JP2010257712A - 双極型電池用集電体 - Google Patents

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Abstract

【課題】双極型電池の局部的な発熱を抑制し、双極型電池の耐久性を向上させる手段を提供する。
【解決手段】導電性を有する樹脂層からなる双極型電池用集電体であって、前記導電性を有する樹脂層は、樹脂からなる基材と、前記基材の厚さ方向に貫通する周期的に配列した導電部とからなる、双極型電池用集電体である。
【選択図】図2

Description

本発明は、双極型電池用集電体に関する。
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用電池の開発が鋭意行われている。自動車用途の電池としては、双極型電池に注目が集まっている。双極型電池は、集電体を介して縦方向(電極の積層方向)に電流が流れるため、電子の伝導パスを短くでき、高出力になる。これにより、電池電圧の高い電池が構成できる。
双極型電池は、正極活物質層および負極活物質層が各面に形成される集電体を構成部材として含む。この集電体の軽量化を目的として、特許文献1では、樹脂を含む集電体を用いている。
特開2006−190649号公報
金属集電体を使用した双極型電池では、電池構成要素(例えばセパレータ)の面内において電気抵抗にばらつきがあっても、金属集電体の面方向に電流が流れることによって、抵抗が高い部位を回避するように電流がながれ局部的な発熱は生じない。
一方、特許文献1に記載されているような樹脂を含む導電性集電体(樹脂に導電性フィラーを分散)は、導電性フィラーの分散に分布がある為、集電体の厚さ方向へ流れる電流が面内でばらついてしまう。さらに、金属集電体に比べ面内方向の電気抵抗が高いために、集電体の面方向に電流が流れることによって、集電体内で電流の平準化も出来ない。したがって、集電体の低抵抗の部位に電流が多く流れ、充放電によって局部的な発熱が生じる。
そこで本発明は、双極型電池の局部的な発熱を抑制し、双極型電池の耐久性を向上させる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意研究を積み重ねた。その結果、樹脂からなる基材と、前記基材の厚さ方向に貫通する周期的に配列した導電部とからなる、導電性を有する樹脂層からなる集電体を双極型電池に用いることによって、上記目的が達成されることを見出した。
導電性を有する樹脂層は面方向の体積抵抗率が高い。このため、本発明の集電体を用いた双極型電池を構成する単電池で内部短絡が発生した場合、樹脂層が短絡電流を抑制することにより、短絡時の発熱を防止できる。また、樹脂を含む基材の厚さ方向に貫通する周期的に配列した導電部によって、集電体の厚さ方向への電流分布を均一にできる。よって、内部短絡時の電流集中による発熱を抑制できると共に、充放電による局所的な発熱も抑制される。
双極型リチウムイオン二次電池の構造を示す断面概略図である。 第1実施形態の集電体を模式的に表した概略図である。 第1実施形態の集電体の製造方法を模式的に表した概略図である。 双極型リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。 組電池の外観図である。 組電池を搭載した車両の概念図である。
まず、好ましい実施形態である双極型リチウムイオン二次電池について説明するが、以下の実施形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
双極型電池の構造・形態で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など特に制限されず、従来公知のいずれの構造にも適用されうる。
同様に双極型電池の電解質の形態で区別した場合にも、特に制限はない。例えば、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。
また、電池の電極材料または電極間を移動する金属イオンで見た場合にも、特に制限されず、公知のいずれの電極材料等にも適用されうる。例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、カリウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池、ニッケル水素電池などが挙げられ、好ましくは、リチウムイオン二次電池である。これは、リチウムイオン二次電池では、セル(単電池層)の電圧が大きく、高エネルギー密度、高出力密度が達成でき、車両の駆動電源用や補助電源用として優れているためである。
図1は、双極型リチウムイオン二次電池10の全体構造を模式的に表した断面概略図である。図1に示す双極型リチウムイオン二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
図1に示すように、双極型リチウムイオン二次電池10の発電要素21は、集電体11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極23を有する。各双極型電極23は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、電解質層17は、基材としてのセパレータの面方向中央部に電解質が保持されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極23および電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型リチウムイオン二次電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止する目的で、単電池層19の外周部にはシール部(絶縁層)31が配置されている。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。ただし、正極側の最外層集電体11aの両面に正極活物質層13が形成されてもよい。同様に、負極側の最外層集電体11bの両面に負極活物質層15が形成されてもよい。
さらに、図1に示す双極型二次電池10では、正極側の最外層集電体11aに隣接するように正極集電板25が配置され、これが延長されて電池外装材であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層集電体11bに隣接するように負極集電板27が配置され、同様にこれが延長されて電池の外装であるラミネートフィルム29から導出している。
図1に示す双極型リチウムイオン二次電池10においては、通常、各単電池層19の周囲に絶縁部31が設けられる。この絶縁部31は、電池内で隣り合う集電体11どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。かような絶縁部31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型リチウムイオン二次電池10が提供されうる。
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型二次電池10では、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型リチウムイオン二次電池10でも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素21を電池外装材であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板25および負極集電板27をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。以下、本形態の双極型二次電池の主な構成要素について説明する。
図2は、双極型リチウムイオン電池10の集電体11(第1実施形態)を模式的に表した概略図である。図2に示すように、集電体11には、樹脂基材2aの厚さ方向に貫通し、かつ周期的に配列された複数の導電部2bが設けられている。本実施形態では、導電部2bは金属体からなる。
金属集電体を使用した双極型電池では、電池構成要素(例えばセパレータ)の面内において電気抵抗にばらつきがあっても、金属集電体の面方向に電流が流れることによって、抵抗が高い部位を回避するように電流が流れ、局部的な発熱は生じない。しかしながら、樹脂集電体を使用した双極型電池は、金属集電体に比べ面内方向の電気抵抗が高い。したがって、樹脂集電体を双極型電池の集電体に使用した場合、電池構成要素の抵抗が高い部位に電流が流れ続け、局部的な発熱が生じうる。
