JP2010257738A - 燃料電池および燃料電池装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池の高温領域における発電反応を抑制でき、高温領域における温度を低下させるのに有利な燃料電池および燃料電池装置を提供する。
【解決手段】燃料電池10は、アノード流体が供給されるアノード11と、カソード流体が供給されるカソード12と、アノード11とカソード12とで挟まれた固体酸化物形の電解質層15とを有する。発電運転されるとき燃料電池10において他の領域よりも相対的に高温となる高温領域10hを有する温度分布が形成されている。高温領域10hは、他の領域よりも発電反応を抑える反応抑制部を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、アノードおよびカソードで電解質層を挟んだ固体酸化物形の燃料電池、および、燃料電池を複数個並設させた燃料電池装置に関する。
固体酸化物形の燃料電池は、アノード流体が供給されるアノードと、カソード流体が供給されるカソードと、アノードとカソードとで挟まれた固体酸化物形の電解質層とを有する。このような燃料電池が発電運転するとき、温度分布を発生させ、相対的に高温の高温領域と、相対的に低温の低温領域とを生成させる。特許文献1によれば、アノードにおける高温領域に改質触媒を設け、改質反応による吸熱により高温領域の温度を低下させる技術が開示されている。更にアノードにおける低温領域に燃焼触媒を設け、燃焼反応による発熱により低温領域の温度を上昇させる技術が開示されている。特許文献2によれば、燃料電池のうち相対的に高温となり易い中央部の冷却性を燃料ガスにより高めて、温度分布の均一化を図る燃料電池が開示されている。
特開2006−59614号公報 特開2006−66387号公報
産業界では、燃料電池の高温領域の温度を低下させ、燃料電池における温度を均一化させることにより燃料電池における温度の高低差を抑制させる技術の開発が進められている。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、燃料電池の高温領域における発電反応を抑える反応抑制部により、燃料電池の高温領域における発電反応を抑制でき、高温領域における温度を低下させるのに有利であり、燃料電池における温度の高低差を低減させるのに有利な燃料電池および燃料電池装置を提供することを課題とする。
様相1の本発明に係る燃料電池は、アノード流体が供給されるアノードと、カソード流体が供給されるカソードと、アノードとカソードとで挟まれた固体酸化物形の電解質層とを具備する燃料電池であって、燃料電池は、発電運転されるとき燃料電池において所定の温度以上に高温となる高温領域を有する温度分布を示し、高温領域は、高温領域以外の領域よりも発電反応を抑える反応抑制部を有する。
本発明によれば、燃料電池が発電運転されるとき、燃料電池は発電反応により発熱する。このため、燃料電池において、所定の温度以上に高温となる高温領域を有する温度分布が形成される。高温領域とは、本発明に係る反応抑制部が形成されていないときにおいて、所定の温度以上に高温となる領域を意味する。所定の温度は、燃料電池の用途、種類、発電条件、燃料電池の作動温度、電解質層の材質、アノードの材質、カソードの材質等に応じて適宜設定される。
高温領域は、高温領域以外の他の領域よりも発電反応を抑える反応抑制部を有する。反応抑制部は、カソード反応および/またはアノード反応を抑制する。このため、反応抑制部が高温領域に形成されていないときに比較して、高温領域における発電反応が抑制され、高温領域における発熱が低下される。結果として、燃料電池の温度分布において高低差が低減される。発電反応は、アノードにおけるアノード反応、および/または、カソードにおけるカソード反応を意味する。
様相2の本発明に係る燃料電池装置は、アノード流体が供給されるアノードと、カソード流体が供給されるカソードと、アノードとカソードとで挟まれた固体酸化物形の電解質層とを具備する燃料電池を有し、複数個の燃料電池を並設方向に並設して形成された燃料電池群を有する燃料電池装置であって、燃料電池群は、発電運転されるとき各燃料電池において所定の温度以上に高温となる高温領域を有する温度分布を示し、各燃料電池における高温領域は、高温領域以外の前記他の領域よりも発電反応を抑える反応抑制部を有しており、反応抑制部の反応抑制能力は、燃料電池群における並設方向の端領域では中央領域よりも小さく設定されている。
本様相によれば、燃料電池装置は、複数個の燃料電池を並設方向に並設して形成された燃料電池群を有する。燃料電池群を構成する各燃料電池は、発電運転されるとき、各燃料電池において所定の温度以上に高温となる高温領域を有する温度分布を示す。各燃料電池に温度分布における高温領域は、高温領域以外の他の領域よりも発電反応を抑える反応抑制部を有する。
ここで、燃料電池装置が発電運転するとき、一般的には、燃料電池群の並設方向における端領域の温度は、燃料電池群の並設方向における中央領域の温度よりも低めとなる。換言すると、燃料電池群の並設方向における中央領域の温度は、燃料電池群の並設方向における端領域の温度よりも高めとなる。中央領域は熱こもりし易いし、端領域は放熱し易いためである。
そこで様相2によれば、反応抑制部の反応抑制能力は、燃料電池群における並設方向の中央領域では端領域よりも大きく設定されている。この結果、燃料電池装置が発電運転するとき、燃料電池群の並設方向における端領域については、反応抑制効果が中央領域よりも相対的に少ない。すなわち、燃料電池群の並設方向における中央領域においては、反応抑制効果が端領域よりも相対的に大きく、従って高温領域における発電反応が抑制される。故に、並設方向の中央領域について、その高温領域における発熱が低下される。このため反応抑制部が設けられていない場合に比較して、燃料電池群の並設方向における中央領域についてみると、高温領域の過剰温度は抑制され、高温領域の温度は相対的に低下する。結果として、燃料電池群の並設方向において高温領域の温度の高低差が低減される。
様相1,2の本発明によれば、高温領域は、高温領域以外の他の領域よりも発電反応を抑える反応抑制部を有する。このため反応抑制部が形成されていないときに比較して、高温領域における発電反応が抑制され、発熱が低下され、高温領域における温度が低下し、温度分布における高低差が低減される。結果として、燃料電池の温度分布において高低差が低減される。従って燃料電池が発電運転するとき、燃料電池における温度むらが低減される。
様相2に係る本発明によれば、燃料電池装置が発電運転するとき、燃料電池群の並設方向における中央領域においては、反応抑制効果が端領域よりも相対的に大きく、高温領域における発電反応が抑制される。故に、並設方向の中央領域について、燃料電池の高温領域における発熱が低下される。このため反応抑制部が設けられていない場合に比較して、燃料電池群の並設方向における中央領域についてみると、燃料電池群を構成する各燃料電池の高温領域の温度は相対的に低下する。結果として、燃料電池群の並設方向において高温領域の温度の高低差が低減される。
