図面を参照しながら、本発明の発電装置、発電システム、構造物、及び発電装置の設計方法を説明する。
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1の正面図に示すように、構造物としての建築物に設けられた床スラブ12と、支持脚(不図示)によって床スラブ12上に支持された床パネル10とによって二重床が構築されている。第1の実施形態では、床スラブ12に振動が発生するものとする。すなわち、床スラブ12を振動体とする。そして、この床スラブ12の上に、振動増幅構造14と発電手段16とを有する発電装置18が設けられている。
振動増幅構造14は、支持部材としての4つのコイルばね20と1つの錘22とを備えており、錘22は、コイルばね20によって床スラブ12の上に揺動可能に支持されている。
床スラブ12の上面には、上方に向かって開口する円柱状の収容孔24が形成された円柱状の内ガイド部材26が固定され、錘22の下面には、下方に向かって開口する円柱状の収容孔28が形成された円柱状の外ガイド部材30が固定されている。内ガイド部材26は、外ガイド部材30の収容孔28に挿入され、この状態で内ガイド部材26に対して外ガイド部材30が上下方向に相対移動できるようになっている。
内ガイド部材26の収容孔24と、外ガイド部材30の収容孔28とによって形成される収容部32には、コイルばね20が配置されている。コイルばね20の下端部は、内ガイド部材26の底部26Aに固定され、コイルばね20の上端部は、外ガイド部材30の天井部30Aに固定されている。
このような、内ガイド部材26及び外ガイド部材30から構成されるガイド機構34により、床スラブ12に生じた上下振動が錘22に伝達されて錘22が揺れるときに、錘22が横方向に移動することを規制し、錘22を略鉛直に上下動させることが可能になる。よって、床スラブ12の上下振動を錘22の上下振動に効果的に変換することができる。
また、内ガイド部材26の上端部にはゴム部材36が取り付けられている。錘22の上下動が過大になったときには、外ガイド部材30の天井部30A下面にゴム部材36が当たって錘22の移動(振動)が規制される共に振動エネルギーが吸収され、ゴム部材36がストッパーとして機能する。
発電手段16は、床パネル10の下面に固定された第2部材としての1つのコイル40と、錘22の上面に固定されコイル40内を移動する第1部材としての1つの磁石38とを備えている。磁石38は、棒状の磁石となっている。
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
第1の実施形態では、磁石38に対してコイル40が相対移動したときに、電磁誘導の原理によってコイル40から電力を発生させることができる。
よって、床スラブ12に上下方向の振動が発生したときに、これに伴って磁石38が上下方向に振動し、磁石38に対してコイル40が相対移動するので電力が発生する。すなわち、振動する振動体としての床スラブ12の振動エネルギーを発電手段16により電気エネルギーに変換して電力を発生させることができる。
ここで、磁石38に対してコイル40が相対移動すると、コイル40には逆起電力が発生し、これによって磁石38の振動を抑える抵抗力が、コイル40から磁石38へ作用してしまう。これに対して発電装置18では、磁石38を錘22に固定しているので、錘22の質量により磁石38の慣性力が大きくなり、これによってコイル40から磁石38へ作用する抵抗力による振動抑制効果を低減することができる。
すなわち、振動体としての床スラブ12の振動に対する磁石38の振動の増幅倍率の低下を低減することができ、磁石38を効果的に(大きく)振動させることができる。
よって、床スラブ12に発生する振動エネルギーを効果的に電気エネルギーに変換することができ、大きな電力を発生させることができる。
一般に、電磁誘導による発電量Vは、コイルの巻数をN、微小時間Δtでのコイルを貫く磁束密度の変化量をΔΦ/Δtとすると、式(1)に示すファラデーの電磁誘導の法則により求められる。
式(1)により、発電量Vは、磁束密度の変化量ΔΦ/Δtに比例することがわかる。そして、磁束密度の変化量ΔΦ/Δtは、磁石の振動の振幅(磁石とコイルとの相対移動量)が大きいほど大きくなるので、磁石の振動の振幅が大きいほど発電量は大きくなる。
このような原理からわかるように、床スラブ12の振動に対する磁石38の振動の増幅倍率の低下を低減して磁石38を効果的に(大きく)振動させることができれば、床スラブ12に発生する振動エネルギーを効果的に電気エネルギーに変換することができ、大きな電力を発生させることができる。
また、発電装置18には錘22が設けられているので、振動増幅構造14(4つのコイルばね20と1つの錘22)と1つの磁石38とによって構成される振動系S1の固有振動数を錘22の重量の設定により変更することができる。
これにより、発電装置18が設置される振動体(第1の実施形態の場合には、床スラブ12)の振動特性に応じて、振動系S1の固有振動数を設定することが可能になるので、大きな発電量を得ることができる。
図2には、発電装置18と、比較例としての発電装置42(図3を参照のこと)とに対して行ったシミュレーション解析結果が示されている。横軸には、振動数が示され、縦軸には、振動増幅倍率が示されている。振動増幅倍率は、床スラブ12の加速度に対する磁石38の加速度の割合を示した値である。すなわち、図2では、振動増幅倍率の値が1であれば、床スラブ12の加速度と磁石38の加速度とが等しくなっていることを意味し、振動増幅倍率の値が1よりも大きければ、磁石38の加速度が増幅されていることを意味し、振動増幅倍率の値が1よりも小さければ、磁石38の加速度が低減されていることを意味する。
図3の正面図に示すように、発電装置42では、床スラブ12の上に直接固定された1つの磁石38が、床パネル10の下面に固定された1つのコイル40内を移動する構成になっている。1つの磁石38のみによって構成される振動系を振動系S2とする。
図2では、振動系S1の固有振動数を5Hzとした発電装置18における振動数と振動増幅倍率との関係が値44として示され、振動系S2の固有振動数を5Hzとした発電装置42における振動数と振動増幅倍率との関係が値46として示されている。
図2からわかるように、値46は、床スラブ12の加速度と磁石38の加速度とが振動数によらず等しくなっている。
これに対して、値44は、振動系S1の固有振動数である5Hzで大きく増幅している。すなわち、発電装置18は、この発電装置18の有する振動系S1の固有振動数において磁石38を大きく振動させることができる。
よって、発電装置18の振動系S1の固有振動数を、床スラブ12の卓越振動数にすれば、磁石38を大きく振動させることができ、これによって大きな発電量を得ることができる。
また、発電装置18は、支持部材をコイルばね20とすることにより、簡単な部材(コイルばね20)で、錘22を効率よく振動させることができる。
また、支持部材をゴム部材とした場合、振動増幅構造14に伝わる振動エネルギーの一部がゴム部材によって熱エネルギーに変換されてしまうため、磁石38の振動として取り出すことができる潜在的なエネルギーがロスしてしまう。これに対して、コイルばね20は、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されにくいので、磁石38の振動として取り出すことができる潜在的なエネルギーはゴム部材の場合よりも大きくなる。
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
なお、第1の実施形態では、支持部材としてのコイルばね20と、コイルばね20によって床スラブ12の上に揺動可能に支持される錘22とを備えた振動増幅構造14の例を示したが、振動増幅構造は、錘22と、振動体に錘22を揺動可能に設けるコイルばね20とを備えていればよく、コイルばね20によって錘22を吊り下げた構成としてもよい。
例えば、図4(a)〜(f)のようにしてもよい。図4(a)は、図1で示した振動増幅構造14である。図4(b)の振動増幅構造48Bは、床スラブ12からコイルばね20によって錘22が揺動可能に吊り下げられた構成となっている。図4(c)の振動増幅構造48Cでは、円筒部50Bとこの円筒部50Bの上端部に設けられた円板状の天井部50Aとが一体となった架構50が床スラブ12の上面に設けられており、架構50の天井部50Aからコイルばね20によって錘22が揺動可能に吊り下げられた構成となっている。図4(d)の振動増幅構造48Dでは、円筒部52Bとこの円筒部52Bの下端部に設けられた円板状の底部52Aとが一体となった架構52が床スラブ12の下面に設けられており、架構52の底部52Aの上にコイルばね20によって錘22が揺動可能に支持された構成となっている。図4(e)の振動増幅構造48Eは、振動増幅構造48Cの錘22と床スラブ12との間にコイルばね20を設けた構成となっている。図4(f)の振動増幅構造48Fは、振動増幅構造48Dの錘22と床スラブ12との間にコイルばね20を設けた構成となっている。
また、第1の実施形態では、第1部材を磁石38とし、第2部材をコイル40とした例を示したが、第1部材をコイル40とし、第2部材を磁石38としてもよい。例えば、図5(a)〜(e)に示すように、磁石38とコイル40とを設けてもよい。説明の都合上、図5(a)〜(e)において、コイルばね20は省略されている。
図5(a)は、図1で示した構成であり、磁石38を錘22の上面に固定し、コイル40を床パネル10の下面に固定している。図5(b)は、磁石38を床パネル10の下面に固定し、コイル40を錘22の上面に固定した構成になっている。図5(c)は、磁石38を錘22の下面に固定し、コイル40を床スラブ12の上面に固定した構成になっている。図5(d)は、磁石38を床スラブ12の上面に固定し、コイル40を錘22の下面に固定した構成になっている。図5(e)は、磁石38を床スラブ12の上面に固定し、コイル40を錘22の上面に固定した構成になっている。錘22には、磁石38の外径よりも十分に大きな内径の貫通孔54が形成されており、この貫通孔54に磁石38が挿入されている。
また、第1の実施形態では、1つの錘22の上に1つの発電手段16(磁石38)を設けた例を示したが、1つの錘22に複数の発電手段16(磁石38)を設けてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
第2の実施形態では、図6の正面図に示すように、床スラブ12の上に、振動増幅構造56と発電手段58とを有する発電装置60が設けられている。
振動増幅構造56は、2つの振動増幅ユニット64、66を上下方向に直列に積層した構造となっており、床スラブ12の上に設けられている。
振動増幅ユニット64は、支持部材としての4つのコイルばね20と1つの錘22とを備えており、錘22は、コイルばね20によって床スラブ12の上に揺動可能に支持されている。
