JP2010248756A - 吸音体、音響処理室、及び吸音体の音響処理室への施工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】吸音体が設置される音響処理室のスペース効率の向上及びコスト低減を実現する技術を提供する。
【解決手段】無響室10の内側壁面の全体にわたって、複数の吸音体20が設置されている。そして、隣り合う吸音体20との間には、所定の幅のスリット30が設けられている。つまり、吸音体20同士は、離間して配置されている。このようにすることで、吸音体20の厚さ(楔の長さ)を長くすることなく、カットオフ周波数近傍の低音域の吸収率を向上させることができ、その結果、低音域の吸収率改善に伴う無響室10におけるスペース効率の低下を回避できる。
【選択図】図1
【解決手段】無響室10の内側壁面の全体にわたって、複数の吸音体20が設置されている。そして、隣り合う吸音体20との間には、所定の幅のスリット30が設けられている。つまり、吸音体20同士は、離間して配置されている。このようにすることで、吸音体20の厚さ(楔の長さ)を長くすることなく、カットオフ周波数近傍の低音域の吸収率を向上させることができ、その結果、低音域の吸収率改善に伴う無響室10におけるスペース効率の低下を回避できる。
【選択図】図1
Description
本発明は、吸音体、音響処理室及び吸音体の音響処理室への施工方法に係り、例えば、無響室等の音響処理室に用いられる吸音体、そのような吸音体を備える音響処理室及びそのような吸音体の音響処理室への施工方法に関する。
音響関連の研究機関や企業、また車両等における騒音対策が望まれる製品を製造する企業等においては、各種の音響実験や測定を行うために無響室が用いられる。無響室においては、外部から遮音された室内の内壁面全体、つまり床、壁、天井に吸音体、例えば吸音楔が取り付けられている。吸音楔は、ガラスウール等の多孔質材料で楔形の形状を有して形成されている。そして、この吸音楔の性能は、測定を行う音響信号の周波数帯にあわせて設計がなされ、例えば垂直入射音圧反射率(又は垂直入射吸音率)で表される。この垂直入射音圧反射率(以下、単に「音圧反射率」という)が小さいほど、つまり0に近いほど、吸音楔の吸音特性が良好であることを示している。
通常、カットオフ周波数(遮断周波数)以上の周波数帯では、音圧反射率は0.1以下になるように設計され、無響室ではそのカットオフ周波数より高い周波数帯域の音響信号は、実質的に反射がなされないようになっている。上述の通り、吸音楔の性能は、測定を行う音響信号の周波数帯にあわせて設計されるが、吸音楔の楔形状部分の長さが長いほどカットオフ周波数は低くなる特性を有している。例えば、300Hz以上の周波数の音響信号が測定対象である場合には、吸音楔の楔形状部分の長さは250mm程度必要であり、また、125Hz以上の周波数の音響信号が測定対象である場合には、600mm程度必要である。
このように、無響室の吸音特性をより低い周波数帯域まで広げるためには、吸音楔の長さを長くする必要がある。しかし、吸音楔の楔形状部分の長さを長くすると無響室の容積が実質的に小さくなってしまったり、それを回避するためには無響室全体を大きくする必要があったりするため、スペース効率が悪化してしまうという課題があった。また、吸音楔は、製作する際の材料歩留まりや手間がかかり、コスト低減が難しく、その結果、無響室自体が高価になってしまうことがあった。
そこで、従来より、このような課題を改善するために、さまざまな技術が提案されている。例えば、無響室に取り付けられた吸音楔に延長用吸音楔を取り付けることで、無響室の周波数特性を変更可能とする技術がある(例えば、特許文献1参照)。
また、平面板形状で厚みが50mm程度のグラスウールなどの多孔質材料を平積みにしたり、コバ積みにしたりする多層式吸音構造を有する簡易型の無響室も提案されている。
ところで、特許文献1に開示の技術にあっては、延長用吸音楔を別途用意する必要があり、コスト低減に関しては、改善の余地があった。また、延長用吸音楔を取り付ける手間がかかったり、取り外した延長用吸音楔の管理スペースの確保が必要であるなどの課題があり、別の技術が求められていた。また、多層式吸音構造の簡易型の無響室では、スペース効率やコスト低減が重要視され、吸音性能の低下についてはある程度妥協する必要があった。具体的には、カットオフ周波数付近では、音圧反射率が0.1程度となるが、その周波数以上の帯域では、0.2〜0.3程度となってしまっていた。
本発明は、このような従来の事情に鑑みなされたもので、上記の課題を解決する技術を提案することを目的とする。
本発明の音響処理室は、複数の吸音体が設置される音響処理室であって、隣り合う前記吸音体同士の間にスリットが形成されて前記吸音体が設置されている。
また、前記スリットを構成する前記吸音体の側面に凹凸形状が形成されてもよい。