実施形態1に係り、一部を断面にして示す燃料電池の斜視図である。 実施形態1に係り、隣設する燃料電池を集電コネクタ部材で電気的に接続している状態を示す図である。 実施形態1に係り、カソードに積層されたバリヤ層付近を示す図である。 実施形態1に係り、燃料電池の断面図である。 実施形態2に係り、燃料電池の断面図である。 実施形態3に係り、燃料電池の断面図である。 実施形態4に係り、燃料電池の断面図である。 実施形態5に係り、燃料電池の断面図である。 実施形態6に係り、燃料電池の断面図である。 実施形態7に係り、燃料電池の断面図である。 実施形態8に係り、燃料電池の断面図である。 実施形態9に係り、燃料電池の高温領域におけるバリヤ層の形態を示す図である。 実施形態10に係り、燃料電池の高温領域におけるバリヤ層の形態を示す図である。 実施形態11に係り、燃料電池の高温領域におけるバリヤ層の形態を示す図である。 実施形態12に係り、燃料電池から吐出されたアノードガスを燃焼させた燃焼火炎で蒸発部および改質部を加熱させている状態を示す斜視図である。 実施形態13に係り、燃料電池の断面図である。 実施形態14に係り、スタックを模式的に示す側面図である。 実施形態15に係り、スタックを模式的に示す側面図である。
本発明の一視点によれば、反応抑制部は、カソード、アノードおよび電解質層のうちの少なくとも一つの高温領域に、バリヤ層を形成することにより構成されている。バリヤ層は、カソード反応に寄与する媒体としてのカソード活物質(イオンを含む)、および/または、カソード反応に寄与するカソード活物質(イオンを含む)の透過を抑制または防止させる層を意味することができる。従って、バリヤ層がカソードを対象とする場合には、カソード流体に含まれるカソード活物質(イオンを含む)がカソードをこれの厚み方向に透過することを抑制または防止するバリヤ層が採用される。バリヤ層がアノードを対象とする場合には、アノード流体に含まれるアノード活物質(イオンを含む)がアノードに到達することを抑制または防止するバリヤ層が採用される。バリヤ層が電解質層を対象とする場合には、活物質のイオンが電解質層をこれの厚み方向に透過することを抑制または防止するバリヤ層が採用される。バリヤ層は、透過媒体の透過を遮断させることが好ましいが、単位時間あたりの透過媒体の透過を抑制させるだけでも良い。
本発明の一視点によれば、一の燃料電池において、バリヤ層は複数個並設されており、高温領域における相対的に高温側の部位では相対的に低温の部位よりも、バリヤ層の並設密度を高くするように構成されている。このため、高温領域における相対的に高温側の部位では、バリヤ層のバリヤ効果により、高温領域における発電反応が抑制される。複数個のバリヤ層を互いに孤立させつつ配置させることができる。
本発明の一視点によれば、一の燃料電池において、バリヤ層は、高温領域において相対的に高温側の部位では、相対的に低温の部位よりも、バリヤ層の厚みを厚くするように構成されている。厚みが厚い方がバリヤ層のバリヤ性が高まる。高温領域において、これの最高温度部位におけるバリヤ層の厚みを最も厚くできる。この場合、最高温度部位における発電反応を抑え、温度を抑制できる。
本発明の一視点によれば、バリヤ層は、カソードの表面、カソードと電解質層との間、電解質層とアノードとの間、アノードと多孔質導電部との間、アノードがアノード通路に露出している場合にはアノードの表面などに別部材として設けることができる。またカソード、電解質層、アノード、それぞれについて、部分的に厚さを変えることによってバリヤ層を形成したり、部分的に材料特性を変えることによってバリヤ層を形成することができる。別部材の場合には、ガス不透過性の緻密質材料を使用することもでき、ガス透過性を有する多孔質材料を使用することもできる。別部材の場合には、電気伝導性を有する導電材料と使用することもでき、電気伝導性を有しない絶縁材料をバリヤ層として使用することもできる。
本発明の一視点によれば、一の燃料電池において、反応抑制部は、高温領域において、電解質層の厚みを厚くして電解質層を透過するイオンのイオン伝導性を低下させることにより構成されている。電解質層の厚みが厚いと、電解質層を透過するイオンのイオン伝導性が低下するため、発電反応が抑制される。ここで、高温領域において、最高温度部位における電解質層の厚みを最も厚くできる。この場合、最高温度部位における発電反応を抑え、温度を抑制できる。
本発明の一視点によれば、一の燃料電池において、アノードはアノード触媒を有しており、反応抑制部は、高温領域においてアノード触媒の単位体積あたりの担持量をアノードにおいて低下させることにより構成されている。アノード触媒の担持量が低下していると、アノードにおける発電反応が抑制される。ここで、高温領域において、最高温度部位におけるアノード触媒の担持量を最も少なくできる。この場合、最高温度部位における発電反応を抑え、温度を抑制できる。
本発明の一視点によれば、一の燃料電池において、カソードはカソード触媒を有しており、反応抑制部は、高温領域においてカソード触媒の単位体積あたりの担持量をカソードにおいて低下させることにより構成されている。カソード触媒の担持量が低下していると、カソードにおける発電反応が抑制される。ここで、高温領域において、最高温度部位におけるカソード触媒の担持量を最も少なくできる。この場合、最高温度部位における発電反応を抑え、温度を抑制できる。
(実施形態1)
図1〜図4は実施形態1を示す。図1は燃料電池の斜視図を示す。本実施形態に係る燃料電池(セル)10は、図1および図4に示すように、アノード流体としてのアノードガスが供給されるアノード11と、カソード流体としてのカソードガスが供給されるカソード12と、厚み方向においてアノード11とカソード12とで挟まれた固体酸化物形の電解質層15とを有する。アノード11側には、ガス通気性および導電性を有する集電用の多孔質導電部11wがアノード11に隣設されており、アノードガスを通過させる通路11rを有する。多孔質導電部11wには電気取り出し用のコネクタ10xが隣設されている。
コネクタ10xはガス不透過性またはガスバリヤ性を有する導電性セラミックスで形成されており、例えば、LaCrO等のペロブスカイト型酸化物で形成されている。アノード11は、アノード触媒として機能できるニッケルを含有する安定化ジルコニア等の導電性セラミックスで形成されている。カソード12はABO型のペロブスカイト酸化物等の多孔質の導電性セラミックスで形成されている。カソード12は、カソードガスが通過する発電室32の通路32rに対面している。電解質層15は希土類元素を固溶したジルコニア等の酸化物を基材として形成された酸素イオン伝導体で構成されており、ガス不透過性および電気絶縁性を有する。
燃料電池10が発電するとき、水素を含むアノードガスがアノードガスマニホルド13を介して、多孔質導電部11wの通路11rに供給される。アノードガスは水素ガスあるいは水素含有ガスである。酸素を含むカソードガスが、スタック1を収容する発電室32に供給される。カソードガスは、隣設する燃料電池10間の通路32rを流れ、カソード12の表面に至る。カソード12では、基本的には次のカソード反応が発生すると考えられている。カソード反応により、酸素(O)から酸素イオン(O2−)が発生する。カソード12において発生した酸素イオン(O2−)は、カソード12をこれの厚み方向に透過し、更に、電解質層15(酸素イオン伝導体,イオン伝導体)を厚み方向に透過し、アノード11に到達する。通路11rに供給されたアノードガスは多孔質導電部11wを厚み方向に透過し、アノード11に至る。アノード11では、次のアノード反応が発生すると考えられており、水HOおよび電子(2e)が発生する。