また、振動増幅ユニット66は、支持部材としての1つのコイルばね20と1つの錘62とを備えており、錘62は、コイルばね20によって錘22の上に揺動可能に支持されている。
発電手段58は、床パネル10の下面に固定された第2部材としての1つのコイル40と、振動増幅構造56の最上層に配置される錘62の上面に固定されコイル40内を移動する第1部材としての1つの磁石38とを備えており、磁石38に対するコイル40の相対移動によって電力を発生する。
次に、本発明の第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
第2の実施形態の発電装置60は、図6に示すように、磁石38に対してコイル40が相対移動したときに、電磁誘導の原理によってコイル40から電力を発生させることができる。
よって、床スラブ12に上下方向の振動が発生したときに、これに伴って磁石38が上下方向に振動し、磁石38に対してコイル40が相対移動するので電力が発生する。すなわち、振動する振動体としての床スラブ12の振動エネルギーを発電手段58により電気エネルギーに変換して電力を発生させることができる。
また、磁石38を錘62に固定しているので、錘62の重量により磁石38の慣性力が大きくなり、磁石38を効果的に(大きく)振動させることができる。
よって、床スラブ12に発生する振動エネルギーを効果的に電気エネルギーに変換することができ、大きな電力を発生させることができる。
また、1層の振動増幅ユニットのみ(例えば、振動増幅ユニット64のみ)によって構成される振動増幅構造の場合に比べて、床スラブ12の振動に対する磁石38の振動の増幅倍率をより大きくすることができ、磁石38をより大きく振動させることができる。
例えば、発電装置60において、床スラブ12の重量m0を1000kg、床スラブ12に発生する上下方向の振動加速度R0を1gal、錘22の重量m1を50kg、錘62の重量m2を2.5kg、磁石38の重量m3を0kg、床スラブ12の重量m0に対する錘22の重量m1のマス比μ01をm1/m0、錘22の重量m1に対する錘62の重量m2のマス比μ12をm2/m1とすると、錘22の振動加速度R1は、R1≒R0×(1/μ01)=1gal×(1000kg/50kg)=20galとなり、磁石38(錘62)の振動加速度R2は、R2≒R1×(1/μ12)=20gal×(50kg/2.5kg)=400galとなる。
このように、発電装置60は、床スラブ12の振動に対する磁石38の振動の増幅倍率をより大きくする(400gal/1gal=400倍)ことができる。また、錘62の重量を小さくしても磁石38を十分に振動させることができる。
また、振動増幅ユニット64、66の数と同数の固有振動数を生じさせることができると共に、この固有振動数付近の振動数においても床スラブ12の振動に対する磁石38の振動の増幅倍率を大きくすることができるので、卓越振動数が幅広く分布する床スラブ12に対して効率よく電力を発生させることができる。
また、発電装置60には錘22、62が設けられているので、振動増幅ユニット64(4つのコイルばね20と1つの錘22)によって構成される振動系S31の固有振動数、及び振動増幅ユニット66(1つのコイルばね20と1つの錘62)と1つの磁石38とによって構成される振動系S32の固有振動数を錘22、62の重量の設定により変更でき、これによって振動増幅構造56(振動増幅ユニット64、66)と1つの磁石38とによって構成される振動系S3の固有振動数を錘22、62の重量の設定により変更できる。
また、発電装置60のように、2層の振動増幅ユニット64、66によって構成される振動増幅構造56の場合、2層目の錘62の重量と磁石38の重量とを合計した値を1層目の錘22の重量で割ったマス比を小さくすれば、床スラブ12の振動に対する磁石38の振動の増幅倍率を大きくすることができ、このマス比を大きくすれば、振動増幅構造56の振動系S3に生じる2つの固有振動数(1次固有振動数と2次固有振動数)の振動数の間隔を広げることができる。
よって、発電装置60の設置場所となる振動体(第2の実施形態の場合、床スラブ12)の振動特性に応じてこのマス比を適宜設定することにより大きな発電量を得ることができる。
図7には、発電装置60と、比較例としての発電装置68(図8を参照のこと)とに対して行ったシミュレーション解析結果が示されている。横軸には、振動数が示され、縦軸には、振動増幅倍率が示されている。
図8の正面図に示すように、発電装置68では、1つの磁石38が1つのコイルばね20によって床スラブ12の上に揺動可能に支持されている。コイルばね20と磁石38とによって構成される振動系を振動系S4とする。
図7では、振動系S31、S32の固有振動数を共に5Hzとした発電装置60における振動数と振動増幅倍率との関係が値70として示され、振動系S4の固有振動数を5Hzとした発電装置68における振動数と振動増幅倍率との関係が値72として示されている。
図7から、発電装置60では、振動増幅ユニット64、66の数と同数である2つの固有振動数(ピーク)を5Hzの左右に生じさせることができると共に、この固有振動数付近の振動数においても床スラブ12の振動に対する磁石38の振動の増幅倍率を大きくできることがわかる。
図9には、発電装置60において、振動系S31、S32の固有振動数を共に5Hzとし、錘22の重量m1に対する錘62の重量m2と磁石38の重量m3とを合計した値のマス比μ13(=(m2+m3)/m1)を0.01、0.02、0.04、0.08、0.16としたときのシミュレーション解析結果が示されている。μ13=0.01のときの値が値74Aとして示され、μ13=0.02のときの値が値74Bとして示され、μ13=0.04のときの値が値74Cとして示され、μ13=0.08のときの値が値74Dとして示され、μ13=0.16のときの値が値74Eとして示されている。横軸には、振動数が示され、縦軸には、振動増幅倍率が示されている。
図9から、発電装置60では、マス比μ13を小さくすれば、床スラブ12の振動に対する磁石38(錘62)の振動の増幅倍率を大きくすることができ、マス比μ13を大きくすれば振動増幅構造56の振動系S3に生じる2つの固有振動数(1次固有振動数と2次固有振動数)の振動数の間隔を広げることができることがわかる。
よって、例えば、発生する上下方向の振動が5Hzの振動数成分しかない床スラブ12の上に発電装置60を設置する場合には、マス比μ13を可能な限り小さくして大きな発電量が得られるようにすればよい。
また、例えば、発生する上下方向の振動が4〜6Hzの振動数成分の範囲で卓越する床スラブ12の上に発電装置60を設置する場合には、その振動数成分の範囲で、床スラブ12の振動に対する磁石38(錘62)の振動の増幅倍率が大きくなるようにマス比μ13を設定して効果的に発電量が得られるようにすればよい。
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
なお、第2の実施形態では、2つの振動増幅ユニット64、66を直列に積層して振動増幅構造56を構成した例を示したが、3つ以上の振動増幅ユニットを直列に積層して振動増幅構造を構成してもよい。
また、振動増幅構造を構成する振動増幅ユニットは、振動増幅ユニット64、66に限らず、錘とこの錘を揺動可能に設けるコイルばねとを備えるものであればよい。例えば、第1の実施形態の図4(a)〜(f)で示した振動増幅構造14、48B〜48Fを振動増幅ユニットとしてもよい。また、第1の実施形態と同様に、第1部材をコイル40とし第2部材を磁石38としてもよいし、図5(a)〜(e)に示すように、磁石38とコイル40とを設けてもよい。
また、複数の振動増幅ユニットの全てを同じ構造としてもよいし、異ならせてもよい。例えば、複数の振動増幅ユニットの全てを振動増幅ユニット64としてもよいし、図10に示すような発電装置76としてもよい。
図10に示すように、発電装置76は、振動増幅構造78と発電手段80とを有し、床スラブ12の上に設けられている。
振動増幅構造78は、2つの振動増幅ユニット82、84を上下方向に直列に積層した構造となっており、床スラブ12の上に設けられている。
振動増幅ユニット82は、支持部材としての4つのコイルばね20と1つの錘22とを備えており、錘22は、コイルばね20によって床スラブ12の上に揺動可能に支持されている。錘22は、2つの錘ユニット22Aが積層された構造となっている。
振動増幅ユニット84は、錘22の上面に設けられた架構50の天井部50Aからコイルばね20によって錘62が揺動可能に吊り下げられた構成となっている。
発電手段80は、架構50の円筒部50Bに固定された第2部材としての1つのコイル40と、錘62の下面に固定されコイル40内を移動する第1部材としての1つの磁石38とを備えており、磁石38に対するコイル40の相対移動によって電力を発生する。
すなわち、発電装置76の振動増幅構造78は、図4(a)の振動増幅構造14を振動増幅ユニット82とし、図4(c)の振動増幅構造48Cを振動増幅ユニット84として、これらの振動増幅ユニット82、84を直列に積層した構成となっている。
また、第2の実施形態では、図6で示した発電装置60の振動系S31、S32の固有振動数を等しくした例を示したが、複数の振動増幅ユニットの固有振動数を異ならせてもよい。このようにすれば、振動増幅ユニットの各固有振動数を振動増幅構造の固有振動数とすることができる。
例えば、ポンプやファンなどの設備機器を振動源とし、この設備機器が設置された振動体から発生する50Hzの振動が卓越する場合、この振動数の整数倍の振動数成分(100Hz、150Hz)も卓越することがあるが、このような場合には、振動増幅ユニットの固有振動数を50Hzと100Hzとすれば、振動体に発生する振動を効率的に電力へ変換することができる。
図11には、発電装置60と、比較例としての発電装置68(図8を参照のこと)とに対して行ったシミュレーション解析結果が示されている。横軸には、振動数が示され、縦軸には、振動増幅倍率が示されている。
図11では、振動系S31の固有振動数を7Hz、振動系S32の固有振動数を5Hzとし、錘22の重量m1に対する錘62の重量m2(磁石38の重量m3は0kg)のマス比μ13(=(m2+m3)/m1)を0.013とした発電装置60における振動数と振動増幅倍率との関係が値86として示され、振動系S4の固有振動数を5Hzとした発電装置68における振動数と振動増幅倍率との関係が値72として示されている。
図11から、値72では、5Hzの振動数にしかピークが現れないのに対し、値86では、5Hzの振動数に加え、7Hzの振動数でも鋭いピークが現れていることがわかる。これにより、従来、1つの振動数成分でしか得られなかった発電効果が、2つの振動数成分で得ることができるので、効果的に発電させることができる。
また、第2の実施形態では、磁石38を錘62に固定した例を示したが、磁石38を振動させるのに十分な重さを磁石38が有していれば、錘62は無くてもよい。