また、樹脂に導電性フィラーが分散されている集電体は、導電性フィラーの分散に分布がある為、集電体の厚さ方向へ流れる電流が面内でばらついてしまう。さらに、金属集電体に比べ面内方向の電気抵抗が高いために、集電体の面方向に電流が流れることによって、集電体内で電流の平準化も出来ない。したがって、集電体の低抵抗の部位に電流が多く流れ、充放電によって局部的な発熱が生じる。
本実施形態の集電体は、樹脂を含む基材の厚さ方向に貫通する周期的に配列した導電部が設けられている。これにより、集電体の厚さ方向への電流分布を均一にでき、内部短絡時の電流集中による発熱を抑制できると共に、充放電による局所的な発熱も抑制され、双極型電池の長期信頼性(耐久性)が向上する。
さらに、本実施形態の集電体は、樹脂を含む基材の正極側表面および負極側表面に、導電部(金属体)が露出している構造であるとも言える。この露出した導電部(金属体)によって、集電体の面直方向の電子導電性を確保しつつ、充放電におけるリチウムの集電体へのインターカレーションを防止することができる。かような構造により、双極型電池の容量低下を抑制することができる。
以下、本実施形態の集電体について、詳細に説明する。
(集電体)
集電体は樹脂からなる基材(以下、単に樹脂基材とも称する)および導電部を含む。以下、樹脂基材および導電部について説明する。
<樹脂基材>
樹脂基材は、集電体の役割を果たす。樹脂基材の具体的な形態として、1)樹脂を構成する高分子材料が導電性高分子である形態、2)樹脂を構成する高分子材料が導電性のない高分子である形態が挙げられる。好ましくは、2)樹脂を構成する高分子材料が導電性のない高分子である形態である。
導電性高分子は、導電性を有し、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から選択される。これらの導電性高分子は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し伝導性を示すと考えられている。代表的な例としては電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物などが好ましい。電子伝導性および電池内で安定に使用できるという観点から、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンがより好ましい。
導電性のない高分子の例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンなどのオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、またはこれらの混合物などが挙げられる。これらの材料は電位窓が非常に広く正極電位、負極電位のいずれに対しても安定である。また、軽量であるため、電池の高出力密度化が可能となる。
本実施形態の樹脂基材は、導電部を容易に形成することできるという観点から、ミクロ相分離構造を有する高分子材料を含むことが好ましい。ミクロ相分離構造を有する高分子材料を用いることによって、一つの相を柱状に規則的に配列させることが容易にでき、柱状に配列した相を分解することにより、樹脂基材の厚さ方向に貫通する周期的に配列した空孔を容易に形成することができる。
用いられるミクロ相分離する高分子材料は、特に制限されず、例えば、(a)互いに非相溶である複数のポリマー鎖が化学結合したブロック共重合体またはグラフト共重合体、(b)互いに非相溶である2種の高分子材料を混合したポリマーブレンドまたはポリマーアロイ、などが挙げられる。
前記の(a)互いに非相溶である複数のポリマー鎖が化学結合したブロック共重合体またはグラフト共重合体の具体的な例としては、例えば、プロピレンとエチレン、ブテン、ヘキセン等のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種または2種以上のコモノマーとの共重合体または多元共重合体の他、スチレンとイソブチレン、ブタジエン、もしくはイソブテンとの共重合体もしくはその水添物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、エチレンとメチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、もしくはフッ化ビニルとの共重合体、プロピレンとメチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、もしくはブチルアクリレートとの共重合体、メチルメタクリレートとブチルメタクリレートとの共重合体、ジメチルシロキサン−イソブテン共重合体、プロピレンオキシド−ポリブタジエン共重合体、ポリスルホン−ポリジメチルシロキサン共重合体などが挙げられる。
また、下記化学式(1)で表される、ポリオキシエチレン鎖を有する親水性ブロックと、アゾベンゼン基を有する疎水性ブロックとを有するブロック共重合体も、ミクロ相分離構造を有する高分子材料の好適な例として挙げられる。
前記化学式(1)中、mおよびnはそれぞれ独立して、5〜500の整数であり、aは整数であり、Rは水素原子または炭素数1〜22の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基である。
前記の(b)互いに非相溶である2種の高分子材料を混合したポリマーブレンドまたはポリマーアロイの例としては、例えば、2種の高分子材料がともに結晶性熱可塑性樹脂の組み合わせ、2種の高分子材料がともに非晶性熱可塑性樹脂の組み合わせ、一方の成分が結晶性熱可塑性樹脂であり、他方の成分が非晶性熱可塑性樹脂の組み合わせが挙げられる。ここでいう非晶性熱可塑性樹脂とは、加熱すると軟化し、冷却すると固化する特徴を有する熱可塑性樹脂のうち、結晶状態となりえないか、結晶化しても結晶融解熱量が好ましくは10J/g以下となる結晶化度が極めて低い熱可塑性樹脂を示す。
結晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、またはこれらの共重合体などが挙げられる。
非晶性熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−メチルアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、ポリカーボネート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、シクロオレフィン、エチレン−テトラシクロドデセン共重合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリビニルアセテート、ポリフェニレンエーテル、液晶熱可塑性樹脂などが挙げられる。
これらミクロ相分離構造を有する高分子材料の中でも、前記化学式(1)で表される共重合体が特に好ましい。
前記樹脂基材は導電性フィラーを含んでいても良い。用いられる導電性フィラー(導電材)は、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、導電性を有する樹脂層内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが望ましい。
具体的には、アルミニウム材、ステンレス(SUS)材、グラファイトやカーボンブラックなどのカーボン材、銀材、金材、銅材、チタン材などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金材が用いられてもよい。好ましくは銀材、金材、アルミニウム材、ステンレス材、カーボン材、さらに好ましくはカーボン材である。またこれらの導電性フィラー(導電材)は、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記導電材)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
また、導電性フィラー(導電材)の形状(形態)は、粒子形態で用いればよいが、粒子形態に限られず、カーボンナノチューブなど、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている粒子形態以外の形態であってもよい。