(カソード反応)…1/2O+2e→O2−
(アノード反応)…H+O2−→HO+2e
(アノードガスにCOが含まれている場合のアノード反応)…CO+O2−→CO+2e
本実施形態によれば、燃料電池10が発電運転されるとき、燃料電池10が発電反応により発熱し、燃料電池10において温度分布が形成される。具体的には、本実施形態に係る反応抑制部が形成されていないとき、燃料電池10の高さ方向(矢印H方向)については、図3の特性線T10として示すように、燃料電池10の高さ方向の端側は相対的に低温な低温領域であり、燃料電池10の高さ方向の中央側は相対的に高温となる。端側は放熱し易く、中央側は熱こもり易いためである。
また、燃料電池10の幅方向(矢印D方向)については、図3の特性線T12として示すように、燃料電池10の幅方向の端側は相対的に低温な低温領域であり、燃料電池10の幅方向の中央側は相対的に高温となる。ここで、本実施形態に係る反応抑制部が形成されていないとき、燃料電池10において、所定の温度Ts以上を示す領域を高温領域10hとする。
高温領域10hは、燃料電池10の高さ方向(矢印H方向)および幅方向(矢印D方向)において、所定の温度Ts以上を示す中央領域に相当する。ここで、高温領域10hとは、本実施形態に係る反応抑制部が形成されていないときにおける高温領域を意味する。一例として、高温領域10hは例えば450〜1100℃の範囲内であり、低温領域は例えば350〜900℃の範囲内であり、その温度範囲において高温領域10hは低温領域よりも相対的に高い温度を示す。
さて、燃料電池10の高温領域10hにおける温度を抑えるためには、高温領域10hにおける発電反応を抑制すれば良い。すなわち、上記したカソード反応および/またはアノード反応を抑制すれば良い。殊に、高温領域10hにおいて、カソード12において発生した酸素イオンがアノード11側に透過することを抑制すれば良い。
そこで本実施形態によれば、図1および図4に示すように、一の燃料電池10の高温領域10hにおいては、高温領域10h以外の他の領域よりも発電反応を抑える反応抑制部として機能するバリヤ層17が、カソード12に設けられている。すなわち、図1および図4に示すように、バリヤ層17は、酸素および/または酸素イオンがカソード12の内部に透過することを抑制するためのものであり、カソード12の表面に積層されて形成されており、カソード12の表面に表出されている。よってバリヤ層17は、カソードガスが流れる通路32rに対面している。このため、カソードガスに含まれている酸素は、バリヤ層17のバリヤ作用によりカソード12に到達できにくい。故に、カソード12の高温領域10hにおいて、カソード反応が抑制され、従って、酸素イオンの生成および/透過が抑制される。ひいては、高温領域10hにおいては、酸素イオンがアノード11に到達しにくくなるため、アノード11における反応も抑制される。
バリヤ層17は、透過媒体である酸素の透過に対して抵抗性をもつものがあげられる。バリヤ層17としては、カソード12よりも気孔率を低下させて酸素透過性を低下させた緻密層、ガラス層等が挙げられ、更に、カソード12の材質と異なる材質で形成された層、気孔率を低下させて酸素透過性を低下させた多孔質層(安定化ジルコニアの多孔体)などが挙げられる。なお、バリヤ層17の厚みは均一でも良いし、厚みが変化していても良い。厚み方向における酸素透過性を低下させるため、バリヤ層17の厚みを厚くしても良い。殊に、高温領域10hにおける最高温度部位10maxについて、バリヤ層17の厚みを最も厚くし、最高温度部位10maxから離れるにつれてバリヤ層17の厚みを薄くすることにしても良い。
燃料電池10の製造にあたり、流動性をもつスラリーまたはインク状のアノード形成材料を多孔質導電部11wに塗布して乾燥させる工程と、その後、流動性をもつスラリーまたはインク状の電解質層形成材料を塗布して乾燥させる工程と、その後、流動性をもつスラリーまたはインク状のカソード形成材料を塗布して乾燥させる工程と、その後、流動性をもつスラリーまたはインク状のバリヤ材料を塗布して乾燥させる工程と、一体的に焼成させる工程とを経て、バリヤ層17をもつ燃料電池10を形成することができる。塗布は、公知の塗布方法を採用できる。刷毛塗り、スプレー塗布、浸漬などが挙げられる。
あるいは、シート状のアノード形成材料を多孔質導電部11wに積層させる工程と、その後、シート状の電解質層形成材料を積層させる工程と、その後、シート状のカソード形成材料を積層させる工程と、シート状のバリヤ材料を積層させる工程と、一体的に焼成させる工程とを経て、燃料電池10を形成することができる。さらにはCVD、スバッタリング等の成膜法を採用しても良い。
電解質層15、アノード11およびカソード12の厚みは特に限定されるものではなく、製造方法、燃料電池10のサイズ、発電条件等によって適宜設定される。電解質層15の厚みは、例えば100マイクロメートル〜5ミリメートの範囲内において適宜設定できる。アノード11の厚みは、例えば100マイクロメートル〜5ミリメートの範囲内において適宜設定できる。カソード12の厚みは、例えば100マイクロメートル〜5ミリメートの範囲内において適宜設定できる。但しこれらに限定されるものではない。なお、図1〜図4はあくまでも概念図を示すものであり、寸法を明確に規定するものではない。
以上説明したように本実施形態によれば、反応抑制部として機能するバリヤ層17がカソード12に形成されているため、カソードガスに含まれているカソード活物質である酸素および/または酸素イオンがカソード12を厚み方向に電解質層15に向けて透過することが抑制される。このため反応抑制部であるバリヤ層が形成されていないときに比較して、高温領域10hにおける発電反応(カソード反応およびアノード反応)が抑制され、高温領域10hにおける発熱が低下される。結果として、燃料電池10の温度分布において高温領域10hの温度が抑制され、燃料電池10の温度分布において高低差が低減される。
上記したように本実施形態によれば、燃料電池10が発電運転するとき、燃料電池10における温度むらが低減される。なお、温度むらが抑えられると、燃料電池10の発電性能および耐久性が改善される。その理由は次のように考えられる。固体酸化物形燃料電池は、温度が高いほど発電性能が向上する。温度むらがあると、高温部での発電量が増えるため、その部分で局部的に電流密度が過大となり、性能劣化が促進される。温度むらが抑えられると、局部的な電流密度の過大化を抑制しつつ、できる限り温度を高くできるため、発電性能および耐久性が改善される。