また、第2の実施形態では、1つの錘22の上に、1つの振動増幅ユニット66と1つの発電手段58(磁石38)とを設けた例を示したが、1つの錘22の上に、複数の振動増幅ユニット66及び発電手段58(磁石38)を設けてもよい。また、1つの錘62の上に複数の発電手段58(磁石38)を設けてもよい。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態の説明において、第1及び第2の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
第3の実施形態では、図12(a)の正面図に示すように、床スラブ12の上に、振動増幅構造90と発電手段92とを有する発電装置88が設けられている。
振動増幅構造90は、支持部材としての弾性を有する板材96と錘94とを備えている。床スラブ12には、この床スラブ12の上に略鉛直に立つ支柱98の下端部が固定され、この支柱98の上端部に板材96の一端部が固定されている。
そして、このような構成により、床スラブ12に上下方向の振動が発生したときに、この振動が支柱98を介して板材96に伝わって、板材96が揺動する。すなわち、板材96は、床スラブ12に揺動可能に張り出して設けられている。
錘94は、ボルト100によって板材96に固定されている。また、錘94は、ボルト100による固定を外すことによって板材96の材軸方向(矢印102の方向)に自由に移動でき、板材96上の任意の位置で固定することができる。すなわち、板材96に対する錘94の固定位置が変更可能となっている。
発電手段92は、床パネル10の下面に固定された第2部材としての1つのコイル40と、板材96の他端部に固定されコイル40内を移動する第1部材としての1つの磁石38とを備えており、磁石38に対するコイル40の相対移動によって電力を発生する。
次に、本発明の第3の実施形態の作用及び効果について説明する。
第3の実施形態の発電装置88は、図12(a)に示すように、磁石38に対してコイル40が相対移動したときに、電磁誘導の原理によってコイル40から電力を発生させることができる。
よって、床スラブ12に上下方向の振動が発生したときに、これに伴って磁石38が上下方向に振動し、磁石38に対してコイル40が相対移動するので電力が発生する。すなわち、振動する振動体としての床スラブ12の振動エネルギーを発電手段92により電気エネルギーに変換して電力を発生させることができる。
また、錘94を板材96に固定すると共に、この板材96に磁石38を固定することによって、錘94の重量により磁石38の慣性力を大きくし、これによってコイル40から磁石38へ作用する抵抗力による振動抑制効果を低減することができる。
すなわち、床スラブ12の振動に対する磁石38の振動の増幅倍率の低下を低減することができ、磁石38を効果的に振動させることができる。
よって、床スラブ12に発生する振動エネルギーを効果的に電気エネルギーに変換することができ、大きな電力を発生させることができる。
また、板材96に対する錘94の固定位置が変更可能なので、振動増幅構造90(板材96と錘94)及び磁石38によって構成される振動系の剛性を、錘94の固定位置を変更することにより変え、これによって、この振動系の固有振動数を調整することができる。
以上、本発明の第3の実施形態について説明した。
なお、第3の実施形態では、第1部材を磁石38とし、第2部材をコイル40とした例を示したが、第1部材をコイル40とし、第2部材を磁石38としてもよい。
また、図12(b)の正面図に示す発電装置104のように、第2の実施形態で示した図10の振動増幅ユニット84及び発電手段80を、振動増幅構造90の板材96の他端部に設けた構成としてもよい。
また、第3の実施形態では、板材96に対する錘94の固定位置を変更可能とした例を示したが、錘94は、固定位置の変更ができないものであってもよい。
また、第3の実施形態では、支持部材を正面視にて直線状の板材96とした例を示したが、図13の正面図に示す発電装置106のように、振動増幅構造110の支持部材をU字形状に曲げられた板材108とし、板材108の一端部を支柱98の上端部に固定し、板材108の他端部に発電手段80を設けるようにしてもよい。
このようにすれば、板材108が曲げられた形状なので、板材108の配置されるスペースを小さくすることができる。
また、第3の実施形態では、1つの板材96に1つの発電手段92(磁石38)を設けた例を示したが、1つの板材96に複数の発電手段92(磁石38)を設けてもよい。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
第4の実施形態の説明において、第1〜第3の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図14の斜視図に示すように、第4の実施形態の発電システム112は、第2の実施形態で示した図10の発電装置76を2つ有している。第4の実施形態では、一方の発電装置76を発電装置76Aとし、他方の発電装置76を発電装置76Bとする。2つの発電装置76A、76Bは、床スラブ12の上に横方向(並列)に配置されている。
また、2つの発電装置76A、76Bの固有振動数は異なっている。
次に、本発明の第4の実施形態の作用及び効果について説明する。
第4の実施形態の発電システム112は、発電システム112の振動特性を、2つの発電装置76A、76Bのそれぞれの振動特性を積算して作り出すことができるので、発電システム112の有する2つの異なる固有振動数の間の振動数における、床スラブ12の振動に対する第1部材としての磁石38の振動の増幅倍率を大きくすることができる。これによって、床スラブ12の振動特性に応じた発電システム112を構築することができる。
図15には、発電装置76Aの固有振動数を5Hzとし、発電装置76Bの固有振動数を6Hzとした発電システム112と、比較例としての発電装置68(図8を参照のこと)とに対して行ったシミュレーション解析結果が示されている。横軸には、振動数が示され、縦軸には、振動増幅倍率が示されている。
図15では、発電システム112における振動数と振動増幅倍率との関係が値114として示され、振動系S4の固有振動数を5Hzとした発電装置68における振動数と振動増幅倍率との関係が値72として示されている。
値114は、2つの発電装置76A、76Bのそれぞれの振動特性を積算した振動特性となっている。図7で示したように、第2の実施形態の発電装置60においても固有振動数を2つにする効果は得られるが、発電装置60において高い振動増幅倍率が得られる振動数は、固有振動数の近傍の振動数である。これに対して発電システム112は、図15からわかるように、広い範囲の振動数の範囲で高い振動増幅倍率を得ることができる。
以上、本発明の第4の実施形態について説明した。
なお、第4の実施形態では、2つの発電装置76A、76Bの固有振動数を異ならせた例を示したが、2つの発電装置76A、76Bの固有振動数を同じにしてもよい。
また、第4の実施形態では、2つの発電装置76A、76Bを床スラブ12の上に横方向に配置した例を示したが、床スラブ12の上に3つ以上の発電装置を横方向に配置し、これら3つ以上の発電装置の固有振動数を異ならせてもよいし、これら3つ以上の発電装置の固有振動数を全て同じにしてもよい。
発電システムは、発電装置と同数の固有振動数を有し、これらの固有振動数間の振動数における、床スラブ12の振動に対する第1部材としての磁石38の振動増幅倍率を大きくすることができるので、3つ以上の発電装置の固有振動数を異ならせれば、高い振動増幅倍率が得られる振動数の範囲をさらに広げることが可能になる。また、3つ以上の発電装置の固有振動数を全て同じにすれば、発電装置の固有振動数において、高い振動増幅倍率を得ることができる。
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
第5の実施形態の説明において、第1〜第4の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図16の斜視図に示すように、第5の実施形態の発電装置116は、第2の実施形態で示した図10の発電装置76のガイド機構34を無くし、支持部材としてのコイルばね20を円柱状のゴム部材118としたものである。すなわち、第5の実施形態では、ゴム部材118が支持部材となっている。また、錘22の上面には、ゴム部材118と同じ材質のゴム部材212が設けられている。ゴム部材118、212は、圧縮により剛性が変化する(大きくなる)特性を有している。
図16及び図17の側断面図に示すように、積層された2つの錘ユニット22Aの四隅付近には、互いに連通する貫通孔120A、120Bが形成され、ゴム部材118、212及び上部材132には、貫通孔120A、120Bと連通する貫通孔122、214、218が形成されている。
締付部材124は、下部材126、上部材132、ボルト128、及びワッシャー130によって構成されている。下部材126は、円板部126Aと、円板部126Aの平面視にて略中心となる位置に下端部が固定されて略鉛直に立つ円筒部126Bとによって構成されている。円筒部126Bの内壁には雌ネジ210が形成されている。
図17の状態において、錘22の下面に配置されたゴム部材118の貫通孔122に、下部材126の円筒部126Bが挿入されている。また、錘22の上面に配置されたゴム部材212の上面に、平面視にて略正方形の上部材132が配置されている。
そして、上部材132の上方からボルト128を、ワッシャーの孔、ゴム部材212の貫通孔214、錘ユニット22Aの貫通孔120B、120A、ゴム部材118の貫通孔122の順に挿入した後、円筒部126Bの雌ネジ210にボルト128に形成されている雄ネジ216をねじ込み、これによって、円板部126Aと上部材132とにより錘22を間に挟んだゴム部材118、212を挟み込む。さらに、ボルト128の締め付けによってゴム部材118、212に圧縮力を付与する。なお、この状態で、ボルト128は錘ユニット22Aの貫通孔120A、120Bの内壁に接触していない。
このように、錘22は、締付部材124と接触せずに、上下両側からゴム部材118、212によって挟まれているので、床スラブ12に発生する上下方向の振動は、ゴム部材118又はゴム部材212を介して錘22に伝達される。
また、圧縮手段としての締付部材124によってゴム部材118、212に付与される圧縮力を、ボルト128の締め付けによるトルク量によって変え、これにより、ゴム部材118、212の剛性を調整する。
下部材126の下面には、床スラブ12に上下方向の振動が発生したときに、発電装置116が横方向に移動してしまわないように、ズレ防止のためのゴム製の台座134が取り付けられている。
次に、本発明の第5の実施形態の作用及び効果について説明する。
第5の実施形態の発電装置116は、図16、17に示すように、ゴム部材118、212に付与される圧縮力の変更によってゴム部材118、212の剛性を調整することにより、発電装置116の有する振動系の剛性を変更する。これによって、この振動系の固有振動数を調整することができる。