カーボン粒子としては、カーボンブラックやグラファイトなどが挙げられる。カーボンブラックやグラファイトなどのカーボン粒子は電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに導電性に優れている。また、カーボン粒子は非常に軽量なため、質量の増加が最小限になる。さらに、カーボン粒子は、電極の導電助剤として用いられることが多いため、これらの導電助剤と接触しても、同材料であるがゆえに接触抵抗が非常に低くなる。なお、カーボン粒子を導電性粒子として用いる場合には、カーボンの表面に疎水性処理を施すことにより電解質のなじみ性を下げ、集電体の空孔に電解質が染み込みにくい状況を作ることも可能である。
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.01〜10μm程度であることが望ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。後述する活物質粒子などの粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
樹脂基材における、導電性フィラーの比率は、特に限定されないが、好ましくは、高分子材料および導電性フィラーの合計に対して、1〜30質量%の導電性フィラーが存在する。十分な量の導電性フィラーを存在させることにより、樹脂層における導電性を十分に確保できる。
上記樹脂基材には、樹脂および導電性フィラーの他、他の添加剤を含んでいてもよい。
<導電部>
導電部の形成材料は、特に制限されないが、上述の効果をより発揮しうるという観点から金属材料であることが好ましい。前記金属材料のさらに具体的な例としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、錫、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどが挙げられる。
前記導電部の面内方向の面積は、前記集電体の面内方向の全面積に対して5〜35%であることが好ましい。面積が5%未満であると、電流を取り出すための導電部の面積が不十分となる場合がある。一方、35%を超えると、軽量化に不利となり、コストが増大する場合がある。また、導電部の面積が増えることにより電流量が大きくなり、ジュール発熱量が増大し、信頼性が低下する場合がある。前記導電部の面内方向の面積は、前記集電体の面内方向の全面積に対して10〜25%であることがより好ましい。
なお、前記の導電部の面内方向の面積は、導電部の直径および導電部の間隔を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することにより、算出することができる。
本実施形態の集電体は、例えば、以下のような方法により製造できる(図3参照)。すなわち、(1)ミクロ相分離構造を有する高分子材料を準備する工程;(2)準備した高分子材料を溶剤キャスト法によりフィルム化する工程;(3)柱状に規則的に配列している相を分解して空孔を形成する工程;(4)無電解めっきにより導電部を作製する工程;(5)導電部以外の箇所に形成された金属体部分をエッチングする工程;を含む製造方法である。以下、かような製造方法について説明するが、これに限定されるものではない。
(1)ミクロ相分離構造を有する高分子材料を準備する工程
ミクロ相分離構造を有する高分子材料が前記の(a)互いに非相溶である複数のポリマー鎖が化学結合したブロック共重合体またはグラフト共重合体である場合、合成品を用いてもよいし市販品を用いてもよい。合成品を用いる場合の合成方法は、特に制限されず、例えば、フリーラジカル重合法、原子移動ラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法などが挙げられる。また、重合の形態も特に制限されず、例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合などが挙げられる。
ミクロ相分離構造を有する高分子材料が前記の(b)互いに非相溶である2種の高分子材料を混合したポリマーブレンドまたはポリマーアロイである場合、高分子材料を混合することにより得られたものを用いてもよいし市販品を用いてもよい。高分子材料を混合する方法は特に制限されず、慣用の方法、例えば、各成分をドライブレンドする方法、各成分を溶融混合(溶融ブレンド)する方法、各成分を溶媒に溶解(または分散)して溶媒を除去する方法などを利用できる。溶融混合(溶融ブレンド)は、慣用の混練機(例えば、単軸もしくは二軸スクリュー押出機、ニーダー、カレンダーロールなど)を用いて行うことができる。
(2)準備した高分子材料を溶剤キャスト法によりフィルム化する工程
本工程では、上述の高分子材料を、溶剤キャスト法によりフィルム状に成形する。
具体的には、例えば、上述したミクロ相分離構造を有する高分子材料を溶媒に溶解または分散させて適度な濃度の液とし、適当なキャリヤー上に注ぐかまたは塗布し、これを乾燥した後、キャリヤーから剥離させる方法が挙げられる。
ここで使用する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール等のセロソルブ系溶媒、ジアセトンアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、1,2−ジメチ
ルシクロヘキサン等のケトン系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、2,
2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン含有溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、1−ペンタノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒を挙げることができる。前記溶媒は単独であるいは2種以上併用して使用することができる。
溶剤キャスト法により製造する方法としては、前記の溶液または分散液をダイスやコーターを使用して金属ドラム、スチールベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレン製ベルトなどのキャリヤー上に塗布して塗膜を形成し、その後、溶剤を乾燥・除去して基材よりフィルムを剥離する方法が挙げられる。また、スプレー、ハケ、ロールスピンコート、ディッピングなどの手段を用いて、溶液または分散液をキャリヤー上に塗布し、その後溶剤を乾燥・除去して基材よりフィルムを剥離することにより製造することもできる。なお、塗布の繰り返しにより厚みや表面平滑性等を制御してもよい。
また、キャリヤーとしてポリエステルフィルムを使用する場合には、表面処理されたフィルムを使用してもよい。表面処理の方法としては、一般的に行われている親水化処理方法、例えば、アクリル系樹脂やスルホン酸塩基含有樹脂をコーティングやラミネートにより積層する方法、または、コロナ放電処理等によりフィルム表面の親水性を向上させる方法等が挙げられる。
溶剤キャスト法の乾燥(溶剤除去)工程については、特に制限はなく一般的に用いられる方法、例えば、多数のローラーを介して乾燥炉中を通過させる方法、オーブン中で乾燥する方法などが実施できる。乾燥温度は、用いる高分子材料の融点よりも10〜100℃低い温度であることが好ましく、50〜80℃低い温度であることがより好ましい。また、乾燥時間は、2〜10時間であることが好ましく、5〜8時間であることがより好ましい。
(3)柱状に規則的に配列している相を分解して空孔を形成する工程(図3のA参照)
本工程では、ミクロ相分離構造を有する高分子材料の柱状に規則的に配列している相を分解して空孔を形成する。規則的に配列している相を除去する方法としては、相を構成するポリマー鎖の種類に応じて、主鎖切断(炭素−炭素二重結合のオゾン分解等)、フリー末端からの解重合、ブロックの結合点解離後の溶剤による洗浄除去などにより行われる。例えば、ポリジエンはオゾン分解により除去できる。また、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミドは、フリー末端からの解重合により、またはブロックの結合点を酸などにより解離させた後、有機溶剤で洗浄することにより除去できる。さらに、例えば、ポリエチレンオキシド鎖は、紫外光による分解により除去することができる。相が除去されると、除去された相の形状に相当する空孔が形成され、例えば、好ましくは10〜500nm、より好ましくは50〜200nm程度の孔を有する多孔質体(多孔性フィルム)を得ることができる。