本発明の吸音体は、多孔質材料によって形成され、音響処理室に設置される吸音体であって、前記音響処理室に設置されたときに、側面となる領域に凹凸形状が形成されている。
また、多孔質材料によって直方体で形成された腰部と、前記腰部から厚さ方向に延出する楔部と、を有し、前記腰部の側面に前記凹凸形状が形成されてもよい。
本発明の吸音体は、多孔質材料によって形成され、音響処理室に設置される吸音体であって、前記音響処理室に設置されたときに、厚さ方向に所定深さのスリットが形成されている。
また、前記音響処理室に設置されたときに、側面となる領域および/又は前記スリットを構成する面に凹凸形状が形成されてもよい。
本発明の施工方法は、複数の吸音体を設置して音響処理室を施工する施工方法であって、前記音響処理室の壁面に前記吸音体を設置するときに、隣接する吸音体を所定間隔だけ離間して設置する。
また、前記スリットを構成する前記吸音体の側面に凹凸形状が形成されてもよい。
本発明の吸音体は、多孔質材料によって形成され、音響処理室に設置される吸音体であって、前記音響処理室に設置されたときに、側面となる領域に凹凸形状が形成されている。
また、多孔質材料によって直方体で形成された腰部と、前記腰部から厚さ方向に延出する楔部と、を有し、前記腰部の側面に前記凹凸形状が形成されてもよい。
本発明の吸音体は、多孔質材料によって形成され、音響処理室に設置される吸音体であって、前記音響処理室に設置されたときに、厚さ方向に所定深さのスリットが形成されている。
また、前記音響処理室に設置されたときに、側面となる領域および/又は前記スリットを構成する面に凹凸形状が形成されてもよい。
本発明の施工方法は、複数の吸音体を設置して音響処理室を施工する施工方法であって、前記音響処理室の壁面に前記吸音体を設置するときに、隣接する吸音体を所定間隔だけ離間して設置する。
以上、本発明によると、従来の吸音体を使用した時と比較して、吸音体が設置される音響処理室のスペース効率を向上させることができ、また、コストを低減することができる。
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。以下の実施形態では、無響室に吸音体を設置する際に、隣り合う吸音体が、所定の幅のスリットを設けて離間して設置される。このように吸音体を配置することで、吸音体の低音域の吸収特性を改善するものである。なお、以下で説明する技術は、無響室に限らず、音響信号の測定に使用される各種の音響処理室においても適用可能である。
図1は、本実施形態に係る無響室10の内部を模式的に示した図であり、図2は、壁面15に設置されている吸音体20について、一部の領域を抽出して示した図である。図1に示すように、無響室10の内側壁面の全体にわたって、複数の吸音体20が設置されている。なお、以下の図1〜図3、図6では、同一の構成要素については、適宜代表の構成に符号を付し、一部符号を省略している。
例えば、図1に示す正面の壁面には、縦横3×4の12個の吸音体20が設置されている。そして、隣り合う吸音体20との間には、所定の幅d(図2参照)のスリット30が設けられている。つまり、吸音体20同士は、離間して配置されている。
ここで、図2をもとに、詳細に説明する。ここでは、4個の吸音体20について示しており、各吸音体20は同一構造であり設置の向きが異なっている。以下では、便宜的に、「第1〜第4の吸音体20a〜20d」と称し、第1〜第4の吸音体20a〜20dを区別しない場合には単に「吸音体20」と称する。
図2(a)に示すように、各吸音体20は、ガラスウール等の多孔質材料で形成されており、壁面15に取り付けられる腰部22と、この腰部22から一体となって突出する断面楔形形状のテーパ部21とを有している。また、テーパ部21の先端部23は、楔形形状の端部が取り除かれて平面となっている。ここでは、テーパ部21が3列に形成されている。例えば、図2(b)において、吸音体20は平面視で正方形の形状を有しており、各テーパ部21は、縦方向(図示でXY方向)又は横方向(図示でAB方向)に延びて並列に形成されている。より具体的には、第1及び第4の吸音体20a、20dのテーパ部21は、横方向(図示AB方向)に延びて並列で形成されており、また、第2及び第3の吸音体20b、20cのテーパ部21は縦方向(図示でXY方向)に延びて並列に形成されている。このように、隣り合う吸音体20において、テーパ部21が延びる向きは、縦横交互になっている。
ところで、従来の無響室にあっては、図3に示すように、隣り合って配置される吸音体220は、図2に示した吸音体20とは異なり、互いに間隔を開けることなく配置される。一般には、吸音体20、220の音圧反射特性(吸音特性)は、楔形形状に形成されたテーパ部21、221の長さH(図2及び図3参照)に依存することが知られており、従来は、このテーパ部221の数を出来るだけ多く設けるように、吸音体220が隙間無く配置されてきた。
