場合、その配向規制力に従ってアゾ化合物が配向する。
なお、アゾ化合物の配向を高めるため、必要に応じて、前記塗膜を形成した後、磁場又は電場などを印加してもよい。
工程Bは、前記塗膜を乾燥する工程である。
基材上に、コーティング液を塗工して塗膜を形成した後、これを乾燥する。
乾燥は、自然乾燥、強制的な乾燥などで実施できる。強制的な乾燥としては、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥などが挙げられる。好ましくは、自然乾燥である。
乾燥時間は、乾燥温度や溶媒の種類によって、適宜、選択され得る。例えば、自然乾燥の場合には、乾燥時間は、好ましくは1秒〜120分であり、より好ましくは10秒〜5分である。
上記塗膜は、乾燥する過程で濃度が上昇し、配向したアゾ化合物が固定される。塗膜中のアゾ化合物の配向が固定されることによって、偏光フィルムの特性である、吸収二色性を生じる。得られた乾燥塗膜は、偏光フィルムとして使用できる。前記偏光フィルム中における残存溶媒量は、偏光フィルムの総質量に対し、好ましくは5質量%以下である。前記乾燥は、偏光フィルム中の残存溶媒量が5質量%以下となるまで行うことが好ましい。
工程Cは、前記乾燥塗膜の表面(基材の接合面と反対面)に、耐水性を付与する工程である。
具体的には、上記工程Bで形成された乾燥塗膜の表面に、アルミニウム塩、バリウム塩、鉛塩、クロム塩、ストロンチウム塩、セリウム塩、ランタン塩、サマリウム塩、イットリウム塩、銅塩、鉄塩、及び分子内に2個以上のアミノ基を有する化合物塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物塩を含む溶液を接触させる。
工程Cを行うことにより、前記化合物塩を含む層が前記乾燥塗膜の表面に形成される。かかる層を形成することにより、乾燥塗膜の表面を水に対して不溶化又は難溶化させることができる。よって、乾燥塗膜(偏光フィルム)に、耐水性を付与できる。
なお、必要に応じて、得られた偏光フィルムの表面を水又は洗浄液で洗浄してもよい。
(本発明の偏光フィルムの特性)
本発明の偏光フィルムは、前記アゾ化合物の超分子会合体が所定方向に配向しているため、波長380nm〜780nmの間の少なくとも一部の波長において吸収二色性を有する。前記偏光フィルムの二色比は、好ましくは15以上であり、より好ましくは20以上である。ただし、二色比は、下記実施例に記載の方法によって求めることができる。
前記式(I)で表されるアゾ化合物を含む偏光フィルムが、高い二色比(例えば、二色比が15以上)を示す理由を、本発明者らは、次のように推定している。式(I)で表される、隣接する2つのアゾ化合物は、静電相互作用によって結合し、溶液中において安定な超分子会合体を形成し得る。具体的には、図1に示すように、一方のアゾ化合物中のベンゼン環(符号B1で示す)のメタ位に結合した置換基Xと、他方のアゾ化合物中の6−スルホ−1,4−ナフタレン環(符号N2で示す)の−SOM基とが、静電相互作用(点線で示す)によって結合する。同時に、一方のアゾ化合物中の6−スルホ−1,4−ナフタレン環(符号N1で示す)の−SOM基と、他方のアゾ化合物中のベンゼン環(符号B2で示す)のメタ位に結合した置換基Xとが、静電相互作用(点線で示す)によって結合する。このように隣接する2つのアゾ化合物が結合することによって、アゾ化合物の超分子会合体が安定化する。このため、アゾ化合物の配向性が向上し、このアゾ化合物を含む偏光フィルムは、高い二色比を示す。特に、式(I)のXがカチオン性基である場合、カチオン性基と−SOM基がイオン結合を形成し得るので、より安定性に優れた超分子会合体が形成される。このため、式(I)のXがカチオン性基であるアゾ化合物を用いることがより好ましい。
前記偏光フィルムの偏光度は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。前記偏光フィルムの透過率(波長550nm、23℃で測定)は、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上である。ただし、前記透過率は、例えば、分光光度計(日本分光(株)製、製品名「V−7100」)を用いて測定できる。
前記偏光フィルムの厚みは、特に限定されない。本発明の偏光フィルムは、上述するように溶液流延法によって形成できるので、より薄く形成できる。具体的には、偏光フィルムの厚みは、好ましくは0.1μm〜5μmであり、より好ましくは0.1μm〜3μmである。
(本発明の偏光フィルムの用途等)
上記コーティング液をシートからなる基材上に塗工することによって得られた偏光フィルム1は、図2に示すように、シートからなる基材2上に積層されている。