なお本実施形態によれば、図2に示すように、厚み方向に隣設する複数の燃料電池10間には、バネ性を有する集電コネクタ部材19が複数個配置されている。集電コネクタ部材19は隣設する燃料電池10同士を電気的に接続する。バリヤ層17から集電コネクタ部材19を離間させて、バリヤ層17と集電コネクタ部材とが重ならないように集電コネクタ部材19を組み付ければ、集電コネクタ部材19の組み付けに支障をきたさない。更に、バリヤ層17に集電コネクタ部材19が重なったとしても、バリヤ層17の厚み(例えば1ミリメートル以下、0.5ミリメートル以下、0.2ミリメートル以下、0.1ミリメートル以下)は薄いし、集電コネクタ部材19はバネ性を有するため、集電コネクタ部材19の組み付けに支障をきたさない。なお図2は、燃料電池10を2個のみを示すが、複数個並設されているものである。
(実施形態2)
図5は実施形態2を示す。本実施形態は上記した実施形態1と基本的には共通する構成および共通する作用効果を有する。図5に示すように、反応抑制部として機能するバリヤ層17は、厚み方向において、カソード12と電解質層15との境界に形成されている。このため発電運転時において、カソードガスに含まれている酸素がカソード反応により酸素イオン(O2−)となり、その酸素イオンがカソード12をこれの厚み方向に透過したとしても、酸素イオンが電解質層15に到達することはバリヤ層17により抑制される。ひいては酸素イオンがアノード11に到達することが抑制される。結果として、アノード反応が抑制される。アノード反応は酸素イオンを必要とするためである。このため、反応抑制部であるバリヤ層17が形成されていないときに比較して、燃料電池10の高温領域10hにおける発電反応(アノード反応)が抑制され、高温領域10hにおける発熱が低下される。結果として、燃料電池10の温度分布において高温領域10hの温度が抑制され、燃料電池10の温度分布において高低差が低減される。バリヤ層17の材質としては珪酸ガラス層(電気絶縁性、ガス不透過性)が例示されるが、これに限定されるものではない。なお、図5に示す実施形態においても、図示されているバリヤ層17の他に、図示しないもののカソード12の表面にバリヤ層を通路32rに対面させるように形成させても良い。
(実施形態3)
図6は実施形態3を示す。本実施形態は上記した各実施形態と基本的には共通する構成および共通する作用効果を有する。図6に示すように、燃料電池10の高温領域10hにおいては、高温領域10h以外の他の領域よりも発電反応を抑える第1反応抑制部として機能する第1バリヤ層17fがカソード12に設けられている。すなわち、第1バリヤ層17fは、酸素および/または酸素イオンの透過を抑制するものであり、カソード12の表面に積層されて形成されており、カソードガスが通過する通路32rに対面するようにカソード12の表面に表出されている。このためカソードガスに含まれている酸素は、第1バリヤ層17fのためカソード12に到達しにくい。故に、高温領域10hにおいてカソード反応が抑制され、酸素イオンがカソード12の高温領域10hにおいて生成されることが抑制される。このように高温領域10hにおいては、酸素イオンがアノード11に到達しにくくなるため、アノード11におけるアノード反応も抑制される。アノード反応は、酸素イオンを必要とするためである。
更に図6に示すように、高温領域10hにおいては、高温領域10h以外の他の領域よりも発電反応を抑える第2反応抑制部として機能する第2バリヤ層17sがアノード11と多孔質導電部11wとの境界に設けられている。すなわち、第2バリヤ層17sは、アノード11に含まれているアノード活物質である水素がアノード11に向けて透過することを抑制するものである。第2バリヤ層17sは、多孔質導電部11wのうちアノード11側の表面に積層されて形成されている。このためアノードガスに含まれている水素は、第2バリヤ層17sのためアノード11に到達しにくい。故に、第2バリヤ層17sによりアノード反応が抑制される。このため、反応抑制部であるバリヤ層17f,17sが形成されていないときに比較して、燃料電池10の高温領域10hにおける発電反応(カソード反応およびアノード反応)が抑制され、高温領域10hにおける発熱が低下される。結果として、燃料電池10の温度分布において高温領域10hの温度が抑制され、燃料電池10の温度分布において高低差が低減される。第1反応抑制部17fおよび第2反応抑制部17sのうちのいずれか一方のみを設けることにしても良い。なお、バリヤ層17fの材質としては安定化ジルコニア多孔質体(電気絶縁性、ガス透過性)が例示されるが、これに限定されるものではない。バリヤ層17sの材質としては珪酸ガラス層(電気絶縁性、ガス不透過性)が例示されるが、これに限定されるものではない。
(実施形態4)
図7は実施形態4を示す。本実施形態は上記した各実施形態と基本的には共通する構成および共通する作用効果を有する。図7に示すように、高温領域10hにおいては、高温領域10h以外の他の領域よりも発電反応を抑える第1反応抑制部として機能する第1バリヤ層17fがカソード12に設けられている。すなわち、第1バリヤ層17fは、酸素および/または酸素イオンの透過を抑制するものであり、カソード12の表面に積層されて形成されており、カソードガスが通過する通路32rに対面するようにカソード12の表面に表出されている。このためカソードガスに含まれている酸素は、第1バリヤ層17fのためカソード12に到達できない。故に、高温領域10hにおいてカソード反応が抑制され、酸素イオンがカソード12の高温領域10hにおいて生成されることが抑制される。ひいては、高温領域10hにおいては、酸素イオンがアノード11に到達しにくくなるため、アノード反応も抑制される。
更に図7に示すように、高温領域10hにおいては、高温領域10h以外の他の領域よりも発電反応を抑える第2反応抑制部として機能する第2バリヤ層17sが、厚み方向において、アノード11と電解質層15との境界に設けられている。すなわち、第2バリヤ層17sは、アノード11と電解質層15との境界において緻密層を形成することにより構成されている。第2バリヤ層17sは、電解質層15を厚み方向に透過した酸素イオンがアノード11に透過することを抑制するためのものである。故に、高温領域10hにおいて、第2バリヤ層17sによりアノード反応が抑制される。第1反応抑制部17fおよび第2反応抑制部17sのうちのいずれか一方のみを設けることにしても良い。なお、バリヤ層17fの材質としては安定化ジルコニア多孔質体(電気絶縁性、ガス透過性)が例示されるが、これに限定されるものではない。バリヤ層17sの材質としては珪酸ガラス層(電気絶縁性、ガス不透過性)が例示されるが、これに限定されるものではない。
(実施形態5)
図8は実施形態5を示す。本実施形態は上記した各実施形態と基本的には共通する構成および共通する作用効果を有する。図8に示すように、電解質層15の厚みを高温領域10hにおいて他の部位(高温領域10h以外の部位)よりも部分的に厚くし、電解質層15をこれの厚み方向に透過する酸素イオンのイオン伝導性を低下させることにより、反応抑制部16は構成されている。具体的には、反応抑制部16は、電解質層15の厚みが他の部位(高温領域10h以外の部位)よりもΔt1ぶん厚い第1厚肉部15fと、第1厚肉部15fよりもΔt2ぶん厚い第2厚肉部15sとを有する。第2厚肉部15sは、高温領域10hにおいて最も温度が高くなる部位に相当する。電解質層15の厚みが厚いと、電解質層15をこれの厚み方向に透過する酸素イオンのイオン伝導性が低下する。このため、酸素イオンがアノード11に透過しにくくなり、高温領域10hにおいてアノード反応が抑制され、高温領域10hの温度が低下する。結果として、反応抑制部16が形成されていないときに比較して、燃料電池10の高温領域10hにおける発電反応(カソード反応およびアノード反応)が抑制され、高温領域10hにおける発熱が低下される。