なお、前記の空孔の径(半径または直径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することができる。
(4)無電解めっきにより導電部を形成する工程(図3のB参照)
本工程では、無電解めっきにより導電部を作製する。無電解めっきは、所定の金属種のイオンを含むめっき液を樹脂基材に接触させ、該イオンを還元する(金属を析出させる)ことにより行われ、これにより、所定の金属種から形成される導電部が形成される。目的とする金属種が直接無電解めっきすることが困難な金属種(例えば金などの貴金属)である場合は、予め該金属種よりもイオン化傾向の高い金属種(例えばニッケル)を用いて無電解めっきにより金属層を形成する。その後、該金属層の金属種を目的とする金属種に置換することで、目的とする金属種の導電部を容易に形成できる。
無電解めっきの金属種としては、特に限定されず、一般的に無電解めっきの金属種として用いられているものが使用でき、例えば、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、錫、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどが挙げられる。これらの中でも、一般的にめっき技術が確立していることから、金、銀、銅、ニッケルおよびコバルトからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
金属種のイオンの還元は、公知の方法により行うことができる。具体例としては、還元反応の触媒となるもの(無電解めっきにおける触媒)を使用する方法、めっき金属よりもイオン化傾向の高い金属を置換する方法等が挙げられる。
本工程においては、前記(3)で形成した空孔の表面に、無電解めっきにおける触媒を導入した後、無電解めっきを行うことが好ましい。該触媒は、無電解めっきの核として、該空孔表面に接触した金属イオンの還元反応を促進させるため、空孔表面に、高いめっき選択性で、効率よく金属からなる導電部を形成できる。
無電解めっきにおける触媒としては、一般的に、金属の微粒子や薄膜等が用いられる。触媒となる金属の種類は、使用する金属種の種類によって異なっており、通常、使用する金属種と同じか、またはそれよりもイオン化しやすい金属が触媒として用いられる。
具体例としては、例えば、金属種が銀の場合は主に銀触媒が用いられ、金属種が銅の場合は主に銀触媒、銅触媒が用いられ、金属種がニッケル、コバルト、金等の場合は主にパラジウム触媒、錫触媒等が用いられる。触媒としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
空孔の表面への触媒の導入は、公知の方法により行うことができる。たとえば、触媒となる金属の塩(たとえば硝酸銀、金属塩化物等)の水溶液と鋳型表面に接触させて該塩を鋳型表面に吸着させ、該塩を還元する。これにより、鋳型表面に金属微粒子を導入できる。
導電部に含まれる金属は、1種であっても2種以上であってもよい。
(5)導電部以外の箇所に形成された金属体部分をエッチングする工程(図3のC参照)
最後に、上記(4)の無電解めっきにより、導電部以外の箇所に形成された金属体部分をエッチングにより取り除く。エッチング方法は特に制限されず、例えば、スパッタエッチング、アルゴンプラズマエッチングなどの方法が挙げられる。
集電体の厚さは、特に限定されるものではないが、電池の出力密度を高める上では、薄いほど好ましい。双極型電池においては、正極および負極の間に存在する樹脂集電体は、積層方向に水平な方向の電気抵抗が高くてもよいため、集電体の厚さを薄くすることが可能である。具体的には、集電体の厚さは、0.1〜150μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。
以上説明した第1実施形態は、以下の効果を有する。
導電性を有する樹脂層は面方向の体積抵抗率が高い。このため、双極型電池を構成する単電池で内部短絡が発生した場合、樹脂層が短絡電流を抑制することにより、短絡時の発熱を防止できる。第1実施形態は、樹脂を含む基材の厚さ方向に貫通する周期的に配列した導電部を設けることによって、集電体の厚さ方向への電流分布を均一にできる。よって、内部短絡時の電流集中による発熱を抑制できると共に、充放電による局所的な発熱も抑制される。さらに、本実施形態の集電体は、樹脂を含む基材の正極側表面および負極側表面に、導電部(金属体)が露出している構造である。この露出した導電部(金属体)によって、集電体の面直方向の電子導電性を確保しつつ、充放電におけるリチウムの集電体へのインターカレーションを防止することができる。かような構造により、双極型電池の容量低下を抑制することができる。
上記で説明した双極型リチウムイオン電池は、集電体の構成に特徴を有する。以下、その他の主要な構成部材について説明する。
(活物質層)
[正極(正極活物質層)および負極(負極活物質層)]
活物質層13または15は活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
正極活物質層13は、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Co−Mn)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
負極活物質層15は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
各活物質層13、15に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜20μmである。
正極活物質層13および負極活物質層15は、バインダを含む。
活物質層に用いられるバインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適なバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり活物質層に使用が可能となる。これらのバインダは、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。
活物質層中に含まれるバインダ量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
活物質層に含まれうるその他の添加剤としては、例えば、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
正極活物質層および負極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、非水溶媒二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。各活物質層の厚さについても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、2〜100μm程度である。
(電解質層)
電解質層13を構成する電解質としては、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiBETI等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。
ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が真性ポリマー電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
ゲル電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
(最外層集電体)
最外層集電体の材質としては、例えば、金属や導電性高分子が採用されうる。電気の取り出しやすさの観点からは、好適には金属材料が用いられる。具体的には、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅などの金属材料が挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性、電池作動電位という観点からは、アルミニウム、銅が好ましい。
(タブおよびリード)
電池外部に電流を取り出す目的で、タブを用いてもよい。タブは最外層集電体や集電板に電気的に接続され、電池外装材であるラミネートシートの外部に取り出される。