本発明の偏光フィルム1は、通常、基材2上に積層された状態で使用される。もっとも、前記偏光フィルム1は、上記基材2から剥離して使用することもできる。
本発明の偏光フィルム1には、さらに、他の光学フィルムを積層してもよい。他の光学フィルムとしては、保護フィルム、位相差フィルムなどが挙げられる。本発明の偏光フィルムに、保護フィルム及び/又は位相差フィルムを積層することにより、偏光板を構成できる。
図3に、本発明の偏光フィルム1に保護フィルム3が積層された偏光板5を示す。この偏光板5は、基材2と、前記基材2上に積層された偏光フィルム1と、前記偏光フィルム1上に積層された保護フィルム3と、を有する。基材2は、偏光フィルム1を保護する機能を有する。このため、前記偏光板5は、偏光フィルム1の一方の面にのみ保護フィルム3が積層されている。
また、特に図示しないが、この偏光板5には、位相差フィルムなどの他の光学フィルムが積層されていてもよい。
偏光フィルムに他の光学フィルムを積層する場合、実用的には、これらの間には任意の適切な接着層が設けられる。接着層を形成する材料としては、例えば、接着剤、粘着剤、アンカーコート剤等が挙げられる。
本発明の偏光フィルムの用途は、特に限定されない。本発明の偏光フィルムは、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置などの画像表示装置の構成部材として使用される。
前記画像表示装置が液晶表示装置の場合、その好ましい用途は、テレビ、携帯機器、ビデオカメラなどである。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに説明する。ただし、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
[液晶相の観察方法]
2枚のスライドガラスの間にコーティング液を少量挟み込み、顕微鏡用大型試料加熱冷却ステージ(ジャパンハイテック(株)製、製品名「10013L」)を備えた、偏光顕微鏡(オリンパス(株)製、製品名「OPTIPHOT−POL」)を用いて、液晶相を観察した。
[偏光フィルムの厚みの測定方法]
偏光フィルムの厚みは、ノルボルネン系ポリマーフィルム上に形成された偏光フィルムの一部を剥離し、3次元非接触表面形状計測システム((株)菱化システム製、製品名「Micromap MM5200」)を用い、前記フィルムと偏光フィルムの段差を測定した。
[二色比(DR)の測定方法]
分光光度計(日本分光(株)製、製品名「V−7100」)を用いて、波長380nm〜780nmの偏光透過スペクトル(k)及び(k)をそれぞれ測定した。前記偏光透過スペクトル(k)は、偏光フィルムの透過軸方向と平行な電界ベクトルを有する偏光を入射した場合の透過スペクトルであり、前記偏光透過スペクトル(k)は、偏光フィルムの透過軸方向と垂直な電界ベクトルを有する偏光を入射した場合の透過スペクトルである。測定した偏光透過スペクトル(k)及び(k)から、三刺激値(Y)及び(Y)をそれぞれ算出した。これを、式;DR=log(1/Y)/log(1/Y)に入することによって、二色比(DR)を求めた。
[実施例1]
3’−アセトアニリドと5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸とを、下記文献に記載の方法に従って、ジアゾ化及びカップリング反応させて、モノアゾ化合物を得た。このモノアゾ化合物を、同文献に記載の方法に従って、ジアゾ化した後、さらに1−アミノ−8−ナフトール−2,4−ジスルホン酸リチウム塩とカップリング反応させ、水酸化リチウムを用いてアセチル基を加水分解した。得られた粗生成物を塩化リチウムで塩析することにより、下記構造式(IV)で表されるアゾ化合物を得た。
文献:細田豊著「理論製造 染料化学(5版)」(昭和43年7月15日技報堂発行の135頁〜152頁)。
Figure 2010266769
前記構造式(IV)のアゾ化合物をイオン交換水に溶解させて、濃度20質量%のコーティング液を調製した。このコーティング液を、上記液晶相の観察方法に従って、23℃で観察したところ、ネマチック液晶相が確認された。
コーティング液に更にイオン交換水を加え、濃度5質量%のコーティング液を調製した。このコーティング液を、ラビング処理及びコロナ処理が施されたノルボルネン系ポリマーフィルム(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア」)の前記処理面上に、バーコータ(BUSHMAN社製、製品名「Mayer rot HS3」)を用いて塗工し、23℃の恒温室内で、300秒間自然乾燥した。乾燥後の塗膜が、偏光フィルムである。
得られた偏光フィルムの厚みは、0.4μmであった。前記偏光フィルムの二色比を表1に示す。