結果として、燃料電池10の温度分布において高温領域10hの温度が抑制され、燃料電池10の温度分布において高低差が低減される。なお、電解質層15の厚みを変化させるにあたり、流動性を有する電解質形成材料を塗布させる場合には、塗布回数および/または塗布量を増加させて増肉することができる。シート状の電解質形成材料を張り付ける場合には、電解質形成材料の厚みを調整させれば良い。
図8に示すように、高温領域10hのうち中央付近である最高温度部位10maxについては、電解質層15の厚みが最も厚くされており、電解質層15の厚み方向における酸素イオンのイオン伝導の抵抗値が最も高くされている。この場合であっても、集電コネクタ部材19はバネ性を有するため、隣設する燃料電池10間の通路32rに集電コネクタ部材19が組み付けられるにあたり、その組み付け性が損なわれない。電解質層15の厚みに合わせてカソード12の厚みを調整させているが、これに限られるものではない。なお、図8に示す実施形態においても、高温領域10hにおいてバリヤ層17をカソード12に通路32rに対面するように積層させても良い。
(実施形態6)
図9は実施形態6を示す。本実施形態は上記した各実施形態と基本的には共通する構成および共通する作用効果を有する。燃料電池10の高温領域10hにおいて、バリヤ層17がカソード12の表面に積層されている。バリヤ層17の厚みtbが薄いと、酸素の透過を抑制させるバリヤ性は低くなる。これに対して、バリヤ層17の厚みtbが厚いと、酸素の透過を抑制させるバリヤ性は高くなる。そこで、高温領域10hにおいて最も高温となる最高温度部位10maxにおいて、バリヤ層17の厚みが最も厚く設定されている。そして、最高温度部位10maxから離れるにつれて、バリヤ層17の厚みは次第に薄くされている。なお、バリヤ層17の厚みの調整は、塗布回数を増加させることにより行い得る。あるいは、厚みに変化をもたせたバリヤ材料を後づけて積層させても良い。
特に図示しないが、カソード12と電解質層15との境界にバリヤ層を設け,多孔質導電部11wとアノード11との境界にバリヤ層を設け、高温領域10hにおいて最も高温となる最高温度部位10maxにおいて、バリヤ層の厚みを最も厚く設定しても良い。バリヤ層17の材質としては安定化ジルコニア多孔質体(電気絶縁性、ガス透過性)が例示されるが、これに限定されるものではない。
(実施形態7)
図10は実施形態7を示す。本実施形態は上記した各実施形態と基本的には共通する構成および共通する作用効果を有する。図10に示すように、高温領域10hにおいては、電解質層15の厚みを他の部位(高温領域10h以外の部位)よりも部分的に厚くし、電解質層15を厚み方向に透過する酸素イオンのイオン伝導性を低下させることにより、第1反応抑制部16fが構成されている。ここで、高温領域10hのうち中央付近である最高温度部位10maxについては、電解質層15の厚みが最も厚くされており、電解質層15の厚み方向における酸素イオンのイオン伝導の抵抗が最も高くされている。
アノード11はアノード触媒(例えばニッケル等の卑金属触媒)を有する。但し、高温領域10hにおいては、アノード11の単位体積あたりのアノード触媒の量を低下させるか、ゼロとさせている。これにより、高温領域10hにおいて第2反応抑制部16sが構成されている。このように第2反応抑制部16sではアノード反応を促進させるアノード触媒が制限されているため、高温領域10hにおいてアノード反応が制限されている。なお、第1反応抑制部16fおよび第2反応抑制部16sのうちのいずれか一方のみを設けることにしても良い。また、図10に示す実施形態においても、必要に応じて、高温領域10hにおいてバリヤ層17をカソード12に通路32rに対面するように積層させても良い。
(実施形態8)
図11は実施形態8を示す。本実施形態は上記した各実施形態と基本的には共通する構成および共通する作用効果を有する。図11に示すように、高温領域10hにおいては、カソード12の他の部位(高温領域10h以外の部位)よりも厚みを部分的に厚くし、カソード12をこれの厚み方向に透過する酸素および/または酸素イオンの透過性を低下させることにより、反応抑制部16は構成されている。カソード12の厚みが厚いと、カソード12を厚み方向に透過する酸素および/または酸素イオンの透過性が低下するため、酸素イオンがカソード12を厚み方向に透過しにくくなり、ひいてはアノード11に到着しにくくなり、高温領域10hにおいてアノード反応が抑制される。
なお、カソード12の厚みを変化させるにあたり、流動性を有するカソード形成材料を塗布させる場合には、塗布回数および/または塗布量を増加させて増肉することができる。シート状のカソード形成材料を張り付ける場合には、カソード形成材料の厚みを調整させれば良い。なお、図11に示す実施形態においても、必要に応じて、高温領域10hにおいてバリヤ層17をカソード12に通路32rに対面するように積層させても良い。
(実施形態9)
図12は実施形態9を示す。本実施形態は上記した各実施形態と基本的には共通する構成および共通する作用効果を有する。カソード12等に積層させるバリヤ層17の投影面積が大きい場合には、高温領域10hにおいて発電反応が制限されるため、高温領域10hの温度が低下するものの、過剰に低下するおそれがある。投影面積とは、カソード12の面垂直方向から投影した投影面積を意味する。本実施形態によれば、図12に示すように、燃料電池10の高温領域10hにおいて、燃料電池10の幅方向(矢印D方向)において、複数のバリヤ層17が間隔を隔てて散点状(孤立状)に並設されている。すなわち、燃料電池10の幅方向(矢印D方向)において、複数のバリヤ層17は互いに孤立しており、非連続状とされている。高温領域10hにおいて、バリヤ層17が形成されていない領域、すなわち隣設するバリヤ層17間の発電部位17xでは、バリヤ材料が存在していないので、発電反応が発生し、電流が発生する。
上記したように複数のバリヤ層17は互いに孤立しているため、バリヤ層17以外の発電部位17xは非孤立状態であり、互いに電気的に繋がっている。このようにバリヤ層17を介して互いに隣設する発電部位17xは、高温領域10h以外の部位の発電部位10xに電気的に繋がっているため、発電面積および電流が確保される。
このように本実施形態によれば、図12に示すように、高温領域10hにおいて、バリヤ性が高いバリヤ層17と、バリヤ性を有しない発電部位17xとが互いに隣設され、交互に配置されている。この結果、高温領域10hにおける温度、殊に最高温度部位10maxの温度が過剰に低下することが抑制される。また、燃料電池10の発電面積が必要以上に低下するおそれが抑制される。
従って、高温領域10hの過剰な昇温を抑制させつつ、燃料電池10の発電性能が確保される。複数のバリヤ層17をカソード12に積層させるにあたり、例えば、バリヤ層17に相当する部分に開口を有するマスキング部材でカソード12の表面を覆い、その状態で、バリヤ材料をカソード12の表面に塗布することにより形成することができる。バリヤ層17の材質としては、電気絶縁性およびガス不透過性を有することが好ましく、珪酸ガラスが例示される。