タブを構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用のタブとして従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極タブと負極タブとでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。
正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン二次電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材29から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
(電池外装材)
電池外装材29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素(電池要素)を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。
(絶縁部)
絶縁部31は、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止する。また、絶縁部31は、電池内で隣り合う集電体どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。
絶縁部31を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよい。例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁部31の構成材料として好ましく用いられる。
なお、上記の双極型電池は、従来公知の製造方法により製造することができる。
<双極型電池の外観構成>
図4は、双極型電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な双極型のリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
図4に示すように、積層型の扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素(電池要素)57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素(電池要素)57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素(電池要素)57は、先に説明した図1に示す双極型のリチウムイオン二次電池10の発電要素(電池要素)21に相当するものであり、正極(正極活物質層)13、電解質層17および負極(負極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
なお、上記リチウムイオン電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではなく、巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素(電池要素)がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
また、図4に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではなく、正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図4に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
上記リチウムイオン電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
<組電池>
組電池は、上記双極型電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
図5は、組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図5Aは組電池の平面図であり、図5Bは組電池の正面図であり、図5Cは組電池の側面図である。
図5に示すように、本実施形態の組電池300は、双極型電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を形成する。この装脱着可能な小型の組電池250をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池300を形成することもできる。図5Aは、組電池の平面図、図5Bは正面図、図5Cは側面図を示しているが、作成した装脱着可能な小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個の双極型電池を接続して組電池250を作製するか、また、何段の組電池250を積層して組電池300を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
<車両>
本実施形態の車両は、上記双極型電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とするものである。長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。言い換えれば、双極型電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。双極型電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
図6は、組電池を搭載した車両の概念図である。
図6に示したように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。
以下、本発明を実施例および比較例を通して説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、共重合体の数平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、使用機器:株式会社島津製作所製、品番:FRC−10A)により算出した。また、導電部の半径および導電部の間隔はSEM(株式会社日立製作所製、品番:S−3700N)を用いて測定した。
(実施例1)
1.集電体の作製工程
4−(ブチルフェニルアゾ)フェノール(東京化成工業株式会社製、特級)と11−ブロモ−1−ウンデカノール(和光純薬工業株式会社製、特級)とを、Williamson法により縮合させ、11−(4−(ブチルフェニルアゾ)フェノキシ)−1−ウンデカノールを得た。得られた11−(4−(ブチルフェニルアゾ)フェノキシ)−1−ウンデカノールを、塩化メタクリロイル(和光純薬工業株式会社製、特級)とトリエチルアミン(和光純薬工業株式会社製、特級)存在下、塩化メチレン中で反応させ、メタクリル酸エステルモノマー(以下、単にMA(Az)とも称する)を得た。
別途、分子量が250であるポリエチレンオキシドとブロモイソ酪酸ブロミド(和光純薬工業株式会社製、特級)とをトリエチルアミン存在下、テトラヒドロフラン中で反応させることにより、モノマー(以下、単にPEO−BMPとも称する)を得た。
アルゴン雰囲気下、PEO−BMP 65mg、MA(Az)65mg、塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製、特級)2.5mg、および1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(アルドリッチ社製)6mgを1,2−ジクロロベンゼン 2mlに溶解させ、80℃で20分間攪拌し、共重合体を作製した。
重合終了後、反応液を空気中に暴露して銅錯体を失活させて反応を停止させ、反応液をテトラヒドロフランで希釈し、アルミナカラムを通じて銅錯体を除去し、溶媒を留去した。生成物を熱ヘキサン中で固−液抽出することにより、残留するモノマーを除去し、共重合体を得た。
得られた共重合体について、NMR(日本電子株式会社製、品番:JMN−LA400)による分析を行い、前記化学式(2)中の−CH−基およびCH−基(前記化学式(2)中の丸印で囲まれた基)のピーク面積比から、まずmとnとの比を算出した。この結果と、数平均分子量の測定結果とから、mおよびnの実際の数字を算出した。その結果、前記化学式(2)のmが5であり、nが3である構造を有する共重合体であることがわかった。また、得られた共重合体の数平均分子量は850であった。