しかしながら、上述のように、音圧反射特性(吸音特性)とスペース効率との両立に対する要望が強く、従来の吸音体220と同程度の大きさで、より低音域の音圧反射特性(吸音特性)を改善する技術の導入が求めらていた。そこで、本発明者は、上記の固定概念に囚われることなく、吸音体20の配置等の検討及び実験を行った結果、図1や図2に示すように、隣り合う吸音体20の間に、所定の間隔、つまり、スリット30を設けて吸音体20を配置することで、無響室10における音圧反射特性(吸音特性)を向上させ、低音域をより吸収させることができるという知見を得た。このように、従来と同じ形状の吸音体20を用いることができるため、無響室10を作る際に、無駄な費用がかからない。また、吸音体20の形状を大きくすることなく、低い周波数の吸音特性を向上させることができるため、無響室10のスペースを有効に活用できる。つまり、スペース効率の向上が実現できる。
以下に、スリットを設けたときの、効果を確認した実験の測定結果を図4に示す。図4(a)は、縦横300mm、厚さ350mmの吸音体に厚さ方向に貫通するスリットをスリット幅Wの条件を、0mm、20mm、30mm、40mm、50mm、60mmの6種類に変更しながらカットオフ周波数近傍の周波数帯(50Hz〜500Hz)の音圧反射率を測定した結果を示している。また、図4(b)は、図4(a)の条件において吸音体の厚さを200mmへ変更したものである。
図4(a)に示すように、スリットのスリット幅Wが0mm、つまり、スリットが無い条件では、周波数が高くなるにつれて音圧反射率は漸次低減しているが、100Hzにおける音圧反射率は0.4を超え、また、200Hz付近では、0.4を若干下回ったレベルとなっている。一方、スリットを設けた場合、上記いずれの条件であっても、100〜200Hzにおける音圧反射率は大幅に低減している。そして、スリット幅Wを拡大するにしたがって、100Hzより低い周波数帯域では、一部音圧反射率が上昇している部分があるものの、カットオフ周波数として重要な100Hz〜200Hzでは、いずれの条件でも大幅に音圧反射率が低下しており、吸音体の音圧反射特性(吸音特性)が向上している。
具体的には、170Hz近傍では、スリット幅Wが大きいほど反射率が低減しており、スリット幅Wが一番大きな60mmでは、反射率はほぼ0となっており、スリット幅Wが一番小さな20mmであっても、スリット幅Wが0と比べて約1/2の0.2程度まで低減できている。また、200Hz以上の周波数帯域ではスリットの有無にかかわらずほぼ同程度の特性が得られている。
一方で、図4(b)に示すように、吸音体の厚さを200mmとした場合、つまり、スリットの深さを図4(a)より短くした場合、全ての条件で吸音効果は低下しているものの、200Hz〜500Hzの帯域において、図4(a)と同様の傾向が得られた。
この計測結果から、スリット幅Wを適宜設定することで、所望の吸収特性(反射特性)を有する無響室を実現することができる。また、吸音体の厚さ(図2ではテーパ部21の長さH)を長くすることなく、カットオフ周波数近傍の低音域の音圧反射特性(吸音特性)を向上させることができるため、低音域の吸収率改善に伴う無響室におけるスペース効率の低下を回避できる。
図5は、吸音体の厚さを一定として、スリットの深さDを変更したときの音圧反射率の測定結果を示している。吸音体の形状は、縦横300mm、厚さ350mmであり、スリット幅Wは25mmとして、スリットの深さDを0、100、200,300、350mmに変更しながらカットオフ周波数近傍の周波数帯(50Hz〜500Hz)の音圧反射率を測定した結果を示している。なお、スリットの深さDが0mmのとき、吸音体にスリットが設けられておらず、また、スリット深さDが350のときには、吸音体が2分されている。図示の測定結果から分かるように、スリット深さDを大きくするにしたがって、吸音が最も効果的な領域が、低い周波数へシフトしている。この実験結果より、スリット深さDを適宜設定することで、吸音効果を向上させたい周波数帯域を調整することができる。例えば、無響室を作る際に、吸音体同士を所定幅だけ離間してスリットを形成した状態で設置し、測定対象に応じて、スリットに多孔質材料をはめ込み、スリットの深さを所望に調整することで、多様な測定条件に対応することができる。
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、楔形状のテーパ部21を有する吸音体20の特性を近似するために、テーパ部21の代わりに厚さ方向に吸音特性が異なる多孔質材料が積層された多層式の吸音体でも、スリットを設けて配置することで、同様の効果、つまり、低音域の音圧反射特性の向上やコスト低減、スペース効率の向上といった効果が得られる。また、図1や図2に示すスリット30の幅dを全て同じでなく、異なって設定してもよく、例えば、縦横で異なる値に設定してもよい。