[実施例2]
3−ニトロアニリンと5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸とを、上記文献に記載の方法に従って、ジアゾ化及びカップリング反応させて、モノアゾ化合物を得た。このモノアゾ化合物を、同文献に記載の方法に従って、ジアゾ化した後、さらに1−アミノ−8−ナフトール−2,4−ジスルホン酸リチウム塩とカップリング反応させた。得られた粗生成物を塩化リチウムで塩析することにより、下記構造式(V)で表されるアゾ化合物を得た。
Figure 2010266769
前記構造式(V)のアゾ化合物をイオン交換水に溶解させて、濃度20質量%のコーティング液を調製した。このコーティング液を、上記液晶相の観察方法に従って、23℃で観察したところ、ネマチック液晶相が確認された。
このコーティング液に更にイオン交換水を加え、濃度5質量%のコーティング液を調製した。このコーティング液を、実施例1と同様に、ノルボルネン系ポリマーフィルム上に塗工することにより、厚み0.4μmの偏光フィルムを作製した。その二色比を表1に示す。
[比較例1]
5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸に代えて、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、下記構造式(VI)で表されるアゾ化合物を得た。
Figure 2010266769
前記構造式(VI)のアゾ化合物をイオン交換水に溶解させて、濃度20質量%のコーティング液を調製した。このコーティング液を、上記液晶相の観察方法に従って、23℃で観察したところ、ネマチック液晶相が確認された。
このコーティング液に更にイオン交換水を加え、濃度5質量%のコーティング液を調製した。このコーティング液を、実施例1と同様に、ノルボルネン系ポリマーフィルム上に塗工することにより、厚み0.4μmの偏光フィルムを作製した。その二色比を表1に示す。
[比較例2]
5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸に代えて、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、下記構造式(VII)で表されるアゾ化合物を得た。
Figure 2010266769
前記構造式(VII)のアゾ化合物をイオン交換水に溶解させて、濃度20質量%のコーティング液を調製した。このコーティング液を、上記液晶相の観察方法に従って、23℃で観察したところ、ネマチック液晶相が確認された。
このコーティング液に更にイオン交換水を加え、濃度5質量%のコーティング液を調製した。このコーティング液を、実施例1と同様に、ノルボルネン系ポリマーフィルム上に塗工することにより、厚み0.4μmの偏光フィルムを作製した。その二色比を表1に示す。
Figure 2010266769
[評価]
実施例1及び2の偏光フィルムは、比較例1及び2に比して、二色比が高かった。特に、メタ位がアミノ基であるアゾ化合物(実施例1の構造式(IV))の使用は、高い二色比を示す偏光フィルムの形成を可能にする。
本発明の偏光フィルムは、例えば、液晶表示装置の構成部材、偏光サングラスなどに利用できる。
本発明のコーティング液は、偏光フィルムの形成材料として利用できる。

Claims (5)

  1. 下記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含む偏光フィルム。
    Figure 2010266769
    Qは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Xは、カチオン性基、ニトロ基、シアノ基、又は水酸基を表し、Mは、対イオンを表す。
  2. 前記Xが、カチオン性基又はニトロ基である請求項1に記載の偏光フィルム。
  3. 前記カチオン性基が、−NHR基、又は−CONHR基であり、前記Rは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基又はエトキシ基を表す、請求項1又は2に記載の偏光フィルム。
  4. 下記一般式(I)で表されるアゾ化合物と、溶媒と、を含むコーティング液。
    Figure 2010266769
    Qは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Xは、カチオン性基、ニトロ基、シアノ基、又は水酸基を表し、Mは、対イオンを表す。
  5. 請求項1〜3の何れかに記載の偏光フィルムを有する画像表示装置。
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