得られた共重合体をトルエンに3質量%となるように溶解させ、ガラス板にキャストし、70℃で12時間加熱乾燥することで、ミクロ相分離構造を有するフィルム(厚さ20μm)を得た。
次に、キセノンエキシマーランプを用いて、減圧下で172nmの真空紫外光を1時間照射することによって、ポリエチレンオキシド鎖の分解を行った。その結果、フィルムの上下面を貫通する円筒状の空孔が規則的に配列したフィルムを得た。
上記の規則的に配列された空孔を有するフィルムに対して、無電解銅めっきを行った。無電解銅めっきは、1M硫酸銅溶液を用い、錯化剤としてロシェル塩(L−酒石酸カリウムナトリウム四水和物)、還元剤としてホルマリンを用いて、pH12.5、温度25℃で実施した。その結果、空孔が銅で満たされた構造体が得られた。
SEMを用いて、導電部の半径および導電部の間隔を測定したところ、導電部の半径は5nm、導電部の間隔は5nmであった。また、導電部の面内方向の面積は、集電体の面内方向の全面積に対して34.8%であった。
次に、アルゴンプラズマエッチング(300W、2Pa、30sccm、1min)を行い、上下面のCu層を除去した。これにより、樹脂基材を貫通する導電部が形成された集電体が完成した。
2.正極層の形成工程
正極活物質として、LiMn(平均粒子径:10μm)85質量%、導電助剤としてアセチレンブラック 5質量%、およびバインダとしてPVdF 10質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、正極スラリーを作製した。
上記正極スラリーを、上記1.で作製された集電体の片側に塗布し乾燥させて正極層を形成した。この正極層の厚みが片面で36μmになるようにプレスを行った。
3.負極層の形成および双極型電極の完成工程
負極活物質として、ハードカーボン(平均粒子径:10μm)90質量%およびバインダとしてPVdF 10質量%からなる固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるNMPを適量添加して、負極スラリーを作製した。
上記負極スラリーを、片面に正極層が形成された上記集電体の、正極層が形成されていない面に塗布し乾燥させて負極層を形成した。負極層の厚みは片面で30μmになるようにプレスを行った。これにより集電体の片面に正極層、もう一方の片面に負極層が形成された双極型電極を形成した。
得られた双極型電極を140mm×90mmに切断し、電極の周辺部10mmはあらかじめ電極層(正極層、負極層ともに)を塗布していない部分のあるものを作成した。これにより、120mm×70mmの電極部と、周辺部に10mmのシールしろができた双極型電極を作製した。
次に、以下の材料を所定の比で混合して電解質材料(プレゲル溶液)を作製した。
電解液として1.0M LiPFを含有するプロピレンカーボネート(PC)−エチレンカーボネート(EC)(1:1(体積比))90質量%を用いた。ホストポリマーとして、HFP成分を10質量%含むポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF−HFP)10質量%を用いた。粘度調整溶媒としてDMCを用いた。電解液、ホストポリマー、粘度調整溶媒を混合して電解質材料(プレゲル溶液)を調製した。
該電解質材料(プレゲル溶液)を先に形成された双極型電極両面の正極層及び負極層の電極部の全面に塗布し、室温で乾燥することによりDMCを除去することで、ゲル電解質の染み込んだ双極型電極を完成させた。なお、正極層の厚さは36μm、負極層の厚さは30μmのままであった。
4.ゲルポリマー電解質層の作製工程
ポリプロピレン製の多孔質フィルムセパレータ(厚さ20μm)の両面に、前記電解質材料(プレゲル溶液)を塗布し、室温でDMCを乾燥させることでゲルポリマー電解質層(厚さ20μm)を得た。
5.積層工程
上記で得られた双極型電極の正極層上にゲル電解質層をのせ、その周りに幅12mmm厚さ100μmのPE(ポリエチレン)製フィルムをおきシール材とした。このような双極型電極を6層積層したのちにシール材を上下からプレス(熱と圧力)をかけ融着し、各層をシールして(プレス条件:0.2MPa、160℃、5s)、シール部を形成した。
得られた電池要素の投影面全体を覆うことのできる130mm×80mmの100μm厚さのAl板(電極集電板)の一部が、電池要素の投影面外部まで伸びている部分(電極タブ:幅20mm)がある電極集電板(強電端子)を作製した。この集電板で電池要素を挟み込みこれらを覆うように、電池外装材としてアルミニウムを含むラミネートフィルムで真空密封し、これにより電池要素全体が、大気圧で両面が押され加圧された。そして、電極集電板−電池要素間の接触が高められた5直構造(5セルが直列に接続された構成)の双極型二次電池が完成した。
(実施例2)
分子量が1000であるポリエチレンオキシドとブロモイソ酪酸ブロミド(和光純薬工業株式会社製、特級)とをトリエチルアミン存在下、テトラヒドロフラン中で反応させることにより、モノマー(以下、単にPEO−BMPとも称する)を得た。
アルゴン雰囲気下、PEO−BMP 65mg、MA(Az)80mg、塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製、特級)2.5mg、および1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(アルドリッチ社製)6mgを1,2−ジクロロベンゼン 2mlに溶解させ、80℃で40分間攪拌し、共重合体を作製した。
得られた共重合体を分析したところ、前記化学式(2)のmが20であり、nが6である構造を有する共重合体であることがわかった。また、得られた共重合体の数平均分子量は1780であった。
このような共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
SEMを用いて、導電部の半径および導電部の間隔を測定したところ、導電部の半径は10nm、導電部の間隔は20nmであった。また、導電部の面内方向の面積は、集電体の面内方向の全面積に対して19.6%であった。
(実施例3)
分子量が1000であるポリエチレンオキシドとブロモイソ酪酸ブロミド(和光純薬工業株式会社製、特級)とをトリエチルアミン存在下、テトラヒドロフラン中で反応させることにより、モノマー(以下、単にPEO−BMPとも称する)を得た。
アルゴン雰囲気下、PEO−BMP 65mg、MA(Az)80mg、塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製、特級)2.5mg、および1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(アルドリッチ社製)6mgを1,2−ジクロロベンゼン 2mlに溶解させ、80℃で60分間攪拌し、共重合体を作製した。
得られた共重合体を分析したところ、前記化学式(2)のmが20であり、nが9である構造を有する共重合体であることがわかった。また、得られた共重合体の数平均分子量は、1910であった。
このような共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
SEMを用いて、導電部の半径および導電部の間隔を測定したところ、導電部の半径は15nm、導電部の間隔は20nmであった。また、導電部の面内方向の面積は、集電体の面内方向の全面積に対して28.2%であった。
(実施例4)
分子量が2500であるポリエチレンオキシドとブロモイソ酪酸ブロミド(和光純薬工業株式会社製、特級)とをトリエチルアミン存在下、テトラヒドロフラン中で反応させることにより、モノマー(以下、単にPEO−BMPとも称する)を得た。
アルゴン雰囲気下、PEO−BMP 65mg、MA(Az)120mg、塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製、特級)2.5mg、および1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(アルドリッチ社製)6mgを1,2−ジクロロベンゼン 2mlに溶解させ、80℃で40分間攪拌し、共重合体を作製した。
得られた共重合体を分析したところ、前記化学式(2)のmが50であり、nが6である構造を有する共重合体であることがわかった。また、得られた共重合体の数平均分子量は、2700であった。