以上、本発明の第5の実施形態について説明した。
なお、第5の実施形態では、ゴム部材118、212の剛性を変えることによって振動系の固有振動数を調整する例を示したが、支持部材(第1〜第4の実施形態のコイルばね20、第5の実施形態のゴム部材118、212)の数を変えることによって振動系の固有振動数を調整してもよい。また、第1〜第4の実施形態のコイルばね20や第5の実施形態のゴム部材118、212と異なる剛性のコイルばねやゴム部材を用いることによって振動系の固有振動数を変更してもよい。
以上、本発明の第1〜第5の実施形態について説明した。
なお、第2の実施形態で示した発電装置60、76では、これまで説明したように、2つの固有振動数(1次固有振動数と2次固有振動数)を生じさせることが可能であるが、この特性を利用した発電装置の設計方法としては、発電装置の2次固有振動数を床スラブ12から発生する所定の振動数とする方法が好ましい。
例えば、第2の実施形態で示した発電装置60において、図18(a)に示すように、2つの固有振動数(4.8Hzと5.3Hz)を有する場合、これらの固有振動数で第1部材としての磁石38の振動増幅倍率は大きくなる。
このとき、第1部材としての磁石38と、第2部材としてのコイル40との位相差は、図18(b)のようになる。すなわち、1次固有振動数(=4.8Hz)よりも小さい振動数での位相差は0度となり、2次固有振動数(=5.3Hz)よりも大きい振動数での位相差は180度となる。
図19(a)に示すように、振動数が4.8Hzよりも小さいとき(位相差が0度のとき)に磁石38の振幅W1がコイル40の振幅W2の5倍になっていると仮定すると、図19(b)に示すように、振動数が5.3Hzよりも大きいときに位相差は180度となる。
これにより、振動数が4.8Hzよりも小さいときの磁石38とコイル40との相対移動量がW1−W2(=振幅W2の4倍)となるのに対して、振動数が5.3Hzよりも大きいときの磁石38とコイル40との相対移動量はW1+W2(=振幅W2の6倍)となるので、磁石38とコイル40との相対移動量を大きくすることができる。
よって、発電装置の2次固有振動数が、床スラブ12から発生する所定の振動数となるように発電装置の設計を行えば、床スラブ12から発生する振動の振動数が2次固有振動数(所定の振動数)よりも小さい場合、1次固有振動数と2次固有振動数との間の振動数において、床スラブ12の振動に対する磁石38の振動の増幅倍率は大きくなる。
また、床スラブ12から発生する振動の振動数が2次固有振動数(所定の振動数)よりも大きい場合、磁石38とコイル40との振動波形の位相差は180度となる。すなわち、磁石38とコイル40との相対移動量は大きくなる。
これらにより、床スラブ12から発生する振動数が、所定の振動数と異なる場合においても、発電量の低下を抑えることができる。
また、第1〜第5の実施形態では、第1部材を磁石38とし、第2部材をコイル40として、磁石38とコイル40との相対移動によって電磁誘導に基づく電力を発電する発電手段16、58、80、92の例を示したが、発電手段は、第1部材と第2部材との相対移動によって電力を発生するものであればよい。
例えば、コイルから離した位置でコイル面に対向するように磁石を配置し、コイル面と平行に磁石を移動させるようにしてもよい。また、コイルに対する磁石の離間と接近とを繰り返すようにしてもよい。これらの方法によって磁石とコイルとを相対移動させても、電磁誘導に基づく電力を発生させることができる。
また、例えば、図20(a)、(b)、及び図21に示すような、圧電効果に基づく電力を発電する発電手段138、148、160としてもよいし、図22に示すような、静電誘導に基づく電力を発電する発電手段172としてもよい。また、人工筋肉を動かすことによって生じる電力を利用する発電手段としてもよい。
図20(a)に示す発電装置136は、第1の実施形態の発電装置18の錘22の上に発電手段138を設置したものである。発電手段138は、圧電素子140と錘142とによって構成されている。圧電素子140は錘22の上面に固定され、この圧電素子140の上に錘142が固定されている。
床スラブ12に上下方向の振動が発生すると、錘22も上下方向に振動する。そして、この振動が圧電素子140を介して錘142に伝わり錘142も上下方向に振動する。このとき、圧電素子140には圧縮応力と引張応力とが繰り返し作用し、これによって圧電素子140の上下に設けられた電極144A、144Bから電力を発生させることができる。
この場合、圧電素子140の下端部が第1部材となり、錘142が第2部材となる。
図20(b)に示す発電装置146は、第1の実施形態の発電装置18の錘22の上に発電手段148を設置したものである。発電手段148は、圧電素子150、錘152、及び支柱154によって構成されている。支柱154は、錘22の上面に固定されて略鉛直に立っており、この支柱154の上端部付近から圧電素子150を介して錘152が左右に張り出すように設けられている。
床スラブ12に上下方向の振動が発生すると、錘22も上下方向に振動する。そして、この振動が支柱154及び圧電素子150を介して錘152に伝わり錘152も上下方向に振動する。このとき、圧電素子150には、せん断応力が繰り返し作用し、これによって圧電素子150の左右に設けられた電極156A、156Bから電力を発生させることができる。
この場合、支柱154が第1部材となり、錘152が第2部材となる。
図21に示す発電装置158は、第1の実施形態の発電装置18の錘22の上の四隅に4つの発電手段160を設置したものである。発電手段160は、圧電素子162A、162Bと電極164A、164Bとが交互に積層された板状の圧電部材162、及び錘166によって構成されている。圧電部材162は、錘22の上面の四隅から錘22の外側に張り出すように、一端部がボルト168によって錘22に固定されている。また、圧電部材162の他端部の下面には錘166が固定されている。
床スラブ12に上下方向の振動が発生すると、錘22も上下方向に振動する。そして、この振動が圧電部材162を介して錘166に伝わり錘166も上下方向に振動する。このとき、圧電素子162A、162Bには曲げ応力が繰り返し作用し、これによって圧電部材162に設けられた電極164A、164Bから電力を発生させることができる。
この場合、圧電部材162の一端部が第1部材となり、錘166が第2部材となる。
図22の発電装置170の発電手段172は、静電式の発電機であり、2つの平面状の基盤174、176が互いに向かい合った構造となっている。この場合、基盤174が第1部材となり、基盤176が第2部材となる。
基盤174は、第1の実施形態の発電装置18の錘22の上に下端部が固定され、基盤176は、床パネル10の下面に上端部が固定されている。基盤174には、電荷を半永久的に帯びたエレクトレット178が櫛状に配置されている。基盤176には、エレクトレット178に対向する対向電極180が櫛状に配置されている。
これにより、エレクトレット178と対向電極180とが相対移動することによって起電力が生じ、対向電極180から電力が発生する。
このようにして、発電装置136、146、158、170では、振動する床スラブ12の振動エネルギーを発電手段138、148、160、172により電気エネルギーに変換して電力を発生させることができる。
ここで、発電手段138、148、160、172により電力を発生させるときに、第1部材(発電手段138の圧電素子140の下端部、発電手段148の支柱154、発電手段160の圧電部材162の一端部、発電手段172の基盤174)の振動を抑える抵抗力が第2部材(発電手段138の錘142、発電手段148の錘152、発電手段160の錘166、発電手段172の基盤176)から第1部材へ作用する場合、第1部材の振動の振幅は小さくなってしまう。
これに対して、発電装置136、146、158、170では、第1部材を錘22に固定しているので、錘22の重量により第1部材の慣性力が大きくなり、これによって第2部材から第1部材へ作用する抵抗力による振動抑制効果を低減することができる。
すなわち、床スラブ12の振動に対する第1部材の振動の増幅倍率の低下を低減することができ、第1部材を効果的に振動させることができる。
よって、床スラブ12に発生する振動エネルギーを効果的に電気エネルギーに変換することができ、大きな電力を発生させることができる。
また、第1〜第5の実施形態では、支持部材としてコイルばね20やゴム部材118を用いた例を示したが、錘を揺動可能に支持したり、吊り下げたりできる部材であればよい。例えば、発泡ウレタンによって支持部材を形成してもよい。
また、第1〜第5の実施形態では、振動体を床スラブ12としたが、振動するさまざまな部材を振動体としてもよい。例えば、建築物に設けられている天井ボード、階段、空調ダクト、二重床を構成する床パネル等を振動体としてもよい。第1〜第5の実施形態で示した発電装置18、60、76、88、104、106、116や発電システム112を建築物等の構造物に設けるようにすれば、この構造物において、振動体に発生する振動エネルギーを効果的に変換した電気エネルギーを利用することができる。
また、例えば、走行する自動車や列車の車体、設備機器の架台、歩道橋、道路等を振動体とし、これらに第1〜第5の実施形態で示した発電装置18、60、76、88、104、106、116や発電システム112を設けてもよい。
また、例えば、躯体壁、仕上げ壁材、水道管、照明用ポールの先端部、犬や猫などのペットの首輪等を振動体としてもよいし、自動車、列車、建設重機や船舶などの乗り物、連絡橋や高架橋などの橋、ラジオや懐中電灯などの防災グッズ、ポンプや送風機などの設備機器、エレベータ、エスカレータ、加工機械、人、鞄等の振動する部位に第1〜第5の実施形態で示した発電装置18、60、76、88、104、106、116や発電システム112を設けてもよい。
また、振動体に伝達される振動としては、例えば、乗り物の走行などにより発生する交通振動、設備機器の稼働などにより発生する機械振動、日常的に建築物に作用する風荷重により発生する風振動などの環境振動等が挙げられる。また、水や空気などの流体、波、地下鉄の固体音等を振動体に振動を生じさせる振動源としてもよい。
図29の断面図には、床スラブ12の上面に発電装置600が設置されている例が示されている。発電装置600は、床スラブ12の上面と二重床を構成する床パネル602の下面との間に形成される床下空間604に配置されている。
図30の斜視図に示すように、発電装置600は、振動増幅構造606と発電手段612とを有している。振動増幅機構606は、振動増幅ユニット608、610によって構成されている。
振動増幅ユニット608は、床スラブ12の上面に設置されるベースプレート614の上面に取り付けられた支持部材としての4つのコイルばね616と、積層された複数の板材からなる錘618とによって構成されている。
錘618は、コイルばね616にコーナー部付近を支持されている揺動部材620に設けられた凹部622に配置されている。