図12に示す形態によれば、カソード12の表面に積層されている複数のバリヤ層17は、帯状または線状とされており、スタック1の高さ方向(矢印H方向)に沿って延設されている。バリヤ層17は互いに接触しないように孤立しており、隣設するバリヤ層17の間隔は一定の間隔E1とされている。カソードガスはスタック1の下部から上部にかけて上昇する関係上、バリヤ層17は高さ方向(矢印H方向)に沿って延設されている。この場合、カソードガスが上向きに流れる場合には、カソードガスがバリヤ17に接触しつつ矢印HA方向に上昇するとき、バリヤ層17の上端17uを越えたカソード部位17wでは、バリヤ材料が形成されていないため、カソード反応を開始させることを期待できる。なお、隣設するバリヤ層17間の発電部位17xをカソードガスが矢印HB方向に上昇するときには、カソードガスはカソード反応を開始させつつ流れることができる。
(実施形態10)
図13は実施形態10を示す。本実施形態は上記した各実施形態と基本的には共通する構成および共通する作用効果を有する。図13に示す形態によれば、カソード12の表面に積層されている複数のバリヤ層17は、帯状または線状とされており、互いに孤立しつつ、発電室32の通路32rにおけるカソードガスの流れに沿ってスタック1の高さ方向(矢印H方向)に沿って延設されている。バリヤ層17の材質としては、電気絶縁性およびガス不透過性を有することが好ましく、珪酸ガラスが例示される。
高温領域10hにおいて最高温度部位10maxでは、バリヤ層17の並設密度が高くなり、バリヤ層17の合計投影面積が増加するようにされている。すなわち、燃料電池10の幅方向(矢印D方向)および高さ方向(矢印H方向)における中央領域は、高温領域10hに相当する。高温領域10hにおいて幅方向(矢印D方向)における中央領域は、最高温度部位10maxとされている。このため幅方向(矢印D方向)について、最高温度部位10maxの付近においては、隣設するバリヤ層17同士の間隔Eaは、幅方向(矢印D方向)における端領域において隣設するバリヤ層17同士の間隔Ecよりも狭くされている。従って、高温領域10hにおける最高温度部位10maxではバリヤ層17の並設密度が高く、すなわち、バリヤ層17の投影面積が大きい。そして高温領域10hにおいて最高温度部位10maxから遠ざかるにつれて、バリヤ層17の並設密度が低くなり、バリヤ層17の投影面積が小さくなる。このため、高温領域10hにおける温度の過剰低下および発電面積の過剰低下を抑制させつつ、高温領域10hにおける発電反応および温度が効果的に抑制される。
高温領域10hにおいて、バリヤ層17が形成されていない領域、すなわち、隣設するバリヤ層17間に存在する発電部位17xではバリヤ材料が存在していないので、発電反応が発生する。発電部位17xは、高温領域10h以外の部位の発電部位10xに電気的に繋がっているため、発電面積および電流が確保される。このように本実施形態によれば、図13に示すように、高温領域10hにおいて、バリヤ層17および発電部位17xが互いに隣設されて、交互に形成されている。この結果、高温領域10hの最高温度部位10maxにおける過剰に高温の温度を低下させつつも、過剰に低下することが抑制される。また、燃料電池10の発電面積を低下させつつも、過剰に低下することが抑制される。なお、投影面積とは、カソード12の面垂直方向から投影した面積を意味する。
(実施形態11)
図14は実施形態11を示す。本実施形態は上記した各実施形態と基本的には共通する構成および共通する作用効果を有する。図14に示す形態によれば、高温領域10hにおいて、円形状のバリヤ層17が複数個並設されている。高温領域10hにおいて最高温度部位10maxではバリヤ層17の投影面積が増加するようにされている。すなわち、燃料電池10の幅方向(矢印D方向)および高さ方向(矢印H方向)における中央領域は、高温領域10hに相当する。高温領域10hにおける中央部が最高温度部位10maxに相当する。このため、幅方向(矢印D方向)について、カソード12の表面における中央領域においては、バリヤ層17の投影面積は大きくされている。従って、高温領域10hにおける最高温度部位10maxではバリヤ層17の投影面積が相対的に大きいため、高温領域10hにおける発電反応が効果的に抑制されて、温度を低下させ得る。そして図14に示すように、高温領域10hの最高温度部位10maxから距離的に離間するにつれて、バリヤ層17の並設密度は低下し、単位面積当たりのバリヤ層17の投影面積が低下している。バリヤ層17の材質としては、電気絶縁性およびガス不透過性を有することが好ましく、珪酸ガラスが例示される。
図14に示すように、高温領域10hにおいて、バリヤ層17が形成されていない領域、すなわち隣設するバリヤ層17間の発電部位17xでは、バリヤ材料が存在していないので、発電反応が発生する。このような発電部位17xは、高温領域10h以外の部位の発電部位10xに電気的に繋がっているため、発電面積が確保される。このように本実施形態によれば、図14に示すように、高温領域10hにおいて、複数個のバリヤ層17および発電部位17xが互いに隣設されて、交互に形成されている。この結果、高温領域10hにおける温度を低下させつつも、過剰に低下することが抑制される。また、燃料電池10の発電面積を低下させつつも。過剰に低下するおそれが抑制される。
(実施形態12)
図15は実施形態12を示す。図15に示す形態によれば、燃料電池装置として機能するスタック装置は、燃料電池10を所定間隔で列として並設させたスタック1と、スタック1の下部に配置されたアノードガスマニホルド13と、スタック1の上方に配置された蒸発部20および改質部22を有する。燃料電池10は、断熱層で区画された発電室32において、カソードガスを通過させる所定の通路32rを介して列状に並設されている。
燃料原料搬送源が駆動すると、炭化水素系のガス状または液状の燃料原料が燃料原料供給通路51を介して蒸発部20に供給される。また改質水ポンプが駆動し、図略の貯水タンクの改質水が改質水供給通路41を介して蒸発部20に供給される。カソードガスポンプが駆動すると、カソードガスは発電室32の通路32rに供給されてカソード12に接触する。ここで、多孔質導電部11wの通路11rを上昇したアノードガスはスタック1から排出され、カソードガスにより燃焼火炎24を燃焼用空間23において形成する。燃焼用空間23の燃焼火炎24で蒸発部20および改質部22は加熱されているため、蒸発部20は液相状の改質水を水蒸気化させる。生成された水蒸気は改質部22に供給される。改質部22は燃料原料を水蒸気改質させ、水素を含むアノードガスを生成させる。燃料原料がメタン系である場合には、水蒸気改質ではアノードガスの生成は、次の(1)式に基づくと考えられている。固体酸化物形の燃料電池10では、Hの他にCOも燃料となりうる。
(1)…CH+2HO→4H+CO
CH+HO→3H+CO
CnHmが炭化水素の一般的な化学式であるとすると、水蒸気改質の一般式は次の(1−1)式のようになる。n=1、m=4であると、メタンの水蒸気改質の式が得られる。