また、吸音体20を設置するときのスリット30は、上述の実施形態に示した形状のように、吸音体20の側面が形成する平面により構成されている形態に限る趣旨ではなく、凹凸が形成されていてもよい。図6に、そのような、変形例に係る吸音体120(第1〜第4の吸音体120a〜120d)を示しており、図6(a)の吸音体120が図2に示した吸音体20に対応した図である。また、図6(b)は、図6(a)のスリット130の部分Gを拡大して正面から示した図である。ここでは図2と同様に、腰部122から楔形状のテーパ部121が厚さ方向に延出している。
また、図示のように、吸音体120の腰部122には、複数の溝128が横方向及び縦方向に形成されている。ここでは、断面形状が半円の溝128が水平に2段に延びて形成されているが、これに限る趣旨ではなく、溝128の数及び断面形状は適宜設定することができる。このように、スリット130における表面積を広げることで、カットオフ周波数近傍の周波数帯域の反射率を低減することができる。
溝を設けたスリットに関して効果を確認した実験の測定結果を示す。図7は、スリットに溝を形成した条件と形成しない条件の計測データを示している。具体的には、溝を形成していない条件(図示で「溝無し」)は、図4に示した計測データのうち、スリット幅Wが20mmの計測データを示している。また、溝を形成した条件(図示で「溝有り」)については、スリット幅Wが20mmの計測データの吸音体に、直径40mmの断面円形の溝を4段に設けた形状となっている。
図示のように、同じスリット幅であっても、溝が形成されている吸音体では、100Hz〜170Hzの周波数帯域において、反射率が大きく低減している。より具体的には、120Hz付近の反射率が0.3(溝無し)から0.2以下(溝有り)まで低減している。このように、スリットを構成する面に凹凸を設けることで、カットオフ周波数の近傍の周波数帯域において、反射率を大幅に低減することができる。
10 無響室
15 壁面
20、120 吸音体
20a〜20d 第1の吸音体〜第4の吸音体
21、121 テーパ部
22、122 腰部
30、130 スリット
120a〜120d 第1の吸音体〜第4の吸音体
15 壁面
20、120 吸音体
20a〜20d 第1の吸音体〜第4の吸音体
21、121 テーパ部
22、122 腰部
30、130 スリット
120a〜120d 第1の吸音体〜第4の吸音体
Claims (7)
- 複数の吸音体が設置される音響処理室であって、
隣り合う前記吸音体同士の間にスリットが形成されて前記吸音体が設置されていることを特徴とする音響処理室。 - 前記スリットを構成する前記吸音体の側面に凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の音響処理室。
- 多孔質材料によって形成され、音響処理室に設置される吸音体であって、
前記音響処理室に設置されたときに、側面となる領域に凹凸形状が形成されていることを特徴とする吸音体。 - 多孔質材料によって直方体で形成された腰部と、
前記腰部から厚さ方向に延出する楔部と、
を有し、
前記腰部の側面に前記凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の吸音体。 - 多孔質材料によって形成され、音響処理室に設置される吸音体であって、
前記音響処理室に設置されたときに、厚さ方向に所定深さのスリットが形成されていることを特徴とする吸音体。 - 前記音響処理室に設置されたときに、側面となる領域および/又は前記スリットを構成する面に凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の吸音体。
- 複数の吸音体を設置して音響処理室を施工する施工方法であって、
前記音響処理室の壁面に前記吸音体を設置するときに、隣接する吸音体を所定間隔だけ離間して設置することを特徴とする吸音体の音響処理室への施工方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009098027A JP2010248756A (ja) | 2009-04-14 | 2009-04-14 | 吸音体、音響処理室、及び吸音体の音響処理室への施工方法 |
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2009
- 2009-04-14 JP JP2009098027A patent/JP2010248756A/ja active Pending
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