振動増幅ユニット610は、揺動部材620の中央部に固定されるベースプレート624の上面に取り付けられた支持部材としての4つのコイルばね626と、板状の錘628とによって構成されている。錘628は、コイルばね626にコーナー部付近を支持されている。
錘628の中央部に形成された貫通孔630の内壁には、第1部材としてのコイル632が固定されており、ベースプレート624に立設された第2部材としての磁石634がコイル632に挿入されている。この状態で、コイル632に対して磁石634が相対移動可能になっている。すなわち、コイル632と磁石634とによって発電手段612が構成されている。
また、発電手段612は、少なくとも一部がコイルばね616の支持高さ以下に位置するように配置されている。なお、コイルばね616の支持高さとは、振動体としての床スラブ12に振動が発生していないときのコイルばね616の伸縮方向の高さを意味する。
よって、発電装置600は、床スラブ12に振動が発生したときに、コイル632と磁石634とが相対移動し、電力を発生させることができる。
また、発電手段612の少なくとも一部がコイルばね616の支持高さ以下に位置するように配置されているので、発電装置600の装置高さを低く抑えることができる。
図31、32には、図30の発電装置600と同様に、装置高さを低く抑えることができる発電装置636、672が示されている。
図31の正面図に示すように、発電装置636は、振動増幅構造638と発電手段644とを有している。振動増幅機構638は、振動増幅ユニット640、642によって構成されている。
振動増幅ユニット640は、床スラブ12の上面に設置されるベースプレート646の上面に取り付けられた支持部材としての4つのコイルばね648と、コイルばね648に支持された板状の台座650の下面に固定された板状の錘652とによって構成されている。
振動増幅ユニット642は、支持部材としてのリンク部材654と、板状の錘656とによって構成されている。
ベースプレート646の上面にはガイド部材658が固定され、このガイド部材658により、板状の移動部材660がベースプレート646に対して略水平方向(矢印662)に移動可能に支持されている。移動部材660の上面には錘656が固定されている。
移動部材660の左端部と、リンク部材654の下端部とは、ピン664により回転可能に連結されている。リンク部材654は、略水平方向(矢印662)に対して所定の傾斜角θ(例えば、θ=60度)で傾斜し、上端部がピン666によって台座650の下面に回転可能に連結されている。
そして、このリンク部材654のリンク機構によって、台座650の上下方向の往復運動が、移動部材660の略水平方向(矢印662)の往復運動に変換される。
移動部材660の下面には、第1部材としてのエレクトレット668が固定され、ベースプレート646の上面には、エレクトレット668と対向する第2部材としての対向電極670が固定されている。すなわち、エレクトレット668と、対向電極670とによって、発電手段644が構成されている。
よって、発電装置636は、床スラブ12に振動が発生したときに、エレクトレット668と対向電極670とが相対移動し、静電誘導の原理により対向電極670に電力を発生させることができる。
また、発電装置636では、リンク部材654のリンク機構により移動部材660が略水平方向(矢印662)に移動する。すなわち、移動部材660に固定された第1部材としてのエレクトレット668は、発電装置636の高さ方向へ移動しないので、発電装置636の装置高さを低くすることができる。
図32の断面図に示すように、発電装置672は、振動増幅構造674と発電手段680とを有している。振動増幅機構674は、振動増幅ユニット676、678によって構成されている。
振動増幅ユニット676は、床スラブ12の上面に設置されるベースプレート682の上面に取り付けられた支持部材としての4つのコイルばね684と、コイルばね684に支持された板状の台座686の下面に固定された円板状の錘688とによって構成されている。
振動増幅ユニット678は、支持部材としての雄ネジ部材690と、円環状の錘692とによって構成されている。
錘692は、円板状の回転部材694の外周に固定されている。また、錘692の外周に内側リング696Aが設けられ、ベースプレート682の上面に設置された円筒部材698の内壁上端部に外側リング696Bが設けられたボールベアリング696をガイドにして、錘692は、回転部材694の中心軸に対して回転可能に設けられている。
回転部材694の中央部に形成された貫通孔の内壁には雌ネジ700が形成され、台座686の下面に上端部が固定された雄ネジ部材690が雌ネジ700に捻じ込まれている。これによって、台座686の上下方向の往復運動が、回転部材694に固定された錘692の回転往復運動に変換される。
錘692の下面には、第1部材としての磁石702が固定され、ベースプレート682の上面に設置された円筒状の台部材704の上面には、第2部材としてのコイル706が設けられている。磁石702は、錘692の周方向に対して等間隔に配置され、コイル706は、台部材704の周方向に対して等間隔に配置されている。
よって、発電装置672は、床スラブ12に振動が発生したときに、磁石702とコイル706とが相対移動し、電力を発生させることができる。
また、発電装置672では、雌ネジ700に捩じ込まれ台座686と連動する雄ネジ部材690により、錘692が回転部材694の中心軸に対して回転する。すなわち、錘692に固定された第1部材としての磁石702は、発電装置672の高さ方向へ移動しないので、発電装置672の装置高さを低くすることができる。
図29〜32で示した発電装置600、636、672は、振動体としての床パネル602(図29を参照のこと)の下面や上面に設置してもよいし、図33の断面図に示すように、天井ボード708の上面に設置してもよいし、天井ボード708の下面に設置してもよい。
床スラブの上方で人が頻繁に動くフィットネス・スタジオやライブ・ハウスの床スラブ、床パネルや天井ボードにこれらの発電装置を設置するのが効果的である。
図34〜36には、階段712に発電装置76(図10を参照のこと)が設置されている例が示されている。発電装置76は、筐体710の中に設けられている。
図34の斜視図に示す筐体710は、階段712の段板716の下面に設置されている。すなわち、段板716を振動体としている。人が階段712を昇降することによって段板716が振動する場合、一次モードの振動においては、段板716の長手方向中央部で振幅が最大になるので、筐体710は、段板716の長手方向中央部に配置するのが好ましい。
図35の斜視図に示す筐体710は、角パイプによって形成されたささら桁714の内部に設置されている。
図36の斜視図に示す筐体710は、I形鋼によって形成されたささら桁718のウエブ側面に設置されている。
図35、36の場合には、人が階段712を昇降することによって段板716に発生した振動は、ささら桁714、718を介して発電装置76に伝達される。このように、ささら桁に発電装置を設置すれば、発電装置の設置により階段のデザイン性が損なわれることを防ぐことができる。
図37〜39には、ダクト722に発電装置76、104(図10、図12(b)を参照のこと)が設置されている例が示されている。発電装置76、104は、筐体710、720の中に設けられている。
図37の立面図に示すように、筐体710は、ダクト722の上面を構成するパネル724Aの上面に設置されている。ダクト722内を流れる空気により加振されたり、又は空調ファン等の機械振動が伝達されたりして、ダクト722が振動する場合、一次モードの振動においては、吊り部材726によって支持された位置を支点とするダクト722のスパン中央部で振幅が最大になるので、筐体710は、ダクト722のスパン中央部に配置するのが好ましく、剛性の小さいパネル724Aの中央部に配置するのがより好ましい。
筐体710は、図38の斜視図に示す板状の蓋部材730の上面に設置してもよい。蓋部材730は、パネル724Aの中央部に形成された矩形の開口部728を塞ぐように配置されている。また、開口部728と蓋部材730の外周との間の隙間にはゴム製の枠部材732が設けられている。
このような構成により、ダクト722に振動が発生したときに、蓋部材730の振動はパネル724Aの振動よりも大きくなる。すなわち、ダクト722に発生した振動が増幅される。これにより、発電装置76の発電効率を向上させることができる。
図39の斜視図に示すように、ダクト722内には、円柱部材734が配置されている。円柱部材734の上端部は、パネル724Aに形成された貫通孔736を貫通し、ダクト722の外部に突出している。そして、円柱部材734の上端部に筐体720が固定されている。
円柱部材734の下端面と、ダクト722の下面を形成するパネル724Bの上面との間には隙間が形成されている。また、円柱部材734は、円柱部材734と貫通孔736との間の隙間に設けられたゴム製のリング部材738によって、貫通孔736に揺動可能に固定されている。
発電装置104は、ダクト722内において空気が流れる方向(矢印740)と直交する水平方向(矢印742)の振動に対して発電するように筐体720内に設置する。すなわち、図12(b)の板材96の材軸方向が略鉛直になるように、筐体720の内壁に発電装置104を設置すればよい。
このような構成により、ダクト722内を流れる空気が円柱部材734に当たると円柱部材734の下流側にカルマン渦が発生し、このカルマン渦に起因した渦励振動が円柱部材734の下端部に生じる(矢印744)。この渦励振動の方向は、ダクト722内において空気が流れる方向と直交する水平方向(矢印742)となるので、この渦励振動に伴って円柱部材734の上端部も同じ方向へ揺動する(矢印746)。これによって、発電装置104により発電することができる。
図40、41には、振動体としてのダクト722を吊り支持する吊り部材750に発電装置748が設けられている例が示されている。
図40の断面図、及び図41の断面図に示すように、発電装置748の装置本体754は、角柱状に形成されており、コイルばね752を介して装置本体754の上部に下端部が連結された棒部材756によって、支持体としての床スラブ1050に揺動可能に支持されている。
また、コイルばね752を介して装置本体754の下部に上端部が連結された棒部材758によって、装置本体754にダクト722が揺動可能に支持されている。
装置本体754の内壁には、第2錘としての板状の錘760が固定されている。そして、錘760の上面に設置されたコイルばね762に第1錘としての円板状の錘764が支持されている。すなわち、錘764は、装置本体754に上下移動可能に設けられている。
錘764の上面には、第1部材としての円柱状の磁石766が固定され、磁石766の上方にはコイル768が配置されている。コイル768は、装置本体754の内壁に固定されている。