(1−1)…CnHm+2nHO→nCO+[(m/2)+2n)]H
生成された水素を含有するアノードガスは、アノードガス通路14およびアノードガスマニホルド13を介して、燃料電池10のアノード11の通路11rに供給されて発電に使用される。
本実施形態によれば、図15に示すように、各燃料電池10の高温領域10hは、高温領域10h以外の他の領域よりも発電反応を抑える反応抑制部として機能するバリヤ層17を有する。このため反応抑制部が形成されていないときに比較して、燃料電池10の高温領域10hにおける発電反応が抑制され、発熱が低下される。結果として、燃料電池10の温度分布において高低差が低減される。従って燃料電池10が発電運転するとき、燃料電池10における温度むらが低減される。なお、温度むらが抑えられると、燃料電池10の発電性能および耐久性が改善される。
(実施形態13)
図16は実施形態13を示す。基体300は、アノードガスが供給される発電室310と入口312と出口314とをもつ。燃料電池1は基体300の発電室310に収容されている。電解質層15は、底部15vおよびカソードガス室15rを有する円筒形状をなす。カソードガス室15rには挿入管155が挿入されている。電解質層15の内面にはカソード12が積層されている。電解質層15の外面にはアノード11が積層されている。電解質層15,アノード11およびカソード12の材質としては、実施形態1と共通させることができる。燃料電池10が発電するとき、カソードガスは挿入管155からカソードガス室15rに供給される。アノードガスは発電室310に供給される。酸素を含むカソードガスが供給されるカソード12は、カソード反応を発生させ、カソードガスに含まれる酸素(O)から酸素イオン(O2−)を発生する。酸素イオン(O2−)は、カソード12を厚み方向に透過し、更に電解質層15(酸素イオン伝導体,イオン伝導体)を厚み方向に透過し、アノード11に到達する。入口312から発電室310に供給されたアノードガスがアノード11に到達すると、アノード11はアノード反応を発生させる。
(カソード反応)…1/2O+2e→O2−
(アノード反応)…H+O2−→HO+2e
本実施形態によれば、前記した各実施形態と同様に、燃料電池10が発電運転されるとき、燃料電池10において温度分布(図16の特性線T5)が形成される。具体的には、燃料電池10の高さ方向(矢印H方向)については、燃料電池10の高さ方向の端側は相対的に低温な低温領域であり、燃料電池10の高さ方向の中央側は相対的に高温となる高温領域10hである。高温領域10hは、燃料電池10の高さ方向における中央領域に相当する。ここで、高温領域10hとは、本実施形態に係る反応抑制部が形成されていないときにおいて、所定温度Ts以上を示す高温の領域を意味する。一例として、高温領域10hは例えば450〜1100℃の範囲内であり、低温領域は例えば400〜1000℃の範囲内であり、その温度範囲において高温領域10hは低温領域よりも相対的に高い温度を示す。
さて、燃料電池10の高温領域10hにおける過剰な昇温を抑えるためには、前記した各実施形態と同様に、上記したカソード反応および/またはアノード反応を抑制すれば良い。殊に、酸素イオンがアノード11に透過することを抑制すれば良い。従って、高温領域10hにおいては、他の領域(燃料電池10における低温領域)よりも発電反応を抑える反応抑制部として機能する第1バリヤ層17fが、カソード12の表面において、カソードガス室15rに対面するように設けられている。第1バリヤ層17fは、酸素および/または酸素イオンがカソード12の内部に透過することを抑制する。
このため、カソードガスに含まれている酸素は、第1バリヤ層17fのバリヤ作用によりカソード12に到達できにくい。故に、カソード12の高温領域10hにおいてカソード反応が抑制され、従って、酸素イオンの生成および/透過が抑制される。ひいては、高温領域10hにおいては、酸素イオンがアノード11に到達しにくくなるため、アノード反応も抑制される。
更に第2バリヤ層17sはアノード11の表面に積層されており、発電室310に表出している。このため、アノードガスに含まれているアノード活物質として機能する水素は、第2バリヤ層17sのバリヤ作用によりアノード11に接触しにくい。故に、高温領域10hにおいてアノード反応が抑制される。この結果、本実施形態によれば、反応抑制部として機能するバリヤ層17f,17sが形成されていない場合に比較して、燃料電池10の高温領域10hにおけるカソード反応およびアノード反応が抑制され、高温領域10hにおける発熱が低下し、燃料電池10における温度差が低減される。なお、バリヤ層17f,17sの双方が設けられているが、これに限らず、いずれか一方としても良い。
(実施形態14)
図17は実施形態14を示す。燃料電池装置として機能するスタック装置は、複数個の燃料電池10を並設方向(矢印L方向)に並設して形成された燃料電池群100をアノードマニホルド13に組み付けて構成されている。各燃料電池10同士の間には集電コネクタ部材19が配置されており、各燃料電池10同士は電気的に繋がれている。燃料電池群100を構成する各燃料電池10は、発電運転されるとき、前述した実施形態と同様に、各燃料電池10において所定の温度以上に高温となる高温領域10hを有する温度分布を示す。高温領域10hは、各燃料電池10の面方向(表面が延設されている方向)における中央付近に対応する。
各高温領域10hは、高温領域10h以外の他の領域よりも発電反応を抑える反応抑制部として機能するバリヤ層17を有する。バリヤ層17は、各燃料電池10のカソード12の表面において、発電室32の通路32rに対面するように形成されている。バリヤ層17は、前記した各実施形態と同様に形成できる。従って、各燃料電池10において、高温領域10hの発熱はバリヤ層17により抑制され、高温領域10hの温度は抑えられている。
ここで、燃料電池群100の並設方向(矢印L方向)における端側を端領域100eと、中央側を中央領域100mとする。スタック1が発電運転するとき、図17の特性線T7として示すように、端領域100eの温度は中央領域100mの温度よりも低めとなる。換言すると、燃料電池群100の中央領域100mの温度は、燃料電池群100の端領域100eの温度よりも高めとなる。中央領域100mは熱こもりし易いし、端領域100eは放熱し易いためである。そこで本実施形態によれば、バリヤ層17の反応抑制能力は、端領域100eでは中央領域100mよりも小さく設定されている。すなわち。バリヤ層17の反応抑制能力は、端領域100eよりも中央領域100mでは大きく設定されている。
従って、端領域100eにおけるバリヤ層17の厚みteは、中央領域100mにおけるバリヤ層17の厚みtmよりも薄く設定されている。すなわち、中央領域100mにおけるバリヤ層17の厚みtmは、端領域100eにおけるバリヤ層17の厚みteよりも厚く設定されている。なお、バリヤ層17の投影面積は端領域100eおよび中央領域100mにおいて同一とされている。