このような共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
SEMを用いて、導電部の半径および導電部の間隔を測定したところ、導電部の半径は10nm、導電部の間隔は50nmであった。また、導電部の面内方向の面積は、集電体の面内方向の全面積に対して6.4%であった。
(実施例5)
分子量が2500であるポリエチレンオキシドとブロモイソ酪酸ブロミド(和光純薬工業株式会社製、特級)とをトリエチルアミン存在下、テトラヒドロフラン中で反応させることにより、モノマー(以下、単にPEO−BMPとも称する)を得た。
アルゴン雰囲気下、PEO−BMP 65mg、MA(Az)120mg、塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製、特級)2.5mg、および1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(アルドリッチ社製)6mgを1,2−ジクロロベンゼン 2mlに溶解させ、80℃で120分間攪拌し、共重合体を作製した。
得られた共重合体を分析したところ、前記化学式(2)のmが50であり、nが18である構造を有する共重合体であることがわかった。また、得られた共重合体の数平均分子量は、3320であった。
このような共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
SEMを用いて、導電部の半径および導電部の間隔を測定したところ、導電部の半径は30nm、導電部の間隔は50nmであった。また、導電部の面内方向の面積は、集電体の面内方向の全面積に対して23.3%であった。
(実施例6)
分子量が4400であるポリエチレンオキシドとブロモイソ酪酸ブロミド(和光純薬工業株式会社製、特級)とをトリエチルアミン存在下、テトラヒドロフラン中で反応させることにより、モノマー(以下、単にPEO−BMPとも称する)を得た。
アルゴン雰囲気下、PEO−BMP 65mg、MA(Az)145mg、塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製、特級)2.5mg、および1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(アルドリッチ社製)6mgを1,2−ジクロロベンゼン 2mlに溶解させ、80℃で40分間攪拌し、共重合体を作製した。
得られた共重合体を分析したところ、前記化学式(2)のmが88あり、nが9である構造を有する共重合体であることがわかった。また、得られた共重合体の数平均分子量は、5305であった。
このような共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
SEMを用いて、導電部の半径および導電部の間隔を測定したところ、導電部の半径は15nm、導電部の間隔は88nmであった。また、導電部の面内方向の面積は、集電体の面内方向の全面積に対して5.1%であった。
(実施例7)
分子量が5000であるポリエチレンオキシドとブロモイソ酪酸ブロミド(和光純薬工業株式会社製、特級)とをトリエチルアミン存在下、テトラヒドロフラン中で反応させることにより、モノマー(以下、単にPEO−BMPとも称する)を得た。
アルゴン雰囲気下、PEO−BMP 65mg、MA(Az)180mg、塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製、特級)2.5mg、および1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(アルドリッチ社製)6mgを1,2−ジクロロベンゼン 2mlに溶解させ、80℃で200分間攪拌し、共重合体を作製した。
得られた共重合体を分析したところ、前記化学式(2)のmが100であり、nが30である構造を有する共重合体であることがわかった。また、得られた共重合体の数平均分子量は、6850であった。
このような共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
SEMを用いて、導電部の半径および導電部の間隔を測定したところ、導電部の半径は50nm、導電部の間隔は100nmであった。また、導電部の面内方向の面積は、集電体の面内方向の全面積に対して19.6%であった。
(実施例8)
分子量が25000であるポリエチレンオキシドとブロモイソ酪酸ブロミド(和光純薬工業株式会社製、特級)とをトリエチルアミン存在下、テトラヒドロフラン中で反応させることにより、モノマー(以下、単にPEO−BMPとも称する)を得た。
アルゴン雰囲気下、PEO−BMP 65mg、MA(Az)300mg、塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製、特級)2.5mg、および1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(アルドリッチ社製)6mgを1,2−ジクロロベンゼン 2mlに溶解させ、80℃で600分間攪拌し、共重合体を作製した。
得られた共重合体を分析したところ、前記化学式(2)のmが100であり、nが30である構造を有する共重合体であることがわかった。また、得られた共重合体の数平均分子量は、30100であった。
このような共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
SEMを用いて、導電部の半径および導電部の間隔を測定したところ、導電部の半径は150nm、導電部の間隔は500nmであった。また、導電部の面内方向の面積は、集電体の面内方向の全面積に対して11.0%であった。
(実施例9)
分子量が25000であるポリエチレンオキシドとブロモイソ酪酸ブロミド(和光純薬工業株式会社製、特級)とをトリエチルアミン存在下、テトラヒドロフラン中で反応させることにより、モノマー(以下、単にPEO−BMPとも称する)を得た。
アルゴン雰囲気下、PEO−BMP 65mg、MA(Az)300mg、塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製、特級)2.5mg、および1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(アルドリッチ社製)6mgを1,2−ジクロロベンゼン 2mlに溶解させ、80℃で2000分間攪拌し、共重合体を作製した。
得られた共重合体を分析したところ、前記化学式(2)のmが500であり、nが300である構造を有する共重合体であることがわかった。また、得られた共重合体の数平均分子量は、38700であった。
このような共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
SEMを用いて、導電部の半径および導電部の間隔を測定したところ、導電部の半径は500nm、導電部の間隔は500nmであった。また、導電部の面内方向の面積は、集電体の面内方向の全面積に対して34.8%であった。
(実施例10)
分子量が25000であるポリエチレンオキシドとブロモイソ酪酸ブロミド(和光純薬工業株式会社製、特級)とをトリエチルアミン存在下、テトラヒドロフラン中で反応させることにより、モノマー(以下、単にPEO−BMP10とも称する)を得た。
アルゴン雰囲気下、PEO−BMP10 65mg、MA(Az)300mg、塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製、特級)2.5mg、および1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(アルドリッチ社製)6mgを1,2−ジクロロベンゼン 2mlに溶解させ、80℃で2040分間攪拌し、共重合体を作製した。
得られた共重合体を分析したところ、前記化学式(2)のmが500であり、nが306である構造を有する共重合体であることがわかった。また、得られた共重合体の数平均分子量は、38900であった。
このような共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
SEMを用いて、導電部の半径および導電部の間隔を測定したところ、導電部の半径は510nm、導電部の間隔は500nmであった。また、導電部の面内方向の面積は、集電体の面内方向の全面積に対して35.3%であった。