磁石766は、コイル768に対して上下方向に相対移動可能となっており、磁石766が上方へ移動したときに、磁石766はコイル768内へ挿入される。すなわち、磁石766と、コイル768とによって、発電手段770が構成されている。
よって、ダクト722に振動が発生したときに、この振動が装置本体754を介して磁石766に伝達される。これにより、磁石766が振動し、磁石766に対してコイル768が相対移動するので、電力が発生する。
また、発電装置748は、吊り部材に設けられているので、振動体に発電装置を設置することなく、この振動体から発生する振動を利用して発電ができる。
図42の立面図に示すように、発電装置748は、ダクト以外の振動体を吊り支持する吊り部材に設けてもよい。図42には、階段772を梁(不図示)に吊り支持する吊り部材750に、発電装置748が設けられている例が示されている。
図43、44には、支持体としての床スラブ1050上に振動体としてのダクト722を支持する架台774に、発電装置776が設けられている例が示されている。
図43の断面図、及び図44の断面図に示すように、ダクト722は、床スラブ1050上に設置された架台774に略水平に載置されている。架台774の脚部778の下端部には棒部材780の上端部が固定されている。
棒部材780の下端部には、発電装置776が設けられている。発電装置776は、円柱状の装置本体782、第1錘としての円板状の錘784、及び発電手段770によって構成されている。
装置本体782の下面には、第2錘としての円板状の錘786が固定されている。錘786の下面には円板状のゴム部材788が固定されている。すなわち、装置本体782は、ゴム部材788を介して床スラブ1050上に支持されている。
装置本体782の上面には円板状のゴム部材790が固定され、ゴム部材790の上面には接続部材792が固定されている。そして、接続部材792に棒部材780の下端部が固定されている。このような構成により、装置本体782は、ダクト722を揺動可能に支持している。
装置本体782の内部には、発電手段770が設けられている。発電手段770の磁石766は、装置本体782の底面上に設置されたコイルばね762に支持された錘784の上面に固定されている。すなわち、錘784及び磁石766は、装置本体782に上下移動可能に設けられている。
このように、発電装置776の構成は、図41で示した発電装置748の構成を上下反対にしたものである。
すなわち、発電装置748の構成は、振動体(ダクト722)、弾性体(コイルばね752)、装置本体754、弾性体(コイルばね752)、支持体(床スラブ1050)の順に下方から上方へ振動が伝達される構成であるのに対して、発電装置776の構成は、振動体(ダクト722)、弾性体(ゴム部材790)、装置本体782、弾性体(ゴム部材788)、支持体(床スラブ1050)の順に上方から下方へ振動が伝達される構成となっている。
よって、発電装置776は、発電装置748とほぼ同様の効果を得ることができる。
図45の立面図に示すように、発電装置776は、ダクト以外の振動体を床スラブ上に支持する脚部材に設けてもよい。図45には、二重床を構成する床パネル602を床スラブ1050上に支持する脚部材としての棒部材780に、発電装置776が設けられている例が示されている。
ダクトや配管を振動体とする場合、振動源となる送風機やポンプ等の羽根車の回転数に起因する振動数成分に加え、ダクトや配管の支点間ピッチや形状等に起因する固有振動数成分などの様々な卓越振動数が振動体に発生するが、図37〜45で示した発電装置76、104、748、776は、卓越振動数が幅広く分布する振動体に対して効率よく電力を発生させることができる。
図46、47には、送風機、ポンプ、チラー、発電機等の設備機器794が載置される防振台796に発電装置76(図10を参照のこと)が設けられている例が示されている。発電装置76は、筐体798の中に設けられている。
図46の斜視図に示す筐体798は、防振台796のフレーム部800A、800B間に架設された振動体としての板部材802A〜802Cの下面に設置されている。また、筐体798は、板部材802A〜802Cのスパン中央部(長手方向中央部)に配置されている。
よって、設備機器794の稼働によってフレーム部800A、800B及び板部材802A〜802Cが振動したときに、板部材802A〜802Cの振動が発電装置76に伝達され、電力が発生する。
また、一次モードの振動においては、板部材802A〜802Cのスパン中央部で振幅が最大になるので、筐体798を板部材802A〜802Cのスパン中央部に配置することにより、発電装置76から効率よく電力を発生させることができる。
また、図46に示すように、板部材802A〜802Cの幅や厚さを異ならせることにより(図46には、板部材802A〜802Cの順に幅を大きくしている例が示されている)、板部材802A〜802Cの固有振動数をそれぞれ異ならせることができる。
これにより、設備機器794から発生する振動の卓越振動数が幅広く分布する場合においても効率よく電力を発生させることができる。
図47の斜視図に示す筐体798は、防振台796のフレーム部800Aから張り出して設けられた振動体としての板部材804A〜804Cの先端部下面に設置されている。この場合には、板部材804A〜804Cの長手方向の長さや厚さを異ならせることにより(図47には、板部材804A〜804Cの順に長さを小さくしている例が示されている)、板部材804A〜804Cの固有振動数をそれぞれ異ならせることができる。
図48には、重機808に発電装置76(図10を参照のこと)が設けられている例が示されている。発電装置76は、筐体806の中に設けられている。
図48に示すように、重機808は、コンクリートガラや石等の破砕対象物810をクラッシャー812によって細かく破砕し、コンクリートの再生骨材や埋め戻し材等の破砕物814を製造する機械である。破砕された破砕物814は、アーム816に設けられたベルトコンベヤ818によって、アーム816の先端部から排出される。
筐体806は、クラッシャー812付近とアーム816先端部付近に設置されている。よって、重機808の稼働によって、クラッシャー812及びアーム816先端部に振動が発生し、この振動を利用して発電装置76により電力を発生させることができる。
一般に、建設機械等の重機から発生する振動は大きいので、この振動が地盤等を伝播し、工事振動として近隣に迷惑をかけることが懸念される。また、重機のオペレータもこの振動を受けるので長時間の運転は好ましくない。
これに対して、図48に示すように、重機に発電装置を設ければ、振動エネルギーが電気エネルギーに変換されるので、重機から発生する振動を低減することができる。
なお、バックホーや振動ローラ等の重機に発電装置を設けてもよい。
また、第1〜第5の実施形態では、床スラブ12に発生する上下方向の振動の振動エネルギーを発電手段16、58、80、92により電気エネルギーに変換する例を示したが、第1〜第5の実施形態を応用して、床スラブ12に発生する水平方向の振動の振動エネルギーを発電手段により電気エネルギーに変換してもよい。
例えば、図23(a)及び図24(a)に示すような、発電装置182、192としてもよい。
図23(a)に示すように、発電装置182の振動増幅構造186は、支持部材としての吊り部材184と錘22とを備えている。錘22は、振動体としての床スラブ12の2点から吊り部材184によって揺動可能に吊り下げられ、これによって振動増幅構造186が平行振り子を構成している。
錘22の下面には、第1部材としての棒状の磁石188の両端が固定されている。磁石188の周壁面と錘22の下面との間には隙間が形成されており、これにより、天井ボード220の上面に設けられた第2部材としてのコイル40内に磁石188が挿入された状態で、磁石188に対してコイル40が相対移動できる。すなわち、磁石188とコイル40とによって、発電手段190が構成されている。
よって、床スラブ12に水平方向の振動が発生したときに、この振動が吊り部材184を介して錘22に伝達され、錘22が左右に揺れる(図23(b)を参照のこと)。そして、この揺れを繰り返すことによって磁石188に対するコイル40の相対移動が繰り返され、コイル40から電力を発生させることができる。
図24(a)に示すように、発電装置192の振動増幅構造194は、支持部材としての積層ゴム196と錘22とを備えている。錘22は、振動体としての床スラブ12の上に積層ゴム196によって揺動可能に支持されている。
錘22の上面には、第1部材としての棒状の磁石188の両端が固定されている。磁石188の周壁面と錘22の上面との間には隙間が形成されており、これにより、床パネル10の下面に設けられた第2部材としてのコイル40内に磁石188が挿入された状態で、磁石188に対してコイル40が相対移動できる。すなわち、磁石188とコイル40とによって、発電手段190が構成されている。
よって、床スラブ12に水平方向の振動が発生したときに、この振動が積層ゴム196を介して錘22に伝達され、錘22が左右に揺れる(図24(b)を参照のこと)。そして、この揺れを繰り返すことによって磁石188に対するコイル40の相対移動が繰り返され、コイル40から電力を発生させることができる。
また、第4の実施形態では、第2の実施形態で示した発電装置76(図10を参照のこと)を横に並べて発電システム112を構成した例を示したが、第1〜第3、及び第5の実施形態で示した、発電装置18、60、88、104、106、116を横に並べて発電システムを構成してもよい。
また、第1〜第5の実施形態で示した発電装置18、60、76、88、104、106、116や発電システム112の錘22、62、94を二次電池とし、発電装置18、60、76、88、104、106、116や発電システム112によって発生させた電力をこの二次電池に蓄えるようにしてもよい。また、この二次電池を着脱式にして、発電装置18、60、76、88、104、106、116や発電システム112を充電器として用いてもよい。
また、第1〜第5の実施形態で示した発電装置18、60、76、88、104、106、116や発電システム112は、さまざまな電源として用いることができる。例えば、室内の空調や照明をコントロールするための温度センサ、湿度センサ、照度センサ、人感センサ等のセンサ電源として用いてもよいし、建物内の通路等に設けられる非常用の誘導灯の電源としてもよい。
また、例えば、野菜、魚、肉などの食料品が納められた物流荷物の中に入れられて、輸送中の温度履歴を記録するトレーサビリティの電源として用いてもよい。物流荷物は、トラックや列車等によって運ばれる際に振動を受けるので、この振動を利用して発電を行うことができる。
図49〜52には、タイヤ820のホイール822に取り付けられたTPMS(Tire Pressure Monitoring System)への電源として、発電装置826、846を用いた例が示されている。TPMSとは、タイヤの空気圧と温度をタイヤ内部に設けられたセンサで計測し、その情報を送信してドライバーに知らせる装置である。TPMSの内部に設けられた電池を電源とするものが一般的であるが、発電装置826、846を用いることによって電池交換を不要にすることができる。