この結果、スタック1が発電運転するとき、燃料電池群100の並設方向(矢印L方向)における端領域100eの反応抑制効果は、中央領域100mよりも相対的に少ない。故に、燃料電池群100の矢印L方向における中央領域100mに係る高温領域10hについては、反応抑制効果が端領域100eよりも相対的に大きく、高温領域10hにおける発電反応が抑制される。故に、矢印L方向の中央領域100mについて、その高温領域10hにおける過剰発熱が効果的に低下される。このためバリヤ層が設けられていない場合に比較して、矢印L方向における中央領域100mについて、高温領域10hの温度は相対的に低下する。結果として、矢印L方向において高温領域10hの温度の高低差が低減される。なお、端領域100eの燃料電池10については、所定の温度以上に高温となる高温領域10hが形成されないときには、端領域100eについてバリヤ層17を省略しても良い。
(実施形態15)
図18は実施形態15の燃料電池装置として機能するスタック装置を示す。スタック装置は、複数個の燃料電池10を並設方向(矢印L方向)に並設して形成された燃料電池群100を有する。本実施形態によれば、バリヤ層17の反応抑制能力は、端領域100eでは中央領域100mよりも小さく設定されている。すなわち。バリヤ層17の反応抑制能力は、端領域100eよりも中央領域100mでは大きく設定されている。
従って、端領域100eにおけるバリヤ層17の投影面積Seは、中央領域100mにおけるバリヤ層17の投影面積Smよりも小さく設定されている。すなわち、中央領域100mにおけるバリヤ層17の投影面積Smは、端領域100eにおけるバリヤ層17の投影面積Seよりも大きく設定されている。なお、バリヤ層17の厚みは端領域100eおよび中央領域100mにおいて同一とされている。
この結果、スタック1が発電運転するとき、燃料電池群100の並設方向(矢印L方向)における端領域100eの反応抑制効果は、中央領域100mよりも相対的に少ない。故に、矢印L方向における中央領域100mに係る高温領域10hの反応抑制効果は端領域100eよりも相対的に大きく、高温領域10hにおける発電反応が抑制される。故に、矢印L方向の中央領域100mについて、その高温領域10hにおける過剰発熱が効果的に低下される。このためバリヤ層が設けられていない場合に比較して、矢印L方向における中央領域100mについて、高温領域10hの温度は相対的に低下する。結果として、矢印L方向において高温領域10hの温度の高低差が低減される。なお、端領域100eの燃料電池10については、所定の温度以上に高温となる高温領域10hが形成されないときには、端領域100eについてバリヤ層17を省略しても良い。
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。図15ではスタック1は2列に設けられているが、これに限らず、1列設けられている構造でも良い。スタック1は、複数の平板型の燃料電池10を厚み方向に積層して形成されているが、これに限らず、複数のチューブ型の燃料電池10を組み付けてスタックを形成しても良い。本明細書の記載から次の技術的思想が把握される。
[付記項1]アノード流体が供給されるアノードと、カソード流体が供給されるカソードと、前記アノードと前記カソードとで挟まれた固体酸化物形の電解質層とを具備する燃料電池であって、発電運転されるとき前記燃料電池において所定の温度以上に相対的に高温となる高温領域を有する温度分布が形成され、前記高温領域は、前記高温領域以外の前記他の領域よりも発電反応を抑える反応抑制部を有する燃料電池。
[付記項2]アノード流体が供給されるアノードと、カソード流体が供給されるカソードと、前記アノードと前記カソードとで挟まれた固体酸化物形の電解質層とを積層して具備する燃料電池であって、前記燃料電池は、前記アノード、前記カソード、前記電解質層の積層方向に直交する面における中央領域は、前記中央領域以外の領域よりも発電反応を抑える反応抑制部を有する燃料電池。中央領域は、当該直交する面の少なくとも一方向における中央部分を指す。
[付記項3] アノード流体が供給されるアノードと、カソード流体が供給されるカソードと、前記アノードと前記カソードとで挟まれた固体酸化物形の電解質層とを具備する燃料電池を有し、複数個の前記燃料電池を並設方向に並設して形成された燃料電池群を有する燃料電池装置であって、前記燃料電池群における前記並設方向の中央領域は、前記中央領域以外の端領域よりも発電反応を抑える反応抑制部を有する燃料電池。
本発明は例えば定置用、車両用、電気機器用、電子機器用などの燃料電池システムに利用することができる。
1はスタック、10は燃料電池、10hは高温領域、10maxは最高温度部位、11はアノード、11wは多孔質導電部、12はカソード、13はアノードガスマニホルド、15は電解質層、16は反応抑制部、17はバリヤ層、20は蒸発部、22は改質部、32は発電室、32rは通路を示す。

Claims (7)

  1. アノード流体が供給されるアノードと、カソード流体が供給されるカソードと、前記アノードと前記カソードとで挟まれた固体酸化物形の電解質層とを具備する燃料電池であって、前記燃料電池は、発電運転されるとき前記燃料電池において所定の温度以上に高温となる高温領域を有する温度分布を示し、前記高温領域は、前記高温領域以外の領域よりも発電反応を抑える反応抑制部を有する燃料電池。
  2. 請求項1において、前記反応抑制部は、前記高温領域において、前記カソード、前記アノードおよび前記電解質層のうちの少なくとも一つに、バリヤ層を形成することにより構成されている燃料電池。
  3. 請求項2において、前記バリヤ層は複数個並設されており、前記高温領域において相対的に高温の部位では相対的に低温の部位よりも前記バリヤ層の並設密度を高くするように構成されている燃料電池。
  4. 請求項2において、前記バリヤ層は、前記高温領域において相対的に高温の部位では相対的に低温の部位よりも前記バリヤ層の厚みを厚くするように構成されている燃料電池。
  5. 請求項1において、前記反応抑制部は、前記高温領域において、前記高温領域以外の部位よりも、前記電解質層の厚みを厚くして前記電解質層を透過するイオンのイオン伝導性を低下させることにより構成されている燃料電池。
  6. 請求項1において、前記アノードはアノード触媒を有しており、前記反応抑制部は、前記高温領域において前記アノード触媒の単位体積あたりの担持量を前記高温領域以外の部位よりも低下させることにより構成されている燃料電池。
  7. アノード流体が供給されるアノードと、カソード流体が供給されるカソードと、前記アノードと前記カソードとで挟まれた固体酸化物形の電解質層とを具備する燃料電池を有し、複数個の前記燃料電池を並設方向に並設して形成された燃料電池群を有する燃料電池装置であって、
    前記燃料電池群は、発電運転されるとき各前記燃料電池において所定の温度以上に高温となる高温領域を有する温度分布を示し、前記燃料電池における前記高温領域は、前記高温領域以外の領域よりも発電反応を抑える反応抑制部を有しており、
    前記反応抑制部の反応抑制能力は、前記燃料電池群における前記並設方向の中央領域では端領域よりも大きく設定されている燃料電池装置。
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