(実施例11)
分子量が1000であるポリエチレンオキシドとブロモイソ酪酸ブロミド(和光純薬工業株式会社製、特級)とをトリエチルアミン存在下、テトラヒドロフラン中で反応させることにより、モノマー(以下、単にPEO−BMP11とも称する)を得た。
アルゴン雰囲気下、PEO−BMP11 65mg、MA(Az)80mg、塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製、特級)2.5mg、および1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(アルドリッチ社製)6mgを1,2−ジクロロベンゼン 2mlに溶解させ、80℃で3200分間攪拌し、共重合体を作製した。
得られた共重合体を分析したところ、前記化学式(2)のmが20であり、nが480である構造を有する共重合体であることがわかった。また、得られた共重合体の数平均分子量は、27800であった。
このような共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
SEMを用いて、導電部の半径および導電部の間隔を測定したところ、導電部の半径は800nm、導電部の間隔は20nmであった。また、導電部の面内方向の面積は、集電体の面内方向の全面積に対して76.6%であった。
(実施例12)
分子量が1000であるポリエチレンオキシドとブロモイソ酪酸ブロミド(和光純薬工業株式会社製、特級)とをトリエチルアミン存在下、テトラヒドロフラン中で反応させることにより、モノマー(以下、単にPEO−BMP12とも称する)を得た。
アルゴン雰囲気下、PEO−BMP12 65mg、MA(Az)80mg、塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製、特級)2.5mg、および1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(アルドリッチ社製)6mgを1,2−ジクロロベンゼン 2mlに溶解させ、80℃で40分間攪拌し、共重合体を作製した。
得られた共重合体を分析したところ、前記化学式(2)のmが20であり、nが2.5である構造を有する共重合体であることがわかった。また、得られた共重合体の数平均分子量は、1630であった。
このような共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
SEMを用いて、導電部の半径および導電部の間隔を測定したところ、導電部の半径は3nm、導電部の間隔は20nmであった。また、導電部の面内方向の面積は、集電体の面内方向の全面積に対して4.2%であった。
(実施例13)
分子量が1000であるポリエチレンオキシドとブロモイソ酪酸ブロミド(和光純薬工業株式会社製、特級)とをトリエチルアミン存在下、テトラヒドロフラン中で反応させることにより、モノマー(以下、単にPEO−BMP13とも称する)を得た。
アルゴン雰囲気下、PEO−BMP13 65mg、MA(Az)80mg、塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製、特級)2.5mg、および1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(アルドリッチ社製)6mgを1,2−ジクロロベンゼン 2mlに溶解させ、80℃で80分間攪拌し、共重合体を作製した。
得られた共重合体を分析したところ、前記化学式(2)のmが20であり、nが12.5である構造を有する共重合体であることがわかった。また、得られた共重合体の数平均分子量は、2150であった。
このような共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
SEMを用いて、導電部の半径および導電部の間隔を測定したところ、導電部の半径は21nm、導電部の間隔は20nmであった。また、導電部の面内方向の面積は、集電体の面内方向の全面積に対して36.0%であった。
(比較例1)
実施例1で得られた共重合体を用いて、ミクロ相分離構造を有するフィルムを得る際の乾燥条件を、130℃、12時間としたが、均一なフィルムとならずに、不均一な膜となった。この膜を集電体として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
(比較例2)
ポリエチレンに対して、30質量%のケッチェンブラックを混合し、射出成形により導電性樹脂フィルムを作製し、これを集電体として用いた。この集電体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
(比較例3)
ポリエチレンに対して、30質量%の金微粒子を混合し、射出成形により導電性樹脂フィルムを作製し、これを集電体として用いた。この集電体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
(評価:充放電試験)
実施例1〜13、および比較例1〜3の双極型二次電池で初回充放電試験を行った。試験は0.5Cの電流で21.0Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧で充電(CV)し、あわせて10時間充電した。その後、1Cの放電容量で100サイクルの耐久試験の容量測定を行った。なお、試験環境温度は45℃であった。評価結果を下記表4に示す。
下記表1中の容量維持率(%)は、初期放電容量に対する100サイクル後の放電容量の比率を表す。すなわち、容量維持率=100サイクル後の放電容量(Ah)/初期放電容量(Ah)×100(%)である。
(評価:横方向電流)
導電率を以下のように算出し、算出された導電率が1×10−7レベルであった場合を「横方向電流無」、それより大きい場合を「横方向電流有」とした。
導電率(σ)は体積抵抗率(ρv)の逆数を算出することにより求めた。前記体積抵抗率は、フィルム抵抗(ρs)と膜厚(t)との積として表される(すなわち、ρv=ρs×t)ため、導電率(σ)は、下記数式1で表される。
下記の方法で測定したフィルム抵抗および膜厚を、上記数式1に代入して、導電率を算出した。
(フィルム抵抗の測定方法)
フィルム抵抗(ρs)は、抵抗率計(ダイヤインスツルメンツ社製、ロレスターGP、MC P−T600型)に、4端子4探針PSP型プローブを装備して測定した。
(膜厚の測定方法)
得られたフィルムの膜厚は、DIGIMATIC MICROMETER(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した。
評価結果を下記表1に示す。
上記表の結果から明らかなように、実施例1〜13の双極型二次電池は、集電体内の厚さ方向に貫通する周期的に配列した導電部を備えることにより、充放電による局所的な発熱が抑制され、容量維持率(耐久性)が良好となることがわかった。
2a、3a 樹脂基材、
2b、3b 導電部、
3c 空孔、
10、50 双極型リチウムイオン二次電池、
11 集電体、
11a 正極側の最外層集電体、
11b 負極側の最外層集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21、57 発電要素、
23 双極型電極、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29 ラミネートフィルム、
31 シール部、
52 電池外装材、
58 正極タブ、
59 負極タブ、
250 小型の組電池、
300 組電池、
310 接続治具、
400 電気自動車。

Claims (5)

  1. 導電性を有する樹脂層からなる双極型電池用集電体であって、
    前記導電性を有する樹脂層は、樹脂からなる基材と、前記基材の厚さ方向に貫通する周期的に配列した導電部とからなる、双極型電池用集電体。
  2. 前記導電部の面内方向の面積が、前記集電体の面内方向の全面積に対して5〜35%である、請求項1に記載の双極型電池用集電体。
  3. 請求項1または2に記載の双極型電池用集電体を含む、双極型電池。
  4. 請求項3に記載の双極型電池が複数個接続された組電池。
  5. 請求項3に記載の双極型電池、または請求項4に記載の組電池をモータ駆動用電源として搭載する車両。
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