図49の斜視図に示すように、TPMS824は、ホイール822から張り出すように設けられ、タイヤ820内の空間に配置されている。そして、TPMS824の先端部に発電装置826が固定されている。すなわち、発電装置826は、TPMS824をアームとし、このアームの先端に設けられているので、より効果的に発電装置826を振動させることができる。
図49のA−A断面図である図50に示すように、発電装置826は、筐体828内壁の上下面に設置された支持部材としてのコイルばね830と、このコイルばね830により上下に支持された板状の錘832と、発電手段838とによって構成されている。
発電手段838は、錘832に形成された貫通孔834を貫通し上下端部が筐体828内壁の上下面に固定された第2部材としての棒状の磁石836と、錘832の上面に固定され磁石836が挿入された第1部材としてのコイル840とによって構成されている。磁石836は、錘832に対して上下方向に相対移動可能に設けられており、これによってコイル840と磁石836とは上下方向に相対移動する。
よって、タイヤ820が路面上を走行することによって、タイヤ820の直径方向(矢印842)に振動が発生したときに、この振動が発電装置826に伝達され、電力を発生させることができる。
なお、図50に示した発電装置826を略90度回転された状態でTPMS824の先端部に固定すれば、タイヤの外周に対する接線方向(矢印844)に振動が発生したときに発電装置826によって電力を発生させることができる。また、発電装置826は、ホイール822の内側や外側に直接固定するようにしてもよい。
図51の側断面図では、TPMS824の電源となる発電装置846が、ホイール822のホイールキヤップ848に設けられている。
図51のB−B矢視図である図52に示すように、発電装置846は、ホイールキャップ848の内側の面に設けられた円筒部材850の内壁に複数設置された支持部材としてのコイルばね852と、複数のコイルばね852によって円筒部材850の中央部で支持される円板状の錘854と、発電手段856とによって構成されている。
発電手段856は、ホイールキャップ848の内側の面と対向するように錘854に固定された第1部材としての円板状の磁石858と、ホイールキャップ848の内側の面に設置された第2部材としてのコイル860とによって構成されている。
よって、タイヤ820が路面上を走行することによって、タイヤ820の直径方向に振動が発生したときに、この振動が錘854に伝達され、この錘854と一体となった磁石858がコイル860に対して相対移動するので、発電装置846により電力を発生させることができる。
第1〜第5の実施形態で示した発電装置18、60、76、88、104、106、116や発電システム112自体をセンサとして用いてもよい。例えば、倉庫に保管されている物品に発電装置を設け、盗難等により物品が運び出された際の物品に生じる振動により発電して、警報を鳴らしたり、信号を発信するようにしたりしてもよい。
また、室内の入り口の床に発電装置を設置し、人の歩行による床の振動により発電して、この発電の時刻や回数を記録して入出管理を行うようにしてもよい。
また、ポンプ等の設備機器に発電装置を設置し、発電量をポンプの稼働時間と関連付けて、設備機器のメンテナンスのタイミングを予測するようにしてもよい。
また、例えば、図53(a)、(b)の正面図に示すように、建物の基礎構造物862と上部構造物864との間の基礎免震層866に設けられ、基礎構造物862と上部構造物864との相対移動を拘束する剛性付与部材としてのストッパーピン868の拘束状態を解放するトリガーとして発電装置104を用いてもよい。
発電装置104は、筐体870の中に設けられている。この場合、図12(b)で示した板材96の材軸方向が略鉛直になるように、筐体870の内壁に発電装置104を設置すればよい。
図53(a)に示すように、ストッパーピン868は、上部構造物864の下面に設けられた上部構造体872の下部材874に形成された貫通孔876と、基礎構造物862の上面に設けられた下部構造体878の上部材880に形成された貫通孔882とを貫通し、この状態で基礎構造物862と上部構造物864との相対移動を拘束している。
ストッパーピン868の上端部に設けられた連結部材884と、この連結部材884を左右に挟むように下部材874の上面に固定された保持部材886、888とには、連通する貫通孔890、892、894が形成されている。そして、貫通孔894、890、892に連結ピン896を貫通させることにより、ストッパーピン868が保持されて図53(a)の状態を維持する。
連結ピン896の右端部にはワイヤー898がつながれており、このワイヤー898は、ソレノイド900のコイルに電流が流れたときに、ソレノイド900によって右方向に引っ張られる。
筐体870は、上部構造物864の下面に固定され、発電装置104により発生した電気はケーブル902を介してソレノイド900のコイルを流れる。
よって、上部構造物864に風荷重が作用した場合、ストッパーピン868によって基礎構造物862と上部構造物864との相対移動は拘束される。これにより、基礎免震層866に水平剛性が付与されて、上部構造物864に生じる風揺れを低減することができる。
また、図53(b)に示すように、地震等により上部構造物864が横方向に揺れた場合、発電装置104によって発生した電気はソレノイド900のコイルを流れる。これにより、ワイヤー898が右方向に引っ張られる(矢印904)と共に連結ピン896が右方向に移動して、貫通孔890から抜ける。よって、連結ピン896によるストッパーピン868の保持状態が解除され、ストッパーピン868が下方へ落下する。これにより、上部構造物864と下部構造物862との相対移動の拘束が解除されて、基礎免震層866が免震機能を発揮する。
また、発電装置により発生させた電力を電気防食技術に利用してもよい。水中、地中、コンクリート中に埋設された鉄などの金属は、長時間放置されることにより錆の発生が進行する。これに対して、この金属に電流を流すことにより、錆の発生を防ぐことができる。
図54には、列車906が走行するレール908の枕木910に発電装置76を設置した例が示されている。列車906の走行による振動により発電装置76から電力を発生させて地中912に埋設された配管(鋼管)914に電流を流す。これにより、配管914に生じる錆を防ぐことができる。発電装置76は、筐体916の中に設けられている。
図55には、給水管や配水管等の住宅の設備配管(鋼管)920に発電装置76を設置し、水の流れによる振動により発電装置76から電力を発生させて設備配管920に電流を流し、設備配管920に生じる錆を防ぐ方法の例が示されている。発電装置76は、筐体918の中に設けられている。
また、第1及び第2の実施形態では、支持部材をコイルばねとした例を示したが、図56の正面図に示すように、コイルばね930の中空内部に発電手段928を配置するようにしてもよい。
図56の発電装置924は、振動増幅機構926と発電手段928とを有している。
振動増幅機構926は、中空の支持部材としてのコイルばね930と、コイルばね930の上端部に設けられた円板状の錘932とを備えている。
発電手段928は、第1部材としての棒状の磁石934と、磁石934に対して相対移動可能な第2部材としてのコイル936とを備えている。
よって、コイルばねと発電手段とを上下方向に直列に配置する構成に比べて、磁石とコイルとの相対移動方向に対する発電装置の長さを短くできる。すなわち、発電装置の小型化を図ることができる。
また、図57の立面図に示すように、床スラブ12の上面に設置した発電装置924の上に、振動を嫌う精密機器等の機器938を載置すれば、床スラブ12から機器938へ伝達される振動(矢印940)を防ぐことができる。また、発電装置924の上に、振動を発生する空調機器等の機器942を載置すれば、機器942から床スラブ12へ伝達される振動(矢印944)を防ぐことができる。
また、第5の実施形態では、ゴム部材118、212の剛性を変えることによって振動系の固有振動数を調整する例を示したが、図58〜63に示す方法によって、発電装置946、968、1000、1008の有する振動系の固有振動数を調整するようにしてもよいし、図64に示す方法によって、振動体(ダクト1040)の固有振動数を調整するようにしてもよい。
図58に示すように、発電装置946は、振動増幅構造948と発電手段80とを有している。
振動増幅構造948は、支持部材としての板材950と、錘952とを備えている。板材950は、弾性を有しUの字を横にした形状となっている。また、板材950の下部950Bは、床スラブ12の上面に固定されている。板材950の上部950Aの先端部付近には、発電手段80と錘952とが取り付けられている。
板材950の上部950Aと下部950Bとの間には、支点調整部材954が配置されている。支点調整部材954の上部には、板材950の上部950A下面と接触しながら転動する車輪956が設けられ、支点調整部材954の下部には、板材950の下部950B上面と接触しながら転動する車輪958が設けられている。
支点調整部材954は、板材950の下部950Bに固定されたアクチュエータ960により、略水平方向に移動させることができる。これにより、支点調整部材954の位置を自由に変更することができる。すなわち、支点調整部材954の位置を変更し、車輪956から板材950の上部950Aの先端までの長さを調整してこの部分の剛性を変えることにより、振動増幅構造948(板材950と錘952)及び発電手段80によって構成される振動系の固有振動数を調整することができる。
また、床スラブ12上には、振動数検出装置962、アクチュエータ制御器964、蓄電池966が備えられた振動数調整装置922が設置されている。
よって、床スラブ12に上下方向の振動が発生したときに、この振動が板材950を介して発電手段80に伝達される。
また、図59のブロック図に示すように、発電手段80から発生した発電電圧の振動数を振動数検出装置962によって検出し、この検出結果に基づいてアクチュエータ制御器964が判断して、振動増幅構造948(板材950と錘952)及び発電手段80によって構成される振動系が共振状態となるように、アクチュエータ960へ操作信号を送る。
なお、発電手段80によって得られた電力を蓄電池966に貯めるようにしてもよい。
図60の断面図に示すように、発電装置968は、床スラブ12の上面に設置されている。発電装置968の装置本体970は、円筒状に形成されている。また、装置本体970の下端部には円板状の磁石972が設けられ、上端部には円板状の上蓋974が設けられている。磁石972の上面はS極になっている。
上蓋974の中央部には雌ネジ976が形成されており、この雌ネジ976に雄ネジ部材978が捩じ込まれている。雄ネジ部材978の下端部には、円板状の磁石980が固定されている。磁石980の下面はN極になっている。
磁石972と磁石980との間には、円筒状に形成された移動体982が配置されている。移動体982の下端部には円板状の磁石984が設けられ、移動体982の上端部には円板状の磁石986が設けられている。
磁石984、986の周囲には、円環状の錘988、990が固定されている。磁石984の上面はN極、下面はS極になっている。また、磁石986の上面はN極、下面はS極になっている。
これにより、磁石972と磁石984、及び磁石986と磁石980とは反発し合い、移動体982は、磁石972と磁石980との間で浮遊した状態となる。すなわち、移動体982は、装置本体970に上下移動可能に設けられている。
移動体982の内壁には、第1部材としてのコイル992が固定されている。
また、磁石984と磁石986との間には、円柱状に形成された第2部材としての磁石994が配置されている。磁石994の内部には、錘996が設けられている。磁石994の上面はS極、下面はN極になっている。
これにより、磁石984と磁石994、及び磁石994と磁石986とは反発し合い、磁石994は、磁石984と磁石986との間で浮遊した状態となる。すなわち、磁石994は、移動体982に上下移動可能に設けられている。
また、床スラブ12に振動が発生していない図60の状態において、磁石994はコイル992に挿入された位置に配置されている。すなわち、磁石994とコイル992とによって発電手段998を構成している。
よって、床スラブ12に上下方向の振動が発生したときに、磁石994とコイル992とが相対移動し、これによって電力を発生することができる。
ここで、磁石972と磁石984、磁石984と磁石994、磁石994と磁石986、磁石986と磁石980との間のバネ定数をK1〜K4とし、距離をd1〜d4とした場合、距離d1〜d4を小さくして磁力による磁石同士の反発力を大きくすれば、バネ定数K1〜K4は大きくなる。また、距離d1〜d4を大きくして磁力による磁石同士の反発力を小さくすれば、バネ定数K1〜K4は小さくなる。
よって、雄ネジ部材978の捩じ込み量を調整し磁石980の上下方向の位置を変えて距離d1及びd4を変えることにより、バネ定数K1及びK4を変えることができ、これによって発電装置968の有する振動系の固有振動数を調整することができる。
なお、距離d2及びd3を変えたい場合には、例えば、図61(a)、(b)の断面図に示すように、移動体982の側壁を蛇腹構造にすればよい。図61(a)には、蛇腹(移動体982の側壁)が伸びて距離d2及びd3が大きくなっている状態が示され、図61(b)には、蛇腹(移動体982の側壁)が縮んで距離d2及びd3が小さくなっている状態が示されている。
図62の断面図に示すように、発電装置1000は、発電装置968の磁石980を固定式にしたものである。
磁石986の上方には中央部に貫通孔1002が形成された円板状の磁石1004が配置されている。磁石1004は、装置本体970の内壁に固定されている。
また、雄ネジ部材978の下端部には、鉄の棒部材1006が設けられている。棒部材1006は、雄ネジ部材978を雌ネジ976に捩じ込むことによって下降し、貫通孔1002に挿入される。
よって、雄ネジ部材978の捩じ込み量を調整して、棒部材1006と磁石1004との間の距離を変えて磁石1004の磁力を変えることにより、バネ定数K1及びK4を変えることができ、これによって発電装置1000の有する振動系の固有振動数を調整することができる。
なお、距離d2及びd3を変えたい場合には、発電装置968と同様に、移動体982の側壁を蛇腹構造にすればよい(図61(a)、(b)を参照のこと)。
図63の断面図に示すように、発電装置1008は、床スラブ12の上面に設置されている。発電装置1008の装置本体1010は、円筒状に形成されている。また、装置本体1010の下端部には円板状の下蓋部材1012が設けられ、上端部には円板状の上蓋部材1014が設けられている。
下蓋部材1012と上蓋部材1014との間には、円筒状に形成された移動体1016が配置されている。移動体1016の下端部には円板状の下蓋部材1018が設けられ、移動体1016の上端部には円板状の上蓋部材1020が設けられている。
下蓋部材1018の周囲には、円環状の錘1022が固定され、上蓋部材1020の周囲には、円環状の錘1024が固定されている。
また、錘1022、1024の外周には、Oリング1026が設けられており、これによって、下蓋部材1012と下蓋部材1018との間、及び上蓋部材1020と上蓋部材1014との間に、密閉された部屋U1、U4を形成している。
移動体1016の内壁には第1部材としてのコイル1028が固定されている。また、下蓋部材1018と上蓋部材1020との間には、円柱状に形成された第2部材としての磁石1030が配置されている。磁石1030の上下面には、円盤状の錘1032、1034が固定されている。
床スラブ12に振動が発生していない図63の状態において、磁石1030はコイル1028に挿入された位置に配置されている。すなわち、コイル1028と磁石1030とによって発電手段1036が構成されている。
また、錘1034、1032の外周には、Oリング1038が設けられており、これによって、下蓋部材1018と下蓋部材1034との間、及び上蓋部材1032と上蓋部材1020との間に、密閉された部屋U2、U3を形成している。
部屋U1〜U4には、MR流体Hが充填されている。MR流体とは、磁性金属微粒子を媒体となる液体中に高濃度で分散させたスラリー状の機能性流体である。外部からMR流体に磁場を加えることにより、粒子間の結合力が強まって磁界方向に鎖状のクラスタが形成され、このクラスタの張力が降伏応力に対応して見かけ粘度が上昇する。
これにより、移動体1016は、下蓋部材1012と上蓋部材1014との間で浮遊した状態となり、また、磁石1030は、下蓋部材1018と上蓋部材1020との間で浮遊した状態となる。すなわち、移動体1016は、装置本体1010に上下移動可能に設けられ、磁石1030は、移動体1016に上下移動可能に設けられている。
よって、床スラブ12に上下方向の振動が発生したときに、磁石1030とコイル1028とが相対移動し、これによって電力を発生することができる。
また、MR流体Hへ加える磁場を変えて各部屋U1〜U4の見かけ粘度を変えることにより、各部屋U1〜U4のバネ定数を変えることができ、これによって発電装置1008の有する振動系の固有振動数を調整することができる。
図64(a)、(b)の斜視図に示すように、ダクト1040は、吊り部材1042の下端部に設けられた支持装置1044によって、吊り支持されている。ダクト1040は、支持装置1044に設けられた支持アーム1046上に支持されている。
また、支持アーム1046は、伸縮機構1048によってダクト1040の長手方向に移動可能となっている。
よって、支持アーム1046をダクト1040の長手方向に移動させ、ダクト1040の支持点の位置を変えてダクト1040の支持スパンを変えることにより、ダクト1040の固有振動数を調整することができる。
以上、本発明の第1〜第5の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第5の実施形態を組み合わせて用いてもよい。例えば、図25に示す発電装置198のように、第2の実施形態で示した発電装置60の振動増幅ユニット66(図6を参照のこと)を第3の実施形態で示した発電装置104の振動増幅構造90(図12(b)を参照のこと)にしてもよい。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
(実施例)
本実施例では、本発明の実施形態に対して実施した実験結果について示す。
図26は、第2の実施形態で示した発電装置76と、発電装置76に設けられている錘22を無くした発電装置(以下、「比較装置」とする)とに対して実施した実験結果のグラフである。横軸には、振動数が示され、縦軸には、コイル40から得られた発電量の相対的大きさが示されている。図26の値200は発電装置76の値であり、値202は比較装置の値である。
実験は、振動台上に発電装置76及び比較装置を設置し、各振動数毎に50galの正弦波で振動させたときの発電量を計測した。磁石38と錘62とを合わせた重量を1.5kgとし、振動増幅ユニット82の総重量を242kgとした。
図26より、5Hzの振動数において、発電装置76の発電量(値200)が、比較装置の発電量(値202)の150倍となっていることがわかる。ワット数は電圧の二乗に比例するので、発電装置76の発電量が比較装置の発電量の150倍になったということは、発電装置76の磁石38の振動加速度が、比較装置の磁石38の振動加速度の約12〜13倍に増幅されたことにより、コイル40から出力される電圧も約12〜13倍に増幅されたことを意味する。
図27は、第3の実施形態で示した発電装置104に対して実施した実験結果のグラフである。横軸には、振動数が示され、縦軸には、コイル40から得られた発電量を振動台の加速度で割った値が示されている。
実験は、錘94の位置を異ならせた8つのパターンの発電装置104に対して行った。振動台上に発電装置104を設置し、各振動数毎に50galの正弦波で振動させたときの発電量を計測した。
図27より、錘94の位置を変えることによって、発電量がピークとなる振動数が変化していることがわかる。値204A〜204Hでは、それぞれ、振動数が25.5Hz、27.5Hz、29.5Hz、32.5Hz、35.5Hz、38.0Hz、42.5Hz、47.0Hzのときに発電量がピークとなっている。すなわち、発電装置104において、錘94の位置を調整することによって、発電装置104の振動増幅構造90の固有振動数を調整することができる。
図28は、第2の実施形態で示した発電装置76に対して実施した実験結果のグラフである。横軸には、振動数が示され、縦軸には、コイル40から得られた電圧を振動台の加速度で割った値が示されている。
実験は、錘22の重量(錘22を構成する錘ユニット22Aの個数)を異ならせた5つのパターンの発電装置76に対して行った。振動台上に発電装置76を設置し、各振動数毎に50galの正弦波で振動させたときの電圧を計測した。
図28において、1つの錘ユニット22Aを有する発電装置76の値を値206Aとし、2つの錘ユニット22Aを有する発電装置76の値を値206Bとし、3つの錘ユニット22Aを有する発電装置76の値を値206Cとし、4つの錘ユニット22Aを有する発電装置76の値を値206Dとし、錘ユニット22Aを有さない発電装置76の値を値206Eとした。
図28より、錘22の重量(錘ユニット22Aの個数)を変えることによって、発電量がピークとなる振動数が変化していることがわかる。すなわち、発電装置76において、錘22の重量を調整することによって、発電装置76の振動増幅構造78の固有振動数を調整することができる。